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2021/08/20

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  • 冷ゆ

    表面は沸騰するも芯は冷ゆ み

  • 帰り花

    夕日照るビルのガラスに帰り花 み

  • 茶の花

    畑から脱走したか茶の花よ の

  • 敷松葉

    この頃は客人はなし敷松葉 み

  • 銀杏落葉

    雨の舗道は銀杏落葉(いちょうおちば)に滑る み

  • 露寒

    露寒(つゆざむ)やさっき見たのは何だろう み

  • 群時雨

    群時雨(むらしぐれ)、我が町の名はひらがなに み

  • 柘榴

    柘榴(ざくろ)をブロック塀へフォーシームや み

  • 冬浅し

    サンルームに冬浅く眠り老いる み

  • 柳葉魚

    頭から食べて柳葉魚(ししゃも)の尾が残る み

  • 秋惜しむ

    伴走のロープが緩む秋惜しむ み

  • 牛蒡引く

    引いた牛蒡(ごぼう)を銃口に詰めてやれ み

  • 夜霧

    夜霧にハイビームの影はマドロス み

  • やや寒し

    やや寒し、今日は頭が回らぬ日 み

  • 秋深し

    秋深き5時にコミュニティバスを待つ み

  • 文化の日

    AI(えいあい)に真理を託す文化の日 み

  • 星月夜

    脚注に言い訳のある『星月夜』 み

  • 秋の灯

    キーを挿しシングルルームに秋の灯 み

  • うわさの猪(い)の目のイヤリングの魔除け み

  • 通草

    いちゃもんをつけながら喰う通草(あけび)の実 み

  • 萩こぼれて時給は百円上がる み

  • 冬瓜

    冬瓜(とうがん)を煮て透き通る飛騨の夜 み

  • 銀杏散る

    シュプレヒコールの軋(きし)みに銀杏散(いちょうち)る み

  • 漱石は金蔓(かねづる)の『柿』、法隆寺 み

  • 落穂

    落穂(おちぼ)や 昔『グロソブ』 今『オルカン』 み

  • 威銃

    威銃(おどしづつ)を聞き流せる平和かな み

  • 釣瓶落し

    富士の影、釣瓶落しの五六(ごろく)秒 み

  • 身に入む

    身に入(し)む雨天コールドの後始末 み

  • 朱欒

    網棚はもう網でなく朱欒(ざぼん)置く み

  • チェロケースはヴィオラケースよりも秋 み

  • 馬肥ゆ

    「馬肥ゆ」と見出しは終止形にして み

  • 秋雨

    剃刀(かみそり)の刃の如き秋雨を行く み

  • 秋風

    秋風にナットが錆びた観覧車 み

  • ねこじゃらし

    ねこじゃらしの穂なら𝄆握って緩めて𝄇 み

  • 花野道

    何もない気が遠くなる花野道 み

  • 野の錦

    近づけば暗澹(あんたん)たるや野の錦 み

  • 秋日和

    秋日和にも紫外線は降る降る み

  • 運動会

    また転(こ)けた運動会の土の塊(くれ) み

  • 檸檬

    なぜか檸檬(れもん)に好意的な人々 み

  • 蟋蟀

    皿を洗う音を聞いてる蟋蟀(こおろぎ) み

  • 菊人形

    マリー・アントワネットの菊人形 み

  • 新蕎麦

    立喰いの券売機に「新蕎麦」、押す み

  • 茱萸

    通学路の邪魔な茱萸(ぐみ)の枝を折る み

  • 秋高し、禿鷲

    コンドルは羽ばたきもせず秋高し み

  • 夜長

    寝たままスマホは楽じゃない。夜長や み

  • 秋の海

    コーラの瓶に囚(とら)われた秋の海 み

  • 芋煮会

    引出しに栓抜きがあり芋煮会 み

  • 走れ、走れ。芒(すすき)の穂が黄金色(こがねいろ) み

  • 赤い羽根

    長椅子に掛けて絵を見る赤い羽根 み

