台湾の文化創意産業(文創)とリノベーションでよみがえったスポットの魅力を紹介します
台湾には、日本統治時代の工場跡地や市場、日本家屋などをリノベーションした魅力的なスポットが数多くあります。これらの歴史的建築が、新たな文化創造の拠点として生まれ変わり、台湾観光の注目スポットや最新カルチャースポットとして人気を集めています。 レトロな雰囲気が漂うリノベーション建築、個性的なリノベカフェなど、台湾ならではのユニークな空間を巡る旅はいかがでしょうか?
2025年6月
糖廍文化園区は台北にあった製糖工場跡地で、その3つの倉庫がリノベーションされ、製糖業の歴史展示、劇団の拠点、コワーキングスペースなどに生まれ変わった。 台北製糖工場は日本統治時代の1911年から稼働を開始し、戦後まもなく停止し、その後は倉庫として利用されていた。2003年に台北市の古蹟として登録されている。建物はレンガ造りで、小屋組と台形柱の取り合いで大スパンの空間が実現されている。A倉庫は、製糖業の歴史を紹介する「糖業文物展示館」として2010年にオープンし、地域住民によって共同管理されている。B倉庫は、2022年糖業文物展示館から劇団「萬座曉劇場」の劇場、拠点となっている。C倉庫は、台湾に…
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機械学科の近代的な建物がおしゃれな博物館に【台大工学博物館】@台北
国立台湾大学工学博物館は、日本統治時代の1943年に建てられた国立台湾大学(当時は台北帝国大学)旧機械館で、リノベーションされ2024年に博物館としてオープンした。当時は、工学部機械系の教育・研究のための施設であったが、2020年に廃止されている。 元々の旧機械館は、鉄筋コンクリート造2階建の横に長い建物だったが、動線や耐震補強などの観点から、リノベでは中央部分が撤去され、左側は外壁のみが保存されている。博物館としてリノベされた部分は、厚い外壁、上下開閉式の通風窓などが残されている。 ここでは、台湾の工学教育とその発展の歴史を紹介する常設展示のほか、台湾大学の学生・教員が設計・製作したレーシン…
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当時の豪華アメリカ大使官邸でカフェを楽しむ【光點台北】@台北
光點台北は、日本統治時代の1926年に建てられたアメリカ領事館官邸で、リノベーションされ2002年にオープンした。戦後はアメリカ大使官邸として使用されていたが、1979年の中華民国とアメリカ合衆国の国交断絶後に閉じられ、その後長らく空き家となっていた。1997年には台北市の市定古蹟に登録されている。 2002年、台北市文化局および台北市電影委員会により、映画文化の拠点「台北之家(Taipei Film House)」としてリノベされ、後に「光點台北(SPOT Taipei)」と名称が変わっている。 建物はアメリカ南部の住宅様式と古典的なドーリア式柱を融合させた2階建ての洋館で、内部には中央廊下…
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芸術と演劇で文化創意をつくりだす【板橋放送所(伝奇放送科藝文創園区)】@板橋
板橋放送所(伝奇放送科藝文創園区)は、日本統治時代の1930年に建てられた台湾総督府台北放送局の中波送信所であったが、リノベーションされ2022年にオープンした。戦後は国民党に接収され、中国広播公司の板橋送信所として使用された。2015年には新北市の市定古蹟に登録されている。 この施設は、伝奇放送科藝文創園区として、芸術・演劇・科学・地域史の要素を融合した文化振興が進められている。園内には、大小3つの劇場や展示館などが配置されてい」る。その中でも中心的な劇場は、シンプルな水平線を基調としたモダニズムのデザインが特徴である。(訪問年月:2025年6月) 文化資産登録名称:台北放送局板橋放送所 文…
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中山蔵芸所は、日本統治時代の1921年に建てられた台北州職業紹介所で、リノベーションされ2017年にオープンした。 当初は、職業紹介や職業訓練を目的とした施設で、戦後は台北市衛生院、そして台北市政府衛生局として使用され、1994年からは空き施設となっていた。1998年には市定古蹟に登録されている。その後、福祉施設として活用された後の2017年に中山蔵芸所としてリノベされた。1階の公開されているスペースでは、職業紹介所として役割を果たした時の歴史や建物の痕跡などが展示されている。(訪問年月:2025年6月) 文化資産登録名称:臺北市政府衛生局舊址 文化資産分類:直轄市定古蹟 建物種類:衙署 指定…
