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雨霞 あめがすみ https://amegasumi.hatenablog.com/

そろそろ人生黄昏ですので、過去に書き溜めた様々なジャンルの小説や散文を公開します。

雨霞 あめがすみ
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2020/06/15

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  • 飯田木工所の赤木さん--5

    管轄の小さな職安は電車に乗って20分。田舎だから周辺の幾つかの町や村を統括しているところへ行かねばならない。そんな面倒なところに何度か通ったが、結局働けそうなところはなかった。ほとんどが清掃の仕事で、電気部品の組み立てや検査、コイル巻きの仕事など短期ではないでもなかったが、元々短期では話にならなかった。交通費は出ないのが当たり前だから電車通勤も効率が悪い。 雇う方も車での通勤を原則としている。残りはと言えば接客業、製パン工場の深夜勤務などが目についた。 慌てることはない、じっくり探すさ。幸平はそう言い聞かせた。いままでずっと会社の雰囲気と仕事のストレスに耐えてきたのだ。多少休んでも罰が当たるこ…

  • 飯田木工所の赤木さん--4

    三か月はあっという間に過ぎた。情報誌を頼りにあちこちに履歴書を送ってみたが全て無駄だった。そもそも情報誌には幸平が関わってきた専門分野の求人など端からなかった。条件を変えてダメ元で送ったところも幾つかあるが、履歴書の返送すらしない会社があった。そんな会社にもし雇われても果たしてどんな結果が待っているだろうか。 結局都内にいても仕事はないのだった。 この時点で両親に会社を辞めたことを伝えた。余計な心配をかけるのでなるべくなら黙っておきたがったが、こんな状態ではアパートを引き払うしかなくなったからだ。仕事がないなら経費を削減するしかない。 うんざりする距離を電車に乗って家を訪れ、父母に説明した。 …

  • 飯田木工所の赤木さん--3

    専門職にありつけない限り一般的なバイトの賃金に甘んじるほかはない。世はバブルが弾けて十年程経っており不景気の只中だった。四十過ぎの年齢では一般職で新規の社員などあるはずもないとは思いつつ、とにかく保険がある間は都内に居たまま仕事を探すつもりだった。しかしついに見つからず、結局アパートを引き払うと言っても産業のない小さな町で仕事らしい仕事があるのかどうか、その方がどう考えても望み薄に思えた。

  • 飯田木工所の赤木さん--2

    そう言えばこういうこともあったな…。飲むにつれ幸平は思い出す。遥かに昔の忘年会。半ば無礼講だから、社長の言に絡んで悪ふざけを言い合った。社長は上機嫌で笑っていた。すぐ隣に座っていた幸平もついそれに乗っかってしまった。途端に社長は態度を急変させて幸平の腕を引っ叩いた。一瞬--キッ!--となったのだ。 迂闊だったと思った。ずっと前から、いつの間にかそうなっていたのだ。幸平以外の、一体誰にそんな態度をとるだろうか。とっくにひとりだけ違っていたのだ。終始笑って済ませていたが、ある種決意させるものがあった。 しかし表面は何もなかったように、幸平は会社と付き合った。稼ぎを捨てる訳には行かなかったし、他がや…

  • 飯田木工所の赤木さん--1

    飯田木工所の赤木さん--本編です。 ----------------------------------------------------- もしかしたら、これが最後の納品になるかもしれないという予感はないでもなかった。会社との関係はこの半年一年で目立って悪くなった。すっかり仕事の量が少なくなった。なるべく幸平に出さぬようにしているのだろうと思った。そのうえで、厄介なものだけが回ってくる。気分的にも疲れは隠せない。もう続かないかも知れない、そう思い始めていた。 受け渡しを済ませて別室に呼ばれた時は、きたかと思った。 「それなりに長いことやってくれたけど」 と話を切り出され、二言三言話しあって…

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