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  • インターネットの抜本的な革新が必要では

    アップルvs.グーグル (SB新書) 作者:小川 浩,林 信行 SBクリエイティブ Amazon インターネットの起源は半世紀以上も昔の米国国防省の実験プロジェクトにさかのぼる。1969年、米国の4つの大学のコンピューターを接続するネットワークの実験が開始された。この実験ネットワークが拡大し、1983年には軍用ネットワークが分離して非軍事ネットワークとして独立した。1990年代になってインターネットサービスプロバイダーが接続サービスを開始したことによって今日のインターネットが誕生した。 2007年6月、インターネットの利用に画期的な飛躍が起きる。iPhoneの登場である。携帯端末の全面にWeb…

  • あるシベリア抑留者の手記

    収容所(ラーゲリ)から来た遺書 (文春文庫) 作者:辺見 じゅん 文藝春秋 Amazon 厚労省の調査によると、1945年の終戦時、日本人(軍人、役人、民間人)約57万5千人がソ連各地の強制収容所に連行された。そのうち5万5千人が抑留中に死亡し、47万3千人が日本に帰還した。 「収容所から来た遺書」(辺見じゅん/文春文庫)は、帰還者たちへの聞き取りにより抑留の実態を今日に伝えている。巻末にこの本が書かれた経緯が記されている。 1986年、読売新聞社と角川書店が主催して「昭和の遺書」を募集した。全国各地から寄せられた遺書の中に、編者として関わっていた著者が特に目を引かれたものがあった。それは抑留…

  • 悲劇の背景

    東芝の悲劇 (幻冬舎文庫) 作者:大鹿靖明 幻冬舎 Amazon スーパーでメザシの前を通るとき、ついうっかり一礼してしまいそうになる。土光さん宅の食卓のメザシが一躍脚光を浴びたのは40年も昔のことだ。当時、土光敏夫は東芝の社長・会長を経て、第二次臨時行政調査会の会長だった。質素な生活ぶりは有名で、実直そのもののような存在だった。 東芝提供の「サザエさん」は、毎週、お茶の間のテレビで善良な生活を表現して見せた。東芝の家電製品は明々と信頼を照らし出していた。 その東芝が不正行為によって存続の危機に陥ることなど誰が想像できただろう。「東芝の悲劇」(大鹿靖明/幻冬舎文庫)は、その衝撃的な事態がなぜ、…

  • 帝国の幻影

    神聖ローマ帝国 (講談社現代新書) 作者:菊池良生 講談社 Amazon むかし神聖ローマ帝国という国があった。古代ローマ帝国の親戚のようでもあり、しかもそれを上回る立派な帝国だというのだ。初めて耳にしたときは、それほどの偉大な国を知らなかった迂闊さと非常識にうろたえた。だが落ち着いてみると、その仰々しさには温泉地の秘宝館とまでは言わないが、どこか胡散臭いところがないではない。 神聖ローマ帝国は中世から近世にかけて西ヨーロッパに実在した。だが、ヴォルテールは「神聖でもなければローマでもなく帝国でもなかった」と書き、ゲーテは「今日ドイツ帝国が解散した」とそっけなく記した。 「神聖ローマ帝国」(菊…

  • 運命のレイキャビク

    アイスランドからの警鐘―国家破綻の現実 作者:アウスゲイル・ジョウンソン,Asgeir Jonsson 新泉社 Amazon アイスランドは北極圏の島国である。スカンジナビア半島とグリーンランドに囲まれたノルウェー海に位置する。韓国より少し大きいぐらいの面積で人口は約35万人。島の大部分は不毛の高原だがメキシコ暖流が流れる沿岸地域は冷夏・暖冬の気候に恵まれている。10世紀初め、ノルウェーに統一王権が成立したとき、圧制と租税から逃れたノルウェー人が移住して共和制の国家を作った。 最初の定住者は海賊すなわちバイキングだったが、角のついたヘルメットをかぶっていたわけではない。「アイスランドからの警鐘…

