「この初夏の雨の朝」解き放たれた目覚め窓の外には初夏のやわらかい雨窓を開ける孤独に倦んだ憂鬱も今朝のこの窓には見つからない四日前か明け方の東天を昇りゆくアマテラスの黄金光が今朝の私の血流に滲む飢えているのではなく飢えていたのだだがまた あした私は飢えるのか相手に無い渇愛にこの初夏の明け方引地川の水面は虹色に光るとどまる事なき時の無常をこの川の神は無言の内側で歌うのだ螺旋状に開き螺旋状に閉じてゆく時...
詩人・木村浩欣の2013年8月からのブログです。 日本文化・東洋思想・神秘思想を基盤に、和歌・俳句・写真詩の創作をして、「祈りの詩文芸」に取り組んでいます。皆々的との楽しい交流を希望しおります。合掌・感謝・詩人・木村浩欣。
「エメラルドの淡き光」はずした念珠のエメラルドの淡き光夜のしじまに透き通るティンシャの音色覚醒を待ちわびるDNAサマディーはこの骨盤に用意されているのに未だ 私は それを使えない唯々 無限の虚空をブラックコーヒーとともに呑み込んでいる街をゆく乙女たちの声色は細くなったその理由が分からない観音の千の掌は千の香りを自在に操り人々の正直さを導いている道具たちは首座を降りたのだ心は中心を思い出しその出生地へ...
「紅蓮華もあそぶ」 天日へせり上がりたる蓮の花 ( 村上 喜代子 )和歌三首 ちはやぶる神世は地上に在りしかな 紅蓮ひらく7月の朝 御仏の救い歌ひて開きしは 紅蓮の香の千年のわざ 伝説を知らぬ童も見つめたる 紅蓮あそぶ地上のよろこび俳句七句 紅蓮をゆらせる風はいずこより 泥中に炎ありしか紅蓮のいろ 蓮池はドラゴンフライの極楽ぞ 紅蓮の幽なる光の届く場所 薄明の蓮の花弁を...
「白蓮のひかり」 白蓮の落花は明かり置くように ( 森 高武 )和歌三首 万霊の声なき声をのせたるか 白蓮ひらくひとひらの空 薄明に白蓮ひらく花園に あの人もあの人も連れて行きたし 古への人の知らざる白蓮の 何を願いて蒼天に咲く俳句七句 白蓮の花弁のスジを数えけり 白蓮の花芯の黄金しずかなり 蓮ひらく心と言葉のカタチして 天日を大地にうつし白蓮華 やわらかき朝日に直き...
「とめどなく岩清水」 まだ逃げるつもりの土用鰻かな ( 伊藤 伊那男 )和歌三首 山笑う丹沢山の奥沢に せせらぎの音かなでたる歌 ちはやぶる神遊びたる石清水 吾身ひたせば生死こえたり 夢さめて又夢なるか現世に 君の歌いし人の心よ俳句七句 夕暮れの土用鰻の男気よ 人神も羅(うすもの)まといて街をゆく 夏服の後輩汗する遊行寺か 滴りも人を抱きし山静か 音の神の歌とめどなく石...
「白い野獣」瞑想を終えた午前一時ソファーにもたれて息をおろす念珠のルビーの赤の深みを見つめる「てえへんだ!!てえへんだ!!」とテレビもネットも騒ぎ続けているがこの水面の白波は深海魚の千年の夢見にどのような気脈を繋げているのか仙骨から鼻に抜ける吐息SNSで見た美女の笑みと言葉爽風に満ちた由比ヶ浜の朝焼け見えざる重さを焼却しつづける私のペン泥の中に踊る白い野獣よ君はまだ自らの奇跡を知らない天地の鏡はこの...
「白百合ゆれる」 星の夜も月夜も百合の姿かな ( 闌 更 )和歌三首 泪も笑みも唯に見つめる山百合の 静けき朝の水音の満つ 山百合の前に立ちては振り返る たどりし道の影と顔たち 万年も億年ものち咲く百合の花 人は如何にかそれを歌うか俳句七句 深山に白百合ゆれる眩しさよ 瀬音にも百合の香しみる山の朝 百合ゆれる仙女の幽の誘いに 山神の御宝なりし白百合よ 神はただ遊ぶばかり...
