山本のところに行ってから2日後、書斎で仕事中に西村事務長から「口切りで祝いをくれた人達への礼状の発送が終わった」との報告を受けた。その時、「あの方はどうしますか?」と言われたので手を止めると・・・「あの方?」「総二郎様がご自分でお礼を言いたいと言われた神楽木様ですよ」「・・・あぁ、親父の友人の・・・」「はい。ですからお礼状は出していませんが、ゆっくりしてるとすぐに日が経ちますので・・・」「そうだったな・・・住所...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
山本のところに行ってから2日後、書斎で仕事中に西村事務長から「口切りで祝いをくれた人達への礼状の発送が終わった」との報告を受けた。その時、「あの方はどうしますか?」と言われたので手を止めると・・・「あの方?」「総二郎様がご自分でお礼を言いたいと言われた神楽木様ですよ」「・・・あぁ、親父の友人の・・・」「はい。ですからお礼状は出していませんが、ゆっくりしてるとすぐに日が経ちますので・・・」「そうだったな・・・住所...
「これ、どういうつもりでプレゼントしてくれたの?」「どういうつもり・・・とは・・・・・・ああああああぁーーーーっ!!」そう・・・俺が牧野に聞きたかったのはペアのルームウエア(パジャマ)のこと。どうしてこんなものを「家で見ろ」と言って渡したのか・・・実は俺に恋人がいると思って渡したのだとしたら、俺の朝の発言が超絶恥ずかしいことになる。でも牧野は俺にそんな相手がいないことを知ってるはずだし、全く意味が判らない。同サ...
山本のマンションを出て鑑定施設に戻ったのは16時。そこに車を駐めていたからで、濱崎の車が戻った事に気がついた市村が外に出て来た。そこで俺ではなく、濱崎が山本の証言を掻い摘まんで説明し、市村は20年近く前の検定結果が外部に漏らされたことを聞いて驚いていた。同時にそれがあきら経由で俺が依頼した、自分の父子鑑定であることも知ることになり・・・「・・・そうなんですか?私はそのころからここにいましたが、責任者では...
牧野が着替え終わって出てきたのは17時。これまでに何度もドレスアップした姿を見てきたから驚くことはなかったけど、今日のは一段と可愛く見えた。両サイドから編み込んだ髪をふんわり纏め、そこにパールのピンをいくつか挿してる。メイクはピンク系、ヒラヒラしたデザインの袖から白い腕が出てて、裾に鏤められたラメレースがキラキラして・・・「類様、こんな感じに仕上げましたけど、いかがでしょう・・・?」「・・・うん、素敵だと...
まさか、この男が美涼に俺の出自の秘密を伝えていたとは・・・俺の知らないうちに検体を取られ、それと照合されていたとは思わなかった。濱崎もこのことは知らなかったので驚いた顔をしていたが、今更知られても問題はない。それにこの人は信用できるので、「今はまだ誰にも言わないでくれ」と囁くと、それに軽く頷いてくれた。それからまた山本の説明は続いた。「・・・子どものデータが西門様なら、もうひとつは家元になる。それが親子...
三毛猫の手に寄ってから会社に行ったんだけど、その途中頭が真っ白だった。牧野に何を言ったのか・・・もちろん全部覚えてる。牧野の驚いた顔・・・信じてなかったみたいだけど、俺、ちゃんと本気だって言ったよね?牧野が何か言ってたけど、何だったっけ・・・・・・何かが違うみたいなことを・・・そんなことを考えていたら会社に着いて、俺は急いで執務室に向かった。この時も社員達から何か言われたけど返事もせず、正面にいた社員が飛び退い...
俺と美涼が結婚していたことも知らない。西門邸には1度も行ったことがないと山本は言い切った。「彼女があなたと結婚していたことなんて知りませんよ。桜井家とは縁がないのですから」・・・と。山本は美涼との関係を完全否定。それならと、今度は俺ではなく濱崎がカバンからある物を取り出して山本に見せた。それは綿棒のような検体採取キット・・・あの施設にいた山本にはなんのための道具かすぐにわかっただろう。「じゃあ、お前の口...
『今、あんたの会社の駐車場に居るんだ!話があるから出てきて欲しいんだけど!早く!!』「へっ?あ、は、はいっ!すぐに行きますっ!!」いや、ぜんぜんわかんないんだけどっ!!いったい何があったって言うの?!何故こんなに朝っぱらから花沢物産の専務さんが来てんの?!会社はどうしたーーーーーっ!!電話を切ったら社長達に何も言わず、急いで裏の通用口に向かった。そこで勢いよくドアを開けると、白い8000万円が停ま...
口切りが終わると宗家は静かになる。年内に大きな茶会はなく、俺たちの仕事はのんびりとしたものに・・・だが親父とお袋は年末に向けて地方支部へ出掛けたり、孝三郎は茶道教室のイベントなんかが増える。だから俺が宗家の仕事を任されることが多かった。この状況下で助かるのは、俺が外出しやすいと言うこと。親父達が不在だから口煩く言われることがない。丁度今日は親父達が不在で、孝三郎も夜の会食までずっと出掛けている。だか...
牧野のクリスマスプレゼントに悶々としながら一夜を過ごし、気がついたら朝になってた。いつもより更に開かない目でダイニングに行くと、朝っぱらからイルミネーションを点灯させたツリーが・・・それに若干イラッとしながら席に着くと、目の前では今日も元気な母さんの甲高い声が・・・「山下部長のところはお孫さんが生まれたらしいわ~~、羨ましい~♪」「香坂本部長の娘さんもご結婚らしいから、お祝いを送らないとな」「生まれたて...
口切りの茶事当日、朝から宗家はドタバタしていた。親父と俺は露地の掃除や茶室の確認をし、お袋達は茶懐石の確認、志乃さんは全国の支部から届く祝いの品などを大広間に並べていた。そのお礼をするのも俺たちの役目なので、茶会の前に全員でそれを確認するのが慣例。この茶事に全支部を招くことは無理なので、毎年選ばれた支部長しか招待しないからだ。それに招待したが都合が悪くて欠席する人、昔から懇意にしている取引先などか...
「じゃあクリスマスプレゼント、渡すね♪」「えっ?!」「・・・そんなに驚くこと?」「いや///花沢さんにそんな気遣いがあるとは思わなくって!」・・・なんて失礼な言い方するんだか。確かにクリスマスプレゼントをわざわざ用意したのは初めてだけどさ。今まで椅子の背もたれに隠してた袋を取り出すと、牧野は「え!ずっとそこにあったの?」って目がテン。でも驚くのはまだ早い・・・「俺が作ったんだよ」と言うと、元々大きな口を更に大...
ド派手な女物の服が散らかっている部屋、その真ん中に踞った村上にエアガンを押しつける俺。この状態で村上は美涼との取引について話し始めた。驚いたことに、それは俺と美涼が見合いをする前のこと。繁華街のど真ん中で借金取りに脅されている村上に、声をかけて来たのが美涼だと言った。そのまま個室のあるBarに連れて行かれ、そこで故意に事故を起こすような依頼をされたのだとか・・・しかも初めの依頼は孝三郎ではなく・・・「は?...
手首が赤いことに気がつくなんて・・・なんて目敏いの!!普段から無関心なんだから、そこは無視してよーーーーっ!!化繊負けでも静電気でのないの・・・・・・ダニなのよ!!でも花沢さんの前で「これ、ダニに噛まれたんです」って言えないでしょ?!ダニが居る場所から来た女なんてイヤでしょ?!加湿器も要らないし、ローションも必要ないの・・・・・・欲しいのはステロイド外用剤なのよっ!という心の声は置いといて・・・今日の花沢さんはダー...
翌日の朝食時、親父とお袋はまだ機嫌が悪そうだった。当然美涼もおとなしくしていて、静かな時間・・・光翔も周りの大人の顔色を窺いながら食っていた。そんな中、孝三郎が少し左手を気にしており、俺が「痛むのか?」と聞くと・・・「昨日の長時間の野点で疲れただけだって・・・寒いときはやっぱり疼くんだよな~~」「そうか・・・無理すんな」「気持ち悪っ!総兄が優しいこと言うとコワいわ~~!」「なんだと?心配してんのに!」「ははっ...
事務所に戻ったのは18時30分・・・その時は全員埃まみれで真っ黒クロスケだった。しかもみんな何処かしらが痒くて、掻きまくって血が出るほど・・・加藤さんなんて首が真っ赤に腫れてて、ダニじゃない害虫にやられたんじゃないかって話にまでなって・・・よくあんな家にお婆ちゃんが1人で住んでたよね?ってか、病気になったのはそのせいじゃないの?!貧乏で古い家だったとしても、掃除だけはしていた私・・・だから今でも外観はとんでもな...
山本啓介への疑念を抱いたまま10日間が過ぎた。何も動けなかったのは野点の準備、炉開き、口切りの茶事の打ち合わせが続いたから・・・これも後悔のないように終わらせたかったため、この期間は茶道に集中することにしたのだ。そして少しでも時間があればつくしと一颯のところに行き、穏やかな時間を過ごす・・・つくしには山本の話はしたが、茶事への思いも話していたため、時間が掛かることは納得してもらえた。その間につくしは一颯...
