時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
結局ひとつ余ってしまった社食のランチ・・・どうするのかな~と思って眺めていたら、それを藤本さんが持ち上げた瞬間に目が合った。思わず視線を逸らしたけど、そのあとで言われたのが・・・「牧野さん、これ、晩ご飯にしますか?」「はいっ!いただきます!!」「・・・・・・・・・ぷっ・・・」「花沢さん、今笑いました?」「いや、そんな事はない。午後の仕事に取り掛かろうか」「牧野さん、会社では専務と呼んでいただけませんか?」「あっ!そ...
自分では説明は出来ないと言い、俺に質問しろという・・・1度は目を合わせたが、牧野はすぐに何もない部屋の壁に視線を移した。心底困ったという顔・・・まるで俺が悪人のような気分にさえなった。それでもこの機会を逃したら、またこいつが居なくなるような気がして・・・まずは現在の住所を聞いた。それは都心のM町だと言い、ワンルームマンションを借りていると。ワンルームなら1人暮らしか・・・と何故かホッとする俺。携帯の番号を変えた...
<side藤本>牧野さんが大発見とか言うから、今日もこの応接室でランチ・・・毎日こんな事は出来ないのにと思うものの、その大発見が気になって、専務の指示で社食に日替わりを注文。つい、調子に乗って「特上」にしてしまったが、それが届いていつでも食べられるようにしていたら、牧野さんがノックしてきた。廊下で待ってると誰かに見付かるリスクが高いと思い、すぐに開けると彼女は大荷物を抱えて入って来た。「役員フロアの受付...
「お~~~~~~い、俺の事を忘れてないか?」「あ?あぁ、完全に忘れてたわ」俺の後ろで書道家の友人が叫ぶ・・・でも、そいつもすぐに何かを察したのか、苦笑いしながら「んじゃ、俺は帰るわ」と言って踵を返した。俺もその背中に手を振って、「また飲もうぜ」というと、ヒラヒラと手を振られた。そのあと再び牧野の方に顔を向けると、こいつはバツが悪そうに下を向いてやがった。ゆっくりそこに近付くと、何故かこいつの身体が逃...
秘書室に着くと藤本さんは社用と私用の電話番号を教えてくれた後、パソコンで出退勤システムの入力をしてからすぐに「専務の出迎えに行ってきます」と言って出ていった。私は更衣室に入ってコートを脱ぎ、お弁当の入った紙袋をロッカーへ入れた。その時にも後ろにはお姉様達・・・挨拶はもちろんしたけど、怖いから振り向く事も出来ない。でも背中を向けてたら、また何かをされるかも・・・そう思うと恐ろしくて、勇気を振り絞ってクルッ...
「もしも何も予定がないならさ、俺と沖縄にいかない?」葛城さんが真面目な顔でそういうから一瞬キョトン・・・「今年のゴールデンウィークは最大9連休取れるだろ?牧野は無理なのか?」って言われて、慌てて無理だと言った。だって告白はされたけど、その返事をしていない私に旅行の誘い?それって・・・友達とか同僚って意味じゃないよね?行ってしまったら、自然と同じ部屋に・・・そう考えてるって事だよね?彼が石垣島とか宮古島とか...
昨日俺が買った白米・・・その炊きたてのご飯と、キノコの味噌汁。肉じゃがと言う料理は聞いた事があるけど、ひじきと大豆の五目煮は知らない。茶碗蒸しは料亭で食べたことはある・・・温かいプリンみたいなヤツだ。それに綺麗な黄色の卵焼き・・・これを牧野が作ったんだと思ったらすごく不思議だった。「はい、じゃあいただきま~~~す!」「・・・・・・いただきます」「お口に合うといいんだけど♪」はじめにキノコの味噌汁を・・・・・・それはほん...
18時になり、今日は残業無しで帰ることにした。葛城さんとの約束もあるし・・・・・・それに最近帰宅が遅かったから結構疲れていた。デスクの上には今にも崩れそうな書類の山・・・それを片付けていたら、手元が狂って床にばらまいてしまった。慌てて拾ってると先輩がそれを手伝ってくれて・・・「牧野さん、顔色悪いよ?風邪引いた?」「えっ?ううん、大丈夫です。今日は早く帰るんで」「そお?寄り道せずに早く帰ってゆっくり寝なさいね」...
翌日の日曜日。この日もお天気だったから、早速私はサンルームでお布団を干した。超高級な物干し竿&台・・・正直、どうしてそんなに高いのか、私にはさっぱり判らなかったけど。でも「高級品」と言われたら、この銀色も特別な輝きに見えるから不思議だ。それが済んだら洗濯機の説明書を読み・・・・・・「今までが壊れかけの二槽式洗濯機だったからなぁ・・・ドラム式ってなんで斜めなんだろう?」取説によるとドラム式洗濯機は洗濯槽の回転軸...
牧野のマンション前から移動しても、バックミラーに映る姿を何度も見ていた。でも曲がってしまえばそれも見えなくなり・・・俺は溜息を漏らして自宅方面に向かった。本当に平気か・・・なんて、大丈夫だと言ってるあいつに他の言葉を言わせたかったのか?俺は自分が牧野をコントロールしようとしているような気がして、その瞬間すげぇ情けなかった。平気じゃないと言われたらどうするつもりだったのか・・・助けてくれと言われたとして、ど...
私の聞き間違いだろうか・・・今、米100㎏と聞こえたのだが。米100㎏を誰が食べるというの?私がキョトンとしていたら、花沢さんはスタスタと車に向かって歩き出して・・・はっ!と気がついて後を追った。そして背中に向かって「どういう事ですか?」って聞いたら・・・「あそこに精米店ってのがあったから、空き時間に米買った、それだけだよ。すごいよね、マンションまで持って来てくれるって」「配達してくれるんですか?それはす...