「夏の花売人」 水晶の念珠つめたき大暑かな ( 日野 草城 )和歌三首 たまきわる稲のイノチを賜りて 詩の河辺を歩く朝かな ちはやぶる風鈴ゆらぐ夏社 あまたの願いを見下ろす眼差し 街の灯の静けく光る夏の夜に 花売人の笑みのこぼるる俳句七句 朝おきて麦茶のみほす小暑かな 路地裏でタバコ燻らす大暑かな 土の香を肚におさめて夏の陽よ 色満ちて夏暁の由比ヶ浜 短夜や歴史の裏の裏の...
「7月の朝霧」この7月の明け方の広い田んぼの端に座しお日様の昇りくるのをじーっと眺めているはるばると朝霞青鷺が啼きながら飛ぶのだ彼方の叢林には霞がゆらぐなんとも艶やかな天地だろうか7月の田んぼの稲は青々とゆるりゆるりと風を受けている東の空には点々とUFOみたいな雲の群れ薄明はしだいに赤みを増してゆく清らかに燃えてゆく大空柔らかな爽風の只中に座し私はじーっとそれを見ているうっすらとたゆたう朝霞のその向...
「紫陽花がひらく」 紫陽花に水よりも濃き水の色 ( 今井 尚子 )和歌三首 青深く心潜りて紫陽花の はじけて放つ空を写して さやかなる山の瀬音に蜥蜴あり ピタと止まりて吾を見つめる 夏シャツの襟にのりたる髭面を たれて拝する関帝廟かな俳句七句 沢のおと晩夏の闇へねむり入る 涼風の岩の苔にもやわらかし 紫陽花のはじけて湿る路地の蔭 老鶯の森の朝には君がいない 瑠璃蜥蜴水...
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「この初夏の雨の朝」解き放たれた目覚め窓の外には初夏のやわらかい雨窓を開ける孤独に倦んだ憂鬱も今朝のこの窓には見つからない四日前か明け方の東天を昇りゆくアマテラスの黄金光が今朝の私の血流に滲む飢えているのではなく飢えていたのだだがまた あした私は飢えるのか相手に無い渇愛にこの初夏の明け方引地川の水面は虹色に光るとどまる事なき時の無常をこの川の神は無言の内側で歌うのだ螺旋状に開き螺旋状に閉じてゆく時...
「鎌倉の夏潮」 天竺に波らむ朱夏の潮あり ( 岡井 省二 )和歌三首 アレもコレも思ひはすべて虚ろなる 過去も未来も中今の木陰 浄智寺の岩壁に咲く花しろく いにしへ人の慈眼ありしか 門前に猫の歩きて禅寺の 経の声聞く時のまどろみ俳句七句 仏前に息をおろして夏の夜 朝来たり五月雨月のモノ思い 涼風はどこから来るか鎌倉の浜 薫風の白旗川に陽が降りる 五月闇を時計が走る夢さめる ...
「初夏の日の出」 夏めくや双眼鏡の中の海 ( 山本 一歩 )和歌三首 たらちねの母に懺悔の祈りことす 五十すぎても吾は童なり 夏の朝蒼天無限を仰ぎ座す 草むす野辺に老鶯詠いて 江ノ電に外国人があまた乗り 大和心を世に広めたり俳句七句 どこまでも夏の日の出の清和かな 愛としきは立夏の朝の静けさよ 禅寺の説法きけば蛙とぶ 燕の子北鎌倉の空を切る 哲学に生活のなく夏きたる 夏めく...
