六.別世界の現実は?マンションの外は別世界だった。そこは古びた昭和の町か大正の町が脈々と鎮座していた。これって何?と振り返ると現代のマンションが建っている。そのちぐはぐさ、まるで映画のセットに迷い込んだような眩暈すら覚える。そんななか夏穂突き放したミタマが道に飛び降りた瞳が不思議な光を帯びている。見上げると月も同じように輝いている。コッチと聞こえた。ミタマが発しているのか。月の光を受けながら夏穂を...
言葉で描くみえないこころ。 縦横高さ、時間軸、いつか 見えてくるでしょうか? 拙いながらの一綴り、ジャンルは絵のように…詩や小説の創作物を載せています。 どうぞお気軽にお立ち寄りください。
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六.別世界の現実は?マンションの外は別世界だった。そこは古びた昭和の町か大正の町が脈々と鎮座していた。これって何?と振り返ると現代のマンションが建っている。そのちぐはぐさ、まるで映画のセットに迷い込んだような眩暈すら覚える。そんななか夏穂突き放したミタマが道に飛び降りた瞳が不思議な光を帯びている。見上げると月も同じように輝いている。コッチと聞こえた。ミタマが発しているのか。月の光を受けながら夏穂を...
五、庚申の塔は三尸の虫を封じたか「夏穂大丈夫?こんなことされて。一体誰がしたの?」夏穂を縛っていた紐が解かれた途端に夕夏が言った。「大丈夫ですか?」と少年が訊いてくる。ああ、夕夏が「彼が従兄。比古村享」と成り行きで紹介した。「まことです」と少年は繰り返し続けてこうつぶやいた。「危害を加えるつもりはなかったようですね」「危害を加えるつもりはないって、これって十分危害だよ。覚えていることない夏穂?」紗...
四、廃校は寂れた漆喰の匂いがする 夏穂は思いついたことを整理した。すると眠れなくなって、その場所に早くいかなければと朝を迎えていた。もっとも馬鹿な考えだ。親にも内緒にしておきたかった。そっと、そしてすばやく制服に着替え部屋を出た。マンションはまだ夜でエレベータには誰も乗り込んでこなかった。気づいたのは飼っている玉藻ぐらいだった。「ミャォ」と小さな声を上げてベッドに飛び乗ってきた。夏穂は顔を近づけ静...
三…炎の魔力が夏穂を呼ぶ 不謹慎にも、夏穂は火事を待っている。火は昔から人間のたましいを惹きつけて来た。動物にしだってそうかもしれない。火を怖れるということはそういうことだ。炎には不思議な魅力がある。特に、夜の炎は別格だ。何かを呼び寄せているように夏穂には見える。たとえば何だろう?夜の闇からさまよいだして来る何かである。今の夏穂にとっては記憶だろうか。それとも郷土史の幻惑だろうか。夏穂はこれ...
二、…よもやま話がやって来た 五月に入ってからというもの、ここ水尾出市では立て続けに三件のボヤ騒ぎと一件の全焼が起きた。水曜日のプラゴミ集積所から始まったそれは、翌週火曜日になると隣町の離れた燃えるゴミ集積所へと移り、そこかすぐ近くの車庫の自転車が黒焦げになり、ついには住宅の庭で炎があがった。段ボールなどが燃えていたらしいが、町民の不安をかき立てるに十分の効果があった。いつか家に火が、と誰もが案じ...
一、火事の尻尾はおいでおいでするこの町のお稲荷様は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を祀ったものなのだろうか?それとも、鬼夜叉のような吒枳尼天(だきにてん)を祀ったものなのだろうか? 暮林夏穂は誰かの張り付くような視線を感じていた。でも何だろう。この視線は空から感じるのだ。下校時になると特に感じる。最初は気の迷いとも思ったが、段々と視野の外で動く影のようなものを感じるようになった。「なに?なにかい...
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十八、イカロスいつもなら、森が見える場所のはずである。それなのに何も見えない。何も見えないというよりも、何もない。あるのは一面を覆い尽くす深い霧。その霧が晩秋の早朝のように道を覆い、森を覆い、その先の山を覆っている。「すげえ。霧のミルクだ」夏分にしてはいい表現だ。「何かの舌みたい」と羽流が続いたのをきっかけに、喩えが応酬した。雲の津波とか、霧の滝とか、アイスクリーム、カキ氷。そんなのはまだ好か...
