灰になった書物

灰になった書物

かつて思想は地上にあって憎しみの岩場を水のように流れ欲望の雲を風のように過ぎ死の夜を星のように飾った今は知性を弄ぶ机上の論理と化し図書館の中にでも並んでいる一歩外に踏み出せば思想が息できるほど呼吸は深くない思想が根付くほど意志は強くない内なる火に従った預言者は 耳元でひとこと訊ねて歩む「お前は充分に強いか」憎しみの戦場は今も業火の中にあって欲望の濁流は知識の植林をなぎ払う死の壁にはいたずらに幻...

2022/07/25 16:11