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Photo Credit︰Jess Zoerb via Unsplashたまらずに嗚咽し始めた未央に、シャールがティッシュを箱ごと差し出した。「ごめんなさい、私......」「謝ることなんてないわ。誰にだって泣きたい夜はあるものよ」シャールがふと、カウンターの上のドラセナを指さす。「ねえ、これ知ってる?幸福の木っていうの」「ええ、私もひとつ持ってます」未央は涙をぬぐいながら頷いた。引っ越し祝いに友人からもらったのだと説明すると、シャール...
Photo Credit︰Jess Zoerb via Unsplash「あの」半分食べ終えたところで、未央が口を開く。「どうしてこんなに優しくしてくれるんですか」それは単純な疑問だった。最初は抗議の一団に紛れてやってきたことは、この人だって、あの真っ赤なウィッグをかぶった若い男から聞かされているだろう。初めて会ったときも、警戒心むき出しで、圭を連れ戻したのだ。それなのに、どうしてそんな自分に優しくしてくれるのだろう。「そうねえ......