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  • 温泉博物学「外国の温泉土産・入浴剤」

    台湾北投温泉のお土産「湯の華」 台湾の北投(ぺいとう)温泉には「地熱谷」と呼ばれる温泉の自然湧出地帯があります。沼のような底から高温の酸性硫黄泉がボコボコと湧き出していて、北投温泉の泉源となっています。日本で特別天然記念物に指定されている「北投石」の、もう一つの産地としても知られています(下呂発温泉博物館でも、許可を得て研究用に採取された台湾北投温泉産の北投石を複数展示しております)。 かなり前のことですが、北投温泉を訪れて地熱谷付近の土産物店を物色していた時に、「天然温泉塊」と書かれた土産物を見つけました。ちょうど日本全国の「天然湯の華」を収集していた時でしたので、思いがけない発見に胸がとき…

  • 温泉博物学「温泉軟膏」

    なんか効きそう!「血の池軟膏」 別府鉄輪温泉の名勝「地獄めぐり」の一つに、赤い色をした「血の池地獄」があります。池の見学場所の傍らには、「血の池軟膏」などの販売コーナーがあります。 別府地獄めぐりの一つ「血の池地獄」 「血の池軟膏」とは、血の池地獄に堆積した鉱泥に、イオウ、モクタール、ワセリンを混ぜて作られた軟膏で、れっきとした第3類医薬品です。 血の池地獄で販売されている「血の池軟膏」 「医薬品」ですので、温泉とは違って効能を謳うことができます。レトロ感満載のパッケージには、田虫、水虫、しらくも、疥癬(かいせん)、がんがさ、はたけ、霜やけ、火傷、肛門ただれ、ひび、あかぎれなどが効能として記さ…

  • 日本の「各温泉地」の「温泉科学情報」をまとめて紹介する本があります!

    『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』 今から4年前に、『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』(日本温泉科学会監修)という本が、朝倉書店から出版されました。わが国の数多くの温泉の中から、温泉科学的に重要であると思われる温泉地170を取りあげ、日本温泉科学会の会員が「各温泉地の自然科学的な側面」について執筆しました。 これまでに実に多くの温泉に関する書籍が出版されていますが、温泉地ごとにまとめられたタイプのものとしては、観光ガイドブック的な内容であったり、文化および自然遺産的な紹介であったり、健康増進的な観点から書かれたものであったりと、温泉地を訪ねることを前提としたものがほとんどだ…

  • 飲酒後の入浴は、かえって「酒が抜けにくい!」

    飲んだ後に「ひとっ風呂浴びて酒を抜く」? 以前は、飲み屋街のような所に深夜営業のサウナがあり、酩酊に近いような人たちで賑わっていました。みんな「酔いをさますために」風呂やサウナに入っていました。 「風呂やサウナで汗をいっぱいかけば、アルコールも抜けていく」と思っていました。 飲酒後の入浴に関する研究 「飲酒後の入浴が体にどのような影響を与えるのか」といった研究は古くから行われています。その中で、特に「飲酒後の入浴によってアルコールが代謝(分解)しやすくなるのか」という内容を扱った論文を見つけました。 日本温泉気候学会雑誌第25巻第3号(1961年発行)より引用 残念ながら、飲酒後の入浴は「かえ…

  • 紀伊半島の旅「橋杭岩」

    橋杭岩 橋杭岩(はしぐいいわ)は、和歌山県串本町にある、奇岩が一列に長く並んだ景勝地で、国の天然記念物に指定されています。 和歌山県串本町の景勝地「橋杭岩」 国指定天然記念物 橋杭岩はどのようにしてできたのか 「橋杭岩」の景観がどのようにしてできたのか、大いに気になるところです。 今から1500万年~1400万年前の火成活動によって、地下のマグマが、辺り一帯に分布している泥岩層の割れ目から貫入して石英斑岩の岩脈を形成しました(下の地質図の茶色い部分)。岩脈のまわりの泥岩(地質図の水色の部分)は軟らかいために侵食されやすいのに対して、岩脈をつくる石英斑岩は硬くて侵食されにくい(差別侵食)ため、薄…

  • 紀伊半島の旅「那智の滝」

    那智の滝 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されてはや20年が経とうとしています。 私は、紀伊半島を旅するのが好きで、よく出かけますが、今回の白浜への家族旅行では久々に那智の滝や、那智大社などへも寄り道(温泉以外はみんな寄り道)してきました。いい温泉がいっぱいあるのに、ここは我慢です。 青岸渡寺の五重塔と那智の滝 「滝」の定義とでき方 滝の定義は、「川や谷の河床(川の底)にできた段差を水が流れる場所」ということで、滝の成因は、「なぜ河床に段差ができたのか」ということに尽きます。溶岩の末端の崖にできた滝、断層が掘り出されて段ができた滝、違う種類の岩石が接する場所で、どちらか軟らかい方の岩…

  • パンダの温泉地「白浜温泉」

    「家族旅行」という旅行 いつもほとんど一人温泉旅か、一人酒場巡り旅をしていますが、今回は家族旅行で和歌山県の白浜温泉に行きました。今までにない「温泉色の薄い」旅になりました。 白浜温泉遠景 奥の砂浜がオーストラリアから砂を運び入れている「白良浜」 白浜のもう一つのシンボル 海中展望塔 かつては、海中展望塔までモノレールで行ったという。船がぶつかった歴史も 今はやりの、海と一体になれる「インフィニティ―浴槽・足湯」手前は足湯、奥は太平洋 白浜温泉が湧き出すメカニズムは 白浜温泉が湧き出すメカニズムは、「南海トラフから地下深くへ沈み込んで行くフィリピン海プレートからの脱水作用によって絞り出された数…

