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2018/07/28

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  • パート3-2

    いつものように宿題を一問残したページを開き、消しゴムのカスを作り、準備は万端、裏手に移動した。死角の構築はこの数日でだいぶ進行した。室内であれば、左右非対称の死角に色と形をつけ、屋外では、三百六十度、体を一回転させて、道の角や起伏の始まり、階段、建物の入り口、信号などで景色を覚えるのだ。地図が読めない人のための訓練、定期的に歩く道を振り返って背後の意識を高める方法を取り入れた。これは取り寄せた本で読んだ考えを元に試してみた。 「それでは私は席をはずします」裏の家、階段を登ってリビングへ、一階の部屋に座っていた表向きの住人が出かけた。テーブルにはダンボールが二つ置かれている。ダンボールのひとつに…

  • パート3-1

    僕は家と学校の制約下では購読困難な本を取り寄せて、それらに没頭した。 一時間。 耳に届く警告音が、外界とのコンタクトを要求、不必要に死角に配っていた意識を思考に回す僕は、反応が遅れた。それでも焦らずに地下室を通り抜けて、裏庭に出る。しかし、裏口に手をかける間際に呼び止められた。母である。 「そんなとことで何をしているの?ダメじゃない、言いつけを守らないと、あなたは、あなたは……」言葉が続かない、そう、その先は僕と母自身を責めてしまうフレーズ。僕は素直に謝る、言い訳の用意は万全。広げた宿題は、草木、身近な植物についてのレポートであった。そのために、裏庭に出て、隣家の黄色い花を観察していたと報告し…

  • パート2-5

    「要望にお答えします」 「不満ですか?」 「いえ、ただ反論なさるとは思っていなかったので」野心家には見えなかった。「どちらかといえば、哲学者や科学者とお見受けしました」呟きには答えずに僕は質問をぶつけた。 「どこで僕を見つけたのですか?」 「ご自身が我々にメッセージを送ったのですよ、忘れているようですね」 「考えたことを体現したまで、実現可能とは当時まったく思っても見なかった世界。口に出すだけで、しかも僕が言うのですから、信憑性は極端に低い。ちょうど、退院した病院の玄関でカメラを向けられたので、遊びですよ」 「お父様が動き出します、それではご連絡は手紙でお願いします。またの、ご連絡を」背伸び、…

  • パート2-4

    疑問を抱いて、タクシーに乗り込む。広大な土地を移動に移動、ほぼ一日をかけて生活、仕事、学校の手続きを済ませ、家に着いたのはほぼ深夜。父の仕事場の訪問が最後であったためにそこの滞在が最も長く意味のない表面的な会話に興じて長引いた。母の仕事場はキッチンスタジオ。家から離れた場所、約十マイル。そちらには送った荷物が搬入され、電気や水道、ガス、回線のチェックを確認するだけだった。こちらの富裕層に向けた料理教室を開くらしい、ネットで見られるように中継の設備も整えるのだそうだ。母はまくし立ててきいてもいない仕事の話を途中で切り上げた。母が隣の席で密着していたからだろう、子供と意思疎通を図ろうと通常沸き起こ…

  • パート2-3

    男は、乗務員を呼び、飲み物を注文した。僕も面倒な視線に応えて同じものを告げる。「ご自宅の裏に二階建ての家があります。そちらの庭、芝生の下に地下へ通じるハッチから裏の家に出入りができるよう、準備は整えてあります」今回が本格的な訪問で、一度1カ月前に家族で物件の下見に行っていたのだ。記憶に裏手の白い建物がよみがえる。「通信環境はもちろんのこと、ネットを介した商品の注文に関しては、宅配ボックスが玄関の脇に設置してあります、カードをかざすか暗証番号、網膜スキャンが開錠のキーになり、なかの商品が取り出せますので、お好きなものを、比較的大きな商品も入るように、大容量のダストシュートを思い浮かべてもらえれば…

  • パート2-2

    「君は眠らないのかい?」ひとつ間をおいた席から声がかかった。男性、髪が長く、ロッカーみたいにひげを生やしてる。年齢は二十代から三十代といったところ、服装はカジュアルで、長い足を窮屈そうに折りたたんで、空いた席のほうへ足を流すように座っていた。視線を感じていたのはこの人が原因だったのだと知る。また、発信源の特定に遅れた。 「ラップトップで何をしているのですか?」僕はきいた。 「左目から入った信号は右脳に検知される。右脳は運動をつかさどる領域、君は運動的な能力が人よりも優れていると感じたことはないだろうか?」 「取り込まれる信号が左に偏ったに過ぎず、取得可能な信号量は片目においても不変であると推定…

