裕也氏は静かに俺の対面に座った。そしてつくしと一颯を見て優しく笑い、「息子さんはおいくつかな?」と。その言い方からして、つくしのことを美涼と勘違いしているようだった。「・・・来年4歳になります。名前は一颯と言います。隣は・・・婚約者の牧野つくしさんです」「・・・婚約者・・・?」「は、初めまして・・・牧野つくしと申します」「こんにちは~~、まきのいぶき、3歳です!」「・・・牧野さん・・・?」電話では墓参りをしたいと言う...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
裕也氏は静かに俺の対面に座った。そしてつくしと一颯を見て優しく笑い、「息子さんはおいくつかな?」と。その言い方からして、つくしのことを美涼と勘違いしているようだった。「・・・来年4歳になります。名前は一颯と言います。隣は・・・婚約者の牧野つくしさんです」「・・・婚約者・・・?」「は、初めまして・・・牧野つくしと申します」「こんにちは~~、まきのいぶき、3歳です!」「・・・牧野さん・・・?」電話では墓参りをしたいと言う...
まさかの珈琲で撃沈・・・・・・そんなに不味かったとは思わなくて、口直しに俺のロールパンを食べてる姿に吹き出しそうだった。「まぁ、子どもには難しい食べ物だよね・・・・・・」「子ども?誰が?」「あんた、まだ子どもでしょ?」「・・・・・・この世界は22歳でも子供なの?」「・・・・・・・・・・・・・・・」22歳?!俺とそんなに変わんないの?!!こんな童顔でぺったんこの胸なのに?!と言うか、平安時代ってそんな歳で入内なんてしないんじゃない...
総二郎がマンションで暮らし始めて1週間・・・今日は一颯のクリスマス会だ。いつもより少し早めに登園しなきゃいけなくて、総二郎が車で一颯を連れて行き、一旦戻ってから私と一緒に保育園に行くことにした。離婚したことも公表してないから大丈夫かと聞いたけど、一颯の通う保育園に西門の関係者はいない・・・それに姓も「牧野」だから問題ないだろうって。「パパ、ぜったいに見にくるよね?ぼく、うしろの列のまん中だから~」「後ろ...
「・・・・・・・・・・・・・」「これが現代の朝食。美味しいから食べてみれば?」「これ、食べ物なのよね?」「もちろん。俺も食べるから一緒にどうぞ」ついさっき、あの女の人が持って来てくれた朝ご飯・・・黄色くてフワフワしたもの(オムレツ)と木の枝を焼いたようなもの(ソーセージ)と草(サラダ)。それに茶色の餅みたいなのと(ロールパン)、白くてドロドロしたもの(ヨーグルト)と黒いお湯(珈琲)。どれを見ても食べ物とは思えず、...
翌朝、祥一郎も俺も一颯にたたき起こされた。つくしがクスクス笑いながら朝食を用意してくれて、7時には4人揃ってそれを食ってた。いつもは2人で食べてるのに、今日は4人・・・それが嬉しかったのか、一颯のテンションは高く・・・・・・「おじちゃん、こんどはいつ来るの~~?」「え?そうだな・・・お仕事がお休みの日かな~~」「じゃあにちようび?」「おじちゃん、日曜日も仕事の時があるんだよ~」「いっくん、無理言わないの。それ...
吹っ飛んでいったものを拾い、その女性は眉間に皺を寄せてる・・・その感じ、桜子が私に腹立ててる時と似ていてドキドキした。・・・まぁ、怒られはしなかったんだけど。今度は“ようふく”というものを着るんだけど、これはどうやって着るのか・・・今までだと女房達が単衣や袿を着せてくれてたから私は立ったままだったんだけど、そうもいかない。チラッとこの人を見たら、同じようなものを着てるし・・・と言うか、これはどうすればいいんだろ...
インターホンに応じたのは俺で、すぐにロックを解除して兄貴をマンションに入れた。車をどこ駐めればいいのかわからないというので駐車場はゲスト用を使うように伝え、部屋番号を告げると3分後にはドアのチャイムが鳴った。客が来る事なんて滅多にないためなのか一颯が喜んで出ていき、つくしがそれを引き留めようとしたが、「どうせすぐに紹介するんだから構わない」と・・・「・・・お兄さん、驚かない?」「刺激的で良いんじゃね?」...
翌日の朝6時・・・俺はまだゲストルームにいた。何故なら、あれからも質問攻めだったからで、この子は今でも目をキラキラさせてる・・・昨夜の高熱はなんだったの?って感じ。聞かれたのは・・・どうして寝床がフカフカなのか・俺が座ってるものは何か・扉(ドア)が何故前に動くのか・自分の着ているパジャマの素材は何か・どうして髪が短いのか・・・こんな質問はまだ説明出来たけど、スマホについては「悪霊が取り憑いてるの?」なんて言う...
総二郎から今日1日の話を聞き、光翔君の気持ちを考えたら胸が痛くなった。大人ならその意味が判るかもしれないけど、3歳児には伝わらない。ただ今まで母親だった人がいなくなり、父親だった人にも他に子どもがいる・・・そんな状況を納得出来る訳がなく、ただ泣くことしか出来なかったんだ。でも、救いなのは今まで側にいた祐子さんが母親代わりを引き受けてくれたこと・・・それなら光翔君は今まで通り、あの家で暮らせる。総二郎はあ...
「梅壺ってところには戻れないよ。あんたは 平安時代・・・西暦でいうと794年から1192年のどこかで生活してた人だろうけど、今は20XX年、つまり1000年前後未来なんだ。しかもあんたは京都にいたみたいだけど、ここは東京という場所・・・1000年前の平安京・梅壺には戻れない。ここには帝も弘徽殿の女御もあんたの女房の桜子って人もいない。どうしてこんなことになってるのかは知らないけど、あんたは過去の人・・・時間旅...
光翔を祐子に任せて、俺は本邸にいる親父に会いに行った。話したのは光翔と会話したときの様子についてと、京都行きは嫌がったこと、そして孝三郎と祐子も加わって話した結果、とりあえず泣き止んで寝ていること・・・親父は「まだ何もわからない歳だから、まだグズるだろうな」と言ったが、その次には「全員で温かく見守ってやろうじゃないか」と。「それと母さんだがな・・・・・・今週末、鎌倉に行くことにしたそうだよ」「今週末?年内...
父親は大納言で、この子の名前は「梅壺の更衣・つくし」。弘徽殿の女御の女房に井戸に突き落とされ、花沢家の庭に落ちたというか、辿り着いた・・・と?絶対に有り得ないと思うけど、でも今までの話を聞く限り思い付きで言ってるわけじゃなさそうだ。ちゃんと体験した・・・と言うか、そんな暮らしをしてきたって感じには聞こえた。だって調べないと判んないことをスラスラ言うんだから・・・そしてあの十二単、この長い髪・・・・・・決定的なの...
離れに戻り、シーンとした部屋で光翔を待った。あんな幼い子どもにどう話そうかなんて、考えても判らない・・・自然に出てくる言葉に任せるしかないと思いつつ、落ち着かないのでつくしに電話しようかと思ったが・・・「あ、そうか・・・あいつの方がバイトに行ってるわ」手に持ったスマホをテーブルに戻し、深い溜息を吐きながら頭を抱える・・・そのうち楽しそうな笑い声が聞こえて、光翔が戻ってくるのが判った。そして志乃さんに手を繋がれ...
「そもそもお前は誰なの?身分と名を名乗りなさいよっ!!」身分と名前を名乗れと言われてカチン。だってここは俺の家だし、不審者はそっちだし!まぁ、「そっち系の病人」に何を言っても無駄かと思い・・・それでもムカつくから言い返してしまった。「俺は花沢物産の後継者で現在は営業課長の花沢類。そしてあんたが居るこの家は俺の親名義の家・・・つまり、今はこの俺がこの家の主なんだけど」「はなざわぶっさん・・・そんな部屋あった...
久しぶりに光翔と一緒に寝て、目が覚めたのは6時。まだ窓の外は暗く、光翔はぐっすり寝ていた。身体を横向きにして光翔の髪を撫で、しばらくその寝顔を眺めることに・・・どこで付けたのか鼻の頭に小さな引っ掻き傷、ふっくらした頬が可愛らしく、思わずフッと笑ってしまう。そんな時間が30分ぐらい過ぎると、カーテンの向こうが明るくなってきた。光翔を起こさないようにそっとベッドを降り、リビングに行くとエアコンを付け、ミ...
どのくらい時間が経ったのか・・・・・・あれから俺も椅子に座ったまま居眠りしてた。時間を確認しようとスマホを見たら丁度0時で、同時に目の前の布団が少し動いた。そして彼女の眉がピクッと動いたのが見えたから、立ち上がって覗き込むと・・・「う~~~~~~ん・・・・・・・・・」「気がついた?」「・・・・・・桜・・・子?」「えっ?誰の名前?」「・・・・・・・・・・・・ん?」「気分はどう?熱、下がったのかな・・・・・・」もう1歩前に出て近づくと、この子は...
