大体赤木さんは休憩後に残ったお茶を流しではなく床にぶちまける。相当な神経でなければこんなことはできないのだ。雇い主に反感があったとしてもこんな出方はしないものだ。ずーっと毎日、朝十時と昼三時の休憩でこれをやる。毎日毎日。そのことにもう誰も関心を持たない。注意もしない。幸平が知る限り、一度だけ婆さんがこぼしていたことがあった。 「あそこが腐ってくるのよね、やめてと言ってるんだけど、なんでああなってるのかねえ」 トイレの二階に出っ張った休憩室の角っこを下から見上げて、あの人の頭はどうなっているのかと嘆いていた。 だがそれ以上のことがあるでもない。この行儀の悪さに関しては専務も無関心だ。常識人の神経…