  • 「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録すること

    少し前ですが、新聞に「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録することをめざす知事の会が発足したという記事がありました。また、日本温泉科学会においても、温泉文化の登録に関するシンポジウムが開かれたことがあります。各界で登録への機運が高まってきているようです。 2022年11月22日の岐阜新聞の記事より 日本温泉科学会シンポジウムのチラシ 大切なことは、温泉が「ユネスコ無形文化遺産に登録される」ことによって「箔がつき、ブランド化する」ことを願うのではなく、「確かな温泉文化がまっとうに継承されていく」ための共通認識をもち合わせ、今後の確固たる方向性を見出すことではないかと思います。 例えば、草津温泉…

  • 「一番良かった温泉はどこですか」と聞かれますが‥‥

    良かった温泉がいっぱいありすぎて いろいろな人から、「今まで行った中で一番良かった温泉はどこですか」と、本当によく聞かれます。正直なところ、温泉が好きすぎて、良かった温泉がいっぱいありすぎます。甲乙つけてランクづけることなど、私には到底無理なことです。 長野県渋温泉郷の「角間温泉」のこと 無性にまた行きたくなる温泉というのがたくさんあります。長野県の角間(かくま)温泉もその一つです。長野県には角間温泉が二つありますが、湯田中渋温泉郷の角間温泉です。 猿の入浴で有名な地獄谷野猿公苑からほど近い温泉地で、時代から取り残されたかのような(いい意味で)湯治場です。共同浴場「大湯」を取り囲むように数件の…

  • 誤解される泉質②「単純温泉」

    「単純」という言葉のイメージ 「おまえは本当に単純だ」と言われると、なんとなく情けない気分になります。落語に登場する、ちょっとお馬鹿でまぬけな「与太郎」みたいな‥‥。 念のため、「単純」という言葉を広辞苑第五版で引いてみました。 ➀ 単一で他の要素のないこと。そのものばかりであること。純一。 ② 構造・機能・考え方などが複雑でないこと。込み入ってないこと。簡単。 誤解されている「単純温泉」 前回書きました筆者によるアンケート調査(2004)の結果、「硫酸塩泉」と同様に「単純温泉」もかなり誤解されている泉質であることがわかりました。 単純温泉の認識についてのアンケート結果(2004年 筆者による…

  • 誤解される泉質「硫酸塩泉」

    泉質名を見たり聞いたりして、その本質を正しく理解してもらえればよいのですが、どうもそうではない現状があるようです。 少し古い話になりますが、筆者は、2004年に「温泉はどのように理解されているか」というアンケート調査を行い、その結果をまとめました。全国のさまざまな年齢層の男女を対象としました。 アンケートにはいろいろな項目がありましたが、その中で最も問題視されたのが、泉質名の理解でした。 アンケート結果に見る硫酸塩泉についての認識 「硫酸塩泉という泉質はどのような泉質ですか」という問いに対して、「硫黄くさい温泉」、「硫黄と食塩が混ざっている温泉」、「白く濁った温泉」など、硫黄泉をイメージした回…

  • 温泉に生息する生物

    温泉が大好きなのは、人間や渋温泉地獄谷の猿だけではないようです。 温泉に入る長野県渋温泉地獄谷野猿公苑のニホンザル 全国各地の温泉には「温泉発見伝説」があり、白鷺や熊、鹿や猿などの動物による発見伝説も枚挙にいとまがありません。真偽のほどはともかく、昔から動物と温泉の距離が近かったことを物語っているのでしょう。それを裏付けるかのように、群馬県の野栗沢温泉には、カラフルな色をしたアオバトが温泉中のミネラルを補強しに、群れを成してやって来ます。 また、全国各地には、動物の名前が付く温泉地もたくさんあります。鶴の湯、鷺の湯、山鳩の湯、鹿教湯温泉、熊の湯温泉、猿倉温泉‥‥‥きりがないですね。 温泉に生息…

  • 伊吹山 「積雪記録世界一の山」

    岐阜県と滋賀県の県境にある伊吹山は、標高1,377mの山で、深田久弥の日本百名山にも選ばれています。ヤマトタケルノミコトの伝説をはじめとした故事来歴、薬草や稀少生物、さざれ石や山の特異な形成史など、伊吹山の魅力は尽きません。 滋賀県側から見た伊吹山 左側(西側)は削り取られた跡が大きく残る 石灰岩の採掘により、西側(滋賀県側)が大きく削り取られていますが、その傷跡も多少目立ちにくくなっており、何と言っても、琵琶湖と濃尾平野に挟まれて高くそびえる雄姿は、圧倒的な存在感とオーラを発しています。 2084校の校歌に登場する山 「かなり遠方からも見える」暮らしの中に溶け込んだ山であるため、滋賀県側も濃…