お蕎麦を食べ終わった頃、外はもう真っ暗・・・西門さんは「絶対に無理すんな」って言葉を残してマンションから出て行った。私は駐車場まで降りて、そこでもう1度お礼を言い、マンションの契約手続きも全部任せてしまった。彼はレンタカーの窓をあけて片腕を掛け、少し苦笑いしながら「本当に平気か?」と・・・「うん、もう言葉にも困らないし、引っ越しも出来たし・・・めっちゃ遅いけど就活始めるよ」「まぁ、のんびり探せばよくね?家...
花沢さんが景気よくカードでお支払い・・・私はその時、店員さんが抱えてきた高級そうな長い箱を眺めていた。しかも私の買い物だって特大の袋に4つ分で、それがあの車に乗せられるのかと・・・そうしたらあの日に配達してくれた人がすっ飛んで来て、「本日もお運びします!」って。・・・うん、確かに花沢さんの車は大きいけど前だけがびょんと長いだけだし、二人乗り出し、後ろが狭すぎて入りそうにないんだけどさ。「ちょっ・・・なんでそん...
引っ越し業者に頼むほどの量もない・・・そんな牧野の引っ越しは俺1人でやった。まだまだフラつくあいつには荷物の片付けだけさせて、俺は借りていたワンボックスへの積み込み作業で汗だくになった。常日頃大事にしている手だが、あちこちに小さな傷が出来る。それを牧野に見せないように隠しながら、俺は段ボールを運び出した。大半は不用品回収業者が持っていくから、僅かな食器類と、メインは衣類・・・牧野はそれを段ボールに詰めな...
花沢物産に入社して数日後、初めての土曜日が来た。仕事が休みで、このマンションでは初めての休日・・・・・・空気はまだ冷たいけど、小鳥の声も聞こえてサイコー!!そしてめっちゃ天気がいい♪光合成できたらいいのに~って感じ♪「・・・とは言え、お布団が干せないのよね・・・あぁ、この日差しが勿体ない!!」バルコニーに出て眩しい朝日を見上げ、そんな言葉を吐き出した。お隣との境は高く、覗いて見ることも出来ない・・・一体どんな風に...
羽田に着いて西門さんの顔を見た瞬間、それまで張り詰めていたものがプツッと切れた気がした。それは自分でも驚く程に・・・全身の力が抜けてしまった。悲しいというよりは心底疲れたって感じで・・・西門さんが支えてくれる手に甘えてしまった。帰国する時、向こうで買ったものは全部置いてきたから小さな鞄だけ・・・それさえも鉛のように感じていたから、西門さんがヒョイッと持ってくれたときには嬉しくて・・・駐車場は遠かったけど、そこ...
「うわああぁっ!すっごい豪華な海鮮ちらしのお弁当~~~~っ!!」「うん、美味しそうですね♪」「そう言ってもらえてなにより・・・」「じゃあ専務、遠慮無くいただきます。では、私がお茶を煎れましょうか」「あぁ、この弁当には玉露が付いてるよ」「きゃあ♥至れり尽くせりですねっ♪」昨日と同じようにマンション前で待ち合わせ、花沢さんが到着したら3人で部屋に戻った。そして手渡されたお弁当の蓋を取って、1人で大はしゃぎし...
正月になっても牧野から連絡はなく、今頃何処で、どうしているのか・・・それを確かめる立場にない俺は、ただ悶々とした冬を過ごした。近年になく大雪が降った庭を眺めては・・・アメリカで大きな事件が起きたとのニュースを見ては・・・殺風景な庭に紅梅が咲いたときには、その小さな花があいつに見えて・・・この感覚はなんだろうと自分に問うてみたが判らなかった。半袖薄着だった牧野・・・空港でそんなあいつを見送ってから半年近く。NYの真...
「一体どういう神経をしてるんだ?!男子トイレに潜んだ挙句、そんな質問をするなんて・・・・・・信じられないんだけど!!」専務執務室に戻ってから自分のデスクをバン!と叩きながら叫んだ瞬間、戻ってきた藤本に「どうかしたんですか?」と言われ・・・俺はさっきの牧野の言葉を伝えた。そうしたら藤本も「えっ?」と軽く驚き・・・その後、額を抱えた。「そんなに人のトイレ事情が気になる?確かに女性から見れば男のそういうのは疑問かも...
庭の木で蝉が喧しく鳴く・・・・・・それを聞きながら思い出すのは、1週間前に渡米した牧野の顔だった。痩せ我慢がバレバレの笑顔で、引き攣りながら手を振って・・・ちゃんと会えたって言うメール以降、なんの連絡もなかった。牧野には言わなかったが、西田を頼らなくても司の居場所を知る手段は・・・あるっちゃある。俺の立場では難しいが、あきらや類を使えば簡単に情報は入手できる。そう思ってあきらにそれを依頼した。当然あきらは理由...
写真の選別が終わると私の仕事はなくなり、1人で秘書室に戻って入社書類を改めて提出。それ以外はどうしていいのか判らないから、藤本さんに言われたように社内規定でも読んでおこうと、そのファイルを手に持ってデスクにもどった。その1枚目は.基本経営・・・定款とか企業理念ってやつ。読んでもちんぷんかんぷんで、日本語が摩訶不思議な記号に見えるぐらい。次に組織規程・組織図を見たけど、細かすぎて目が痛かった。関係会社管...
アッパー・イースト・サイドにあるマンションに行くと、そこは昨日のホテルほどの豪華さはなく、急いで住めるようにしてくれたって感じだった。それでもそんなに素早く、すべての家具家電が手配出来るものなのだろうかと不思議・・・というか流石だと思った。でもそれを聞くと、この部屋は元々道明寺が日本から来た幹部社員のために用意していた部屋だそうだ。だから寝具を替えただけで、後は少し前まで誰かが使っていたらしい。「ハ...
