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  • 血糖値低下はショウガが三冠王!

    血糖値低下はショウガが三冠王!スペインZaragoza大学のMariaC.Garza氏らは、2023年9月までPubMed、WebofScience、Scopusの各データベースを検索し、地中海食に一般的に含まれるハーブ/スパイス(ブラッククミン、クローブ、パセリ、サフラン、タイム、ショウガ、黒コショウ、ローズマリー、ターメリック、バジル、オレガノ、シナモン)が2型糖尿病患者の血糖プロファイルにどのくらい影響を及ぼすかについて、システマティックレビューおよびメタ解析を行なった結果(77論文をシステマティックレビューの対象とし、そのうち45(3050例)をメタ解析の対象としたもの)、いくつかのハーブ/スパイス、なかでも特にショウガの摂取が空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の低下に有意に関することを明ら...血糖値低下はショウガが三冠王!

  • ADHDと精神疾患リスクの関連

    ADHDのさまざまな精神疾患との合併率の高さが、これまで観察研究や診断基準などから示唆されてきていましたが、このたび、中国・重慶医科大学のYanweiGuo氏らが、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施したところ、以下のような結果が得られたとのことです。なお、この研究は、2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングしたもので、分析の主なアプローチとしては、逆分散重み付け(IVW)法が用いられています。・IVWMR分析では、ADHDと自閉スペクトラム症リスクとの間に正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.328、95%信頼区間[C...ADHDと精神疾患リスクの関連

  • アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎か? それが問題だ!

    アレルギー性鼻炎と診断されながら、実際には慢性副鼻腔炎(chronicrhinosinusitis;CRS)に(も)罹患していて、その治療をしないといつまで経ってもよくならないということを実証する研究が、アメリカのシンシナティ大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科のAhmadSedaghat氏らによって発表されました。この研究では、鼻にアレルギー症状が生じている219人(平均年齢44.3歳、女性63.9%)の患者を対象に、CRSとアレルギー性鼻炎の症状を同時に評価するために、経鼻内視鏡検査と、Sino-NasalOutcomeTest(SNOT-22)と呼ばれる質問票による副鼻腔および鼻の症状の重症度と種類の評価を行なったところ、これらの患者のうちの91.3%(200人)でアレルギー性鼻炎の診断が確定されましたが...アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎か?それが問題だ!

  • リフィーディング症候群(refeeding syndrome)と兵糧攻め

    以前、このブログで「リフィーディング症候群」について解説し、その典型例として、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例を紹介しました。このケースは、これまで国内の医学界では、同症候群の疑い事例として有名ではあったものの、関連する医学論文は発表されておらず、あくまで逸話以上のものではないものとして扱われてきたようです。そこで今回、鹿野泰寛医師(東京都立多摩総合医療センター)、青山彩香医師(JA茨城厚生連総合病院水戸協同病院)、山本隆一朗学芸員(鳥取県立博物館・中世担当)の3氏が、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例(「鳥取の渇え殺し」)に関し、2年がかりで史料を集め、とくに『信長公記』と『豊鑑』の記述(以前のブログもご参照ください)を医学的見地から精査しました。その結果、この大量死に関し、粥そのものには問題はなかったことを確認...リフィーディング症候群(refeedingsyndrome)と兵糧攻め

  • 関東大震災の朝鮮人虐殺裏付ける政府の新文書発見(陸軍機関作成)

    つい先ほどの毎日新聞の速報によれば、私の知り合いで、かつて90年代末に、私の論文を朝日新聞紙上に紹介してくれたこともあるジャーナリスト・渡辺延志さんが、このたび非常に重大な発見をされたとのことです。それは、防衛省防衛研究所戦史研究センター史料室が所蔵する、埼玉県西部の5郡を管轄する熊谷連隊区司令部が作成した報告書「関東地方震災関係業務詳報」で、関東大震災(大正12年9月1日)直後の11月に、当時の陸軍省が朝鮮人集団虐殺について行なった実態調査の一部資料です。震災直後に、政府は違法な虐殺の事実を認識し、広範な調査を実施していたわけで、今年8月に岸田内閣の松野博一官房長官(当時)が、記者会見で朝鮮人集団虐殺事件への見解を問われた際に、「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない」と述べたことを明確に裏切る...関東大震災の朝鮮人虐殺裏付ける政府の新文書発見(陸軍機関作成)

  • かぼちゃのつる

    小学校1年生が、この国ではじめに学ぶ「道徳」はこれだ!一年生のどうとく教科書(光村図書)「かぼちゃのつる」おひさまが、まぶしいあさです。かぼちゃばたけのかぼちゃのつるは、ぐんぐんぐんぐんはたけのそとへのびていきました。「かぼちゃさん、かぼちゃさん。」みつばちがとんできて、こえをかけました。「そっちへのびてはだめですよ。そこはみんながとおるみちですよ。」「そんなことかまうものか。」かぼちゃはそういって、ききません。「かぼちゃさん、かぼちゃさん。」こんどはちょうちょがとんできて、いいました。「あなたのはたけは、まだまだすいていますよ。そちらへのびたほうがいいですよ。」「いやだい。ぼく、こっちへのびたいんだい。」かぼちゃのつるはみちをこえて、すいかばたけにのびていきました。「かぼちゃさん、かぼちゃさん。」すいか...かぼちゃのつる