  • パート2-1

    夢うつつの中にあっても頭はぐるぐる回転。微かなまぶたの開きから送信される情報を取り入れては、捨て去り、思考に集中を促す、呼び水。右側の映像を構築してみるが、上手く再現ができない。欠落部分に必要とされる情報、緊急で重要度の高い、思い起こす記憶などあっただろうか。改めて疑問が浮かぶ。ない、とは言い切れないか。いつだって見落としはつき物だ。 平屋の家に到着しても考えとは常に一緒。似たようなつくりの建売住宅が並ぶ一帯、かろうじて違いを言えば庭の草木であったり、駐車された車ぐらいだろう。僕にとっては住人はどれも同じ顔に見える。まだ、判別はつかない状態。 手を洗い、夕食まで右目の眼帯をはずす許可が下りた。…

  • パート1-5

    外はすでに日が落ちて、ものの数分で闇が支配する時刻だ。黄色のバスにエンジンがかかり、のっそりと学校の敷地を優雅に周囲を威嚇するように走り出した。バスの停車時には他の車は停止する規則があって、僕の捉え方もまんざら嘘でもないのだ。バスの赤いランプがついているとき、つまり止まって生徒を降ろしているときは、後続車も止まらなければならない、というルールが設けられてる。まあ、律儀に守る人もいれば、その守っている車にさらに後ろからクラクションを鳴らし早く走り出せとせっつくドライバーもなかに入るようだった。だた、バスの停車時でも反対車線を走る車は中央分離帯があるとか、黄色の二重線が引かれているとかであれば、通…

  • パート1-4

    僕は首を振った。帰りの車内で考えることがなくなるではないか。考えから離れて、突き当りを左に、持ち物検査のゲートを通る。雇われている警備員の男性に鞄を渡す。中を見てもいいかと、一応こちらに許可を取るが、断ったとしてもどうせ調べるのだから、いいや、それがこの国の同意という習慣だ。あずかり知らぬところで勝手に物事が進むのを拒む性質。なので、政治や市政、ひいては小規模なコミュニティにまで顔を口を出したがる。 肌の黒いもう一人の警備員がゲートを通ると、別れの挨拶を告げる。義務的な声ではなかったと思う。僕の体のせいだろうか。この国はこういった人たちに人一倍心血を注ぐ。それはまた、ネガティブなベクトルに傾い…

  • パート1-3

    「キャプテンフックにでもなったつもりかよ」右から声が聞こえた。体勢を四十五度右に回転させる。小太りなクラスメイトが無駄に床を蹴って天井を目指してる。 「体が大きいっていうのと、太っているっていうのは違うらしい。動けるなんとかは、体のいい表向きの言い方で、つまりそれは、標準の体型をオーバーしていると言えるんじゃないのか」 クラスメイトは動きを止めて唇を差し出す。かと思えば、陰険な口元が左右に引かれた。「お前の言葉はなまっているって知らないのか?くくくっ」 不自由さを言葉に見出せるとは、思いもよらなかった。誰がどう思おうと、こちらには関係のないことだ。落ち度を見つけ、優位に立つ姿勢そのものは、こち…

  • パート1-2

    「多分、渋滞で遅れているんだと思います。いつものことです」 「ダイヤモンドレーンはお迎えの時には通れないのか、送り迎えに通行料を払えるのは特権階級だけですしね。あらいやだ、私としたことが。ごめんなさいね、あなたの家庭を侮辱したのではありませんから」発言を取り繕う、教師は笑いで言葉をごまかし、教室を出て行く。廊下をひっきりなしに横切る生徒はもうほとんどいない。足音、話し声に顔を上げても、すでに通り過ぎたあとで、廊下のロッカーの角が見えるだけだった。 連絡用の端末が震える。端末は登校前と下校後、保護者が迎えに来るまでの短時間しか操作に反応しないタイプで、通話とショートメッセージ機能のみを搭載した機…

