耳鳴りを吸い込む穴の秋の夜 み
耳鳴りを吸い込む穴の秋の夜 み
キッチンの床の傷。桃の缶詰 み
青蜜柑は青林檎よりお子様 み
新米のチラシ特価のコメ離れ み
藁塚(わらづか)をいつ見たかモネの幻 み
食べた後は眠い人。金木犀 み
いつの間に夜長となった100ページ み
蟹蝙蝠って何? 花が咲いてる み
天高く魂を吸われる碧(みどり) み
稲雀(いなすずめ)は毛沢東より生きる み
秋桜や白は濡れると透けてゆく み
地震(なえ)が来て箪笥がずれて壁に虫 み
無垢(むく)でも初心(うぶ)でもない、大毛蓼(おおけたで)なり み
抗弁に桜紅葉(さくらもみじ)を例に挙げ み
日傘なら宇宙に熱を撥ね返せ み
雨なのに十五夜なのに基地なのに み
靴紐が解(ほど)けて生まれ変わる露 み
秋刀魚を焼くなら身を解(ほぐ)してくれよ み
秋草の仲間になってベンチ入り み
「敬老の日」とは言いようの弁当 み
網膜に割目を抉(えぐ)る稲光 み
秋の灯に三重奏は見つめ合う み
バーベキューの食材を持ち帰った み
そこに月夜茸 見えなくてよかった み
秋風にまだ膝(ひざ)を出す腿(もも)を出す み
跳ね橋の袂(たもと)で水汲み新涼 み
濁流に削られ速し吾亦紅 み
蜻蛉の複眼をカクテル光線 み
台風を避けてクルーズ船の揺れ み
夕刊を読まないうちに梨の皮 み
何をしに来たか見舞いの秋の雨 み
朝霧を押す不透明な沈黙 み
水引の花を見ていたら危ない み
稲刈りのPET(ぺっと)ボトルは2リットル み
何してる? 森林浴か暇なのね み
偽物ね。本当(ほんと)のアマリリスはこれ み
バリカンを何ミリにした二番藍(にばんあい) み
ベランダから放り出すか秋暑し み
秋の浜に打ち上がった物語 み
ジャガイモを持てばグラムを当てた父 み
硬い大豆が豆腐を作る魔法 み
「こっち」と挙げた手の上が鰯雲 み
鶏の匂いが残る夜の秋 み
荒れ果てて無関心なる力草 み
秋の蝉、ヨーロッパではきりぎりす み
暑気払いの誘い なりすましメール み
登山は女坂に限る年ごろ み
搭の先に立ち蟻のようだと言う み
新しい言語を作れ雨蛙 み
芋の葉は自分自身の影になる み
香水の箱だけ、過去との繋がり み
苦瓜は薄く切ってね町中華 み
バッタに譬(たと)えるのはヘイトスピーチ? み
世の風に擦れても柔き茄子の傷 み
頭ごし 頭ごなし 入道雲 み
洗い髪、ターボモードで鯣烏賊(するめいか) み
終戦の日に海の畝は柔らか み
盂蘭盆会(うらぼんえ)、整列した革靴たち み
実家に帰省中の寄生虫たち み
このままじゃ破産 朝起きたらプール み
そこへは階段しかない天の川 み
雹(ひょう)だ。憎まれっ子がお別れの会 み
団扇パタパタ、「臭いぞあっちへ行け」 み
自意識がオーバーランやサングラス み
メヘメヘと羊雲が来て立秋 み
UV(ゆうゔい)が全反射する夏帽子 み
触っただけ。割れたがっていた西瓜 み
空港のガラスは眩し炎天下 み
鷹揚にパック詰めされ茗荷の子 み
八月やこの手紙だけ今日中に み
晩夏やここからここまで不用品 み
助手席に助手が乗ったまま朝焼け み
後悔も、それでいいのだ夏の果 み
かき氷 東西線 南北線 み
喜雨も止み借りた傘を返す大義 み
避暑の窓を開けても疲労は疲労 み
火を消してキャンプはおしまい。帰るか み
ジャンプして頭をぶつけ夏休み が
坂を越え長距離バスが見る夕焼(ゆやけ) み
鰻を食べてた、さっきまでいた人 み
ウーマンリブよがんばれ海水浴 み
「ヨット」と言うてたのに、でかいやないか み
刺されたと言う人が多い海の日 み
図書館に西日が射して席を立つ み
向日葵でも疲れ果てれば猫背か み
驟雨。パラボラアンテナは何を見る み
風鈴が鳴っても家人は戻らず み
梅干や、国旗かどうかの判断 み
空襲の碑を読む 素麺を食べる み
道端の蕺草(どくだみ)の一輪を摘む み
河鹿笛、ガラスの器を出す頃 み
トマトの皮を剥く リコピンを捨てる み
花火の欠片(かけら)が頬に当たる闇夜 み
裂けたTシャツはファッションか喧嘩か み
黒鯛は釣るのはいいが磯臭い み
七夕に夜汽車 薄暗い天井 み
タコ刺しや、「大衆割烹」とは何 み
無人の夜店に焦げ香る焼きそば み
玄関の百合の花を嗅ぐ来客 み
水無月になり包丁が錆びている み
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耳鳴りを吸い込む穴の秋の夜 み
キッチンの床の傷。桃の缶詰 み
青蜜柑は青林檎よりお子様 み
新米のチラシ特価のコメ離れ み
藁塚(わらづか)をいつ見たかモネの幻 み
食べた後は眠い人。金木犀 み
いつの間に夜長となった100ページ み
蟹蝙蝠って何? 花が咲いてる み
天高く魂を吸われる碧(みどり) み
稲雀(いなすずめ)は毛沢東より生きる み
秋桜や白は濡れると透けてゆく み
地震(なえ)が来て箪笥がずれて壁に虫 み
無垢(むく)でも初心(うぶ)でもない、大毛蓼(おおけたで)なり み
抗弁に桜紅葉(さくらもみじ)を例に挙げ み
日傘なら宇宙に熱を撥ね返せ み
雨なのに十五夜なのに基地なのに み
靴紐が解(ほど)けて生まれ変わる露 み
秋刀魚を焼くなら身を解(ほぐ)してくれよ み
秋草の仲間になってベンチ入り み
「敬老の日」とは言いようの弁当 み
木犀(もくせい)の香に好き嫌いの口論 み
また手を洗っている金毘羅祭 み
足首が細くも華奢ではない柚子 み
この島に始まり終わる秋の波 み
無月に阿蘇の煙は青か金か み
名月や坊さんは珈琲(こーひー)を買う み
対岸は安らかに見える秋の野 み
霧深く蒼きノクターンのラジオ み
水澄めどチョロチョロ越せぬ車椅子 み
峠から人はさまざま野菊咲く み
十月に赤き潜水艦を追え み
蜩(ひぐらし)の、ガラス細工に喩(たと)えられ
引っ掻けば中身が覗く鰯雲 み
渋皮に渋皮の味を知る栗 み
薬掘る。種も仕掛けもありませぬ み
洋梨がステーキナイフで真二つ み
ここはここ いまはいま 蟋蟀(こおろぎ)の鳴く み
電柱の裏に蜘蛛の囲(くものい)がある朝 み
鶏頭(けいとう)などもう忘れ去った庭に み
ローヌ川の上にも星月夜あり み