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  • ゾルゲ事件の陰影

    新書725ゾルゲ事件 (平凡社新書 725) 作者:加藤 哲郎 平凡社 Amazon 1941年9月から翌年4月にかけて、ソ連に対する機密情報漏洩の疑いで合計35人(うち外国人4名)が検挙された。いわゆるゾルゲ事件である。この事件でリヒャルト・ゾルゲと尾崎秀美(ほつみ)の2人が、1944年11月7日、死刑に処せられた。 「ゾルゲ事件」(加藤哲郎/平凡社新書)によれば、ゾルゲは1895年、ドイツ人の父親とロシア人の母親の間にアゼルバイジャンのバクーで生まれ、3歳のときベルリンに移った。国籍はドイツである。第1次大戦でドイツ軍に志願して重傷を負った。ベルリン大学とキール大学で労働問題とマルクス主義…

  • アマゾン開拓と日本人

    アマゾンの歌: 日本人の記録 (中公文庫 M 14-3) 作者:角田 房子 中央公論新社 Amazon アマゾン川はアンデス山脈北部に源流を発し、ブラジル北部を横断して大西洋まで流れ渡る。多くの支流を擁するその流域面積はオーストラリア大陸に匹敵し、ブラジル国内では国土の6割を占める。 アマゾンの産物で最初に国際市場に登場したのは天然ゴムである。アマゾン原産のゴムの木(ヘベア樹)から採れる樹脂は天然ゴムの原料として最も良質だった。そのためブラジル政府はゴムの木の種子を国外に持ち出すことを禁じていたが、1876年、英国がその種子を入手し(違法に)、東南アジアの植民地で大規模栽培を始めた。19世紀末…

  • ハル・ノートの「China」と満洲

    日米開戦外交と「雪」作戦 ハル・ノートを書いた男 (文春新書 28) 作者:須藤 眞志 文藝春秋 Amazon 1941年11月26日、米国のコーデル・ハル国務長官は在米日本大使館の野村吉三郎と来栖三郎の二人の特命全権大使に対し「合衆国及び日本国間協定の基礎概略」とタイトルを付した文書を提示した。戦後「ハル・ノート」と呼ばれるようになったものである。 東京の東郷茂徳外務大臣に電報で伝えられたその内容を日本側は最後通牒に相当するものと受け取った。だが、同文書の冒頭に「Tentative and Without Commitment」(仮案にて拘束せられることなし)と明記されていたことからすれば、…

  • 日本国憲法の栄誉

    日本国憲法を生んだ密室の九日間 (角川ソフィア文庫) 作者:鈴木 昭典 KADOKAWA/角川学芸出版 Amazon 戦後まもなく制定されたある法律について国立公文書館で立法時の資料を閲覧したことがある。出てきたのは厚紙の表紙に紐で綴られた分厚いもので、開けてみると原本なのに意外にも古さを感じない。資料をめくるごとにまるで終戦直後へと引き込まれていくような感覚を覚えた。 最後の一枚を目にしたときの衝撃は今も忘れられない。思わず「おおっ」と声が出た。GHQ(連合軍総司令部)が時を超えてぬっと現れたのである。それは英文でタイプされた法案骨子の箇条書きで、立案の始まりでありかつ結論だった。「こんな法…

  • 限界集落は招くよ

    限界ニュータウン 作者:吉川祐介 太郎次郎社エディタス Amazon 数年前、東京で高校時代の友人と歓談したときのこと。帰省した折にわざわざ私の実家がある集落を車で通り抜けてみたという。「いいところだね」と驚いていた。お世辞を言い合うような間柄ではないから、多少は割引くとしても本当にそう思ったのだろう。 18歳で上京して以来、故郷の佇まいの変化に大して気をとめることもなかったのだが、確かに近年、新しく建て替わる家々が目につくようになっていた。年老いた両親の専属運転手になるため東京に家族を置いて実家に居を移して3年が過ぎ、あらためて集落を見渡してみると、四季折々の彩を通してどこの家でも年寄りたち…

  • 陰謀論では済まない

    9/11: 爆破の証拠 - 専門家は語る Richard Gage Amazon 「9・11の矛盾 ー 9・11委員会報告書が黙殺した重大な事実」(デヴィッド・レイ・グリフィン/緑風出版)を読み、ドキュメンタリー「911:爆破の証拠ー専門家は語る」を見て、今さらながら陰謀論で済ませられるものではないと思った。 前者は米国の公式報告書である「米国同時多発テロ事件に関する独立調査委員会報告書」(2004年7月)について、同事件の目撃証言・映像・当局発表等との矛盾点を列記したものであり、後者は同事件で不自然に崩壊した世界貿易センター第7ビルについて、構造工学・高層建築・材料工学・制御解体などの専門家…