「この前田さんの写真、見落としてたけど一緒にいるのは徳川さんじゃないですか?斜め後ろ姿だからわかりにくいけど、この髪型とか体形、徳川さんに似てません?」「・・・・・・・・・・・・」私がそう言って一枚の写真を差し出すと、それを見た花沢さんが沈黙&凝視・・・どうしたのかと思ったら、急に立ち上がって執務室の方に向かって走って行った。そしてすぐに藤本さんを連れて戻ってきて、彼は「なんですか、仕事に専念して下さい!」と言...
スマホを握り締めてるけど、道明寺からの電話もメッセージもない。ホテルの部屋から出るなと言われ・・・でもお腹が空いた。思い返すと、今朝は珈琲しか飲んでない・・・緊張で身体がガチガチだったから。それに今頃時差ボケが始まったのか、頭が痛くて・・・でも、ジッとしていると嫌な想像ばかりしてしまう。少しぐらいなら出掛けてもいいかと思い、ここではガイドブックを見てもいいよね?と、それを広げた。パラパラと捲っていると、グ...
昼休みが終わって、1度秘書室に戻った。そこで藤本さんが課長に、「牧野さんは資料室で自習してもらいますので」と・・・それに対して課長は、私が居ると揉め事が起きるからなのか、あっさり了承してくれた。そして如何にも勉強するかのように大きなファイルを持って、藤本さんの後ろを歩いてさっきの応接室へ・・・その時には受付のお姉さんが戻ってきてたけど、藤本さんは至極普通に「お疲れ様です」と言って通過。相手が藤本さんだか...
「総二郎様、野点の道具類の片付け、すべて終了いたしました」「・・・あぁ、ご苦労さん」「次は葵の茶会ですねぇ。今年は暑いという予報ですし、あっという間に夏が来そうですね~」「そうだな・・・・・・」西門の庭で咲く桜・・・今年は例年になく桜の開花が早かった。今は遅咲きの桜が満開で、それ以外の花は散ってしまった。これを見ると思い出す・・・・・・牧野がアメリカから帰って来た日の事を。痩せこけて、真っ青で、笑顔もない。まるで魂...
若干赤味が残った顔・・・ドアと大喧嘩したとはいえ、骨折なんてしてるわけもなく、目にも鼻にも異常なし。そんなことよりも、本当に藤本さんがメイク直しを依頼して、2人いた看護師さんは快くOKしてくれたことに吃驚した。ついでに「最近流行のメイク術」ってのも教えてもらい・・・とは言え、自分で出来るかどうかは判らない。スマホで「メイク術」も学べると言われ、そんな動画を見せてもらったりして、初めてこんなガールズトークみ...
また桜が散る季節が来た・・・・・・・・・交差点の信号待ち、会社近くの公園を見て溜息が漏れた。私はこの季節が好きじゃない。あいつとの別れを思い出すから・・・・・・昔は淡いピンク色のこの花が咲くとワクワクしたのに、今じゃ見るのも苦しいと思うほどだ。それほどあの時は辛かった。魅惑的なマンハッタンの街が巨大な怪物に見えて、暑さで汗が止まらないのか、寒さで震えが止まらないのかも判らなかった。勉強したはずの英語ですら意味不...
昨日と同じところで降ろされ、花沢さんはまたあっさり発進・・・あっという間に見えなくなってしまった。そして後ろから「おはようございます」と藤本さんの声がして、クルッと振り向いてから「昨日は遅くまでお疲れさまでした」と・・・そうしたら少しだけ眉間に縦皺寄せて、「昨夜のことは口に出さないでください」と言われてしまった。回りには誰もいないのに、と左右を見てると・・・「何処で誰が聞いてるかなんて判らないものです。特...
11時を少し回った・・・この時間が合格発表だと知っていたから、俺はソワソワ・・・そうしたら、15分ほど経ってつくしから電話があった。メッセージだと思っていた俺はビクッとしたが、万が一不合格でも人生が終わるわけじゃねぇ。だから自分に「落ち着け~~」と言いながら、その電話に出ると・・・『総二郎~~~~っ!!合格したよ~~~♪』『マジか!!』『マジマジ!!午後には免許証もってそこに行くね~~~!!』「良かったな、...
お風呂の準備をしてる間に台所用品の片付けをした。引き出しは沢山あるけど本当に使った事がないらしく、そこに私が初めて物を入れていくという緊張感・・・花沢さんが使うことはないのかもしれないから、自分の好きなように入れていった。こんな高級なシステムキッチンはもちろん初めてで、調理器具は何処に入れていいのやら。今までだとシンクの上に壊れかけの棚があって、そこにボウルとか置いてたのに。「あぁ、この下が調理器具...
「は?一昨日卒業検定受けたのに、もう来週の月曜日に本試験に行くのか?」「行く!!頭が覚えてるうちに行かなきゃ忘れちゃう!」「・・・・・・・・・そうか」「だから合格するまでベッドは別だから」「えっ?!!」えっ?!と言われても、そう決めたんだもん!だってその次の土曜日には引っ越し、日曜日は桜の茶会・・・だから今のうちに試験を受けて、絶対合格して運転免許をこの手に持つんだもん♪そう言ったらガクッとしている総二郎・・・で...
時間は既に0時を回り、花沢さん達は帰り支度を始めた。そして最後に、「ここまで話したんだから暫く俺の言うとおりにしてくれ」って・・・藤本さんは相変わらず不機嫌な顔で何も返事をしなかったけど、私はコクコクと頷くことしか出来なかった。同時に・・・花沢さんが探しているものを一緒に探してあげたらどうだろうかと・・・そんな思いも浮かんだ。漠然としたものだけど、私も何かを探しているから・・・だから、帰りかけた後ろ姿に、「あ...
