ソ連の鉄のカーテンの向こう側で書かれた心温まると同時に深く考えさせられる10篇の掌編小説が収録されています。どれも、教科書に載って良いようなスキのない出来で、共産主義の下の庶民の暮らしを垣間見ることができます。特に表題作の「美人ごっこ」は秀逸。子供たちが考えた遊びなのですが、一人を選び、その子を囲み、みんなでほめたたえるという単純なものです。いつも美人役に選ばれる女の子は、一番みにくいニンカという子でした。みんなで彼女を囲み、考えられる限りの誉め言葉を贈るのです。ある日、引っ越してきた子が、美人ごっこが変であることを言ってしまい、鏡を見たニンカは真実の自分の容姿に気が付いてしまうのでした。そして……短編で、ここまで書いてしまえるのは、すごい筆力だと思います。絶版で、古い本しか出回っていない様ですが、電子書...『美人ごっこ』ヤーコブレフ(旺文社文庫)