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よも 言葉のアトリエ http://apismos.blog.fc2.com/

言葉で描くみえないこころ。 縦横高さ、時間軸、いつか 見えてくるでしょうか? 拙いながらの一綴り、ジャンルは絵のように…詩や小説の創作物を載せています。 どうぞお気軽にお立ち寄りください。

上遠野世方
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2020/06/20

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  • 月輪奇譚 十、フィフティフィフティ

    いた!けど、なんだ。あれが魔王だと。それは姿形というものではなかった。圧倒的な負の雲というべき形のない何かだった。モレールは神の及ばぬ影といい、リシェルは金剛十種の帯といった。誰も巻いたことのない世界王者の帯ということらしい。どっちにしろヴィルにとっては想定内のことだった。「あなたの力は絶対だ。それは誰もが知るところ。でもそれではゲームにならない。それも誰もが知るところ。ゲームは常に50:50だ。...

  • 月輪奇譚 九、虎の峰へ

    三人は綿密に計画をたてたはずだった。ボーイスカウトで身支度をしてもろもろ準備をした。モレールは『魔術大全』に聖書、ロザリオに肝心な十字架など、悪魔と対峙したときに必要と思われるものをかき集め、リシェルはヌンチャクに偃月刀、三節棍などを陰陽図を刺繡した巾着バックに詰め込んだ。ヴィルは山岳道具一式とクライミングシューズにハーネス、カラビナ・スリング・確保器などを準備する。それとリシェルに言われた電池...

  • 月輪奇譚 八、リシェルの決意

    「ダ―マン家ではな。十二時を過ぎると悪魔の時間なんだ。夜半の街へ行けば分かるだろう狂乱と犯罪が増えてる。目が覚めてたらお祈りをつづることになってる。」「あっ、そ。けどね、いつの時代もゆく手には壁があるの。社会の、年齢の、仕事の、性もそう。現実は悪魔よりも広汎性があって、悪意すらある。わかんないの。」「へえ、言うじゃない。日中は誰もがそれぞれの歯車を規則正しく動かしてる。小さな自由を夜に行使しても...

  • 月輪奇譚 七、モレール家の決まり事

    その日の深夜のこと。ヴィルは突如目が覚めた。耳鳴りの中、部屋の壁が細かに振動している。いや、そうではない。自分の視覚がおかしいのだ。身体がおかしいのだ。淀んで腐った水に漂うボウフラ。そんな気分になった。足元がふらふらする。酒を飲みすぎた親父が、廊下で大きな音を立てるのを思い出した。トイレへもまともに行けない親父。ヴィルは震える自分の足に笑みを浮かべ、窓際に近づいた。新鮮な空気を入れなくては。窓に...

  • 月輪奇譚 ― 五、真夜中の徘徊者

    『怠け者はぜったいに魔術師にはなれない。魔術はすべての時間、すべての瞬間にまたがる修練である。快楽の誘惑、食欲、そして眠気にも打ち克てることが。立身出世にたいしてだけでなく、低い身分にたいしても平気でいられることが必要である。その暮らしは、一つの理念によって導かれ自然全体によってかしずかれる一つの意志の現れでなければならない。そのためには先ず五官を精神に従属させ、五官と照応する宇宙の諸力の中にお...

  • 月輪奇譚 ― 五、カタストロフィー

    僕たちは頭も感情も混乱していた。恐怖とも違う。逃げ出したいとも違う。モレールとリシェルの姿に自分の中で何かが目覚めた。気づくと飛び出していた。カンテラを振り回してハクスリー先生に突っ込んだ。モレールの手から魔術大全を奪い取るとカンテラの傘を外し火を点けた。「何を!」モレールは驚いて叫んだ。お構いなしに火を点けた。古い本はすぐに燃え出すと、炎が辺りを照らし出した。リシェルが全身を黒く染め数体の彼らと...

  • 月輪奇譚 ― 四、終末にむけて

    その時刻、ベンダー湖の東岸に一台のセダンが止まった。湖の北側には夕日を浴びた森が続き、南側の街道沿いに街が続いている。ミルズ校は湖の反対側、岸から五百メートルほど行ったところにあった。「なあベティ。これからどうする?ドライブが終わってもうしまいか?食事でもしないか?モーテルの脇にダイナーがあるだろう。あそこのイタリア料理は絶品だ!そしてさ…」「そして何?モーテルでわたしのフルコースでもいただく?」...

  • 月輪奇譚 ― 三、柄杓に続く廊下

    金属は錆びるが、木造は朽ちていく。時代と無数の虫に喰い荒らされていく。まるで腐敗臭を放って腐っていくようにも見える。本当であれば木は死んでも生きている。地中で炭鉱にもなるし、壁も柱も呼吸している。人間のように老いると愚痴も言うし、老骨を鞭打って悲鳴も上げる。昔気質の祖父はよく言っていた。そんな悲鳴が上がる階段を暗い方へ暗い方へと下っていた。懺悔室にはいかないのか?と訊くと、まずは石膏像がしまい込...

  • 月輪奇譚 - 校舎の記憶

    《…過ぎ去る夏の足音が、ときにタップのように踊りだした後、そろりと忍び寄る猫のような毛並みと共に秋は忍び寄り、秋と共に見たこともない妖艶な女性の教師が赴任してきた。妖艶とはなんだろうといつも考えたが、よくわからない。そのわからないあたりが妖艶なのだ。以前悪童で名が知れ渡っていたリザリーが親父の「playboy」を持ってきたことがあったが、女性たちは妖艶とは似ても似つかないもので、もちろん自分にとってはだが...