翌日の朝、ダイニングは賑やかだった。いつもなら俺が1人で静かに珈琲を飲むだけなのに、今日は父さんと母さんも居て、朝食のメニューもホテル並み・・・これでもか!ってぐらいの料理が並べられ、それを両親は「美味しいわね~」と言いながら食べてた。「フランスの朝食って甘いでしょ?私は長く住んでるけど、あれはダメなのよね~」「私は毎日同じというのがイヤだな・・・それにタルティーヌは今でも食べられないよ」「・・・シェフが作...
「以前、ここで見た手袋の男の事だが・・・」「あぁ、彼のことですか・・・何か気になることでも?」「偶然かもしれないけど、美涼が光翔を生む少し前に病院に手袋をした男が現れたって聞いたんだ。季節的に手袋してても問題ないんだが・・・その男、俺がここに来たときにジッと見てきたってのもあって少し気になるんだけど」「・・・・・・・・・そんなに西門様を見ていたんですか?」「何か言いたいことでもあるのかと思ったぐらいだけど、目を合わ...
ロビーに降りたらすでにそこには部長達が並んでた。いつの時代だ?って思うような出迎えぶりに辟易・・・・・・当然俺はその最前列に立つこととなった。秘書課も全員降りてるし、そんなことで事務所はどうすんの?って感じ・・・でも意見したら藤本に殴られそうだったんで黙っておいた。そうしたら2台のタクシーが到着して、1台目からは父さんとその秘書軍団、もう1台からは母さんとその秘書軍団が降りてきた。途端に緊張感が走り、業務...
羽田に着くと先につくしと一颯が到着ロビーから出ていき、俺とは別行動をとった。機内で爆睡だった一颯はぼんやりしていたのでこの状況がわかっておらず、特に泣くこともなく大きなペンギンのぬいぐるみを抱えてつくしに手を引かれていた。俺は振り向かない2人を横目で見送り、少し遅れて空港を後にした。宗家に戻ったのは22時前で、屋敷内はすでにシーンとしていた。離れの部屋に戻ると美涼もすでに自分の部屋にいて、光翔もベ...
月曜日に出勤すると、会社全体がザワザワしていた。それはパリから社長・副社長が来るとの情報が伝わっていたから・・・当然秘書課はアタフタしていた。フランスからも現地秘書が同行してくるが、藤本達には日本本社・秘書課としてのプライドがあるらしい。だからいつにも増して気合いが入ってるし、各役員の第一秘書ではない連中は社長室、および役員フロア、ロビーやエントランスに至るまで総チェックしていた。・・・そんなことするか...
「えっ?!ペンギン水族館?」「あぁ、長崎にはペンギン水族館があるんだ。本当ならハウステンボスとかに連れてってやりたいけど、夕方には長崎空港に行かなきゃいけねぇからな」「ペンギンさん、見られるの~~?うわぁ~~い!ぼく、ペンギンさん、だいすき~~~!」つくしの言う通り、3歳児にはグラバー園や大浦天主堂よりもその方が楽しいだろう・・・そう思って長崎ペンギン水族館に行くことにした。ここは展示するペンギンの...
そしてやってきた土曜日。軍資金を手にもってやってきたのは六本木。意気込んで向かったのはメンズもののパジャマを取り扱うお店・・・あれから花沢さんに何が良いかを考えたけど、どうしても「睡眠グッズ」しか思い浮かばなかったんだもん。お金持ちなのは判ってるから持ってないものがないだろうし、ネクタイだって好みがある。ケーキでも作ろうかと思ったけど、これまで見てるとデザート系は全部私に回してたから苦手なんだと思う...
美涼の妊娠は人工授精で、計画よりも早くに妊娠できたために俺との行為を急いだ・・・それに引っ掛かった俺のせいで事は上手く進み、彼女の願い通り出産予定日よりも遅くに出産をした。ここまでは美涼でさえ驚くほど順調に進んだし、お袋も親父も騙すことは出来た。協力者は中村祐子・・・彼女が何故あんなに怯えているのかはまだ判らないが、宮崎レディースクリニックを選んだのは中村祐子の医療事故がきっかけだと言うこともわかった。...
石垣島から帰った翌日。花沢トラベラーズの石川から「撮影無事終了」の報告メールが届いた。それを見てカチンときた俺は、藤本の居ない隙を見て、石川に電話することに・・・『あっ、社長、お疲れ様です!先日はご協力いただき、ありがとう・・・』「どうして写真のデータをメールで送った?!俺、現物を郵送か宅配でって言わなかった?!」『えっ?!いや、社長はそんな詳しいことは・・・』ーーカメラマンに頼んで、俺と牧野が写ってる写...
産婦人科についたのは午前中の診察が終わる5分前。しかもこんな病院に厳しい顔した男が1人で入ったので、受付は驚いた様子で言葉を掛けることさえ忘れていた。待合室で待っている患者はもう誰もおらず、どうやら中で午前中最後の患者を診察中らしい。パタパタと看護師の足音と共に、医者の話し声が聞こえた。ようやくここで受付に「お見舞いですか?」と聞かれたのだが・・・「東京の西門と申します。ここの先生に息子のことで聞き...
朝食が済んだら10時前にはホテルをチェックアウトした。その時にロビーでは花沢トラベラーズの撮影スタッフ達がいて、彼らは今からもこのホテルの内部撮影をするらしい。「昨日はありがとうございました」なんて石川に言われたけど、それよりも気になったのはカメラマンの横に立つ2人の男。2人とも俺に背中を向けてるけど、その背格好が・・・「・・・・・・・・・・・・」「花沢さん、どうしたの?やっぱり気分が悪い?」「いや、そんな事な...
「・・・・・・・・・う~~~~ん・・・・・・」「ママ、もう朝だよ~~~?」「・・・・・・・・・えっ?」「おねぼうしてる~~~♪」火曜日の朝、ホテルのベッドで目が覚めたんだけど、その時間が7時・・・いつもならとっくに起きてる時間なのに、真横で私を覗き込む一颯がいて驚いた。飛び起きたんだけど慌てて確認したのは自分の格好・・・持って来てたパジャマをちゃんと着てたからホッとしたんだけど・・・「おはよう、つくし。もう朝飯が来てるぞ」「ーーー...
正直、当たれば折れるぐらいの腐った木の枝で殴られたんだから大怪我には至らない。確かに衝撃はあったけど、1度両手に当たって威力も半減してたから尚更・・・でも牧野がすごく心配して肩まで貸してくれたから、それに甘えてみようかなって思っただけで・・・だから態と蹌踉けてみたり、痛そうにおでこに手を当てたりしてたんだけど・・・流石に部屋に入れば演技するのも申し訳ないと思い、彼女にも「寝ていいよ」って言ったんだけど・・・「...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*細い腰を両手で掴み、弾力のある丸みを見下ろしながら熱り勃つモノを押し込んでいく・・・その時、夜の空気につくしの甘い声が溶け込んでいった。同時に俺も唸るような声が漏れてしまったが、それはつくしの中が想像よりキツかったため・・・つ...
喧嘩ド素人だと思われる2人組・・・もう呆れてしまうほどガタガタ震えてるから、怖くもなんともない。俺自身はそんなに喧嘩をしたことはないけど、司や総二郎のマジな殴り合いを見てきたし。だから躊躇わずに進んでいったんだけど、突然牧野が自分を掴まえてる男の足を蹴ったみたいだった。その呻き声で俺の前にいる男も振り向き、その様子が俺にも見えたんだけど、牧野がそいつの股間を思いっきり蹴って・・・あぁ~~~あ・・・可哀想に・...
本文中に微ではありますがR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*寝る準備だというのに、「パパと遊ぶ!」と言って大騒ぎする一颯・・・総二郎はクスクス笑いながらパジャマに着替えさせられてる一颯を見てたけど、私は違うことを考えてて気持ちがそれどころじゃない。「今日は朝早くから出...
牧野が砂浜から少し離れた、薄暗くて木々が生い茂ってる場所に行くのを砂浜で見ていた。ホントに好奇心旺盛で怖いもの知らずだな~と感心しつつ・・・でもホントにハブだったら不味いから、早くこの場から離れようと思っていたのに・・・「きゃあああぁーーーっ!!」「牧野?!」「う、五月蠅い!」「おおおお、大声出すなよっ!!」牧野が遭遇したのはハブでもヤシガニでもなく、2人組の男?!帽子を目深に被ったヤツが牧野を後ろから...
少々乱暴な言い方だったけど、一颯が俺に向かって「パパ」と言ってくれた・・・それだけで嬉しくて、ガラにもなく涙が込み上げてきた。その様子を見て初対面の夫婦がおかしな顔をしていたが、そんなことを気にする余裕もない。俺の目の前で怒ったような、照れたような顔をしている一颯を抱き上げ、すげぇ力で抱き締めてしまった。「いたいってば~~~っ///!!」「一颯、もう1回言ってくれよ~!」「やだよぉ!いいから早くしてよ!...