十七、境界をめざして「ここの時間はもうすぐ繰り返される。明日になるということだ。ただ同じ明日でも何かが違って進行するだろう。新しい経験則が加えられたからな。しかし時間は変わらない。そして同じことが起こる。君達は捕まり、彼らは帰った。そしてここに、我々の時間則にいない君達がやってきた。そういう意味では君達も異星人だ。いいか、ここは君達が知らないだけの記憶のひとときだ。未練を残すことはない。ここに...
十六、思考の冒険 ひどくまじめな顔でルウの話を聞き終えたレニエさんは、一気にコーヒーを飲み干した。「人間に心があるように、時間にも心がある。この地球にも心がある。そう。地球空洞説の復活だ。古代の秘儀の復活だ。造物主デーミウルゴスはいつも失敗する。悪魔に転じた大天使は身を切る告発者だ。人が彼に惹かれる理由もそこにある。この世界は失敗作だ。…どうした、驚かんのかね」レニエさんの変貌に驚きはしたが、こ...
15、天文台のレニエさん 琉有たちは天文台の入口に着いた。「こんにちは。礼爾枝さん。礼爾枝さん」ガチャっと開いたドアから思いがけず一人の少年が出てきた。同い年ぐらいだろうか。「何か用?」そう言いながら少年は首を少し傾け、逡巡した後に訊いてきた。「君、もしかして琉有くん」「どうして?…」琉有は見知らぬ少年を前にして少し後ずさった。「輝はいないの?」少年は傾げた首を伸ばして夏分や羽琉を見る。...
十四、もう一人いる?自分たちの記憶の時間と思っていたのに、ここでも奇妙なことばかり。妹はどうしただろう?まさか両親と共に奴らに捕まった訳じゃあないだろうな?繰り返すと佐伯さんは言うけど、今度はいつ、どんなふうに繰り返されるのだろう?ここに住むことはできるのだろうか?いつかこの町も元に戻ることができるのだろうか?色々な思いが輝の中を去来してゆく。ここにいると青い宇宙の方が夢の出来事に思えてくる。それ...
十三、パパルウは地上に降り立って以来、ずっと推理していた。カブの叫び声がすべてを変えてしまうまでは。「UFOだ」カブが空を指差して叫んだとき、一緒に群れていた人々の動きが止まった。振り返った群衆の冷たい無表情な眼が五人に突き刺さる。その中に奴らもいた。「おまえら。捕まってなかったのか」響はゆっくりと近づく。獲物を狩る野生動物のような視線がじっと五人に注がれている。響は右手を上げると唇に笑みを浮かべ...
13、加速器の太陽と時間のピース「そうか。青い鳥か。」ルウが太陽を指差して言った。「あの太陽。あれこそがガルーダだ。見ろよ。三つの光が色を変え、三つの∞を描いている。ツトラウスの言っていた通り、一つの∞は対の羽だ。この青い宇宙の、生きているように見える青い光は、きっと時間の空なんだ。」「あの太陽がガルーダ?」誰かに何かを訊きただしたいような。忘れていることを自分に問いただしたいような。治まる場所の...
12,囚われたガルーダ 長い闇の先に粉粒ほど小さい光がゆらゆらと飛んでいた。大き目の光は蛍にも思えるほどで、幻想の蛍は三つ、四つと増え、集合し、小さな粉粒の光と交じり合い光の霧のように見える。それは五人が暮らしていた町の秋の早朝の景色だ。霧は生きているように四方から足元に忍び寄ってくる。時には二つ目のライトに驚かされる。霧のいたるところから音が聞こえ、声が聞こえ、仲間が一人、また一人と集まってく...
11,宇宙の黄泉平坂(よもつひらさか)ぼく達がここにこうして残ったのには何か理由があるのかもしれない。なぜかそんな気がしている。言えることは、これまでのぼく達には後ろ盾があったということだ。たとえ間違った選択をしたとしても、前もって注意を促してくれる人や、修正してくれる人がいた。でも今は完全に違う。ぼく達自身が自ら選択し、その結果を受け入れなければならないのだ。考え、行動することがこんな...