16時頃、俺とつくしが待ってる部屋に一颯が戻ってきた。その時には光翔の姿はなく、志乃さんだけ・・・顔を真っ赤にしてニコニコしてる一颯が、「おもしろかったぁ~~」と言って俺の膝の中にポスッと・・・「いっくん、何してきたの?」「あのねぇ、ひ~くんってお友だちがいたからね、いっしょにお庭であそんだの。サッカーしたりね、かくれんぼしてね、鬼ごっこもしたの~~」「・・・仲良く出来たか?」「うん!ここね、ひ~くんのお...
結婚式が終わったら梅雨本番。新婚旅行は俺の仕事の都合で行くことが出来ず、つくしも「産まれてからの家族旅行でいいよ~」なんて言うからお預け。それから彼女は花沢についての本格的な勉強が始まった。ビジネスマナーに再度テーブルマナー、パーティーマナーに英語とフランス語・・・・・・暇を持て余すのが嫌なつくしは結構楽しそうにそれをやってた。ただ、フランス語については溜息もので・・・「いや、全然わかんないんだけど!」「...
光翔君はまるで道具のようにしてこの世に生まれてしまった・・・だからこそ、不幸にしてはいけない・・・幸せにならなきゃいけない。その言葉は胸にズシッと響いた。そして光翔君の幸せはどこにあるのか・・・・・・養父母さんとなる人は素敵なご夫婦だと聞いたけど、それもやっぱり大人の都合であって、光翔君の気持ちは無視。確かに3歳児には判断力なんてないけれど、それでもあの子が1番望むものはなにかを考えるのも必要なのではないか・・・...
すごい形相で近づいてきた司・・・それを見たつくしがピクッと口の端を引き攣らせ、俺は溜息、総二郎とあきらは苦笑い・・・と言うか、楽しそうにしてる。でもここはパーティー会場だし、取っ組み合いの喧嘩はしないだろうと思ってたけど・・・「おい、ちんちくりん」「なによ、クリンクリン」「「・・・・・・・・・ぷっ!」」←総&あきら「・・・・・・はぁ・・・・・・(口喧嘩は出来るよな)・・・」「お前の仕事、なんでも屋なんだって?」「辞めたけどね。それ...
初めて入る西門のプライベートエリア・・・本邸とは違い、少しだけ簡素な感じがするけど、それでも普通の家庭に比べたら豪華そのもの。ただ使用人さんが多くいて、志乃さんに連れられて歩く私のことを不思議そうに見ていた。それにこっちの庭は本邸の庭よりも自然な感じ・・・冬だから花は少なかったけど、真っ赤な椿が見事だった。「こちらのお部屋ですわ」「は、はい!」「ふふふ・・・そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですからね」「・・・...
「新郎花沢類、 あなたはここにいる牧野つくしを病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」「はい、誓います」「新婦牧野つくし あなたはここにいる花沢類を病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」「はい///誓います」「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた このお二人を神が慈しみ深く守り、助け...
「あの人と違って祐子だったら一緒に飯食って一緒に寝てくれると思うから、そうしたら淋しいとか思わねぇだろ!俺と総兄が光翔にしっかり話してさ、それでいて光翔を一番大事にしてくれる人がそこにいれば・・・それって今よりも幸せなんじゃね?ってこと///!」孝三郎さんの話を聞いた2人がポカンとしてる。私はこの人とさっき見た女の人・・・美涼さんの付き人だったって言う中村祐子さんの関係を知らないから反応も出来なかった。で...
「・・・・・・はい、出来ましたよ。本当にお綺麗ですわ~~、このドレス🧡」「・・・・・・あはははは、ありがとうございます」綺麗なのはドレスだけかいっ!!な~~~んてツッコミは入れないけど、少々眉間に皺が寄った。今日は私達の結婚式だ🧡梅雨入りしたけど今日は爽やかな晴れの日で、ガーデンウエディングにはピッタリ♪類はすでに着替えてお父様達と何処かに行ったし、牧野家はビビって家族控え室から出てこない。今、私は1人でドレス...
「うえええぇ~~~~~💦」「・・・大丈夫?つくし」「だいじょ・・・・・・うえええぇ💦」「可哀想に・・・代わってあげられなくてごめん・・・」「平気だよ・・・ちょっと疲れが・・・おえええぇ~💦」災害とも言える母さんの帰国で振り回される毎日、部屋の引っ越し、ドタバタしながら婚姻届を書き、それをつくしと母さんが提出しにいくという想定外の出来事。そして写真撮影もあの人が監督みたいになってて、やっと終わって渡仏。その翌日からつくしの...
HappyBirthday 類君🧡今日は類君のお誕生日ですねっ!今年はイベントがないので残念ですが、連載をお休みしてコソッとお話をアップします。内容は前話の「なんでも屋」の続きです。数話だけのお話ですが、その後の2人を楽しんでくださいね♪◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆『なんですって?!それ、本当なの、類!!』「うん、間違いないみたい♪つくしがちゃんとエコー写真見せてくれたから♪今日は俺の誕・・・」『すぐに帰国するわ!じゃ...
「つくしさんにはこんなややこしい家のことを覚えろと言わなきゃならんが、皆でサポートするが・・・考えてはくれないか?孝三郎は中心に居るよりサポートするほうが力を発揮できる男だと思うし、総二郎は皆を纏める力があると思っている。血の繋がりなどこの際二の次じゃないか?先代も納得して下さるだろうし、もうお亡くなりの先々代達もお許し下さると思うがな・・・・・・」家元の言葉は素直に嬉しかった。総二郎は頑なにこの家を出る...
花沢の主治医が来たのは30分後。当然その時俺はゲストルームから出され、食事をしながら処置が終わるのを待ってた。それにしても・・・今時の若い子が「無礼者」とか言う?その前に何歳だ?俺の予想では15歳ぐらいだと思うんだけど・・・・・・でも15歳だったらうちで働かないよね?うちで働くなら加代が面接だけど、最近そんな話も聞かないし、雇うのなら最終的には俺の許可が必要だし。住み込みの場合、未成年が応募したら断ってる...
「家元、総二郎です。牧野つくしさんと一颯を連れてきました」「・・・入りなさい」「失礼いたします」親に会うのにこんなややこしい手順を踏む・・・それが西門家だ。判っていたけど、いざ目の前にするとやっぱり恐怖でしかない。総二郎がここに残り、私達も一緒にって言葉は嬉しかったけど、これまで自由に育ってきた一颯にここでの暮らしは無理・・・そんなことを考えながら総二郎の後ろをついて入った。その部屋は何畳あるのかわかんな...
ーーーつくし姫様、どこにおられるのです?ーー・・・・・・あぁ、桜子が探してるわ。早く戻らなきゃ・・・帝を待たせたらお父様の首が危ないし、私だって追い出されちゃう・・・・・・そろそろ日も暮れただろうし、私だって身支度整えないと・・・それにもう1回桜子に寝屋でのアレコレを聞かなきゃ不安だわ・・・・・・ーーあぁ、こんなところにいらしたのですか?まぁ、そんなに濡れて汚して・・・どうするつもりなのです?!ーー私のせいじゃないのよ、桜子...
一颯の服も、私の服も髪も取り繕う時間もない。とにかく可能な限り品良くして、急いでメイクも始めた。その時、総二郎はデリバリーを頼むと言って一颯とメニューを見ながらワイワイやってる・・・それを若干ムカつきながら横目で見て、真新しいストッキングを探してた。そんな感じでドタバタしてると20分なんてあっという間に過ぎ、届いたのは一颯の決めたピザ・・・こんな気分でピザ?!とガクッとしたけど、そんなことも言ってられな...
「あなた、梅壺の更衣の女房でしょう?」「いいのよ、そんなに身分が高い人でもないし、そこの女房ならいなくなっても誰も探さないわ」「ちょっ・・・!」「「「あなたが悪いのよ!私達でさえお話し出来ないのに、左近衛大将様のお手に触れるなんて!!」」」井戸を覗き込んでいた私の背中をグイグイ押すもんだから、慌てて縁を手で握って踏ん張った。でも相手は3人だし、唐衣裳は動きにくい・・・しかも誰か私の袴を踏んでる?それなら...
日曜の朝、いつものように起きると光翔の部屋に向かった。光翔は母親がいなくなった夜もぐずることなく独りで寝て、起こしたときもいつもと変わらない。ただ「母さまは~?」と目を擦りながら聞いたので、「ここにはいないぞ」と言うと・・・・・・「・・・え?」「昨日話しただろ?母様はもうここには戻らないんだ」「・・・あぁ、そうだったっけ・・・・・・」「淋しいか?」「・・・ううん、そんなことはないけど・・・・・・母さまのほうがさみしくないか...
「・・・よし!誰もいないわね・・・・・・それじゃあ失礼して・・・・・・とりゃあああああぁっ!!」袴の裾を持ち上げ、廊下の欄干に手をかけてヒョイッとそれを飛び越えた♪こんなの実家にいたときにはよくやってたし、怖くもなんともない。桜子にはド叱られされたけど、そんなの気にしちゃいないし~。いつものように上手く庭の白砂の上に着地して、落とした扇を拾った瞬間、廊下の真下の空間にユラリと動くものが・・・ハッとしてそっちに目をや...