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蔡瑞月舞踊研究社は、もともと日本統治時代の1930年代に建てられた日式住宅の文官宿舎だったものが、1953年に台湾を代表するダンサー蔡瑞月に購入され、モダンダンスの稽古場として使用されていた建物である。 この建物は、もともとの日本式木造住宅の構法やデザインをいかしつつ、床の掘り下げや天井の改修を加えモダンダンスに適した空間としてリノベされていた。1999年に放火で大半を焼失したものの、2003年に復元され、台湾におけるモダンダンスの拠点として、現在もモダンダンスの活動やイベントがおこなわれ、多くのダンサーが育っている。(訪問年月:2025年6月) 文化資産登録名称:蔡瑞月舞蹈研究社 文化資産分…
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磯永吉小屋は、日本統治時代の1925年に建てられた旧台湾総督府高等農林学校作業室で、リノベーションされ2017年にオープンした。2009年には市定古蹟に登録されている。2025年はちょうど100周年ということで、記念展示や周年事業が行われている。 当時は磯永吉と助手の末永仁が蓬萊米を開発した農業実験施設であったが、戦後も国立台湾大学農学院の一部として使用された。建物は木造平屋建て切妻屋根の日本的なもので、室内には作業室、準備室、実験具保管室、暗室などがあった。 磯永吉小屋の展示では、当時使用された実験器具や資料、蓬萊米の系譜、稲作改良の過程などが紹介され、当時の農業研究と蓬萊米の開発の実態に触…
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ちいさな田舎町で日本の歴史を学ぶ【銅鑼1895文化生活館】@苗栗
銅鑼1895文化生活館は、1960年に建てられた台鉄銅鑼駅北側の旧貨物倉庫で、リノベーションされ2022年に展示・交流空間としてオープンした。2021年には、台鉄によって石材置き場に再開発する計画があったが、地元住民と文化関係者の働きかけにより保存・活用への動きとなっていた。 ここでは、1895年の乙未戦争に関する展示や、銅鑼地区の産業と生活文化を紹介する展示、客家文芸や地元特産品を扱うスペースが設けられている。また、文創マーケット、DIY体験、音楽会などのイベントも開催されている。(訪問年月:2025年6月) ※乙未戦争(いつびせんそう)とは、日清戦争終結後、下関条約によって清から日本への台…
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台湾文学糧倉は、1959年に建設された台湾省糧食局台北事務所倉庫で、戦後に穀物保管のため使用されていたものがリノベーションされ、文学振興と文化保存のための施設として2025年6月にオープンした。2016年には台北市政府により歴史建築に登録されている。 外観は建設当時の倉庫建築の木造梁構造と高天井を活かした開放的空間が残されている。展示には、多言語・多文化にまたがる台湾文学の歩みや作家たちの作品や展示があり、読書エリア、多目的ホールなどもある。 この施設は、台南にある「国立台湾文学館」の運営で、台北では「台湾文学基地」に次いで2つめの文学振興の拠点ということになる。その中でこの台湾文学糧倉は、文…
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和洋折衷のリノベカフェで日本庭園を眺める【孫立人将軍官邸】@台北
孫立人將軍官邸は、日本統治時代の1909年に建てられた和洋折衷様式の木造二階建て家屋で、当初は台湾総督府土木局水道課の課長官邸として使用されていた。原設計は、現在も残る台湾の主要官庁を設計した森山松之助によるものである。 建設後は台灣總督的臨時官邸や日本陸軍高級幹部の接待所など多様な用途に使用され、1929年には、木造家屋部分が大きく増築されて、台灣軍(日本軍の台湾駐屯軍)司令官官邸として使用されるようになっていった。軍幹部の居住および接待機能も兼ね備え、日本庭園や回廊などもつけられた。 戦後からは、孫立人将軍が台灣陸軍総司令として赴任した際の官邸となり、その後は軍のクラブなどとして転用されて…
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台湾語を保存・次世代に伝える台湾唯一の拠点【台語文創意園区】@彰化
台語文創意園区は、日本統治時代の1930年代に建てられた北八卦山の反空降任務を担う陸軍砲兵営舎だったもので、リノベーションされ2018年にオープンした。 この施設では、台湾の高齢者を中心に使われる台語(台湾閩南語)を保存、次世代に伝え、新たな表現文化を育むことを目指して、展示や講座、イベントが行われている。リノベされた建物を含む4棟の建物には、文化展示室、親子室、音楽室、戲劇室、映写室、図書室、イベントホールなど、多様なコーナーがある。展示は、歌仔戲(台湾の伝統演劇)や布袋戲(人形劇)、台語映画、台語文学など幅広く、週末にはそれらの上映が行われる。(訪問年月:2025年5月) 注:「台語」は遠…
