飯田木工所の赤木さん--15
「お前、仕事は上手くいってるのか」 兄の洋平があるときポツンと訊いた。まだ勤め始めたばかりで何があるか知れない。だからいきなりあれこれはなるべく言わぬようにしていたが、洋平には気になるようだった。それはそうだ。時間というのはブラブラしているとあっという間に過ぎる。低賃金でも稼ぎがあるかないかは大違いだった。数年たつとモロにそれが出て来る。 「まだなんとも言えん」 「仕事がきついのか」 「じゃなくて、ちょっとね、あまりに柄が悪すぎて…」 「チンピラが働いてるのか」 「じゃなくて、一家のほうさ」 幸平自身まだ迷う部分が多かった。仕事はどんなことでも我慢できる。しかしその場の雰囲気には我慢できないこ…
2025/01/20 15:32