クリスマスツリーの組み立てが終わり、オーナメントもイルミネーションランプも取り付けた。電源を入れるとそれが美しく光り、光翔は手を叩いて喜んでいた。ここで部屋に戻した中村祐子を呼び、光翔の着替えを頼むことに。彼女はこれまでもこの子の世話をしているから、着替えがどこにあるのか知っているからだ。ダイニングに入ってきた祐子は元気がなかったが、光翔も彼女には慣れているため、すぐに「ゆうこちゃん!」と言って抱...
私が入内して数日後・・・・・・まだ1度も帝には呼ばれてない。それも全く気にならないから、暢気に過ごしてた。・・・と、言うのも実家から連れてきた女房の桜子と入れ替わってるから♪更衣だったら勝手にウロウロ出来ないけど、女房だったら内裏の庭や廊下、帝の住まわれる清涼殿に近づいたりしなければ歩くぐらいは問題ない。女御様の女房達に出会っても、端に避けて頭下げてりゃ文句言われないし、部屋ばかりの暮らしよりはマシだもんね...
「ママ、ご飯まぁだ?」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「ねぇ、サンタさんってここにも来てくれるかなぁ?」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「ぼくね、ひこうきのおもちゃがほしいっておてがみ書いたんだ~」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「・・・ママ、聞いてる?」「えっ?あぁ・・・・・・ご飯だよね・・・えっ!もう12時回ってるじゃん!!」総二郎が家元達に全部を話すと言った日・・・私は朝からソワソワして落ち着かなかった。調査したことは私も全部聞かさ...
平安京・・・それは摂関家の娘と天皇との婚姻により、外祖父の藤原氏の女系が重視される女性の時代。平仮名・片仮名も生まれ、『枕草子』や『源氏物語』に代表される和歌・貴族生活の日記・恋愛物語の女流貴族文学が繁栄し、貴族文化が誕生した時代。この頃、ある貴族のお屋敷に、1人の姫がおりました。名前を「つくし」と言い、この時代の女性にしてはおおらかで元気が良く、窮屈な屋敷住まいにウンザリしているのです。今日も姫に...
親父が光翔とこの先の約束をする・・・それを聞いていると箸が止まった。志乃さんも戸惑いを隠せないようで、時々俺に視線を送ってくる。「おじいちゃま、クリスマスってしってる~~?」「あぁ、知っとるよ。光翔の部屋にはツリーを飾っていないのか?」「そんなのないけどぉ~、お外にはいっぱいあるよ?ぼくもほしい~~♪」「そうか・・・じゃあ買いに行くか?」「親父・・・・・・あのさ、さっきの話だけど・・・」俺としてはすぐにでも・・・い...
俺の父親は神楽木直也・・・でも、すでにこの世にはいない。そして俺が何度か会った神楽木裕也は、実の父親の双子の弟だっただなんて・・・あの人は俺が自分の甥だと知っていて、それであんな言葉を言ったのか・・・『茶道家になって、幸せですかな?いや、失礼・・・・・・立派な家元におなりなさいね』それが直也氏の残した言葉だったから・・・俺が感じた不思議なものも、血の繋がりがあったからなのか・・・・・・美涼がいなくなったこのタイミングで、...
「最後の質問だ。お袋・・・俺の本当の父親は誰なのか、教えてくれないか?」お袋の表情が変わった。そして親父も横目でお袋を見て、深い溜息を漏らしていた・・・。親父も美涼の母親、真理子との関係を知られたので文句など言えない。だからこの場で俺も聞いたのだが、お袋はなかなか言おうとしなかった。すると親父の方から「もう責めるつもりはないし、私も申し訳なかったと思っている」と・・・「・・・私は裏切るつもりはなかった・・・と言...
美涼のしてきたことは粗方判った。あとは細かい疑問を問い質すと、どうでもいいと言った感じで淡々と答えていた。村上への報酬1200万やその借金の肩代わりにに使った金の出所は何処なのか・・・それは美涼の爺様が亡くなったときに遺贈としてもらった土地を売却して得た3000万から出したと言った。西門家に嫁ぐ気満々だった美涼にとって、3000万は大した金額じゃなかったんだろう。村上への接触は偶然だったのか・・・美涼は...
式場が決まったら招待客を決めたり、料理についての打ち合わせが続いた。招待客といっても私の方は三毛猫の手の社員全員と家族だけ・・・友達は数人いるんだけど、就職してからはそんなに付き合いがなかったからだ。そんな友達に「花沢物産の御曹司との結婚」なんて、説明する方が面倒くさかった。しかも花沢家の方に招待客が多すぎる・・・その式場に入れる最大限の人数のうち、95%が会社関連だもん。それは類が選ぶのではなく、ご両親...
「総二郎様はその人と親子ではない・・・本当の子どもは私の方なんですよ。私、孝三郎さんとは腹違いの姉になるんです・・・・・・ねぇ、お父様」美涼の言葉に一同固まった。さっきまで怯えていたお袋もこの時は親父を睨み、孝三郎は目も口も見開いて「姉」と言った美涼を見ている・・・これは俺も想定外だったが、さっきの親父の態度を思い出したら・・・俺が親父の子じゃないと言った時にもそこまで驚かなかった・・・と言うか、お袋に対して怒りを...
年が明けるとお父様達はフランスに戻ることに。その時には私と類とで空港まで見送ったけど、同行してる秘書さん達もいるから賑やかと言うか華やかというか・・・淋しいとか悲しいって気分はゼロ。しかも来月にはまた帰国して、今度はドレスの採寸をするとか言うし・・・「ドレス・・・ですか?」「そうよ、ウエディングドレス🧡私、義理の娘のドレスを作るのが夢だったの~~」「えっ、もうウエディングドレス?!」「当たり前じゃないの、春...
泣きじゃくる祐子に孝三郎がハンカチを差し出し、彼女はそれで涙を拭いていた。俺は義兄のしたことにムカついたが、今更それをどうにか出来るわけでもなく・・・中村祐子が「そのことはもういい」と言うし、不同意性交等罪の公訴時効は15年だが、それも訴えないとのこと。俺は力になると言ったが、「美涼のしたことを黙認してきた罪があるので」と断られた。すると、それを聞いていた美涼が吐き捨てるように・・・「そりゃ訴えないでしょ...
「・・・・・・これでよしっと!」翌年、3月の最終金曜日・・・私は数年間使っていたデスクを綺麗に片付けた。今日は私の最後の出勤日、そして類の27歳の誕生日だ。私の代わりに事務をしてくれることになった夏美ちゃんへの引き継ぎも終わり、彼女には真新しい業務日誌を渡した。「牧野さん、本当にあの花沢物産の専務さんと結婚するんですか?」「えへへ///そうなの。6月のお式にはみんな呼ぶからさ、夏美ちゃんも来てね♪」「行って良...
親父の様子は気になったが、今は美涼のしてきたことを話すのが先。そう思って俺は見合い後の美涼の脅迫の内容を話した。この時すでに俺が家元の息子でないことを知っていたこと・・・それを話さない代わりに自分との結婚を承諾しろと言ったこと・・・それに再びお袋が驚き、「どうしてあなたがそんなことを?」と呟いた。相変わらず親父は黙ったまま・・・美涼は何か否定したかったようだが、さっきの光翔のことで動揺したのか、こっちも何...
ご両親に挨拶できないのが気になったけど、加代さん曰く「今晩もこちらにお戻りでしょう?」って・・・それなら夕方にお詫びを言えばいいかと思って類の車に急いだ。その時、類は車の中で誰かに電話中・・・だから外で待ってると、指でチョイチョイって合図されたからドアを開けて助手席に座った。「電話、誰と?」「秘書の藤本。今日は少し遅れるって話しただけ」「類が会社に遅れるのなら、私はタクシーで行くよ?」「そんなことさせな...
「本日付で俺は美涼と離婚する。そして西門流の次期家元を降り、孝三郎にその座を譲ろうと思う」その言葉に場がシーンとなった。だがすぐに大声を上げたのは美涼。親父達の前なのに表情を激変させ、キッと俺を睨み、膝の上で重ねていた手をワナワナと震わせ・・・「総二郎様、何を言い出すのです!正気ですか!!」「あぁ、正気だ。お前とは離婚する」「光翔だって居るのですよ!あの子はあなたの跡継ぎではありませんか!」「大きな...
「・・・・・・・・・・・・・・・う~~~ん」身体が重い・・・・・・・・・何かにグルグル巻きにされてる感じ・・・それに暑い・・・・・・と言うか、くすぐったい?それなのに良い香りがして、自然と大きく息を吸い・・・・・・・・・ハッと目を開けると、目の前に人肌が。しかも肩と腰に長いものが巻き付いてて、それがどうやら息苦しさの原因のよう。暑いのは単純にこの長いもののせいで、くすぐったいのはフワフワのお布団のせい。そのお布団が直接肌に当たってて・・・・・・...
