2本買った長芋は1本しか残らなかった。しかたないので、山かけごはんと豚汁、サトルが持ってきたプロテイン、ジュンヤが持ってきたゆで卵を夕食にする。その夕食を食べながら社長は話してくる。「森山さんは来年の3月にならないと来れないから、2日までの昼食を君たちに作ってもらいたいんだ。特に福山君、村上君、早瀬君の3人。残りは2階で」「森山さん、酷いんですか?」しかし社長は新田の言葉を無視する。「ほかの11人も...
オリジナルBL&MLを毎週月・水・金の夜21時に更新!※アスリートCP/医者CP/リーマンCP/学生CP/短編も有ります。
妄想&空想が好きです(*≧m≦*) 浸るのも大好きです。 プロフのイラストはTwitterでお友達になった豆たろさんに描いて頂きました。 豆たろさん、ありがとうございます〜♪ オリジナルでBL小説を書いてます。 他のジャンルも多少あります。 性的表現がございますので、苦手な方はご遠慮ください。
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2本買った長芋は1本しか残らなかった。しかたないので、山かけごはんと豚汁、サトルが持ってきたプロテイン、ジュンヤが持ってきたゆで卵を夕食にする。その夕食を食べながら社長は話してくる。「森山さんは来年の3月にならないと来れないから、2日までの昼食を君たちに作ってもらいたいんだ。特に福山君、村上君、早瀬君の3人。残りは2階で」「森山さん、酷いんですか?」しかし社長は新田の言葉を無視する。「ほかの11人も...
12時前になると10人がくる。「あれ、なんでボスが」「豚汁は薄めと濃いめ、どちらがいいですか?」皆が薄めというので6人をキッチンに入れる。「このマグロ、美味い」「毎年、マグロが食べれるのだけど」「新田は、それが目当てで来てるのか」「来てよかったと思ってる。そう思わない?」「まあ、ボスの手料理なんてレアものだからな」誰かが声をかけてくる。「ほかの9人は?」「2Fでやってる」「ちなみに夕食はどうするの?」「...
11時を過ぎると2人くる。見るからに高校生だと分かる。「お疲れ様です」「お疲れ様です。マグロ丼だあ」「豚汁は薄めと濃いめがありますが、どちらがいいですか?」「味見していいですか?」どうぞと言って、両方を小皿に入れて渡す。その高校生は微妙な表情をしている。「薄味でお願いします」「はい、こちらでどうぞ」「ありがとうございます」2人は仲良く座っている。「やっぱり美味しい。これがあるから毎年来るんだよね」「毎...
買い出しの2人が戻ってくると、マグロの身は綺麗に整列しており、頭で出汁を取ったのだろう。「スズメ、濃いめと普通、どっちがいい?」「どっちでも」「私たち21人は普通でいいけど、濃いめの方が量はいる」「34人だっけ」「その中でも高校生や大学生はいるけど」カズキの声が聞こえる。「ねえ、長芋5本で足りるかな?」「足りなかったら買いに行けばいい。人参2、シイタケ1、長芋3、長ネギ1、こんにゃく2、肉1で好きなのを...
27日の午前中、教育学5人は1階、経済学6人は2階、医学10人は3階で賄いの手伝いだ。しかし、10人もいらないので、3階の食堂のテーブルで2階の仕事をする。でも、9時半を過ぎても3階の食堂のお姉さんが来ないので、急遽3人がキッチンに入る。いつもの仕事に年末年始の仕事もあるので、27、28、29日は忙しくなるから、こんなイレギュラーなことがあると困る。お造り、お刺身という仕事があり、そういう繊細な仕事に向いている医...
教育学部の福田と小林が持ってきたのはカロリーメイトだ。それを見ると、皆は笑っていた。「何がおかしい?」「いや、お前らって最高のコンビだよな」「朝飯にちょうどいい」「誰かさんのおかげで朝飯も自由になってね。3食付きが、まかない1食になったからどうしようと思っていたんだ」「朝飯はカロリーメイトとプロテインだな」ジュンヤは自分が持ってきたのを出す。「これも食べるといいよ」ジュンヤが出してきたのは玉子だ。...