  • 猛暑と心臓の過剰活性化

    熱波がしばしば脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を引き起こしやすいことは専門家の間でも知られてきましたが、ペンシルベニア大学医学部のSameedKhatana氏らの研究によると、これは心臓や血管(心血管系)が体温調節で中心的な役割を果たしているためであり、身体がオーバーヒートすると、発汗によって放熱するために、心臓はより激しく働いて血液を身体の末梢まで行き渡らせようとするからなのです。とくにリスク因子を持つ脆弱な人では、それが過剰な負荷となって、心血管疾患を引き起こしやすくなります。ところが今日、夏に猛暑日が続くのが当たり前のようになりつつあり、しかも猛暑日は今後ますます増えることが予測されています。こうした暑熱に関連した心血管疾患による死者は、今後いっそう劇的に増加することにならないでしょうか。そこでKh...猛暑と心臓の過剰活性化

  • コロナ後遺症、セロトニン、迷走神経

    倦怠感、疲労、ブレインフォグ(認知障害、記憶欠損)、頭痛、忍耐の欠如、睡眠障害、不安など、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の後遺症(longCOVID)が、トリプトファンの吸収低下によるセロトニン欠乏による可能性があることを裏付ける研究成果が発表されました。神経伝達物質の1つであるセロトニンは、体内でその90%が腸に存在することが早くから明らかになっていますが、腸に長く居座る新型コロナウイルスがトリプトファン吸収を抑制するため、トリプトファンを原料とするセロトニンの生成が減り、これがコロナ後遺症を引き起こす一因になっているようです。新型コロナウイルスが腸に長く居座るということは、糞便のウイルスRNA解析で明らかになりました。それによると、コロナ後遺症を生じる患者の糞中からは、そうでない患...コロナ後遺症、セロトニン、迷走神経

  • オンライン対話とリアル対話の脳活動のちがい

    このブログでも昨年2月に、「オンライン会話はつながりといえるのか?」として、川嶋隆太氏の研究を紹介しましたが、Zoomでの対話とリアル対面での会話は、脳にとっては同じものではないことを明らかにする研究が、つい先ごろ10月25日に、また1つ発表されました。イエール大学精神医学、比較医学、神経科学分野教授のJoyHirschらの、fNIRS(機能的近赤外分光法)など高度なイメージングツールを使った新たな研究によると、Zoomでの対話よりも、リアル対面での会話の方が、脳の社会的な活動に関わる神経回路や領域が活発化するとのことです。この研究グループは、オンラインZoomとリアル対面という、2つの異なる条件下で会話をしている2人の、fNIRSによる脳画像検査、脳波(EEG)測定、アイ・トラッキング、瞳孔測定を行ない...オンライン対話とリアル対話の脳活動のちがい

  • ポリヴェーガル新刊 ポージェス父子で!

    先月、スティーブン・ポージェスがポリヴェーガルの新刊を、御子息のセス・ポージェス氏と共著で刊行されました。→こちらセス・ポージェス氏は研究者ではなく、アメリカの映画監督、プロデューサー、ジャーナリスト、テレビコメンテーターです。→こちらにほんブログ村にほんブログ村医学ランキング心理学ランキング心理療法ランキングポリヴェーガル新刊ポージェス父子で!

  • イヌは新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分けられる!

    カリフォルニア大学サンタバーバラ校地理学名誉教授のTommyDickey氏とBioScent社のHeatherJunqueira氏は、2019年12月から2023年4月の間に相次いで発表された、新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分ける訓練を受けたイヌについて発表された29本の査読済み論文を体系的に収集して――合計すると、32カ国の400人以上の科学者が、147頭のイヌの嗅覚による新型コロナウイルスの検出能力を、3万1000点以上の匂いのサンプルや直接人間の匂い嗅ぎで検討していたことになります――、その有用性や安全性、実用性に関する評価を行なったところ、イヌの嗅覚を用いた新型コロナウイルス検査の感度は、何と、92.3%の論文で80%を超えており、32.0%の論文では特異度が97%を超え、84.0%の研究で特異度...イヌは新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分けられる!

  • 「ブルシット・ジョブ」のエビデンス!(笑)

    今日、世界中で、自分の仕事が社会的に無意味だと考えている人が非常に多いことは、すでにいくつもの研究で報告されています。それはまさに、惜しくも3年前に59歳の若さで亡くなってしまったアメリカのアナーキスト人類学者デイビッド・グレーバーのいう「ブルシット・ジョブ」(bullsitjobs)、つまり“クソどうでもいい仕事”の現代世界における蔓延の表われにほかなりません。グレーバーは「ブルシット・ジョブ」を、被雇用者自身もその存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態と定義していますが、それが今日の社会的な仕事の半分以上を占めるというのです[Graeber2018=2020]。なぜここまでそんな不要な仕事が増殖するようになったのでしょうか?それは端的に言って、1980年代以降...「ブルシット・ジョブ」のエビデンス!(笑)

  • ポリヴェーガル理論はノーベル賞候補か?

    スティーブン・ポージェスがポリヴェーガル理論に則って作成したSSP(SafeandSoundProtocol)を請け負うUNYTEのホームページに7月4日に投稿された、レベッカ・ノウルズという人の論考によると、ポリヴェーガル理論の提唱者スティーブン・ポージェスは、最近、Research.comが発表した「最優秀心理学者」(BestPsychologyScientists)の655位にランクされ、心理学の分野で高く評価されました。これは36052件という驚異的な被引用数と237の出版物によって証明されたもので、ポージェスが心理学だけを専門としない科学者であることをよく物語っています。そんな分野横断的な彼の研究の影響力を示す一端として、1997年の『Psychophysiology』誌に掲載された彼の論文「心...ポリヴェーガル理論はノーベル賞候補か?