ホテルの中庭からビーチに行ける道があるようで、真っ暗な中を歩いて行った。と言っても庭園灯はあるから、その部分だけ明るい・・・でも足下は薄暗くて、しかも舗装された道じゃないから危なっかしくて・・・「あれ?ここが道だよね・・・・・・砂利が多いなぁ」「両サイドに植物があるけど、それアダンっていう木だから。細長い葉っぱの側面に棘があるから気をつけて」「そうなの?触らないようにする・・・・・・うわっ!滑りそう~~~💦」「ほら...
旅館と言ってたからレトロな温泉旅館かと思ってたのに、実はリゾートホテルに近いコテージ・・・そこに着くとその豪華さにポカンとした・・・・・あぁ、やっぱりこうなるよね、と。4組限定で、その総てが離れてるからまるで一軒家のよう。しかもテラスからは海が見えて、広い芝生の庭にテーブルが置かれ、小さいけど温水プールがある。その横には露天風呂があって、お隣の庭は全く見えない作りになってる。ちなみにペットも泊まれるらしい...
今日のバスタイムはあっという間に終了。花沢さんが使ってたワケでもないし、それよりもこのあとのお散歩のことで頭がいっぱいだった。夜の海辺を2人で散歩・・・もうそれって恋人のすることじゃん///?!さっきもネットで調べたらそう書いてあったもん!夜の海デートはとにかくロマンチックさが魅力🧡2人で花火を楽しんだり、星空を眺めながらまったり過ごすのが◎。夜の海はそれだけで気分が最高潮に盛り上がるため、普段なかなか言...
熊本空港の東側に広がる阿蘇山・・・一颯がその山を見て、「けむりがでてる~」って。この子に活火山なんて言ってもわからないだろうから、なんて答えようかなって考えてると、総二郎が運転しながらざっくりと説明してた。「あのな、地面の下のほうにはすげぇ熱いマグマってのがあるんだ。それが上と繋がってるのが火山で、熱いから煙を出してるんだ。今は休んでる火山もたくさんあるけど、阿蘇山は元気がいいんだぞ」「あついってど...
なんとか撮影終了・・・・・・ドレスを脱いで自分の服になった瞬間、シンデレラの気持ちがよくわかった。鏡の中には花嫁さんじゃなくていつもの「牧野つくし」が居るし、メイクも落としたからなんだか淋しい顔しているし。それは花沢さんも同じで、さっきまでのタキシードじゃなくなったので普通の男性に・・・・・・いや、この人は普通の状態でも魔法は解けてない。365日24時間イケメンだった。「疲れたね・・・・・・部屋に行こうか」「そうだ...
羽田に着いたら周囲にドキドキしながら搭乗手続きに向かった。一颯は空港が初めてだからキョトンとしてるし、私も久しぶり・・・案内表示を見ながらなんとか手続きを済ませ、一颯の手を握ってゲートに向かった。一颯は間近で飛行機が見られて大はしゃぎで、広い窓の前でキャアキャア言ってる。私は総二郎にメールして、ちゃんと予約した便に乗れることを報告した。とは言え、その時間は総二郎の方が空の上だから返事はない。それでも...
「ラストは社長と牧野さんで撮るってカメラマンが準備しています!!なので急いで庭に来て下さい~~~~!」石川はそう言うと俺の返事も聞かずにどこかに消えた・・・・・・そして俺の横にはメイクスタッフが来ていて、「ブートニアを交換しますね~」って苦笑い。髪の毛も整えられて、「完璧です!」なんて言われたけど・・・・・・牧野と俺でどんな写真が撮れるというのか。お互いモデルじゃないし、笑えと言われて笑えるわけがない。むしろ...
「えっ?天草へ旅行?」「・・・あぁ、行く気はあるか?」「来週の初めに・・・ですか?」「何か予定はあるのか?」つくしに相談したあと、一応親父からの提案なので美涼にも聞いてみた。だが返事は想像通り・・・苦笑いで「私となんて行きたくないでしょう?」と。俺は親父が言った言葉をそのまま伝えたが、それでも薄ら笑うだけで「一緒に行こう」という考えにはならなかったようだ。もちろん「行く」と言われた方が困るわけで、それなら...
ふんっ!なによ、デレデレしちゃって!!普段は女性に興味ないって顔してるくせに、実際に美人を目の前にしたら鼻の下伸ばしちゃって!!まったく、イヤらしいったらないわ!あんな風に女性の腰に手を回したり、髪の毛触ったり、後ろから谷間でも眺めてたんでしょ!・・・と不機嫌さMAXでズンズンお庭を歩いていると、カメラマンさんに「行き過ぎ、行き過ぎ!」って止められた。あぁ、撮影だったと思い出して顔をパンパンと叩き、気分...
9月後半になると出掛けて行う茶会も増えてくる。だからドタバタしているうちに10月になり、その間に何度か一颯には会えたが遊んでやる時間はあまりなかった。つくしの話だと夜泣きは1週間ほど続いたが、今では随分と落ち着いたよう・・・時々俺について「今度はいつくるの?」なんて聞いてくるらしく、それはそれで嬉しかった。同時に片山の事を聞いてくるのかと尋ねると、それはないらしい。あの子の中で「忘れるべき出来事」と...
チャペル内での撮影が終わったけど、最後の方はどんな顔してたのかも覚えてない・・・。夏目さんにもカメラマンさんにも色々言われた気がするけど、その言葉さえ・・・・・・そして今から2着目のドレスに着替えるんだけど、それよりも気になるのは花沢さん達の撮影。あの色っぽいモデルさんとどんな風に撮るんだろう?花沢さんがリードするとは思えないから、あの女の人がグイグイ行くのかしら・・・・・・うんっ!!何も言わずに引っ張られてい...
田園調布での初めての朝・・・・・・私はほぼ寝られなかった。何故なら珍しく一颯の夜泣きが酷かったから。このマンションは防音対策も万全だから隣のことを気にしなくてもいいとは言われたけど、それでも気になって夜泣きの度に抱っこして宥めてた。いつもこんな風に泣く子じゃないけど、流石に色々あったから・・・・・・「・・・おかげで今はまだよく寝てるわ・・・・・・このまま寝かせといた方がいいよね」辛そうな顔で爆睡中の一颯・・・私も疲れてた...
俺の目の前で「離婚」していった2人・・・・・・担当の石川がオロオロしながら「旦那」を追いかけていくと、残ったのは妖艶な「奥さん」。さっきとは違う、スレンダーなウエディングドレスだったけど、デコルテや背中などに透け感のあるイリュージョンレースを使ってるからすごくゴージャスに見えた。・・・・・・もちろん、ボディそのものがゴージャスなんだけど。「ねぇ、私の相手役になってくださるわよね?私はモデルの美里亜🧡あなたも東...
宗家に戻ったのは真夜中だった。当然光翔は寝てるし、他の奴らもほとんどが就寝・・・ただ裏口から入ると、志乃さんが出迎えてくれて、小さな声で「一颯君は大丈夫でしたか?」と。「・・・・・・まぁ、理解出来ねぇよな・・・・・・すんげぇ泣かれたわ」「・・・しょうがないですわね」「でもあいつ(片山)のことを”悪いことをした人なのか”って聞いてきたから、それだけでも助かった・・・・・・」「そうですね・・・・・・良い人のままにしてはおけませんから...
控え室をソロソロと出たんだけど、こんなフワフワなドレスは初めてで歩きにくい・・・。グアムのドレスはストンとした感じだったから足に引っ掛かるものはなかったけど、このドレスは中のパニエがモサモサしてるし、裾を踏んで転けそう・・・ちょっと摘まんでるんだけど、それでも危なっかしくて・・・「くすっ・・・」「あっ///、すみません、慣れてないので」「いやいや、初々しくて可愛いなって」「そんなっ///!!」隣の夏目さんがそんな風...
役所の時間外受付窓口に離婚届を提出し、3人で田園調布のマンションに戻ったのは18時過ぎ・・・すでに疲れを見せている一颯を俺が抱っこして部屋に入ったが、その時も特に嫌がる様子はなかった。夕食は途中に買ったからつくしが準備する必要はなく、一颯を降ろすとすぐにそれらをテーブルに並べた。俺がグラスを出し、買ってきたお茶をつくしがそれに注いでいたが、一颯は黙ったまま母親の服を掴んで離さない・・・時々振り向いてだれ...
ちょっと待って・・・・・・こんな撮影の時って、そこまで感情移入しなきゃいけないの?!ドラマとか映画とか舞台とかなら判るよ?でもパンフレットの中の「花嫁と花婿」なだけだよね?ぎこちない笑顔を幸せそうに見えるように撮るのがプロのカメラマン、それだけだよね?!私、モデルの代役ってだけだよね?花沢さんが「花嫁の経験豊富ですからなにしてもいいですよ」なんて付け加えてないよね?!「あのモデルさんの2着目のドレスって...
