「総二郎・・・悪いけど頼み事があるんだ」『ん?珍しいな、言ってみ?』電話をかけた相手は幼馴染みの西門総二郎。こいつは茶道家だから卒業後に海外に行くこともなく、比較的このマンションに近いところに住んでた。それに体格も俺と変わらないし、「何でも良いから服を貸して」と言うと・・・『は?なんだ、その頼み事は』「詳しいことは言えないんだけど、着る服がない状態で・・・出来たら部屋着を2~3着貸してくれない?ジーンズも...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「総二郎・・・悪いけど頼み事があるんだ」『ん?珍しいな、言ってみ?』電話をかけた相手は幼馴染みの西門総二郎。こいつは茶道家だから卒業後に海外に行くこともなく、比較的このマンションに近いところに住んでた。それに体格も俺と変わらないし、「何でも良いから服を貸して」と言うと・・・『は?なんだ、その頼み事は』「詳しいことは言えないんだけど、着る服がない状態で・・・出来たら部屋着を2~3着貸してくれない?ジーンズも...
「・・・皆様、本日は初釜式へのご参加、ありがとうございました。今日は我が家の現状と、今後についてのお話がございます。どうぞ最後までお聞き下さいますよう、お願い申し上げます」親父の言葉で始まり、後援会の会長と副会長がチラッと目配せをした。後ろに並ぶ面々は何も知らないから戸惑ったような表情を浮かべ、中にはヒソヒソと会話する人も・・・そんな中、まずはお袋が体調を崩し、昨年末から西門の別邸で過ごしていることを話...
ドキドキする自分に違和感というか、疚しい気分というか・・・年頃の女の子の入浴中なのに足を踏み入れるなんて信じられないというか・・・取り合えず平常心を保ちつつ中に入ると、そこには一応俺の思い描いた姿の彼女いた。バスタオルを脇の下からグルグル巻きにして、太股の際どい部分でまでは・・・ーーーなんだ、ちゃんと隠してるじゃんーーー「えっ?俺、今何考えた?」「ん?どうかしたの?」「いや、なんでもない・・・・・・じゃあそこに...
「美和子さんの話を聞いたとき、そういう選択もあると思うて婆様と話しておったんだよ。儂らはそのぐらいしか手伝ってやれないが、孫の為でもあるし、婆様もまだまだ元気だからな・・・つくしさんが正式に西門に入るまで、ここで稽古を付けてもらったらどうじゃな?」「お婆様が?!」「婆ちゃん、本気なのかよ!」「孝三郎、言葉遣い!!」前家元夫人がこの家の事を教えて下さる・・・それは嬉しいというか、怖いと言うか・・・慌てて隣を...
陰陽師の指示もないのにお風呂に入るなんて思わなかった。お湯に身体を浸けたら魂抜かれないだろうか・・・そんなことを考えながらお風呂場に行き、そこで一瞬悩んだ。裸で入る・・・つまり、服を脱ぐ。でも、この服は後ろに「ふぁすなぁ」ってものがあって、それを下ろさなきゃ脱げない。そして手が回らないから、ここは当然・・・「類~~~~~!」「どうかした?助けを呼ぶの、随分早かったね」「服が脱げないの」「えっ?!」「後ろ、...
「初めまして、つくしさん。それに一颯君、父様から写真を見せてもらってたんだよ。うん、元気に挨拶できて立派だな」「うふふ、あけましておめでとう、一颯君。これからよろしくね、つくしさん」爺様と婆様は目を細めて一颯を見ていた。その姿につくしが胸をなで下ろしたのが伝わり、俺もホッとしたんだけど・・・「おじいちゃんとおばあちゃんはだぁれ?」「えっ?!い、いっくん?!」「ん?だってハジメテだから~」「いっくん、...
食べるものはこの時代の方がずっと美味しいって事がわかった♪そう言うと類が真顔で・・・「それは良かったけど、毎回デリバリー・・・つまり、持って来てもらうの?」「へ?」「・・・食事、自分でも作れると良いんだけどね」「・・・・・・・・・」食事をつくる・・・この私が?!この言葉には唖然・・・だって、今まで1度もご飯作ったことがないんだもん!それどころか台所ってところに入ったことないし、どうやって作るのかも知らない・・・食べることは薬...
「今日、ご隠居様が来るの?」「あぁ、だからつくしと一颯も今日は宗家に来てくれ」それは1月4日のこと。私と一颯はこの日まで仕事と保育園を休んでいたので、総二郎の言葉に頷いた。今日は先代にも挨拶するから着物を着るんだけど、移動が大変だから宗家で総二郎に着せてもらうことに・・・その着物は家元夫人が残していったものらしい。「祐子さんのことはみんなに話したの?」「今朝、志乃さんが全員を西の棟に集めてこれまでの...
「この世界って、面白い物が多いんだね~~~!」「・・・多分、世間からしたらあんたが面白いんだと思うけど」「あの”れいぞうこ”っての?あれには入れそうだったなぁ~~」「入ったら事件発生だよ」想像以上に疲れた家電量販店・・・これまた想像以上に重たいオーブンレンジを抱え、つくしにはそのほかの小物を持ってもらって部屋に戻った。それから急いでレンジを設置し、料理を温めようと思ったんだけど・・・「・・・あれ?」「どうかした...
正月三が日が過ぎ、京都から爺様と婆様が来る日になった。今回は森田さんの同行を断り、西村事務長が京都まで迎えに行くことに・・・そして昼過ぎには宗家に2人がやってきて、俺たちは玄関で2人を出迎えた。80を過ぎている2人だが、日頃からよく動くからそこまでの疲労感はなく、光翔が婆様に飛びついても蹌踉けることもなかった。それを見て孝三郎が「まだまだ元気じゃん!」と軽口を叩き、親父が窘める.「この光景はいくつにな...
突然行くことになった家電量販店・・・俺も自分で家電を買ったことがないため、全然判んないんだけど。でもついでだから炊飯器と珈琲メーカー、それにドライヤーと全自動洗濯機も決めて、洗濯機だけは明日配達してもらうことにしようと考えた。「ところで、類。おうぶんれんじって何をする物なの?」「冷たい物を温める時に使うんだよ。ちなみにカタカナ表記ね」「あ!さっきの勉強が役立つかも!」「・・・声は小さめにね」順応性の高い...
新しい年になり、大福茶が終われば俺はマンションに戻った。それが朝の9時で、今日の日中は家族3人で過ごし、夕方になったら一颯を連れて西門へ行くことにした。毎年静かに過ごすんだが、今年はお袋もおらず、親父が余計に淋しく思うから・・・そう言うと親父は「子供じゃあるまいし!」と言ったが、せっかくの正月だから1度ぐらいは全員で食事をしようという話になったワケだ。「丁度祥一郎も休みだと言うし、兄貴も呼ぶことにし...
少し勉強するつもりが、つくしはノートに書いてやった「ひらがな」と「数字」に夢中・・・まるで書道をするかの如く姿勢正しく、新しいページにそれを書き写してた。その間に俺はデリバリーを頼み、家中の足りない物を確認・・・と言うか、すでにある物が大型テレビとソファー、それにベッド1台と冷蔵庫だけ。カーテンは各部屋にあるけど、ラグはリビングだけ。エアコンは各部屋に付けてたからいいとして、問題は・・・・・・この子を1人でこ...
クリスマス、つくしの誕生日と慌ただしく過ぎていき、とうとう今日は大晦日。西門では除夜釜が行われる。本来除夜釜は、除夜から元旦の朝にかけて行う茶事。だが今ではほとんど行われず、その理由は時間帯が深夜なので体力的な問題と、そもそも人が集まらないからだ。西門でも29日と30日の午後、そして31日の昼間に後援会の幹部達を呼んで極簡単に行うだけになっていた。通常なら席入りが午後の9時半で、露地で迎え付け、手...
マンションに戻ったら、午前中に買った荷物の中からグラスを出し、早速お茶をそれに注いだ。つくしはジッと眺めてたけど、「お茶だよ」というと、ペロッと舐めてみて・・・「あ、大丈夫そう!」と一気飲み。「・・・ちなみにこれが桃のジュースで、こっちが林檎のジュース。オレンジ・・・みかんのジュースも買ったから、好きな物を飲んでいいよ」「うわぁ、甘い匂いがする~~」「・・・グラスは洗ってから入れるんだよ」「あらう?」「・・・あ...
楽しいクリスマスイブを過ごし、その翌日の夕方・・・俺は宗家の一室でスマホを握りしめていた。そして勇気を出し、かけた先は京都の木島氏だ。旦那の方が学校が冬休みになっていると聞いたので、この時間なら出てくれると思って・・・その内容は当然光翔との養子縁組だ。こちらから頼んでおきながら、こんな結果になるとは・・・『はい、木島ですが』「東京の西門です。先日はありがとうございました。ご連絡が遅くなって申し訳ありません...
