ベランダに雀がいると障子開け み
ベランダに雀がいると障子開け み
風花が融けるレンズに岩木山 み
分断を推す者たちが凍え死ぬ み
吹雪いてる マクドナルドは開いてる み
寒雷に詰将棋の本を伏せる み
いまはコーヒーに凝っている。冬の夜(ふゆのよ) み
おねえさん、コートのベルト垂れてます み
靴痕が靴痕のまま霜の朝 み
受験期や何も起きるな籤(くじ)を引く が
時は止められない セーターは伸びる み
番付を諳(そら)んじて待った初場所 み
囲炉裏(いろり)の灰を火箸(ひばし)でなぞる迷路 み
「悉皆屋(しっかいや)」の名刺をもらう初釜 み
新手(あらて)のマルウェアか トロイの竹馬(ちくば) み
道場に響く奇声は歌留多とり み
獅子頭、出番はなくて文化財 み
緊張と弛緩の辻に初笑い み
たるんでる たるんでいます 五日です み
いつの正月か 日付のない写真 み
三日です もう走っている人々 み
女手の如きフォントの賀状来(き)ぬ み
思い付き言葉にすれば去年今年(こぞことし) み
暴落も笑い話の大晦日 み
もうそれでいいんじゃないか年の暮 み
買い物リストの5番目に「葉牡丹」 み
小屋の古暦(ふるごよみ)に「アタック」の記(しるし) み
自動ドアに挟まれた仕事納め み
取り出すは財布か銃か懐手(ふところで) み
凩(こがらし)はどっち向いても向かい風 み
時雨るるか鷗(かもめ)の啼(な)きもピアニシモ み
立ち止まりポケット探る冬木立(ふゆこだち) み
牛鍋や『A5ランク』の意味知らず み
荒星(あらぼし)を背にして帰るプログラマ み
着陸の列に加わる冬の宵 み
落葉カサッカササ 振り返り誰何(すいか) み
娘も泊まることありと畳替え ま
先にいくなら未来で待て、冬虹 み
今日も暇 オアフ半周 冬の風 み
冴える理科室 姿勢のよい骸骨 み
山茶花(さざんか)を挿して不遇の蹲(うずくまる) み
教育と洗脳の隙間に目貼り み
「場所を空けろ。クリスマスツリー様だ」 み
換気扇が細切れにする冬の陽 み
ストーブの分解掃除(ぶんかいそうじ)で見つけた み
図書館に五冊予約の冬支度 み
「フロイデ」で目が覚めた ごめんね第九 み
タクシーに並ぶ梅田の十二月 み
枯葉よ、電子(でんし)も量子(りょうし)や計算機 み
目薬の冷たき頬を垂れ急ぎ み
忘年会の特等席は下座 み
紅葉(もみじ)は闇に。ライトアップの顰(ひそ)み み
薪を割る。綿虫が飛び、日が暮れる み
師走。黄ばんだ写真、黄ばんだ記憶 み
枯蘆(かれあし)が騒いだので窓を閉めた み
ペコペコ社長の景気は大熊手 み
黄色の蛍光ペンで塗る金糸魚(いとより) み
セロリを齧(かじ)る 何かが浄(きよ)められる み
鯛焼の包み紙のひかる匂い み
末枯(うらがれ)は最上階の窓際に み
白菜は芯から喰えと豆知識 み
鴨たちよ、みんなでそっちへ行くんか み
長葱(ながねぎ)はレジ袋から街を見る み
カーブミラーに鶲(ひたき)は影を見るか み
屠場(とじょう)の上に高層ビルの小春 み
麦飯(むぎめし)と季節違いの薯蕷汁(とろろじる) み
表面は沸騰するも芯は冷ゆ み
夕日照るビルのガラスに帰り花 み
畑から脱走したか茶の花よ の
この頃は客人はなし敷松葉 み
雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み
露寒(つゆざむ)やさっき見たのは何だろう み