  • 月輪奇譚 ― 一、オールド・ミルズ校の亡霊

    オールド・ミルズ校は百年の歴史を壁や柱や床に、あるいはその外観を見ただけでも古き良き時代のモダンさを骨董色の肌に染み込ませ、開拓者たちの息吹き、その気骨を受け継ぎ、柱一本一本に鞭打って今日も町の外れに建っていた。しかし、そう思えるのは良き学生時代を過ごした者の贔屓といってもいい。制度に翻弄され、差別と懲罰の地雷に触れた者、あるいは、教師の行使する権力の独裁とに踏みにじられた者からすれば、特に後者...

  • 雪明り

    雪明かり 冬の日暮れの 路地便り 冷たき風の 耳裏の音空高く 成層の青 開け見る いつかのわたしの 無心の空を空気裂く バイクの爆音 受け止めて 夜へと返す 雪壁の道...

  • 貿易風が走っていった

    くわえ煙草のアンニュイな朝はどっちもこっちも にっちもさっちも沈んだ気分は深海魚今日という日はすでにあった過去のようで経験し終えた情報のようで通信手段の量子化は経済活動をしり目に新たな神を見せている猥雑さは想像力の翼を萎えさせるそして経済活動は貧弱な幸福感を餌にして一生の大半を牛耳っているそんな世界に馴れ合うこともできず自己満足と倫理が混合し合った善の押し売りに辟易し言葉の端々にぶら下がる自己責任...

  • 唸る北風

    ビジネスの 行き着く果てから ゴミの山 大地も海も 地球のそらまで落ち葉舞う 唸る北風 打つ粒の 雨も凍える 雪に変わりて常世から 帰り花咲く ヒガンバナ 終し赤にぞ 秘めたる心は...

  • 古くなる取り組み

    薔薇は自らが薔薇であることを証明もせず咲き誇る血の鮮やかさで、皮膚を裂く棘の上に瞑想している獅子は自らが獅子であることを証明もせず僕は僕であることを恐れはしない約束された生死はすでに過去のもの明日死す者はすでに契約の内に死んでいる世界に隠れた知恵は隠すことでありのままを現すそのありのまま が美なのだ鳥は賢しい手技を空に捧げ風で設計された翼を手に入れた人間の翼への進化は思考に結実し時間と思...

  • 国土の黄昏

    秋深し 人間同士の 黄昏か 死体を並べて 国土を讃うこころして 祈念が届く 神ならば 込めた思いが 世の有り様こもり人 生産性あらば 経済人 社会の参加 多様にありて...

  • 人の違いは

    人間は 同じ成分 同じ五感 前頭葉にふる スパイスの違い左右の手 神を似せたか 神真似の 生かすも殺すも エゴと知りえば投票率 最初に半分 放棄して 僅かな残りに 支持率争いて...

  • 社会の保険

    未来にも 過去にも起きた 始まりは 人は偏見を 学び直すこと喜びは 生きていることと 笑む子等の 希望に隠した 社会の保険夜には 目が見えぬのに 昼にも 見えぬ心うち 誰ぞあざむく ...

  • 憎しみのスガタ

    階段を 夜の明かりが 這っている 光も疲れて 背を伏す今日と明日へと続く 行く先知らない 労働は 明日に終わる 人々を知らず憎しみの 相貌(すがた)が魚に あったなら 鳥にも牛にも あったなら...

  • びーどろ

    忍び寄る 終(つい)を見るか アキアカネ 道の上にて 天を眺める青空に 何を急ぐや 紅葉狩り 静かに座して ただ山となれコスモスに 止まるビードロの 秋津かな せわしく動く 球体の星で...

  • 赤き潮騒

    香ばしき 匂いたつかな 安銀座 煙も油も 甘き焼き芋も 血流に 耳を澄ませば 月の浜 赤き潮騒に 人は眠れる月も鳴く 時の奴隷の その中で 身を置き馳せる 壁の向こう側 ...

  • バス窓にさかのぼる

    雨に濡れ 穂先に黄金の 粒ひとつ 落ちて生まれる こともあらばとバス窓に 点るボタンに さかのぼる 過去に見上げた 白き手のひと薬持ち 肌をなぞって 吹く風に 秋も来たかと 後にする店...

  • 月の客

    窓越しに 釣瓶も落ちる 早さかな うつむく夏の 星座残されて つかぬ間の 夕焼け空に 夕月夜 引き戸を開けて 月の客来る錦繍の パッチワークの 雅かな あれもこれも皆 こころと成して...

  • 闇を飲み込む

    だんらんの 恋したるかな 秋の夜の 虫の音悲し 闇を呑み込みさわさわと ため息まじりの 秋の草 秋津止まりて 斜陽傾く行きあいの 雲の騒ぎて 刻々と 千変万化の ひかりのこだま...

  • 色無き風

    秋戦 地面かすめて 兵急ぐ 風の羽借り 夏の虫狩る 鳩の鳴く 色なき風に 身を打たれ ついばみ捨てる 断捨離の秋遠雷の 青き光りが ひた走る 白黒の街に 鼓をひき連れて...

  • 案山子かな

    久延毘古も 変わり鳥追い 案山子かな 時代を写す ポーズ決めこむ 千社札 参拝あとの 後利益も 多数作善に 平和おとずれ通学路 黄色の帽子と ランドセル 弾んで歩く 金次郎の道… Sigrid で「 Home To You 」...

  • 願掛けの道

    古民家の かまちの高さ 将棋駒 縁台の戦 時を重ねて築地塀 たわわに実る ゆずの日の 駆けて回った 願掛けの道ブランコの 先は校庭 赤き屋根 学びの校舎 人影も無くAlexis Ffrench で 「 Songbird 」を...

  • 風ボーキ

    九月の偈 衰えしらずの 夏送り 煩悩の熱 下がるを知らず風箒 夏の懺悔を 集めつつ 業の火高く 空に送れば多数決 暴力と知らず 加担する 数の論理は 遠慮も知らず…Akira Kosemura で「 Fallen Flowers 」を...