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国家人権博物館は、白色テロ時代に政治犯の交流と裁判、刑の執行が行われていた建物群がリノベーションされ2018年に人権教育施設としてオープンした。その前には、国防部軍法学校と軍事局、軍法裁判所が共同で利用し、法廷と看守所があった。1951年からは政治犯の拘禁および軍事裁判を目的とした収容施設となり、主に思想犯とされた市民、知識人、学生らが収容されていた。1987年に戒厳令が解除された後、施設としての稼働は終了し、2007年に歴史建築として登録された。当時の看守所構造が原形に近いかたちで保存されており、独房、軍事法廷跡、取調室、監視塔など大小約20棟の建物が残され、見学ができる。また、白色テロ時代…
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最高雰囲気の倉庫リノベ空間で創作料理を楽しむ【一茶一瓦 一號糧倉】@台北
一茶一瓦 一號糧倉は、1944年に日本統治時代の戦備用米倉として建設された木造倉庫で、2025年にオープンしたレストランである。この倉庫は戦後、国民政府が長年にわたり倉庫として使用していた。2011年には、台北市が歴史建築として登録している。 2016年には、台北市文化局が推進する老房子文化運動によってリノベーションされて、1階に地元特産品のショップ、2階に台湾料理レストランを備えた複合施設としてオープンしていた。その後、COVID-19などの影響で当初の形態はできなくなっていたが、2025年4月から新たな飲食業態「一茶一瓦」として再開された。店内は、戦時期の木構造で倉庫という大空間を生かした…
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壢景町は、日本統治時代の1914年に建てられた中壢派出所警察官のための日式住宅(日本家屋)による寄宿舎群のリノベーションで2019年にオープンした。戦後も警察宿舎として利用され、2012年には、桃園市の歴史建築として登録されている。 壢景町の敷地内にはリノベされた3棟の日式住宅があり、イベントやワークショップもできる歴史展示「町之美」(A棟)、カフェレストランの「食在地、食當季」(B棟)、地産地消のオーガニック系地元特産品を扱うショップ「買在地、買有機」(C棟)からなる。 民主化運動の歴史とは、この地で1977年の台湾の民主化運動である中壢事件が起こったことに由来する。(訪問年月:2024年2…
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条件不利地域での若者創業拠点の挑戦【和興青創基地(2025年再開予定)】@鹿港(彰化縣)
和興青創基地は、日本統治時代の1935年に建てられた和興派出所の警察職員たちの宿舎群で、リノベーションされ2021年にオープンした(現在休止中)。2018年には彰化県の歴史建築に登録されている。約80mと奥行きが深い敷地の中にある路地空間の両側に、レンガ造の旧宿舎や日式住宅(日本家屋)が活用されている。1階の路地や全体を眺望できる2階の空中回廊などからなる多様な空間構成が特徴的である。 この施設は、若者による創業や文化創意活動を行うことが目的で、オープン当時には9組の若者チームが入居したが、さまざまな事情によって2022年末の契約満了で退去していた。2025年中の再開に向けて、現在新たな若者チ…
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台北市内にある陸軍砲兵営舎跡のリノベで学ぶ【嘉禾新村】@台北
嘉禾新村は、日本統治時代から戦後にかけて段階的に建てられた軍用施設や眷村住宅群がリノベーションされて2022年にオープンした。1930年代には旧日本軍によって永春陸軍砲兵営の一部として木造兵舎(日本家屋)などが建設され、戦後はこれらの施設が接収され眷村として整備された。1990年代以降に住民の退去が進み、2015年には台北市の歴史建築に登録されている。園内では、住宅開発の経緯から日本式の木造兵舎建築と戦後の簡易住宅が混在し、防空壕などの付属施設も残されている。 この施設には、嘉禾新村と眷村文化の歴史を展示する「嘉禾故事館」、親子向けの体験型施設、芸術実験や展覧活動を実施する施設が設けられている…
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味のある侘び寂び感がデザインされた日本家屋【北斗郡守官舍】@北斗(彰化縣)
北斗郡守官舍(彰化縣二二八暨人權紀念館)は、日本統治時代の1937年頃に建てられた郡守(現在の県知事)が住んだ日式住宅(日本家屋)で、リノベーションされ2018年2月27日にオープンした。2008年には歴史建築に登録されている。 この建物は他の多くの日本家屋と同じような木構造、入母屋造、瓦、台湾檜が使用されているが、外壁の経年変化の味がうまくデザインされていて侘び寂び感が絶妙である。この施設では、二二八事件や人権に関する展示が行われている。(訪問年月:2025年5月) 文化資産登録名称: 北斗郡守官舍 文化資産分類:歴史建築 建物種類:其他設施 指定登録年月:2008年4月 リノベ設計:徐裕健…