  • 温泉分析書の「電気伝導率」とはどんな単位

    電気伝導率(mS/m )とは 温泉分析書の上の方のpHなどが記載されているあたりに電気伝導率という項目が位置づけられている場合があります。 「電気伝導率」が記載された温泉分析書 電気伝導率の単位「mS/m」は、「ミリ ジーメンス マイ メートル」と読みます。 この単位は、一口で言うと水溶液の電気の通りやすさを示す尺度で、水より食塩水の方が電気が通りやすいように、水溶液の中にイオンがたくさん存在している程、電気が通りやすくなります。 すなわち、温泉の電気伝導率は、温泉中に含まれる全イオン量を反映しており、電気伝導率が高い温泉は、溶存物質量( 陽イオン + 陰イオン )が多いということを表わします…

  • 遠くの山が白く見えるのは何故

    雨が降らない日が続くと、遠くの景色が白っぽく「もや」がかかったようになります。特に山の景色を見ると、遠くの山ほど白く見えます。 蔵王から見た遠くの山の景色 遠くの山ほど白っぽく見える 空気中には、水蒸気や、PM2.5、塵(ちり)、黄砂などの小さな粒子状の物質がたくさん浮遊しています。 太陽光が、空気中のこれらの粒子にぶつかると、すべての波長の光(すべての色の光)が散乱(ミー散乱)を起こすため、見ている私たちの目には白い光(昼間の太陽をまともに見た時と同じ色)となって飛び込んできます。光の散乱については、本ブログの「乳白色の温泉のメカニズム」を参照していただければと思います。 遠くの山ほどより白…

  • 温泉現象 「噴気塔」

    富山県立山地獄谷には、熱水変質帯の灰色の地肌をむき出しにした噴気地帯が広範囲に広がっています。その中の「鍛冶屋地獄」と呼ばれる谷 底にある噴気地帯には、硫化水素や二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が噴出する噴気孔が至る所に見られ、噴気孔の周りに火山ガスの成分である昇華硫黄が堆積し続け、それが高く塔状に成長してできた珍しい噴気塔 が見られました。一番高く成長した時には2mを越えました。 富山県立山地獄谷で見られた、昇華硫黄が高く成長してできた「噴気塔」 噴気塔が見られた立山地獄谷の鍛冶屋地獄 写真中央奥に噴気塔が見える 写真は、筆者が2002年に撮影したものです。この時には既に噴気し止まっていました。その…

  • 温泉博物学 「温泉細工」

    温泉スケールを逆手に取って生まれた「温泉細工」 温泉地に行ってお土産を探すのも楽しみの一つです。特にその土地ならではのお土産に出会えればうれしくなります。 炭酸カルシウムでコーティングされてできた土産用「温泉細工」 上の写真は、またまた下呂発温泉博物館に展示されている「温泉細工」などと呼ばれる温泉地オリジナルのお土産です。 一番手前は北海道の二股ラジウム温泉の温泉細工です。オロナミンCなどの空き瓶(廃棄物)に温泉水を振りかけ続けて温泉成分(炭酸カルシウム)を付着させてできたものです。まるで焼き物のようです。1本500円でお土産として売られていました。空き瓶は「捨てればただのゴミ」です。ゴミに、…

  • 温泉に関わる国の天然記念物

    「天然記念物」および「特別天然記念物」 わが国では、文化財保護法にもとづいて、「学術上貴重で日本の自然を記念する動物,植物、地質鉱物および天然保護区域」を天然記念物に指定しています。さらに、その中で「世界的にまたは国家的に価値が高いもの」を特別天然記念物に指定しています。 2024年2月10日現在、国の天然記念物には1,038件が指定されており、このうち75件が特別天然記念物に指定されています。「天然記念物」は人文系文化遺産では重要文化財級、「特別天然記念物」は国宝級に相当する位置づけです。 温泉に関わる天然記念物 温泉に関しては、平成25年に新しく「新湯の玉滴石産地(富山県)」が天然記念物に…

  • 温泉現象 「泡沸泉」

    沸騰した熱い温泉かと思いきや‥‥ 長崎県雲仙岳の麓の海岸沿いには、熱い源泉で知られる小浜温泉があります。源泉温度をいろいろな温泉分析書で確認してみると、何といずれも100℃前後でした。 そんな小浜温泉街の一角に「炭酸泉」という看板があり、ポケットパークのように整備された敷地内に、ボコボコと音を立てながら温泉が湧き出す小さな泉源があります。囲いも何もなく、「外で勝手に湧き出している」という感じです。 長崎県小浜温泉の「炭酸泉」と呼ばれる泡無沸泉 何しろ熱い小浜温泉地内で「ボコボコと音と泡を出しながら湧き出している」ので、沸騰しているのと勘違いしてしまいますが、実際に手を突っ込むと冷んやりとし、全…

  • 温泉現象 「間欠泉」

    間欠泉とは 噴泉のうち、ある一定の時間間隔をおいて湧き出す温泉現象を間欠泉と言います。間欠泉はさらに、地下の空間内の水蒸気圧によって噴出する間欠沸騰泉と、地下の空間内の炭酸ガス圧によって噴出する間欠泡沸泉とに分類されます。 木部谷間欠泉(島根県) 炭酸ガスの圧力によって噴出する稀少な間欠泡沸泉です 鬼首吹上間欠泉「弁天」(宮城県) 観光用に有料公開されています 川俣温泉間欠泉(栃木県) 現在活動が停止しているようです (写真は半田実氏提供) 広河原間欠泉(山形県) 間欠泉のある浴槽に浸かれましたが、現在施設閉鎖中です 諏訪湖間欠泉(長野県) かつて50m程吹き上げましたが、活動が完全に停止しま…

