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  • 第990日 祝祭

    祝祭奇妙な音程の歌が煉瓦造りの城館に響き厳かに着飾った小人たちは靴を踏み鳴らして敬礼する狂った時計はばらばらに鐘を鳴らし詠み上げられる詩は意味のない繰り返し壁に塗られた黄ばんだ漆喰には不気味な古代文字が浮かび上がる背後に拡がる石だらけの谷を六つの目と角を持つ巨大な疫神が歩いていく手足や顔が欠けた眷属たちを引き連れて黒い痘痕だらけの太陽は中天に留まって動かない豊かに腐乱した祭りは何十年も続く第990日祝祭

  • 第989日 岩

    岩岩には長い月日の記憶が染み込んでいる人間が来る以前の日々も陽に照らされるとその記憶は蒸気のようにあたりに発散するそこは異秩序の空間になる岩にもたれて転た寝をすればその濃厚な時に夢で触れられるかもしれないいや油断をすると取り込まれ永遠に閉じこめられてしまうかも私は少し恐くなって岩に背を向ける第989日岩

  • 第988日 胃カメラ

    胃カメラ硬い管が喉を通って侵入しピンクの粘体を映し出していくこんなものを私は抱えているこんなものが私を支えている私は体を所有していない作ることも保つことも意のままに操ることもできないそれでもこのぬめぬめした管が毎日私を養ってくれていると思うとまあ戸惑いつつ感謝するしかない第988日胃カメラ

  • 第987日 神秘主義

    神秘主義神秘主義とは内的体験である内的体験は人に伝わることはないけれども内的体験の表現はなにがしかの人々を惹き付ける彼らは同じ内的体験を望むそして幾ばくかは似た相貌の内的体験をするそこにある種の共通言語が生まれる内的体験の表現がいくら存在論を語ってもそれは存在論ではない内的体験において外部は存在しない内的体験は真理の開示かもしれないあるいは単なる錯覚かもしれない曖昧なままその表現は世を漂う第987日神秘主義

  • 第986日 あがき

    あがきこうやって思索して言葉を紡いでいるのははたから見れば阿呆のようだろうけど私には一番しっくりくる時間意味はないかもしれないいいことですらないかもしれない自分でも至極楽しいわけではないでもいいのさ私はただ何かを見ようとしている何かを探しているそれは間違いないそれははっきりと現われないかもしれない虚しいあがきかもしれないそれでも私には必要なこと第986日あがき

  • 第985日 枷

    枷唯物論者にも人格者はおり信仰者にも歪んだ人格はいる世界観と人格は関係ないのかうわべの飾り物に過ぎぬのか宗教が強い国々でも普通に犯罪は起こる宗教は枷にならぬのかもっと悪いはずのを救っているのかよき世界観がよき人間を作るなどという願いは虚しいのかよき世界観などないのか何が人を光に向かわせ闇に足を踏み入れさせるのか実はわれらはまったく知らない第985日枷

  • 第984日 金色の風

    金色の風金色の風が吹いてくる時を超えた彼方から形象を無化し愛着を無化しもう思い出をまさぐるなその向こうにある香りをただ抱きしめろその震えだけを受け取れ思いも捨てこころも捨てその震えと一つになれそこにすべての答えがあるそここそが向かうべきところただそれに震えろ第984日金色の風

  • 第983日 天使

    天使気高い天使たちは恐ろしい存在われらのつましい希望など事も無げに踏みにじるけれどわれらの恥ずかしい罪も彼らは問いただしなどしないかすかに憐れみの微笑を浮かべるだけ彼らの美とはわれらには理解できぬその光芒の前にわれらは崩壊するわれらは恐れて逃げ隠れるけれどそのまなざしと囁きは忍び寄るそしてわれらを至上の恍惚で充たす第983日天使

  • 第982日 家族

    家族家族というのは私的領域なのか公的領域なのか公に対しては私になり私に対しては公になりのらりくらりと相を変える人は家族の前でも本当の裸になることはないけれども人は家族の宿命を自分のものとして担う昨今の世では家族は公になりつつある同意なしでは妻と性交できず子供を叩けば警察が介入する居心地よくもあり悪くもありその濃厚さと曖昧さは現代のひ弱な人間には重すぎるかもしれぬ第982日家族

  • 第981日 均衡

    均衡低い次元でも均衡は作られる問い掛けの矢は均衡の中に閉じ込められる均衡が破られるためには必要なのだ渇望や悲嘆がわれらには常に与えられる渇望や悲嘆が均衡に閉じないようにたとえ高次な次元にあっても渇望や悲嘆は消えることはないだろう常に均衡は破られねばならぬから第981日均衡

  • 第980日 陰謀論

    陰謀論何かに騙されているのかもしれないという疑惑は時折よぎるものだこの世は何者かが創った仮想世界という壮大な陰謀論もあるそこには一縷の真実があるわれらの魂は本源の世界を離れこの世の狭い秩序に押し込められているそしてこの世の秩序は大想念が創っている真の実在ではないものを実在と想わされているそれは確かだけれど皆それを納得してこの世に来ている陰謀論は仕掛ける者が得をするためにあるがこの仕掛けはわれら皆が得をするためにあるらしいまあ信じることは難しいけれど第980日陰謀論

  • 第979日 聖なるもの

    聖なるもの聖なるものは存在する隔絶したものとして無益なものとしてこの世の秩序とは無縁なものとして個によって実現されつつ個を超えたものとして体験され創造される輝きは伝わり続ける個の存在を救わないが個の魂を救うものとして聖なるものは存在する第979日聖なるもの