  • 日照り夏

    日照り夏 葉の丸まりて 芽は枯れて 群がる蟻も 枯草に隠れ水滴の ふき出す先から 地に落ちる 雨を補給し 汗を放水す日常を 悪夢の底へ 落すかな 天災は忘れる 前にやってくる…洋楽で Imagine Dragons の 「 Demons 」を...

  • 夏草のかおり

    空高く 分水嶺から 吹き下ろす 野分ビル風 雷鼓のうたげ夏草の 香りかぐわし 雨上がり かかる虹にも 秋風の立つ風の道の そうそうと鳴る 草千里 馬草食みて 雲にいななき…「 夏影 」を...

  • 白き雲棚

    海鳥と 台風一過の 土用波 雲棚連れて 白き手を振る夢のごと 立って座って 時失せて 老いた目で見た 現世のまぼろし 治めの夏 障子に影の モミジかな 枝をのばして 傘を捧げん…haruka nakamuraさんで『 Alone together 』を...

  • 初音鳴き

    初音鳴き 夏は時雨て はた織の 音色すずしや 秋津たたずむ波騒ぐ ネットの海に 魚影あり 捕らえて上げた 雑魚と私と草闇の 奥で奏でる 蟋蟀の 眠りに落ちる ビオロンの絃…haruka nakamura×細川亜依 さんで 『食卓とピアノと』を...

  • アクアマリンの滴

    雲切れて 光りさす世に 数知れず 青の落した ベリルのしずく 杞憂なる 未来も今も 誰ぞいる 数の論理に 個は失われメデューサの 首散らばって 落ちる空 ペルセウス座 冠いだいて…paniyoiodで『 ひかりのにおい 』を...

  • 虫語り

    わびしくも 夏の一夜の 虫語り 秋立てばはや 潮騒とならん 炎天に 息を引き取る 蚯蚓かな 土から産まれ 土にぞ帰る星海の 上下左右に 底知れぬ 光と闇に ひとり棲み分け… [.que] で 「twilight 」...

  • 風の平手

    つけ火かな 決意の程も 酒の宴 ガス欠過ぎの 空ぶかしもまた虫の音の 騒ぐ月夜に 一陣の 風の平手に 秋も立つかな目をみはる 頭上に蒼い そらがある 下にくすんだ わが身を置いて…[.que] さんで『 海辺にて 』を...

  • 波の一滴

    借知識 すべて忘れて すっきりと はじめたる晩 学の手習い波騒ぐ 人押し寄せる ビルの岩 ああ行きずりの 都市に打ち上げおはようの 戯れもすぎ 学童ら 声高らかに 里山を行く…[.que] でd『rops』を...

  • 生きづらさ

    生きづらさ 正直ほどの 非常識 誤解を問われ 左右に千切れ行く先を 知らずに跳ぶ 命あり 目先を追いて 無辺へと飛ぶ雲高し 木々のさざめく 清流に 泳ぐハヤ影 ひぐらしの鳴く…Paniyoroで「風の絵」を...

  • 青蛙

    染色の 劣らぬ色に 染められて 虹をすべ来る 雨いろのきみ 吹き下ろす 風の一揆と 雨の礫(つぶ) 過去を更新 押し寄せる川街路灯 外れて噎せぶ 青蛙 昼を逃れて 夜に隠れて… 「 2度と戻れない、あの夏のノスタルジー 」を 夏は二度と戻れないノスタルジーのようなものを 内にもっている。 夏はいつもアオハルの隣にいるだろう。...

  • 水羊羹

    和有田に 載せてこごる水 羊羹の 澄む渓流に 山女魚の泳ぐ振りやまぬ 雲の尾根から 土砂降りの 天の水だる ひっくり返して カーブミラー 道を見下ろし ここかしこ 耳傾けて 青空に澄む…Paniyoroで「green & cloud」を...

  • 光の矢

    つつましく 泳ぐ二匹の トンボかな 添いては離れ 影落とす庭夕立に 煙りし山へ 光の矢 思いの窓に アカネ届けてほむら立つ 地上の火事に 大わらわ 欲色悋気と 火種かかえて …[.que] で「drops」を...

  • 夏暦

    追いかけて 追いかけてなお 雲の下 逃げても逃げても われ網の中苦しいと 言えずに笑う 強がりも 溶けたアイスの 甘さに和む木漏れ日の まだらの路の 夏暦 梅花藻ゆらぎ ホタル棲むかも …Paniyoroで「 雨 」を...

  • アサガオ

    風鈴の 音色しぐれて 縁の夏 咲いたアサガオの 種も採らずに水鏡 面影映す アヤメかな 伏せる目に入る 誰ぞ浴衣か膨らんで いる海がまた 声を上げ 浜には子等の 笑顔(かお)はち切れて… akira kosemuraさんで「“小夏日和”からMain Theme」を...

  • カジカ沢

    半夏生 青葉を揺らし 初セミの 木魂も返る 鬨めく坂を待ち受ける 事も知らずに 無鉄砲 黒縁の中 はにかむ遠友(とも)は闇木立 ホタル参りの カジカ沢 月も隠れて 溺死人(しびと)出現れ…古川本舗さんで「ストーリーライター」を...

  • トビウオ

    憂いても 生きるも死ぬも 身のひとつ 陽に向かう芽の 曲がりても直アカネ空 想いに焼かれ 手を伸ばし 指の先から 遠くなる影そよぐ夏 大気の海に 鈴音かな ヒレで風切る トビウオのきみ…Akira Kosemuraさんで「 Light Dance 」を...