  • 4万6000年の仮死状態の眠りから覚めて繁殖をくり返す線虫

    シベリア北東のコリマ川の永久凍土で、4万6千年間にわたり「クリプトビオシス」(cryptobiosis)と呼ばれる仮死状態で過ごしたとみられる線虫が、発見時には全く代謝が検出できない状態だったのが、シャーレのうえで動き出し、みごとに復活したことをドイツやロシアなどの研究チームが発表したとの驚くべきニュースが報じられました。動き出した線虫は単為生殖で増えるため、次々に繁殖をくり返して、100世代以上もの繁殖に成功し、数千匹に増えたとのこと。DNAの解析から新種であることも判明し、「パナグロライムス・コリマエンシス」(Panagrolaimuskolymaensis)と名づけられたとのことです。もちろん、水や酸素がなかったり、極端な温度にさらされたりする厳しい環境になると、長期間にわたり仮死状態になって耐える...4万6000年の仮死状態の眠りから覚めて繁殖をくり返す線虫

  • 訃報

    立岩真也さんが7月31日午後、悪性リンパ腫のため京都市左京区の病院で死去したとのこと。大変驚き、かつショックを受けました。ご冥福をお祈りします。訃報

  • 自慰行為には進化上の利点があるらしい!

    動物界で自慰行為を認めることは、決して珍しいことではありません。しかし、自慰行為は、単に自分だけの快楽のための行為と見なされ、さらには病的な行為だったり、あるいはせいぜい高い性的興奮の副産物にすぎないものと見なされがちでした。ところが実際には、進化上重要な役割を果たしている可能性があるらしいことがわかってきました。というのも、ヒトを含む霊長類の自慰行為は、少なくともオスにとっては、生殖の成功率を高めるとともに、性感染症(STI)への罹患リスクを低減させる効果があるらしいことが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMatildaBrindle氏らの研究で示唆されたからです。この研究結果は、「ProceedingsoftheRoyalSocietyB:Biologicalsciences」誌の6月...自慰行為には進化上の利点があるらしい!

  • 排便習慣と認知症リスクの関連

    国立がん研究センター中央病院の清水容子氏らが、中年期以降の排便習慣と認知症の関連について解析した結果、男女とも少ない排便回数および硬い便が高い認知症リスクと関連することが示されたそうです。PublicHealth誌オンライン版の2023年6月29日号に掲載されました。介護保険の認定記録を用いたコホート研究で、JPHC研究における8地区で排便習慣を報告した50~79歳の参加者を対象に、2006~16年の認知症の発症について調査し、生活習慣因子や病歴を考慮したCox比例ハザードモデルを用いて、男女別にハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定したものです。その主な結果は以下のようです。・男性1万9,396人中1,889人、女性2万2,859人中2,685人が認知症と診断された。・排便回数について、1回/...排便習慣と認知症リスクの関連

  • 最新論文(2023.06.30)

    このたび、私の最新論文2本が、相次いで公表されました。1つは、6/28発売の『わが国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』に収められた、「こころに安全を育むこと/からだに安全を育むこと」という論文で、ポリヴェーガル理論が心理療法にも身体療法にも共通のプラットフォームとなりうる基本的な論点をまとめた小文です。もう1つは、6/30に発表された、オンライン雑誌『<身>の医療』第7号に収められた、「コロナ禍・トラウマの時代・ポリヴェーガル理論」という論文で、内外でも初かもしれない、ポリヴェーガル理論の社会心理学的な考察です。オンライン雑誌なので、誰でも自由にWeb上で読むことができます。→こちら興味ある方は、目を通して下さるとうれしいです。最新論文(2023.06.30)

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(9) ~モラルインジャリーとPTSD~

    MI(モラルインジャリー)は、前回みたように、トラウマといっても道徳的なトラウマなので、PTSDのような恐怖に対する反応というよりは、罪悪感や恥、怒り、無力感、無意味感、裏切り/裏切られ感、自分自身や他者を人として許せないという痛切な感覚、そして宗教的信仰の喪失といった反応となります[Koenigetals.2018;Koenig&AlZaben2021;Svodoba2022=2023]。MI(モラルインジャリー)は、重度のトラウマのもとでしばしば発生しますが、PTSDとは区別しなければなりません[Litzetals.2009;Brock&Letitini2012;Shay2014;Koenig&AlZaben2021,p.2994]。つまりMIは、PTSDとは別の症候群とみなされますが、しかしいくつか...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(9)~モラルインジャリーとPTSD~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(8) ~道徳的トラウマとしての「モラルインジャリー」~

    すなわち「モラルインジャリー」は、良心に大きく反する状況や、自身の中核となる道徳的な価値観を脅かす非倫理的な状況に直面したときに生じる特別なトラウマ[Svodoba2022=2023,p.58]、いわば「道徳的トラウマ」[Ibid.,p.59]なのです。トラウマといっても道徳的なトラウマなので、PTSDのような恐怖に対する反応というよりは、罪悪感や恥、怒り、無力感、無意味感、裏切り/裏切られ感、自分自身や他者を人として許せないという痛切な感覚、そして宗教的信仰の喪失といった反応であり[Koenigetals.2018;Koenig&AlZaben2021;Svodoba2022=2023]、自傷や自殺念慮、自殺企図も少なくありません[Bryanetals.2014;Amesetals.2019]。しかし、...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(8)~道徳的トラウマとしての「モラルインジャリー」~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(7) ~「モラルインジャリー」の定義~

    MI(モラルインジャリー)は、リッツらの2009年の定義では、「正邪や個人の善についての仮定と信念を毀損するため、不協和音と抗争を生み出す違反(transgression)行為」から結果するものとされました[Litzetals.2009;Koenig&AlZaben2021,p.2990]。道徳的信念や道徳的価値の違反(transgression)がなされたり、観察されたり、学習されたりしたときに発症するというのです[Litzetals.2009;Koenig&AlZaben2021,p.2995]。ブロックとレティティーニの2012年の定義では、「恥、悲嘆、無意味感、そして中核的な道徳的信念(coremoralbeliefs)を毀損したことによる後悔の感情などを含む違反(transgression)感」...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(7)~「モラルインジャリー」の定義~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(6) ~「道徳的負傷:モラルインジャリー」概念の登場~