  • 第978日 禍福

    禍福今日一日は幸福な日を過ごした楽しく街を歩き美味しいものを食べ夜には詩作に向かったそんな一日があってもいいけれども毎日はそうではないいくばくかの不幸な日と多くのどちらでもない日そうしたこととは全く別に織られていく何かがあるそれが真の私なのかもしれず織られていくものを明らかに見られれば幸も不幸も受け入れられるのだろうがそんな目を私はまだ持てない第978日禍福

  • 第977日 七色の果実

    七色の果実七つの色の果実がある青い実は禁欲赤い実は官能緑は慈愛黄は孤高金色は求道銀色は智慧そして紫は創造の光七色の果実を結ぶのだ一つの茎からそれが全人性への道この物質の世に魂として生きることその矛盾の豊かさを生きるのだ第977日七色の果実

  • 第976日 悪夢

    悪夢濃厚な悪夢を見た後は頭が痺れて動かない混沌として臭気の強い灰色の靄が頭を充たして心の強い創造力が脳の乱脈回線と絡まり埋もれている情動を引っ張り出して奇矯な物語や情景を作り出すのか悪夢は警告なのかこういうことは考えなくていいということを教えているのかそれともどこかから侵入してくる悪魔の想念を受け取っているのか悪夢は恐いがその謎は面白い第976日悪夢

  • 第975日 流行り

    流行り流行りについていく気はないけれど流行りは時々勝手に入ってくる普通のものを買ったつもりが「お、流行りだね」などと言われるのは困る流行りは奇矯なもののほうがいいその時代の狂気を表わすようにそしてやがて過ぎ去っていき次の時代の人から奇異の目で見られるのがいいけれど時折流行りが生き残り後の時代に呪いを掛ける背広やネクタイもそんなものだろう最も害の大きかった流行りは「神の国の接近」だったかもしれないそれは二千年も呪いとなった第975日流行り

  • 第974日 上昇

    上昇上昇すればするほど人を支配できる世ではしばしばそう思われているけれど魂の世界では上昇すればするほど人に奉仕することになるというのが真実らしい先に進んだ者は後の者に手を差し伸べる魂の群全体が先に進むために私もいつの日か群の仲間に手を差し伸べられるのかそうであるならそれは大きな希望だ第974日上昇

  • 第973日 流転

    流転川の水は同じ水ではない川面の泡は消滅生成を繰り返すけれども川は川そして川もまた姿を変える個々の仮象を貫いて流れているものは何かそれは固定せず変化しているそれでも何かが貫いている固定した実体ではない変化しつつ同一であるものそれを固定化なく認知せなばならない流転するから何もないのではない流転するからこそ何かが創られる流転するからこそ存在は存在たり得る第973日流転

  • 第972日 殺生

    殺生殺して食べる残酷だがそれが生存の基本われらは植物ではないだから殺して食べるのはいいことなのだ殺され食べられることもまたジャイナ教徒は根菜も食べない土中の虫を殺さないようにとそれは慈悲というより生存への忌避ではないかどちらを選ぶのも自由だけれど私は殺して食べることを忌避しないそこに少しばかりの悲しみが伴うことも第972日殺生

  • 第971日 聖なる感情

    聖なる感情聖なる感情というものがある私の感情でありながら私のものではない感情真実を探り当てた時善きことをなし得た時美に出会った時激しい震えとなって身を貫く遠い峰々を眺める時海を前に佇む時深い森に溶け込む時甘やかな哀しみとなって心を溶かす喜怒哀楽とは違う恋情や勝利の高揚とも違う安楽の幸福とも違うもっと高みにある感情ある種の音楽絵画や彫刻や詩や小説時には祈りの言葉そこにも聖なる感情は刻まれるその感情だけで生きたい疲れさせる世の感情は捨ててそうすれば私は幸せになれるだろうそれは強欲というものだろうか第971日聖なる感情

  • 第970日 色

    色光は色風も色せせらぎの音も色香りも肌触りも色思いも色感情も色人も色いのちも色われらが見る色を超えて形態の万華鏡を超えて色が宇宙を織りなす色に染まり色を織りなしわれらは宇宙に色を添える第970日色

  • 第969日 未来

    未来子供たちはどんな文明を生きるのだろうわれらが生きた文明とは違うものだろうか学生運動やカウンターカルチャーやニューエイジやポストモダンその高揚と幻滅はそれ自体一つの文明としてわれらの心に刻まれた子供たちはこれから何に高揚し何に幻滅するのか何かに操られたりしないかわれらは彼らの風景を見られないただその底にわれらを駆り立てた情熱と同じものがあることを願う第969日未来

  • 第968日 人工の操り

    人工の操りこんなに人工の物ばかりなのにさらに人工の世界に踏み入ろうとするそれが本当に面白いことなのか人の操りに身を任せているだけではないか操作された安楽の中で束の間の歓喜を味わい過ぎゆく時をやり過ごしその先には空虚がある嵐よ起これ山よ火を噴け操りではなく激しい打撃をもたらせ設定された快楽を味わうのではなく未知の苦楽と闘うその戦場が生命には必要なのだ第968日人工の操り

  • 第967日 存在美

    存在美美は芸術の中にだけあるのではない一つの態度一つの仕草一つの表情の中に美はある富がなくとも地位がなくとも技能や才能がなくとも美は実現できる生きる姿として美は存在の根源醜悪は存在の否定存在はすべて美をなし得る美を知らねばならない美を求めねばならないそれは存在の責務第967日存在美

  • 第966日 後生

    後生一遍さんは山道で盗賊に出会った時にわんわん泣いたお前たちの後生が悲しいと私も泣かねばならない私の後生が悲しいと後生をよくする力もないと実際泣いている仏様にすがるしかないかけれどすがってよくしてもらうなんてズルではないか仕方ないね悪い後生を受け入れることだそこで少し利口になることを願うことだ第966日後生