  • 温泉現象 「噴泉」

    温泉が自然に湧き出す時の「湧き出し方」にもさまざまな形態があります。熱湯と水蒸気が一緒になって噴水のように勢いよく噴出し続ける温泉現象を噴泉(ふんせん)と言います。地下に高温の水蒸気を含む熱湯が存在し、温泉の湧き出し口の穴(孔隙)が小さいと、地下の熱湯がたまっている空間の圧力が高くなるため、小さな孔隙からゴーという激しい音を出したり、しぶきを飛ばしたりしながら勢いよく温泉を噴き出し続けます。噴泉には、空に向かって垂直方向へ噴き出すタイプもあれば、地層の層理面等に沿って水平方向へ噴き出すタイプもあります。 垂直方向に吹き上げる噴泉 渋温泉地獄谷の噴泉 国指定天然記念物。後ろの一軒宿は地獄谷温泉「…

  • 温泉にメントスを入れると

    小学生が実験をしました コーラにメントスを入れると、コーラに包まれた泡が噴き出すという実験は有名ですね。 コーラにメントスを入れた時の様子 炭酸水や炭酸飲料の中には二酸化炭素(炭酸ガス)が、「CO2 」という分子の状態で水の分子の隙間に入り込んでいます(遊離二酸化炭素)。常温常圧では、炭酸ガスは気泡となって空気中へ抜けて行こうとしているのですが、水の表面張力が周りから炭酸ガスを押しつぶしているので、簡単には抜けられません。そのような状況に、何かでこぼこした物と接触すると、接触部分の水の表面張力が弱くなるので、そこから炭酸ガスが気泡となって現れ、抜け出していきます。 メントス(お菓子)表面に微細…

  • 温泉博物学 「硫黄系の液体入浴剤」

    温泉と薬機法(やっきほう) 以前は「薬事法」と言っていた法律が、2014年に「薬機法」に改正されました。正確には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。 温泉は薬物ではないので効能が言えない 温泉は、薬物ではないので、薬機法の規定により「○○に効く」、「○○に効果がある」というようなことは記載してはいけないことになっています。ましてや、「○○が治る」となどと言ってはいけません。 そのため、温泉の場合は「神経痛に適応がある」、つまり神経痛の人が温泉療養を行うのに適している泉質ということで 適応症 というまわりくどい言い方になります。 入浴剤は効能が言える …

  • 温泉現象 温泉がつくる「地獄」「地獄谷」

    「地獄」は温泉天国です 火山活動が活発な所では、岩肌がむき出しになった荒涼とした大地の至る所から火山ガスを噴き上げ、温泉がボコボコと湧き出すような風景を目にすることがあります。 雲仙「地獄」 そのような一帯は、地熱や、様々な成分を含んだ酸性の熱水(温泉水)の影響で、もともとの硬い岩石が「温泉余土(おんせん)」と呼ばれる、やわらかく白っぽい粘土鉱物などに変質しています。その結果、周辺一帯が白く殺伐とした景観になります。 川原毛「地獄」 かつて硫黄の採掘が行われていたので自然の地形という訳ではありません 恐山「地獄」 このような場所を地質的には「熱水変質帯」と呼びます。また、景観的には「噴気地帯」…

  • 温泉博物学 「こつぼ洗い器」って、知ってる?

    こつぼ洗い器 何年も前のことです。伊香保温泉の観光案内所に併設されていた「伊香保歴史資料室」というちょっとした展示スペースに、写真のような珍しいものが展示されていました。私は初めてこのような資料を見ましたが、皆さんは、これが何だかおわかりですか。 展示されていた「こつぼ洗い器」の複製 これには、「こつぼ洗い」という説明がつけられていました。本物がほとんど残っていないため、貴重な資料を残そうと、わざわざ作られたレプリカ(複製)だそうです。大変珍しかったので、撮影をさせていただきました。 あまり詳しく説明をするのがちょっと「アレ」なので、次の写真の説明を読んでみてください。 「こつぼ洗い」の説明文…

  • 温泉博物学 「飲泉カップ」

    飲泉許可が下りている温泉を飲むことにより、薬を飲むのと同じような薬理効果を得られる場合があります。 飲泉は特に東ヨーロッパで古くから盛んに行われていました。 飲泉の際に使われるのが、専用の「飲泉カップ」です。 下呂発温泉博物館に展示されている様々な温泉地の「飲泉カップ」 上の写真は、下呂発温泉博物館に展示してある飲泉カップです。手前の美しいデザインのものは、チェコのカルロビバリのものです。取っ手がストローになっていて、自慢のマイカップでゆっくりと時間をかけて飲みます。 チェコ カルロビバリ温泉の飲泉カップ 取っ手部分がストローになっている 奥の方の白っぽいものは、ヨーロッパのものを真似てつくら…

  • 露天風呂の敵、「アブ」と戦おう!