その日もため息が出る。「量が多いのはまだいいが、肝心の味がなあ」「昨日のは、スズメが中華にしたよな」「今日はどうだろう」食堂に行くと、医学のボスとカズキがキッチンに立っているので声をかける。「何を作ってるの?」カズキは一言だった。「豚しゃぶ」「うまそう」「これなら塩味も抜けてボスが作ったソースを付けて食べれば大丈夫。その代わり、固いしゃぶになるけど」「塩辛くなければいい」ボスは呟いている。「夕食は...
初日はなんとか終わり、ぐっすりと5時まで寝る。月末30日と31日は30分ずつ早くなっていくが起きれるだろうかと不安だ。だけど、皆の目覚ましにセットしている時間が微妙に違う。しかも、これだ。「だー! うるさい!」「消しても、消しても」「うるさいのは、お前の声だ!」お陰で、目が覚めていた。朝食は自分でご飯をおにぎりにして食べる。カップラーメンは置かれてあるが、それを食べようという気はない。インスタントのみそ...
25日は準備というのもあり、予定通りの21時に終わる。2人の女性社員は泊まるので荷物を持ち奥へ入る。「麗奈、大丈夫か?」「大丈夫よ。夕食も食べたし、あとは寝るだけだからね」「明日から男は6時からだけど」「女性は8時だもんね。7時まで寝る」「朝食は食べろよ」「分かってるよ。ほら、行った、行った」「もめごと起こすなよ」「人を何だと思って」「知っているから言ってるんだよ」喚いている夫にキスしてやる。「麗奈……」「...
朝7時半を過ぎると、社員やほかのアルバイト達が集まってくる。社長含め正社員はたったの7人。ほとんどがアルバイトだということが分かった。「今日は準備の日だ。男子が多いので、1階と2階に分かれて。チーフ、あとはよろしく」1階と2階に皆が分かれる。途端に、誰かが麗奈に声をかける。「まさか、レナ?」「誰?」「私よ、ハルカ」「はるか?」しばらく考え込んでいたが分かったみたいだ。「えー! あ、あのハルカ?」「まあ...
翌日の朝、6時半になろうとしている。新田は3人を叩き起こし、他の部屋へ行く。医学部と教育学部の皆はすでにいなかった。もしかして、食堂に言ったのかと思い行くと、温かいにおいと空気が迎えてくれる。「あ、残りがきた」「みんな早起きだな」「お宅のリーダー夫妻が作ってくれたよ」「松井が?」「尻に敷かれていた」「10分早起きしてたら見れてたね」「お前ら、言うなって言っただろ」松井の妻はこれだ。「みんなが買ってきた...
「んで、寝室はどこ?」「あ、こっちだよ」そう言うと、新田を先頭にして皆はついていく。「この右側は女子専用ね」「はい」「で、左側は和室になってるから」「ん」和室に入る。「麗奈、どうしたの?」「なにが?」「女子は右側って」「だって一人なんだもん」その言葉に松井は笑う。「大丈夫って言ったの誰だよ」「だって、他の二人は明日からでしょ。今日は私一人だけだから。私を守ってね?」「こいつらから?」「そうだよ」「...
新田は食堂のお姉さんに声をかけている。「森山さん、森山さん」「なに、新田君」「明日の朝食は買ってきてるのを食べるから、お昼からよろしくお願いします」「どうせパンなんでしょ」「実は、夕食用にと買ってきた物なんだけど、まさか作ってくれてたなんて思っていなかったから。頂いちゃったし」「クリスマスだしね」「ありがとうございます。片付けはしておきますね」「それじゃ、お願い。私は帰るわ」「お疲れ様でした。明日...
皆で食べていると社長が食堂に入ってきた。手招きしている食堂のお姉さんに気が付き、キッチンへと入っていく。「なに?」「これ、飲んでみて」「どうして?」「私でなく、あそこの男子学生が作ったの。私、味なんて分からないし」そう言われ、一口飲む。飲み切ると、社長はお椀に注ぎ飲み切る。「美味いわ。なんか生き返った気分だ」そう言うと、食堂へ足を向ける。「誰が、このお味噌汁作ったの?」「あ、はい、私です」「今どき...
時は過ぎ、12月24日の夜。新田率いる経済学部5人プラス松井嫁の6人と、医学部7人、教育学部3人は大荷物を持ってやってくる。先に新田が挨拶をする。「こんばんは、明日からよろしくお願いいたします」「よく来たね。食堂に行ってて」「はい、分かりました」食堂に行くと声をかける。「お疲れ様です」「新田君、お疲れ様。これね」「これって、なにが?」そう聞くと、食堂のお姉さんはこれと言って指をさす。「え?」それを見た...