総二郎はラグの上にコロンと横になり、目を閉じで何かを考えていた。「総二郎・・・私、お風呂に入ってくるね」「あぁ・・・・・・」「もう少し居るんでしょ?」「あぁ・・・・・・」私の言葉なんて聞いてるんだか・・・・・・でも、この人の心情を慮るとそんな言葉は出せない。我が子と信じて育ててきた子どもを手放すんだもの・・・たとえ本当の息子と暮らせると言っても、その子ども達は「同じ」じゃない。一颯に向けられる愛情と、光翔君に向けられる愛...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*フワモコのパジャマのボタンが外されていく・・・俺の真下で真っ赤になったつくしが両手で目を覆ってる。そんな仕草に笑いながらパジャマをずらしたら、可愛らしい膨らみを隠してるのは白いレースたっぷりのブラ。今まで何度か見たことあるの...
12月の中旬・・・このマンションのエントランスにはクリスマスツリーが飾られていた。それを見ると一颯のテンションもあがり、今週の土曜日は保育園のクリスマス会本番だ。総二郎が来ないことに残念がってたけど、「ちゃんととって、パパに見せてよ?」と張り切ってた。今日も保育園に迎えに行き、買い物をしてマンションに戻ったんだけど、入り口でコンシェルジュさんに呼び止められ・・・「えっ?大型の荷物ですか?」「はい、こちら...
いつもシャワーで済ませてるから、俺も久しぶりのバスタブ・・・それなのに、まさか1人じゃないなんて。さっきまで綺麗に結ってた髪を解いて無造作に括り、恥ずかしそうに俯いてるつくしが隣にいるなんて。しかもすでに顔が真っ赤・・・。今日は逆上せないでよ?と思いながらつつっと横移動してつくしの肩と触れ合うところまで行った。そうしたらビクッとして顔を俺の方に向け、今までになく困った顔してる。「・・・そんなに怯えなくても...
「父さま、たーーーっくさん子どもがいたんだよ♪」「そうか・・・楽しかったか?」「うん!あのね、すべり台があってね、おっきなボールもあってね」「落ち着いて話せって。志乃さんに迷惑かけなかったか?」「かけてないよぉ~~」「ほほほ、大丈夫ですわ。東京にも似たような場所があるので、また行きましょうね~」「それでね、それでね、あのね!」夕方遅く、別邸に戻ってきた光翔は大興奮。俺の前で遊びに行った室内公園での出来...
類のお部屋でのクリスマス・・・窓を背中にしてソファーに座り、部屋の真ん中にあるツリーを眺めながらの二次会♪ワインは飲みやすいものだったのでチビチビと。それよりもオードブルの美味しいこと🧡ちなみに日本では、パーティなどで出される酒のつまみや軽食類を盛り合わせたものをオードブルという。サークルトレーに並べられてるのが一般的だけど、ここでは綺麗なお皿にカラフルで小さなお料理がちょこっと乗ってるだけ。まぁ、す...
話の続きで俺が出したのは、スマホの画像・・・・・・天草で撮った、つくしと一颯の写真だ。それを見た2人はしばらく沈黙していたが、その様子を見て察したのか、お互いに目を合わせていた。「光翔のことは後でお話しします。まず、この写真に写っている子どもは、この女性と俺の間に出来た息子で、一颯と言います。今・・・3歳半です」「・・・なに?!」「でも光翔も3歳半じゃないの?」「一颯の方が4月生まれ、光翔はその1ヶ月前に生ま...
怒鳴り合う類とお母様の向こうにクリスマスツリーが見える・・・こんなクリスマスパーティーなんてあるんだろうか。しかも、私はこのためにこんなドレスアップして、いったい誰と闘ってるのか・・・見えてきたのは類よりもご両親の方が一枚上手だということで、この数ヶ月間、私達はこの2人の手のひらの上で転がされていた・・・と?しかもあのグアム行きまでもが花沢家の陰謀だったなんて・・・せめてもの救いはお爺ちゃんが何も知らなかった...
この一乗寺の別邸は家元の隠居後の居住まいで、ここで茶会なども行われている。造りは東京の本邸の半分ほどだが、それでも庭も屋敷も一般住宅とは比べものにならないぐらい広い。そして当然植木・花木も多く、池もあるし、石組みもある。違うのは裏手が山であることと、若い人間が少ないということ。森田事務長の他には使用人も数人だし、若弟子は1人も居ない。居るのは爺様に昔から仕えている古弟子の大谷さんと小山さんだけだ。...
「どういうつもり?昨日と話が違うよね・・・・・・・・・仕組んだの?!息子を騙してそんなに面白いの?!」「えぇ、騙したわよ?」「「・・・・・・・・・・・・」」俺がテーブルまで叩いて意気込んでみたのに、騙したことをあっさり認めた・・・・・・しかも父さんまで「今まで気がつかなかったのか?」って・・・・・・呆気にとられて言葉も出ない。そんな俺の隣で、つくしの方が「騙してたってどういう意味ですか?」って身を乗り出して聞いていた。それに対し...
12月10日、今日は光翔を連れて京都に行く日だ。光翔はこの話を聞いてから毎日楽しみにしていたので、昨日の夜はワクワクして寝られなかったぐらい。そのせいで熱でも出さないかと心配したが、元気よく起きて朝食も完食。今は中村祐子に身支度を整えてもらっていた。その時には一応美涼も側に居て、「ご挨拶は丁寧にね」とか「お行儀良くするのよ」と声をかけていたが、表情を見るとどうでも良さそうな感じだ。光翔が粗相をする...
勇気振り絞って叫んだのに、母さんと父さんの、向こう側にいるのは両親と同じ年ぐらいのご婦人4人。その後ろに娘でも居るのかと思ったけど、どう見てもその人達しかいなくて、俺は意味が判らずポカンとしてしまった。「今の言葉、よく聞き取れなかったわ♪もう1度紹介して下さる?」「そうだな。さぁさぁ、皆様、私達も座りましょう!」『『『『Oui♪』』』』「何を突っ立ってるの?ほら、類達はそこの席よ。牧野さん・・・だったかし...
「まっかなおはなのぉ~~、トナカイさんはぁ~~♪」キッチンで夕飯の準備をしていると、リビングから聞こえてくる一颯の声。新しい保育園でのクリスマス会で歌を歌うらしいので、その練習をしていた。見に行くのは私だけ・・・でもちゃんと録画して総二郎に見せなきゃいけないから、私はそっちの方が心配だった。ブレてたらすっごく怒られそう・・・だから早く行って良い席を確保しなきゃ、とか。「ママ、ごはんできたぁ?」「まだだよ...
まさか、このパジャマがプロポースのきっけかになるなんて・・・・・・まさか、恋人関係すっ飛ばして婚約者になるなんて・・・・・・まさか、花沢さんが私のこと好きだなんて🧡プロポーズにYESの返事をしたら彼が優しく抱き締めてくれて、私もうっとりしてその腕の中に埋もれてたんだけど、その時に窓の外で車の音が・・・・・・「やばっ!!今何時?!」「えっ?えっと・・・・・・18時20分・・・だけど?「父さんと母さんが戻ってきたんだ!牧野、身支度...
山本のところに行ってから2日後、書斎で仕事中に西村事務長から「口切りで祝いをくれた人達への礼状の発送が終わった」との報告を受けた。その時、「あの方はどうしますか?」と言われたので手を止めると・・・「あの方?」「総二郎様がご自分でお礼を言いたいと言われた神楽木様ですよ」「・・・あぁ、親父の友人の・・・」「はい。ですからお礼状は出していませんが、ゆっくりしてるとすぐに日が経ちますので・・・」「そうだったな・・・住所...
「これ、どういうつもりでプレゼントしてくれたの?」「どういうつもり・・・とは・・・・・・ああああああぁーーーーっ!!」そう・・・俺が牧野に聞きたかったのはペアのルームウエア(パジャマ)のこと。どうしてこんなものを「家で見ろ」と言って渡したのか・・・実は俺に恋人がいると思って渡したのだとしたら、俺の朝の発言が超絶恥ずかしいことになる。でも牧野は俺にそんな相手がいないことを知ってるはずだし、全く意味が判らない。同サ...
山本のマンションを出て鑑定施設に戻ったのは16時。そこに車を駐めていたからで、濱崎の車が戻った事に気がついた市村が外に出て来た。そこで俺ではなく、濱崎が山本の証言を掻い摘まんで説明し、市村は20年近く前の検定結果が外部に漏らされたことを聞いて驚いていた。同時にそれがあきら経由で俺が依頼した、自分の父子鑑定であることも知ることになり・・・「・・・そうなんですか?私はそのころからここにいましたが、責任者では...
牧野が着替え終わって出てきたのは17時。これまでに何度もドレスアップした姿を見てきたから驚くことはなかったけど、今日のは一段と可愛く見えた。両サイドから編み込んだ髪をふんわり纏め、そこにパールのピンをいくつか挿してる。メイクはピンク系、ヒラヒラしたデザインの袖から白い腕が出てて、裾に鏤められたラメレースがキラキラして・・・「類様、こんな感じに仕上げましたけど、いかがでしょう・・・?」「・・・うん、素敵だと...