  • 九月尽

    九月尽(くがつじん) あれ?定休日 長寿庵(ちょうじゅあん) み

  • 星流る

    屑(くず)でも塵(ちり)でも星は清く流れ み

  • 小鳥

    EV(いいぶい)の墓場に小鳥来て遊ぶ み

  • 秋郊

    本籍地を訪ねて秋郊(しゅうこう)に立つ み

  • 竹の春

    「ボールどこ?」フェンス越えれば竹の春 み

  • 重力という幻想に稲は垂れ の

  • とんぶり

    質問を、「とんぶりです。」と遮(さえぎ)られ み

  • 酔芙蓉

    翌朝の不健康さの酔芙蓉(すいふよう) み

  • 摂待

    摂待(せったい)所に猫が居て悪戯者(いたずらもの) み

  • 虫籠

    竹籤(たけひご)の虫籠(むしかご)の作成キット み

  • 古米

    「かためが好きよ」と古米を混ぜて炊く み

  • 梨、林檎

    梨を齧(かじ)る、シャコ 林檎を齧(かじ)る、シャコ み

  • 月夜

    『愛』に訓読みはなく月夜の匂い み

  • 初汐

    初汐(はつしお)は引力より遠心力 み

  • 敬老の日

    敬老の日です。『前期』から『後期』へ み

  • 玉蜀黍

    知ってるよ、玉蜀黍(とうもろこし)の髭の数 み

  • 桔梗

    電話ボックスの撤去跡に桔梗(ききょう) み

  • 鯊(はぜ)なんか釣ってどうする変な貌(かお) み

  • 葡萄

    葡萄酒の違いが判る。赤と白 み

  • 螽蟖

    螽蟖(きりぎりす)にも音痴はいる。笑うな み

  • 秋刀魚

    電子レンジで秋刀魚が焼ける器(うつわ) み

  • 台風

    磯釣りの帰り、ベトベトな台風 み

  • 鈴虫

    靴を磨いていると鈴虫がいた み

  • 果物は何でも冷す桃冷す み

  • 蟷螂

    蟷螂(かまきり)が未知から来ては首傾(かし)ぐ み

  • 生姜

    おろし金に昨夜の生姜の繊維 み

  • 一歩二歩、駅まで測る霧の道 み

  • 鰯雲

    鰯雲や とりあえず 「行けたら行く」 み

  • 孑孑

    孑孑(ぼうふら)に止(とど)めを刺して豪雨去る み

  • 蜻蛉

    印傳(いんでん)の摩れた蜻蛉(とんぼ)の長財布 み

  • 二百十日

    強風にあたたたたと二百十日 み

  • サングラス

    憧れていたイエロウのサングラス み

  • 洗い髪

    首振れば半円形に洗い髪 ま

  • 夕焼

    赤道の夕焼 舷窓(げんそう)を支配 み

  • 蜜豆、蜜柑

    蜜豆の缶詰 蜜柑の缶詰 み

  • 向日葵

    向日葵(ひまわり)の花は回転の錯覚 み

  • 月下美人

    水やりや月下美人に髭がある み

  • 涼し、床涼み

    涼しいと涼しげは別、床涼み み

  • 天の川

    「走るな」と注意書きあり天の川 み

  • 処暑

    歯磨きチューブをぶるぶると振る処暑 み

  • 鮎は見た! 摑み取りする子の狂気 み

  • 驟雨

    整列の驟雨(しゅうう)に咽(むせ)ぶ背番号 み

  • 帰省子

    買い置きの麩(ふ)を帰省の子に持たせる み

  • 解夏

    「送信」を押してしまった解夏(げげ)の朝 み

  • 盆踊

    防災無線:「6時から盆踊り」 み

  • 初嵐

    荒波を真横から見る初嵐 み

  • 雲の峰

    航跡の消失点に雲の峰 み

  • 残暑見舞

    残暑見舞いのインク 海の群青(ぐんじょう) み

  • 噴水

    噴水をスロー再生する病(やまい) み

  • 香水

    ブルを射た残心が纏(まと)う香水 み

  • 西日

    西日射し食器を包む新聞紙 み

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