使っていなかった部屋だから当然何もない・・・あれだけ大量に買った日用品だけど、リビングに置いたらホンの少しにしか見えなかった。つくしはこの部屋の隅に正座してるし、相談しようにも話が通じないし・・・。それでも住めるようにしないとあっという間に夕方になってしまう。「私は何をしたらいいの?」「・・・片付けだけど・・・」「そう言えば私の唐衣裳はどこに?」「あぁ、車に積んだままだね。取ってこなきゃ・・・って、それを着るつ...
総二郎が帰ってきたのは18時すぎ。その時にはもう私達も買い物から帰ってて、支度を済ませていた。気になるのはケーキのこと・・・「やっぱり持って行かない方がいいよね?」と言うと、総二郎はニコッと笑って「手土産にしようぜ」って。「いやいや、西門には一流の職人さんがいるんだよ?恥ずかしくないかな・・・まぁまぁ綺麗には出来たんだけど///」「大勢いるんだから切り分けて好きな物を食えばいいだろ。せっかくだから持って行...
何とか食事を済ませ、車に戻ったのが14時。今から俺のマンションに連れて行き、そこでしばらく住まわせるつもりなんだけど・・・その後はどうする?って考えた途端に思考が止まる。何故ならこの子には戸籍もないし、名字もない。何らかの事情で「無戸籍」の状態になっている人が戸籍を作るとなると、裁判手続が必要な場合もある。でも、それはほとんどが親が出生届をしてないからであって、この子の場合はそうじゃない。「過去から...
翌朝、いつものように一颯は起きてきて、「パパ~」と抱きついてくる。その姿が可愛くて、抱き上げたまま顔を洗いに行った。そして一緒に朝食を食べて、8時過ぎたら俺は仕事に行くことに・・・今日、一颯は保育園だし、つくしは休みだけど家でケーキ作りだと言っていた。だから昨日の話は保育園から帰ってからゆっくり言い聞かせるとのこと。「・・・じゃあ17時ぐらいには電話する。一颯の気持ちを1番で考えていいからな」「うん、わ...
何度見ても変な光景・・・緑が少ないし、山が見えない。見えるのは四角くて高いもの・・・・・・ニョキニョキしてて怖いんだけど、あれは何で出来てるのかしら。木・・・ではなさそうだけど。「ん~~~~~、そう言われると困るんだけど、あれはビルという現代の建物で、あの中に人が住んだり会社があるんだよ」「あの中に人が住んでるの?さっきみたいなので登るの?」「エスカレーターは住居用じゃなくて商業用・・・さっきみたいに買い物する...
飯を食い終わり、今日も一颯と一緒に風呂に入った。毎日ここに帰るようになって1週間・・・会食があった1日を除き、これは俺の役目になっている。髪を洗うことや水鉄砲でのお巫山戯にも慣れ、これはこれで楽しかった。が、まだこの子には真実を話していないので、それをいつするのか・・・・・・嬉しそうにはしゃぐ一颯を見ながら悩んでいた。それなのに、風呂から上がるとその悩みを一変させる電話があった。それは孝三郎・・・夜咄の茶事が...
「よし!このぐらいでいいかなぁ~~~」「・・・・・・・・・・・・」「何か足りないもの、あります?」「いえ、特には・・・」夏美さんは両手に色んな色の布を持ってた。こうして重ねて見ると唐衣裳みたい・・・短いし軽いから全然似てないんだけど。それを選びながら言われたのは、これらが「とっぷす」という名前ってこと。「せえたぁ」とか「とれぇなぁ」とか「てぃしゃつ」って言ってたけど、その違いは判らず・・・売り場には人型(マネキン)が...
美涼の狂気に満ちた声が部屋に響いた。それを聞く桜井の両親は呆然・・・・・・俺と親父はこの姿が初めてではないので驚くことはなかったが。そして拓郎氏は美涼の言葉に反論もせず・・・つまり、美涼の言ったことは本当だったのだろう。俺がそれを確かめると深く息を吐き、「正直言えば疑っていた」と呟いた。「・・・2人目が出来たと聞いた時、何故か素直に喜べなかった・・・。夫婦の時間というか・・・それも少なくなっていたし、拓巳が産まれて...
「ほうむせんたぁ」で「買い物」ということをして、その荷物を車まで運んだんだけど・・・そもそも「買い物」とは?「花沢さん、入り口にもう1台のカートを置いてきたので取ってきますね!」「あぁ、悪いね」「すみませんが、その荷物を2人で車に積んでて下さい。すぐに手伝いますので」「了解」夏美さんがそんなことを言って引き返していったので、ここで類に聞いてみたんだけど・・・「ねぇ、類。買い物ってどうやるの?確か銅銭って...
「俺は美涼さんに対して恋愛感情はなかったし、子供を作ろうとも思わなかったんですよ。でもあの日、美涼さんは俺に酒を飲ませて執拗に迫ってきた・・・・・・母娘で同じ手口を使うなんて、随分強引ですよね」真理子が美涼を睨むが、美涼の方はまだそっぽを向いていた。ただ、今から話すことは美涼にとって最悪な部分の数々・・・何故なら完全に「犯罪」の域に入るのだから。それは光翔を産んだ産婦人科医を脅し、東京から追い出したこと。...
『わかってると思うけど、あんたはこの世界のことを何も知らない。だから今から会う人が聞くことも判んないと思うんだ。でも俺も側にいない時があるから、その時は事故で何も覚えてないってことにしておいて。くれぐれもあんたのいた世界の話をしないようにね』車の中で類にそう言われ、「なんでもや」ってところに着いたら、1人の女の子が乗ってきた。髪の毛が黒くないし、硬そうな生地の袴・・・じゃなくて、”ぱんつ”?を穿いてる...
正直・・・桜井の面々は申し訳ないと言った顔で来ると思っていた。それなのに父親も母親も恐ろしい表情で、西門に敵意丸出しだ。何故そうなるのか・・・美涼がすべて話しているはずだから、非はそちらにあると思うんだが・・・?「美涼さんからどこまで聞いたのかわかりませんが、悪いのは父だけではありません。冷静に今後の事を話そうじゃありませんか」「家元だけじゃないって・・・どう言う意味?」「言葉の通りです。まずは落ち着いて・・・...
「はい、こんな感じに仕上がりましたよ・・・・・・如何ですか、お嬢様」「・・・・・・・・・・・・」「ご不満ですか💢?!」「いえ、とんでもないです!ありがとうございました!!」「・・・・・・・・・」←隅っこの椅子に座ってる類「びよういん」の女の人が怖い顔して私に鏡を見せてくれてる・・・それには後ろ髪が写ってたけど、本当に短くなって吃驚!私が子供の頃に尼僧になった隣家のお婆様みたい・・・・・・これで写経も読経もしなくていいなんて!しかも、な...
墓参りの翌日・・・その日はお袋が鎌倉に行く日だった。思ったよりも別邸の手入れに時間が掛かったために予定よりも遅くなったのだが、そのおかげで俺は実父の墓参りの報告をすることが出来た。朝の9時、すでにお袋は身支度を調えていて、俺が話があると言うと気不味そうに臨時で使用していた部屋に入れてくれた。親父との夫婦部屋はあの日から1度も入ってないのだとか・・・あの部屋の物は志乃さんに頼んで片付けてもらい、すでに鎌倉...
「きゃああああああっ!!何この速さーーーーっ!!」「・・・まだ敷地内だってば」車に乗ってからの反応は何となく想像出来てた。だって牛車に乗ってた人が自動車に乗るんだから、その速さが違うのは当たり前。ちなみに牛車の時速は2.6kmほどで、成人の歩行速度よりも遅い。 一方、馬車は牛車よりは速く、2頭立ての馬車であれば時速4~10kmほど。ただ馬は昔から「神馬」と言われるほど貴重な動物であったことに加え、山が多くて多湿...
裕也氏は静かに俺の対面に座った。そしてつくしと一颯を見て優しく笑い、「息子さんはおいくつかな?」と。その言い方からして、つくしのことを美涼と勘違いしているようだった。「・・・来年4歳になります。名前は一颯と言います。隣は・・・婚約者の牧野つくしさんです」「・・・婚約者・・・?」「は、初めまして・・・牧野つくしと申します」「こんにちは~~、まきのいぶき、3歳です!」「・・・牧野さん・・・?」電話では墓参りをしたいと言う...
まさかの珈琲で撃沈・・・・・・そんなに不味かったとは思わなくて、口直しに俺のロールパンを食べてる姿に吹き出しそうだった。「まぁ、子どもには難しい食べ物だよね・・・・・・」「子ども?誰が?」「あんた、まだ子どもでしょ?」「・・・・・・この世界は22歳でも子供なの?」「・・・・・・・・・・・・・・・」22歳?!俺とそんなに変わんないの?!!こんな童顔でぺったんこの胸なのに?!と言うか、平安時代ってそんな歳で入内なんてしないんじゃない...
