表面は沸騰するも芯は冷ゆ み
表面は沸騰するも芯は冷ゆ み
夕日照るビルのガラスに帰り花 み
畑から脱走したか茶の花よ の
この頃は客人はなし敷松葉 み
雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み
露寒(つゆざむ)やさっき見たのは何だろう み
群時雨(むらしぐれ)、我が町の名はひらがなに み
柘榴(ざくろ)をブロック塀へフォーシームや み
サンルームに冬浅く眠り老いる み
頭から食べて柳葉魚(ししゃも)の尾が残る み
伴走のロープが緩む秋惜しむ み
引いた牛蒡(ごぼう)を銃口に詰めてやれ み
夜霧にハイビームの影はマドロス み
やや寒し、今日は頭が回らぬ日 み
秋深き5時にコミュニティバスを待つ み
AI(えいあい)に真理を託す文化の日 み
脚注に言い訳のある『星月夜』 み
キーを挿しシングルルームに秋の灯 み
うわさの猪(い)の目のイヤリングの魔除け み
いちゃもんをつけながら喰う通草(あけび)の実 み
萩こぼれて時給は百円上がる み
冬瓜(とうがん)を煮て透き通る飛騨の夜 み
シュプレヒコールの軋(きし)みに銀杏散(いちょうち)る み
漱石は金蔓(かねづる)の『柿』、法隆寺 み
落穂(おちぼ)や 昔『グロソブ』 今『オルカン』 み
威銃(おどしづつ)を聞き流せる平和かな み
富士の影、釣瓶落しの五六(ごろく)秒 み
身に入(し)む雨天コールドの後始末 み
網棚はもう網でなく朱欒(ざぼん)置く み
チェロケースはヴィオラケースよりも秋 み
「馬肥ゆ」と見出しは終止形にして み
剃刀(かみそり)の刃の如き秋雨を行く み
秋風にナットが錆びた観覧車 み
ねこじゃらしの穂なら𝄆握って緩めて𝄇 み
何もない気が遠くなる花野道 み
近づけば暗澹(あんたん)たるや野の錦 み
秋日和にも紫外線は降る降る み
また転(こ)けた運動会の土の塊(くれ) み
なぜか檸檬(れもん)に好意的な人々 み
皿を洗う音を聞いてる蟋蟀(こおろぎ) み
マリー・アントワネットの菊人形 み
立喰いの券売機に「新蕎麦」、押す み
通学路の邪魔な茱萸(ぐみ)の枝を折る み
コンドルは羽ばたきもせず秋高し み
寝たままスマホは楽じゃない。夜長や み
コーラの瓶に囚(とら)われた秋の海 み
引出しに栓抜きがあり芋煮会 み
走れ、走れ。芒(すすき)の穂が黄金色(こがねいろ) み
長椅子に掛けて絵を見る赤い羽根 み
九月尽(くがつじん) あれ?定休日 長寿庵(ちょうじゅあん) み
屑(くず)でも塵(ちり)でも星は清く流れ み
EV(いいぶい)の墓場に小鳥来て遊ぶ み
本籍地を訪ねて秋郊(しゅうこう)に立つ み
「ボールどこ?」フェンス越えれば竹の春 み
重力という幻想に稲は垂れ の
質問を、「とんぶりです。」と遮(さえぎ)られ み
翌朝の不健康さの酔芙蓉(すいふよう) み
摂待(せったい)所に猫が居て悪戯者(いたずらもの) み
竹籤(たけひご)の虫籠(むしかご)の作成キット み
「かためが好きよ」と古米を混ぜて炊く み
梨を齧(かじ)る、シャコ 林檎を齧(かじ)る、シャコ み
『愛』に訓読みはなく月夜の匂い み
初汐(はつしお)は引力より遠心力 み
敬老の日です。『前期』から『後期』へ み
知ってるよ、玉蜀黍(とうもろこし)の髭の数 み
電話ボックスの撤去跡に桔梗(ききょう) み
鯊(はぜ)なんか釣ってどうする変な貌(かお) み
葡萄酒の違いが判る。赤と白 み
螽蟖(きりぎりす)にも音痴はいる。笑うな み
電子レンジで秋刀魚が焼ける器(うつわ) み
磯釣りの帰り、ベトベトな台風 み