  • 第965日 不遇の名作

    不遇の名作あまり知られていない名作というものは少しくやしくもどかしいあの超有名な弥勒坐像の反対側に佇む不空羂索観音像もそんな不遇の名作だほとんどの人は弥勒像だけ見て立ち去る単独で伽藍に鎮座していたらと思うこちらのそんな思いなど気に掛けず観音像は静かに微笑み光を発しているまあそれでいいのだよと言うように第965日不遇の名作

  • 第964日 混沌

    混沌混沌を見るのは楽しい毎朝ニュースの見出しを眺めて世にはこんなことが起こっているのかと頭をくらくらさせるのは楽しい混沌万歳混沌は偉大だ世も混沌私自身も混沌単純な原理を立てたところで混沌が捉えられるわけでもない模擬予測をしても混沌はせせら笑う原理法則とそれを逸脱し壊すものその不滅の葛藤をそのまま味わうのが楽しい第964日混沌

  • 第963日 流刑

    流刑ここは流刑の地思いは形をなさず心と心は不和に騒ぐ安らぎをもたらす歌もなく苦役に肉と骨は軋み蓄えは砂となって崩れるわずかに舌を潤すのは壊れた希望の残骸何万の苦役の日々を過ごし刑期満了となるのかそれともまた流刑の身となるのかわずかな休息日に丘に登り重くたれ込めた空の向こうを眺めるそれだけが流刑の目的なのか第963日流刑

  • 第962日 風は神

    風は神風は人を殺すこともできる山の嵐も竜巻も風が吹き続けていると何も考えることができない物陰に入ってようやく心は戻る風は人の心の敵けれど風がないと地球は死滅する海流すらも消滅する風は巨大な生命活動小さな命を育みもし殺しもするわれらが愛そうと憎もうと気にも留めない風もまた大いなる神第962日風は神

  • 第961日 自由な体

    自由な体体を自由にできたら何をしたい?食わなくても済むようにするかどれだけ食っても平気なようにするか性欲をなくするか毎日セックスしても平気なようにするか眠らなくて済むようにするかきっちり快適に眠れるようにするか無病で長生きというのがほとんどの人の望むことだろうけどどれだけ生きたら気が済むのかしら私が願っているのはその時が来たらぽっくりと死ぬことかなついでに屍も消し去れたらいいね第961日自由な体

  • 第960日 マウント合戦

    マウント合戦そんなに人を見下したいなら善性で秀でればいいのに人はなかなかそうしようとしない詰まらぬもので武装してばかりいや善性の人は人を見下したりしないか憐れむことはあるかもしれない私は知らない人を見下したいのは傷つけられるのを恐れて怯えている子供が内にいるからかそれを救うすべはなかなかない傷だらけになってもへらへらしている聖なる愚直を身につけろということか第960日マウント合戦

  • 第959日 その道だから

    その道だから面白い人生だったらそれで手一杯だったろう安楽な人生だったらそれに浸り切っただろう苦しいことがそこそこあり悲しいことがそこそこあり間違ったことがたくさんあり罪を犯したこともたくさんありそうして私が獲得してきたものそれは私ならではのものほかの道では得られなかったもの私の手にある真理を大切に思うなら私の人生はよかったのだ第959日その道だから

  • 第958日 永遠と精神

    永遠と精神宗教の教義やビッグバン仮説はまやかしの永遠真の永遠を隠す永遠は時間の観念ではない始まりがあって終わりがある直線的な時間ではない様々な時間軸の交錯その彼方にその奥に永遠は存在する今ここの場と遠い光が一つになるそこに永遠は存在する第958日永遠と精神

  • 第957日 聖なる詩

    聖なる詩宗教の語彙は結局のところ詩だ啓示や直観の生み出す表現だ公共の議論に乗るものではないその詩に陶酔していくばくかの人は生活を変える詩のフィルターを通して世を見るそれが正しいかどうかの答えもない世を超えたもの形象の奥にあるものそれは詩によってしか捉えられない曖昧や可謬性は宿命われらはあがくしかないただより純粋な詩を求めて第957日聖なる詩

  • 第956日 外部

    外部外のものとつながろうとするその情熱がなければ精神は腐敗する異国の文物未知の知識宇宙の彼方そこにいる愛しい人の心の営み老いていくと外とつながろうとする意欲はなくなるそれは確かに死への歩みけれども魂は外を求めるこの世のすべてを超えた外を確かなことは何も現れることはなくとも第956日外部

  • 第955日 刑事ドラマ

    刑事ドラマ刑事ドラマはマンネリでもそれなりに楽しめる小さな何でもない事物が真実へと導くところがそれは知の愉しみ小さな事物が大きな真実を開く科学でも哲学でもそれは同じだろう小さな事物と大きな真実それがあれば世は幸せけれどそれは滅多にないそれでもわれらは刑事になって小さな事物から真実を探らねばならぬ身の回りにある凡庸な事物から第955日刑事ドラマ

  • 第954日 新たな悪魔

    新たな悪魔麻薬よりも恐ろしい新たな悪魔が世にはびこりつつあるとりわけ若い人々に新しい雑草が古い雑草を放逐していくだけならいいがこの雑草の繁殖力は桁違いどこにでも入り込むが派手な災厄は起こさないそれが逆に不気味この悪魔を人類は押さえ込めるのか破壊されるのは一部なのか世はもっと恐れなくていいのか第954日新たな悪魔

  • 第953日 泣く子

    泣く子何もできないと泣く三歳の子供に私は戻る言われたことがうまくできない人に何かをしてあげられない生きてきた間何度もそうだった老いてきてますますそうなっているそれなりに必死で生きているのに何もできない悲しさに泣くいっそ自由で気ままで身勝手な子供に戻ろう何ができなくても構うものか毒にも薬にもならず世の片隅で独り遊んでいる幸せな子供になろう第953日泣く子