俺からすると随分とお人好しな言葉・・・それもつくしらしいと苦笑いしながらドアを閉め、俺はつくしの肩を抱き、志乃さんは放心状態にも見える一颯を抱っこして駐車場に向かった。そこで3人には先に車に乗っておくようにとキーを手渡し、俺は待機していた美作情報部の男のところに向かった。「お疲れ様です、西門様。総て終わりましたか?」「あぁ、俺たちは牧野の勤務先に立ち寄ってから田園調布に戻る。悪いけど、あとの事は任せ...
「1番初めはこのドレスです。撮影はチャペルでの挙式中を想定して行います。2番目がミニ丈のドレスで、こちらはお庭での撮影になります。3番目のカラードレスはガーデンウエディングでお友だちと家族に囲まれているってイメージの撮影をします」「は、はい・・・」「牧野さんにはホントに急で申し訳ありません。でも夏目君には細かく説明しているので、彼がリードしてくれると思いますよ♪」「はっ///はいっ!!」「では、もう少し...
「総二郎から全部聞いたの・・・一颯にまで手を出そうとしてたなんて、私絶対に許さないから!」「・・・実験台のクセに・・・!」「きゃああああぁっ!!」片山はいきなりつくしに向かって突進し、つくしは両手で自分の頭を覆って防戦。そんなつくしの服を掴んで意味不明な言葉で罵っていたが、俺はグッと堪えて手を出さなかった。何故なら・・・この状況を作り出すのが目的だったから。「パパ、やめて!!」その時に一颯が志乃さんの腕から強...
「今日の牧野さんのお相手のメンズモデルはこの人です♪夏目彪我君。なかなかのイケメンでしょ?」廊下を歩いてると正面から歩いてきた男性・・・すでに衣装に着替えていたのか、タキシードを着ていた。しかもメンズモデルという言葉にドキドキし、よく見ると・・・冗談抜きで超格好いい🧡背は高いしサラ髪もツヤツヤで、強気な男って感じ🧡スリムなのは勿論だけど、足なっが!!腕もなっが!!この廊下がランウェイですか!って感じ🧡ニコッ...
翌朝、総二郎から聞いた通り志乃さんが迎えに来てくれた。旅館の皆さんへの説明としては”新しいアパートを借りることが出来て、西門の弁護士さんが間に入ってくれて離婚の手続きに進んでる”とのこと・・・まぁ、似たような感じだけど、それを女将さん達は喜んでくれた。騙してる感があって心苦しいけど、この時は何度も礼を言い、数日分の宿泊料金を払って旅館を後にした。そして志乃さんが案内してくれたところには総二郎が待ってい...
石垣島に到着したのは10時過ぎで、その頃には花沢さんも目が覚めてた。そしてやっぱり大欠伸・・・それを見ないフリして飛行機から降りて、1歩空港の外に出ると今日は天気が良くて・・・・・・「暑っ!なにこれ、夏じゃん!!」「そりゃそうでしょ。南の島だもん」「半袖で来れば良かった~~!」「服なんていくらでも買えるから心配しないで」「・・・・・・・・・・・・」だよね・・・この人は旅行先で全部買う人だもんね。でも上着を脱げば問題ないか...
「いっくん、今日は良いお天気だね~~~」「ほんとだぁ♪お外で遊びたいなぁ~~~」「・・・そうだね、行こうか?」「ほんと?!やったぁ!!」翌日、総二郎の言葉に安心したこともあり、プール熱のせいでずっと室内にいた一颯と一緒に遊びに行くことにした。2人で色々考えて、決めたのはこの旅館から車で1時間足らずで行ける八景島シーパラダイス。この日は土曜日で、健太くんの幼稚園もお休みだ。だからお母さんの清美さんも子ど...
「えええっ?!また依頼が来たの?牧野さんっ!!」「・・・はぁ。今度は石垣島だそうです」17時半に戻ってきた社長に今日の事を言うと、何故かもう「良かった良かった!」って・・・話を聞く前から依頼を受ける気満々だけど、それってどうなの?なんたって「花嫁さんのモデル代役」だよ?そんな大事な役目をこの私でいいのか?と、私の方が気が重かった。それを話しても「ドレスとメイクでなんとかなるんじゃない?」って他人事みたい...
片山の話は大学時代に移った。もともと成績は悪くなかったが、特に夢も希望もなかったこいつは適当に農学部を選択した。そこで食品微生物学・応用生物科学・植物バイオシステムなどを学び、薬草に興味を持ったらしい。植物バイオテクノロジーとは植物の組織培養・細胞培養による有用物質生産、メリクロン苗の生産、細胞融合による新しい植物の作出などの技術のこと。メリクロンとは種苗培養技術の名称で、meri(meristem=分裂組織)+...
「グアム、楽しかったなぁ・・・・・・・・・もう2週間経ったんだ・・・・・・次にパスポート使う日、いつだろう・・・・・・10年以内には無理かな?」そんなことを呟きながら今日も事務作業をしていた。私は今月の売り上げがすでに3桁だから、あとはのんびりして良いって事で、社長も含めてみんな外出中。事務所にたった1人だから気合いが入らなくて、作業も滞り気味・・・こんなんじゃダメだと思うけど、頭の中に蘇るのはあの人の寝顔・・・・・・同時に”逆...
自白剤を注射されて数分後、片山はグッタリしていた。相変わらず周囲を情報部の人間が取り囲み、聞こえてくるのは小さな機械音のみ・・・「じゃあそろそろ始めるか。片山・・・何故つくしをターゲットにしたんだ?」「・・・・・・・・・・・・」「お前がつくしに薬を飲ませて操ってたのは判ってんだ。本当はつくしと関係など持ってない・・・一颯が自分の子どもじゃねぇ事も知ってて家族してるよな?」「・・・・・・・・・・・・」「こっちはすでにお前と一颯の父...
<side加代>類様がグアムからお戻りになって数日後・・・なんだか元気がないみたいで心配ですわ。でも、その理由次第では喜ばしいことなのかも?なんて考えながら、今朝も起きていらっしゃらないのでお部屋に向かっております。やれやれ・・・寝坊助の類様を起こしてくださる方がお側にいると私も助かるのですけれど~~「類様、おはようございます。もう7時ですよ?起きて朝食をお召し上がりにならないと会社に遅れますよ」・・・・・と、...
美作の鑑定施設に着くと、片山を乗せた車がすでにそこに停まっていた。インターホンを押すと、すぐに解錠されて中へ・・・出迎えに来てくれた市村が、「どうぞこの奥へ」と言ったのは、これまで入ったことがない検査室のような場所だった。パソコンだけでも数十台、化学鑑定の機械と思われるものが並び、重々しい雰囲気の部屋・・・残留農薬分析、不揮発性有機物の分析をする液体クロマトグラフや、金属元素濃度の測定、製品中の金属元素...
「それじゃあ、花沢さん。お世話になりました~~」「・・・ゆっくり休んでね」「は~~~~い♪」グマモン・・・じゃない牧野をアパートまで送ると、ドッと疲れが出た・・・それでも自宅には戻らなきゃならないし、半分閉じた目で運転・・・事故に遭わずに自宅まで戻ったら、すごく上機嫌な加代が出迎えてくれた。「類様、お帰りなさいませ~~♪夕食はお済みですか?」「・・・・・・よくわかんない」「え?ご自分の食事を覚えてないのですか?」「・・...
片山の家から自由が丘まで、車だと1時間程度かかる。俺はその間も店の中で男を睨み付け、「XYZ」に関することを聞いていた。それは数年間にわたりA国で品種改良がされ、密かに栽培されている薬草。効能はほぼシリアン・ルーと同じで、堕胎薬・崔淫剤・媚薬などに使われているらしい。幻覚成分・麻薬成分である多種のアルカロイドを含有し、でも体内に留まる時間が非常に短く、検査をしても検出されないことが特徴だそうだ。そして...
帰国当日の朝・・・一騒動あったけど、牧野も俺もシャワーを浴びて服を着替え、黙々と朝食を食べた。チャモロ・エッグベネディクトにタロ・パンケーキ、アサイボウルにキャラメライズしたバナナがのったフレンチートースト・・・朝から甘いもののオンパレードで、見るだけで胃もたれになりそうだったけど。それが終わればホテルをチェックアウトし、レンタカーで空港に向かうんだけど・・・「牧野」「なぁに💢」「まだ怒ってるの?」「怒って...
急がせていた情報屋の調査報告が始まった。それは自由が丘辺りで怪しげな薬草の売買をしている外国人がいるかどうか・・・結果として数件の情報が上がり、その中にA国の隣、B国人数名が入っていたことが判明した。そして取引しているのは中央アジアで栽培されている特殊植物の粉末で、「茶」だとされているのだそうだが・・・『本当に紅茶の一種だというものもあるようですが、中には睡眠薬の材料的なものもあるようです。自分で煎じてブ...
会長夫人にプレゼントも渡せたし、ヘンな人も消えたので花沢さんと2人・・・これはこれで楽しいな~と思い、それからは会場の中でお料理を食べたり、シャンパンを飲んだりしてた。花沢さんも珍しくお料理に手を出してるし、そんなに話しかける人もいなくて邪魔も入らず♪「教わったマナーなんて必要なかったね」って言うと、クスクス笑ったり。「それにしてもクルーズ船で話しかけてきた女の子達もリアムさんもいないけど、みんなこの...