群時雨(むらしぐれ)、我が町の名はひらがなに み
柘榴(ざくろ)をブロック塀へフォーシームや み
サンルームに冬浅く眠り老いる み
頭から食べて柳葉魚(ししゃも)の尾が残る み
伴走のロープが緩む秋惜しむ み
引いた牛蒡(ごぼう)を銃口に詰めてやれ み
夜霧にハイビームの影はマドロス み
やや寒し、今日は頭が回らぬ日 み
秋深き5時にコミュニティバスを待つ み
AI(えいあい)に真理を託す文化の日 み
脚注に言い訳のある『星月夜』 み
キーを挿しシングルルームに秋の灯 み
うわさの猪(い)の目のイヤリングの魔除け み
いちゃもんをつけながら喰う通草(あけび)の実 み
萩こぼれて時給は百円上がる み
冬瓜(とうがん)を煮て透き通る飛騨の夜 み
シュプレヒコールの軋(きし)みに銀杏散(いちょうち)る み
漱石は金蔓(かねづる)の『柿』、法隆寺 み
落穂(おちぼ)や 昔『グロソブ』 今『オルカン』 み
威銃(おどしづつ)を聞き流せる平和かな み
富士の影、釣瓶落しの五六(ごろく)秒 み
身に入(し)む雨天コールドの後始末 み
網棚はもう網でなく朱欒(ざぼん)置く み
チェロケースはヴィオラケースよりも秋 み
「馬肥ゆ」と見出しは終止形にして み
剃刀(かみそり)の刃の如き秋雨を行く み
秋風にナットが錆びた観覧車 み
ねこじゃらしの穂なら𝄆握って緩めて𝄇 み
何もない気が遠くなる花野道 み
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ベランダに雀がいると障子開け み
風花が融けるレンズに岩木山 み
分断を推す者たちが凍え死ぬ み
吹雪いてる マクドナルドは開いてる み
寒雷に詰将棋の本を伏せる み
いまはコーヒーに凝っている。冬の夜(ふゆのよ) み
おねえさん、コートのベルト垂れてます み
靴痕が靴痕のまま霜の朝 み
受験期や何も起きるな籤(くじ)を引く が
時は止められない セーターは伸びる み
番付を諳(そら)んじて待った初場所 み
囲炉裏(いろり)の灰を火箸(ひばし)でなぞる迷路 み
「悉皆屋(しっかいや)」の名刺をもらう初釜 み
新手(あらて)のマルウェアか トロイの竹馬(ちくば) み
道場に響く奇声は歌留多とり み
獅子頭、出番はなくて文化財 み
緊張と弛緩の辻に初笑い み
たるんでる たるんでいます 五日です み
いつの正月か 日付のない写真 み
三日です もう走っている人々 み
トイレから夜の街へ響け嚏(くしゃみ) み
半端に残った大根、風呂吹きに み
このままじゃ百億年や日向ぼこ み
冱(い)つる駅、途方に暮れる時刻表 み
ミケはミケ、ポチはポチ、炬燵(こたつ)は炬燵(こたつ) み
絨毯(じゅうたん)をマクロレンズで見る勇者 み
雪の積もった信号機、ピッポ―ピ… み
六等星まで見えてたあの霜夜(しもよ) み
『冬のリビエラ』を聴く。日本語ラジオ み
証拠の雪道をポチが駆け回る み
鴛鴦(おしどり)が奇数羽、どれか離鴛鴦(はなれおし) み
マフラーをするりと抜ける艶(つや)の髪 み
初釜は火傷(やけど)しそうな缶コーヒ み
予定では仕事始めだ仮眠室 み
振袖の福良雀(ふくらすずめ)はミッキー似 み
福引や『良性』の二三(にさん)の病(やまい) み
雪暗(ゆきぐれ)に寺の燈(ひ)か無調の諷経(ふぎん) み
「キャッチボールしよう」と緩(ゆる)やか五日 み
システム再起動せず。四日の朝 み
三日の夜(よる)、システム異常終了 み