  • 風鈴

    風鈴の 音色涼しき 言の葉を 括りて縒りて 請い歌を詠み剣かな 驟雨断ち切る 稲光 神輿にすくむ 神送りの礼入道を 追って雲立つ 夕立に 茜に染まり ともに泣くきみ…ローレン・アキリーアで「you can be king again」を どこか懐かしいアニメ「蛍火の社」の中でギンと蛍と社が刹那の夏の日の記憶とぬくもりを伝えてくる。...

  • 怪しき月

    宵の街 枝垂れんばかりに 色っぽく かすみの酒に 足も千鳥てめくるめく 怪しき月が ビルの横 いつどこまでも 追いかけて来るスマホ手に 時の退屈 なぐさみて 臓腑引きずり 目と耳は踊り…DAOKO さんで『水星』を...

  • 墨絵

    宵闇の 月と木立の 墨絵かな 黙して重ね 誰そ彼と詠み 一人来て 二人座りて 一人去る 山河草木 成つの涼しさ てふてふと 人を尻目に 華に舞う 後ろを悔やむ こともなき袖 …Imagine Dragonsで 『 Birds』を...

  • ほたる草

    白南風の 興したるかな 土用波 青き思いに うねる心は 羽化いずる 祭りの夜へ 夜光虫 光に釣られ 闇にこそ飛ぶ 紫陽花を 濡らして梅雨の ひとふらし 流れる先に 蛍草青し…クレナズムで「積乱雲の下で」を...

  • 川鏡

    野には花 心に阿弥陀 探せども 夜中の森で 迷う蛍は川鏡 葉花しだれて 宵の街 ネオン流れて 嬌声の舞う宵の空 明星浮かぶ 空き地には 黒き松影 老舗を偲びて…青葉市子さんで「ゆめしぐれ」を...

  • 広重の雨

    雷鳴の 轟く空に 大のろし 子等の傘追う 広重の雨飛行船 航跡も白き 空の波 一路北へと 何をや運ぶ朝焼けの 到来に白き 月浮かぶ 甘き残り香 部屋に横たえ...

  • 万華鏡

    有線の 歌によせくる おもかげに 君が仕草か 白き雲ゆく人の世は 浮き事ばかりの 万華鏡 生良く正なり 死良く師なり天も地もひっくり返る 眩暈かな うなぎ上りの 陽炎の路…当真伊都子さんで「Fly」を...

  • 虹のきざはし

    祝詞たつ草葉の闇に 蛙かな 後の月隠して 夜も更けつつことわりも なく踏み入れば 花の寺に 紫陽花誇る 一松の古道行きあいの 白き漁港に 走り雲 ウミネコ昇る 虹のきざはし ...

  • 夏の息

    いますぐに ゆくと答える まどの外 手をふるきみを 夏風は抱いて・・・・・・・・・・・五線譜と おぼしき道に パステルの 靴の符跳ねる 公園の輪舞 ・・・・・・・・・・・ 光さす 雲影乱れて 一陣の 翻る葉の 夏の息かな...

  • 無一物

    折につけ 忘るな本来 無一物 いつしか消える うたかたのわれ雲は風に 川は海にぞ 消え去らん 月も欠けるか 遠吠えの春 こころはうたかたの水面の揺らめき現れ消える湖面の反射のようだひとときの思いもまた去ってゆくあたかも影のみと寄り添って影に飲まれて夜を歩くか、影を友として日向を歩むか、それはみな思いのままか……...

  • はや五月…

    緑風の ゆれる水面に 陽の光 アップダウンの 胸のまにまにはや五月。初夏は着々とやって来る。...

  • 急ぎ雨走る

    洗濯を 竿から盗む 急ぎ雨 晴天笑う 一息の珈琲洗濯を終えて録画した番組を見ようとすると突然の雨今日の予報はたしか…と思いきや明日の天気と勘違いしていたようだ急ぎ室内に取り入れると吐息ひとつ、あらためて腰を下ろしたのもつかの間立ち上がって湯を沸かし今度こそカップの珈琲に湯を注いだ香ばしい香りを浴びて録画した番組を見る途中視覚に差し込む光を感じ、ふと窓の外を見たすると青空が見えるなんと気まぐ...

  • カゲロウの春

    「日が長くなりましたねぇ」「ええ 本当です。突然の暖かさが陽炎をつくっていますよ。ほら、そこ、見えませんか?」「見えたかもしれませんが、気づきませんでした」「大気もずいぶん春らしくなりましたね」「そうそう。あそこにはボウズたちが並んでいますよ」「ほう、土筆ですか。誰かに炒めると美味しいと聞きましたが…」「あれごま油と相性がいいようですよ」「ああそうなんですね。ほら聴いて下さい。聴こえますか?川も何...

  • 祭戴門

    わたしは一本の糸につながれている。母の子宮にいるときから誕生後も、臍の緒は切られてしまうけれども、透明な糸はどこか遠い空からずーっとわたしに降りている。「この子は泣かない子だね。」父がそういった時も。「きっと共働きの私たちを困らせないようにしているのよ。」母がそういった時も。わたしは不思議な糸が天井を抜けて消えていくのを見ていた。時々その生糸につかまって天井を抜け、暗い屋根裏を通り、屋根を抜けて...

  • 枝垂桜の影が川面におちて

    せせらぎを 俯いて聴く さくらかな 春匆匆に 律華散らして川沿いに枝垂桜が咲いているその姿は川をのぞき込んでいるようそれとも聞き耳を立てているのか…夜はきっとせせらぎの音も高くなるだろう今日の月夜は美しいに違いない人もデコレーションのようだ 人も車もどことなく華やいでいる例年より早い桜の時期はことさらせわしなく春を短くする先日の花冷えでは雪が舞い今日は山々の残雪が空に映えているすぐに消え去...