3月になったらすぐにあるのが「桃の茶会」・・・雛の茶事と呼ばれるものだ。3月3日は五節句の一つ、上巳の節句で別名・桃の節句。西門では桜の野点茶会の前の恒例行事として、毎年これを開催している。宗家に娘がいなかったからイマイチ不思議な光景ではあるが、お袋が1年で1番好きな茶事だ。・・・俺達のせいじゃねぇのに、いつも「お雛様は華やかでいいわねぇ」と嫌味っぽく言ってやがった。何度か「じゃあもう1人産んだら?」っ...
<side藤本>突拍子もない話に驚き、そのまま黙って聞いていたが・・・よく考えたら仕事中に調べていたってことか?そう言えば専務になりたての頃、1人で出掛けることが何度かあった。それが徳川建設を調べていたとしたら・・・それを聞いたら、「その通り」とあっさり認めた💢「そう言う事は土日の休みの日にしていただけませんか💢」「公的機関にいくなら平日だろ。だから仕方なかったんだ」「それでも私的なことです。どうしてもと言う...
京都に両親を送り届けてから数日後、総二郎から仕事を辞めないかと言われた。それには一瞬驚いたけど、3月末でこの部屋を引き払って宗家に戻ろうと・・・この前見たあの部屋で暮らさないかと。もちろんいずれはそうなると思っていたし、総二郎がこのマンションも春までだと言ってたから引っ越すのは判ってた。でも仕事まで同時にやめるとは思っていなくて・・・「辞めるとなれば2ヶ月ぐらい前には会社に言わなきゃならねぇだろ?」「う...
花沢さんが内線でコンシェルジュさんに連絡・・・そうしたら20分もしないうちに部屋におつまみとノンアルコールのスパークリングワインが届けられた。そのおつまみはコンビーフとクリームチーズのディップ、チーズとハムのピンチョス、パプリカとカマンベールチーズ焼きにミニトマトのカプレーゼ風・・・名前を聞いてもサッパリだけど、見た目はすごく可愛かった。しかも生ハムとかオリーブとかアンチョビとか・・・食べた事がない食材で...
新年になって初めての日曜日は初釜だった。でも私はまだ何も判らないから表には出なくて、志乃さんにくっついて裏方の仕事をすることになった。その時に着たのは大晦日にも借りた江戸小紋で、西門の紋付き。だから自然とそこに目がいった人もいて、「あれは何方?」なんて声もチラホラ・・・でも愛想良く笑うだけで何も応えず、チョコマカと動き回っていた。初釜式・・・年が明けて最初に行われる茶会のことだけど、1年の稽古初めとなる...
ドラッグストアから戻ったら、部屋にあったデリバリーの容器は全部綺麗に片付いていた。そして藤本さんがテーブルを拭いてて、「買い物は出来ましたか?」と・・・ちゃんとしたハンカチとポケットティッシュを用意したと言えば・・・「デスクの上で使う物は品良く揃えて下さい。どんな些細な事でも標的にされますからね」「はいっ!」「元気良すぎる返事も狙われる原因の1つです。目立ちすぎず陰キャラになりすぎず、出しゃばらず常に謙...
人生初の路上研修が終わり、私は無事に自動車教習所に戻ってきた。戻ってきたけど・・・車の中で放心状態だった。何故なら普通に走ってる車による圧迫感が半端ないんだもん・・・。後ろからトラックが来た時には恐ろしくなり、思わずアクセルじゃなくブレーキを踏みそうになった。もちろんぬりかべ教官が丁寧に指導してくれて事故にはならなかったけど、トラックからは思いっきりクラクションを鳴らされた。その時の速度が時速40㎞・・・...
デザートも終り、私達の前には珈琲カップが置かれた。元々置いてあった白い高級そうな珈琲カップが花沢さんと藤本さん・・・私の前にはホームセンターで買った200円のマグカップ。珈琲を入れてくれたのは花沢さんだけど、無意識に私には安物をチョイスしたんだろうと思って複雑だった。それよりも藤本さんが一昨日の私と同じ顔になって、混乱してるのがよく判る。そうだよね~と納得しながら2人のやり取りを聞いてると、藤本さん...
4日の朝、いつものようにつくしを会社に送り届けたが、流石に今日は俺にも緊張があった。何故なら・・・初めてこいつがハンドルを握って公道に出るからだ。それは教習所内の運転とは全く違い、一般走行車と一般人がウヨウヨいる場所だ。しかも夜間・・・昼間よりは格段に難易度が上がる。とは言え教官同乗だから、今のうちに夜間走行を経験するのはいいと思う・・・昼間しか乗らずに卒業して、たった独りで夜間を走ることになったら、その...
藤本がキレている・・・それは判ったけど、今から話す内容はそんなに簡単じゃない。だからまずはイライラしない為と、理解度を高めるためにも食事をして脳に糖分を・・・と思ってのこと。俺がそう言うと、藤本が「とにかく早くいただきましょう」とムスッとした顔でそこに座った。「それにしても、ダイニングテーブルじゃなく、リビングのローテーブルですか・・・」「その方が牧野が食べやすいかと思って」「すみません!気を遣っていただ...
元旦の夕食・・・考ちゃんが帰ってこなかったけど、志乃さんや料理長、西村事務長も加わってみんなでワイワイ食べた。この時の話題の中心は祥兄ちゃんで、オーストラリアでの暮らしぶりをみんなが聞いていた。「どんな所にお住まいですの?」「研修先のドクターが所有してる小さな一軒家を借りてるよ。もう1人研修生がいるから2人で住んでるんだけど」「えっ!それは男性?女性?!」私が大声で聞くと、笑いながら「男性だよ」って・...
ちゃんとルームキーのことは話したのに・・・私の言うことなんて全然聞いてないんだな、とちょっとショックだった。花沢さんが来るまでに藤本さんとそんな話をしていたら、「他人に感心がない人なので」とあっさり。総務の人もそんな事言ってたけど、本当にそうなのかな~と不思議だった。もっと感情豊かな人で、実はそれを自分でも気付いてなかったりして・・・それか、感情はあるんだけど上手に出せないだけで、その方法が判ればもっと...