総二郎がマンションで暮らし始めて1週間・・・今日は一颯のクリスマス会だ。いつもより少し早めに登園しなきゃいけなくて、総二郎が車で一颯を連れて行き、一旦戻ってから私と一緒に保育園に行くことにした。離婚したことも公表してないから大丈夫かと聞いたけど、一颯の通う保育園に西門の関係者はいない・・・それに姓も「牧野」だから問題ないだろうって。「パパ、ぜったいに見にくるよね?ぼく、うしろの列のまん中だから~」「後ろ...
「・・・・・・・・・・・・・」「これが現代の朝食。美味しいから食べてみれば?」「これ、食べ物なのよね?」「もちろん。俺も食べるから一緒にどうぞ」ついさっき、あの女の人が持って来てくれた朝ご飯・・・黄色くてフワフワしたもの(オムレツ)と木の枝を焼いたようなもの(ソーセージ)と草(サラダ)。それに茶色の餅みたいなのと(ロールパン)、白くてドロドロしたもの(ヨーグルト)と黒いお湯(珈琲)。どれを見ても食べ物とは思えず、...
翌朝、祥一郎も俺も一颯にたたき起こされた。つくしがクスクス笑いながら朝食を用意してくれて、7時には4人揃ってそれを食ってた。いつもは2人で食べてるのに、今日は4人・・・それが嬉しかったのか、一颯のテンションは高く・・・・・・「おじちゃん、こんどはいつ来るの~~?」「え?そうだな・・・お仕事がお休みの日かな~~」「じゃあにちようび?」「おじちゃん、日曜日も仕事の時があるんだよ~」「いっくん、無理言わないの。それ...
吹っ飛んでいったものを拾い、その女性は眉間に皺を寄せてる・・・その感じ、桜子が私に腹立ててる時と似ていてドキドキした。・・・まぁ、怒られはしなかったんだけど。今度は“ようふく”というものを着るんだけど、これはどうやって着るのか・・・今までだと女房達が単衣や袿を着せてくれてたから私は立ったままだったんだけど、そうもいかない。チラッとこの人を見たら、同じようなものを着てるし・・・と言うか、これはどうすればいいんだろ...
インターホンに応じたのは俺で、すぐにロックを解除して兄貴をマンションに入れた。車をどこ駐めればいいのかわからないというので駐車場はゲスト用を使うように伝え、部屋番号を告げると3分後にはドアのチャイムが鳴った。客が来る事なんて滅多にないためなのか一颯が喜んで出ていき、つくしがそれを引き留めようとしたが、「どうせすぐに紹介するんだから構わない」と・・・「・・・お兄さん、驚かない?」「刺激的で良いんじゃね?」...
翌日の朝6時・・・俺はまだゲストルームにいた。何故なら、あれからも質問攻めだったからで、この子は今でも目をキラキラさせてる・・・昨夜の高熱はなんだったの?って感じ。聞かれたのは・・・どうして寝床がフカフカなのか・俺が座ってるものは何か・扉(ドア)が何故前に動くのか・自分の着ているパジャマの素材は何か・どうして髪が短いのか・・・こんな質問はまだ説明出来たけど、スマホについては「悪霊が取り憑いてるの?」なんて言う...
総二郎から今日1日の話を聞き、光翔君の気持ちを考えたら胸が痛くなった。大人ならその意味が判るかもしれないけど、3歳児には伝わらない。ただ今まで母親だった人がいなくなり、父親だった人にも他に子どもがいる・・・そんな状況を納得出来る訳がなく、ただ泣くことしか出来なかったんだ。でも、救いなのは今まで側にいた祐子さんが母親代わりを引き受けてくれたこと・・・それなら光翔君は今まで通り、あの家で暮らせる。総二郎はあ...
「梅壺ってところには戻れないよ。あんたは 平安時代・・・西暦でいうと794年から1192年のどこかで生活してた人だろうけど、今は20XX年、つまり1000年前後未来なんだ。しかもあんたは京都にいたみたいだけど、ここは東京という場所・・・1000年前の平安京・梅壺には戻れない。ここには帝も弘徽殿の女御もあんたの女房の桜子って人もいない。どうしてこんなことになってるのかは知らないけど、あんたは過去の人・・・時間旅...
光翔を祐子に任せて、俺は本邸にいる親父に会いに行った。話したのは光翔と会話したときの様子についてと、京都行きは嫌がったこと、そして孝三郎と祐子も加わって話した結果、とりあえず泣き止んで寝ていること・・・親父は「まだ何もわからない歳だから、まだグズるだろうな」と言ったが、その次には「全員で温かく見守ってやろうじゃないか」と。「それと母さんだがな・・・・・・今週末、鎌倉に行くことにしたそうだよ」「今週末?年内...
父親は大納言で、この子の名前は「梅壺の更衣・つくし」。弘徽殿の女御の女房に井戸に突き落とされ、花沢家の庭に落ちたというか、辿り着いた・・・と?絶対に有り得ないと思うけど、でも今までの話を聞く限り思い付きで言ってるわけじゃなさそうだ。ちゃんと体験した・・・と言うか、そんな暮らしをしてきたって感じには聞こえた。だって調べないと判んないことをスラスラ言うんだから・・・そしてあの十二単、この長い髪・・・・・・決定的なの...
離れに戻り、シーンとした部屋で光翔を待った。あんな幼い子どもにどう話そうかなんて、考えても判らない・・・自然に出てくる言葉に任せるしかないと思いつつ、落ち着かないのでつくしに電話しようかと思ったが・・・「あ、そうか・・・あいつの方がバイトに行ってるわ」手に持ったスマホをテーブルに戻し、深い溜息を吐きながら頭を抱える・・・そのうち楽しそうな笑い声が聞こえて、光翔が戻ってくるのが判った。そして志乃さんに手を繋がれ...
「そもそもお前は誰なの?身分と名を名乗りなさいよっ!!」身分と名前を名乗れと言われてカチン。だってここは俺の家だし、不審者はそっちだし!まぁ、「そっち系の病人」に何を言っても無駄かと思い・・・それでもムカつくから言い返してしまった。「俺は花沢物産の後継者で現在は営業課長の花沢類。そしてあんたが居るこの家は俺の親名義の家・・・つまり、今はこの俺がこの家の主なんだけど」「はなざわぶっさん・・・そんな部屋あった...
久しぶりに光翔と一緒に寝て、目が覚めたのは6時。まだ窓の外は暗く、光翔はぐっすり寝ていた。身体を横向きにして光翔の髪を撫で、しばらくその寝顔を眺めることに・・・どこで付けたのか鼻の頭に小さな引っ掻き傷、ふっくらした頬が可愛らしく、思わずフッと笑ってしまう。そんな時間が30分ぐらい過ぎると、カーテンの向こうが明るくなってきた。光翔を起こさないようにそっとベッドを降り、リビングに行くとエアコンを付け、ミ...
どのくらい時間が経ったのか・・・・・・あれから俺も椅子に座ったまま居眠りしてた。時間を確認しようとスマホを見たら丁度0時で、同時に目の前の布団が少し動いた。そして彼女の眉がピクッと動いたのが見えたから、立ち上がって覗き込むと・・・「う~~~~~~ん・・・・・・・・・」「気がついた?」「・・・・・・桜・・・子?」「えっ?誰の名前?」「・・・・・・・・・・・・ん?」「気分はどう?熱、下がったのかな・・・・・・」もう1歩前に出て近づくと、この子は...
16時頃、俺とつくしが待ってる部屋に一颯が戻ってきた。その時には光翔の姿はなく、志乃さんだけ・・・顔を真っ赤にしてニコニコしてる一颯が、「おもしろかったぁ~~」と言って俺の膝の中にポスッと・・・「いっくん、何してきたの?」「あのねぇ、ひ~くんってお友だちがいたからね、いっしょにお庭であそんだの。サッカーしたりね、かくれんぼしてね、鬼ごっこもしたの~~」「・・・仲良く出来たか?」「うん!ここね、ひ~くんのお...
結婚式が終わったら梅雨本番。新婚旅行は俺の仕事の都合で行くことが出来ず、つくしも「産まれてからの家族旅行でいいよ~」なんて言うからお預け。それから彼女は花沢についての本格的な勉強が始まった。ビジネスマナーに再度テーブルマナー、パーティーマナーに英語とフランス語・・・・・・暇を持て余すのが嫌なつくしは結構楽しそうにそれをやってた。ただ、フランス語については溜息もので・・・「いや、全然わかんないんだけど!」「...