篤志さんの電話を着信拒否し、LINEもブロックしてるから連絡がないのは当然・・・あの人がどんな気持ちで1人で過ごしていたのか、それを考えると胸が痛かったけど、それは「悪いことをした」という感情ではなかった。この4年間、私にしてきたことを考えると許せない気持ちの方が強かったから。胸が痛いのは、彼が一颯を可愛がっていたからだけど、それも今となっては「愛情」だったのかも判らない。とにかく、今後篤志さんと会うこ...
「君は誰だ?俺はつくしさんと楽しい時間を過ごしてたのに、邪魔しないでもらえるかな」「・・・牧野は俺のパートナーだからね。見ず知らずの君と楽しい時間を過ごすわけないでしょ。君こそ邪魔だからサッサと会場に戻ったら?」「パートナー?」「そう、今はたまたま席を外してただけ。でも、退屈してた彼女の話し相手になってくれてたのなら礼を言うよ。でも、もう大丈夫だから」「・・・・・・ふん!それなら早く言えばいいのに・・・」そう...
その旅館に着いてから1時間・・・やっと少しは落ち着いたけど、まだ総二郎からの連絡はなかった。会食だと言ってたから来ることはないだろうし、私は「西門の元従業員」って設定だから宗家の、しかも若宗匠に会えるはずもない。でも声だけでも聞きたいと、スマホが手放せなかった。「ママ・・・いつおうちに帰るの~?あした~?」「・・・いっくん・・・ごめんね、しばらくは帰れないのよ」「どうして~?パパ、おなかすくよ~?」「・・・・・・・・...
「・・・・・・・・・はぁはぁ・・・・・・まだ28階・・・・・・あと4階もあるの・・・」ここは南国の島・グアム・・・夜だからって気温が低いわけじゃない。そんな中、スーツを着て非常階段を上がること数分・・・体力にはそこそこ自信があった俺だけど、流石に汗がポタポタと落ちて息切れが・・・。こういう時に高層階は困ると痛感・・・もう足をあげるのも辛かった。でも早くプレゼントを持って会場に帰らないといけないので、グッと顔を上げて・・・「・・・と言うか、...
総二郎の声を聞いてるときは1人じゃない気がして良かったけど、電話を切った途端にまた心細くなった。リビングからは一颯の可愛い笑い声が聞こえるけど、それが逆に恐怖に思える・・・もしも今夜も篤志さんがあの表情を見せてきたら、もしもまた何かを飲まされたら・・・もしかしたら違う成分の薬だったらどうしよう・・・それを私だけじゃなく、一颯に使ったら?どんどん悪い方に考えてしまって何も出来ない・・・一颯が気になったのか私のと...
牧野を連れて今日のパーティー会場に行くと、そこにはもう沢山の招待客が入っていた。しかも着席タイプではなく、立食の様子・・・これも少しは練習してきたはずだから、牧野も問題ないと思うんだけど・・・と、隣をみたけどイマイチ不安そう。とはいえ私的なパーティーだけあって堅苦しい雰囲気ではなく、時間が来るまでみんな会場の隅で談笑中。やっぱり俺の知ってる人は1人もおらず、かと言って俺に話しかける人もおらず。篠田会長は...
「俺の部屋で何をしてるの?」「えっ・・・あ!」「珈琲を落とすほど動揺して・・・・・・あ~あ、床が粉まみれだ」「ごめんなさい!すぐに拭くから・・・・・・コーヒー豆、まだ予備があるから、す・・・すぐに淹れるね!い、一颯はもう起きてるのかな、篤志さん、見てきてくれる?」「で・・・俺の部屋で何をしてるの?」2度目の質問・・・やっぱり上手く誤魔化せなかった。でもここで正直に話すことなんて出来ず、精一杯の演技で「洗濯物を置いただけだ...
メイクが終わったら今度は髪のセットに入った。ドレスがホルターネックだから首元が鬱陶しいとのことで、アップにすることに。ふんわりと纏めてピンで留め、ドレスがアプリコットオレンジだから髪には白いハイビスカスを挿すことになった。「ハイ、コレデカンセイデスネ~~♪ドウデスカ、オジョウサマ」「は、はいっ///可愛いと思います」「ダンナサマモミテクダサァ~~イ」「旦那様///?!」メイクの人が花沢さんに向かって「旦...
つくしから自由が丘のフレグランス専門店の話を聞き、自分でもそれを調べてみた。だがそんな店はネットでは見当たらない・・・故に胡散臭さが増していった。でも現地で俺が調べるのは難しく、そういうことこそ情報屋の方が詳しいというもの・・・と言うことで、今は孝三郎の事故を調べさせている情報屋に連絡を取った。村上のことを一旦置いといて、自由が丘で妙な動きをしている奴らを探せ、と。『は?妙な動きって・・・なに言ってんです...
なんとか無事にビーチに辿り着き、花沢さんが前屈みになって浮き輪を戻しに行ってくれた。私は泳いでもないのに疲れまくり、パラソルの下にあったビニールの椅子に座ってだら~~~んとして・・・そうしたら花沢さんがすごくカラフルな飲み物を持って来てくれて、それを飲みながらしばらく海を眺めてた。ホントにキレイなエメラルドグリーンの海・・・そして白い砂浜。少し横を見れば椰子の木・・・絵に描いたような南国の島🧡「はぁ・・・楽し...
それからすぐの土曜日、一颯が熱を出してしまった。保育園からの知らせでは咽頭結膜熱(プール熱)に罹ってた子がいたとのことだったので、急いで病院に連れて行ったら、一颯も感染しているとのこと・・・明日は篤志さんの会社のバーベキューだったので、それに行くことが出来なくなった。一颯は泣いてたけど、私としては助かる・・・そんな事は言えなくて、篤志さんには1人で行ってもらうことにした。「うん、それは良いけど・・・可哀想...
ペダルボートを引っ張るのも恥ずかしかったけど、浮き輪を持って歩くのは尚更恥ずかしい・・・180センチ超えの俺がこんなピンクの浮き輪持つなんて、まるで変態・・・なんて考えてるうちにビーチまで10メートルぐらいのところまで来てしまった。その時に波の音に紛れて「花沢さ~~~ん!」って聞こえた気がして・・・でも金髪男と遊んでる牧野なんて知るものか!と思って振り向かなかったら・・・「花沢さぁ~~~~ん!待って~~!」何...
9月に入って1週間が経ち、私は勤務先に退職願を出した。パートであっても2週間前には申し出しないといけないって規則があったから、退職希望日は9月末。主任には「どうしてもやめるの?」と残念そうに言ってもらえたけど、総二郎が動き始めたから、いつ私たちが篤志さんから離れるか予想が付かない。もしかしたら9月の末までに決着が付くかもしれないけど、その時はその時・・・・・すぐに引っ越しできるような状況になっておかな...
「すごく可愛い子が1人きりだから気になっちゃって。俺はジョージ。君は日本人?」「・・・・・・・・・・・・」「ねぇ、良かったら向こうのボートに乗らない?それかシュノーケリングとか興味ない?名前教えてくれる?」「牧野・・・つくしと申します。日本人です・・・」えええええぇ~~~~~!!すんごい日本語が上手なんだけどーーーっ!!そしてこれは海上ナンパですかーーーっ?!しかもジョージ・・・頭の中には「お○るのジョージ」しか出てこ...
「えっ!!また仕事を代わってくれって?」「そんなにデカい声をだすな、孝三郎」「でも最近多くないか?そりゃ数年前は総兄に迷惑かけたけどさ~」「・・・・・・・・・悪いと思ってる」「総兄?」喫茶店・「陽だまり」に行く日・・・それは矢野有紀の都合で午前11時。今では親父も宗家以外での仕事も出来るから、今日はお袋を伴い横浜に行っている。だから俺が出掛けるには都合が良かったんだが、その時間に数件の稽古があった。それを孝三...
「花沢さん♪あのボートも使っていいの?!浮き輪ってないのかな~~🧡きゃああああぁ、見て見て!魚が泳いでる~~~~!!」保護のためのマリンシュースを履き、白い砂浜の上をぴょんぴょんしながら牧野が海に入り、俺は静かにその後ろを付いて行った。そこまで混雑してないけど、それなりに泳いでる人はいるし、当然その中には男もいる・・・そして大胆な水着のボリューミーな女性もいるから、牧野は「安全」だろうと思ってた。それ...
市村からの連絡を待つ間、俺は自分で片山のことを調べることにした。情報屋でも良かったが、自分で聞いて回る方が欲しい情報が手に入る気がして・・・幸いにも文化協会繋がりでK大卒の知り合いも多いし、そこから片山と同期の人間を紹介してもらうのは簡単だった。一流商社に勤めるその男と接触し、まずは片山と親しかった人物を教えてもらうことにしたが、その理由は勿論作り話だ。「片山篤志にどうしても直接会って礼が言いたいが、...