  • これっきりの…

    ただこれっきりの一日がただこれっきりの一時が性急に、そして静かにあるがままに過ぎてゆく泣いて笑って過ぎてゆく怒って悔やんで過ぎてゆく力を入れても、抜いても根を詰めても、投げ出しても相変わらずにぼくの気持ちに無関心でぼくの体に寄り添うこともなくただ無心に過ぎてゆくそれでも何事もなく無事に過ぎてゆく一日には幸福のありのままの姿があるただこれっきりの一日にいのちはある息もある大気の中を、日暮れの中をぼく...

  • 花冷えの雨に立つ

    花冷えの 新芽に雨の 涙かな 喜びにみち ふるえて空へいろいろな新芽がふき出してきたと思ったら寒い風と冷たい雨が降ったそれでも草木は喜びに包まれているように見える期待に満ちてつぼみをふくらませ空にひかりを求めている弱く、まだ優しげだがいのちは激烈であるああ…ごきげんよう!まぼろしの春おまえが姿を変えるひとときに住むすべての生きものたちよぼくとともに季節に目を見張れ!...

  • 散歩するもの達

    笹やぶを かきわけて住む 赤鳥居 稲荷古びぬ たえて来ぬ人道を横にずれる丸木を組んで石を敷き詰めた階段入ってみる木々の枝が張り出し空を見上げると壊れたかごのようだ赤鳥居があり、その奥に稲荷がある稲荷も歩いていたぼくは歩いて来たともに旅路を歩いている木々のつぼみも草花のつぼみも芽吹いて太陽にむかって歩き出すぼくも歩き出す目覚めた蜘蛛も、蟻もせっせと歩き出すみんな運ばれていくぼくも踵をかえして...

  • 隊列を組む「徒花(はな)」

    陣を張る 腐葉の下は 古戦場 隊列組んで 水仙並ぶいつ芽が出たのかつぼみがそろって顔を上げている思えばここは古戦場だったらしい戦いで散った花はいつも徒花だった…それでも散り行くことにはちゃんと意味があったのだろうと思う帰りは神社に参拝でもしていこう日を追うごとに春である...

  • 道祖神

    地蔵さま? ここにおわすは 道祖神 足もと開ける 若葉の道次まだ落ち葉や雪折れの枝が散らばる遊歩の道をあるいた。進むとヒガンバナの群生がある秋までに花の養分をためるためであろうか威勢がいい落ち葉の下にも新芽の草葉がかくれている目を覚ます春の道をこころに問いかけぼくに示しているようである...

  • 梅花の香り

    大宇宙 山端をなぞる 星の海 夜をふかめて かおる梅花はいつの夜も新しい。朝に限らず。夕に限らず。強迫的な昼に限らず。魂をいざなうような神秘さで心を開いてゆく…宇宙よ。地球を包んでさすらう大いなる魂よ。ただ野生であれ、憐憫も、同情もなく、ただ鮮烈であれ。その鮮烈さゆえに生きとし生けるものの鏡なのだから。...

  • 可惜夜 あたらよ

    またひとつ 明かりの消えし 街裏で ひとり迎える 可惜夜の月春になるとベランダから夜の街を見るのが好きだ。街路灯の後ろで落葉の梢が動き始めている。もうすぐ闇に思い思いの顔をあらわすだろう。存在感を増して、それぞれの言葉で語りだすのだ。それは… もうすぐ。アパートの明かりが消えた。夜の明かりは不思議にこころをくすぐる。明かりはなにか存在の証明(照明)なのだ。空を見上げる。傾いていく月を見...

  • ユべリアの窓

    足しげく 通いなれたし セコイアの ゲートのさきに ユべリアの窓遠くなった過去を思い出した。うたのように足しげくというわけではないが、足しげく通えばよかったと何度も思った。今は通わなくなった公園にはセコイアやマロニエ、オオヤマザクラ、また低木のツツジやアベリアのブッシュがある。ベンチで待つことも楽しかった。公園を出るところに、道を挟んで宝石店があった。四季によってか少しづつ展示演出がかわっ...

  • 春分けて三月

    春分けて こよみの中の 三月は きみと祈りと 彼岸に渡して…何年となく春はいつも分けてきた。季節を、過去を、わたしとあなたを、此岸と彼岸を…その永遠の刹那は、今ここに生きている私たちの刹那でもある。時は取り返せない。もし取り返すことができたとしても、その時は、いつも未来の時間となるだろうし、その未来の時間は、つねに過去の時となってゆく。まるで、時とはうつろう美のようだ。ただ、後になって振り返...

  • かんなぎの空

    ものほしで 風に手をふる コートかな 寒凪のそらに わかれを告げて陸橋を越えてショッピングモールまで歩いた。風が心地よく、線路は立ち並ぶ家々に消えてる。ふと見渡すと洗濯物が多い。日光浴をしているようにもみえる。寒の虫干しといえるだろうか。東北にも早い春が来る。若い風があしにまとわりつく。腕にも肩にもまとわる。これは少年たちだな、とかんじる。そして、まだ少年であれ、とおもう。人と同じようにそ...

  • 聲の道

    あゆむ子ら かげもゆらいだ あかね道 こだまかえして 行きゆきて聲茜空の道を数人の小学生が歩いている。それはいつの日の光景だっただろう。伸びた影が重なりあって恥を知らない声はよく通る。思わずハッとするその声は遠い過去から届く自分の声だ。それはまっすぐで心地よい。いつかまっすぐに話せなくなった者にはうらやましささえ覚える声だ。過去に思いをはせながら、歩きながら、自分の内奥の声に耳をすました。...