帰りは各自で帰る。横浜に来ることってないから皆が興味津々だ。関内駅周辺だったり、少し歩けば山下公園がある。松井は夫婦でどこかに行くみたいだ。サッサと歩き出す松井に声をかけていた。「松井、どこに」「聞くだけ野暮だって」「なんで」「デートに決まってるだろ」「え?」松井の声が近くでする。「なんで聞きたがるかね。それとも、私たちの後を付けてボロボロにやられたいか?」「いえ、結構です」「デートに決まってるだ...
1時間強しか経ってないが、社長は決めたみたいだ。皆は食堂で本日のお試しバイトのバイト料として軽食を食べている。社長は、その皆に言う。「決めた、決めたよ。みんな、ここでバイトしてもらう。採用決定だ」新田がすかさず返す。「ありがとうございます」「新田君もありがとう。適材適所に苦しむけど住み込みだからなんとかなるだろう。年末年始はよろしく」皆の声は重なっていた。「ありがとうございます。よろしくお願いいた...
2階へと移った教育学部5人は容器が足りないということで、8種類の容器にシールを貼っていく作業をしている。手本を一つ作ってもらい、それに倣って容器にシールを貼っていく。もくもく作業なら、お任せの5人だ。20分あれば終わるが、先に終わった3人は残りの3種類のシール貼りをしている。手が空いた2人は片づけをしているスタッフに声をかけ手伝う。高橋も声をかけていた。「持っていきます」「重いよ」「大丈夫です」持ち上...
ニコニコ顔のジュンヤだったが、内心は焦っていた。こんな近くで女性と、まさかリップサービスを余儀なくする羽目になるとは思いもしなかったのだ。しかも、無事に1人終わったと思っていたら、次から次へと5人の女性を相手に一人でさばくだなんて。これがメスで切り開いても良いのなら構わないのだが。そう思うと言っていた。「なんで、他の人たちはしないのですか? しかも、あの9人はどこに消えた?」先ほどのスタッフが教えて...
「ジュンヤ様は魚もお食べになられるのですね」「魚はよく食べるよ」そこでジュンヤは気が付いた。「魚、食べてる?」「あまり食べないかも」「食べたほうが良いよ。特に女性には魚のタンパク質は体にいいんだ。どんな魚が好きなのか教えて。良かったら選んであげる」「タコも魚ですか?」その言葉に、自分の立っている場所がタココーナーであることに気が付いた。「そうだよ。食べたことない?」「どうやって食べるの?」「ゆでる...
バンッ!ガラガランッと大きな音が鳴る。何の音だろうと思うと、誰かの叫び声が聞こえてくる。「何を……!」同時に音が鳴る。カーン!「み、みが……」何を煩くしてるんだ! 道場にまで響いてきてるぞ!と、言いたかった、その人は道場主だった。その人は耳を押さえ蹲っている。テレビの向こうに映っている人は、こう言っている。『優介、どうだ?』「思いっきり叩かないと効かないよ」『昌平さんしんどい?』「いや、全然。それより...
オーストラリアから何か小さい荷物が届いた。それを開けた斎藤さんは嬉しそうに、どこかに電話している。いきなり現れる大画面に驚かされる。ビックリするなあ。『なんだ?』「友兄、ありがとう。荷物来たけど、これはなに?」『あ、それ! 可愛いだろ、木魚なんだ』「もくぎょ?」『ほら、仏様はチーンして拝むだろ」「うん」『その時、横でポクポク……と叩いて鳴らしている物だよ』「……で?」『中身は鉄なんだ。楽しいだろうなと...
授業が終わっても笑いが止まらない。誰かが声を掛けてくるが相手にしなかった。すると、いきなり叩かれる。「ったいな。だれ」「さっきから読んでるのに。俊平先生?」睨み付けると相手も睨み付けてくる。げ、ナイフ理事長だ。「し、失礼しました」背筋がピシッと伸びる。「その様子だと、1回目は無事に終わったみたいですね」「はい。無事に終わりました」「これからずっとやっていけそうですか?」「大丈夫です。やっていけます...