  • パート1-1

    地続きの教室を潜る。背の低い机、椅子、黒板、横文字。室内は奇抜な原色に施されて情緒の欠片もない。色という表現を前もって諦めたスタイルらしい。その陽気さは、もしかするとこういった細部の感覚に要因が隠れている、と思う。席に着く。統一感のない皆の鞄。それがこの国の良さだろう。以前から使う水色のランドセルは、やはりまだここでは特殊らしい。ちらりちらりと視線が浴びせられる。視界が捉えるだけでも、すでに三人はこちらを振り返り、熱を送った。 授業は単調で、繰り返し昨日の事項を丹念に教科の開始ごとに振り返る。僕にとって授業は去年に説いてしまった問題がほとんどで、取り組む気力は沸いてこない、こっちの国では飛び級…

  • エピローグ1-5

    施設が完成、開業の暁には、人が押し寄せるだろうとアイラは予測を立てていた。数年は続く。だか、現状の把握は常に客観的な目を持ちつつ、事業を行うようにと、助言はしたつもり。どこまで忘れられずに息が続くのか、それも、もう彼女は興味の対処を外れている。 言葉は覚えているものだ、我ながらすらすら口をついた久しぶりの日本語。気分は落ち着いたように思えた。日本の言語がそういった感覚に作用したのかもしれない、アイラは窓に映る口元で日本語を話した。 「お姉さん、寝ないの?」隣の少女が重たい瞼をこすって語りかける。 「眠るわ、もう少ししたら。うるさかった?」 「ううん。お尻が痛くて起きたの」 「そう」 「お姉さん…

  • エピローグ1-4

    不安定さは安定をもたらした。 これまでの水平にどうにか戻そう、躍起になる私。 それが不安定なのに。 どちらを選ぶべきなんだろうか。 日本語のガイダンス。 そして、呪文のような言葉、繰り返し繰り返し。 冬は秋が来たからで、春は冬を経験したから、夏は春が過ぎ去ったから、秋は夏が終わったから。 私は私が終われば私だと判明するのだろう。 いけない、思考が停まりそう。 もうこれ以上は書いていられない。 終わりにします、最後だけは畏まる。 誰かが見てくれますように。 私が見返せますように。 その時は変わった私でありますように 部長は四隅の画鋲を取って、紙を折りたたみ背広の内ポケットに差し込み、校舎を出た。…

  • エピローグ1-3

    妙に落ち着いている、もしかすれば、少なからずどこかで衝動を認めているのではないのか、と思い始めた私。だが、もう一度言うが、気づいた時には手遅れ。出来事は終わって、状況が克明に見えてくるものなのだ。渦中にいる間は、周囲と同化、目を凝らしたとしても、境界線は曖昧。何故、こんなことを書き綴っているのか、そういった疑問も読んだ人は抱くだろう。答えは簡単。これはおそらく誰にも読まれずに処分される、存在すらなかったことにされる。妄想かもしれないし、幻想かも、あるいはたんなる被害妄想かもしれない。だが、現実に起きた身の回りの現象は、私が想像するに、この結論が最も適合する展開なのだ。では、読まれないのに、どう…

  • エピローグ1-2

    赤すぎる口紅はトレンドらしい。目立つ要素を彼女はいつもどこかに潜ませている。まるで、それだけを見て、覚えてくれるようにと。開いたドアに彼女は消えた。マイクを通じた淡々と話される解説が眠気を誘った。時間を見計らい長針が次の数字を指した頃、ダミーの鞄を肩にかけ、階段を下りた。 各学部の掲示板が集まる一階ロビーを抜け、地下鉄までの人気のない授業にあぶれた学生もとっくに帰った廊下をひたひた、雪が融けた水分を靴底に垂らし、足跡を残して歩いた。左手は、長方形の中庭を望む窓、その手前、就職斡旋のビラが所狭しと張られた扁平なボードが十枚ほど立ち並ぶ。フォントや文字の大きさ、色合いの異なる広告に混じり、細かな文…

  • エピローグ1-1

    「講義中の私語は厳禁と教わりませんでしたか?」 「試験とレポートに出席日数、大学へ通う意義が見出せたら、私も大金をつぎ込み、勉学に励むわ」 「二冊目のガイドブックを僕にあえて盗ませましたね、今更言っても、どうしようということはありません。だけれども、事前に教えてくれていてもよくありません?」 「無意識にとったあなたの行動だからこそ、価値があった。最初から二つを盗み出すと、行動はかなり異なる様式を選択したでしょう?反論があるなら聞くわ」 「いいえ、そちらの思惑を尊重します」部長は言葉を切った。「地図に描かれたZ町の開発は、電力供給都市の未来像を体現した、海上風車が乱立してました。あれでは住民の日…