初詣から帰ったら、私が向かうのは総二郎の部屋・・・・・・ちょっとドキドキしながらベッドをチラ見。その時総二郎はコートを脱いでハンガーに掛け、私に向かってトレーナーをポイッと投げてくれた。驚いてそれを受け取ると、「それに着替えろ」って・・・あの総二郎が寝るときに服をくれることがあるんだと吃驚してると、少し怒ったように言った。「西門では・・・と言うか、今でもそうしてる家もあるだろうけど、元旦は風呂に入らねぇんだよ...
藤本さんが電話を終えて戻ってきたら、今度は会社の外に出た。そこで地下の駐車場に向かい、乗せてくれたのはグレーの普通車・・・花沢さんの外車はすぐ近くに停めてあったけど、そのスペースは他の車よりも広くて、特別扱いなのがよく判った。しかもその隣にも広いスペースがあるけど空いてる。それにしてもあんなに社員がいるのに、そこまで広くない駐車場だなぁ、と見回していたら・・・「ここは花沢家の自家用車と、営業車しか停まっ...
「それではお気をつけて・・・」「また来年もよろしくお願い申しあげます」「家元、若宗匠に考三郎様、良いお年をお迎えください」・・・大晦日の21時、やっと大晦日の茶事が終わって客が帰っていった。それを見送ってから部屋に戻ると、今度こそ身内での「除夜釜」・・・ホッとした気分で親父の茶室に向かった。もともと除夜釜に客を招いて行っていた頃は、席入りが22時。待合で暖かい柚子茶を出して、露地で迎え付けで手燭の交換を行...
自分の住所欄、何処を書けばいいのか聞いた途端に眉が歪んだのは藤本さんだった。私の指導担当で花沢さんの秘書だから、ここではなんでも話していいと思ったのは間違いだったのか・・・慌てて会話をやめて、目の前のうなぎ弁当に目を向けた。そうしたら藤本さんが「○町のマンションですか?それとも✖町の方ですか?」と・・・他にも持ってたんだ?って驚いたけど、もう何も言わない。黙々と1人食べてたら、花沢さんが深く溜息ついて・・・...
14時になったら総二郎の部屋を出て、ルンルン気分で宗家に向かった。何故なら・・・祥兄ちゃんに会えるから~~~♥お兄ちゃんと別れたのは2ヶ月前で、まだそんなに経ってないけどやっぱり嬉しい♪総二郎とのことを知られるのは恥ずかしいけど、そのうち義理の妹に・・・とうとう祥兄ちゃんと家族になれるかと思ったら気分が良かった。勿論そんな私を真横で見る総二郎は機嫌が悪いけど、それを無視して私はニマニマしていた。「お前・・・...
入社手続き・・・こんな大企業だから沢山の書類を渡されたけど、そこに書く内容に困惑した。住所に給与振り込み口座、そして保証人、雇用保険被保険者証番号に基礎年金番号に源泉徴収票・・・住所不定とは書けないし、口座は持ってたけどほぼ預金がない上にバイト先を追い出された時に年金手帳と共に何処かに消えた。雇用保険には入ってなかったし、源泉徴収ももらえない・・・実にヤバい社会人だ、私。課長が「どうかしたの?」と言うけど...
29日は仕事納め・・・この日は事務所の大掃除があるんだけど、私は完全に腰が曲がってた。もちろん原因は総二郎だけど、もう誰もそんな事は聞きもしない。桃子は「そういうの、年末年始の暇な時にしてくれません?」って、酷い事を言ってたけど。それにも反論せず、ただ黙って窓を拭いた。そして定時になったらみんなが集まって1年間の労をねぎらう・・・でもって、1人ずつが来年の抱負を言うのが我が社の決まりだった。社長に始まり...
「それはご紹介します。本日より花沢物産に入社、秘書課に配属された牧野つくしさんです。専務のご友人の紹介と言うことなので、いきなり役員フロアに来られたわけですが特別扱いなどはしないようにとのことです。まぁ、異例ではありますが・・・皆さん、指導をよろしくお願いしますね」朝礼終了後に始まった秘書課長からの紹介・・・照れちゃうなぁと思うと同時に、専務の友人って誰だ?と不思議な気分。そして目の前には素敵な先輩たち...
本文中に軽微ですがR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*自分の目の前の光景が信じられない・・・総二郎が自分にリボン着けて手錠だよ?!そんでもって、「俺を好きにしてくれ」って・・・・・・いやいやいや!どうすればいいのよ、これ!!頭も身体も完全フリーズして棒立ち・・・首に掛けてたタ...
<side藤本透・専務第一秘書>朝早くに専務からメールがあり、『8時40分、本社のすぐ近くにある西川ビルの前に来て』・・・一瞬何の事かと思い電話をしたら、新入社員を連れて行くから迎えに来てくれとの事だった。「は?専務が連れて来られるんですか?それはまた何故?」『諸事情あってね。でも俺の車から降りるところを誰かに見られたら不味いだろ?』「当たり前です。では、その人を西川ビルで降ろすのですね?」『そう。で、...
予想もしていなかった誕生日会が終わって、お父さん達は深々と頭を下げてアパートに帰っていった。私もその後で家元ご夫妻にお礼を言い、総二郎と帰ろうとしたら「ちょっと待ってて」と家元夫人に止められた。そして茶目っ気たっぷりな笑顔で出て行ったかと思うと、すぐに戻ってきて・・・「・・・・・・・・・?」「親父、お袋・・・これって・・・」家元夫人のすぐ後ろには若弟子さん2人が居て、その人達が重たそうに大きな箱を抱えて来た。それを...