光翔君はまるで道具のようにしてこの世に生まれてしまった・・・だからこそ、不幸にしてはいけない・・・幸せにならなきゃいけない。その言葉は胸にズシッと響いた。そして光翔君の幸せはどこにあるのか・・・・・・養父母さんとなる人は素敵なご夫婦だと聞いたけど、それもやっぱり大人の都合であって、光翔君の気持ちは無視。確かに3歳児には判断力なんてないけれど、それでもあの子が1番望むものはなにかを考えるのも必要なのではないか・・・...
すごい形相で近づいてきた司・・・それを見たつくしがピクッと口の端を引き攣らせ、俺は溜息、総二郎とあきらは苦笑い・・・と言うか、楽しそうにしてる。でもここはパーティー会場だし、取っ組み合いの喧嘩はしないだろうと思ってたけど・・・「おい、ちんちくりん」「なによ、クリンクリン」「「・・・・・・・・・ぷっ!」」←総&あきら「・・・・・・はぁ・・・・・・(口喧嘩は出来るよな)・・・」「お前の仕事、なんでも屋なんだって?」「辞めたけどね。それ...
初めて入る西門のプライベートエリア・・・本邸とは違い、少しだけ簡素な感じがするけど、それでも普通の家庭に比べたら豪華そのもの。ただ使用人さんが多くいて、志乃さんに連れられて歩く私のことを不思議そうに見ていた。それにこっちの庭は本邸の庭よりも自然な感じ・・・冬だから花は少なかったけど、真っ赤な椿が見事だった。「こちらのお部屋ですわ」「は、はい!」「ふふふ・・・そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですからね」「・・・...
「新郎花沢類、 あなたはここにいる牧野つくしを病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」「はい、誓います」「新婦牧野つくし あなたはここにいる花沢類を病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」「はい///誓います」「皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた このお二人を神が慈しみ深く守り、助け...
「あの人と違って祐子だったら一緒に飯食って一緒に寝てくれると思うから、そうしたら淋しいとか思わねぇだろ!俺と総兄が光翔にしっかり話してさ、それでいて光翔を一番大事にしてくれる人がそこにいれば・・・それって今よりも幸せなんじゃね?ってこと///!」孝三郎さんの話を聞いた2人がポカンとしてる。私はこの人とさっき見た女の人・・・美涼さんの付き人だったって言う中村祐子さんの関係を知らないから反応も出来なかった。で...
「・・・・・・はい、出来ましたよ。本当にお綺麗ですわ~~、このドレス🧡」「・・・・・・あはははは、ありがとうございます」綺麗なのはドレスだけかいっ!!な~~~んてツッコミは入れないけど、少々眉間に皺が寄った。今日は私達の結婚式だ🧡梅雨入りしたけど今日は爽やかな晴れの日で、ガーデンウエディングにはピッタリ♪類はすでに着替えてお父様達と何処かに行ったし、牧野家はビビって家族控え室から出てこない。今、私は1人でドレス...
「うえええぇ~~~~~💦」「・・・大丈夫?つくし」「だいじょ・・・・・・うえええぇ💦」「可哀想に・・・代わってあげられなくてごめん・・・」「平気だよ・・・ちょっと疲れが・・・おえええぇ~💦」災害とも言える母さんの帰国で振り回される毎日、部屋の引っ越し、ドタバタしながら婚姻届を書き、それをつくしと母さんが提出しにいくという想定外の出来事。そして写真撮影もあの人が監督みたいになってて、やっと終わって渡仏。その翌日からつくしの...
HappyBirthday 類君🧡今日は類君のお誕生日ですねっ!今年はイベントがないので残念ですが、連載をお休みしてコソッとお話をアップします。内容は前話の「なんでも屋」の続きです。数話だけのお話ですが、その後の2人を楽しんでくださいね♪◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆『なんですって?!それ、本当なの、類!!』「うん、間違いないみたい♪つくしがちゃんとエコー写真見せてくれたから♪今日は俺の誕・・・」『すぐに帰国するわ!じゃ...
「つくしさんにはこんなややこしい家のことを覚えろと言わなきゃならんが、皆でサポートするが・・・考えてはくれないか?孝三郎は中心に居るよりサポートするほうが力を発揮できる男だと思うし、総二郎は皆を纏める力があると思っている。血の繋がりなどこの際二の次じゃないか?先代も納得して下さるだろうし、もうお亡くなりの先々代達もお許し下さると思うがな・・・・・・」家元の言葉は素直に嬉しかった。総二郎は頑なにこの家を出る...
花沢の主治医が来たのは30分後。当然その時俺はゲストルームから出され、食事をしながら処置が終わるのを待ってた。それにしても・・・今時の若い子が「無礼者」とか言う?その前に何歳だ?俺の予想では15歳ぐらいだと思うんだけど・・・・・・でも15歳だったらうちで働かないよね?うちで働くなら加代が面接だけど、最近そんな話も聞かないし、雇うのなら最終的には俺の許可が必要だし。住み込みの場合、未成年が応募したら断ってる...
「家元、総二郎です。牧野つくしさんと一颯を連れてきました」「・・・入りなさい」「失礼いたします」親に会うのにこんなややこしい手順を踏む・・・それが西門家だ。判っていたけど、いざ目の前にするとやっぱり恐怖でしかない。総二郎がここに残り、私達も一緒にって言葉は嬉しかったけど、これまで自由に育ってきた一颯にここでの暮らしは無理・・・そんなことを考えながら総二郎の後ろをついて入った。その部屋は何畳あるのかわかんな...
ーーーつくし姫様、どこにおられるのです?ーー・・・・・・あぁ、桜子が探してるわ。早く戻らなきゃ・・・帝を待たせたらお父様の首が危ないし、私だって追い出されちゃう・・・・・・そろそろ日も暮れただろうし、私だって身支度整えないと・・・それにもう1回桜子に寝屋でのアレコレを聞かなきゃ不安だわ・・・・・・ーーあぁ、こんなところにいらしたのですか?まぁ、そんなに濡れて汚して・・・どうするつもりなのです?!ーー私のせいじゃないのよ、桜子...
一颯の服も、私の服も髪も取り繕う時間もない。とにかく可能な限り品良くして、急いでメイクも始めた。その時、総二郎はデリバリーを頼むと言って一颯とメニューを見ながらワイワイやってる・・・それを若干ムカつきながら横目で見て、真新しいストッキングを探してた。そんな感じでドタバタしてると20分なんてあっという間に過ぎ、届いたのは一颯の決めたピザ・・・こんな気分でピザ?!とガクッとしたけど、そんなことも言ってられな...
「あなた、梅壺の更衣の女房でしょう?」「いいのよ、そんなに身分が高い人でもないし、そこの女房ならいなくなっても誰も探さないわ」「ちょっ・・・!」「「「あなたが悪いのよ!私達でさえお話し出来ないのに、左近衛大将様のお手に触れるなんて!!」」」井戸を覗き込んでいた私の背中をグイグイ押すもんだから、慌てて縁を手で握って踏ん張った。でも相手は3人だし、唐衣裳は動きにくい・・・しかも誰か私の袴を踏んでる?それなら...
日曜の朝、いつものように起きると光翔の部屋に向かった。光翔は母親がいなくなった夜もぐずることなく独りで寝て、起こしたときもいつもと変わらない。ただ「母さまは~?」と目を擦りながら聞いたので、「ここにはいないぞ」と言うと・・・・・・「・・・え?」「昨日話しただろ?母様はもうここには戻らないんだ」「・・・あぁ、そうだったっけ・・・・・・」「淋しいか?」「・・・ううん、そんなことはないけど・・・・・・母さまのほうがさみしくないか...
「・・・よし!誰もいないわね・・・・・・それじゃあ失礼して・・・・・・とりゃあああああぁっ!!」袴の裾を持ち上げ、廊下の欄干に手をかけてヒョイッとそれを飛び越えた♪こんなの実家にいたときにはよくやってたし、怖くもなんともない。桜子にはド叱られされたけど、そんなの気にしちゃいないし~。いつものように上手く庭の白砂の上に着地して、落とした扇を拾った瞬間、廊下の真下の空間にユラリと動くものが・・・ハッとしてそっちに目をや...
クリスマスツリーの組み立てが終わり、オーナメントもイルミネーションランプも取り付けた。電源を入れるとそれが美しく光り、光翔は手を叩いて喜んでいた。ここで部屋に戻した中村祐子を呼び、光翔の着替えを頼むことに。彼女はこれまでもこの子の世話をしているから、着替えがどこにあるのか知っているからだ。ダイニングに入ってきた祐子は元気がなかったが、光翔も彼女には慣れているため、すぐに「ゆうこちゃん!」と言って抱...