  • 千変万化3-2

    焼死体の身元は不明のままであった。鈴木は暇な部署のおかげで正月の三が日に休暇が取れ、実家に帰り、二日滞在した。家族と親戚、親戚の子供と一年の出来事、変化、成長を話し、受けあい、聞きあう中で、秘書の想いはいつまで続くのだろうか、と鈴木は彼女の気持ちの変化で事実が明るみに出るのでは、そんな考えに辿り着いた。しかし、こうして一月も半ばを迎えようとする時節まで月日が流れても、気持ちの変化はなかったらしい。 人前で足を組むのは失礼に当たるという精神は植えつけられた勝手な礼儀という妄信に過ぎないが、鈴木は窮屈な体勢のまま、シートに体重を預けている。 種田の姉のアイラとは、トランクで発見された遺体の事情聴取…

  • 【失敗回避】ホテルパスの口コミ・評判10選とメリット・デメリット

    サブスクで部屋を借りられるホテルパスの利用を検討している方に向けて、10の口コミ・評判と利用のメリット・デメリットを解説します。

  • 千変万化3-1

    喫茶店を離れて職場に戻る車中。 熊田が運転する車にはは日本車のように十分な後部座席の空間がないため、運転席にのシートにあたる膝の処理に、鈴木は斜めの体勢に優位を試行錯誤の末に見出す。 海岸沿いの曲がりくねる急斜面、十二月に慌ただしく始まったロードヒーティングの工事完了の成果か、濡れたアスファルトを車は登る。正月休みの感覚の引きずりと休暇明けの仕事のなさが、骨抜きにした意識に襲い掛かる、鈴木は眠たさをこらえた。 工期を終えたはずの道で渋滞が起きている。 カーブを曲がりきった先で車両が二台停車。何事だろうかと、先の二台がゆっくり進み出した後に車が続けば、ヤドカリのような足で道路脇の雪を掻き出す除雪…

  • 千変万化2-7

    「熊田さんにも情報は下りてこないんですか?」 「雑用みたいな部署に押し付けた案件を上層部が中途半端な場面で捜査権を剥奪するのは、大体において手柄を見込めるか、隠蔽のどちらかだろう」熊田はかすれた声で答えると、咳払いをついた。 「なんだか、腑に落ちませんね。どんよりしていますよ、胃の辺りが。ああう、あの日はクリスマスイブでしたね、災難だったろうな、樫本白瀬さん」 「大晦日、元旦に亡くなれば嘆き、平日は平凡なひとつの事件。特定の日に起きるであろう高揚感を期待させる出来事の特殊性がもたらす、平日との差異。大安に結婚式を挙げるようなもの。これまで仏に祈ったことが自らの祈りの実現を捧げるよりほかにあった…

  • 【貯金0円の方向け】一人暮らしができるホテルパスのサブスクを紹介

    貯金が0円でも一人暮らしを始めたい方に向けて、サブスクできるホテルパス(hotelpass)のサービスを紹介します。サービスを利用すれば、初期費用を抑えられるため、毎月の収入のみで、自由になれる部屋を借りられますよ。

  • 千変万化2-6

    「待って下さいよ」鈴木が話の流れを止める。「種田の姉妹が一番に駆けつけたのは、日井田さんの論理だと、偶然と判断してしまうんでしょうか、これだけ事件に関わっているのに?」 「そうです」 「あの、そう、簡単に認められると困っちゃうなあ」 美弥都は淡々と言う。「灰になるまで燃やし尽くしたかった、と考えられる。遺体がひとりでに移動し、発見された場所で燃え尽きたら、祟りという不確かな現象に縋る市民の心理が増幅され、それを巧みに操るのが狙いだった。しかし、灰に返す前にあなたの姉妹が見つけてしまった」 「だけどですよ」鈴木が高い声で反論した。「レンタカーに遺体を保管する意味がわからない。僕なら、危なくってそ…

  • 【諦めずに済む!】18歳・保証人なしで一人暮らしを始める方法

    18歳で保証人をつけずに一人暮らしを始める方法を4つ紹介します。 紹介する方法を使えば、親に頼りたくない・頼る親がいない人でも、一人で生きるための場所を確保できますよ。

  • 千変万化2-5

    「なにがだ?」 「だって、あの二人の刑事はずっと現場にいました。僕らがバス会社の黒河から事情を聞いて戻るまで、二人は現場で待機していた、なのにレンタカーの移動に気がつかなかったことがありえますか?」 「彼らは現場に居続けなかった、あるいは視界不要でレンタカーの移動を見逃した」美弥都が言った。 「都合が良すぎる」 「本来、都合は良くて当たり前、悪くて非難される対象です。ですが、日常はそのどちらでもなく、それぞれを行きつ戻りつ、境界線を越えたり、戻ったりしている。偶然という言葉で現実をまとめ上げると、あなた方が店でカウンターでコーヒーを飲めることも、ここへ事故に遭わずに辿りついたことも、必然とは言…

  • 失敗を避けられる!メンズ脱毛のサブスクおすすめ5選!