翌日の朝、私はすごく気不味く起きたのに、花沢さんはいつもと全く変わらなかった。それをどう受け止めていいのか・・・ホントに忘れられたのかと思うと悲しくなった。顔を洗い、鏡を見ながら・・・「でも無理ないよね・・・私が男でもこの身体には興味湧かないと思うもん・・・」寸胴・電信柱・まな板・・・これまでいろんな人に言われてきた私の身体。貧相この上なく、今時の中学生のほうが色っぽいと言われたし、酷い時には小学生に負けてると...
総二郎が見せてくれたマンションのパンフレット・・・低層階レジデンスって書いてあって、すごく素敵でオシャレな建物だった。エントランスも広くて緑が多く、世帯数も全部で12しかなく、間取りは4LDK+サンルームなんだけど、ひと部屋がすごく広い。この人が決めようとしているのは3階で、下の階の屋根部分を利用したルーフバルコニーがあった。その間取り図を見ながら新しい生活を想像するのはワクワクする・・・総二郎と同じ部屋...
ーーー牧野、水飲まないとーーーう~~~~~~ん・・・・・・頭がクラクラする・・・確かに水は飲みたいけど・・・・・・勝手に飲ませてくれたら助かるんだけど・・・ーーーバカ言わないでよ、ほら、起きて自分で飲みなってーーーそうしたいけど手が動かないのよ・・・なんか、身体に巻き付いてて・・・これ、解いてくれないと困るんだけど・・・・・・ーーー解いても良いけど、俺も困るしーーーう~~~~~ん・・・・・・てか、暑いんだけど・・・ここ、どこ・・・・・・まる...
9月1日、この日もいつも通りに篤志さんは出勤していった。「今日は帰りが遅くなるから夕飯はなくていいよ」「残業なの?」「いや、昨日突然決まったんだけど、中途採用した社員の歓迎会があるんだ。ほら、うちの会社の近くに美味い中華料理の店がオープンしたって言っただろ?そこにみんなが行きたいって言ってさ」「あぁ~~、そんなこと言ってたね~。いいなぁ~、今度一颯も連れて行きたいなぁ~」「あぁ、近いうちに連れてっ...
サンセットディナークルーズ・・・もっと優雅で楽しいと思っていたのに、何故か壊れたドアがある狭い部屋で終点を迎えようとは。私はその部屋で髪を整え、花沢さんはスタッフさんに壊したドアのことをアレコレと説明していた。英語だから判んないけど、そのスタッフさんはドアを眺めて目がテン状態。壊した本人の方が態度デカくて、説明し終わったあとで聞いてみると・・・「えっ?!私がこの部屋で襲われそうになったことを言ったぁ?!...
8月の後半・・・あれから総二郎はお盆時期に京都に行ったり、茶会こそ少ないようだけど会合が続いたりと仕事が忙しかったために連絡はあまり取れなかった。LINEは小忠実にあるけど、万が一誰かに見られちゃ不味いから挨拶程度・・・今は総二郎がスケジュールの調整をして、私と会う時間を作ってくれるのを待っている状態。「ねぇ、つくし」「はい?」「9月の第2日曜日、会社の連中とバーベキューするんだけど、一颯と一緒に行かないか...
ホントにムカムカする・・・これはお酒のせいなのか、それとも食べ過ぎなのか・・・・・・それとも・・・なんていろんな事を考えながら船内の通路をリアムさんの誘導で歩いていた。と言うか、この人は船内の何処に何があるのか知ってるのだろうか・・・?それとも船なんてどれも作りが同じとか?そんな小さな疑問が晴れる間もなく、気がつけばひとつ下の階にある小さな部屋に連れて行かれた。そこは小さなベッドとテーブルと椅子があるだけの殺風...
自宅に戻ったのは22時。その頃にはもう光翔は寝ているはず・・・離れに入り光翔の部屋のドアを静かに開けると、やはりてベッドで寝息を立てていた。そこに近寄り顔を覗き込むと、寝返りを打って俺の方に身体を向けた。ふっくらした頬にさらさらの髪・・・その髪を撫でてやった。「・・・・・・・・・ん・・・」「・・・光翔・・・・・・・・」血の繋がりがないとは言え、可愛らしいと思う気持ちに変わりはない・・・それは俺が血に繋がりのない親父を見ても、憧れ...
リアムさんと一緒に船内の会場に戻ろうと思い、手すりから離れてドスドスと花沢さんのところに戻った。そして背中側から「お楽しみのところ、失礼します!」と言うと、彼はいつもの真顔で振り向いた。でも、間近で見たお姉さん達の美貌と言ったら・・・悔しいけどめっちゃグラマーですんごく綺麗!!同じようなリゾートワンピなのに、こうも印象が違うとは!!しかも青い目に金髪ってだけで色気が半端ない・・・どうして外国人ってこんな...
美作の鑑定施設に着いたのは19時少し前。そこはまだ明々と電気がついており、駐車場にも車が数台あった。インターホンを押すとすぐにドアが開き、先日の検体採取に付き合ってくれた女性が出迎えてくれた。ここでもあの時の礼を言うと、「一颯君のことは良かったですね」と微笑まれ、俺は中に通された。入った部屋は殺風景な応接室で、1人座ってい待っていると、2~3分で市村が封筒を持って入って来た。「わざわざ来ていただい...
牧野のお腹の中にどんどん入っていく料理とシャンパン・・・相当気分良くなってるな?って思ったら、そのうち夜景を見たいと言いだした。夜景ならデッキの中央にあるテーブルからでも見えるのにと言うと、「目の前に障害物がない状態で見たいの!」って・・・俺が障害物だとでも?💢とムカついたけど、すぐにリアムが牧野の手を持ってデッキの端に向かった。それにくっついていくもの癪に障るので無視・・・そうしたら牧野とあいつはキャアキ...
総二郎が新しいバイクを手に入れてから数日後のことです。あきらは花を売りながら真剣に考えていました。そして泉のある山の方を見て、深い溜息を吐きました。「どうしよう・・・・・・俺も行こうかな・・・」あきらが手に入れたいのは少し淋しくなってきた髪を誤魔化すための「ウィッグ」です。実は数年前から「前髪用ウィッグ」を愛用していたのですが、それが古くなってきたのと、頭頂部も怪しくなってきたので頭頂部から誤魔化せる大き...
昔々、ある村に4人の若者が住んでおりました。木こりの類、茶畑で働く総二郎、花屋のあきら、そして金貸しの司です。仕事はバラバラですが、みんな同じ歳で仲が良く、休みの日にはいつも一緒に過ごしていました。そんなある日、木こりの類が木を切りに山に入ります。「さてと・・・今日こそここの木を切って隣町のタマさんに届けないと怒鳴られちゃうし、駄賃をもらえない・・・そろそろお金もなくなるし、がんばらないとお米も買えない...
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山本のところに行ってから2日後、書斎で仕事中に西村事務長から「口切りで祝いをくれた人達への礼状の発送が終わった」との報告を受けた。その時、「あの方はどうしますか?」と言われたので手を止めると・・・「あの方?」「総二郎様がご自分でお礼を言いたいと言われた神楽木様ですよ」「・・・あぁ、親父の友人の・・・」「はい。ですからお礼状は出していませんが、ゆっくりしてるとすぐに日が経ちますので・・・」「そうだったな・・・住所...
「これ、どういうつもりでプレゼントしてくれたの?」「どういうつもり・・・とは・・・・・・ああああああぁーーーーっ!!」そう・・・俺が牧野に聞きたかったのはペアのルームウエア(パジャマ)のこと。どうしてこんなものを「家で見ろ」と言って渡したのか・・・実は俺に恋人がいると思って渡したのだとしたら、俺の朝の発言が超絶恥ずかしいことになる。でも牧野は俺にそんな相手がいないことを知ってるはずだし、全く意味が判らない。同サ...
山本のマンションを出て鑑定施設に戻ったのは16時。そこに車を駐めていたからで、濱崎の車が戻った事に気がついた市村が外に出て来た。そこで俺ではなく、濱崎が山本の証言を掻い摘まんで説明し、市村は20年近く前の検定結果が外部に漏らされたことを聞いて驚いていた。同時にそれがあきら経由で俺が依頼した、自分の父子鑑定であることも知ることになり・・・「・・・そうなんですか?私はそのころからここにいましたが、責任者では...
牧野が着替え終わって出てきたのは17時。これまでに何度もドレスアップした姿を見てきたから驚くことはなかったけど、今日のは一段と可愛く見えた。両サイドから編み込んだ髪をふんわり纏め、そこにパールのピンをいくつか挿してる。メイクはピンク系、ヒラヒラしたデザインの袖から白い腕が出てて、裾に鏤められたラメレースがキラキラして・・・「類様、こんな感じに仕上げましたけど、いかがでしょう・・・?」「・・・うん、素敵だと...
まさか、この男が美涼に俺の出自の秘密を伝えていたとは・・・俺の知らないうちに検体を取られ、それと照合されていたとは思わなかった。濱崎もこのことは知らなかったので驚いた顔をしていたが、今更知られても問題はない。それにこの人は信用できるので、「今はまだ誰にも言わないでくれ」と囁くと、それに軽く頷いてくれた。それからまた山本の説明は続いた。「・・・子どものデータが西門様なら、もうひとつは家元になる。それが親子...