私が入内して数日後・・・・・・まだ1度も帝には呼ばれてない。それも全く気にならないから、暢気に過ごしてた。・・・と、言うのも実家から連れてきた女房の桜子と入れ替わってるから♪更衣だったら勝手にウロウロ出来ないけど、女房だったら内裏の庭や廊下、帝の住まわれる清涼殿に近づいたりしなければ歩くぐらいは問題ない。女御様の女房達に出会っても、端に避けて頭下げてりゃ文句言われないし、部屋ばかりの暮らしよりはマシだもんね...
「ママ、ご飯まぁだ?」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「ねぇ、サンタさんってここにも来てくれるかなぁ?」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「ぼくね、ひこうきのおもちゃがほしいっておてがみ書いたんだ~」「・・・・・・・・・・・・うん・・・」「・・・ママ、聞いてる?」「えっ?あぁ・・・・・・ご飯だよね・・・えっ!もう12時回ってるじゃん!!」総二郎が家元達に全部を話すと言った日・・・私は朝からソワソワして落ち着かなかった。調査したことは私も全部聞かさ...
平安京・・・それは摂関家の娘と天皇との婚姻により、外祖父の藤原氏の女系が重視される女性の時代。平仮名・片仮名も生まれ、『枕草子』や『源氏物語』に代表される和歌・貴族生活の日記・恋愛物語の女流貴族文学が繁栄し、貴族文化が誕生した時代。この頃、ある貴族のお屋敷に、1人の姫がおりました。名前を「つくし」と言い、この時代の女性にしてはおおらかで元気が良く、窮屈な屋敷住まいにウンザリしているのです。今日も姫に...
親父が光翔とこの先の約束をする・・・それを聞いていると箸が止まった。志乃さんも戸惑いを隠せないようで、時々俺に視線を送ってくる。「おじいちゃま、クリスマスってしってる~~?」「あぁ、知っとるよ。光翔の部屋にはツリーを飾っていないのか?」「そんなのないけどぉ~、お外にはいっぱいあるよ?ぼくもほしい~~♪」「そうか・・・じゃあ買いに行くか?」「親父・・・・・・あのさ、さっきの話だけど・・・」俺としてはすぐにでも・・・い...
俺の父親は神楽木直也・・・でも、すでにこの世にはいない。そして俺が何度か会った神楽木裕也は、実の父親の双子の弟だっただなんて・・・あの人は俺が自分の甥だと知っていて、それであんな言葉を言ったのか・・・『茶道家になって、幸せですかな?いや、失礼・・・・・・立派な家元におなりなさいね』それが直也氏の残した言葉だったから・・・俺が感じた不思議なものも、血の繋がりがあったからなのか・・・・・・美涼がいなくなったこのタイミングで、...
「最後の質問だ。お袋・・・俺の本当の父親は誰なのか、教えてくれないか?」お袋の表情が変わった。そして親父も横目でお袋を見て、深い溜息を漏らしていた・・・。親父も美涼の母親、真理子との関係を知られたので文句など言えない。だからこの場で俺も聞いたのだが、お袋はなかなか言おうとしなかった。すると親父の方から「もう責めるつもりはないし、私も申し訳なかったと思っている」と・・・「・・・私は裏切るつもりはなかった・・・と言...
美涼のしてきたことは粗方判った。あとは細かい疑問を問い質すと、どうでもいいと言った感じで淡々と答えていた。村上への報酬1200万やその借金の肩代わりにに使った金の出所は何処なのか・・・それは美涼の爺様が亡くなったときに遺贈としてもらった土地を売却して得た3000万から出したと言った。西門家に嫁ぐ気満々だった美涼にとって、3000万は大した金額じゃなかったんだろう。村上への接触は偶然だったのか・・・美涼は...
式場が決まったら招待客を決めたり、料理についての打ち合わせが続いた。招待客といっても私の方は三毛猫の手の社員全員と家族だけ・・・友達は数人いるんだけど、就職してからはそんなに付き合いがなかったからだ。そんな友達に「花沢物産の御曹司との結婚」なんて、説明する方が面倒くさかった。しかも花沢家の方に招待客が多すぎる・・・その式場に入れる最大限の人数のうち、95%が会社関連だもん。それは類が選ぶのではなく、ご両親...
「総二郎様はその人と親子ではない・・・本当の子どもは私の方なんですよ。私、孝三郎さんとは腹違いの姉になるんです・・・・・・ねぇ、お父様」美涼の言葉に一同固まった。さっきまで怯えていたお袋もこの時は親父を睨み、孝三郎は目も口も見開いて「姉」と言った美涼を見ている・・・これは俺も想定外だったが、さっきの親父の態度を思い出したら・・・俺が親父の子じゃないと言った時にもそこまで驚かなかった・・・と言うか、お袋に対して怒りを...
年が明けるとお父様達はフランスに戻ることに。その時には私と類とで空港まで見送ったけど、同行してる秘書さん達もいるから賑やかと言うか華やかというか・・・淋しいとか悲しいって気分はゼロ。しかも来月にはまた帰国して、今度はドレスの採寸をするとか言うし・・・「ドレス・・・ですか?」「そうよ、ウエディングドレス🧡私、義理の娘のドレスを作るのが夢だったの~~」「えっ、もうウエディングドレス?!」「当たり前じゃないの、春...
泣きじゃくる祐子に孝三郎がハンカチを差し出し、彼女はそれで涙を拭いていた。俺は義兄のしたことにムカついたが、今更それをどうにか出来るわけでもなく・・・中村祐子が「そのことはもういい」と言うし、不同意性交等罪の公訴時効は15年だが、それも訴えないとのこと。俺は力になると言ったが、「美涼のしたことを黙認してきた罪があるので」と断られた。すると、それを聞いていた美涼が吐き捨てるように・・・「そりゃ訴えないでしょ...
「・・・・・・これでよしっと!」翌年、3月の最終金曜日・・・私は数年間使っていたデスクを綺麗に片付けた。今日は私の最後の出勤日、そして類の27歳の誕生日だ。私の代わりに事務をしてくれることになった夏美ちゃんへの引き継ぎも終わり、彼女には真新しい業務日誌を渡した。「牧野さん、本当にあの花沢物産の専務さんと結婚するんですか?」「えへへ///そうなの。6月のお式にはみんな呼ぶからさ、夏美ちゃんも来てね♪」「行って良...
親父の様子は気になったが、今は美涼のしてきたことを話すのが先。そう思って俺は見合い後の美涼の脅迫の内容を話した。この時すでに俺が家元の息子でないことを知っていたこと・・・それを話さない代わりに自分との結婚を承諾しろと言ったこと・・・それに再びお袋が驚き、「どうしてあなたがそんなことを?」と呟いた。相変わらず親父は黙ったまま・・・美涼は何か否定したかったようだが、さっきの光翔のことで動揺したのか、こっちも何...
ご両親に挨拶できないのが気になったけど、加代さん曰く「今晩もこちらにお戻りでしょう?」って・・・それなら夕方にお詫びを言えばいいかと思って類の車に急いだ。その時、類は車の中で誰かに電話中・・・だから外で待ってると、指でチョイチョイって合図されたからドアを開けて助手席に座った。「電話、誰と?」「秘書の藤本。今日は少し遅れるって話しただけ」「類が会社に遅れるのなら、私はタクシーで行くよ?」「そんなことさせな...
「本日付で俺は美涼と離婚する。そして西門流の次期家元を降り、孝三郎にその座を譲ろうと思う」その言葉に場がシーンとなった。だがすぐに大声を上げたのは美涼。親父達の前なのに表情を激変させ、キッと俺を睨み、膝の上で重ねていた手をワナワナと震わせ・・・「総二郎様、何を言い出すのです!正気ですか!!」「あぁ、正気だ。お前とは離婚する」「光翔だって居るのですよ!あの子はあなたの跡継ぎではありませんか!」「大きな...
「・・・・・・・・・・・・・・・う~~~ん」身体が重い・・・・・・・・・何かにグルグル巻きにされてる感じ・・・それに暑い・・・・・・と言うか、くすぐったい?それなのに良い香りがして、自然と大きく息を吸い・・・・・・・・・ハッと目を開けると、目の前に人肌が。しかも肩と腰に長いものが巻き付いてて、それがどうやら息苦しさの原因のよう。暑いのは単純にこの長いもののせいで、くすぐったいのはフワフワのお布団のせい。そのお布団が直接肌に当たってて・・・・・・...
総二郎はラグの上にコロンと横になり、目を閉じで何かを考えていた。「総二郎・・・私、お風呂に入ってくるね」「あぁ・・・・・・」「もう少し居るんでしょ?」「あぁ・・・・・・」私の言葉なんて聞いてるんだか・・・・・・でも、この人の心情を慮るとそんな言葉は出せない。我が子と信じて育ててきた子どもを手放すんだもの・・・たとえ本当の息子と暮らせると言っても、その子ども達は「同じ」じゃない。一颯に向けられる愛情と、光翔君に向けられる愛...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*フワモコのパジャマのボタンが外されていく・・・俺の真下で真っ赤になったつくしが両手で目を覆ってる。そんな仕草に笑いながらパジャマをずらしたら、可愛らしい膨らみを隠してるのは白いレースたっぷりのブラ。今まで何度か見たことあるの...