まさか、この男が美涼に俺の出自の秘密を伝えていたとは・・・俺の知らないうちに検体を取られ、それと照合されていたとは思わなかった。濱崎もこのことは知らなかったので驚いた顔をしていたが、今更知られても問題はない。それにこの人は信用できるので、「今はまだ誰にも言わないでくれ」と囁くと、それに軽く頷いてくれた。それからまた山本の説明は続いた。「・・・子どものデータが西門様なら、もうひとつは家元になる。それが親子...
三毛猫の手に寄ってから会社に行ったんだけど、その途中頭が真っ白だった。牧野に何を言ったのか・・・もちろん全部覚えてる。牧野の驚いた顔・・・信じてなかったみたいだけど、俺、ちゃんと本気だって言ったよね?牧野が何か言ってたけど、何だったっけ・・・・・・何かが違うみたいなことを・・・そんなことを考えていたら会社に着いて、俺は急いで執務室に向かった。この時も社員達から何か言われたけど返事もせず、正面にいた社員が飛び退い...
俺と美涼が結婚していたことも知らない。西門邸には1度も行ったことがないと山本は言い切った。「彼女があなたと結婚していたことなんて知りませんよ。桜井家とは縁がないのですから」・・・と。山本は美涼との関係を完全否定。それならと、今度は俺ではなく濱崎がカバンからある物を取り出して山本に見せた。それは綿棒のような検体採取キット・・・あの施設にいた山本にはなんのための道具かすぐにわかっただろう。「じゃあ、お前の口...
『今、あんたの会社の駐車場に居るんだ!話があるから出てきて欲しいんだけど!早く!!』「へっ?あ、は、はいっ!すぐに行きますっ!!」いや、ぜんぜんわかんないんだけどっ!!いったい何があったって言うの?!何故こんなに朝っぱらから花沢物産の専務さんが来てんの?!会社はどうしたーーーーーっ!!電話を切ったら社長達に何も言わず、急いで裏の通用口に向かった。そこで勢いよくドアを開けると、白い8000万円が停ま...
口切りが終わると宗家は静かになる。年内に大きな茶会はなく、俺たちの仕事はのんびりとしたものに・・・だが親父とお袋は年末に向けて地方支部へ出掛けたり、孝三郎は茶道教室のイベントなんかが増える。だから俺が宗家の仕事を任されることが多かった。この状況下で助かるのは、俺が外出しやすいと言うこと。親父達が不在だから口煩く言われることがない。丁度今日は親父達が不在で、孝三郎も夜の会食までずっと出掛けている。だか...
牧野のクリスマスプレゼントに悶々としながら一夜を過ごし、気がついたら朝になってた。いつもより更に開かない目でダイニングに行くと、朝っぱらからイルミネーションを点灯させたツリーが・・・それに若干イラッとしながら席に着くと、目の前では今日も元気な母さんの甲高い声が・・・「山下部長のところはお孫さんが生まれたらしいわ~~、羨ましい~♪」「香坂本部長の娘さんもご結婚らしいから、お祝いを送らないとな」「生まれたて...
口切りの茶事当日、朝から宗家はドタバタしていた。親父と俺は露地の掃除や茶室の確認をし、お袋達は茶懐石の確認、志乃さんは全国の支部から届く祝いの品などを大広間に並べていた。そのお礼をするのも俺たちの役目なので、茶会の前に全員でそれを確認するのが慣例。この茶事に全支部を招くことは無理なので、毎年選ばれた支部長しか招待しないからだ。それに招待したが都合が悪くて欠席する人、昔から懇意にしている取引先などか...
「じゃあクリスマスプレゼント、渡すね♪」「えっ?!」「・・・そんなに驚くこと?」「いや///花沢さんにそんな気遣いがあるとは思わなくって!」・・・なんて失礼な言い方するんだか。確かにクリスマスプレゼントをわざわざ用意したのは初めてだけどさ。今まで椅子の背もたれに隠してた袋を取り出すと、牧野は「え!ずっとそこにあったの?」って目がテン。でも驚くのはまだ早い・・・「俺が作ったんだよ」と言うと、元々大きな口を更に大...
ド派手な女物の服が散らかっている部屋、その真ん中に踞った村上にエアガンを押しつける俺。この状態で村上は美涼との取引について話し始めた。驚いたことに、それは俺と美涼が見合いをする前のこと。繁華街のど真ん中で借金取りに脅されている村上に、声をかけて来たのが美涼だと言った。そのまま個室のあるBarに連れて行かれ、そこで故意に事故を起こすような依頼をされたのだとか・・・しかも初めの依頼は孝三郎ではなく・・・「は?...
手首が赤いことに気がつくなんて・・・なんて目敏いの!!普段から無関心なんだから、そこは無視してよーーーーっ!!化繊負けでも静電気でのないの・・・・・・ダニなのよ!!でも花沢さんの前で「これ、ダニに噛まれたんです」って言えないでしょ?!ダニが居る場所から来た女なんてイヤでしょ?!加湿器も要らないし、ローションも必要ないの・・・・・・欲しいのはステロイド外用剤なのよっ!という心の声は置いといて・・・今日の花沢さんはダー...
翌日の朝食時、親父とお袋はまだ機嫌が悪そうだった。当然美涼もおとなしくしていて、静かな時間・・・光翔も周りの大人の顔色を窺いながら食っていた。そんな中、孝三郎が少し左手を気にしており、俺が「痛むのか?」と聞くと・・・「昨日の長時間の野点で疲れただけだって・・・寒いときはやっぱり疼くんだよな~~」「そうか・・・無理すんな」「気持ち悪っ!総兄が優しいこと言うとコワいわ~~!」「なんだと?心配してんのに!」「ははっ...
事務所に戻ったのは18時30分・・・その時は全員埃まみれで真っ黒クロスケだった。しかもみんな何処かしらが痒くて、掻きまくって血が出るほど・・・加藤さんなんて首が真っ赤に腫れてて、ダニじゃない害虫にやられたんじゃないかって話にまでなって・・・よくあんな家にお婆ちゃんが1人で住んでたよね?ってか、病気になったのはそのせいじゃないの?!貧乏で古い家だったとしても、掃除だけはしていた私・・・だから今でも外観はとんでもな...
山本啓介への疑念を抱いたまま10日間が過ぎた。何も動けなかったのは野点の準備、炉開き、口切りの茶事の打ち合わせが続いたから・・・これも後悔のないように終わらせたかったため、この期間は茶道に集中することにしたのだ。そして少しでも時間があればつくしと一颯のところに行き、穏やかな時間を過ごす・・・つくしには山本の話はしたが、茶事への思いも話していたため、時間が掛かることは納得してもらえた。その間につくしは一颯...
翌日の朝、ダイニングは賑やかだった。いつもなら俺が1人で静かに珈琲を飲むだけなのに、今日は父さんと母さんも居て、朝食のメニューもホテル並み・・・これでもか!ってぐらいの料理が並べられ、それを両親は「美味しいわね~」と言いながら食べてた。「フランスの朝食って甘いでしょ?私は長く住んでるけど、あれはダメなのよね~」「私は毎日同じというのがイヤだな・・・それにタルティーヌは今でも食べられないよ」「・・・シェフが作...
「以前、ここで見た手袋の男の事だが・・・」「あぁ、彼のことですか・・・何か気になることでも?」「偶然かもしれないけど、美涼が光翔を生む少し前に病院に手袋をした男が現れたって聞いたんだ。季節的に手袋してても問題ないんだが・・・その男、俺がここに来たときにジッと見てきたってのもあって少し気になるんだけど」「・・・・・・・・・そんなに西門様を見ていたんですか?」「何か言いたいことでもあるのかと思ったぐらいだけど、目を合わ...
ロビーに降りたらすでにそこには部長達が並んでた。いつの時代だ?って思うような出迎えぶりに辟易・・・・・・当然俺はその最前列に立つこととなった。秘書課も全員降りてるし、そんなことで事務所はどうすんの?って感じ・・・でも意見したら藤本に殴られそうだったんで黙っておいた。そうしたら2台のタクシーが到着して、1台目からは父さんとその秘書軍団、もう1台からは母さんとその秘書軍団が降りてきた。途端に緊張感が走り、業務...
羽田に着くと先につくしと一颯が到着ロビーから出ていき、俺とは別行動をとった。機内で爆睡だった一颯はぼんやりしていたのでこの状況がわかっておらず、特に泣くこともなく大きなペンギンのぬいぐるみを抱えてつくしに手を引かれていた。俺は振り向かない2人を横目で見送り、少し遅れて空港を後にした。宗家に戻ったのは22時前で、屋敷内はすでにシーンとしていた。離れの部屋に戻ると美涼もすでに自分の部屋にいて、光翔もベ...
月曜日に出勤すると、会社全体がザワザワしていた。それはパリから社長・副社長が来るとの情報が伝わっていたから・・・当然秘書課はアタフタしていた。フランスからも現地秘書が同行してくるが、藤本達には日本本社・秘書課としてのプライドがあるらしい。だからいつにも増して気合いが入ってるし、各役員の第一秘書ではない連中は社長室、および役員フロア、ロビーやエントランスに至るまで総チェックしていた。・・・そんなことするか...