「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろに隠れた。「いや、確かに言葉だ。見た目で判断しない方がいい。」ルウが言った。マリとハルが互いに寄り添う。「誰?」テルが声を上げるのと同時にルウも質問していた。「あなたは何者ですか?」と。獲って食おうという感じではないものの、彼は空中からしげしげと五人を見ていた。首をかしげながら...
10,ツトラウスはかくも語りて 「ジカン ノ スキマ ニ オチタ モノタチ・・マタ・・」「こ・・言葉に聞こえるんだけど・・」そう言いながらカブは輝の後ろに隠れた。「いや、確かに言葉だ。見た目で判断しない方がいい。」ルウが言った。マリとハルが互いに寄り添う。「誰?」テルが声を上げるのと同時にルウも質問していた。「あなたは何者ですか?」と。獲って食おうという感じではないものの、彼は空中からしげし...
栞ちゃんは柵のところで止まりました。校庭を指さして見てといいます。「あの子達を見て」年齢も性別もいろんな子供たちがたくさん校庭にいました。ほんとうにたくさんの…「ダメっ」栞ちゃんは私の手を取ります。何が起きたか分からないまま、私は手を引かれ階段を駆け降りました。「どうしたの」私は聞かざるを得ませんでした。「言葉が生まれようとしてる。生まれたら呪われる。自分自身に」栞ちゃんはすまし声でそう言います。...
秋になると紅葉した葉が散りはじめ空が広くなってくる。ここビルの多い街でも街路樹などが透け、ちょっとだけ空が広くなっているのに気づきます。そして空が背伸びをするように高く、成層圏に手が届くようになった頃のこと。そう。大宇宙が地球の地表に近づいてきたとき、ちょうど晩秋になりかけた頃のことです。濡れた地面や水溜まりに薄氷が張るようになったある日。見上げると空に大きな丸い何かが張り付いているのです。その...
更新が絶えて早や二か月である一日がこんなにも早く過ぎ去っているなんてと驚嘆する母が緊急車両に運ばれてちょうど二か月仕事を休みながら行ったり来たりするすべてが年老いてゆく残るものは残骸 「夢の島」だ残骸だけは日々生まれ置き去りになり山を高くする今日もまた置き去り…穏やかに続けと願う 日暮れの記風に揺れたるユキヤナギ、紅の蕾のハナカイドウ、ひらりひらりとユスラウメ、レンギョウは目の覚めるような黄色で...
いた!けど、なんだ。あれが魔王だと。それは姿形というものではなかった。圧倒的な負の雲というべき形のない何かだった。モレールは神の及ばぬ影といい、リシェルは金剛十種の帯といった。誰も巻いたことのない世界王者の帯ということらしい。どっちにしろヴィルにとっては想定内のことだった。「あなたの力は絶対だ。それは誰もが知るところ。でもそれではゲームにならない。それも誰もが知るところ。ゲームは常に50:50だ。...
三人は綿密に計画をたてたはずだった。ボーイスカウトで身支度をしてもろもろ準備をした。モレールは『魔術大全』に聖書、ロザリオに肝心な十字架など、悪魔と対峙したときに必要と思われるものをかき集め、リシェルはヌンチャクに偃月刀、三節棍などを陰陽図を刺繡した巾着バックに詰め込んだ。ヴィルは山岳道具一式とクライミングシューズにハーネス、カラビナ・スリング・確保器などを準備する。それとリシェルに言われた電池...
「ダ―マン家ではな。十二時を過ぎると悪魔の時間なんだ。夜半の街へ行けば分かるだろう狂乱と犯罪が増えてる。目が覚めてたらお祈りをつづることになってる。」「あっ、そ。けどね、いつの時代もゆく手には壁があるの。社会の、年齢の、仕事の、性もそう。現実は悪魔よりも広汎性があって、悪意すらある。わかんないの。」「へえ、言うじゃない。日中は誰もがそれぞれの歯車を規則正しく動かしてる。小さな自由を夜に行使しても...