12月の中旬・・・このマンションのエントランスにはクリスマスツリーが飾られていた。それを見ると一颯のテンションもあがり、今週の土曜日は保育園のクリスマス会本番だ。総二郎が来ないことに残念がってたけど、「ちゃんととって、パパに見せてよ?」と張り切ってた。今日も保育園に迎えに行き、買い物をしてマンションに戻ったんだけど、入り口でコンシェルジュさんに呼び止められ・・・「えっ?大型の荷物ですか?」「はい、こちら...
いつもシャワーで済ませてるから、俺も久しぶりのバスタブ・・・それなのに、まさか1人じゃないなんて。さっきまで綺麗に結ってた髪を解いて無造作に括り、恥ずかしそうに俯いてるつくしが隣にいるなんて。しかもすでに顔が真っ赤・・・。今日は逆上せないでよ?と思いながらつつっと横移動してつくしの肩と触れ合うところまで行った。そうしたらビクッとして顔を俺の方に向け、今までになく困った顔してる。「・・・そんなに怯えなくても...
「父さま、たーーーっくさん子どもがいたんだよ♪」「そうか・・・楽しかったか?」「うん!あのね、すべり台があってね、おっきなボールもあってね」「落ち着いて話せって。志乃さんに迷惑かけなかったか?」「かけてないよぉ~~」「ほほほ、大丈夫ですわ。東京にも似たような場所があるので、また行きましょうね~」「それでね、それでね、あのね!」夕方遅く、別邸に戻ってきた光翔は大興奮。俺の前で遊びに行った室内公園での出来...
類のお部屋でのクリスマス・・・窓を背中にしてソファーに座り、部屋の真ん中にあるツリーを眺めながらの二次会♪ワインは飲みやすいものだったのでチビチビと。それよりもオードブルの美味しいこと🧡ちなみに日本では、パーティなどで出される酒のつまみや軽食類を盛り合わせたものをオードブルという。サークルトレーに並べられてるのが一般的だけど、ここでは綺麗なお皿にカラフルで小さなお料理がちょこっと乗ってるだけ。まぁ、す...
話の続きで俺が出したのは、スマホの画像・・・・・・天草で撮った、つくしと一颯の写真だ。それを見た2人はしばらく沈黙していたが、その様子を見て察したのか、お互いに目を合わせていた。「光翔のことは後でお話しします。まず、この写真に写っている子どもは、この女性と俺の間に出来た息子で、一颯と言います。今・・・3歳半です」「・・・なに?!」「でも光翔も3歳半じゃないの?」「一颯の方が4月生まれ、光翔はその1ヶ月前に生ま...
怒鳴り合う類とお母様の向こうにクリスマスツリーが見える・・・こんなクリスマスパーティーなんてあるんだろうか。しかも、私はこのためにこんなドレスアップして、いったい誰と闘ってるのか・・・見えてきたのは類よりもご両親の方が一枚上手だということで、この数ヶ月間、私達はこの2人の手のひらの上で転がされていた・・・と?しかもあのグアム行きまでもが花沢家の陰謀だったなんて・・・せめてもの救いはお爺ちゃんが何も知らなかった...
この一乗寺の別邸は家元の隠居後の居住まいで、ここで茶会なども行われている。造りは東京の本邸の半分ほどだが、それでも庭も屋敷も一般住宅とは比べものにならないぐらい広い。そして当然植木・花木も多く、池もあるし、石組みもある。違うのは裏手が山であることと、若い人間が少ないということ。森田事務長の他には使用人も数人だし、若弟子は1人も居ない。居るのは爺様に昔から仕えている古弟子の大谷さんと小山さんだけだ。...
「どういうつもり?昨日と話が違うよね・・・・・・・・・仕組んだの?!息子を騙してそんなに面白いの?!」「えぇ、騙したわよ?」「「・・・・・・・・・・・・」」俺がテーブルまで叩いて意気込んでみたのに、騙したことをあっさり認めた・・・・・・しかも父さんまで「今まで気がつかなかったのか?」って・・・・・・呆気にとられて言葉も出ない。そんな俺の隣で、つくしの方が「騙してたってどういう意味ですか?」って身を乗り出して聞いていた。それに対し...
12月10日、今日は光翔を連れて京都に行く日だ。光翔はこの話を聞いてから毎日楽しみにしていたので、昨日の夜はワクワクして寝られなかったぐらい。そのせいで熱でも出さないかと心配したが、元気よく起きて朝食も完食。今は中村祐子に身支度を整えてもらっていた。その時には一応美涼も側に居て、「ご挨拶は丁寧にね」とか「お行儀良くするのよ」と声をかけていたが、表情を見るとどうでも良さそうな感じだ。光翔が粗相をする...
勇気振り絞って叫んだのに、母さんと父さんの、向こう側にいるのは両親と同じ年ぐらいのご婦人4人。その後ろに娘でも居るのかと思ったけど、どう見てもその人達しかいなくて、俺は意味が判らずポカンとしてしまった。「今の言葉、よく聞き取れなかったわ♪もう1度紹介して下さる?」「そうだな。さぁさぁ、皆様、私達も座りましょう!」『『『『Oui♪』』』』「何を突っ立ってるの?ほら、類達はそこの席よ。牧野さん・・・だったかし...
「まっかなおはなのぉ~~、トナカイさんはぁ~~♪」キッチンで夕飯の準備をしていると、リビングから聞こえてくる一颯の声。新しい保育園でのクリスマス会で歌を歌うらしいので、その練習をしていた。見に行くのは私だけ・・・でもちゃんと録画して総二郎に見せなきゃいけないから、私はそっちの方が心配だった。ブレてたらすっごく怒られそう・・・だから早く行って良い席を確保しなきゃ、とか。「ママ、ごはんできたぁ?」「まだだよ...
まさか、このパジャマがプロポースのきっけかになるなんて・・・・・・まさか、恋人関係すっ飛ばして婚約者になるなんて・・・・・・まさか、花沢さんが私のこと好きだなんて🧡プロポーズにYESの返事をしたら彼が優しく抱き締めてくれて、私もうっとりしてその腕の中に埋もれてたんだけど、その時に窓の外で車の音が・・・・・・「やばっ!!今何時?!」「えっ?えっと・・・・・・18時20分・・・だけど?「父さんと母さんが戻ってきたんだ!牧野、身支度...
山本のところに行ってから2日後、書斎で仕事中に西村事務長から「口切りで祝いをくれた人達への礼状の発送が終わった」との報告を受けた。その時、「あの方はどうしますか?」と言われたので手を止めると・・・「あの方?」「総二郎様がご自分でお礼を言いたいと言われた神楽木様ですよ」「・・・あぁ、親父の友人の・・・」「はい。ですからお礼状は出していませんが、ゆっくりしてるとすぐに日が経ちますので・・・」「そうだったな・・・住所...
「これ、どういうつもりでプレゼントしてくれたの?」「どういうつもり・・・とは・・・・・・ああああああぁーーーーっ!!」そう・・・俺が牧野に聞きたかったのはペアのルームウエア(パジャマ)のこと。どうしてこんなものを「家で見ろ」と言って渡したのか・・・実は俺に恋人がいると思って渡したのだとしたら、俺の朝の発言が超絶恥ずかしいことになる。でも牧野は俺にそんな相手がいないことを知ってるはずだし、全く意味が判らない。同サ...
山本のマンションを出て鑑定施設に戻ったのは16時。そこに車を駐めていたからで、濱崎の車が戻った事に気がついた市村が外に出て来た。そこで俺ではなく、濱崎が山本の証言を掻い摘まんで説明し、市村は20年近く前の検定結果が外部に漏らされたことを聞いて驚いていた。同時にそれがあきら経由で俺が依頼した、自分の父子鑑定であることも知ることになり・・・「・・・そうなんですか?私はそのころからここにいましたが、責任者では...
牧野が着替え終わって出てきたのは17時。これまでに何度もドレスアップした姿を見てきたから驚くことはなかったけど、今日のは一段と可愛く見えた。両サイドから編み込んだ髪をふんわり纏め、そこにパールのピンをいくつか挿してる。メイクはピンク系、ヒラヒラしたデザインの袖から白い腕が出てて、裾に鏤められたラメレースがキラキラして・・・「類様、こんな感じに仕上げましたけど、いかがでしょう・・・?」「・・・うん、素敵だと...