「えっ?!ペンギン水族館?」「あぁ、長崎にはペンギン水族館があるんだ。本当ならハウステンボスとかに連れてってやりたいけど、夕方には長崎空港に行かなきゃいけねぇからな」「ペンギンさん、見られるの~~?うわぁ~~い!ぼく、ペンギンさん、だいすき~~~!」つくしの言う通り、3歳児にはグラバー園や大浦天主堂よりもその方が楽しいだろう・・・そう思って長崎ペンギン水族館に行くことにした。ここは展示するペンギンの...
そしてやってきた土曜日。軍資金を手にもってやってきたのは六本木。意気込んで向かったのはメンズもののパジャマを取り扱うお店・・・あれから花沢さんに何が良いかを考えたけど、どうしても「睡眠グッズ」しか思い浮かばなかったんだもん。お金持ちなのは判ってるから持ってないものがないだろうし、ネクタイだって好みがある。ケーキでも作ろうかと思ったけど、これまで見てるとデザート系は全部私に回してたから苦手なんだと思う...
美涼の妊娠は人工授精で、計画よりも早くに妊娠できたために俺との行為を急いだ・・・それに引っ掛かった俺のせいで事は上手く進み、彼女の願い通り出産予定日よりも遅くに出産をした。ここまでは美涼でさえ驚くほど順調に進んだし、お袋も親父も騙すことは出来た。協力者は中村祐子・・・彼女が何故あんなに怯えているのかはまだ判らないが、宮崎レディースクリニックを選んだのは中村祐子の医療事故がきっかけだと言うこともわかった。...
石垣島から帰った翌日。花沢トラベラーズの石川から「撮影無事終了」の報告メールが届いた。それを見てカチンときた俺は、藤本の居ない隙を見て、石川に電話することに・・・『あっ、社長、お疲れ様です!先日はご協力いただき、ありがとう・・・』「どうして写真のデータをメールで送った?!俺、現物を郵送か宅配でって言わなかった?!」『えっ?!いや、社長はそんな詳しいことは・・・』ーーカメラマンに頼んで、俺と牧野が写ってる写...
産婦人科についたのは午前中の診察が終わる5分前。しかもこんな病院に厳しい顔した男が1人で入ったので、受付は驚いた様子で言葉を掛けることさえ忘れていた。待合室で待っている患者はもう誰もおらず、どうやら中で午前中最後の患者を診察中らしい。パタパタと看護師の足音と共に、医者の話し声が聞こえた。ようやくここで受付に「お見舞いですか?」と聞かれたのだが・・・「東京の西門と申します。ここの先生に息子のことで聞き...
朝食が済んだら10時前にはホテルをチェックアウトした。その時にロビーでは花沢トラベラーズの撮影スタッフ達がいて、彼らは今からもこのホテルの内部撮影をするらしい。「昨日はありがとうございました」なんて石川に言われたけど、それよりも気になったのはカメラマンの横に立つ2人の男。2人とも俺に背中を向けてるけど、その背格好が・・・「・・・・・・・・・・・・」「花沢さん、どうしたの?やっぱり気分が悪い?」「いや、そんな事な...
「・・・・・・・・・う~~~~ん・・・・・・」「ママ、もう朝だよ~~~?」「・・・・・・・・・えっ?」「おねぼうしてる~~~♪」火曜日の朝、ホテルのベッドで目が覚めたんだけど、その時間が7時・・・いつもならとっくに起きてる時間なのに、真横で私を覗き込む一颯がいて驚いた。飛び起きたんだけど慌てて確認したのは自分の格好・・・持って来てたパジャマをちゃんと着てたからホッとしたんだけど・・・「おはよう、つくし。もう朝飯が来てるぞ」「ーーー...
正直、当たれば折れるぐらいの腐った木の枝で殴られたんだから大怪我には至らない。確かに衝撃はあったけど、1度両手に当たって威力も半減してたから尚更・・・でも牧野がすごく心配して肩まで貸してくれたから、それに甘えてみようかなって思っただけで・・・だから態と蹌踉けてみたり、痛そうにおでこに手を当てたりしてたんだけど・・・流石に部屋に入れば演技するのも申し訳ないと思い、彼女にも「寝ていいよ」って言ったんだけど・・・「...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*細い腰を両手で掴み、弾力のある丸みを見下ろしながら熱り勃つモノを押し込んでいく・・・その時、夜の空気につくしの甘い声が溶け込んでいった。同時に俺も唸るような声が漏れてしまったが、それはつくしの中が想像よりキツかったため・・・つ...
喧嘩ド素人だと思われる2人組・・・もう呆れてしまうほどガタガタ震えてるから、怖くもなんともない。俺自身はそんなに喧嘩をしたことはないけど、司や総二郎のマジな殴り合いを見てきたし。だから躊躇わずに進んでいったんだけど、突然牧野が自分を掴まえてる男の足を蹴ったみたいだった。その呻き声で俺の前にいる男も振り向き、その様子が俺にも見えたんだけど、牧野がそいつの股間を思いっきり蹴って・・・あぁ~~~あ・・・可哀想に・...
本文中に微ではありますがR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*寝る準備だというのに、「パパと遊ぶ!」と言って大騒ぎする一颯・・・総二郎はクスクス笑いながらパジャマに着替えさせられてる一颯を見てたけど、私は違うことを考えてて気持ちがそれどころじゃない。「今日は朝早くから出...
牧野が砂浜から少し離れた、薄暗くて木々が生い茂ってる場所に行くのを砂浜で見ていた。ホントに好奇心旺盛で怖いもの知らずだな~と感心しつつ・・・でもホントにハブだったら不味いから、早くこの場から離れようと思っていたのに・・・「きゃあああぁーーーっ!!」「牧野?!」「う、五月蠅い!」「おおおお、大声出すなよっ!!」牧野が遭遇したのはハブでもヤシガニでもなく、2人組の男?!帽子を目深に被ったヤツが牧野を後ろから...
少々乱暴な言い方だったけど、一颯が俺に向かって「パパ」と言ってくれた・・・それだけで嬉しくて、ガラにもなく涙が込み上げてきた。その様子を見て初対面の夫婦がおかしな顔をしていたが、そんなことを気にする余裕もない。俺の目の前で怒ったような、照れたような顔をしている一颯を抱き上げ、すげぇ力で抱き締めてしまった。「いたいってば~~~っ///!!」「一颯、もう1回言ってくれよ~!」「やだよぉ!いいから早くしてよ!...
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裕也氏は静かに俺の対面に座った。そしてつくしと一颯を見て優しく笑い、「息子さんはおいくつかな?」と。その言い方からして、つくしのことを美涼と勘違いしているようだった。「・・・来年4歳になります。名前は一颯と言います。隣は・・・婚約者の牧野つくしさんです」「・・・婚約者・・・?」「は、初めまして・・・牧野つくしと申します」「こんにちは~~、まきのいぶき、3歳です!」「・・・牧野さん・・・?」電話では墓参りをしたいと言う...
まさかの珈琲で撃沈・・・・・・そんなに不味かったとは思わなくて、口直しに俺のロールパンを食べてる姿に吹き出しそうだった。「まぁ、子どもには難しい食べ物だよね・・・・・・」「子ども?誰が?」「あんた、まだ子どもでしょ?」「・・・・・・この世界は22歳でも子供なの?」「・・・・・・・・・・・・・・・」22歳?!俺とそんなに変わんないの?!!こんな童顔でぺったんこの胸なのに?!と言うか、平安時代ってそんな歳で入内なんてしないんじゃない...
総二郎がマンションで暮らし始めて1週間・・・今日は一颯のクリスマス会だ。いつもより少し早めに登園しなきゃいけなくて、総二郎が車で一颯を連れて行き、一旦戻ってから私と一緒に保育園に行くことにした。離婚したことも公表してないから大丈夫かと聞いたけど、一颯の通う保育園に西門の関係者はいない・・・それに姓も「牧野」だから問題ないだろうって。「パパ、ぜったいに見にくるよね?ぼく、うしろの列のまん中だから~」「後ろ...
「・・・・・・・・・・・・・」「これが現代の朝食。美味しいから食べてみれば?」「これ、食べ物なのよね?」「もちろん。俺も食べるから一緒にどうぞ」ついさっき、あの女の人が持って来てくれた朝ご飯・・・黄色くてフワフワしたもの(オムレツ)と木の枝を焼いたようなもの(ソーセージ)と草(サラダ)。それに茶色の餅みたいなのと(ロールパン)、白くてドロドロしたもの(ヨーグルト)と黒いお湯(珈琲)。どれを見ても食べ物とは思えず、...
翌朝、祥一郎も俺も一颯にたたき起こされた。つくしがクスクス笑いながら朝食を用意してくれて、7時には4人揃ってそれを食ってた。いつもは2人で食べてるのに、今日は4人・・・それが嬉しかったのか、一颯のテンションは高く・・・・・・「おじちゃん、こんどはいつ来るの~~?」「え?そうだな・・・お仕事がお休みの日かな~~」「じゃあにちようび?」「おじちゃん、日曜日も仕事の時があるんだよ~」「いっくん、無理言わないの。それ...
