そして、その日は来た。空が焼け、天上より雷の柱が地を貫いた。人々は叫び、神々は沈黙し、世界は静かに、だが確かに、“神殺し”の時代へと突入した。だが、誰よりも早くそれを知っていた者がいる。問いの火を撒き続けた、灰色の女神――アテナである。■神々の陥落はじまりは、天の王ゼウスが地に落ちたことだった。彼はもはや人々の祈りに応えられず、嵐は祝福ではなく災厄と見なされ、その名は祝詞からも消えていった。ポセイドンは怒りに沈み、ハデスは人間の“死を避けようとする知恵”によってその領土を蝕まれた。人はもはや、神を必要としなくなっていた。なぜなら――彼ら自身が、神を超える問いを持つようになったからだ。そして、誰が教えたのかと問われれば、その答えは、ある一点に収束してゆく。「灰の都より来たりし、剣を持たぬ戦神」――■対話なき...第五章「剣なき戦い」