第六章:沈黙の神殿
月が雲間から顔を覗かせたとき、リオネルたちはようやく神殿の入り口にたどり着いた。深い森に隠され、苔に覆われた石の構造物は、まるで時そのものに忘れ去られたかのようだった。「これが……“沈黙の神殿”か。」エリスが呟く。風が止み、鳥のさえずりすらも消えていた。まさに“沈黙”という名がふさわしい空間だった。重々しい扉には、かすかに光を帯びた文様が浮かび上がっている。見覚えのある文様だった。リオネルがポケットから取り出した古びたペンダントの裏にも、それと同じ印が刻まれている。「この扉……俺たちを待っていたのかもしれない。」彼がペンダントを扉に近づけると、低く鈍い音と共に文様が輝きを増し、扉がゆっくりと開いていった。中は暗く、そして静かだった。まるで音が吸い込まれるかのような異様な空気。神殿内には、朽ち果てた彫像や壁...第六章:沈黙の神殿
2025/06/13 07:21