    さて、これからは、今度はMI(道徳的負傷:モラルインジャリー)の方に話題を移しましょう。前回まで見てきた「(軽度)外傷性脳損傷」((m)TBI)がそうであったように、「モラルインジャリー」(MI)もまた、はじめは戦争(戦場での非倫理的な行動)から注目されるようになったものです:ベトナム、そしてイラクやアフガニスタンでの従軍兵士が、戦地での民間人殺害など自分(や仲間、上官)が犯した行為に、帰還後に苦しむ多くの事例があることから研究が進んできたのでした[Shay1994;Litzetals.2009:Svodoba2022=2023]。その先駆けは、1970年代、ボストン在郷軍人局病院でソーシャルワーカーとしてベトナム帰還兵の心理治療に専従していたセラ・ヘイリーの発見で[Haley1974]、それは兵士が“殺...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(6)~「道徳的負傷:モラルインジャリー」概念の登場~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(5) ~「びまん性軸索損傷」~

    これら(m)TBIの脳実質の器質的な損傷は、多くが回転外力や加速度による深部の微細な損傷である「びまん性軸索損傷」(diffuseaxonalinjury:DAI)[Gennarelli1984]に分類されるもので[Gennarelli&Graham1998]、外傷後のCTで明らかな異常を認めないにもかかわらず、意識障害の遷延がある状態として鑑別され、重度から最軽度まで量的に連続するスペクトラムをなします。そしてDAIの最も軽度の段階が、後述のゼネレリの分類によると、mTBIなのです[Gennarelli&Graham1998;山口2020,pp.60-1]。この「びまん性脳損傷」と「局所性脳損傷」(脳挫傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳内血腫)とを合わせたものが「外傷性脳損傷」にあたります[原・富田...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(5)~「びまん性軸索損傷」~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(4) ~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)とPTSD~

    「むち打ち」という損傷が、脳画像上の異常所見を見い出しにくいために、現在の医療の現場ではあまりにも軽視されすぎていることを前回みましたが、実はmTBIもこの点では全く同様なのです。mTBIの神経線維断裂は、CTやMRIが捉えにくい深部(脳梁や大脳辺縁系)に[山口2020,pp.15,23-4,61,71-2]、CTやMRIでは異常所見が見られないミクロな(顕微鏡的)レベルで[山口2020,pp.12,61]、あるいは不可視の代謝性(生化学的)変化にとどまって[山口2020,p.70]生じますこのため、往々にして画像診断上「異常なし」とされ、高次脳機能障害の診断基準に必須の「脳の器質的病変」は存在しないとされるので、自賠責保険の認定上でも多くは「非該当」とされてしまいます(自賠責保険で高次脳機能障害があると...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(4)~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)とPTSD~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(3) ~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)と「むち打ち」~

    しかしTBIは、戦場ならずとも、平時でも交通事故等において、決して珍しくありません。その場合、圧倒的に多いのは「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)です。mTBIは2003年のアメリカCDCセンターによる疫学的調査によると、年間150万人のTBIのうち70~90%(75%)を占め、多くは受傷後3カ月以内に症状が回復するけれども、10~20%は慢性化し、毎年10万人以上が遷延する症状に苦しみ、毎年この傾向は続いているため(しかも診断されたのは実数よりはるかに低いと、1998年にNIHは警告しています)、「公衆衛生上の問題」とされています[石橋2009,pp.14-5;山口2020,pp.11,86]。アメリカでは1996年、「外傷性脳損傷法」(TheTraumaticBrainInjuryACT)という法律も議会...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(3)~「軽度外傷性脳損傷」(mTBI)と「むち打ち」~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(2) ~「シェル・ショック」から「外傷性脳損傷」へ~

    「外傷性脳損傷」(TBI)は、特にアフガン・イラク戦争以来の爆風等により多発して問題化されるようになったもので[Alexander2015,p.85]、アフガン・イラク戦争の戦地において、爆風を受けただけで、頭部に直接の外的損傷がないために、「異常なし」との診断を受けていた兵士が、帰還後に高次脳機能障害を生じたという例が2万2000人にも及び、詳しい検査の結果、(超音速の)爆風による衝撃波が血管を振動させながら急激に脳に達して神経細胞を破壊したためと判明したことから注目されるようになりました[毎日新聞2009.2.17-21]。次いで2007年7月には、帰還兵の団体が退役軍人省を相手取り、PTSDとともにTBIの適切な障害認定を求めてカリフォルニア州連邦地裁に提訴、同省は改善の必要性を認めて、TBIと認定...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(2)~「シェル・ショック」から「外傷性脳損傷」へ~

  • PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(1)

    トラウマといえばPTSDがすぐ引き合いに出されますが、トラウマに直接関わる疾患は、決してPTSDだけではありません。PTSDが生じるようなトラウマ受傷の際に、PTSDと併発しやすく、PTSDと似た症状も起こしながら、しかしPTSDとは異なる重要な疾患として、TBI(TraumaticBrainInjury:外傷性脳損傷)とくにmTBI(mildTraumaticBrainInjury:軽度外傷性脳損傷)と、MI(MoralInjury:道徳的負傷(モラルインジャリー))の2つの損傷(Injury)を、忘れるわけにはいきません。(m)TBIは物理的かつ心的なトラウマ性損傷であり、MIは心的かつ道徳的なトラウマ性損傷です。どちらもPTSDとはちがう疾患ですが、PTSDとよく似た症状を生じ、またそれ自体がPTS...PTSDと(m)TBI((軽度)外傷性脳損傷)、MI(道徳的負傷:モラルインジャリー)(1)