    まとまったお金を用意できない方に向けて、定額で利用できるメンズ脱毛のサブスクを5つの紹介します。 紹介したサロンを利用すれば、少ない収入の方でも快適な生活に導いてくれる肌を手に入れられますよ。

  • 千変万化2-4

    「ええ」 「バス会社へ聞き込みに行った時は、その車はまだありましたよね」 「ええ、確認しています」 「現場で待機していたI署の警察が車を動かしたということはあったでしょうか?」 「聞いていません。確認も取ってはいない、事件とは無関係と思っていましたから」 「それではすぐに確認を取られると、様子が見えてくると思います」 「鈴木!」熊田の命令に鈴木が対処、咥えた煙草をひと口吸って、連絡を取る。 「なぜレンタカーが関与していると?種田の姉妹は偶然、種田の運転する車に同乗していた、だから現場に顔を見せました。予測の判断は難しい」熊田の片手が表を向く。 「現場に犯人が潜んでいたのですよ。人が隠れるほどの…

  • 千変万化2-3

    「バス会社にとっては、ありがたい話ですよ。今後数年はT駅とを繋ぐ路線が開通、短期的な増収が見込めます」 「完成すればカシモトシラセには会えなくなる」 「好意を抱いていた、ということですか黒河さんが?」 「そういった動機も考え付くということです。確証はありません」 「曖昧な恋愛感情が動機、よく言えましたね」種田が美弥都の意見を批判する。 「しかし、彼女は建設予定地周辺の立地に目をつけて、小規模の店舗や戸建住宅、マンション建設の候補地を調査していた、彼女はまだ当面バスを利用したはずだ」熊田は美弥都の見解を擁護する意見を述べた。 「彼女の個人的な事情にまで通じていたら、犯行には及ばない。つまり、運転…

  • 千変万化2-2

    「両方です」鈴木はカウンターのテーブルに乗り出し、真ん中の種田をよけて熊田に高らかに応えた。「拳銃の所持は予測外の出来事だった。所持を知っていれば、一旦安全を確保して、外に連れ出す。距離の近い室内で発砲されては、対処の仕様がないからな。それにだ」熊田は言葉を切る。「黒河が樫本白瀬と顔見知りだという確証は得られていない。バス内部の状況説明は黒河と山遂セナの発言のみ。二人が彼女を見たと言えば、真実になりうる」「駅のカメラには彼女の姿は映っていました」鈴木が反論をこめて言う。「それもあらかじめ駅に到着していて、バスの到着を見計らい、改札を通過したかもしれない。可能性の問題ではあるが、そういった見方も…

  • 千変万化2-1

    カウンターに知り合いの顔が三つ。窓際の席、カウンターに座るお客の背中が見える側に、腰を落ち着けた。部長の背後は壁である。この店は居心地がいい。音楽もうっすらと流れる音量で、室温も適切、暑くもなく寒さも感じない。窓は三重のガラス、間に挟んだガラスが角度を変えると存在を確認できる。 グラスに入った冷たい水とおしぼりが運ばれた、部長は美弥都にコーヒーを注文した。いくつか豆の種類や淹れ方がメニュー表に書かれていたが、シンプルな表記のブレンドコーヒーを美弥都に告げる。 声とリズムを変えて発声した。声だけで有名人は市民に存在を気づかれるというが、聞き覚えのある声が決め手ではないだろう。声と外見、それに話す…

  • 【1人暮らしにおすすめ】千葉県で利用できる家電・家具のサブスク4選!