    夏場の山の露天風呂は、アブとの出会いが待ち受けています。 アブ対策の基本は素肌を隠すことですが、なにしろ露天風呂では素っ裸であり、この上ない無防備な状態でアブに立ち向かうことになります。 車の上にとまったアブ アブの雌は、産卵に必要なタンパク質を得るために、動物の血液を吸って生きています。そのため、動物の吐く二酸化炭素や、体温、特殊な匂いなどにすぐに反応して、ターゲットとなる動物を察知します。そこへ裸の人間が現れてくれれば、アブにとっては「棚からぼた餅」です。したがって、アブがつきまとってきたら、とにかくすぐにお湯に浸かり、肌を晒す部分を最小限にしなければなりません。 アブは、ハチのように毒針…

  • カテキンが多いお茶はどれかな?

    小学生が実験してみました 何年か前に「ヘルシア緑茶」がブームになった頃、お茶の中に「カテキン」が何mg含まれているかというのが一つの売りになっていました。 緑茶の中にはタンニンという成分が含まれ、その大部分がカテキンからなっています。すなわち、緑茶の場合ほぼタンニン=カテキンです。 「緑茶」に「鉄分(鉄イオン)を含む温泉」を混ぜると、タンニンと鉄イオンが反応して、「タンニン鉄」という黒い沈殿を生じ、黒く変化します。 とにかく、緑茶に鉄分を含む温泉をまぜると黒くなるのです。この性質を利用して、小学生が夏休みの一研究で、カテキンの量を比べる実験をしてみました。 まず、いろいろな種類のペットボトル入…

  • 温泉博物学 「入浴用湯の華」

    温泉成分からつくられる入浴用「天然湯の華」 工場で重曹などの成分を調合してつくられる入浴剤とは別に、温泉地において温泉成分を樋などで沈殿させたり、太古の温泉沈殿物を加工したりしてつくる天然の入浴剤もあります。特殊なものとしては、別府明礬温泉の明礬小屋で結晶を成長させてつくるものもあります。 温泉地で販売されている入浴用「天然湯の華」 樋に温泉成分を沈殿させて作られる天然湯の華 草津温泉湯畑 別府明礬温泉の明礬小屋でつくられる天然湯の華 かつて私が調べた時(2010年)には、全国の34か所の温泉地において入浴用「湯の華」がつくられ、ご当地温泉の土産物として売られていることを確認しました。私の調査…

  • いわゆる「温泉独特のにおい」は硫化水素臭

    温泉のにおいの正体 温泉街に到着したとたん、温泉独特の匂いがして「ああ、温泉地に来たぞ!」という気分になります。私にとっては、何にも勝る歓迎のメッセージのような気がします。 噴気地帯の火山ガスにより「温泉のにおい」が立ち込める雲仙温泉 雲仙温泉や草津温泉などのような火山地帯の温泉街に充満する、いわゆる"温泉のにおい"は、一般的に「硫黄の臭い」とか「卵の腐ったような臭い」と表現されることが多いようですが、実際は火山ガスの中に含まれている「硫化水素のにおい」です。 雲仙温泉街の貴金属店ショーケース内の「硫化水素ガスで変色した指輪」 地獄と呼ばれるような噴気地帯から火山ガス自体が温泉街に漂っているた…

  • 温泉分析書の「ミリバル」とはどんな単位?

    ミリバル(mval)という不思議な単位 温泉分析書の、「陽イオン、陰イオン」の欄を見ると、ミリバル(mval)という、他では聞いたこともないような単位が使われています。なにしろ、学校でも習いませんし、『単位辞典』のようなもので調べても載っていません。温泉の世界だけで使われている単位なのです。一体どんな単位なのでしょうか。 ミリバル(mval)という単位をイメージすると 温泉の成分として含まれる「イオン」は、プラスやマイナスの電気を帯びています。 ミリバル(mval)という単位は、「それぞれのイオンがもつ電気の量」を表わす単位です。すなわち、温泉分析書のミリバルの欄を見れば、成分として含まれるイ…

  • 白骨温泉の壮大な「幻の温泉」を追う

    白骨温泉のもう一つの魅力 乗鞍岳や焼岳の東側に位置する長野県の白骨温泉。乳白色の温泉としてよく知られ、人気の温泉地です。 白骨温泉「お宿つるや」の露天風呂(撮影許可をいただいています) 白骨温泉周辺の基盤となる地層には、石灰岩の岩体が分布しています。東側の火山地帯の地下で生成される熱水が、石灰岩の層内の断層を伝って上昇する間に石灰岩の成分である炭酸カルシウムを大量に溶かし込み、地上に湧き出します。 白骨温泉周辺の地質図(地質調査総合センター「地質Navi」に筆者加筆) 山を挟んですぐ隣に位置する乗鞍高原温泉がpH3程度の「酸性硫黄泉」であるのに対して、白骨温泉は炭酸カルシウムで中和されているの…

  • 名所になる要素を考える

    鳥取県東郷温泉「寿湯」 温泉通の皆さんの中には、下の写真を見ただけでどこの温泉かわかる人が結構いらっしゃるのではないかと思います。 東郷温泉寿湯のメインアプローチ 温泉へのメインアプローチの「通路の幅が狭すぎる」ことで知られる鳥取県東郷温泉の寿湯です。 もちろん鄙びたかけ流しのいい温泉には間違いがないのですが、写真を見ると通路が狭すぎて、「自分だったら通れるかしら」と、心が揺さぶられることになります。 私は閉所が嫌いで、しかも人一倍ふくよかな成長を遂げているため、インターネットに掲載された写真を見て「絶対に私には通れない」と思ってビビっていました。しかし、日に日に「幅の狭い通路を通ってみたい」…

  • 温泉地の看板は楽しい!

