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『虎の尾を踏む男達』(45)(1982.11.23.)この映画は、歌舞伎の「勧進帳」と能の「安宅」が基になっているという。それ故か、古色蒼然とした印象を受けるのは否めないし、弁慶役の大河内傳次郎のセリフなどは、録音状態の悪さやフィルムの古さを差し引いたとしても、かなり分かりづらい(まあ、彼独特のセリフ回しの難解さは毎度のことであり、それが彼の個性にもなっているのだが…)。それに、歌舞伎や能についての知識があるかないかで、この映画についての感慨は全く違うものになるだろうという気もする。というわけで、終戦間際に、限られたセットで、よくこれだけのものを撮ったなあと思う半面、やはり古い映画だと思わずにはいられなかった。ところが、たった一人の俳優の存在が、この映画を忘れ難いものにした。その名はエノケンこと榎本健一。...『虎の尾を踏む男達』