  • SNS第2章への期待

    フェイスブック 若き天才の野望 作者:デビッド カークパトリック 日経BP Amazon フェイスブックは、そのユーザー数が世界全体でで29億人を超えており(2022年1月時点)、世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である。「フェイスブック」(デビッド・カークパトリック/日経BP)は、フェイスブックが誕生した2004年から2010年までの軌跡を当事者たちへの密接な取材に基づき詳細に伝えている。 『フェイスブック』というのは元々は米国の高校や大学で作成されていた顔写真付き名鑑のことであり、SNSのフェイスブックはそのオンライン版として学生たちが作り上げたものだ。そのため、2…

  • 水平を越えて

    被差別部落の青春 (講談社文庫) 作者:角岡伸彦 講談社 Amazon かつて東北では集落のことを普通に「部落」と呼んでいたのだが、最近、地方紙や自治体の広報誌などで一向にその表記を見ないことに気がついた。ひょっとしてと、ネットで調べてみたらやはりそうだった。 平成4年(1992年)、山形県でべにばな国体が開催された際、地元自治体から被差別部落と混同されないように配慮が必要だという声が上がり、「地区」や「集落」といった表記への言い換えが進んだらしい。東北ではそれ以前にも何回か国体が開催されていたことからすると、主に西日本で広まっていた認識が東北まで及んだのがちょうどその頃だったということかもし…

  • 登る理由

    剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む 作者:高橋 大輔 朝日新聞出版 Amazon 登山はスポーツなのだろうか。たとえば短距離走であれば、学校の運動会からオリンピックに至るまでスポーツであることに疑問を差しはさむ余地はまったくない。上位の競技会になればなるほどスポーツとしての性格が際立つ。 その点で登山は明らかに異なる。難度が高くなるにしたがって危険度が増し、高難度の山では死とぴったり背中合わせになってしまう。それはスポーツの枠に収まるものだろうか。登山をやらない者としては「何のためにそこまでして」と思ってしまうのだが、困難を克服して山頂に到達する喜びは、ひとたび味わってしまうと虜に…

  • ドレフュスの声

    ドレーフュス事件 (文庫クセジュ) 作者:ピエール ミケル 白水社 Amazon 「ドレフュス事件」は19世紀末のフランスで発生した軍事情報漏洩事件である。1通の手紙から始まったその事件は次第に奇怪な展開を遂げて膨れ上がり、フランスの国論を二分して政府と軍の存立を揺るがすほどの国家的事態へと発展した。 その背景にいくつかの歴史的要因が注目される。第1に、普仏戦争(1870年~1871年)でフランスはプロシアに大敗を喫し、第二帝政の崩壊やアルザス=ロレーヌ地方の割譲といった多大の犠牲を払った上、ドイツ統一により隣国に強大なドイツ帝国が出現したこと。第2に、フランス革命(1789年)における人権宣…

  • 宅急便が目指したもの

    小倉昌男 祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの (小学館文庫) 作者:健, 森 小学館 Amazon 「宅急便」はヤマト運輸の登録商標である。同社は全国に遍く提供する宅配便サービスを初めて事業化した。それを実現した小倉昌男はヤマト運輸の二代目社長であり、到底無理と思われていたこの難事業の実現によって経営破綻に瀕していた同社を新たな発展へと導いた。宅急便をはじめとする宅配便サービスは今や生活や業務になくてはならないものになっており、まさに「社会インフラ」と呼ぶにふさわしいものとなっている。 その事業化を目指した苦闘と達成の経緯は自著「小倉昌男 経営学」(日経BP社)に詳らかに記され…