  • 精神科病院の虐待・人権侵害を断ち切るために

    認定NPO法人大阪精神医療人権センターから、厚生労働省、内閣府、法務省、東京都、関係自治体、衆議院、参議院、国会議員、政党、関係地方議会、精神保健医療福祉関係団体、法律家団体、人権関係団体に向けて、意見書「精神科病院の虐待・人権侵害を断ち切るために」が出されました。→https://www.psy-jinken-osaka.org/archives/saishin/13443/精神科病院の虐待・人権侵害を断ち切るために

  • ニューロダイバーシティによる自閉症治療の変化

    『日経サイエンス』の4月号に、サイエンスライターのクラウディア・ウォリスが、自閉症治療の現場も、ニューロダイバーシティ運動を受けて、変化の波が生じていることをレポートしています[Wallis2022=2022,p.6]。これまで自閉症治療は、自閉症の症状をなくし、定型的な行動に合わせて、自閉症らしく見えないようにすることを強いるのを「至適アウトカム」としてきたわけですが、今や自閉症の症状はむしろ尊重し、どう扱うかは患者本人と家族とが自らの幸福に寄与するよう自身で決定すべきことへと変わりつつあるということです。デューク大学の自閉症・脳発達センター所長G・ドーソンは、ある10代の患者が「アイコンタクトを保つ練習なんかもうしたくない」と訴えてきたけれど、それで構わないのだと明言しています;また同様に、「体を前後...ニューロダイバーシティによる自閉症治療の変化

  • 守ってやるぞ詐欺

    4月30日の東京新聞に、法政大学前総長の田中優子氏が、以下のような文章を寄せています。『日本は本当に戦争に備えるのですか?』という、まさに「今」の問題を複数の人たちで論じた本が出された。その中で政治思想史が専門の岡野八代さんが、チャールズ・ティリーの著書の一部を紹介している。そこには「プロテクションラケット(protectionket)」という言葉が出てくる。racketは恐喝、ゆすりなどの意味があるので「守りの恐喝」となる。ヤクザの世界の、あの「みかじめ料」のことも指しているという。岡野さんはそれを「守ってやるぞ詐欺」と訳した。つまりは「自分で脅威を作り出し、その脅威を減じてやるから金を出せ」という態度のことだ。例えば政府が市民を守ろうとしている脅威が架空のものであったり、実際には政府の活動が引き起こし...守ってやるぞ詐欺

  • 笑いヨガによる血糖値低下の意味

    笑いは、ストレス軽減、NK細胞の活性化、アレルギー反応抑制などとともに、食後血糖値の上昇抑制の効果をもつことが報告されていますが、福島県立医科大学の広崎真弓氏らは、笑いそのものでなく作り笑いに、深呼吸、手拍子、掛け声を組み合わせた「笑いヨガ」で、2型糖尿病患者の血糖コントロールが改善されることを、3月31日号のFrontiersinEndocrinology誌に報告しました。「笑いヨガ」とは、グループのなかで、作り笑いや深呼吸、手拍子や掛け声を行なうことで、冗談やユーモアに頼らずに笑いの効果を体操として行なおうとするエクササイズです。この研究では、大阪大学医学部附属病院糖尿病センターに受診する2型糖尿病患者42例を介入群と対照群に無作為に割り付け、介入群には笑いヨガのプログラムを12週間実施しました。開始...笑いヨガによる血糖値低下の意味

  • ポリクライシスの時代

    2023年1月16-20日、世界経済フォーラム(ダボス会議)がスイスで開かれ、世界各国から政府高官や企業経営者らが参集しました。今回のテーマは、「分断された世界での協力」でしたが、そうした中で大きな焦点を当てられたのが「ポリクライシス(polycrisis)」という新たな概念だったと報じられています。1月の年次総会前の1月11日に公表した『グローバルリスク報告書2023年版』(GlobalRisksReport2023)[WorldEconomicForum2023]でも、この言葉が1つの重要なキーワードをなしています。「ポリクライシス(polycrisis)」とは、もともとフランスの社会学者エドガール・モラン(と共著者のアンヌ・ブリジット・カーン)が、21世紀を迎えるにあたって、1999年の著書『母国と...ポリクライシスの時代

  • オキシトシンは本当に「愛のホルモン」か?

    “愛のホルモン”(lovehormone)とも呼ばれるオキシトシンは、これまで考えられてきたほど社会的絆の形成に必要不可欠なものではない可能性が出てきました。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)・ワイル神経科学研究所のDevanandManoliらのグループは、オキシトシンが社会的絆をもたらすことを示すのに大きな役割を果たしてきたプレーリーハタネズミを対象に、遺伝子編集技術を用いてオキシトシン受容体遺伝子の欠損した個体を作製し、その個体が他の個体との関係を維持できるかを観察したところ、意外にも正常な個体と同じようにつがいを形成できることを確認したのでした。そしてプレーリーハタネズミの、齧歯類としては珍しく、一夫一妻的なペア関係を強固に支え、パートナーと密接に過ごして他の異性を拒絶したり、父母で...オキシトシンは本当に「愛のホルモン」か?

  • ChatGPT、ポリヴェーガル理論の限界を語る!