靴を磨いていると鈴虫がいた み
果物は何でも冷す桃冷す み
蟷螂(かまきり)が未知から来ては首傾(かし)ぐ み
おろし金に昨夜の生姜の繊維 み
一歩二歩、駅まで測る霧の道 み
鰯雲や とりあえず 「行けたら行く」 み
孑孑(ぼうふら)に止(とど)めを刺して豪雨去る み
印傳(いんでん)の摩れた蜻蛉(とんぼ)の長財布 み
強風にあたたたたと二百十日 み
憧れていたイエロウのサングラス み
首振れば半円形に洗い髪 ま
赤道の夕焼 舷窓(げんそう)を支配 み
蜜豆の缶詰 蜜柑の缶詰 み
向日葵(ひまわり)の花は回転の錯覚 み
水やりや月下美人に髭がある み
涼しいと涼しげは別、床涼み み
「走るな」と注意書きあり天の川 み
歯磨きチューブをぶるぶると振る処暑 み
鮎は見た! 摑み取りする子の狂気 み
整列の驟雨(しゅうう)に咽(むせ)ぶ背番号 み
買い置きの麩(ふ)を帰省の子に持たせる み
「送信」を押してしまった解夏(げげ)の朝 み
防災無線:「6時から盆踊り」 み
荒波を真横から見る初嵐 み
航跡の消失点に雲の峰 み
残暑見舞いのインク 海の群青(ぐんじょう) み
噴水をスロー再生する病(やまい) み
ブルを射た残心が纏(まと)う香水 み
西日射し食器を包む新聞紙 み
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表面は沸騰するも芯は冷ゆ み
夕日照るビルのガラスに帰り花 み
畑から脱走したか茶の花よ の
この頃は客人はなし敷松葉 み
雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み
露寒(つゆざむ)やさっき見たのは何だろう み
群時雨(むらしぐれ)、我が町の名はひらがなに み
柘榴(ざくろ)をブロック塀へフォーシームや み
サンルームに冬浅く眠り老いる み
頭から食べて柳葉魚(ししゃも)の尾が残る み
伴走のロープが緩む秋惜しむ み
引いた牛蒡(ごぼう)を銃口に詰めてやれ み
夜霧にハイビームの影はマドロス み
やや寒し、今日は頭が回らぬ日 み
秋深き5時にコミュニティバスを待つ み
AI(えいあい)に真理を託す文化の日 み
脚注に言い訳のある『星月夜』 み
キーを挿しシングルルームに秋の灯 み
うわさの猪(い)の目のイヤリングの魔除け み
いちゃもんをつけながら喰う通草(あけび)の実 み
子らの自転車、黄落(こうらく)を撒き飛ばせ み
愁訴(しゅうそ)に合はぬ風邪薬(かぜぐすり)、処方さる み
蜜柑山(みかんやま)の急坂(きゅうはん)から町と海 の
冬めけば書く手紙みな不備(ふび)・不悉(ふしつ) み
新松子(しんちぢり)、投げよと捥(も)いだ手の臭(にお)い み
神渡しが逆風になる方角 み
サフランの花を見て想うラ・マンチャ み
金塊のごと冷(ひ)ゆるバター一斤(いっきん) み
新北風(みーにし)に乾いた髪が肩を刷(は)く ま
ブロッコリ切れば菜虫(なむし)がギャッと出る み
透明人間はブルッと立冬 み
生けるのか 捨てるのか 台子(だいす)に芒(すすき) み
駆除された熊の手 富裕層の胃に み
鵟(のすり)よ、『邪(じゃ)』の対は『正(しょう)』か『別の邪(じゃ)』か み
秋収め、とっくのとうに嘘はばれ の
文化祭、今年もお化け屋敷です が
コンビニへロックアイス®を買う夜寒(よさむ) み
乗継ぎの寸暇(すんか)に新蕎麦(しんそば)を啜(すす)る み
漢字のみ。檸檬(れもん)、榲桲(まるめろ)、榠樝(かりん)の実 み
行違(ゆきちが)う特急は行楽の秋 み