「鶯のさやけし歌」鶯のさやけし歌は明け方の森に響き渡り顕界と幽界に光が照りとおる樹下に座し仙骨から息を吐く木漏れ日がやわらかく私を撫でるのだ仲春の風は清らかに甘く私の幽体に棲むイノチたちに安楽を与えているそれがこの春彼岸の数日であったいま この夜明け前私は自室のソファーに体を預け傍らの線香の香りの中で呼吸を深めてこの春彼岸の記憶に酔いしれているなんとも甘美な安楽よ心の第三隔壁をすり抜け神我を直撃す...
「紅椿の幻」 神が来し海上の道岬椿 ( 本井 英 )和歌三首 ちはやぶる神代は地上に在りしかな 紅椿落つ鎌倉の寺 旭日の空をじーっと眺めいる この一刻に久遠おもいて 春の森に鶯啼きて輝ける 座せば無尽の過去と未来よ俳句七句 浄智寺の椿の赤に海を見る 紅椿吾が心源に落ちたるか 藪椿ことばに生きる一花あり 街ゆかば花を数えて弥生かな 春の夜の花のかほりは幻ぞ 鎌倉の路地裏に立ち...
「風と遊ぶ白木蓮」 白木蓮の散るべく風のさからえる ( 中村 汀女 )和歌三首 精霊の乗りて遊びし白木蓮 ひとひらゆれて風の光れる 春彼岸朝焼けの野に座したれば アマテラスの歌天地に満ちたり 人の世に哀し嬉しと吾も酔う 祈りに開く春の花にも俳句七句 白木蓮は男神か路地灯す やわらかき風と遊びて白木蓮 そのかほり宇宙にとけて白木蓮 やわらかき春風に立ち君おもう 森の歌しず...
「春霖と雪柳」豚肉とシメジを炒めてツユの素とゴマダレで食べる今朝は春霖君にも食べさせて「おいしい」って笑わせたいけれど君はここにはいない開けた窓から雨の香りと音が滑り込むシトシト ピチャピチャ自動車の水しぶきの音雨粒の香りうっかりそれは甘いのだと言いたくなるがその直感を今朝の私は疑ってみる耳をすませて頭も心も空っぽにしてこの今朝の春霖に向き合う雨上がりには ミミズが出るかな雪柳は濡れるかな河津桜は...
「初桜のひとひら」 初さくら誰へともなく夜の言葉 ( 岡本 眸 )和歌三首 神いずこ人の問いたる河岸に 彼岸桜のひとひらの散る 春の空青を濃くして光たる 河津桜のひらく朝かな 春彼岸いのちのひかりを祈りなば 死の無き国の滲みいずるか俳句七句 陽の降りし河津桜と春の空 初さくら全てよろしと呟ける 蒼天のゆくへを知るか初さくら 春彼岸かぞえきれない星の下 春昼や茅葺屋根の苔...
「形無き妙なる音楽」三月の東の朝の空には雲が踊るまっさらな蒼天は昇りゆく旭日に色彩を変じてゆき踊り続ける雲達はあるいは渦を結びあるいは千切れゆき日の出の輝きに燃え上がってゆく野辺に座しそれを眺める私は自分の感情の風通りの良さを発見して驚いていた鹿の角の先端を百会にあてがい仙骨から細く深く息を吐く鹿の角の先端を百会にあてがい光明真言を唱える万生の念弦は大気に滲みこの旭日の光線に歓喜している陽光の歓喜...
「春灯と黒き道」 春眠や大き国よりかへりきし ( 森 澄雄 )和歌三首 円覚寺の門前の池にひとひらの 梅の散りたる朝の静けさ 風やわしさねさし相模の朝空に 雲は舞いたり神代は明日かと 白き梅ちりそむる朝あゆみけり 出発も終焉も彼方にありしか俳句七句 春灯や黒き道こそ終わりけれ 観梅や空の海にも光りたり 春情や去りし友あり来たりし友あり 春の夢ねてもさめても色遊ぶ 春時雨...
「白梅の白の理由」 竜天に登るわたしは靴を履く ( 鍵和田 秞子 )和歌三首 春彼岸あさひ拝みて吾も座す 仰ぎし空の色のうつろい ちはやぶる春告草に宿る神 その音楽の始まりに立つ たらちねの母の御霊におろがみて 懺悔文となえる春の朝かな俳句七句 啓蟄や落葉の香りて肚に満つ 春分に鳥のとよみて光満つ 仰ぎなば雲も舞いたり春彼岸 満天の夜空を知れり梅夜月 白梅の白の理由は人...