類誕イベントサイトにお越しの皆様へイベントサイトにお越し下さり、ありがとうございます。今回読者の方より「サイトが見られない」というお話を伺いました。幾つかの原因が考えられますので、下記に方法を記載致します。ご対処いただいたうえでサイトが見られないとのことでしたら、再度ご連絡いただければと存じます。なお現在、新しいテンプレートに変更手続き作業中です。ご不便をお掛け致しますが、どうぞ宜しくお願い致しま...
「・・・・・・どうすんの、これ・・・・・・今、22時50分だよ?」両手に大量の紙袋・・・さっきのスーツ&靴$その他諸々を持って花沢さんの部屋に戻って玄関に入り、靴を脱ぐ前からガックリしてた。なんたってさっき買った日用品がそのままある・・・その袋の数、全部で14個。ここまで買う必要があったんだろうかって思うけど、あの時は考えてる暇なんてなかった。・・・そしてこれで足りるわけじゃない。まだまだ必要だけど、それは時間がある...
「・・・いや、でも本当にこんな子でいいんですか?」「返品されても困るんですけど・・・」「いやあぁねぇ、返品なんてしないわよ!私としては即納してもらいたかったぐらいなのよ?」「・・・母さん、言葉がおかしいと思わないのかね?」「「・・・・・・・・・・・・」」←総&つくしお父さんとお母さんが私の事を「物」扱いするもんだから、家元夫人まで・・・・・・色々思う事はあるけど、これでなんとか話合いが終わり、私はそのうち「西門家の人間」にな...
「はぁはぁ・・・・・・これで全部ですかね。ベッドは明日の夜19時にこちらに配達いたしますので・・・」「本日は沢山のお買い上げ、どうもありがとうございましたぁ!!」「とんでもないですっ!部屋まで運んでいただいてありがとうございました!」「・・・・・・・・・・・・どうも」夜の21時30分。結局ホームセンターの人が荷物を部屋まで運んでくれて、花沢さんはほぼ手ぶら。私は軽いものだけ2往復したけど、その時も彼は部屋でのんびりス...
すっごく広い本邸の客間・・・床の花は家元夫人が生けてるし、掛け軸だって超高値が付く骨董品。1枚板のテーブルはおそらくうん十万円で、和モダンな照明器もお洒落。座布団ですら上質な寝具用木綿わたを使用した熟練職人が仕立てた物・・・だと思う。そんな部屋に庭仕事の格好のお父さんと、厨房の制服でもある着物を着たお母さん・・・そしていつものように綺麗な着物の家元夫人と貫禄たっぷりの家元。見た目だけで言えば「天と地ほどの...
・・・・・・美味しい・・・温かいご飯なんて何日ぶりだろう・・・チャーシューもこんなに・・・このスープも美味しい~~~!あぁ、幸せだなぁ・・・・・・やっぱり生きてる=食べるだよね・・・・・・・・・もう一杯、お代わり欲しい・・・・・・「起きてくれる?ホームセンターに着いたから」「・・・・・・・・・はっ!」男の人の大声で目を覚ました。そしてゆっくり横を見ると、そこには・・・・・・呆れた顔の花沢さん?慌てて目を擦って姿勢を正し、辺りをキョロキョロしたら、...
「・・・心配ねぇよ。俺が話すから。こんな家に嫁がせる事を考えたら普通の反応だ。つくしは普通にしていたらいいから」そう言って総二郎が手を差し出す・・・それを掴んで車から降りたけど、足がフラフラして頭もグラグラして・・・今からどんな話合いをするのかと思うと気が重かった。別に桃子のように無理矢理迫ったわけでもなく、陽子さんのように西門家の財力を狙ったわけでもない・・・なんて、そんなことを言っても聞かないんだろうな~...
boîte à cadeauteam Ruiによる類誕イベントを開催します♬サイトオープン:3月29日(水)0時~4月17日(月)23時59分お話しは3月30日(木)0時からスタートコメントはオープンコメントのみ受け付け致します。どうしても秘密でコメントを残したい場合は、各サイト様へ直接コメントをお願い致します。お馴染み!拍手小話もありますよっ♪♪↓↓↓↓↓ 此方から、どうぞ(*´∀`)♪ boîte à cadeau 管理人:team Rui私の部屋の「イベント...
電話をくれたコンビニに行き、そこでスマホを返してもらったけど、牧野は戻ってきていなかった。時間を聞くともう30分以上前だし、それならそろそろマンションに辿り着いてるはず・・・荷物が残されてるから戻るつもりだったんだろうけど、それなら考えられるのは・・・「・・・迷子か?」いくら何でもマンションと反対方向に行くとは思えなかったから、取り敢えず引き返して主な道を車で走った。そして交差点に差し掛かる度に右折左折を...
12月28日は私の誕生日。有り難いことに平日だったため会社を休まず、総二郎もきちんと仕事・・・今日は宗家じゃなく、何かの番組収録で小田原まで行くって言ってた。会社前で言われたのは「18時30分に迎えに来るから」って言葉で、今日の晩ご飯は私のリクエストで居酒屋だ。最近ずっと高級料理が続いていたから、今日はその方が嬉しかった。だって変にロマンチックなお店に連れて行かれたら、総二郎はまた何かプレゼントして...
マンションから本社に戻り、残っていた仕事をササッと片付けるためにパソコンに向かった。そんな俺を不思議そうに見ている藤本・・・何か言いたそうなのは判ったが、今日はそれどころじゃない。仕事が粗方終わったら、ネットで「新生活に必要な物」というのを調べていた。まずは家電品から・・・牧野が掃除機がないって言ってた。テレビ・ヒーター・冷暖房器具は大丈夫。アイロンなんてもちろんなく、ドライヤーも・・・ない。面倒だがらあ...