吹っ飛んでいったものを拾い、その女性は眉間に皺を寄せてる・・・その感じ、桜子が私に腹立ててる時と似ていてドキドキした。・・・まぁ、怒られはしなかったんだけど。今度は“ようふく”というものを着るんだけど、これはどうやって着るのか・・・今までだと女房達が単衣や袿を着せてくれてたから私は立ったままだったんだけど、そうもいかない。チラッとこの人を見たら、同じようなものを着てるし・・・と言うか、これはどうすればいいんだろ...
インターホンに応じたのは俺で、すぐにロックを解除して兄貴をマンションに入れた。車をどこ駐めればいいのかわからないというので駐車場はゲスト用を使うように伝え、部屋番号を告げると3分後にはドアのチャイムが鳴った。客が来る事なんて滅多にないためなのか一颯が喜んで出ていき、つくしがそれを引き留めようとしたが、「どうせすぐに紹介するんだから構わない」と・・・「・・・お兄さん、驚かない?」「刺激的で良いんじゃね?」...
翌日の朝6時・・・俺はまだゲストルームにいた。何故なら、あれからも質問攻めだったからで、この子は今でも目をキラキラさせてる・・・昨夜の高熱はなんだったの?って感じ。聞かれたのは・・・どうして寝床がフカフカなのか・俺が座ってるものは何か・扉(ドア)が何故前に動くのか・自分の着ているパジャマの素材は何か・どうして髪が短いのか・・・こんな質問はまだ説明出来たけど、スマホについては「悪霊が取り憑いてるの?」なんて言う...
総二郎から今日1日の話を聞き、光翔君の気持ちを考えたら胸が痛くなった。大人ならその意味が判るかもしれないけど、3歳児には伝わらない。ただ今まで母親だった人がいなくなり、父親だった人にも他に子どもがいる・・・そんな状況を納得出来る訳がなく、ただ泣くことしか出来なかったんだ。でも、救いなのは今まで側にいた祐子さんが母親代わりを引き受けてくれたこと・・・それなら光翔君は今まで通り、あの家で暮らせる。総二郎はあ...
「梅壺ってところには戻れないよ。あんたは 平安時代・・・西暦でいうと794年から1192年のどこかで生活してた人だろうけど、今は20XX年、つまり1000年前後未来なんだ。しかもあんたは京都にいたみたいだけど、ここは東京という場所・・・1000年前の平安京・梅壺には戻れない。ここには帝も弘徽殿の女御もあんたの女房の桜子って人もいない。どうしてこんなことになってるのかは知らないけど、あんたは過去の人・・・時間旅...
光翔を祐子に任せて、俺は本邸にいる親父に会いに行った。話したのは光翔と会話したときの様子についてと、京都行きは嫌がったこと、そして孝三郎と祐子も加わって話した結果、とりあえず泣き止んで寝ていること・・・親父は「まだ何もわからない歳だから、まだグズるだろうな」と言ったが、その次には「全員で温かく見守ってやろうじゃないか」と。「それと母さんだがな・・・・・・今週末、鎌倉に行くことにしたそうだよ」「今週末?年内...
父親は大納言で、この子の名前は「梅壺の更衣・つくし」。弘徽殿の女御の女房に井戸に突き落とされ、花沢家の庭に落ちたというか、辿り着いた・・・と?絶対に有り得ないと思うけど、でも今までの話を聞く限り思い付きで言ってるわけじゃなさそうだ。ちゃんと体験した・・・と言うか、そんな暮らしをしてきたって感じには聞こえた。だって調べないと判んないことをスラスラ言うんだから・・・そしてあの十二単、この長い髪・・・・・・決定的なの...
離れに戻り、シーンとした部屋で光翔を待った。あんな幼い子どもにどう話そうかなんて、考えても判らない・・・自然に出てくる言葉に任せるしかないと思いつつ、落ち着かないのでつくしに電話しようかと思ったが・・・「あ、そうか・・・あいつの方がバイトに行ってるわ」手に持ったスマホをテーブルに戻し、深い溜息を吐きながら頭を抱える・・・そのうち楽しそうな笑い声が聞こえて、光翔が戻ってくるのが判った。そして志乃さんに手を繋がれ...
「そもそもお前は誰なの?身分と名を名乗りなさいよっ!!」身分と名前を名乗れと言われてカチン。だってここは俺の家だし、不審者はそっちだし!まぁ、「そっち系の病人」に何を言っても無駄かと思い・・・それでもムカつくから言い返してしまった。「俺は花沢物産の後継者で現在は営業課長の花沢類。そしてあんたが居るこの家は俺の親名義の家・・・つまり、今はこの俺がこの家の主なんだけど」「はなざわぶっさん・・・そんな部屋あった...
久しぶりに光翔と一緒に寝て、目が覚めたのは6時。まだ窓の外は暗く、光翔はぐっすり寝ていた。身体を横向きにして光翔の髪を撫で、しばらくその寝顔を眺めることに・・・どこで付けたのか鼻の頭に小さな引っ掻き傷、ふっくらした頬が可愛らしく、思わずフッと笑ってしまう。そんな時間が30分ぐらい過ぎると、カーテンの向こうが明るくなってきた。光翔を起こさないようにそっとベッドを降り、リビングに行くとエアコンを付け、ミ...
どのくらい時間が経ったのか・・・・・・あれから俺も椅子に座ったまま居眠りしてた。時間を確認しようとスマホを見たら丁度0時で、同時に目の前の布団が少し動いた。そして彼女の眉がピクッと動いたのが見えたから、立ち上がって覗き込むと・・・「う~~~~~~ん・・・・・・・・・」「気がついた?」「・・・・・・桜・・・子?」「えっ?誰の名前?」「・・・・・・・・・・・・ん?」「気分はどう?熱、下がったのかな・・・・・・」もう1歩前に出て近づくと、この子は...
16時頃、俺とつくしが待ってる部屋に一颯が戻ってきた。その時には光翔の姿はなく、志乃さんだけ・・・顔を真っ赤にしてニコニコしてる一颯が、「おもしろかったぁ~~」と言って俺の膝の中にポスッと・・・「いっくん、何してきたの?」「あのねぇ、ひ~くんってお友だちがいたからね、いっしょにお庭であそんだの。サッカーしたりね、かくれんぼしてね、鬼ごっこもしたの~~」「・・・仲良く出来たか?」「うん!ここね、ひ~くんのお...
結婚式が終わったら梅雨本番。新婚旅行は俺の仕事の都合で行くことが出来ず、つくしも「産まれてからの家族旅行でいいよ~」なんて言うからお預け。それから彼女は花沢についての本格的な勉強が始まった。ビジネスマナーに再度テーブルマナー、パーティーマナーに英語とフランス語・・・・・・暇を持て余すのが嫌なつくしは結構楽しそうにそれをやってた。ただ、フランス語については溜息もので・・・「いや、全然わかんないんだけど!」「...
光翔君はまるで道具のようにしてこの世に生まれてしまった・・・だからこそ、不幸にしてはいけない・・・幸せにならなきゃいけない。その言葉は胸にズシッと響いた。そして光翔君の幸せはどこにあるのか・・・・・・養父母さんとなる人は素敵なご夫婦だと聞いたけど、それもやっぱり大人の都合であって、光翔君の気持ちは無視。確かに3歳児には判断力なんてないけれど、それでもあの子が1番望むものはなにかを考えるのも必要なのではないか・・・...
すごい形相で近づいてきた司・・・それを見たつくしがピクッと口の端を引き攣らせ、俺は溜息、総二郎とあきらは苦笑い・・・と言うか、楽しそうにしてる。でもここはパーティー会場だし、取っ組み合いの喧嘩はしないだろうと思ってたけど・・・「おい、ちんちくりん」「なによ、クリンクリン」「「・・・・・・・・・ぷっ!」」←総&あきら「・・・・・・はぁ・・・・・・(口喧嘩は出来るよな)・・・」「お前の仕事、なんでも屋なんだって?」「辞めたけどね。それ...
水曜日、つくしはすっかり元通りになった。昨夜から真音もつくしの部屋で寝ており、風邪もうつらなかった様子・・・それにはつくしが1番ホッとしていた。次の日曜日は真音の誕生日のお祝いだし、その時に熱を出してしまったら可哀想だから。「今日は今度働く会社に行って、入社に関する書類とかもらってくるの」「そうなんだ・・・初出勤が年明けって不思議な感じがするよね」「ふふっ、初めましてよりも先に、明けましておめでとうござ...
「なんだって?!龍崎さんが休んだぁ~~~っ?!」「つくし・・・声がデカい」「牧野さん、落ち着いて・・・」次の日、会社に行ったら涼子に言われたひと言・・・朝1番に当番で来ていた子が、かかってきた電話をとると龍崎さんが元気な声で・・・『あ、すみませ~~~ん!今日、お腹が痛くて立てないので会社休みま~~す!』と言ったそう・・・。当番の子が「病院に行ってね」と言ったらしいが、それを言い終わる前に電話を切られたとか・・・あの...