  • 第952日 腸重

    腸重悪いものを食うと重力が三倍になったように体が重くなる『綿の国星』にもそんな場面があった乳糖不耐性の日本人のせいか牛乳やバターは好きだけと体が嫌う西洋料理屋で食べた後動けなくなったこともある重力を感じているのは胃腸ではないかなどと妙な考えが浮かぶ腸内細菌が人間を支配しているという説も最近は出ている美や善も腸が判断していたりして第952日腸重

  • 第951日 残響

    残響無数の人々が永遠の美を求めて格闘してきたどんな文明においても永遠を奪われた現代人はどんな美を追求しているのか人間の知や情が相手なのか永遠の不在という永遠に向かうのか永遠は幻ではない手に入れることはできぬが求めるその先に逃げ水のように現れるその永遠への格闘の残響が芸術としてわれらの前にあるわれらはそれを聞けるのだろうか第951日残響

  • 第950日 帰郷

    *千日詩集も950日になりました。何とかたどり着けるかな。もう終わりだからコメントOKにしました。ないとは思うけど。帰郷私は故郷を見出したこうやって詩(のようなもの)を書いている時それが私の故郷なのだ回想し夢想し思索しかすかな光と美を探って言葉と格闘する楽しくはないがずっとしていたい日光の僻村でもなく信州の山麓でもなくどこでもが故郷なのだたとえ監獄の中にいても紙と鉛筆さえあればそこが私の故郷になるだろう第950日帰郷

  • 第949日 夭折

    夭折ちゃっちゃっとやることやってさっさと向こうへ帰るという人生だったらよかったと思ったりもするけれどやることがひとつかふたつというようなことがあるのかどうかおおかたの人生はもっと複雑でカオスのような気もするけれどわが人生を顧みるにあまりにカオスすぎてやることなどあったのか怪しくなるそんな乱雑に呆れ果て一つでも秀作を遺して夭折する天才の人生につい憧れてしまう第949日夭折

  • 第948日 弾創

    弾創強くなるため懸命に空手を習ったのに相手は機関銃を持った軍団だった実際の武闘の話ではなく心の戦闘の話人生そんなことばかりいくら防弾服で身を固めても弾はしょっちゅう通過する時には思わぬ方向から飛んでくる満身創痍で生きながらえるそう腹をくくるしかない誰もがみんな傷だらけなのだと心の心臓は奥の方にしまっておくことだ撃たれて大怪我をしても死ななければまし第948日弾創

  • 第947日 掃除した家

    掃除した家家の中をきれいにしたら悪霊が入り込んでくるそうイエスさんは言った空っぽじゃだめなんだよといくら外との行き来を断っても窓や戸口はある電子機器の画面を通しても変なものは入り込む家の中には主が必要悪霊が入って来ないよう追い出せるようその主とは何かね教条的な宗教ではないだろうよそれはむしろ悪霊かもしれないし第947日掃除した家

  • 第946日 体

    体体を持っていることがつくづく嫌になってきたジジイになったせいでもあるが人生を総観すれば体は重荷だ若い頃はセックスやスポーツがこの上ない悦びだった生命力に溢れた自分の体も嫌いではなかった体を悦び体を厭うその経験は何になるのかそのうち体は反逆するだろう私を苛め悲鳴を上げさせるだろうそれもまた必要なことなのか第946日体

  • 第945日 毒蛇

    毒蛇あらゆる集団を毒する存在がいるしばしば権力者の横に社交的な華やかさを見せて疑惑を生み出し対立を作り出し隠微な影響力で操作し集団の生命力を衰退させるなぜその存在を排除できないのか誰もわからない権力者には違う顔を見せているからかこのことに多くの人は気づいていないたぶんその存在自身もまるで恐るべきタブーのようだ第945日毒蛇

  • 第944日 氷

    氷氷は死そのものその死を浸した水をわれらは飲む肉の炎で自らを焼き尽くさぬようわれらには小さな死が必要だ氷の鋭い刃で熱い心臓を突き通せば炎は瞬時に鎮まるだろうそのうち空から氷が降り人間たちの業火を鎮めるだろう人はその時本当の自身を知るだろう第944日氷

  • 第943日 パスワード

    パスワードパスワードを忘れると私は私でなくなるパスワードを盗まれると誰かが私に取って代わる私が私であること誰かが私でないことそれを証明することはこれだけ技術が発展しても難しいけれど私が私だと思っている私は本当に私なのか変な情念や思念に乗っ取られていないか私が私でなくなるのを防ぐには私自身へのパスワードが必要だ本当の私しか知らない秘密の言葉が第943日パスワード

  • 第942日 地獄

    地獄神を殺され永遠を奪われ死を遠ざけられ愛を腐食され家族を砕かれ仲間を毒されみじめなわれらしかもそのみじめさに進んでのめり込もうとするこの地獄は試練なのかその悲惨の中から何かが生まれてくるのか第942日地獄

  • 第941日 脱感情

    脱感情人との間に紡がれる細やかな感情作用を糧にしてあるいは苦悩の種にして人は生きていく私はもうそれをやめた幸福なことか不幸なことか憎まれたり攻撃されたりは嫌だけれどまあさらりと身をかわしてそれでも人の笑顔には心が温まる私とは関係なく笑顔は感情とは別のものだろう感情を超えて笑顔を浮かべ感情抜きに笑顔を味わいたい第941日脱感情