思わず笑ってしまった。だって、丸坊主の頭がいきなり画面に写るのだから。誰なんだ……と思って見ると、治だし。ハゲを英語でと思ったが、単語がどこかに飛んでいってしまい忘れてしまった。だけど、学生達がカタカナ英語やスラングを口にしてくる。挙げ句の果てには意味不明な単語まで。まあ、全てツルツルという意味を持つけどな。気持ちが落ち着き、画面を再び見る。治。どこで、どんな修行をしているのだろう。すると、辞書を手...
大学6年生の春。今日は残り1科目の英語の初日。Zoomを起動し授業を受ける。画面越しに見る限り、俊平は元気そうだ。悩みなんてないという感じに見える。俊平。俺が大人になるまで待っててね。絶対に強くなってみせるから。すると、いきなり笑い出した。声が笑い声になっている。「ハゲ……。ハゲって、英語でなんて言うんだっけ……」俺か。俺の顔が見えたんだな。他の皆から色々と飛び交っている。「オールバック」「No」「オールヘ...
柔軟体操の紙を渡され、それを見ながらやっていく。足腰の屈伸を中心に、腕の突き出し、身体の捻りをしていく。突き出しなんて初めてだ。これだけでヘトヘトになりそうだ。柔軟体操を30分やり、休憩時間の5分間は水分補給をする。「次、ペアを組んで皆はいつものだ。はじめっ」「はいっ」「治君は、拳の作り方からする」「はい」「優介君、ペアになって」「新一さんと?」「治君とだ」「ですよね。ああ、良かった」「で、手本は、...
さあ、今日は空手の無料体験の日だ。運動しやすい服装で、と言われているので、ジャージの上下を着ていく。斎藤さんが入口に当たる階段の下にいるのが見える。「治君、いらっしゃい。逃げずに来られたね」「よろしくお願いします」ん? 逃げずにってどういう意味なんだろう?そう思いながら、斎藤さんの後ろを追うように3階に上がる。荷物は控え室に置いてねと言われ控え室に案内され入ると、ロッカーになっている。空いているロ...
お母ちゃんからメールがきた。俊平には「治は寺で修行して、携帯禁止だ」と話したらしい。ちょっと待ってよ。そりゃ、携帯は番号新しくしたけど、寺で修行はないだろ。4月からの英語は俊平が教えるとも書いてある。そっか、週1で俊平と会い、顔が見れるのか。しかも、「寺、修行」の言葉でハゲという言葉が出てきて、2人揃って爆笑してたなんて。なんて、2人だ。俺、ハゲにした方が良いのか?ガッコ行くときだけハゲのカツラに...
黒ラベルでご機嫌マックスなおばさんは色々と近況報告してくれた。治のことは一言だけだった。「あのヤワな泣き虫坊主は寺に放り込み、講義の時だけ大学に行かすようにしたから」おばさんの性格を知っているから、それ以上は何も聞く事は出来なかった。そう、講義の時だけか。それでも、会うことは出来る。おばさんは早くも舟をこぎ出している。え、この量だけで酔いがきたのか? 早くないか。寝さすべきだよなと思っていると、自...
思わず声が出ていた。「ふぅ……、疲れた」それに応えるかのように声が聞こえてくる。「おかえり」まさか、応じてくれる声があるとは思わなかった。ビクついて声が聞こえてきた方を見ると、治の母親が居た。「お、ばさん? いつ」「治から合鍵もらって入ったの」あいつは教えろよ、と呟きが出てしまう。これね、と鍵を渡される。「俊ちゃん、今までありがとう。あの子は、あのマンションには居ないわ。引っ越したの」「どこに」「ご...
そう言い切ると、昌平さんはコンビニに入っていく。あんな事を言っても、兄弟思いなところがあるのは分かっている。家族、か。ずっと、思っていた。お父ちゃんと2人で、途中から友兄も入ってきて……。で、友兄が『御』の所に連れてきてくれて。その家で、家族って、兄弟っていいなと思ってたから……。たとえ年齢が離れていても、昌平さんは兄であり頼もしい父親的な存在で、隆星さんは厳しいけれど兄弟思いで、悟さんは横柄なところ...