「おはようございま~~~す!」元気よく会社に入ったら、まずは昨日の休みをみんなに詫びた。そしてお土産の「焦がしきな粉のはんなりロールケーキ」を出したんだけど、それを見た桃子が「海苔巻き?」って言ったのにはガクッとした。確かに海苔巻きに見えるけど!「このロールケーキ、竹炭を使ってるから黒いのよ!」「炭?!そんなの食べられます?!苦そ~~~~っ!」「めっちゃ美味しいって!私、食べたもん!」「炭でしょ?...
確かにそんなに高額じゃないマンションだけど、それでも2億・・・それの何処が不満で住めないというのか。その言葉にムッとして聞いてみたけど、牧野は困った顔して俯いたままだった。それに誰にも言わないから安心しろって言うけど、金銭的大ピンチの状態で何を言うやら・・・だ。もしかしたら昨夜話した事を何処かの記者に高値で売られたら・・・俺が闇金の事務所に忍び込み、宝石を奪い取ったことが世間に知られたらヤバい。それがたと...
京都から帰ったのは月曜日の夕方だった。そして今日は火曜日の朝・・・いつものように身体が痛くて起き上がれなかった。だから総二郎の方が先にベッドから降りて珈琲の準備・・・今朝は京都で買った高級デニッシュだから、それを焼いてくれてた。あぁ・・・イイ匂い・・・・・・このまま寝て食べたいくらい・・・・・・「お~い、つくし。いい加減起きねぇと遅刻するぞ~」「・・・・・・・・・💢」「・・・そんなに痛いのか」「痛いわよ!!あんたこそいい加減学習し...
花沢さんが帰ったのは午前3時半・・・私の手にはこの部屋のカードキーがあって、部屋はエアコンが付いてるからすごく暖かくて、床暖房もあるから熱いくらいで・・・今までこんな部屋に居たことがないからどうしていいのか判らなくて、取り敢えずリビングのソファーに座った。まだ興奮状態で眠たくはない・・・でも寝ないと余計に考えが纏まらない気がして・・・「布団って何処にあるんだろう・・・」また立ち上がってリビングを出たら、廊下の奥...
ド真剣に点てたのに、「まだまだ」と言われて憮然とした俺・・・でもつくしと一緒に頑張れと言われ、それはある意味では「認めた」・「了解した」ってことなんだとろうと・・・そう思えば怒りも収まり、笑いを堪えているつくしにも「いい加減に笑うのを止めろ💢」とだけ言った。爺様はその後で床を見て、クリスマスローズを生けたことに「総二郎らしいのぉ」と・・・その後で掛物の「一期一会」を見て、つくしにその意味を問うた。そのぐらい...
花沢さんが何処を見ているのか判らない目で昔話を教えてくれた。でもそれは私には意味不明というか、異次元というか・・・使用人さんって言葉も、身内に「様」をつける世界も知らなくてキョトンとするばかりだった。しかも男の子が子どもの時にヴァイオリン?!進なんて素手で野球してたような気がするけど?で、御伽噺でしか聞いた事がない「宝箱」・・・一体どんなものかと思ったら、彼はそれを見たことがないみたいだった。何故ならそ...
昼食が終わったら、お爺様は自分の部屋で少し休憩すると言って部屋を出ていった。その後ろ姿を見て、やっぱり歳を取ったんだなって感じる・・・昔はもっと目が鋭かったような気がするし。そう言うと総二郎も「まぁ、仕方ねぇな」って笑ってた。「それでも茶室に入ったら変わるんだと思うぞ。んじゃ、床の花を取りに行こうか」「茶花のこと?」「あぁ、急いで茶席を設えなきゃな」「私は全然判んないけど・・・」「教えてねぇんだから判ら...
牧野つくしが変な事を言うから・・・こんな時間に妙な事を言い出すから、俺の何かが狂ってしまった。どうせ無関係な人間なんだからさっさと追い出せばよかったのかもしれない。それなのに、引き止めた自分に驚いた。今日、俺が「取り返した」もの・・・それ以外は何事にも執着せず無関心・・・今の俺はそんな人間だから。玄関まで行った彼女を呼び戻し、再びリビングのソファーに座ったのは午前2時30分。このままだと徹夜で会社に行くこ...
足の痺れが取れてから漸く立ち上がることが出来たけど、総二郎は私の横で「お前は・・・」って呆れた顔をしていた。でもそれなら私にだって言いたいことはある。さっきの言葉に対して「どうしてくれるのよ!」と言うと、それには「何がだ?」ってクールな顔をしていた。「いやいや、どうして私がお爺様とお茶会に参加しないといけないの?!総二郎が飲んでくれなんて言うから大変なことになったじゃない!」「大変なこと?ただ薄茶点...
よく判らないけどいきなり食べ始めた牧野・・・おにぎりを食べ終わったらすごい勢いでサンドイッチを食べ、今度はスープ、そしてうどんに目が行ったから、急いでそれをレンジに放り込んだ。と言うか、レンジなんて使った事がないから不安だったんだけど、こんなに熱くなるんだと今頃になって感動した。チン♪「・・・・・・(これが藤本の言う”レンチン”か)・・・温まったよ」そう言って渡すと、それも必死の形相で食べてて・・・時計を見たら午前...
まさか、座った瞬間に蹌踉けるとは思わなかった・・・そしてお爺様なら絶対見逃さないと思ったら案の定・・・「相変わらずドジだのう、その娘は」「・・・お久しぶりでございます、お爺・・・ご隠居様。今のは見なかったことにしていただけると幸いです・・・」そう言って体勢を整えた。それなのに言われたのは20年近くも前の失敗談で、総二郎が話していたことをそっくりそのまま言われてドン引き!盆栽なんて割った本人が覚えてないっつーの!...