  • シーボルト事件とは何だったのか

    文政十一年のスパイ合戦―検証・謎のシーボルト事件 作者:秦 新二 文藝春秋 Amazon 1829年12月30日、33歳のシーボルトを乗せたオランダ汽船が出島を離れて港口に差し掛かった時、汽船に向かって漕ぎ寄せる一艘の小舟があった。やがて汽船からもボートが降ろされ、小舟へと漕ぎ寄せる。もどかしくもボートを漕ぐのはシーボルトその人である。シーボルトの門人たちが漕ぐ小舟には、シーボルトの妻22歳の滝(たき)がシーボルトとの間に生まれた2歳の娘イネを抱いてうずくまっていた。幕府から国外退去と再入国禁止を申し渡されたシーボルトとの最後の別れをさせるべく門人たちが舟を出したのだった。 「シーボルト」(板…

  • 打ち続けること

    人生はそれでも続く(新潮新書) 作者:読売新聞社会部「あれから」取材班 新潮社 Amazon 10年ほど前だろうか、テレビの囲碁対局であまりに早く大勢が決まってしまったことがあった。往年の名棋士である解説者によると、もはやどうにも挽回のしようがない状況らしい。放送時間に満たずに投了した場合、盤上で石を並べながらあれこれ検討を行って時間を延ばすのだが、その手ではとうてい足りそうになかった。すでに投了不可避となった若手棋士は強張った表情でなおも対局を続けた。そのとき解説者が口にした「打ち続けることは大事なことです」という言葉が何かとても意味深いものに思えて印象に残った。 「人生はそれでも続く」(読…

  • 伊藤博文のVサイン

    伊藤博文 近代日本を創った男 (講談社学術文庫) 作者:伊藤之雄 講談社 Amazon 明治20年(1887年)4月20日午後9時、鹿鳴館時代のクライマックスとして歴史に刻まれた仮装舞踏会が幕を開けた。時事新報は「内外朝野の貴顕紳士及び其夫人等の参集はほとんど四百余名近き多人数なりし」と報じた。浅田真央のスケートで耳に残るハチャトリアンの「仮面舞踏会」のワルツがよみがえり、華やかなときめきに満ちたであろう舞踏会のにぎわいが偲ばれる。 記事は続けて「紅顔玉を欺くの淑女顕はるるかと見れば、忽ちにして勇壮鬼を挫く猛獣躍り出で」と記す。その場面を「ウィーンに六段の調 戸田極子とブラームス」(萩谷由喜子…

  • 対米開戦の責任を問う

    日本人はなぜ戦争へと向かったのか: メディアと民衆・指導者編 (新潮文庫) 作者:NHKスペシャル取材班 新潮社 Amazon 1931年の満州事変から太平洋戦争へと至る歴史の中でどうにも理解に苦しむのは、陸海軍がともに勝ち目がないと考えていたはずの米国との戦争に、なぜ踏み切ってしまったのかという点だ。 戦後、陸軍と海軍はそれぞれに有志が集まって反省会を行った。陸軍の反省会の内容は、財団法人偕行社の機関誌「偕行」に、1976年(昭和51年)から1978年(昭和53年)にかけて「大東亜戦争の開戦の経緯」として15回にわたって掲載された。 海軍の反省会は1980年(昭和55年)から1991年(平成…

  • 原爆の経緯と責任

    ロバート・オッペンハイマー ――愚者としての科学者 (ちくま学芸文庫) 作者:藤永茂 筑摩書房 Amazon 「ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者」(藤永茂/ちくま学芸文庫)は、「原爆の父」として歴史に名を刻んだ米国の理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を原子爆弾の開発に焦点を当てて記したものである。著者はカナダ・アルバータ大学で長年にわたって理学部教授を務めた量子化学者である。 この本を読んで、米国による原爆開発は避けることのできないことだったのだと痛感した。1938年に人為的な核分裂を実現した物理学の発展によって、原子爆弾の開発は目前のものとなった。各国の物理学者たち、…

  • デカブリストの乱

    秘史デカブリストの乱―ニコライ1世の即位 恒文社 Amazon 1819年の夏、若きニコライは、年の離れた長兄のロシア帝国皇帝アレクサンドル1世から、次の皇帝となるべく覚悟をうながされた。このとき、ニコライは絶望のあまり妻とともに泣き崩れた。アレクサンドルには子がなく、すぐ下の弟コンスタンチンは帝位に就くことを嫌ってポーランド総督として駐在するワルシャワを離れようとしなかった。 ニコライは後に帝位に就くのだが(ニコライ1世/1825年~1855年)、皇帝になれと言われて絶望してしまうような国はそうあるものではない。作り話のような話だが、ロシア帝室の秘密文書に記録されたニコライ自身の手記に記され…

  • 保守の変容

    フランス革命についての省察 (光文社古典新訳文庫) 作者:エドマンド・バーク 光文社 Amazon 「フランス革命についての省察」(エドマンド・バーク/光文社古典新訳文庫)を読んでみた。もし、これから本書を読む人がいれば、巻末の訳者による解説から読み始めることをお勧めする。バークの思想の核心と背景が簡潔にまとめられているほか、各章の概要が記されている。原文には章立てがないのだが、約500ページに及ぶ長文を訳者が13の章に分けて各章にタイトルをつけている。 バークは長年にわたってイギリス下院(庶民院)議員を務めてきたホイッグ党(後の自由党)の重鎮であり、フランス革命が勃発したときフランスの若い知…

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