「早春の謎の音楽」早春の森の梢をホオジロがゆらすそこ声は歌なのか 呼びかけなのか私は歩みを止めて彼の姿を追う梢のゆれる音ホオジロの啼く声私の足音この音楽は何処から来たのか私の胸に響く勾玉がシュルシュルと空間を呑み込むこの二月の朝陽は鋭い音もなく鋭く照り通る二月の陽ざしそれを柔らかさに変換しているのは土の匂いであり梢の呼吸でありホオジロの喜びなのだ音のゆらぎの後先を空っぽの耳が探すのだが私の心は そ...
「梅の枝の目白」 白梅や父に未完の日暮れあり ( 櫂 未知子 )和歌三首 彩雲の風に光りて春来たり 赤子笑みする街の真昼に 浄刹に父母の御心問いし夜に 北極星の真白く光れる 梅が枝を目白ゆらせば春の空 歌に満ちたる常世ありしか俳句七句 二月には梅に遊びし目白かな 梅の枝を目白ゆらせば風笑う 梅林に目白のはらから歌こぼる 風光る人法の世も透き通り 天法の降りて楽しや山笑う 彩...
「チガウという」私はチガウと言うチガウ チガウ ソウジャナイ と何がチガウのか何でもいいのさ何が何であれそれはチガウのだこの世が欲する正しさがチガウと 私は云っている私たちが呼吸する大気は何だ私たちが踏みしめる大地は何だ私たちの空想は何だ誰が真実を知っているのか自分だけが真実を知っているのか神か 仏か 先祖か 宇宙か彼らなら真実を知っているのか私はチガウと云うこの蒼天の輝きは 一体なんだ私の心耳に...
「浄刹にても梅咲くか」 夭折も天寿も梅の花の中 ( 有泉 七種 )和歌三首 色しらぬ白梅ひらく相模の野 鳥の歌にもミロク世ありしか 風ゆるみ春告草の白ひかる 蒼天あおぐ白き輝き 佐保姫の舞のはじまる野をゆけば ホオジロ歩く軽やかさかな俳句七句 神に問う浄刹にても梅咲くか 光降る春告草の仰ぐ空 樹下に座し目蓋とじても風光る 春陰に眼光するどき忠魂碑 生死と云う恐ろしき語と春の...
「紅梅かほる」 カントより妻が難解冴え返る ( 坪内 稔典 )和歌三首 紅梅を黄泉の娘にささげたい 泪も涸れた朝の月かな 蒼氓もこの立春に天仰ぐ 地上浄土は我らが開くと 梅の香をたどりて彷徨う枯野には 幽かに舞ひたる詩の神あり俳句七句 立春やモヒカン少年はしり出す 冴え返る海に朝陽の光る道 明け方の海に背を向け春の月 梅月夜第一義なる祈り事す 紅梅の夜明けに咲きて音も無し ...
「パイライトの見えざる火花」パイライトの金色の玉は見えざる火花を撒き散らし白金の五鈷杵は現界と幽界の七層の壁を貫いてほの白く灯る正月の藤沢の街遊行寺の境内カタチなき一者の流出は石段の内部に満ち溢れ満ち溢れ満ち溢れ万生の眠りの内側からこの世界を支え続けている阿弥陀如来の歓喜の掌よ正しき幸福と叫ばれる真白き欺瞞と歪真の心眼は陰から陰へと動いてゆくデジタルからデジタルへ人間の感情は情報の狂乱にやつれ朝露...
「枯野の初時雨」 待つ春や氷にまじるちりあくた ( 智 月 )和歌三首 冬の野に梅の芽いまだかたけれど この日この時おしみて歩む 彼の人も美に灯の心持つ 明日の浄土は我らが開くと 春隣り死の無き国に顔むけて 枯草を踏む今日の一歩か俳句七句 一月や未だ色無き天もあり 老猫と吾が心琴に冬深し 街路樹の歌を聴いては春を待つ 冬晴れの鎌倉駅の中国人 初時雨きのうを忘れ降りしきる ...