  • 第940日 添酒

    添酒ワインのない食事は陽の射さない一日のようなものとフランス人は言うなんか少しむかつくけれど酔っ払ってどんちゃん騒ぎはなくてもいいけれどおいしい食事を味わいながらほろ酔いになり明るいおしゃべりをするのは人生の至高の楽しみの一つ冷酒なしの刺身ワインなしのステーキそれはやっぱり情けないいや牛丼にグラス生ビールでも十分に贅沢で幸せ酒は摂食を食事にする第940日添酒

  • 第939日 脂

    脂つるつるべとべと脂はきもいつるつるべとべと脂はおいしいきしむ体に脂をさしたいけれども脂はぶよぶよお腹に溜まるいつからか脂は毒のように言われ現代人はぱさぱさになった脂っ気が抜けてきしんでいるのに妙に脂臭い匂いを立てている毒は脂とは別の所にある気がする第939日脂

  • 第938日 物語

    物語物語に遊ぼう怒ったり笑ったりはらはらしたりあるいは味わいある情景が流れる物語抜きではこの世は流砂の園ばらばらの混乱は物語で美しくなる紋切り型でも悪くはない独創的なら素晴らしい濃密でも淡麗でもいい自分の人生も物語にできれば心はいくばくか軽やかになるだろう死も虚無も跳ね返せるだろう第938日物語

  • 第937日 愛想尽かされ

    愛想尽かされ楯突いて我を出して吠えまくり自分で潰れる見放され愛されず縁を切られる当然のことけれどもほかに振る舞い方がわからない救いがたい愚かさ素直な子供になること従順な奴隷になることではない道は見えない第937日愛想尽かされ

  • 第936日 無姿

    無姿あの高貴な火の中に飛び込んで自分を焼きたい諸々の余計なものを燃やし尽くしたいあの純白の雪の中に融けほぐれて自分を消したい中まで染み込んだ汚れを流し尽くしたいわが身わが心こそがけがれているのだそれをすべて消し去って聖性へのまっさらな意志となって新たに生まれたい姿となることがけがれを持つことなら姿を消し去りたい一筋の震えとなって天の底まで突き進んでいきたい第936日無姿

  • 第935日 悪夢

    悪夢青く澄んだ湖のほとりの無人駅で私は小さな駅舎の壁に言葉を刻もうとしたそれは特別な任務秘密で重要で少しばかり悪私はドライバーを手にしたがそこには古い別のドライバーがあった壁にはすでに文字が刻まれ消えかかっていた私はその下に新たな文字を刻み始めたけれどそこに闖入者が来た隠れる場所はなく私はその男を殺すべきか迷うそこで声を上げて目が覚めた見知らぬ闖入者は私だったのか私は殺したのか殺すべきはどちらの私だったのか第935日悪夢

  • 第934日 阿呆話

    阿呆話阿呆話に聞こえるだろうけれど人類の目標は戦争や病気や飢餓を撲滅することではなく人類の一人一人が向上することだそれぞれなりの場所でそれぞれなりの水準でゆっくりと少しずつでも進化成長していくこと阿呆話に聞こえるだろうけれど実は一人一人がやっている何度もの人生を通してだからこそ世があることは肯定できる悲しんだり苦しんだりしてもそれがなければ存在はただ地獄だ第934日阿呆話

  • 第933日 泣き虫

    泣き虫毎日泣きながら暮らそうそれでいいではないか悲しいことばかりだからそれが当たり前のこと哀れな人間と蔑まれても何のこともないそういう人間だというだけのことそのことを悲しみはしない毎日笑って暮らせる人は幸いなるかなでも誰もがそうである必要はない人はそれぞれの心性を生きる泣いていてもいいのだ心が豊かであれば第933日泣き虫

  • 第932日 極楽三年

    極楽三年極楽浄土なんて三年もいれば飽きるさ酒池肉林だろうと親しき者との睦み合いであろうと娑婆が飽きないのは段々と成長していくからだステージごとに欲望も課題も変わる苦しいけれどよくできているあの世へ行っても魂は成長する成長があるなら苦しみもある極楽世界などはないのだ極楽を望まず成長の苦行を望むそれなら娑婆でもできる第932日極楽三年

  • 第931日 人間嫌い

    人間嫌い他人が嫌いというのは人間嫌いではない真の人間嫌いは自分も嫌い私は人間が嫌いなのではなく人間の愚かさが嫌いなのだ自分の愚かさももちろん含めてそれはごく普通のことでは?愚かさも含めてその人なのかそうではないのかしかし愚かさのない人間ばかりになったら果たしてよい世界ができるのかそれは生きるに値する世界なのか第931日人間嫌い

  • 第930日 悪態

    悪態二元論がどうしていかん?二元の間の交渉が説明できない?説明できないから存在しないってえのは何たる知の傲慢科学と一神教と共産主義その本源は同じだよ一元論という知の傲慢さ俺は二元論者じゃあねえよ一応三元論者だ体と心と魂は別だよと四元論でも五元論でもいいんだがそこまで知性は拡がらねえってだけだまあ阿呆は一元論で喜んでいればいいさ第930日悪態

  • 第929日 天への讃歌

    天への讃歌仕事のない昼下がり何をなす気力もなく内には何も働くものがなく私はじりじりと絡まる詠嘆も叫びも囁きも湧き上がってこない何という空疎何という貧困そして何という赤裸これが私そのもの価値も意味もないこの地獄こそが天への讃歌第929日天への讃歌

  • 第928日 聖なる言葉

    聖なる言葉いにしえの人々は聖なる言葉を唱えた至る所で日がな一日繰り返しそれは欲望からではなく苦悩の叫びでもなくただ世を聖なるもので充たしたかったのではないか近代人は世を何で充たしたいのか快適な物質?それなら願いは相当叶っただろうそれでもわれらは渇く聖なるもので世を充たしたいけれども何がそうなのかわれらは知らない第928日聖なる言葉