    私が日ごろ懇意にし、よくdiscussionをしているある精神科医が、最近もりあがってるChatGPTで、「ポリヴェーガル理論の限界を教えて」と質問してみたそうです。すると、以下の答えが返ってきたそうです。「スティーブン・ポージェス博士によって開発されたポリベーガル理論は、感情、行動、社会的関与の生理学的基盤を理解する上で影響力があります。ただし、この理論にはいくつかの制限があります。以下はその例です。1複雑性:理論は複雑であり、実践的に理解することが難しいことがあります。神経、生理、行動など、複数の分析レベルが含まれます。2実証的根拠の欠如:ポリベーガル理論を支持する実証的根拠がある一方で、一部の研究ではその主要な仮定の一部を支持する結果が得られなかったりすることがあります。理論の妥当性を確認するために...ChatGPT、ポリヴェーガル理論の限界を語る!

  • こころの病と認知症

    2022年にニュージーランドで、1928~1967年に生まれた170万人について、2018年半ばまでの30年間にわたる健康記録を調べたところ、ある種の精神疾患(不安障害やうつ病、双極性障害)を診断されたことのある人は、診断されたことのない人に比べて、最終的に認知症を発症する率が約4倍(統合失調症などの精神病では6倍)にもなること、逆に認知症になった人のなかで、精神疾患のある人は、認知症発症が5-6年早いことがわかったそうです[Richmond-Rakeretals.2022;Wallis2022]。精神科治療薬の長期服用が関連している可能性もおそらく考えないといけませんが、まずそれ以前に、両者の遺伝的な危険因子の共有の可能性が強くあるとみられ、現にアルツハイマー病に関連する遺伝子マーカーと、双極性障害・大...こころの病と認知症

  • 魚類のあくび

    北海道大学がきのう18日に発表したところでは、同大学院水産科学院博士後期課程3年の山田寛之氏(27歳)と同大学院水産科学研究院の和田哲教授が、北海道に生息するイワナの稚魚が頻繁にあくびをすることを発見し、稚魚のあくびが、着底行動から遊泳行動への行動変化が起こる直前に集中していることを明らかにしました。すでに10日にオンライン上のJournalofEthology誌に発表されています*。あくびは、内温動物(恒温動物)では、行動変化しようとするその直前に起こることが従来から知られています。また近年の研究から、あくびの持つ生理学的な覚醒作用(血流促進効果や脳の冷却機能など)が確認され、これは「状態変化仮説」(state-changehypothesis)と呼ばれますが、これによって生じる生理的覚醒度の高まりが動...魚類のあくび

  • クモも夢を見る⁉

    ドイツ・コンスタンツ大学の生態学者ダニエラ・レスラー(DanielaRößler)氏は、アマゾンの奥地でフィールドワークを行なう研究者とのことですが、コロナ禍でフィールドワークに行けず、仕方なく自宅近くの草むらをかき分けていたところ、そこにうごめく小さなハエトリグモ(Evarchaarcuata)にたちまち魅了されてしまったそうです。なかでもある個体が、夜休むとき、1本の糸の先に逆さにぶら下がり、足をくるっと丸めてじっとしている最中、時折周期的にピクッと体を震わせるのを見つけました。それはまるで、イヌやネコが夢を見ているときに見せる動きによく似ていました。そこで研究室に頭部がまだ透明な生後10日の幼体のクモの寝床を作り、拡大鏡を装着した暗視カメラで本格的に観察してみると、レム睡眠中のヒトと同様、「網膜管」...クモも夢を見る⁉

  • スマホ認知症

    ニッポン放送NEWSONLINE/2022年12月21日11時20分より転載。医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が12月14日、ニッポン放送「モーニングライフアップ今日の早起きドクター」に出演し、「スマホ認知症」について解説したとのこと。スマホユーザーの6割が物忘れに悩まされている~30代にも忍び寄るスマホ認知症飯田浩司アナウンサー)今回はスマホによる認知症についてですが。森田)「スマホ認知症」という言葉が巷で有名になってきていまして、30代にも忍び寄るとされています。新行市佳アナウンサー)30代にも、ですか?森田)スマホユーザーの約6割が「物忘れなどが深刻になった」と回答しているデータもあるようです。将来、アミロイドβ(ベータ)という老化物質がたまりやすくなって、「本当の認知症に発展しやすいのではないか...スマホ認知症

  • パンデミック下での職場いじめと精神的苦痛や希死念慮の実態

    職場のハラスメントについて研究してきた神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科の津野香奈美氏らが、コロナパンデミック下での職場いじめ(workplacebullying)と労働者のメンタルヘルスの実態に関する調査を行なった結果を、「BMJOpen」誌の11月2日号に発表しました。分析の対象とされたのは、2020年8~9月にCOVID-19パンデミックの住民の生活・健康・社会・経済活動への影響の実態を把握するために全国にオンラインで実施された大規模調査「JACSIS(JapanCOVID-19andSocietyInternetSurvey)研究」のデータで、有職者16,384人です。このうち26.5%の人は在宅勤務を行っており、パンデミックに伴なって開始したのが8.4%、パンデミック前から行...パンデミック下での職場いじめと精神的苦痛や希死念慮の実態

  • コロナ増悪を抑制する漢方薬処方

    軽症および中等症Iの新型コロナウイルス感染症の患者に対し、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を追加投与すると、発熱症状が早期に緩和し、呼吸不全への増悪リスクが低くなることが、東北大学ほかの研究グループによる多施設共同ランダム化比較試験で明らかになったそうです。<原著論文>Takayama,S.,2022Multicenter,randomizedcontrolledtrialoftraditionalJapanesemedicine,kakkontowithshosaikotokakikyosekko,formildandmoderatecoronavirusdiseasepatients,inFrontiersinpharmacology,vol.13;1008946.pii:1008946.にほんブログ村医学...コロナ増悪を抑制する漢方薬処方