「冬椿のしずく」 山の雨やみ冬椿濃かりけり ( 柴田 白葉女 )和歌三首 遊行寺に天女の彫刻みつけては その見下ろせる街の後先 詩の神冬天の雲ながしては 猫も蟻も花もゆれたり 出発の朝の泪のありしこと 忘れる峠の汗のきらめき俳句七句 冬靄の森の深さにひそむもの 寒月や瞑目しても蜜の色 雨粒をキラとのせたり冬椿 寒椿のぬれて光れる路地の裏 冬椿のしずくに映る宇宙かな 古暦...
「盲なる巨大客船」不可解な熱気を帯びた見えざる嵐がこの冬枯れの野辺に音を滲ませる遠くの列車のリズムにも似て人の人の人の言語中枢に真っ黒いモノリスが置かれてゆく信用で食べてる銀行家たちはハラハラしながらポーカーゲームを続けているそれを眺めるこの河原乞食もまたこの明滅を繰り返す気象予報に夢中なのだ常なる事なきこの天地に未だ見たことのない朝焼けのその空には白鷺が一羽川上へ飛んで行くだろうか明日か 来月か...
「水面に踊る夏暁」 六月の木の闇に棲みひとを恋ふ ( 文狭夫 佐恵 )和歌三首 ぬばたまの夜座の静けき時の間に 色の満ちたる音の天地よ ちはやぶる弁財天の御堂にて モザイク模様の願い香りぬ 生きる者死に行く者の連なりて 三万年の言霊が抱く俳句七句 波音の肚に響きて夏の日々 学童の笑い歩きて五月の陽 夏来る水の記憶の深さより 六月の雲のちぎれてなお甘し 相模川の水面に踊...
「草の詩の泉」あたり前の日常あたり前の真昼あたり前の風の匂い心は第三隔壁から風景を眺め深奥の我には何も届かない窓は閉じられたことはないというのにこの地球に生まれた目的を私は歌うしかし誰の作った歌だろうか私は本当に森を見ているのだろうか私は本当に貴方を見ているのだろうか手続きと交換と消費そして創作約束があるかのように昨日は今日になり明日が生まれるその影のような法則は本当の意味を握っているのか空は本当...
「千年のアヤメの色」 さみだれや船路にちかき遊女町 ( 几 薫 )和歌三首 夏の夜に吾が心琴を見つめいる 荒き音と細き音のその背中 花アヤメの色の理由をおもへども 覚え届かぬ神世ありしか 詩にぎり砂漠の街を歩むれば 温き手を持つ友の笑みする俳句七句 わたつみの眠りあたたむ五月雨か 朝焼けの川辺に座してタバコのむ 円月と踊る女神か皐月波 見つめても見つめてもアヤメの...
「海原に月涼し」 はつなつの竹を叩けば竹の音 ( 藤本 美和子 )和歌三首 海原を月の光のまっすぐに 諸人に沿う静けき秘密よ 泪なき四角き真白き言葉たち 全てを焼きて夜座の涼 冴え冴えと五月の円月あおぎなば 吾が心源に波音の沁む 俳句七句 夏美という女に惚れた三十年前 初夏の月ふねをいざない銀の夜 昨日の無き少年のごとく五月くる 短夜や楽しき事も山盛りに 女と云...
「最後の春霖」令和五年の五月一日である今年最後の春霖だ五月五日には立夏である柔らかく細い雨さっぱりとした甘い香りが半分空いた窓から滑り込む桜の蜜か 躑躅の蜜か 藤花の蜜か春天はそれを喜びこの雨に織り混ぜたのか時空の微細に満ち渡る振動の一閃のひび割れから黄金の甘露が現世に滲み出ている華やかさと残酷さを背中合わせにしたような思春期を想う人は皆 その過酷な門をくぐる生き急ぎ 待つことに倦みやみくもに走り...
