プリムラが咲く フーガを練習する み
プリムラが咲く フーガを練習する み
チューリップ一本だけでは何だか み
八重桜 「おのぼりやす」 「おくだりやす」 み
蒲公英(たんぽぽ)に曖昧さ足す朝日影 み
山笑う、そろそろ歯医者に行くべき み
屋根屋根のブルーシートに春霞 み
薄暗い六畳 掛け花に椿 み
サポートセンタの親切な佐保姫(さほひめ) み
草摘んで尻餅ついてキャアキャアと み
山吹の色の帯なら春驟雨 ま
銀座で迷い、夜桜の写真展 み
幻を愛してしまう花疲れ み
椀の蓋 急がば回せ 蜆汁(しじみじる) み
新入生、人体模型を倒す み
菜の花をコップに挿して遅い昼 み
四月から日曜始まりの手帳 み
地下鉄の2番出口は空に花 み
日めくりの格言の横「四月馬鹿」 み
花見の帰り、電車待つ間の自省 か
コート脱ぎエスカレータにポッと乗る み
葉桜の陰は毛虫に注意やで み
客船の春灯(しゅんとう) おっとりと離岸 み
春愁(しゅんしゅう)はどんくらいかな泣かないで み
その巣箱、バリが多くて痛そうね み
喰わんとや練乳(れんにゅう)持っていちご狩り み
蓬(よもぎ)に殺菌作用 父の教え み
参道に蜂の群れあり紫雲英(げんげ)咲く み
黄砂来て銀のポルシェにドラえもん み
塔から瞰(み)れば街の愁いは霞(かす)み み
夜桜の写真に白い影がいる み
顔合わせ 桜湯が出て 庭を誉め み
鶴(つる)・鴇(とき)を押さえて国鳥たる雉(きじ) み
清明(せいめい)。昨日(きのう)のつづきの今日(きょう)を行く み
散る花のこの町もまたよそ者か み
雪流れ、次の世界へじわり発(た)つ み
購買部、新入生が迷い来る み
初出社、遅刻の訳は春疾風(はるはやて) か
壺焼きに爪楊枝(つまようじ)刺しクルックル み
この蒲公英(たんぽぽ)を天麩羅(てんぷら)で食べるって? み
入社式、仕立てスーツの春暑し み