  • 猫と人の社会的関わり

    人の声を介した、猫と人の社会的関わり、社会的な絆がたしかに存在することを初めて科学的に確認する研究が、フランスのナンテール大学のシャルロット・ド・ムーゾン(CharlottedeMouzon)氏らにより発表されました。そこで明らかにされたのは、猫は飼い主の声を認識しており、飼い主の声とそうでない知らない人の声を識別していること。つまり飼い主の声には反応し、そうでない知らない人の声には反応しないこと。また、飼い主が自分に話しかけているかどうかを理解しており、自分に話しかけているときには反応し、他の人に話しかけている時は反応しないこと。そして、飼い主でない人の声を聞くときには、その人が自分に話しかけているときも、他の人に話しかけている時も、反応しないこと。ここで「反応」というのは、声の方向への耳の動き、尻尾の...猫と人の社会的関わり

  • アプリ結婚の時代

    明治安田生命保険が11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで先日行なったアンケート調査で、今年結婚した夫婦の出会いのきっかけは、「マッチングアプリ」が22.6%と、「職場の同僚や先輩・後輩」(20.8%)、「学校の同級生や先輩・後輩」(20.8%)を抜いてトップに躍り出たそうです。「マッチングアプリ」をきっかけとする結婚は、2009年以前に結婚した人では0%、2010~14年で2.4%、2015~19年で6.6%、そして2020~22年には一気に18.8%と激増し、そのなかでも、(2019年は12.2%)、2020年は17.9%、2021年は16.9%に対し、2022年は22.6%と着実に増加してきたのがわかります。この背景にはもちろん、2010年代以降のスマホの爆発的な普及があることは言うまでもありません...アプリ結婚の時代

  • アトピー性皮膚炎と神経発達障害の関連

    2歳以前にアトピー性皮膚炎を発症した子供は、6歳時の乳幼児発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが、韓国・翰林大学校のJuHeeKim氏らの研究により、報告されています。こうした研究はこれまでほとんどなかったとみられますが、AllergologyInternational誌オンライン版2022年9月1日号に掲載されています。韓国国民健康保険制度のデータベースにより、2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児のうち、生後24ヵ月までにアトピー性皮膚炎の5つ以上の診断を受けた小児を対象に、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域をみると、アトピー性皮膚炎群は、対照群に比べ、総スコア(加重調整オッズ比:1...アトピー性皮膚炎と神経発達障害の関連

  • 幼児期虐待と心不全

    子どもの頃に受けたトラウマが、後年の心不全リスクを高める可能性のあることが明らかにされました。とくに身体的虐待によるトラウマの場合に、それは顕著のようです。10月5日、「JournaloftheAmericanHeartAssociation」に掲載された、イギリスのLiang,Y.Y.らによる研究です。子ども時代のトラウマは、これまでの研究では、成人後の心血管疾患やその他の健康リスクとの関連は報告されてきました。しかし心不全との関連は、ほとんど研究されてきませんでした。今回の研究では、英国の成人15万3,287人を対象に、小児期の被虐体験の有無や心不全の遺伝的素因と、心不全リスクとの関連が検討されました。約12年間の追跡で、2,352人が心不全を発症。小児期の身体的虐待、情緒的虐待、性的虐待、ネグレクト...幼児期虐待と心不全

  • インボイス制度に絶対反対します!

    STOP!インボイスより転載インボイス制度は、「税率変更を伴わない消費税の増税」です。税の実務家である税理士すら導入に難色を示し、ほぼすべての事業者に影響するにもかかわらず、当事者すら制度を知らないまま、来年10月のスタートが強行されつつあります。インボイス制度は、誰が増税分を負担するか、法律で決まっていません。小さな事業者に課すか、彼らと取引する会社に負ってもらうか、またはモノやサービスの値段を上げて消費者に負担してもらうか。3者で増税分を押し付け合わせる、弱肉強食の苛烈な税制です。弱いものに負担を押し付け、それに耐えられない小さな商売をする者はいなくなっても構わない。私がインボイス制度を理解したとき、きゅうり1本何十円を積み重ねて自分を育ててくれた父と母の顔が浮かび、号泣しました(私の実家は小さな八百...インボイス制度に絶対反対します!

  • イヌは人間のストレスを嗅ぎ分ける

    イヌが鋭い嗅覚があることは、私たちもみんなよく知っていますよね。実際、科学的な実験においても、隠された爆弾のにおいを検知して知らせることができたり、血糖値の変動など人間の体内の変化をにおいだけから検知できたり、がんやパーキンソン病、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)といった病気の存在を嗅ぎ分ける能力もあることが、これまですでに知られてきています。ところが今回、人間が吐いた息や汗に含まれるストレスのにおいまで、イヌは嗅ぎ分けられることが明らかにされました。物理的・生理的な状態だけでなく、心理的な状態までもが、嗅ぎ分けられるのです。イギリスのクイーンズ大学ベルファストのウィルソンらによる研究で、つい最近、「PLOSONE」誌の9月28日号に発表されています。この研究では、まず参加者36人に、ストレス...イヌは人間のストレスを嗅ぎ分ける

  • ヨーガは宗教か哲学か科学か?

    今日、著名なヨーガ指導者のchamaさんとお話をしていて、ヨーガは宗教か?哲学か?科学か?という話題になりました。ヨーガは宗教でしょうか?バラモン教から仏教、ヒンズー教などさまざまな宗教がヨーガと密接な関係を持ってきましたが、しかしどの宗教にもヨーガを還元することはできず、ヨーガはどの宗教のものでもありません。それどころか最近の研究では、ヨーガはドラヴィダ族など古代インド先住民の身体技法(健康法)に由来し、それを外来のアーリア人たちが後から自分たちの所産として編纂したものとみる説が近年では強まって来ています。ではヨーガは哲学でしょうか?ヨーガはヴェーダーンタ哲学からタントリズムに至るさまざまなインド古代哲学と密接な関係を持ってきましたが、しかしどの哲学思想にもヨーガを還元することはできません。ヨーガを哲学...ヨーガは宗教か哲学か科学か?