台北でおみやげを探すならかわいいショップが集まる【西門紅楼】@台北
西門紅楼は、日本統治時代の1908年に台湾初の公設市場として建設された歴史建築物をリノベーションしショップやカフェが集まる文化創意の複合商業施設として、2007年にオープンした。 建物は日本人建築家によるもので、入口ホールは東洋の風水思想をとりいれた八角堂(八角楼)、主体部分はキリスト教会から影響を受けた十字型(十字楼)をしており、東西の文化が融合した設計スタイルである。この市場は、当時は冷蔵設備を備えた画期的な施設であったが、戦後は国民党政府の所有となり「紅楼映画館」としてエンタメの場ともなっていた。 建物の老朽化や2000年の火災などを経たが、1997年に台北市の古蹟に登録されていた。 施…
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台湾一の鉄道博物館がミャオリーにオープン(2025/4)【苗栗火車頭園区】@苗栗
苗栗火車頭園區は、日本統治時代に建てられた旧苗栗機関区の施設群を中心とし、鉄道遺構を活用して大規模なリノベーションされ、2025年4月にオープンした文化・観光施設である。園区内には大規模な展示空間が整備され、現存する当時の転車台や機関庫、蒸気機関車や列車などの保存展示と連動した動態的な展示がされている。 また、園区と一体的に、鉄道職員宿舎として使われていた建物はショップやカフェが並ぶ商業エリアとしてリノベされている。園区を一望できる展望塔も新たにつくられた。 本園区は、ネコがモチーフとして展示やデザインに活用されていて、10匹のネコちゃんとふれあえる鉄道ネコゾーンもある。「苗栗(ミャオリー)」…
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成功した実業家のすごい洋館【鹿港民俗文物館】@鹿港(彰化縣)
鹿港民俗文物館は、日本統治時代の1919年に建てられた鹿港出身の実業家・辜顕栄の邸宅で、リノベーションされ1973年にオープンした。辜顕栄(1866年~1937年)は、清末から日本統治時代の台湾で活躍した大商人であり、貿易・銀行・不動産など多方面に事業を展開した人物である。後に日本政府との関係を築き、台湾勅選貴族院議員にも任命された。 この建物は、文芸復興期のバロック様式を基調とした三層構造の洋館で、両端にある八角形のドーム塔や精緻な浮彫装飾など豪華だ。また、レンガ造の旧宅も残されていて、全体として民俗歴史館となっている。展示は、清代から民国初期にかけての民俗器物など台湾の伝統的な生活文化を伝…
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4棟の日本家屋が凜と並んで建つ【山腳國小日治後期宿舍群】@苗栗
山腳國小日治後期宿舍群は、日本統治時代の1937年から1941年にかけて建てられた日式住宅(日本家屋)の山腳公学校(現・山腳国民小学校)教員宿舎で、リノベーションされ2005年にオープンした。2003年には苗栗県の歴史建築に登録されている。 元宿舎は4棟が残っていて、2棟ずつが当時と同じように並んで建ち、それらの建物では、藺草工芸体験や地域文化講座などが開催されている。(訪問年月:2025年5月) 文化資産登録名称:苑裡鎮山腳國小日治後期宿舍群 文化資産分類:歴史建築 建物種類:宅第 指定登録年月:2003年12月 リノベ設計:郭俊沛建築師事務所 △園区の入口にある門。 △手前の2棟と奥の2棟…
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地元クリエイターの作品を楽しめる日本家屋群【鹿港桂花巷藝術村】@鹿港(彰化縣)
鹿港桂花巷藝術村は、日本統治時代の1930年代に建てられた木造宿舎群で、2009年にリノベーションされてオープンした。当時は鹿港鎮公所の職員や学校教職員の宿舎として使用されていたが、戦後は警察宿舎としても利用されていた。 園区には12棟の木造宿舎が残されていて、それぞれに、クリエーターやアーティストが入居sし、書道、皮革工芸、捏ね物、藺草編みなどの伝統工芸の展示や体験ができる。また、木造宿舎の形は、いわゆる日本統治時代の台湾中に建てられた日式住宅(日本家屋)とは異なる特徴のある様式である。(訪問年月:2025年5月) 文化資産登録名称:登録なし リノベ設計:呂正道建築師事務所 △桂花巷藝術村の…
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2025年6月
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