「春のかたみ」 死は春の空の渚に遊ぶべし ( 石原 八束 )和歌三首 空光るさねさし相模の川べりを 詩を担ぎて歩むは楽し 幻想を病と云いし世は滅び 足下に薫る土のよろこび ちはやぶる氏神さまに祈りせば 春の仕舞ひに藤花かほる俳句七句 悪友も良友も知る春の空 鳥の歌きよめて朝の春時雨 旅立ちし春の形見にルビーの色 春雷を待ちて燻らすタバコかな 大山の笑う夕焼け追いかける ...
「勾玉と夏隣り」 旅人の墓に飯供(お)き夏近し ( 角川 源義 ) 和歌三首 晩春の朝の雨にもさやけしは 猫の瞳の直き光りよ 夏を呼ぶ風に向かいて歩むれば 昨日の明暗すべて滅する 故郷は夜空の向こうに在りしかな 花咲く地上で友と仰ぎぬ俳句七句 晩春のルチルに映る吾が瞳 建長寺の門の厚みや春の暮れ 草かげに時空のくずれ春の宵 亡き人の浄土おもへば長閑かな 値上がりし米...
「静けき春の夜に」 大いなる夜桜に抱かれにゆく ( 井上 弘美 )和歌三首 しろたへの春の雲にも薄明かり 江の島岩屋の波音ひびきて 高照らす春暁の陽をおろがみて 世のさきはえを請い祈みまつらむ たらちねの母の泪を忘れまじ 世人を救えと叫ぶなみだを俳句七句 帰り道仰げば高き春の月 静けき夜に春のかたみの句をひねる 天然霊止人造霊止に弥生尽 春霖は彼我の別なき土に沁む 春の...
「迷妄の動く城」その悲しみは悲しみによって救われた。この世間は云わば迷妄の動く城金色の73本の足を律動なく運び草の声も知らず風の色も知らずメディアの号令に心を汚しながら自らの狂気も知らずに不滅の巨大な生命の森を進んでゆくその悲しみは悲しみによって救われた戦の向こうに天国があると富の向こうに至福があるとこの迷妄の動く城は金色の73本の足を律動なく運び自覚なき群衆を無責任に操作してメディアの音楽に汚さ...
「心の底に花の雨」 ( 相州藤沢の白旗神社境内の弁慶藤 ) 春しぐれ一行の詩はどこで絶つか ...
「無為の人にも廻る天」 踏青や火を経しものの透きとほる ( 野見山 ひふみ )和歌三首 自らの奇跡をしらぬ怪物は 濡れたる土を胸に塗り込む 人そしり己が不浄に迷いては 懺悔文となうる夜の暗さよ 吾は眠る光る草地の夜明け時 鳥もとよみて風は虹色俳句七句 山笑うところどころに桜咲き 母なるか江の島岩屋の春怒涛 風光る吾が夢知りて開くが如くに 鶯も歌いて楽し花見堂 人知れず風...
「江の島の水平線」 春深しひよこに鶏冠兆しつつ ( 三村 純也 )和歌三首 ちはやぶる弁財天の岩屋にて 外国人の瞳かがやく 世の人はテレビの嘘を知ることなく 人を恨みて己忘れる あさ霞森に鶯啼くころに 座して満ちたる草の心よ俳句七句 春暁も死人の微笑か泪仏 花時の無用の用に背を伸ばす 江の島の水平線へと春が行く 五十にて知る春雨の柔らかさ 白梅よ散るな もう泣きたく...
皆々様へ、旧年中は誠に多くの方々に多大なご教導を賜りましたことに、心より御礼感謝を申し上げます。ネット空間に於きましても、現実空間に於きましても、実に多くの方々の励ましと知恵と、情報と、心的宝物を、頂きながら、私自身もこのブログを中心にして、「祈りの詩文芸」に励むことが出来ました。心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。詳細は省きますが、旧年中に私の近しい親族に不幸がありましたので、本年...