  • 鼻うがいのエビデンス(続)

    新型コロナウイルスの陽性判定後であっても、1日2回の鼻洗浄によって入院や死亡のリスクが低減することがまた報告されました。Ear,Nose&Throat誌オンライン版2022年8月25日掲載の、AmyLBaxter氏らによる報告です。それによると、新型コロナウイルスはACE2受容体に結合して細胞内に侵入することが知られていますが、ACE2受容体にまだ結合していないウイルスを洗い流すことで、重症化を防ぐことができる可能性があるとのことです。解析対象となったのは、2020年9月24日~12月21日に実施された新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、24時間以内に登録された55歳以上のハイリスク患者79例。平均年齢64±8歳、女性が36例(46%)、非ヒスパニック系白人が71%、平均BMIが30.3でした。参...鼻うがいのエビデンス(続)

  • オキシトシンと交感神経

    オキシトシンの働きは、ポリヴェーガル理論等だけから知る人にはかなり意外なことかもしれませんが、オキシトシンはポリヴェーガルでいう腹側迷走神経複合体だけでなく、むしろその対極ともみられる交感神経系を賦活するのにも不可欠な役割を果たすものです。現に、視床下部の室傍核で産生された脳内のオキシトシンには、エネルギー消費量を上げ、体温を上昇させ、心拍数を上げる作用もあることがこれまでの研究で知られています。このたびその作用を引き起こす神経ルートが、名古屋大学の中村和弘教授らの研究グループによって確定されました。彼らが室傍核から出力するオキシトシン・ニューロンの軸索の行先を丹念に調べたところ、延髄の縫線核付近、すなわち「吻側延髄縫線核領域」(rostralmedullaryrapheregion:rMR)という部位に...オキシトシンと交感神経

  • 鼻うがいのエビデンス

    鼻うがいについては、その効果と、コロナ対策でのおすすめについて以前に書きました。→鼻うがいとポリヴェーガル理論興味深いことに、このところ、鼻うがいがコロナの重症化を防ぐ可能性についてのエビデンスが、以下のように、海外の権威ある雑誌に続々と発表されているようです。「鼻うがい」を英語では、"NasalIrrigationwithSalineSolution"というのですね。直訳すると、生理食塩水による鼻の洗浄といったところか。・TheeffectivenessofvariousgargleformulationsandsaltwateragainstSARS-CoV-2 ScientificReports(nature.com)・InhibitionofSevereAcuteRespiratorySyndro...鼻うがいのエビデンス

  • 動物とヒトの磁気感覚

    動物が磁気を感覚刺激として利用するためには、特殊な光受容タンパク質「クリプトクロム」と、「ISCA1」(Iron-SulfurClusterAssembly1)というタンパク質の結合が少なくとも必要であることがわかってきています。現にこの結合は、伝書鳩として用いられてきたカワラバトの体内でその仕組みが明らかにされ[Araietals.2022]、のみならず、磁気感覚をもつことが判明しているショウジョウバエやオオカバマダラ(渡りをする蝶)でも存在が見い出され、またやはり近年磁気感覚をもつことが指摘されるようになったクジラでも見い出されているそうです[出村2002,p.56]。そもそも「クリプトクロム」は、光受容タンパク質として青色光を受容し、概日リズムの形成に関わるとされるような、多くの動物種に不可欠のタン...動物とヒトの磁気感覚

  • 入眠時の半覚醒状態(ヒプナゴジア)と創造性

    入眠時の半覚醒状態、つまり入眠時に覚醒状態から睡眠状態に移行する半覚醒状態のことを、「ヒプナゴジア」(hypnagogia)といいます。これに先立って、19世紀後半のイギリスの文学者にして心霊研究の開拓者でもあったヘンリー・マイヤース(FrederickWilliamHenryMyers)は、起床時に睡眠状態から覚醒状態に移行する半覚醒状態を「ヒプノポンピア」(hypnopompia)と呼んでいましたが[Myers1903]、実はこの2つは対極のようでいてよく似ているので、「ヒプナゴジア」は広義には、入眠時と起床時の両方の半覚醒状態を指し、「ヒプノポンピア」を含めた意味としても使われるようです。実際、どちらの場合にも同じような精神現象、たとえば幻覚、明晰思考、明晰夢、金縛り(睡眠麻痺)などが生じるのです。...入眠時の半覚醒状態(ヒプナゴジア)と創造性

  • 近代日本社会と健康ブームの軌跡

    一昨日の6月25日、ホリスティック医学協会で、「近代日本社会と健康ブームの軌跡」についてお話させて頂きました。“健康ブーム”……それは近代日本において、単なるブームではない。それは当の社会の変動期の危機の表現であり、その超克の企図であり、その頓挫であり、頓挫することでの新たな社会の創出であり、危機の更なる深化であった。私たちの健康は一体どこへゆくのか?「健康」とは何だろうか?というのがその趣旨です。25年も前に私が書いた下記の論文をもとに、この25年間の動向も付け加えて、近代日本社会における健康ブームの実態を社会心理学的に分析し、「健康」の真の条件を模索したもので、おかげさまで好評をいただきました。当日視聴された方々からも、そうでない方々からも、お問い合わせがありましたので、とりあえず、下記の論文をお読み...近代日本社会と健康ブームの軌跡

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