  • 第927日 早寝早起き

    早寝早起き規則正しい睡眠というのは外的生活には欠かせないが内向生活にはいささか窮屈だ変な時に起きていたり変な時に寝たりそのぐちゃぐちゃが内向生活を色づける眠れなかったり眠かったりそれはつらいけれどもそれが内的な何かを生み出す助けになる外的生活と内向生活は眠りにおいてもぶつかり合うそれが定め第927日早寝早起き

  • 第926日 求職

    求職秀でた存在と共に働けることは厳しいけれども大いなる喜び厳しく指導されながら自分を発揮し時には相手を驚嘆させるそして素晴らしい仕事がなされていくこの世ではあまり経験できなかったがあの世へ行ったら偉大な菩薩様のもとで働きたいお前なんぞいらんと言われそうだけれどそこを何とか頼み込んで第926日求職

  • 第925日 外向型思考

    外向型思考外向型の思考はその場その場で外の現実に合わせて形成されるらしい場面が変われば論理も変わる原理や構造なんてないらしい外に合わせているから結果は出るが全体を見るとガタガタ原理も一貫性もないなんてとんでもないと内向型は思うがそんなものは現実処理には害毒なのかも現実を生きるのに役に立つそのことは大事だけれどそれは実を結ぶのだろうか第925日外向型思考

  • 第924日 妄説宇宙論

    妄説宇宙論今の宇宙論はすべて間違っているなぜなら宇宙を閉鎖系と捉えているから閉鎖系などどこにも存在しないどんなに鉛の箱を作ろうと宇宙線はそれを突き抜けるこの宇宙には大いなるエネルギーが外から注ぎ込まれている背景放射も暗黒物質もその証だビッグバンでも定常宇宙でもなく宇宙は様々なものが出入りしている複雑怪奇な運動体なのだ第924日妄説宇宙論

  • 第923日 もやもやと

    もやもやと理解できない理解できるはずもないけれど理解したいそれに苛立つ本当にこんな世界でいいのですかいくら試練の場だと言ってもあまりに八方塞がりではないですか本当にいいのですかそんなことを思う資格もないのは重々承知しているけれどももやもやとくすぶるいっそ杖の一撃で滅ぼして下さいこの痴愚傲慢な魂を第923日もやもやと

  • 第922日 星となる

    星となる光る星になりたい内に厖大な炎を秘め虚空に燦然と独自の輝きを放つ星に星の組成はすべて異なる地表の姿もまた異なる放射する量子も電磁波も重力場さえ異なるそれは純粋な思念複雑構造が生み出す色光完全な形相宇宙はそんな星々で満ちているわれらは皆その星の屑けれど星を眺め憧れることはできる第922日星となる

  • 第921日 買い物

    買い物夢の中で買い物をした素晴らしく美しいものだったけれどそれが何だったか思い出せない骨董品のようだったけれど眠りの中であちらに行って天使から教えを一つ頂いたなどと妄想してみるが全然利口になった気配はないそういえばこの頃は買い物をしていない気に入ったものを手に入れたという悦びを味わっていない何か本当に愛せるものを買って喜びたいけれどそれが何かわからない第921日買い物

  • 第920日 射程

    射程目の前のことしか考えられないという愚かさはどうにかならぬものかそのせいで将来の災厄が生まれるけれどいくら長く射程を取っても自分の人生八十年で止まるそれが今の世界観の悪だ後は野となれ山となれお粗末な頭で先を考えたところで的はずればかりだとしてもそれでも射程は長く取らねばならぬ今生の八十年を超えてどれだけ射程が伸ばせるかそれは知性の責務だ第920日射程

  • 第919日 暗色の心

    暗色の心人の心の色は基本は変わらぬのかもしれぬ明るい色は逆境でも明るく暗い色は光を受けても暗くこの上ない栄華を味わう時暗色の心も高揚感で満たされるがしばらくすればそれは消え去り心はもとの暗い色に戻る暗色の心を持った人間はそうと諦めるしかない明色の心になることはない心の明暗は宿命けれどもそれはそれだけのこと肝心なことはそれを超えてあるだろう第919日暗色の心

  • 第918日 願い

    願い一筋の小さな流れに繋がっていたい小さく惨めな魂でもその繋がりだけは保っていたい世を貫くいくつもの大河は泥の渦や虹色のしぶきをあげて騒々しく流れていく私はそこから弾き飛ばされたこの流れの水はか細いが冷たく澄んでいるその源流は天にあると私は信じる広大な畑を養うことはなくともこの世に一筋の光を投げ続けるその流れを一番末席で受け取りたい第918日願い

  • 第917日 聖なる場所2

    聖なる場所2昔の家には神棚があり仏壇があったそこは家の中の聖なる場所単に故人を偲ぶためではなく都会の狭い家ではそんな余裕はないわずかな空間も機能で埋め尽くされるそれでも人は聖なる場所を作る写真や石やフィギュアを飾ってそれは住む人の人生の象徴喜びがあったり悲しみがあったりけれど何かが降りてくるわけではない昔風の人は集合住宅の仏壇の天井に宙と書いた紙を貼るという神棚や仏壇は永遠に向けて開いた窓なのだ第917日聖なる場所2

  • 第916日 餅

    餅餅はご馳走神様への捧げ物いや神様そのもの餅自体が美味いのかと問われると言葉に詰まるけれど醤油やきな粉と一緒になると得も言われぬ絶品になる毎年あちらに老人を連れて行ってくれるのも神様の思し召しなどというのはブラック過ぎる冗談か何度も醤油を塗って焼いた磯辺餅にチーズかバターを添える伝統にはずれるけれど私には至高の美味第916日餅