    温泉地や観光名所等に設置されている看板を真剣に見ると、とっても楽しいです。設置した役場や教育委員会の担当職員が、「説明しようとする対象」をよく理解していないために、時として私たちを大いに楽しませてくれます。 鳥取県倉吉市 関金温泉の説明看板 上の写真は、鳥取県の関金温泉で見かけた説明看板です。「伝説」と言えば何でもありで、いつだれが言い出したのかも定かでありません。特に弘法大師(空海)は全国の温泉地から引っ張りだこです。全国津々浦々の温泉地の「温泉発見伝説」に登場させられ、温泉地に「箔」をつけています。 弘法大師は宿坊に泊まっているのに、わざわざ宿坊から離れた湯谷川まで行って顔を洗っていらっし…

  • 山の中の温泉地でタイムスリップ

    奈良県 洞川温泉 奈良県天川村の洞川(どろがわ)温泉。深い山の中で時代に取り残されたかのように、独特のスタイルの木造和風旅館が街道沿いに軒を並べています。まさに圧巻です。 洞川の旅館街は、大峰山(山上ヶ岳)への修験者や参詣者の宿場として栄えてきた所で、今でもそういった雰囲気が漂っています。 修験者の宿場町として栄えてきた温泉街 明りが灯ると温泉街がひと際映える 木造旅館が軒を並べる温泉街 修験者が利用し続けた独特のつくりの木造旅館 温泉街で特産品の吉野葛を売る店 温泉街のあちこちで売られている胃腸薬「陀羅尼助丸」 一方、温泉は新しく掘削して得たもので、ごく最近のものです。街の風情が素晴らしすぎ…

  • 温泉がつくる美 エメラルドグリーンの湖

    川の深い所は青緑色に見える (長良川) 川の水の深い所は緑色に見えます。これは太陽光のうち、赤色の波長の光が水の分子に吸収される性質があるため、残された青緑系の波長の光が川底で反射をしたり水中の微粒子によって散乱をしたりして私たちの目に飛び込んで来るために緑色に見えます。特に深い所では緑色が重なってより濃く見えます。 美しいエメラルドグリーンに見える五色沼 美しいエメラルドグリーンの湖の原因は様々です。上の写真は、私が大好きな福島県の五色沼です。典型的な美しいエメラルドグリーンの湖です。 千葉茂氏著『ふくしまの水を調べたら』によると、湖の底から湧き出す温泉によって、水中にケイ酸アルミニウムの微…

  • 本当に愛すべき自然とは 白浜温泉で考える

    和歌山県の白浜温泉 その名前の由来となった白い砂浜のビーチ「白良(しらら)浜」が有名です。 白浜温泉のシンボル的な景勝地「白良浜」 ご存じの方も多いかと思いますが、白浜温泉の白い砂浜は砂が年々減っていき、実は「真っ白すぎるぐらい白い砂」を24年前からオーストラリアのパースから買って、船で運んでは、せっせと浜に入れ続けています。あの白い砂浜の砂はオーストラリアからやってきた砂なのです。 オーストラリアから船で運ばれてきた「白良浜」の白い砂 白良浜に張られた「貴重な」砂の飛散防止対策ネット 大変美しい風景なのですが、地学の私からすると白すぎるあの砂の存在には違和感があります。 観光というお金が絡ん…

  • 温泉地の「温泉環境」に酔いしれる 例えば湯の峰温泉

    和歌山県の「湯の峰温泉」 言わずと知れた熊野本宮詣での湯垢離場です。いっぱいの温泉環境が心地よく迎えてくれます。 湯の峰温泉の中心部界隈 一、温泉街を包み込む温泉の香り。幸せの硫化水素臭との出会い 二、湯の峰川の河床の雑多な泉源と引湯パイプのある風景 三、泉源やパイプからあふれ出すお湯の周りの石灰華の造形美 四、色とりどりのバイオマットが織りなす色彩美 五、幸せの硫化水素臭があり、巨大な湯の華が舞う愛おしいお湯 六、稀少な「石灰華噴泉塔」をご神体とする東光寺 七、泉源と共同湯と湯の胸薬師東光寺と和風旅館からなる温泉街 八、シンボル広告塔「つぼ湯」の存在 九、熱湯が湧く泉源「湯筒」で「ゆで卵」が…

  • 温泉界のスーパースター 空海

    宗教も神社仏閣にも全く興味のない罰当たりな私ですが、空海(弘法大師)にはあこがれます。 「空海」は僧としての名前で、醍醐天皇から贈られた号が「弘法大師」。大師の号を持つ高僧は24人いるそうですが、今の世の中で「お大師」とか「弘法様」と呼ばれているのは弘法大師のことです。 全国の多くの温泉地には「温泉発見伝説」があります。鷺や鹿などの動物だけではなく、行基や役行者、弘法大師などのスーパースターのお導きで温泉が湧き出したというものです。動物はともかく、後者の場合はすべて、温泉地に箔をつけるために作られたフィクションです。 温泉発見伝説の中で一番多く登場するのが弘法大師です。修善寺温泉や龍神温泉をは…