三毛猫の手に寄ってから会社に行ったんだけど、その途中頭が真っ白だった。牧野に何を言ったのか・・・もちろん全部覚えてる。牧野の驚いた顔・・・信じてなかったみたいだけど、俺、ちゃんと本気だって言ったよね?牧野が何か言ってたけど、何だったっけ・・・・・・何かが違うみたいなことを・・・そんなことを考えていたら会社に着いて、俺は急いで執務室に向かった。この時も社員達から何か言われたけど返事もせず、正面にいた社員が飛び退い...
俺と美涼が結婚していたことも知らない。西門邸には1度も行ったことがないと山本は言い切った。「彼女があなたと結婚していたことなんて知りませんよ。桜井家とは縁がないのですから」・・・と。山本は美涼との関係を完全否定。それならと、今度は俺ではなく濱崎がカバンからある物を取り出して山本に見せた。それは綿棒のような検体採取キット・・・あの施設にいた山本にはなんのための道具かすぐにわかっただろう。「じゃあ、お前の口...
『今、あんたの会社の駐車場に居るんだ!話があるから出てきて欲しいんだけど!早く!!』「へっ?あ、は、はいっ!すぐに行きますっ!!」いや、ぜんぜんわかんないんだけどっ!!いったい何があったって言うの?!何故こんなに朝っぱらから花沢物産の専務さんが来てんの?!会社はどうしたーーーーーっ!!電話を切ったら社長達に何も言わず、急いで裏の通用口に向かった。そこで勢いよくドアを開けると、白い8000万円が停ま...
口切りが終わると宗家は静かになる。年内に大きな茶会はなく、俺たちの仕事はのんびりとしたものに・・・だが親父とお袋は年末に向けて地方支部へ出掛けたり、孝三郎は茶道教室のイベントなんかが増える。だから俺が宗家の仕事を任されることが多かった。この状況下で助かるのは、俺が外出しやすいと言うこと。親父達が不在だから口煩く言われることがない。丁度今日は親父達が不在で、孝三郎も夜の会食までずっと出掛けている。だか...
牧野のクリスマスプレゼントに悶々としながら一夜を過ごし、気がついたら朝になってた。いつもより更に開かない目でダイニングに行くと、朝っぱらからイルミネーションを点灯させたツリーが・・・それに若干イラッとしながら席に着くと、目の前では今日も元気な母さんの甲高い声が・・・「山下部長のところはお孫さんが生まれたらしいわ~~、羨ましい~♪」「香坂本部長の娘さんもご結婚らしいから、お祝いを送らないとな」「生まれたて...
口切りの茶事当日、朝から宗家はドタバタしていた。親父と俺は露地の掃除や茶室の確認をし、お袋達は茶懐石の確認、志乃さんは全国の支部から届く祝いの品などを大広間に並べていた。そのお礼をするのも俺たちの役目なので、茶会の前に全員でそれを確認するのが慣例。この茶事に全支部を招くことは無理なので、毎年選ばれた支部長しか招待しないからだ。それに招待したが都合が悪くて欠席する人、昔から懇意にしている取引先などか...
「じゃあクリスマスプレゼント、渡すね♪」「えっ?!」「・・・そんなに驚くこと?」「いや///花沢さんにそんな気遣いがあるとは思わなくって!」・・・なんて失礼な言い方するんだか。確かにクリスマスプレゼントをわざわざ用意したのは初めてだけどさ。今まで椅子の背もたれに隠してた袋を取り出すと、牧野は「え!ずっとそこにあったの?」って目がテン。でも驚くのはまだ早い・・・「俺が作ったんだよ」と言うと、元々大きな口を更に大...
ド派手な女物の服が散らかっている部屋、その真ん中に踞った村上にエアガンを押しつける俺。この状態で村上は美涼との取引について話し始めた。驚いたことに、それは俺と美涼が見合いをする前のこと。繁華街のど真ん中で借金取りに脅されている村上に、声をかけて来たのが美涼だと言った。そのまま個室のあるBarに連れて行かれ、そこで故意に事故を起こすような依頼をされたのだとか・・・しかも初めの依頼は孝三郎ではなく・・・「は?...
手首が赤いことに気がつくなんて・・・なんて目敏いの!!普段から無関心なんだから、そこは無視してよーーーーっ!!化繊負けでも静電気でのないの・・・・・・ダニなのよ!!でも花沢さんの前で「これ、ダニに噛まれたんです」って言えないでしょ?!ダニが居る場所から来た女なんてイヤでしょ?!加湿器も要らないし、ローションも必要ないの・・・・・・欲しいのはステロイド外用剤なのよっ!という心の声は置いといて・・・今日の花沢さんはダー...
翌日の朝食時、親父とお袋はまだ機嫌が悪そうだった。当然美涼もおとなしくしていて、静かな時間・・・光翔も周りの大人の顔色を窺いながら食っていた。そんな中、孝三郎が少し左手を気にしており、俺が「痛むのか?」と聞くと・・・「昨日の長時間の野点で疲れただけだって・・・寒いときはやっぱり疼くんだよな~~」「そうか・・・無理すんな」「気持ち悪っ!総兄が優しいこと言うとコワいわ~~!」「なんだと?心配してんのに!」「ははっ...
事務所に戻ったのは18時30分・・・その時は全員埃まみれで真っ黒クロスケだった。しかもみんな何処かしらが痒くて、掻きまくって血が出るほど・・・加藤さんなんて首が真っ赤に腫れてて、ダニじゃない害虫にやられたんじゃないかって話にまでなって・・・よくあんな家にお婆ちゃんが1人で住んでたよね?ってか、病気になったのはそのせいじゃないの?!貧乏で古い家だったとしても、掃除だけはしていた私・・・だから今でも外観はとんでもな...
山本啓介への疑念を抱いたまま10日間が過ぎた。何も動けなかったのは野点の準備、炉開き、口切りの茶事の打ち合わせが続いたから・・・これも後悔のないように終わらせたかったため、この期間は茶道に集中することにしたのだ。そして少しでも時間があればつくしと一颯のところに行き、穏やかな時間を過ごす・・・つくしには山本の話はしたが、茶事への思いも話していたため、時間が掛かることは納得してもらえた。その間につくしは一颯...
翌日の朝、ダイニングは賑やかだった。いつもなら俺が1人で静かに珈琲を飲むだけなのに、今日は父さんと母さんも居て、朝食のメニューもホテル並み・・・これでもか!ってぐらいの料理が並べられ、それを両親は「美味しいわね~」と言いながら食べてた。「フランスの朝食って甘いでしょ?私は長く住んでるけど、あれはダメなのよね~」「私は毎日同じというのがイヤだな・・・それにタルティーヌは今でも食べられないよ」「・・・シェフが作...
「以前、ここで見た手袋の男の事だが・・・」「あぁ、彼のことですか・・・何か気になることでも?」「偶然かもしれないけど、美涼が光翔を生む少し前に病院に手袋をした男が現れたって聞いたんだ。季節的に手袋してても問題ないんだが・・・その男、俺がここに来たときにジッと見てきたってのもあって少し気になるんだけど」「・・・・・・・・・そんなに西門様を見ていたんですか?」「何か言いたいことでもあるのかと思ったぐらいだけど、目を合わ...
ロビーに降りたらすでにそこには部長達が並んでた。いつの時代だ?って思うような出迎えぶりに辟易・・・・・・当然俺はその最前列に立つこととなった。秘書課も全員降りてるし、そんなことで事務所はどうすんの?って感じ・・・でも意見したら藤本に殴られそうだったんで黙っておいた。そうしたら2台のタクシーが到着して、1台目からは父さんとその秘書軍団、もう1台からは母さんとその秘書軍団が降りてきた。途端に緊張感が走り、業務...
浦田に言われた場所に着いたのは17時過ぎだった。類が浦田に直接会うのは今日が初めてで、タクシーから降りても何処に彼がいるのか判らず・・・コーポ坂井と書かれたアパートの前で、その建物を見上げていると1人の男が駆け寄って来た。「花沢さんですか?」その聞き慣れない声に振り向くと、中年のボサッとした男が目深に被った帽子の下で鋭い目を光らせる。「あんたが浦田?」そう尋ねると軽く頷き、辺りをキョロキョロしながら...
「待ってたわ~~~、さぁ、入ってちょうだいな」「お邪魔します・・・」「お袋、時間ねぇから早くしろよ」「判ってるわよ、せっかちねぇ、総二郎さんは!」西門さんと一緒に家元夫人の部屋に行くと、そこはやっぱり豪華な・・・と言うか、想像通りの超高級旅館仕様だった。しかも良い香り・・・複雑な模様の和箪笥にお洒落な1枚板のテーブルにはお花が飾られてるし、衣桁ってのがあって、そこには着物が掛かってた。しかもお部屋は奥にも...