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「総二郎・・・悪いけど頼み事があるんだ」『ん?珍しいな、言ってみ?』電話をかけた相手は幼馴染みの西門総二郎。こいつは茶道家だから卒業後に海外に行くこともなく、比較的このマンションに近いところに住んでた。それに体格も俺と変わらないし、「何でも良いから服を貸して」と言うと・・・『は?なんだ、その頼み事は』「詳しいことは言えないんだけど、着る服がない状態で・・・出来たら部屋着を2~3着貸してくれない?ジーンズも...
「・・・皆様、本日は初釜式へのご参加、ありがとうございました。今日は我が家の現状と、今後についてのお話がございます。どうぞ最後までお聞き下さいますよう、お願い申し上げます」親父の言葉で始まり、後援会の会長と副会長がチラッと目配せをした。後ろに並ぶ面々は何も知らないから戸惑ったような表情を浮かべ、中にはヒソヒソと会話する人も・・・そんな中、まずはお袋が体調を崩し、昨年末から西門の別邸で過ごしていることを話...
ドキドキする自分に違和感というか、疚しい気分というか・・・年頃の女の子の入浴中なのに足を踏み入れるなんて信じられないというか・・・取り合えず平常心を保ちつつ中に入ると、そこには一応俺の思い描いた姿の彼女いた。バスタオルを脇の下からグルグル巻きにして、太股の際どい部分でまでは・・・ーーーなんだ、ちゃんと隠してるじゃんーーー「えっ?俺、今何考えた?」「ん?どうかしたの?」「いや、なんでもない・・・・・・じゃあそこに...
「美和子さんの話を聞いたとき、そういう選択もあると思うて婆様と話しておったんだよ。儂らはそのぐらいしか手伝ってやれないが、孫の為でもあるし、婆様もまだまだ元気だからな・・・つくしさんが正式に西門に入るまで、ここで稽古を付けてもらったらどうじゃな?」「お婆様が?!」「婆ちゃん、本気なのかよ!」「孝三郎、言葉遣い!!」前家元夫人がこの家の事を教えて下さる・・・それは嬉しいというか、怖いと言うか・・・慌てて隣を...
陰陽師の指示もないのにお風呂に入るなんて思わなかった。お湯に身体を浸けたら魂抜かれないだろうか・・・そんなことを考えながらお風呂場に行き、そこで一瞬悩んだ。裸で入る・・・つまり、服を脱ぐ。でも、この服は後ろに「ふぁすなぁ」ってものがあって、それを下ろさなきゃ脱げない。そして手が回らないから、ここは当然・・・「類~~~~~!」「どうかした?助けを呼ぶの、随分早かったね」「服が脱げないの」「えっ?!」「後ろ、...
「初めまして、つくしさん。それに一颯君、父様から写真を見せてもらってたんだよ。うん、元気に挨拶できて立派だな」「うふふ、あけましておめでとう、一颯君。これからよろしくね、つくしさん」爺様と婆様は目を細めて一颯を見ていた。その姿につくしが胸をなで下ろしたのが伝わり、俺もホッとしたんだけど・・・「おじいちゃんとおばあちゃんはだぁれ?」「えっ?!い、いっくん?!」「ん?だってハジメテだから~」「いっくん、...
食べるものはこの時代の方がずっと美味しいって事がわかった♪そう言うと類が真顔で・・・「それは良かったけど、毎回デリバリー・・・つまり、持って来てもらうの?」「へ?」「・・・食事、自分でも作れると良いんだけどね」「・・・・・・・・・」食事をつくる・・・この私が?!この言葉には唖然・・・だって、今まで1度もご飯作ったことがないんだもん!それどころか台所ってところに入ったことないし、どうやって作るのかも知らない・・・食べることは薬...
「今日、ご隠居様が来るの?」「あぁ、だからつくしと一颯も今日は宗家に来てくれ」それは1月4日のこと。私と一颯はこの日まで仕事と保育園を休んでいたので、総二郎の言葉に頷いた。今日は先代にも挨拶するから着物を着るんだけど、移動が大変だから宗家で総二郎に着せてもらうことに・・・その着物は家元夫人が残していったものらしい。「祐子さんのことはみんなに話したの?」「今朝、志乃さんが全員を西の棟に集めてこれまでの...
「この世界って、面白い物が多いんだね~~~!」「・・・多分、世間からしたらあんたが面白いんだと思うけど」「あの”れいぞうこ”っての?あれには入れそうだったなぁ~~」「入ったら事件発生だよ」想像以上に疲れた家電量販店・・・これまた想像以上に重たいオーブンレンジを抱え、つくしにはそのほかの小物を持ってもらって部屋に戻った。それから急いでレンジを設置し、料理を温めようと思ったんだけど・・・「・・・あれ?」「どうかした...
正月三が日が過ぎ、京都から爺様と婆様が来る日になった。今回は森田さんの同行を断り、西村事務長が京都まで迎えに行くことに・・・そして昼過ぎには宗家に2人がやってきて、俺たちは玄関で2人を出迎えた。80を過ぎている2人だが、日頃からよく動くからそこまでの疲労感はなく、光翔が婆様に飛びついても蹌踉けることもなかった。それを見て孝三郎が「まだまだ元気じゃん!」と軽口を叩き、親父が窘める.「この光景はいくつにな...
突然行くことになった家電量販店・・・俺も自分で家電を買ったことがないため、全然判んないんだけど。でもついでだから炊飯器と珈琲メーカー、それにドライヤーと全自動洗濯機も決めて、洗濯機だけは明日配達してもらうことにしようと考えた。「ところで、類。おうぶんれんじって何をする物なの?」「冷たい物を温める時に使うんだよ。ちなみにカタカナ表記ね」「あ!さっきの勉強が役立つかも!」「・・・声は小さめにね」順応性の高い...
新しい年になり、大福茶が終われば俺はマンションに戻った。それが朝の9時で、今日の日中は家族3人で過ごし、夕方になったら一颯を連れて西門へ行くことにした。毎年静かに過ごすんだが、今年はお袋もおらず、親父が余計に淋しく思うから・・・そう言うと親父は「子供じゃあるまいし!」と言ったが、せっかくの正月だから1度ぐらいは全員で食事をしようという話になったワケだ。「丁度祥一郎も休みだと言うし、兄貴も呼ぶことにし...
少し勉強するつもりが、つくしはノートに書いてやった「ひらがな」と「数字」に夢中・・・まるで書道をするかの如く姿勢正しく、新しいページにそれを書き写してた。その間に俺はデリバリーを頼み、家中の足りない物を確認・・・と言うか、すでにある物が大型テレビとソファー、それにベッド1台と冷蔵庫だけ。カーテンは各部屋にあるけど、ラグはリビングだけ。エアコンは各部屋に付けてたからいいとして、問題は・・・・・・この子を1人でこ...
クリスマス、つくしの誕生日と慌ただしく過ぎていき、とうとう今日は大晦日。西門では除夜釜が行われる。本来除夜釜は、除夜から元旦の朝にかけて行う茶事。だが今ではほとんど行われず、その理由は時間帯が深夜なので体力的な問題と、そもそも人が集まらないからだ。西門でも29日と30日の午後、そして31日の昼間に後援会の幹部達を呼んで極簡単に行うだけになっていた。通常なら席入りが午後の9時半で、露地で迎え付け、手...
マンションに戻ったら、午前中に買った荷物の中からグラスを出し、早速お茶をそれに注いだ。つくしはジッと眺めてたけど、「お茶だよ」というと、ペロッと舐めてみて・・・「あ、大丈夫そう!」と一気飲み。「・・・ちなみにこれが桃のジュースで、こっちが林檎のジュース。オレンジ・・・みかんのジュースも買ったから、好きな物を飲んでいいよ」「うわぁ、甘い匂いがする~~」「・・・グラスは洗ってから入れるんだよ」「あらう?」「・・・あ...
楽しいクリスマスイブを過ごし、その翌日の夕方・・・俺は宗家の一室でスマホを握りしめていた。そして勇気を出し、かけた先は京都の木島氏だ。旦那の方が学校が冬休みになっていると聞いたので、この時間なら出てくれると思って・・・その内容は当然光翔との養子縁組だ。こちらから頼んでおきながら、こんな結果になるとは・・・『はい、木島ですが』「東京の西門です。先日はありがとうございました。ご連絡が遅くなって申し訳ありません...
使っていなかった部屋だから当然何もない・・・あれだけ大量に買った日用品だけど、リビングに置いたらホンの少しにしか見えなかった。つくしはこの部屋の隅に正座してるし、相談しようにも話が通じないし・・・。それでも住めるようにしないとあっという間に夕方になってしまう。「私は何をしたらいいの?」「・・・片付けだけど・・・」「そう言えば私の唐衣裳はどこに?」「あぁ、車に積んだままだね。取ってこなきゃ・・・って、それを着るつ...