  • 転寝の底

    地上へと のびるひかりの 春の手は 枝もわたしも 小鳥も抱いて風が光を運んでいる。小さな庭に出る。ワームムーンの翌日、日なたの壁をクモが動いている。啓蟄も六日に過ぎた。土が活動を始めている。豆乳とトースト食し庭に出た。葉が生い茂り、日陰になる一角にスペースを作り、シェードを張ろうかと考えた。初夏には木陰でひととき思索にふけるのもいい。庭に出ているときガス設備の保安点検のしらせが来た。昨年...

  • ウサギの残り雪

    残雪に 浮かぶウサギの 耳たてて 見下ろす里にも 春がくるかもひがし山の一角に残雪か見えるどことなくウサギに見えるそれは右耳が欠けている今季の大雪のせいだろうかしかしそれがまたいい雲はこぶ陽風に聞き耳をたてているようにも感じる散歩をしている姿も多い土曜日はまた道行く車も多かった春は足元から空へ向かって動き出している春鳴りの音もまた 鼓動のように聴こえるはるはやて(春疾...

  • ゆきしろ

    枯草に つたいし清き 雪しろの 産声かさね とうとうと春…東南に面した斜面にある古き桜の古道を歩く。まだ雪深い東北にも日々春が近づく。雪で折れた桜の枝があちらこちらに散らばっている。古道には残雪も残り、溶けさった下からは去年の落ち葉が顔を出す。水分を含んでふかふかした腐葉土にも感じる。三寒四温、春は近い。断捨離にたえた樹からも、地面からも、まもなく今年の子らが顔を出すに違いない。...

  • 清爽

    清爽(かわらか)な 思索は天に届き 秋の道は 薄焼き煎餅の音がする……ひとときÓlafur Arnalds で「 Particles ft. Nanna Bryndís Hilmarsdóttir」を...

  • 消えゆくボクのゼンタイ

    草むらにきえる君のように ― 消えていきたい風の歩調に歩調を合わせて触れることもなく― 過ぎ去っていきたい時のように無心にひとかけらの細胞も残すことなく消えていきたいボクは大気を広がり時間の鼓動となってとけさるように 薄れゆくひかりのように流れゆく川のように 浮かぶ雲のように遠いほしぼしのようにソラ(宇宙)のようにように ように…ヨウ二離れ去り 離れさる地球はボクの肉体だったあふれる海はボクの血液だっ...

  • 灰になった書物

    かつて思想は地上にあって憎しみの岩場を水のように流れ欲望の雲を風のように過ぎ死の夜を星のように飾った今は知性を弄ぶ机上の論理と化し図書館の中にでも並んでいる一歩外に踏み出せば思想が息できるほど呼吸は深くない思想が根付くほど意志は強くない内なる火に従った預言者は 耳元でひとこと訊ねて歩む「お前は充分に強いか」憎しみの戦場は今も業火の中にあって欲望の濁流は知識の植林をなぎ払う死の壁にはいたずらに幻...

  • 水色の町

    石畳の道はくねくねと松の並木を見上げて続く街は幻想の中にたち雨の道は煙っている間もなく雨は降る道の上に雨は降る 街の底に雨は降る僕の上に降る雨に僕は仮の宿を求め宿で請求を受けている昨日も今日も、明日も明後日も風の塊りが樫の体を叩いたお前は眠っているときみはキット旅の空ぼくもキット旅の空眠りに就いた現実を見る一生の映像を夢見ているあの古ぼけた映写機のあの遠いアルバムを石の坂はごつごつと桜やモミジの天...

  • ふたいろの惑星 四、umbra sartura(カゲヌイ)の草原ー2

    カゲヌイの動きは緩慢だった。お互いにはまったく興味がなさそうに見えた。同じ波長で支配されているのか、一人の行動は全員の行動になっている。たぶんそれは名前が一つだけだからだろう。彼らは四体いても一つの名前、一つの人格なのだ。それぞれが捕獲したターゲットから名をいただくまでは。…ということはターゲットを見つければ彼らは同じような行動をとるということだ。「なあ、カナ。モノリスの数だけど、六列並んでいる...

  • 紫陽花の頃

    ぼくの手がきみの手を引いて紫陽花の坂道をのぼるどこへ行くというよりも今を共有するために、ここそこと歩く少し濡れた梅雨の合間にそっと息づくのは紫陽花だけではない空に焦がれた露草、静かに佇むネジバナ風の息づかい、夏雲の吐息振り返っても過去はなく坂を見上げても先はなくただ広がる今の中にぼくらは息をつき空と海を見ていた空を吸い込んで夢を吐いたぼくの手はきみの手を引いて島へ続く橋を渡る二人の橋というよりも思...

  • 時わたる雲の歌

    頬打つ風の後先にうつろう季節の歌声はぼくを起こす風の歌町も季節も一緒になって命を乗せて過ぎてゆく見たまえ この時の爆風を目の前に今日が訪れるのは離れる岸を忘れないためあらゆる事物が足早に去るのは世界が虚しいほどの空っぽさゆえに風の歌は刷新を望み、無常の残り香を愛した地上のぬくもりの艶模様眼差しにこもる歌声はぼくを掘り起こす光の声地下に眠る種や根たち無心の魂に光は届く見たまえ この意識の発現を頭上に...

  • ふたいろの惑星 四、umbra sartura(カゲヌイ)の草原ー1

    「逃げろ!」コウがカナの手を引っ張ってぐんぐん走り出す。「森に隠れるぞ!」まるで野生の獣のようだ。引っ張られたカナもまた先導する巧コウの脇を負けず劣らず走っている。すごい勢いだ。草原の草が後方へ飛んで行くと、森がぐんと二人に近づいてきた。走りながらカナは何度もコウを見た。三本重なった樹の陰に身を隠す。腰程もある草がこんもりと繁っていて丁度いい。一息ついて思い出すと急に震えがきた。あれは人間に似てい...