    親に頼らず、独りでの生活を希望している方に向けて、千葉県で利用できる家電・家具のサブスクを紹介します。 サブスクを利用すれば、必要な物を購入するよりも費用負担を減らせるため、1人暮らしを始めても窮屈な生活を強いられずに済みますよ。

  • 千変万化1-9

    種田は体の横回転を利用した足技で拳銃を弾き飛ばすつもりらしい、膝を伸ばしながら、黒川に背中を向けていた。 無理だ。間に合わない。 熊田はもう一歩踏み込み、体ごと飛び込んだ。 ハッフッ。黒河が息を呑む。 拳銃の角度がアイラに向けられた。 もう少しだ。届け。 黒河の目が細く三日月を描いた。 ダメだ。 ドン。鈍い打音。 目前を通過した物体が黒河の顔面を直撃。射撃に間が生まれた。 発砲ではない。 種田の踵が拳銃をはじく、続いてソファの背もたれを蹴り出すアイラが種田の足を越え、黒川の左側に。顔面を左手で包み込み、ソファの後頭部が乗る位置に体重を乗せて押し付けた。 音声が一気に回復する。 熊田はソファに押…

  • 千変万化1-8

    「どうしました?」熊田が問いかけても、返事は曖昧。 見下ろした熊田の態度が威圧感を与えるのだろうか、熊田は一人がけの椅子に座った、鈴木はドアの脇で腕組み、壁に背中を預ける。 黒河の両手が力強く握られる。汗をかいた額。震える肩。言いかけた白と黒のコントラストの口。 瞬間、見渡した瞳に白さが際立った。 殺気が走る。 熊田、種田が中腰で構えるが、アイラは深く腰を据えたままだ。 黒河の焦点はテーブルを挟んだ正面のアイラを標的とみなす。 立ち上がると同時に黒河の上着が左右にめくられる、右脇腹のホルスターと拳銃が熊田の角度からはっきりと見えた。 鈴木が叫んだ。拳銃の所持を伝えたのだろう。種田には見えづらい…

  • 千変万化1-7

    「端末の電源が切っ、ああ、本当に切れちゃった」 「私はとっくに電源を切っています」種田が偉そうに言う。 「わかっているよ、種田はいつも先を見通せるからね」 「出勤していれば好都合なんだがな」熊田はバス会社の敷地に車を滑り込ませた。 「アポなしが絶対条件です」そっとつぶやく種田。 「だろうな」 「ちょっと二人で秘密のやり取りしないでください」鈴木が焼きもち。 「のけ者ね」アイラが優しく介抱。 「はい、そうなんで、いつも僕が取り残されて」 「ごめんなさいね、私のために」 「いいえ、そんな、僕ならいつでも協力します」 「鈴木、アイラさんも降りてください」 「私も?」 運転席のドアを半開きに、熊田は車…

  • 子供をバイリンガルにしたい場合の教育法は?おすすめはオンライン英会話「GO School」

    将来世界を股にかけて仕事ができるよう、子供をバイリンガルにしたい方に向けて、選択可能な方法を紹介します。 私のおすすめは、抑えた費用で英会話の力を備えられるオンラインレッスンです。

  • 千変万化1-6

    「熊田さん、時間が」鈴木が催促。 「確証は持てませんが、マスコミにはあなたの名前までは漏れないでしょう」熊田の言葉をもって、公民館を後にした。 熊田たち刑事にアイラも引き続き同行する。 「次は?」助手席の種田が尋ねた。 「バス会社だ」 「熊田さん、電源を借りてもいいですか?」鈴木の声が運転席の後ろから聞こえる。 「もしかして、まだ撮影していたのか?」 「約束は約束ですからね」 「切れ」 「聞こえていますよ」端末からくぐもった声が届いた。I西署の柏木という刑事の声である。 「次はバス会社へ行きますので、ご心配なく」 「容疑者を連れて、どこへ行かれるつもりですか?」 「これから署で話を聞きます。帰…

  • 千変万化1-5

    「真実を話していただけないのでしたら、長居は無用。我々には時間がありません。それでは」 振り向きかけた熊田をこれまでになく必死に山遂は引き止めた。「わかりましたよ。話します」ためらいがちに山遂は語り始めた。「彼女とは前々から知り合いでした。僕が一方的に好きだったというだけのことです。開発場所の視察で、彼女はと人が死んでいた辺りの散策中に出会いました。最初は互いの仕事を隠して、たまに会うと挨拶する程度、それから昼食時にわざわざ足を運んで彼女に会えるという期待を持ったのです。互いの仕事は、彼女の荷物が振り返った拍子に僕と接触、ひっくり返ったファイルから知ることができて、僕は正直に仕事と身分を打ち明…

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