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PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(5) ~「びまん性軸索損傷」~
これら(m)TBIの脳実質の器質的な損傷は、多くが回転外力や加速度による深部の微細な損傷である「びまん性軸索損傷」(diffuseaxonalinjury:DAI)[Gennarelli1984]に分類されるもので[Gennarelli&Graham1998]、外傷後のCTで明らかな異常を認めないにもかかわらず、意識障害の遷延がある状態として鑑別され、重度から最軽度まで量的に連続するスペクトラムをなします。そしてDAIの最も軽度の段階が、後述のゼネレリの分類によると、mTBIなのです[Gennarelli&Graham1998;山口2020,pp.60-1]。この「びまん性脳損傷」と「局所性脳損傷」(脳挫傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳内血腫)とを合わせたものが「外傷性脳損傷」にあたります[原・富田...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(5)~「びまん性軸索損傷」~
PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(4) ~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)とPTSD~
「むち打ち」という損傷が、脳画像上の異常所見を見い出しにくいために、現在の医療の現場ではあまりにも軽視されすぎていることを前回みましたが、実はmTBIもこの点では全く同様なのです。mTBIの神経線維断裂は、CTやMRIが捉えにくい深部(脳梁や大脳辺縁系)に[山口2020,pp.15,23-4,61,71-2]、CTやMRIでは異常所見が見られないミクロな(顕微鏡的)レベルで[山口2020,pp.12,61]、あるいは不可視の代謝性(生化学的)変化にとどまって[山口2020,p.70]生じますこのため、往々にして画像診断上「異常なし」とされ、高次脳機能障害の診断基準に必須の「脳の器質的病変」は存在しないとされるので、自賠責保険の認定上でも多くは「非該当」とされてしまいます(自賠責保険で高次脳機能障害があると...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(4)~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)とPTSD~
PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(3) ~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)と「むち打ち」~
しかしTBIは、戦場ならずとも、平時でも交通事故等において、決して珍しくありません。その場合、圧倒的に多いのは「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)です。mTBIは2003年のアメリカCDCセンターによる疫学的調査によると、年間150万人のTBIのうち70~90%(75%)を占め、多くは受傷後3カ月以内に症状が回復するけれども、10~20%は慢性化し、毎年10万人以上が遷延する症状に苦しみ、毎年この傾向は続いているため(しかも診断されたのは実数よりはるかに低いと、1998年にNIHは警告しています)、「公衆衛生上の問題」とされています[石橋2009,pp.14-5;山口2020,pp.11,86]。アメリカでは1996年、「外傷性脳損傷法」(TheTraumaticBrainInjuryACT)という法律も議会...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(3)~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)と「むち打ち」~