その様子を複雑な思いで見ていた。「新潟」その言葉は、スズメを思い出させる。私には、決して忘れることが出来ない地名だ。スズメの親戚でないことは分かっている。あのスズメには姉しかいない。あの女性が、さっきの女性とは別人だというのは分かるが、彼女はどうしているだろうか。弟が可愛くて仕方ないと猫買いかぶりな人だったからな。あいつが死んですっかり忘れていたが、彼女はどのようにして過ごしているのだろうか。そん...
「あー! つっかれたー」「そりゃ、疲れるだろうよ」「いやあー。日常的に柔道してるけど、やっぱり違うね」道場主さんは口を挟んでくる。「日常的?」お母ちゃんは、その声に応える。「捕り物の時は足掛けや背負いで捕るけど、ここまで本気出さないので」「捕り物……。失礼ですが、警察関係の方でしょうか?」「新潟で刑事してます」「新潟……」「はい、でもバカ息子は東京で大学生してます」その言葉に、俺は言っていた。「バカ息...
声が響く。「5分経過! 休憩時間終了まで、あと5分!」斎藤さんの声だ。もう、そんなに経ったのか。で、残り5分?道場主の声が近くで聞こえてくる。「ほぉ……、いい線いってるな。彼女は何者だろう」私の母です。と言いたかったが声が出ず、斎藤さんが答えてくれる。「治君のお母さんですよ」「治君とは?」「昌平さんとこに入った新人バイト君ですよ」「これは、時間内に終わらないな」「悟さん? ま、まさか」まさかって、な...
淳史さんの先導で3階に上がっていく。開けっぱなしにしてある部屋があり、そこには道場主の人が立っている。「どうした? その2人はなんだ?」淳史さんはこう返事している。「私が相手しますので、少しの間、抜けます。よろしいでしょうか?」「空手か?」「柔道が得意らしく異種になります」本当に、お母ちゃんの相手をしてくれるんだ。淳史さんって優しいなあと思っていた。すると、道場主は一言だった。「ちょうど休憩に入る...
「たのもー!!!」いきなりの大声でビックリした。「お母ちゃん?」「一度、やってみたかったんだよね」少しすると、ドタドタと上から足音が聞こえてくる。「ちょっとやめてよー。帰るよ-」「いいじゃない。あら、イイ男」「お母ちゃんっ」その人は声を掛けてくる。「失礼ですが、先ほどの」「私、柔道が得意で、相手して貰えますか?」もう、言い出したら止まらないんだから。「お母ちゃん、やめてって言ってるでしょっ」「うっ...
引越した初日。俺は、お母ちゃんに話していた。俊平から就職しろと言われ、それから会わなくなったことを。それで、その甘えから抜け出そうとしてバイトをしだし、こっちに引っ越すことにしたと。お母ちゃんは、こう話してくれる。「就職難の今、手に職が付いていない人間は難しいよ。バイトを掛け持ちして生活をしている人は、ごまんといる。コンビニでバイトをして保険とか払う気があるのなら、コンビニを本業にして他に仕事をす...
2月最初のシフト日、12時前に来て部屋の中を見させて貰った。2階は店長、新一さん、淳史さんが住んでおり、3階には岡崎さんと社会人が、4階には社会人が借りて住んでいる。もう、留年はしない。俊平にも話さないといけないのは分かっている。でも、顔を見たら何も言えなくなる。だから、お母ちゃんに来てもらった。なにしろ20歳を過ぎているので保護者は必要ないが、保証人はいる。お母ちゃんに電話をして話しをすると、2月に...
ポツリと呟く。「若いっていいねえ……」「昌平さん?」「雅君を見てると、なんだか若かった頃の自分を思い出す」「なにを年寄りみたいな台詞言ってるんですか?」「この年になると、やっぱり」「昌平さんは、まだまだ若いですよ」「ありがと。でも、孫ができた気分だよ」その言葉に驚く。「え?」「私にとって、優ちゃんは子ども。でも、雅君は孫、という感じがするんだよな」「昌平さん……」ある言葉がフッと浮かんできたので言って...
その日の夕食タイム。なぜか目の前にはニコニコ顔をしている店長が座ってくる。「あの」「雅君、よく頑張ってるね」「立ち仕事はしんどいですが、付加価値があり楽しいです」「これ、2週間分のバイト料ね」「ありがとうございます!」金額を確認して受取のサインをする。店長はニコニコ顔で言ってくる。「どう? やっていけそう?」「はい、やっていけます」「それなら、もう1枚」そう言って、ある紙を置いてくれる。「それを読...