  • 尾を噛む惑星

    陽炎のように炎立つ現実は砂漠のように乾き不毛の砂が一面を覆い尽くしている生命溢れるオアシスは空中に消えたここは滑稽な収容惑星、誰もがウロボロスのように自分を喰らっている自分が夢見た快楽も、絶望も、恐怖も、憎しみも過去に、そして未来に今もこの惑星の隅々で起きているまるで惑星ソラリスのように人の夢見る天国と地獄をこの星は出現させる僕たちは永遠に傷ついた被害者で呪わしい加害者だ自らの尾を噛み、その痛みに...

  • 昼と夜のモノローグ

    楡の葉の鱗のようにひらめく下を行きて帰りて道は続く営みの振幅が心を振り切ろうとも独楽のような一日は回り続ける黄昏のランプは赤々と街を包み今日もまた日は落ちぬ表象の風の世界の右左何処より来りて、何処へと到る手の届く現実も時には底すら見えず得体も知れぬ不可思議さ筋肉の経験、また肌の印象よりも血流は心臓の寿命を縮めたモノクロのエピローグモノローグとダイアローグの昼と夜月の見下ろすタールの夜は一面の漆黒に...

  • 日常

    人は商品のように流される手から手へ、檻から檻へあなたは何になりました堂々巡りもいいところでしょうそうやって働くのも税金を払うためなんです本当に封建政治も賢くなりました年貢が税金に変わるなんて税金もいつかは嗜好品に変わるでしょう抜け目なく、際限なく心理に寄り添って人生に意味を見つけるのですモノに意味を付加するのです人は商品のように廃棄される福祉国家などと言いますが言葉が化生して誤魔化すばかり本質では...

  • ギフト

    死の闇がぼくを包み込むその時こよなく愛したあたりまえの世界が地上に過ぎているように営みも生態も大気の頃もに包まれて揺りかごのように揺られている家路は遠い我が胸の中雲が口笛を吹いて空が笑っているその下ですべてのひとときが光に満ち輝いているように死の闇は世界をいっそう美しく染め上げる憎しみよりも強く 暴力よりも深く突き刺さる杭の底で夢見た明日は今日の空の下で別れを告げるただ一度に燃え盛り西方浄土に沈む...

  • 夜の虹

    墨絵の空に星もなくうねるような筆使い宇宙はさらに墨を吐き夜の底は排気炎夜を抜けて、夜へと至る昼の儚さ、淡き虹ぼくは夢を見ていたようなぼくは過去を追っていたような明かりはそこらにあるけれど今はどこぞと知れぬ場所ぼくは何処を走るのか何時から走っているのかすべてが歪む四次元時空妖しき虹は環をなしぼくは走るぐるぐると終わりなき時空連続体一つに連なった空の下をあぶくのようなビルの影黒く並んで勢揃い風切るカー...

  • バンシーが泣いている

    白壁赤々と燃え急ぐ深く静かに忍び寄る森の息に、道走る遠吠え市庁舎前の広場の足早の人々アコーディオン弾きはもういない噴水の周りを走った子らはどこへ行ったもう… 花の色も数えられないほら! 聞こえる?バンシーが泣いているもう夜警の歌も聴こえてきたよいそいで家まで走ろうバンシーが飛び回るその前に家の玄関に飛び込もう追いかけられないうちに連れ去られないうちに見つかったら終わりだよ彼女は家にもやってくる闇を...

  • 道の真ん中で想像する

    道の真ん中で想像する想像する時はいつも頭のスイッチを入れる誰かさんのようだねと きみはいったでもその誰かさんのことは知らない知っているのはせいぜい両手で数えられるくらいそこから先は想像なんだって…ときどき思い出す顔も人が呼び合う名前も想像だけだったら問題はないだからいっぱいを過ぎたら想像するきみは想像じゃない十一番目で覚えたきみはおじさんがいなくなったから十番目だ人はいなくなると想像になるぼくのキ...

  • ふたいろ惑星 三、Beyond reality(彼方に)- 2

    墓は一基だけではなく何十とあった。…いや何百かもしれない。横並びに六列あって、その六列を基にして後ろに延々と続いている。その奥は見えない。凄い数だ。ここに住んでいた者たちが亡くなったのだろうか。いまは誰もいないのだろうか。見回してみても人影らしきものはない。右手には小高い丘が連なり、ブッシュはあるが大きな木の影はなく、左手にはあの奇妙な細い木が森をなしている。ちなみに背後には切り立つ崖と山々があ...

  • 僕たちの季節

    きみにはきみの生と死があり僕には僕の生と死がある会社には会社の、国には国の興亡がある陸には陸の 山には山の 惑星には惑星のはじまりと終わり 合成と分解 そして愛と孤独とがある愛を怖れるのは死ゆえに愛に執着するのもまた死ゆえに僕らは重力の揺りかごに揺られた立てない赤子歩けない老人気持ちだけが未来を走っている、いつか時間の渦に飛び込んでいく過去の祝祭の時間にあるいは呪われた時間に未来には老獪な死が待ち...

  • 晴れ上がった空を渡る

    晴れ上がった空を歩いていこう明日に嵐が待っていようと先に道が失われていようとぼくはぼくの生と死と一体だ今日に生き、明日に死ぬその素晴らしい昼に踊りその素晴らしい夜に眠るぼくは野生の鳥風に乗って飛び、落下するように死す褥はこの大地、体は地球に返してしまおうぼくは名を変え、姿を変えてずっと旅してきた人間になる前も、その後も遠い時間を旅をする繰り返される同じ旅でもたぶん経験によって理解によってきっと違っ...