  • 重忠謀殺の背景を巡る夢想

    中世武士 畠山重忠 歴史文化ライブラリー 作者:清水亮 吉川弘文館 Amazon 1205年6月22日(7月10日)正午頃、畠山重忠の軍勢130余騎は、武蔵国二俣川で北条義時率いる数万騎の大軍勢と対峙した。鎌倉に変事ありとの知らせを受けて出陣してきたのだが、先に鎌倉に出た嫡子重保がその日の朝に殺されたこと、そして自分に対する追討の軍が迫っていることを知ったのはその直前だった。 重忠は慈円が「由々しき武者なり」と記したように、第一の者と評判されたほどの武者である。すべてを見切って重忠は大軍勢に真っ向から立ち向かった。鎌倉幕府の史書「吾妻鏡」によれば、戦は4時間余りにも及び、重忠の死で決着がついた…

  • 玉砕の実情

    満州とアッツの将軍 樋口季一郎 指揮官の決断 (文春新書) 作者:早坂 隆 文藝春秋 Amazon 1943年(昭和18年)5月30日午後5時、大本営はアッツ島守備隊が「全員玉砕せるものと認む」と発表した。アッツ島守備隊は最後の突撃を行う前に電信装置を破壊したため、司令部は米海軍の平文による通信を傍受することによって戦況の把握に努め、米海軍省が30日に「アッツ島日本軍の残存部隊は全滅した」と公表したのを踏まえて上記の発表となった。 同年7月、キスカ等の守備隊5千名の撤退作戦が実行され、軍艦の数と航空戦力で勝る米軍の隙を突いて全員の撤退をやり遂げた。この時のある逸話が今日にいたるまで語り継がれて…

  • 韃靼人が踊った果てに

    世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫) 作者:岡田 英弘 筑摩書房 Amazon 「韃靼人の踊り」(原曲名「ポロヴェツ人の踊り」)は、帝政ロシアの作曲家ボロディンのオペラ「イーゴリ公」の中の曲で、哀調を帯びた美しい旋律はテレビCMでもなじみ深い。 この曲名だが、「世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統」(岡田英弘/ちくま文庫)によれば、「ポロヴェツ人」を「韃靼人」と訳したのは誤りだという。 ポロヴェツ人とはチュルク系遊牧民のキプチャク人(クマン人とも呼ばれた)のことで、タタール人(トルコ語を話すイスラム教徒のモンゴル人)を指す「韃靼人」ではないという。 キプチャク人は11世紀から13世…

  • 万葉のモーツァルト 古今のブラームス

    七五調の謎をとく―日本語リズム原論 作者:坂野 信彦 大修館書店 Amazon クラリネット五重奏曲といえばモーツァルトとブラームスだろう。モーツァルトは1789年(33歳、死の2年前)に「クラリネット五重奏曲 イ長調」を、ブラームスは1891年(58歳)に「クラリネット協奏曲 ロ短調」を発表した。 いずれも至高の傑作だが、その趣きははっきり異なる。モーツァルトの作品は雅やかな気品を湛えてゆるぎなく、明るくのびやかで屈折がない。対してブラームスの作品は際立って優美でありつつ、内省的で繊細な雰囲気を強くまとっている。このふたつの作品に対する吉田秀和の批評は核心を突いて容赦がなく、ブラームスが気の…

  • 「ソ連」という信仰

    ソ連という実験: 国家が管理する民主主義は可能か (筑摩選書) 作者:松戸 清裕 筑摩書房 Amazon ロシアのウクライナ侵攻後、同国の独立系調査機関レバダ・センターが3月に行った世論調査で、軍事作戦を支持するという回答が81%にものぼったというニュースはあまりにも意外だった。 プーチンの個人的な妄想から始まったことなのだから、ロシア国民の圧力でプーチンはじきに地位を追われ、間もなく紛争は終わるだろうと思っていたのだが、事態の深刻化と長期化が避けられないことを示す冷酷な事実は衝撃的だった。 6月下旬の調査でも75%という高い水準にとどまっていて、高齢者ほど高い支持率を示しているが若年層の支持…