  • 第915日 秘伝のレシピ

    秘伝のレシピ豚肉と干し椎茸と醤油をどっさりと入れた真っ黒の汁焼き餅の上には白髪葱とほうれん草と鳴門それがわが母の特製雑煮北関東らしく極度にしょっぱい恐ろしく庶民的だが私の一番根にある食べ物母亡き後は自分で作って三が日食べ続けるそれが幸せなお正月貧乏くさくて塩分過多でとても人にはお出しできないが私には世界一の料理第915日秘伝のレシピ

  • 第914日 聖なる場所1

    聖なる場所聖なる場所がかつてはあちこちにあった何かが降りてくる場所人が踏み入れてはいけない場所今もその痕跡はぽつりぽつりとある不思議な力のある場所私には霊能はないけれど時には何かが湧いているのを感じる現代都市の聖なる場所は超高級店舗街かそこには何が湧いているのか聖なる場所がある街に住みたい神秘な力はもらえなくとも何かしら清らかなものは漂っているだろう第914日聖なる場所1

  • 第913日 内向感情

    内向感情内向感情は何の役にも立たぬ私には何ものにも代え難い生きる悦びであるのにそれをまさぐって生を無駄にしてきたそれに囚われて生を貧しくしてきた過ちだったのか焼け野原に立って私は茫然とするけれどその幻影と共にあった至高のものへの憧れの震えはどれほどみすぼらしくとも私の宝第913日内向感情

  • 第912日 バケ学

    バケ学HとOとCこの三つだけでどれほどたくさんの物が作られているか少し並べるだけで頭がくらくらする糖類、油脂はもちろんのことクエン酸、酢酸ビタミンCやプラスチックまでおいおいそれもHとOとCかよ単純な素材だけで無限の現われが作られている組み立て次第で毒にも薬にもなる何かものすごい秘密がここに隠されているような気がするがそれが何なのかさっぱりわからない第912日バケ学

  • 第911日 笑いの圧殺

    笑いの圧殺「笑っている者に災いあれ彼らは嘆き悲しむようになる」(ルカ6:25)捏造された神の子の言葉が恐るべき呪いとなった笑いを禁じるところにはヒステリーがあり弾圧があり人間の死があるなぜこんな言葉が生まれてしまったのかなぜそれを絶対の真理にしてしまったのかよきものに悪しきものを加えるのが人間なのか笑いもまた悪しきものが加えられているが枷を解き放つ笑いの破壊力を失えば人間の精神の自由はなくなるだろう第911日笑いの圧殺

  • 第910日 創造礼賛

    創造礼賛もし創造主としての神を信じるならすべての被造物を賛美しなければならないどんなくだらないものもどんなおぞましいものも一瞬一瞬出会うすべてのものに神の創造への賛美を捧げなくてはならない毎瞬毎瞬驚き畏れ感謝に打ち震えなければならない敵は敵のまま悪魔は悪魔のまま感謝し礼拝するのだ闘いつつ憎悪しつつそれができないのなら神の創造について語るべきではない人間にそんなことは許されていない第910日創造礼賛

  • 第909日 本との出会い

    本との出会いこの本がなかったら私は今の私ではなかっただろうという本がいくつもある私はそれに感謝しなければならない出会わなかったらもっとまっとうな人生を送れたかという疑いも生じないではないがいやそんな人生はご免蒙るそんな力のある本は稀で出会うことも稀だろう僥倖なのか仕組まれたのかともあれそういう本が存在するほとんどの書き物が電子情報になってもそういうことは変わらず起こるのだろうか第909日本との出会い

  • 第908日 日曜夜の憂鬱

    日曜夜の憂鬱あれれもう一週間が始まるよついさっきようやく一週間が終わったばかりなのに一日一日を何とか頑張り一週一週を何とか乗り切り週末に少しだけ息をつきそうやって労働者の人生は過ぎていくそれでも子孫が育っていったり自分が成長していったりいつの間にか人生は動いていくひいひい言っている自分と大きな画面で見られる自分を両方持てるといいんだろうけどね第908日日曜夜の憂鬱

  • 第907日 不記

    不記イエスさんの言葉は書き留められなかったものが多かった話したことが全部残るなどあり得ないし人には理解できないものもたくさんだったろう彼が言っただろうと私には思える言葉が一つある殺すなら殺されろ魂が負う傷は殺されるより殺すほうがはるかに深い過激すぎて書き留められなかっただろうでも彼なら絶対言っただろう第907日不記

  • 第906日 テレビ

    テレビ光を発する箱の前にすわって笑ったり泣いたり怒ったりそんな光景はそもそもおかしい人間の本性に反している画面に映る情報や知識をただ黙って見てううむとかふんとか言うそれならおかしくはないこのへそ曲がりはどこから来たかたぶん私はいやなのだ人に感情を操作されるのが人の意図に操られて箱の前で喜怒哀楽するそれはやはりおかしい第906日テレビ

  • 第905日 浄土革命

    浄土革命法然親鸞の浄土教はすべてぶっ壊したんだな仏教というか宗教をまあ首の皮一枚は残して知も行も戒もどうでもいい師弟も組織も権力もない教学なんぞは余計なこと何と過激なその恐るべき破壊も今はどこへ教団を作り寺や墓を作り浄土の実在さえも言い淀みもう一度浄土革命が必要かな誰もがそれぞれなりの浄土へ行くという真実を蘇らせるべきじゃないかしらそして問題はその先にあるという真実を第905日浄土革命

  • 第904日 意識

    意識意識などは小さく脆いものそう学者たちは言い続けてきたけれどそれは悪魔の囁き人間を貶める罠正しい認識も心身の偏りの補正も意識が舵を取らなければ実現しない自分に向けて何が押し寄せているのか自分の中で何が蠢いているのかわれらはしっかりと意識せねばならぬ拡げなければならない強くしなければならないそれがわれら人間の責務第904日意識