その日の深夜のこと。ヴィルは突如目が覚めた。耳鳴りの中、部屋の壁が細かに振動している。いや、そうではない。自分の視覚がおかしいのだ。身体がおかしいのだ。淀んで腐った水に漂うボウフラ。そんな気分になった。足元がふらふらする。酒を飲みすぎた親父が、廊下で大きな音を立てるのを思い出した。トイレへもまともに行けない親父。ヴィルは震える自分の足に笑みを浮かべ、窓際に近づいた。新鮮な空気を入れなくては。窓に...
『怠け者はぜったいに魔術師にはなれない。魔術はすべての時間、すべての瞬間にまたがる修練である。快楽の誘惑、食欲、そして眠気にも打ち克てることが。立身出世にたいしてだけでなく、低い身分にたいしても平気でいられることが必要である。その暮らしは、一つの理念によって導かれ自然全体によってかしずかれる一つの意志の現れでなければならない。そのためには先ず五官を精神に従属させ、五官と照応する宇宙の諸力の中にお...
僕たちは頭も感情も混乱していた。恐怖とも違う。逃げ出したいとも違う。モレールとリシェルの姿に自分の中で何かが目覚めた。気づくと飛び出していた。カンテラを振り回してハクスリー先生に突っ込んだ。モレールの手から魔術大全を奪い取るとカンテラの傘を外し火を点けた。「何を!」モレールは驚いて叫んだ。お構いなしに火を点けた。古い本はすぐに燃え出すと、炎が辺りを照らし出した。リシェルが全身を黒く染め数体の彼らと...
その時刻、ベンダー湖の東岸に一台のセダンが止まった。湖の北側には夕日を浴びた森が続き、南側の街道沿いに街が続いている。ミルズ校は湖の反対側、岸から五百メートルほど行ったところにあった。「なあベティ。これからどうする?ドライブが終わってもうしまいか?食事でもしないか?モーテルの脇にダイナーがあるだろう。あそこのイタリア料理は絶品だ!そしてさ…」「そして何?モーテルでわたしのフルコースでもいただく?」...
金属は錆びるが、木造は朽ちていく。時代と無数の虫に喰い荒らされていく。まるで腐敗臭を放って腐っていくようにも見える。本当であれば木は死んでも生きている。地中で炭鉱にもなるし、壁も柱も呼吸している。人間のように老いると愚痴も言うし、老骨を鞭打って悲鳴も上げる。昔気質の祖父はよく言っていた。そんな悲鳴が上がる階段を暗い方へ暗い方へと下っていた。懺悔室にはいかないのか?と訊くと、まずは石膏像がしまい込...
《…過ぎ去る夏の足音が、ときにタップのように踊りだした後、そろりと忍び寄る猫のような毛並みと共に秋は忍び寄り、秋と共に見たこともない妖艶な女性の教師が赴任してきた。妖艶とはなんだろうといつも考えたが、よくわからない。そのわからないあたりが妖艶なのだ。以前悪童で名が知れ渡っていたリザリーが親父の「playboy」を持ってきたことがあったが、女性たちは妖艶とは似ても似つかないもので、もちろん自分にとってはだが...
オールド・ミルズ校は百年の歴史を壁や柱や床に、あるいはその外観を見ただけでも古き良き時代のモダンさを骨董色の肌に染み込ませ、開拓者たちの息吹き、その気骨を受け継ぎ、柱一本一本に鞭打って今日も町の外れに建っていた。しかし、そう思えるのは良き学生時代を過ごした者の贔屓といってもいい。制度に翻弄され、差別と懲罰の地雷に触れた者、あるいは、教師の行使する権力の独裁とに踏みにじられた者からすれば、特に後者...
雪明かり 冬の日暮れの 路地便り 冷たき風の 耳裏の音空高く 成層の青 開け見る いつかのわたしの 無心の空を空気裂く バイクの爆音 受け止めて 夜へと返す 雪壁の道...
くわえ煙草のアンニュイな朝はどっちもこっちも にっちもさっちも沈んだ気分は深海魚今日という日はすでにあった過去のようで経験し終えた情報のようで通信手段の量子化は経済活動をしり目に新たな神を見せている猥雑さは想像力の翼を萎えさせるそして経済活動は貧弱な幸福感を餌にして一生の大半を牛耳っているそんな世界に馴れ合うこともできず自己満足と倫理が混合し合った善の押し売りに辟易し言葉の端々にぶら下がる自己責任...