夕暮れが近付いた空・・・下降する飛行機に真音が大きく手を振っていた。それが滑走路に着くのは見ることが出来なかったが、そろそろ門司に向けて出発しても良い頃だろう。つくしは真音を車に乗せ、新門司までのルートを確認・・・日出IC(ひじインターチェンジ)に向かい、そこから東九州自動車道を北上し、北九州JCTで九州自動車道に入り新門司ICで降りる・・・途中何度か休憩を取ってもフェリーの乗船時間には間に合いそうだ。これから2...
翌日の朝食時、西門さんが家元と家元夫人に、昨日の夜に話したことを伝えた。私が暇だから何かお手伝いさせて欲しいって事・・・そうしたら初めは「そんな事しなくていいからゆっくりして!」って言っていたけど、彼が「それが苦痛だっての!」って説得。話し合いの結果、お2人が許可してくれて、西村事務長さんの補佐で事務処理をする事となった。仕事内容としては後援会名簿のパソコン入力とか、会社で言う「総務系」の仕事。ずっ...
土曜日・・・朝から大分に行くつもりだった類の誤算は、前日来日したアメリカの取引先の要望で、昼までの時間を奪われたことだった。それは観光などではなく商談だったために受け入れるしかなく、午前中を花沢物産の役員会議室で過ごすことになった。「専務、そのような恐ろしい顔をしないでください」「してないよ・・・君がそう思うだけだろ」「・・・相手の社長もチラチラ見ていましたよ。特に専務は表情が伝わり難いので、少しは考えて...
勝手に会議室から出ていった野久保課長・・・💢一体なんだったんだ?!と腹は立ったが、真理子さんの事を話さなくていいのなら助かったとばかりに私も会議室を出た。そうしたらあの人はもう業務に戻っていて、私の方には目も向けない。涼子達には「何かあったの?」って聞かれたけど、「別に何も~」とだけ言って、業務終了後にはさっさと帰ることにした。更衣室から出たら野久保課長以外の課長と、部長には深々と頭を下げ、「次に来る...
金曜日になった。今日はつくしの引っ越し荷物を出す日で、朝から最後の荷物詰めでてんやわんやしていた。真音はいつもと違う様子に落ち着かず、つくしの服を引っ張って離さない。それがとても邪魔だったのだが、そんな事を言えるはずもなく・・・♪~♪~~「もしもし、本郷さん?」『引っ越し始まった?』「いえ、あと1時間ぐらいしたら引っ越し業者さんが来るんですよ」『じゃあ今から行くから、真音君を連れ出していい?』「え!真音...
「つくしーーーーっ!あんた本当に事故ったの?!」「牧野先輩、大丈夫なんですか?!」「その顔、どうすんのよーーーーっ!」「顔は死守しなきゃでしょうが!」「・・・おはよう、みんな・・・心配してくれてるのかどうか判んないけど、なんとか生きてるわよ」野久保課長を放っといて、急いで更衣室に入った途端、全員に叫ばれた。そりゃ頭に包帯巻いた人間が出勤したら驚くのは納得・・・こんな格好で仕事する方がヤバいって言われれたの...
数分後、それまで握り締めていたスマホをしっかり持ち直すと、すぐに電話をかけた。相手は別府で調査中の浦田。すぐにでもこの情報を教え、調べるように言うためだった。それは3コールめで繋がり、浦田は疲れたような声で『もしもし・・・』と気怠そうに電話に出た。そしてすぐに『そう急かされてもねぇ~』と言ったのだが、その言葉を最後まで聞かずに類が声を張り上げた。「明日、A町の○○保育園に行ってくれないか!」『えっ・・・・・...
「これで今日の稽古は終り・・・本気が伝わったか?」「・・・・・・はい。どうもありがとうございました・・・」今日も苦かったんだけど、少しは慣れてきた薄茶。本当言えばお菓子が後で、この苦さを打ち消したいんだけど・・・それを言ったら確実に怒鳴られると思い、黙っておいた。ただ、もう少し話をしてみたい・・・そう思ったから、片付け中の西門さんに「ちょっと聞いてもいい?」と言うと・・・「まぁ、普通は稽古中に聞くもんだけど・・・牧野は初...
浦田が真音の保育園を張り込んで1週間が過ぎた。だがつくしが現われる気配はなく、俄に焦りが出て来た。それならまた演技をしてでも確かめるしかないと思い、月曜日の夕方には歩いて保育園の入り口に近付いた。そして1人の若い母親が2歳ぐらいの子供の手を引いて出て来た瞬間、小走りで近付き、明るく「こんにちは~」と叫んだ。その母親は「こんにちは~」と答えたが、見慣れない男に困惑している様子・・・警戒されないためにも...
ーー牧野の本気度が判んねぇのに、無茶は言わねぇよーーそれを言われた瞬間、何故かムッとした。「本気でやるなら俺も真剣になる。そうじゃなくて興味程度なら俺もそれに合わせるってことだ」・・・そう言ってる時もニヤニヤしてて、まるで私は後者だと言わんばかりに・・・。そりゃ、ド真剣かと言われると素直に「はい」と言えない。だけど始めてみようかなって思った事に比べると、気持ちは随分違う・・・だからあんなに頑張って野点に参...
アパートの部屋には真音が見ているアニメの声だけが響いていた。その小さな背中の後ろではつくしと本郷が向かい合って座り、そして無言・・・・・・『どうだろう・・・俺と新しい人生を歩んでいけないかな。これまでの恋を捨てろなんて言わない・・・言い方は変かもしれないけど、良いパートナーとして暮らさないか?』これまでの恋を捨てないのに、新しい人生とは?良いパートナーと言うのは夫婦ではないと・・・?そんな風に本郷の言葉を繰り返...
少しは包帯とガーゼが減るかと思ったのに、逆に増えてしまうとは・・・まさかの追加治療だったけど、その左腕部分はそんなに酷くはなかった。むしろ固定していた右足の捻挫を余計に痛めたというか・・・お医者様にもくれぐれも気をつけるように言われたんだけど、そもそも原因は隣の男だし・・・。「ほんっとにドジだな!」「・・・ちょっとぼ~っとしただけよ///」「まぁ、見えない部分で良かったけどな」「へっ?どう言う意味?」「他人から見...
21時になり、本郷が眠くなった美来を連れてアパートから出て行く時だった。つくしは自分が作ったネーム入りの通園バッグ一式を「使って下さい」という言葉と共に差し出した。それを受け取った本郷は、バッグをマジマジとみて、その名前に気が付き目を大きくさせた。「えっ・・・これ、牧野さんが?」「はい。初めてなんであまり綺麗じゃないけど、新しい保育園で使ってもらえたらと思って・・・」「・・・・・・名前がちゃんと入ってる・・・」...
「おはようございま~~~す、牧野様」誰かが呼んでる気がして目を開けようとしたけど瞼が重くて開かない・・・と言うか、あまりにも気持ちいいお布団で、この中から出たくない。私、こんな良いお布団買ったっけ・・・・・・軽いし暖かいし、もう最高なんだけど・・・「何処か痛みますか?大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・う~~~ん」「もうすぐ朝食ですよ?牧野様~~~」「・・・・・・っ!」朝食というワードでパチッ!と目が覚めた。そして1人の女...
その水曜日の昼間、つくしは本郷と連絡を取っていた。『えっ?保育園を退園する・・・じゃあ会社は?』「それも相談したいんです。すみませんが、もうあのお店で働くことも出来ないかと・・・」『そうか・・・そうだよね、真音君を退園させるなら仕方ないよね』「本当に申し訳ありません。会社の手続きは本郷課長に手続きをお願いしてもいいですか?」『うん、それは構わないけど・・・』「それで保育園に退園届を出さなくてはならなくて、でも...
「・・・・・・ったぁ・・・!」「いたたたた・・・また何処か擦り剥いたかも・・・・・・」「・・・・・・・・・えっ?」「・・・・・・・・・あ・・・」気が付いたら俺は牧野の上に重なるように倒れてて、牧野は両手広げた状態。指輪を握ってた俺の右手は床だったが、もう片方は牧野の胸の上・・・そして顔と顔は15㎝ぐらい。焦点が合わないほどの至近距離だし、牧野のワンピは捲れて太股丸だしだけど、その足の上には俺の足・・・。しかも何故か俺の左手、広げた状態で胸に...
つくしがアパートで本郷と会っていた頃、真音の保育園の近くでは車で張り込んでいた浦田がイライラしていた。それはつくしの姿が確認出来ないからで、本当言えば今日にでもつくしを直接確認して、類に報告して指示をもらうつもりだったからだ。別府に来て2ヶ月以上・・・正直こんなに早くに見付かるとは思っていなかったが、さっさと東京に戻りたいのが本音。それに成功報酬まで入れると2000万だ。早くその金を手に入れたくてウ...
なんやかんや言って私は西門流でお稽古する羽目に・・・と言うか、断わることが出来なかった。もちろん今は捻挫してるし包帯だらけだから正座しないけど、座って出来るお茶室もあるらしくて、そこで西門さんに教えてもらうことになった。「じゃあ牧野さん♪これからよろしくね~」「まぁ、ゆっくり始めるといい。総二郎、頼んだぞ」「てか牧野の姉ちゃん、俺の教室に来たら良かったのに~~」「えっと・・・まだ頭がこんがらがってるんで...