  • 第903日 姿勢

    姿勢人の姿勢はそれだけで価値だとある賢人は言った敗北しようと病の中にいようと姿勢を保つことはできる誇りを持ちなさい優しくありなさい善きものを善しとしなさいいつも失敗しながらも私はそれを肯う姿勢だけは失うまいと第903日姿勢

  • 第902日 広大

    広大世は広大だわれらはその広大さと何とかつながろうとする広大さが恐ろしいから話題を作って群がったり権威を身につけ反り返ったりただ売名行為に走ったりアイドルオタクもその一種か世の広大が突きつけるわが身の小ささ弱さをわれらはそうやって必死に慰めるそれでも世の広大さはそこにある不気味な深海のようにわれらは日々脅え震える第902日広大

  • 第901日 不要

    不要本当はないほうがいいものはたくさんある中毒性嗜好品、宗教組織偶像、王制、墓、軍隊、食道楽やむを得なかったり多少の益はあるものだったり人間がもう少し利口になったらなくなるかもしれないしかしそうなったらなったでまた人間はないほうがいいものをたくさん作り出すのだろう人間そのものがないほうがいいということはたぶんないと思うけれど第901日不要

  • 第900日 九合目

    九合目九合目もうすぐ頂もうすぐ終わり喜ばしくもあり名残惜しくもありその先は虚空難儀な下り道を降りるよりそこに飛び込みたいと登山者は思わないだろうか山の頂には絶景が拡がるが詩作の先には?私の心は何も成長しなかった?その前に空から鉄骨が降ってくるかも決めたことができるのならただそれだけでいいか第900日九合目

  • 第899日 電線

    電線電線はずいぶん叩かれてきたけれどその乱雑に味わいを見出す人もいるない町並みはきれいだけれどあればあったで趣きもあるすごいものを張り巡らせたと感嘆しもっと多くの見えないものが張られていると想像すると群としての人間の力に圧倒される個人が張り巡らせられるものは何か人脈や情報網?それができなかった私は貧乏(笑い)いろいろなものを張り巡らせてようやく人は生きていけるけれどそれを抜け出たい思いもあり第899日電線

  • 第898日 近代芸術讃

    近代芸術讃いろいろ思いはあるけれど西洋の近代芸術というものはよきものだったそれはわれらが西洋近代文明に染まり切ってしまっているせいか?芸術という概念自体一時代の幻なのか?純粋な美の追求個人の心と魂の描写それも時代の神話なのか近代芸術は終わったかもしれない美と霊性をめぐる活動はどうなっていくのか私にはうまく想像できない第898日近代芸術讃

  • 第897日 務め

    務め悲しい悲しいと叫び続けることだ苦しい苦しいと呻き続けることだ解説などいらぬ解決などいらぬただそこにあって叫び呻き続ければいい何になるなど思うな何かが来るなどと期待するなこの世界は叫び呻きで溢れているただそれだけのことだ救われる道など誰にもわからないこの世にいる限りないのかもしれぬただこの事実を冷静に見つめろそれがお前にできる最上の務めだ第897日務め

  • 第896日 余計なお世話

    余計なお世話現実はそうでもないのにやたらに自分を偉いと思っている御仁がいる不思議でならないまわりはついおちょくったりするが一向に介する余地もないその不動不惑は羨ましく……はならないそのまま死ねば幸せだろうという考えも成り立つけれどあの世があるならそうは行かないあちらで気づくのか気づかないままどうにかなるのか余計なお世話だが少しく心配ではある第896日余計なお世話

  • 第895日 廻水

    廻水われらは行く川の水なれども美しき渓と滝を穿たん湖となって空を映し緑なす野を潤さん天地の精妙なる造化に一筋の彩りを加えんやがて空に昇りて遠き星々の光を浴び陽光を七色に輝かす雲とならんそして雷鳴と共に地に降り落ち再び大地のいのちを育まんよし千度の巡りの定めとすれどもわれらは静かにその道に赴かん造化の中のわれらが定めなれば第895日廻水

  • 第894日 棒

    棒棒はただ立つまっすぐに立ち尽くす風を受けず雨を止まらせずただ無表情に立つそれでも太陽は影を作る影はゆっくりと回転し日々少しだけ姿を変えるただ棒は天のどこかを指して立ち続ける第894日棒

  • 第893日 愛を超えて

    愛を超えて愛する人たちがいれば世は大切なものになる平和で豊かであってほしいと願う愛する人が誰もいなければ世はどうでもよくなる時には憎むべきものになるそんな人間の我が儘を超えて世を大切に思うには何が必要なのだろうかその何かを見出さなければ世は滅びるだろうそして世は今滅びつつあるだろう第893日愛を超えて

  • 第892日 不帰

    不帰もう一度という言葉はもう私にはないやり直したいことはなく繰り返したいこともない最も輝かしかったあの夏の日ももう味わわなくていい犯してしまった愚行もそのままでいい長い旅をしてここにいる道のりのすべては過ぎ去ったものけれどすべては消えずにある愛しすがるでもなく憎み厭うでもなく私はそれを静かに抱き止める第892日不帰

  • 第891日 探検

    探検気の合った仲間と探検に行きたい未知の野を渉猟し名も知らぬ山を登り見たことのない風景と出会い猛獣や魔物に脅えひやりとする危険をやり過ごし満天の星の下で野営したい義務も競争もなくただ心躍らせる体験を求める探検は生きることの原初の姿もう叶わぬ夢だから死んであちらの世に行ったら思う存分あちこちを探検したい第891日探検

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