  • 足下に落ちる影

    忍びよる目覚めの皮膚のその下でひときわ熱く心の臓は動いている無心に、ただ正直にここにある意識は日常と苦しくとも 虚しくとも自己と格闘しているのに道に立つ陽炎は夏の誘惑激しく 切なく短い時間に向かい合っている……のに幾多の挫折に行き詰まり落つる葉は焼ける思いに焼ける悔いに焼ける社会に焼き爛れ煙となって立ち昇るビルの上から見た世界靴音高く今日を踏むどこまでも…響きあって心ハ遠ク置キ去リノ河原ニ積ンダ石ノ...

  • ふたいろの惑星 三、Beyond reality(彼方に)- 1

    「カナ、どうかした。今日変だよ。いつもの輝きがない。なんか元に戻った感じがするけどわたしの勘違い?」晴海にそう言われたのは登校時の挨拶を交わした後「えっ、いつもと変わりないよ」と言ってはみたものの、クラスでは美織に同じようなことを言われた。「あら、もう恋も終わり。まあ短い間だったわね。あたしはね…」話の続きを聞いていなかった。その日の朝は目覚めた時から変だった。身体は気味が悪いほどうつろで、生ぬ...

  • sounds in the evening

    太陽のhornが白壁に反響し鳥達を東の空へと吹き飛ばす耳を澄ませば群衆のpercussion 車のtrumpet胸に響くは bass drum夕風に旗がひらめく下をビルのデッキからお前は地に降り立つ昼の船が西へ下る前に自分自身と共有するこのひととき耳に囁く evening song静かに醒めて美しく黄昏の街には光の矢が刺さっている見えぬ棘が疼いている血の流れる内側で盲目の瞳は闇をさ迷っているこの現実に光を探っている昼も夜も 寝ても醒めてもb...

  • ふたいろの惑星 二、Lovers (親愛) ー 3

    「あら、今日はおひとり」ヒルダ夫人はにっこりと微笑んで現われた。伽奈子は意味もなくほっとする自分に驚いた。ここへ来ることには少なからず葛藤があった。晴海にナイショで来たこともそうだが、カラコンを外すことを決心したこともそのひとつ。ヒルダ夫人と直にありのままの姿で語りたいと思ったのだ。不思議なことにわたしの分身である巧も落ち着きがない。いや、これはわたしに落ち着きがないということか。「どうもいやだ...

  • ふたいろの惑星 二、Lovers (親愛) ー 2

    「あなたは悪い妖精かなにか?もう目を閉じるから帰りなさい!」冷静さをよそおいながらも、少し震える声で伽奈子は夢に命じた。しかし巧が消えることはなかった。巧はいつも目の前にいた。第一のハードルは母だったが、それはハードルでもなかった。母には見えないのだ。見えないばかりではなく、巧の声が聞こえてもいないようである。この現実を受け入れるとしても、伽奈子にとってはやはり夢であり、他者にしたらあきらかに非...

  • Back yard

    するりと伸びたヤマボウシ梢に群がる白蝶の花庭に下りたらParsleyを摘んで香るMintも二三枚頭上の空は突き抜けて山稜に白雲の踊る午後に「Lost And Found」の響きに浸りフライパン片手にキッチンに立ったきっと今日は明日に生きて昨日の弱音を取り払う明日の疲れを慰める光と水と大地の命をそっともらった緑の手からもっと大きなものをもらったから赤く色づくユスラ梅プリムローズの薄紅の花樫の木陰でBerryを摘んでついでにPeri...

  • ふたいろの惑星 二、Lovers (親愛) ー 1

    瞳のヘーゼルの太陽を覗いていると、向こうの世界が見えるような気がする。横たわる萌黄色の地面から青緑の空が見える。かさかさと冬枯れから目覚めた新葉が風に揺れるのが見える。春が来たかのように冬枯れの木々が変わったのも、多分巧がいるから、巧が見ている世界だからだ。伽奈子は自分の左目に親し気に語りかけた。「そっちはネバーランドのような世界なの?」草原だけじゃない、きっと山も海も島もある。萌黄色の絨毯が広...

  • ふたいろの惑星 一、Star Eyes(虹彩異色症の瞳) ー5

    伽奈子が左目に名前をつけようと思ったのは夢のせいである。筋書きのない、場所もわからぬところに伽奈子はぽつんと一人でいる。大勢の人間?が辺りにたむろしているようだが、ときおり大勢の中の一人が伽奈子の前に来る。あるいは前を通り過ぎる。姿はあるがぼんやりとしている。顔の判別もつかないありさまで、一様にぼやけ闇に消されていく。何度目のことだろう。夢の中の誰かが話しかけてきた。どこから話しかけてくるのかは...

  • 夏のカゲロウ

    愚かに若きことをぼくは恥じたが要らぬ知識で動きの取れぬ老獪さも遠ざけたい肉体につながれた欲求に踊らされることもまたぼくに必要なのは澄んだ大気細く長い一呼吸がずっと続きぼくの中の何かが空へと抜けて行くその軽やかさ愛は共振の中にあった遠くにあるあなたへの愛は目覚めへの警句内なる春を謳歌するために魂の緯度は太陽に顔を向ける「何故太陽に・・とお前は聞くだろう私は答える内なる諸元素にそれは隠されている とそ...

  • ふたいろの惑星 一、Star Eyes(虹彩異色症の瞳) ー4

    ヒルダ夫人こと緒方佐知枝さんは、伽奈子がイメージしている占い師とは似つかわしくない容姿で降りて来た。まず丸い眼鏡をかけている。まあそんな占い師もいるだろうけど。中背中肉でふくよかな顔立ちをしている。服装はシックなパープル色が強いワインド・アップ。服はどちらかといえば占い師に近い。ただその服の色をあでやかに際立たせるともいうべき貴金属類にいたっては、真珠のネックレス以外何も身に着けておらず、イヤリ...

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