第二章:変容(メタモルフォーゼ) 1. 密室の鼓動 ニルヴァーナ号は「あちら側」の宇宙――乳白色の光が支配する高次元空間を、エンジンを停止させたまま漂流していた。 船内の物理定数は刻一刻と書き換えられ、壁の隙間からは翡翠色の有機的な蔦が、血管のように這い出している。そんな異常事態の中、カイルとナターシャは、二人きりで予備隔離室にいた。 「ハァ……ハァ……、カイル、見て……私の指先が……透け始めているわ」 ナターシャが震える手で、自身の腕を指差した。白く滑らかな肌の奥で、銀色の光が神経回路のように明滅している。それは未知の宇宙への「適応」であり、同時に「人間としての死」への序曲…