総二郎が帰ってきたのは18時すぎ。その時にはもう私達も買い物から帰ってて、支度を済ませていた。気になるのはケーキのこと・・・「やっぱり持って行かない方がいいよね?」と言うと、総二郎はニコッと笑って「手土産にしようぜ」って。「いやいや、西門には一流の職人さんがいるんだよ?恥ずかしくないかな・・・まぁまぁ綺麗には出来たんだけど///」「大勢いるんだから切り分けて好きな物を食えばいいだろ。せっかくだから持って行...
何とか食事を済ませ、車に戻ったのが14時。今から俺のマンションに連れて行き、そこでしばらく住まわせるつもりなんだけど・・・その後はどうする?って考えた途端に思考が止まる。何故ならこの子には戸籍もないし、名字もない。何らかの事情で「無戸籍」の状態になっている人が戸籍を作るとなると、裁判手続が必要な場合もある。でも、それはほとんどが親が出生届をしてないからであって、この子の場合はそうじゃない。「過去から...
翌朝、いつものように一颯は起きてきて、「パパ~」と抱きついてくる。その姿が可愛くて、抱き上げたまま顔を洗いに行った。そして一緒に朝食を食べて、8時過ぎたら俺は仕事に行くことに・・・今日、一颯は保育園だし、つくしは休みだけど家でケーキ作りだと言っていた。だから昨日の話は保育園から帰ってからゆっくり言い聞かせるとのこと。「・・・じゃあ17時ぐらいには電話する。一颯の気持ちを1番で考えていいからな」「うん、わ...
そこまで話したとき、時間は15時になっていた。つくしはそろそろ園に電話をしないといけないので、類に断りを入れてスマホを手に持った。「もしもし、牧野ですけど・・・はい、お世話になっています。今日なんですけど、おむかえの時間を17時過ぎに変えても良いですか?用事があって遠くまで出掛けてまして、戻るのがそのぐらいになるんです。・・・はい、本郷美来ちゃんも同じ時間に・・・・・・美来ちゃんの具合は悪くなっていませんか?...
「勝手に熊にしたり星にされちゃたまんないわ💢女を何だと思ってんの?!」「その文句は俺に言うな、ゼウスに言ってくれ!」「だってさ~~~~・・・・・・はっ!」「どうした?」気が付いたら湯船にのんびり浸かって足を伸ばし、総二郎と肩がくっついた状態で夜空にクソ文句・・・真横を見たら麗しい顔が私を見てるし、ちょっと濡れた前髪が色っぽい。私はあれだけしっかり巻いてたバスタオルが緩んでて、身体が半分以上見えてる・・・「うわ...
それからも話合いは続き、「どうして真音の保育園が判ったのか」というつくしの疑問に入った。「俺が頼んだ情報屋が、偶然本郷って男の子どもが通う保育園に行って聞き込みをしたんだ。そこでつくしに見覚えがある人がいて、そこから保育士に接触したんだ」「あ・・・もしかしてひろみ先生?」「名前はよく覚えてないけど、その保育士が本郷を狙ってて・・・みたいな?その保育士から真音の保育園を聞いたんだ。でも真音がずっと休んでて...
総二郎が先に露天風呂に行ってから、私は1人でどうしようかとウロウロ・・・普通の旅館ならあるはずの脱衣場がないし、わざわざあそこまで行ってパンツを脱ぐのもヘン。それならテントの中で素っ裸になって、バスタオル巻いていく?そのタオル類が何処にあるかと探したら、部屋の隅にある棚に置いてあった。フェイスタオルにバスタオルも何枚か・・・「てか、それよりもシーツの替えが多いんだけど・・・どうしてだろう?」それは深く考えな...
この3年間の、類と真利愛の生活についての話は続いた。結婚式では総二郎、司、あきらも呼び、真利愛はすでに対面をしていること。そしてつくしの失踪は花沢家の仕組んだことであり、行方を捜しているということも話した、と。「そう言えば司がね・・・」「・・・道明寺・・・何か言ってた?」「ううん、特になにも・・・ただ真利愛を肩に乗っけて笑ってたよ、あいつ・・・」「えっ!真利愛があの人の肩に?!」「総二郎とあきらは花沢にすごく怒...
「はぁ~~~~~~!お腹いっぱい♪」「お前は飲まずに食ったからな・・・」もうバーベキューの網の上には焦げた野菜しかない。用意されていたお肉も殆どなくなり、総二郎は途中からビールばかり飲んでる。今はもうトングも置いてお皿に移したお肉をツマミに、すっかり暗くなった空を見上げ・・・・・・内心、これからどうするんだろう?ってドキドキしてた。しかもこのバーベキューテーブルのすぐ近くに露天風呂がある。嫌でも目に入るそれ...
西門邸・・・この広大な敷地を持つ屋敷は、正面から入ると美しい日本庭園に圧倒される。その庭にも色んな表情があり、竹林や梅園、桜の庭に紅葉の庭、そして石庭などもあって、その時期の茶会に相応しい庭を眺めながら茶会が出来るようになっていた。その中でも竹林に囲まれた庵・・・そこは躙り口のある本格的な茶室があり、特別な茶事にはそこを使うのだ。その反対側である北の庭は自然のままの庭があり、椿などの茶花となる花木が植え...
何とか予約したグランピングのフロントに到着・・・17時までって言われていたんだけど、そのギリギリの16時50分だった。私は運転席でぐったりしていたので、総二郎が元気よく手続きに行ってくれて、私達の泊まるテントの位置を聞いてくれた。「お待たせ~♪」「・・・すごい山の中だね~。車はどうすればいいの?」「ドームテントのすぐ近くまで行けば、そこに駐車場があるってさ」「了解・・・」「その場所聞いたんだけど、この道を左...
27日の夕方、類はいつものように執務室で仕事をしていた。その時に私用のスマホが鳴り、類はそれをチラッと見る。掛けてきたのは総二郎だ。当然そこには藤本もいたが、類はその電話に出ると「総二郎、どうかした?」と言った。その相手の名前で藤本が手を止め、類の方を見る・・・2日前の事があるので当然だろう。類はそれを見ないフリして席を立ち、窓の外に目を向けて話し始めた。これは「計画」の一部であり、前回のように類の...
もうすぐ5月という季節だから気温はぐんぐん上がってきた。だから着替えは嵩張らず、薄手の服に上着があれば大丈夫・・・?でも山の中だから寒いかも・・・と、なかなか持って行くものが決まらない。いや、昨日の夜に粗方決めてたんだけど、どうしても不安・・・必要ないのは可愛いワンピだって事ぐらいだ。「まぁ、いっか・・・国内だし、最悪どこかで買えば・・・」湯治の温泉だとかグランピングだとか言っても、場所は東北自動車道矢板ICを降...
キッチンで夕食をつくるつくし・・・その手にはスマホがあった。味噌汁を作りながら見ているのは真利愛の動画で、音を小さくして繰り返し見ていたのだ。子ども用ではない大きなベッドに寝かされている真利愛・・・そのベビー服は如何にも上質だとわかるもので、可愛らしいワンポイントの模様があるだけの真っ白なものだ。余計なフリルもリボンもない襟付きのロンパース・・・おそらくオーガニックコットンなのだろう。小さな手で顔を擦った...
とうとう来てしまったゴールデンウィーク初日・・・昨日の夜は目が冴えて眠れず、やっと寝たと思ったらもう朝だった。だから頭がぼんやりしちゃう・・・でも今日はそんな事言ってられない!だって再び5000万円のハンドルを握らなきゃいけないんだもん!僅かな傷だって許してくれないだろうから、ここは一発気合いを入れないと!!そしてその先は・・・・・・総二郎と山の中で1週間の監禁生活///!それがどんな感じなのかを想像したら頭が...
今日は通いの家政婦が来ているようで、無表情な女性が1人、せっせとテーブルに軽食を運んでいた。リビングには大きなクリスマスツリーがあり、壁にもクリスマスリース、窓辺にはポインセチアが並び、まるで12月のホテルロビーのような派手な飾り付けだ。そのクリスマスツリーはゴールドのライトが光るだけの大人っぽいもので、瑛翔も冷めた性格なのか感心はなさそうだ。真利愛は美央に後ろに隠れ、無言でこの部屋を見回している...
野田の話が気になり、俺はつくしの部屋に向かった。花と木(それとエロ本)にしか興味のない野田にも判ったぐらいの高嶋の態度・・・はやり何か企んでるな?と思ったから。「つくし、入るぞ~」そう言ってドアを開けたが・・・・・・そこにつくしの姿はなかった。でも鞄はあるし、着ていた服も脱いである。それに部屋の隅には小さなスーツケースが広げられていて、そこにはカラフルな下着が山ほど置いてあった。・・・なるほど、これがグランピ...
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...