  • 木の上のゴッホ

    ゴッホの手紙 (新潮文庫) 作者:小林 秀雄 新潮社 Amazon 先日、随分と久しぶりに従姉に会った。すでに還暦を過ぎて何年も経ったはずなのだが、相応に歳をとったようには見えない。若い時から鄙には稀なという言葉そのもののような人だった。嫋やかな風情は風に揺れる柳のようでもあり、さては狸かと怪しんだ。 その弟は画才があり、伯父がよく冗談で「死んでから有名になるか」と言っていたのを思い出す。従姉を描いた鉛筆画の流麗なタッチは素人離れしていて、これはいつかきっと高く売れると中学生の私はひそかに思ったものだ。従兄はプロの絵描きになった。 死んでから有名になった画家の代表格はゴッホであろう。生きづらい…

  • ゆりかごの前

    なぜ、わが子を棄てるのか―「赤ちゃんポスト」10年の真実 (NHK出版新書 551) 作者:NHK取材班 NHK出版 Amazon 昨年春先に脳梗塞で倒れた老父が点滴だけで命脈を保っている。この1年数か月の間に3つの病院と1つの老人施設でお世話になった。そのどこでも実に至れり尽くせりの手厚い治療と看護と介護を受けてきた。 ひと月ほど前、担当医師から連絡があり、点滴に使える血管がなくなってきたとのことで、点滴が続けられなくなった場合の処置としていくつかの提案があったが、本人に苦痛を与えないよう全て断って最後を看取ることにした。医師の話からするとほぼ1週間ぐらいで臨終に至るものと思われた。 こうな…

  • 昭和の遠景とプロ野球中継

    嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 作者:鈴木 忠平 文藝春秋 Amazon 昭和の居間にプロ野球中継はよく似合った。ブラウン管テレビの前で、のんびりした団らんと野球のリズムが調和していた。 平成が年を重ねるにつれてテレビの野球中継が減った。視聴率の低下が理由だが、背景には家族がそれぞれに忙しくなった生活様式の変化がある。携帯電話とインターネットの登場によって余暇の過ごし方が多様化し、野球の試合時間の長さが新しい生活スタイルに合わなくなったのだ。 この状況と軌を一にして変わったものがある。スポーツ新聞の発行部数である。日本新聞協会の集計によると、2021年のスポ…

  • サラリーマン

    お祈りメール来た、日本死ね 「日本型新卒一括採用」を考える (文春新書) 作者:海老原 嗣生 文藝春秋 Amazon 1980年代の名物TV番組「オレたちひょうきん族」で、「サラリーマン」というキャラクターが登場したことがある。変身するとスーツ姿の「サラリーマン」となって名刺を差し出す。「普通のサラリーマンじゃないか」と言われると、「だから怖いんだ」と返す。 「普通のサラリーマン」は数において最大勢力である。全部まとまれば民主主義国家では最高権力を握るが、「俺がこの国の最高権力者だ」と言い出す会社員がいたら病院に運ばれる。 1983年、「サラリーマン新党」という政党が旗揚げし、同年の参院選で党…

  • 草原の反乱

    内モンゴル紛争 ――危機の民族地政学 (ちくま新書) 作者:楊 海英 筑摩書房 Amazon ウクライナの趣のある美しい街並みが、あっという間に色彩のない瓦礫の廃墟へと変わってしまった。戦場の現実がリアルタイムで手元に届く。 最近よく耳にする「抑止」という美しい言葉は、恐怖と希望をともに湛えて心を震わせる。日本人にとって、この言葉がこれほどの切迫感を伴って語られたことがかつてあっただろうか。 第三次世界大戦や核戦争へと発展する可能性を否定できない危うい状況の上に、今、日常が乗っかっている。 現在の戦場は東ヨーロッパだが中国の動静からは気が抜けない。中国が台湾の回復を決してあきらめないことは、日…

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