雉岡城址(埼玉県本庄市)の夜泣き石を初めて目にしたのは、冬の日の宵時だった気がする。薄暗く、誰もいない城址で、夜泣き石は深い堀の下でポツンと佇んでいた。国府台城(千葉県市川市)にも夜泣き石がある。国府台合戦で敗死した武将の娘が、亡き父を偲んで石にもたれて泣き続けていたという。娘は悲しみのあまり息絶えてしまう。その亡骸は葬られたが、石からは毎夜すすり泣く声が聞こえたと伝わる。夜泣き石伝説は日本各所にある。「伝説」ゆえ、言い伝えを史実とするには注意が必要となる。伝説の由来はさておき、一説に日本人の石に対する信仰心を表わしているのだろう。巨石や不思議な形をした石など、信仰の対象としてきた。国府台城址には、明戸古墳という前方後円墳が横たわっている。石棺がむき出しになっており、江戸時代の一部の人は国府台合戦と結び付...国府台城址にある伝説の石は?