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よも 言葉のアトリエ http://apismos.blog.fc2.com/

言葉で描くみえないこころ。 縦横高さ、時間軸、いつか 見えてくるでしょうか? 拙いながらの一綴り、ジャンルは絵のように…詩や小説の創作物を載せています。 どうぞお気軽にお立ち寄りください。

上遠野世方
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2020/06/20

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  • ジュブナイル時の空へ還る(18)

    十八、イカロスいつもなら、森が見える場所のはずである。それなのに何も見えない。何も見えないというよりも、何もない。あるのは一面を覆い尽くす深い霧。その霧が晩秋の早朝のように道を覆い、森を覆い、その先の山を覆っている。「すげえ。霧のミルクだ」夏分にしてはいい表現だ。「何かの舌みたい」と羽流が続いたのをきっかけに、喩えが応酬した。雲の津波とか、霧の滝とか、アイスクリーム、カキ氷。そんなのはまだ好か...

  • ジュブナイル時の空へ還る(17)

    十七、境界をめざして「ここの時間はもうすぐ繰り返される。明日になるということだ。ただ同じ明日でも何かが違って進行するだろう。新しい経験則が加えられたからな。しかし時間は変わらない。そして同じことが起こる。君達は捕まり、彼らは帰った。そしてここに、我々の時間則にいない君達がやってきた。そういう意味では君達も異星人だ。いいか、ここは君達が知らないだけの記憶のひとときだ。未練を残すことはない。ここに...

  • ジュブナイル時の空へ還る(16)

    十六、思考の冒険 ひどくまじめな顔でルウの話を聞き終えたレニエさんは、一気にコーヒーを飲み干した。「人間に心があるように、時間にも心がある。この地球にも心がある。そう。地球空洞説の復活だ。古代の秘儀の復活だ。造物主デーミウルゴスはいつも失敗する。悪魔に転じた大天使は身を切る告発者だ。人が彼に惹かれる理由もそこにある。この世界は失敗作だ。…どうした、驚かんのかね」レニエさんの変貌に驚きはしたが、こ...

  • ジュブナイル時の空へ還る(15)

    15、天文台のレニエさん 琉有たちは天文台の入口に着いた。「こんにちは。礼爾枝さん。礼爾枝さん」ガチャっと開いたドアから思いがけず一人の少年が出てきた。同い年ぐらいだろうか。「何か用?」そう言いながら少年は首を少し傾け、逡巡した後に訊いてきた。「君、もしかして琉有くん」「どうして?…」琉有は見知らぬ少年を前にして少し後ずさった。「輝はいないの?」少年は傾げた首を伸ばして夏分や羽琉を見る。...

  • ジュブナイル時の空へ還る(14)

    十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰り返すと佐伯さんは言うけど、今度はいつ、どんなふうに繰り返されるのだろう?ここに住むことはできるのだろうか?いつかこの町も元に戻ることができるのだろうか?色々な思いが輝の中を去来してゆく。ここにいると青い宇宙の方が夢の出来事に思えてくる。それ...

  • ジュブナイル時の空へ還る(13)

    十三、パパルウは地上に降り立って以来、ずっと推理していた。カブの叫び声がすべてを変えてしまうまでは。「UFOだ」カブが空を指差して叫んだとき、一緒に群れていた人々の動きが止まった。振り返った群衆の冷たい無表情な眼が五人に突き刺さる。その中に奴らもいた。「おまえら。捕まってなかったのか」響はゆっくりと近づく。獲物を狩る野生動物のような視線がじっと五人に注がれている。響は右手を上げると唇に笑みを浮かべ...

  • ジュブナイル時の空へ還る(13)

    13、加速器の太陽と時間のピース「そうか。青い鳥か。」ルウが太陽を指差して言った。「あの太陽。あれこそがガルーダだ。見ろよ。三つの光が色を変え、三つの∞を描いている。ツトラウスの言っていた通り、一つの∞は対の羽だ。この青い宇宙の、生きているように見える青い光は、きっと時間の空なんだ。」「あの太陽がガルーダ?」誰かに何かを訊きただしたいような。忘れていることを自分に問いただしたいような。治まる場所の...

  • ジュブナイル時の空へ還る(12)

    12,囚われたガルーダ 長い闇の先に粉粒ほど小さい光がゆらゆらと飛んでいた。大き目の光は蛍にも思えるほどで、幻想の蛍は三つ、四つと増え、集合し、小さな粉粒の光と交じり合い光の霧のように見える。それは五人が暮らしていた町の秋の早朝の景色だ。霧は生きているように四方から足元に忍び寄ってくる。時には二つ目のライトに驚かされる。霧のいたるところから音が聞こえ、声が聞こえ、仲間が一人、また一人と集まってく...

  • ジュブナイル時の空へ還る(11)

    11,宇宙の黄泉平坂(よもつひらさか)ぼく達がここにこうして残ったのには何か理由があるのかもしれない。なぜかそんな気がしている。言えることは、これまでのぼく達には後ろ盾があったということだ。たとえ間違った選択をしたとしても、前もって注意を促してくれる人や、修正してくれる人がいた。でも今は完全に違う。ぼく達自身が自ら選択し、その結果を受け入れなければならないのだ。考え、行動することがこんな...

  • ジュブナイル時の空へ還る(10)

    「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろに隠れた。「いや、確かに言葉だ。見た目で判断しない方がいい。」ルウが言った。マリとハルが互いに寄り添う。「誰?」テルが声を上げるのと同時にルウも質問していた。「あなたは何者ですか?」と。獲って食おうという感じではないものの、彼は空中からしげしげと五人を見ていた。首をかしげながら...

  • ジュブナイル時の空へ還る(10)

    10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろに隠れた。「いや、確かに言葉だ。見た目で判断しない方がいい。」ルウが言った。マリとハルが互いに寄り添う。「誰?」テルが声を上げるのと同時にルウも質問していた。「あなたは何者ですか?」と。獲って食おうという感じではないものの、彼は空中からしげし...

  • ジュブナイル時の空へ還る(9)

    9,誰かがいる 「この音・・聞こえる?」「聞こえる!」「どこからだろう?」「見て!」茉莉が指したのは東の方角。黒々とした森に光の噴水が上った。「あそこだ。あの森だ」「見ろよ。また変なことが起こっている」「最初の光。あの森で何かが起こった。何が起こったのか?それが分れば、この出来事の理由が分るかもしれない」「本当か?琉有。本当に分るのか?」「ぼくが理解できる範囲なら・・」「光が、ほら、光・・・...

  • ジュブナイル時の空へ還る(8)

    8,宙に浮かぶ街「今何時?なんで誰もいないの?」時間のことはすっかり忘れていた。ハルとカブを除いた三人が同時に腕時計を見た。月明かりにかざして見ると驚きの声を上げた。「表示が止まってる。」「わたしのも、なんで・・・」テルはひと言「時が止まってる。」と途方にくれたように言い放った。時間が止まっている。テルにとってその意味は時計の時間のことではなかった。この世界の時間そのものが止まっているように感...

  • ジュブナイル時の空へ還る(6)

    流星雨のインパクト森の輪郭が月明かりを浴びて妙に生き生きとしてくる。最初に声を上げたのは誰だったろうか。光の帯が空ではためくたびに、五人の身体は思い思いの文字を描き、声の爆竹が破裂する。一滴。二滴。星の雫が落ちてくる。夜空には祝祭のサーチライト。一瞬のシャワーのような流星。みんなが立ち上がっていた。喚声はいつまで続いていただろう。月が南天に懸かろうとする時、流星の雨はその滴を枯らし、漆黒の空にふい...

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