  • 山梨県は「ぬる湯」王国

    山梨は実は「ぬる湯」と「ぬるめの湯」の温泉大国なんです! 山梨県の増富ラジウム温泉や下部温泉は、全国を代表する「ぬる湯」の湯治場として古くから知られてきました。長時間入浴していると、「自分の体温で周りのお湯が温まる」ような温泉です。 山梨県の温泉は、このような「ぬる湯」だけでなく、比較的新しく掘削された温泉が、「40℃ちょっとの温度」で非常に湧出量が多い「ぬるめの温泉」が多いんです。しかも源泉かけ流しで。 日帰り温泉施設も、銭湯に近いような小規模の所が少なくなく、家庭的であったり地域センター的であったりで、温かい運営がなされている所が多いイメージがあります。 ぬるめのお湯が大量にかけ流される「…

  • 析出物こそ温泉の風情「山梨県芦安温泉の石膏」

    温泉の浴槽に、温泉成分の析出物がいっぱい付着していることがあります。多くは炭酸カルシウムからなる石灰華です。うろこ状や小さな棚田状の模様ができています。 山梨県芦安温泉「岩園館」 山梨県芦安温泉の岩園館の露天風呂は少し違って、石膏(硫酸カルシウム 二水和物)の白い析出物でいっぱいです。 芦安温泉「岩園館」の露天風呂 ぬる湯が心地よい 露店風呂の石に付着した石膏(硫酸カルシウム) 露店風呂の石に付着した石膏の拡大写真 石膏の析出物は、表面が丸みを帯びていたり、金平糖のようにぼこぼこしたりする形状を呈します。石灰華が小麦粉のような白さであるのに対して、石膏はやや透明感がある金平糖のような白色に見え…

  • 田沢温泉のすばらしい硫化水素臭と、その起源

    信州の松本と上田に挟まれた山間部の山里には、鹿教湯温泉、別所温泉、田沢温泉、沓掛温泉、霊泉寺温泉など、古くからよく知られた温泉地が点在しています。どの温泉も、ゆっくり湯治できるような落ち着いた温泉地で、私は大好きです。 いずれの温泉も無色透明の澄んだお湯で、微かな硫化水素臭を伴う「アルカリ性単純硫黄泉」や「単純温泉」からなります。 無色透明の温泉に入って、ほのかな硫化水素臭が香ってくれば、とっても幸せな気分になります。鮮度の良い温泉が「正しく」使われている証であるからです。 そんな温泉の中でも印象的なのが田沢温泉です。共同浴場「有乳湯(うちゆ)」に使われている源泉は、透明のお湯からとっても強い…

  • わが国唯一の温泉博物館「下呂発温泉博物館」

    下呂発温泉博物館 岐阜県の下呂温泉には、わが国唯一の「温泉博物館」があります。 下呂発温泉博物館の入り口 下呂発温泉博物館の外観 日本人は「温泉好きの温泉知らず」と揶揄されることが少なくありません。昔から温泉が大好きで生活の中の重要なポジションに位置しているにも関わらず、学校教育の内容に登場してこないため、「温泉とは何か」といった本質的な理解は出遅れてきた感があります。 そんな中で、下呂温泉の湯之島にある下呂温泉株式会社(株式会社といっても温泉権を有したり共同浴場等を運営している組織)の皆さんの高い志によってつくられたのが、この下呂発温泉博物館です。少しでも温泉の教育普及に貢献し、確かな温泉文…

  • 下呂温泉はなぜ「日本三名泉」なのか

    下呂温泉、草津温泉、有馬温泉は「日本三名泉」と呼ばれることがあります。なぜ、この三つの温泉地が「日本三名泉」なのでしょうか。 江戸時代の温泉番付(下呂発温泉博物館所蔵) 下呂温泉の歴史は古く、『飛州志』や、その他の記載から、平安時代の延喜年間(901~923)や天暦年間(947~957年)に温泉が発見されたという伝承が残っています。あくまでも伝承ですが。 室町時代の詩僧・万里集九(ばんりしゅうく)は、漢詩文集の東国旅行記『梅花無尽蔵』において、「本邦六十余州、毎州有霊湯、其最者 下野之草津、津陽之有馬、飛州之湯島(下呂)、三処也」と記しています。 さらに、江戸時代には儒学者の林羅山も、『林羅山…

  • 下呂温泉が湧き出すメカニズム

    下呂温泉とかつての露天風呂「噴泉池」 残念ながら現在は足湯として利用 岐阜県の下呂温泉は、川の水や降った雨(天水)が断層などから浸み込んで地下深くに達し、それが地下深くで温められ、再び湧き出してきたものです。 かつて下呂温泉地内の飛騨川の河床から自然湧出していた(年代不詳) トリチウム(水素の同位体 )による調査の結果、下呂温泉のある源泉は「降った雨が地下深くに浸み込んで、それが温められて湧き出す」までの時間が40年程度であることが示唆されました。 意外と知られていないのですが、1950~1963年に海外で行われた核実験により、地球全域に人工のトリチウムが降り注ぎ、地球上を循環する水が汚染され…

  • 温泉浴槽の泡で汚れがわかる

    温泉が給湯口から温泉浴槽に落下する時、同時に空気を取り込むために、水面に泡ができます。 温泉ではなく、きれいな水なら、水面にできた泡はすぐに消えます。 温泉の場合は、食塩泉は粘性が高いので泡がやや消えにくく、炭酸カルシウムを大量に析出するような温泉でも消えにくい場合がありますが、一般的には、温泉水に有機物が多く含まれるほど、水面にできた泡は消えにくくなります。 いわゆる「黒湯」や、コーラ色に代表されるような「モール泉」と呼ばれるような泉質の温泉の場合、もともと温泉の中にフミン酸などの天然の有機物が含まれていますので粘性が高く、水面にできた泡は消えにくくなります。 温泉に人が入浴すると、温泉の中…