火曜日の午後、今日も真利愛は冷たい風を気にもせず、庭で若い使用人相手に遊んでいた。その様子をリビングから見ていた加代と美央が「子どもは元気ですよね~」とか、「恵子さんの方が風邪引かないかしら」などと話し合いながらティータイムを楽しんでいた。本来加代は使用人なので主家のお茶になど付き合わないのだが、美央が1人だと飲みにくいとのことで、時々一緒にその時間を過ごすことがあった。「美央様、24日ですけれど...
なんだか1日中私に敵対心ぶつけてきた龍崎さん・・・一体なんでそんなに悪態つくの?って疑問だけど、イチイチ聞くのも面倒臭い。教育係も2ヶ月間だし、それが過ぎれば普通の先輩後輩で、私の責任も軽くなるってもんだし。それまで辞めずに頑張るかさえもわかんない子だったから、気にしないようにした。それよりも今日もお稽古だろうか・・・とブツブツ言いながら着替えていた。当然その横には龍崎さんもいて、彼女は私を無視して背中...
15時30分になったら本郷は車のキーを持ち、「迎えに行くね」とつくしの部屋を覗いた。その頃のつくしは熱が引き、身体は幾分楽になっていたので玄関まで見送りに行き、買い物の追加も頼んだ。本郷はそのメモを持ち、戯けたような笑顔で「任せて」と言ってドアを閉める・・・それは何度も謝るつくしを気遣ってのことだろう。そして保育園に着くと美来が「パパ~!」と大喜びで出て来たが、真音はションボリしたままだ。それについ...
<side龍崎麻衣>「はぁ・・・・・・ダルい。こんなつまんない会社、入るんじゃなかった!」まだまだ火曜だってのに会社に行きたくなくてどんより・・・。でも給料ないと遊ぶことも出来ないから、仕方なく起き上がってメイクした。それから昨日買っといた菓子パン食べて、今日の服を選んで・・・「西門さんが迎えに来ないって言ってたから、普通の服でいっか!今日は里奈でも誘って、渋谷に飲みに行こ~~~っと!」それにしても牧野つくしぐら...
この日、浦田は類から依頼されたことを実行するため、自分のアパートで策を練っていた。会社名は判っている。が、関東には松田商事の支店や店は数多く、出向いて調べるのは効率が悪い。しかも防犯カメラに映るのは後々面倒だし、不審者としてマークされる可能性もある。そうなると電話になるが、本郷拓篤を探す理由として、不審に思われないためには・・・「・・・ダメ元でやってみるか」そう呟くと松田商事の本社に電話をかけた。その時...
グランピング・・・・・・豪華なキャンプなんて全然想像出来ないけど、西門さんが異様に張り切ってるから行く事にした。しかもキャンプ道具が要らないからって、車はヴァンキッシュ。この車を運転するのは西門さんOnlyだったはずなのに、この前私が運転したから「もう大丈夫だろう」って。再び5000万円のハンドルを握るのかと思ったら恐怖しかないけど、丁度高嶋さんから御守りももらったばかりだし?これは行ってみるしかないかも!...
「ただいま~!あぁ、寒かった~」本郷がマンションのドアを開けたのは20時30分。玄関で靴を脱いだ瞬間、奥のリビングからバタバタと走ってきたのは子ども達だ。そして出て来た言葉が・・・「パパ!早く来て!」「ママがね、ママがね!」「えっ?どうしたの、2人とも・・・」「いいから早く!つくしママが大変なの!」「うあああぁ~~~ん!」「・・・っ?!」真音が泣くのを見て慌てた本郷がリビングに入ったが、そこにはつくしの姿...
茶筅・・・クルクル回すだけの物だと思ったのに、まさかの5万円。お茶会で使う物は新品だって言うから、その都度5万がクルクルするのかと思ったら私の方がクラクラしそうだった。しかもこれまでカルチャーセンターで2~3回やった時には見様見真似で気にしてなかったのに、それに手順があるなんて・・・しかも西門さんがやると芸術っぽいのに、私がやると料理みたい。ついついゴマ擦りの気分で力を入れたら、見事に3本穂先が折れた・・...
部屋に入った美央は深い溜息を吐いた。そして奥にある自分の部屋に向かうと、そこでスマホを手に取り、ベッドに腰掛けた。着信履歴には柑菜から3件・・・いずれも30分以内にかけてきている。これを無視しても再び花沢に電話をかけてくるだけのこと・・・それならさっさと用件を済ませてしまおうと、リダイヤルをした。その電話はすぐに通話になり、聞こえて来たのは・・・『ちょっと!どうしてすぐに出なかったの?私からの電話なんだか...
「今日もお迎えが来るんですか?」業務終了後、龍崎さんがニヤリと笑って聞いてきた。その「お迎え」とは西門さんのことだろうけど、彼は2週間安静にしなきゃいけないからここには来ない。だけど、その事実を彼女に教える必要はないから「暫く来ないわよ」と言うと、見事に私を無視。自分のロッカーに向かって「面白くないなぁ~」なんて言いながらド派手な私服に着替えていた。「本当に来ないんですか~?」「来ないってば。私の...
次の日・・・一睡もしなかったつくしは、酷い顔で朝食の準備をしていた。顔色も悪く、目の下にはクマが出来ている。泣きすぎて瞼は腫れぼったく、身体が怠くて力が入らない・・・そんな感じだから頭が重く、本郷が起きて来て挨拶をしてもすぐには反応出来なかった。それに気が付いた本郷がキッチンに行くと・・・「つくしさん、どうしたの?」「えっ?あぁ・・・おはよう・・・」「・・・なに、その顔・・・悲惨だよ?」「あはは・・・やっぱり?あんまり寝...
「だって私、西門さんの事が気に入ったんですもの。絶対に手に入れます♪牧野さん、彼女じゃないんだし、問題ないですよね?私、男に関しては今まで失敗した事ないんで~~~♪」本当はすぐにでも言い返したかったけど、上手く言葉が出なかった。男に関しては失敗しかない私にとって、その自信は威力が有り過ぎる・・・だから不本意だけど、目を逸らせてしまった。「・・・そんな話は仕事中にしないでもらえる?早く座りなさいよ、今から研...
類たちが花沢邸に戻ったのは19時で、それから夕食だった。その時には頭にカチューシャを付けた真利愛が加代に抱きつき、加代はそれを見て「まぁ、可愛らしい」と大喜びだ。美央は買って来た菓子の土産を手渡し、玄関は一気に賑やかになったのだが・・・「美央、加代、悪いけど少し頭痛がするから部屋に戻る。真利愛と一緒に食べてやって」「まぁ、類様、大丈夫ですか?」「・・・・・・・・・・・・」「ぱっぱ~~?」「少し休めば良くなるから...
牧野がお茶を入れてくれて、それから一緒に飯を食うことに。その重箱の中には小さめのおにぎり3個におかずが少々で、俺には丁度いい量だったが牧野は若干・・・いや、相当物足りないようだ。だから俺のおにぎりを1個分けてやると、「いやいや、怪我人はちゃんと食べないと!」と言いつつも受け取ってた。「俺はあんまり動かねぇから腹が空かないんだって」「え~~?!起きてるだけでお腹空くよ?」「お前、燃費の良い身体だもんな・...
3年ぶりに類を見たにも関わらず、つくしは無我夢中で3階に上がり、急いでエントランスから外に出た。そして後ろを振り向かずに車を停めた方向に向かって走り、暫くしたら交差点で信号に引っ掛かったので足を止めた。恐る恐る振り返る・・・でも追い掛けてくる人はいない。それにホッとして近くのビルの壁に凭れかかり、息を整えた。そこで類の姿を思い出し、涙が溢れてきた・・・・・・何も変わっていなかった。髪型も昔のままで、類が好...
まさか、私が鋏でちょん切った藤の花と白い花(姫林檎)が家元の宝物だったなんて・・・それを聞いて西門さんが焦っていた事に納得した。だけど今更何も言うなと言うから、それは黙っておくことに・・・申し訳なくて、家元の背中に向けて何度も謝った。その大事なお花、私の部屋で押し潰されておりますのでご安心を!!そして考三郎君は自分の部屋に戻り、家元もトボトボとご自分の部屋に向かう廊下へと・・・。西村事務長も事務所を閉めて...
キャラクター達がダンスしたり歌ったりする中、つくしはそれを無感情で見ていた。ステージが照らされているからその他は当然のように暗く、大勢の人達がいるが、そこには意識がいかない。ただ漫然とそのショーを眺め、全然違う事を考えていた。鞄の中のララのぬいぐるみ・・・それが真利愛に思えて仕方なかった。出来るならキキも取りたかった、と。ショーが終わりに近付いた頃、美来と真音はキャラクターに「バイバイ~~!」と手を...
「・・・・・・・・・・・・」「牧野、もう少し肩の力を抜け・・・逆に怖い」「・・・・・・・・・・・・」「おい、少し右に寄りすぎじゃねぇか?」「・・・・・・・・・・・・」「てか、どんだけゆっくり走ってんだよ。ヴァンキッシュが泣くぞ」「少し黙っててよ!!」今は21時10分、真っ赤なヴァンキッシュを運転してるのは私・・・そして10分前、やっとこさ都内に入ったところ。それは何故か・・・西門さんが防波堤から落ちて足を怪我したからだ。しかもかなり酷い捻挫...