  • 「乳白色の温泉」のメカニズム

    あこがれの乳白色の温泉 青色の温泉のメカニズムは、メタ珪酸粒子によって「レイリー散乱」が起こることによるものでした。 それでは、乳白色の温泉のメカニズムは?と、考えたくなります。今度のキーワードは、温泉で生成される微粒子と「ミー散乱」です。 乳白色の温泉は、多くが「単純硫黄泉(硫化水素型)」「含硫黄―〇〇―〇〇泉」といった泉質で、温泉中に気体の硫化水素を多く溶かし込んだタイプです。 温泉が地上に湧き出すと、温泉水中に溶けていた硫化水素が空気中の酸素に触れて、温泉水中には個体の硫黄ができます。硫黄の粒(硫黄コロイド)は結構大きくて、太陽光のすべての波長の光(七色の光)は、硫黄の粒に出くわすと通過…

  • 「青色の温泉」ができるわけ

    「青い温泉」も「青い空」も同じメカニズム 子どもの頃はずーと、空が青いのは宇宙の色が見えているからだと思っていました。 太陽の光は「波長の違う様々な色の光」からなり、そのために、光が水滴やプリズムなどを通過して分解されると「虹色」となって現れます。 虹色を構成する様々な波長の光が集まると白色になるので、太陽をじかに見ると白色に見えます。 太陽光のうち青色の光はレイリー散乱により四方八方に分散する(筆者原図) 太陽の光が空気中の窒素や酸素の分子に出くわした時、赤色などの長い波長の光は何事もなく真っすぐ通過していきますが、波長の短い青色系の光は分子にぶつかってしまい、四方八方へ散乱して散っていきま…

  • 温泉はどこへ向かっているのか

    『驚異のドキュメント 日本浴場物語』を視聴して 12年前の日本温泉地域学会において、東京国立近代美術館フィルムセンターの浅利浩之さんが、「映画『驚異のドキュメント 日本浴場物語』が物語る浴場と欲望」というテーマで発表をされました。強烈なインパクトがあり、帰宅後、早速DVDを購入しました。 『日本浴場物語』のDVD 作品は「風呂とは何か」というテーゼを発しているようですが、それよりも高度経済成長期の温泉や風呂の映像が新鮮でした。 大阪万博でおなじみの「人間洗濯機」、今は廃墟となっている和歌山県有田観光ホテルの「空中風呂(アポロ風呂)」や「鏡風呂」「牛乳風呂」、その他全国の、「金風呂」や「ジャング…

  • つげ義春の温泉

    岐阜市柳ケ瀬の「ねじ式」 岐阜市の歓楽街?柳ケ瀬に、国宝級(人によって見解が異なります)の看板があります。「ねじ式」です。スナックの看板です。夜になるとピンク色の輝きが一層魅力的です。 柳ケ瀬の「ねじ式」の看板。 タイトルも字体も色彩もすばらしい。 『ねじ式』は、つげ義春の代表作と言われる作品のタイトルです。千葉県房総半島の太海を舞台にした作品で、つげ義春にしては珍しく温泉が直接の舞台になっていません。 失礼ですが、千葉県の温泉というとあまりパッと浮かんできませんが、小室(1981)の論文には 114もの鉱泉が記載されている日本有数の鉱泉県でした。 つげ義春の作品に登場する温泉の多く(82%ぐ…

  • 地名も大切な文化だと思うのですが

    私が大好きな地名 23年ぶりに大好きな地名の標識に会ってきました。 私が日本一好きだった地名 「兵庫県 温泉町 湯」 「温泉町湯」という憧れの地名も、浜村町と合併して今や「新温泉町湯」になっていました。ゴジラもウルトラマンも温泉も「シン」の時代なのです。 「浜村町も温泉地なので、温泉町のままでよかったのに」と、第三者の私は勝手に思ってしまいます。 いつの間にか「新温泉町」になっていた かつての「温泉町」にあるのは「湯村温泉」です。「温泉」とは湯村温泉のことなのです。吉永小百合さんの「夢千代」の像も健在です。湯村温泉のシンボル「荒湯」では、観光客が温泉卵を作って楽しんでいます。 湯村温泉で「夢千…

  • 温泉が海水に混じると「にごる」!

    温泉の楽園「薩摩硫黄島」 鹿児島県の薩摩硫黄島へ行った時、船の横をトビウオが飛ぶわ飛ぶわで、びっくりしました。鳥のように数十メートルは軽く飛んでいました。トビウオの「羽のような鰭(ひれ)」は飾りではなく、ちゃんと機能していることがわかりました。 今日の本題は、その船が着いた先「薩摩硫黄島」です。 活動を続ける火山の小さな島で、港へ着いたとたん青い海がまっ茶色に染まっていてびっくり。島の海岸線のほとんどすべてからは温泉が湧き出し、海に流れ込んでいました。 いつも茶色く染まる薩摩硫黄島の長浜港 温泉成分が析出して茶色く染まった温泉に棲む魚 温泉が海に流れ込むと、温泉成分のイオン(多くが透明)が、海…

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