「なに泣いてんの?荷物持って早く降りて」「・・・・・・・・・はい」変な子だな・・・・・・さっきから何を考えてるんだろう?今にも死にそうな顔して・・・と牧野つくしを車から降ろし、マンションの駐車場からエントランスに上がり、そこからエレベーターに乗った。ここは低層階レジデンスで、俺の部屋は最上階でもある4階の3LDK。もちろん普段から住んでいる訳でもなく、気が向いたときに寝泊まりするだけ。各部屋には専用の庭もあり・・・とは言...
「それはお袋からお前に譲られた着物だ。それを着て爺様に挨拶しに行くから」総二郎に言われてキョトン・・・これが家元夫人の着物で、私に譲られる物?・・・・・・ってことは・・・家元夫人、私達のことを知ってるってこと?確かに総二郎から茶道の勉強が必要って言われたから、それはある意味将来を考えてのことだとは思ったけど・・・・・・えっ?!こんなに急にそんな話が出来上がってたの?!「総二郎、あんた・・・もうみんなにバラしちゃったの...
まさか、こんなところであの時の女の子に会うとは思わなかった。しかも名前と会社名までバレたのなら、この子を俺の監視下に置く必要があるかもしれない。それとも、いくらかの口止め料を払えばあっさり東京から出ていくか・・・いろんな事を考えたけど、たった今起きた出来事で頭の中が纏まらない。取り敢えずT町の旅館ではなく、俺が私用で使うマンションへ連れて行くことにした。そこで少しこの子と話してから、今後の事を決めよう...
翌朝目が覚めたのは朝7時・・・スマホのアラームで起き上がった。そして隣を見たら同じくアラームで目を開けたつくしがいて、俺と目があった途端に「最低!」と怒られた。「・・・それが朝イチに言う言葉か?」「何言ってんのよ💢寝たの朝方じゃない!!」「・・・そうだっけ・・・・・・途中寝てないか?」「意識失ってたのよ!!」そう言いながら背中を殴られ、俺は笑いながらベッドから降りた。そして1人でシャワールームに行き、そこでベタベ...
あの日から3日が過ぎた。結局寝泊まりはネカフェで、そこで日当が現金支給されるバイトを見付けた。でも流石にホステス用のワンピースじゃいけない・・・だから翌朝1番に花沢さんから借りたお金を持って古着屋に行き、そこでトレーナーとジーンズ、安い上着を買った。「日当もらったら補填します!まずはお借りしますね!」、と諭吉さんに頭を下げてお支払い。翌日とその翌日はイベントスタッフとして同じ会社で働き、イベント会場...
京都駅でレンタカーを手配し、真っ直ぐ嵐山に向かった。旅館へは18時着だと伝えていたみたいだけど、折角だからって連れてってくれたのは京福電鉄嵐山線、通称“嵐電”の嵐山駅。そこに近付くと、もう暗くなった景色が明るくなって・・・「・・・・・・あ!確かここって・・・」「そう、キモノ・フォレストって聞いた事があるだろ?」「うん!うわぁ、ここだったんだぁ~~」「まぁな。グルッと見ても15分もありゃ回れるから」ここは駅であるにも...
「専務。おはようございます」「おはようございます、専務。今日は暖かいですね~」「・・・・・・・・・・・・」今日も本社ビルのロビーを歩くと、前後左右から社員たちが挨拶してくる。その全部に言葉を返せないから視線だけ向けて通り過ぎる・・・そして、それを見て溜息つくのが役員専用エレベーター前で俺を待つ藤本。今朝も愛想の無い俺を見て、「もう少し笑顔を作れませんか?」と言うが、朝は顔筋が動かないから仕方がない。「朝限定では...
京都に着いたのは13時過ぎ・・・本当ならここでクリスマスランチをしようかと思ったが、我慢出来ないつくしが駅弁食ったから、荷物をコインロッカーに預けて、すぐに東福寺の塔頭 、勝林寺に向かった。ここの本堂の近くにある手水舎は、溢れんばかりの花が活けられた色鮮やかな花手水・・・クリスマスのこの時期も綺麗に活けられていると聞いたから行ってみると・・・(勝林寺ではありませんが参考までに。1月に京都で撮影したもので、クリ...
もうすぐ冬が終わろうかという頃・・・その日の夜、私は1人で都内の繁華街を歩いてた。時間は22時で、飲み会から帰る人とか二次会に行く人とかで通行人はまだ多い。その誰を見ても楽しそうというか、幸せそうというか・・・自分だけが「不幸背負ってる」ような気がして惨めだった。その時に頭の中に流れたのは・・・・・・ーー探し物はなんですか?見つけにくいものですか?カバンの中も つくえの中も、探したけれど見つからないのにまだま...
皆様、こんばんは。本日類君の連載が終了しました。番外編合わせて随分長くなりましたが、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。今後の更新ですが・・・なんとかもう少しブログを続けてみようかと思い、1月後半から必死に考えていました。ですが、半年以上前から辞める前提でしたので何もネタがなく、しかも新しくお話を作るエネルギーがありませんでした。そしてあっという間に3月になり、引き延ばした番外編も終り・...
翌日の金曜日、会社に行ったらみんなが心配してくれて、私は仮免許を無事に取れたことを報告した。そうしたら桃子も倉田さんも喜んでくれて、今日のお昼は奢ってくれることに・・・それは嬉しかったんだけど、今日の私は笑顔が引き攣っていた。何故なら「家庭の事情」により、来週の月曜日に再び有給休暇の申請をする事にしたから・・・。これは総二郎からの頼みで、24日は嵐山に泊まるけど、25日は一乗寺にある西門の別邸に泊まると...
あかたんが生まれた♪あかたんが生まれたでしゅ♥あたち、おねえちゃんになったでしゅ~~~~♪でもしゅぐに気になったのは・・・・・・前に見たあかたんの写真でしゅ・・・・・・あかたん、どんな色でしゅかね?「花沢さん、処置が終わったのでお入りになってもよろしいですよ~」「は、はい!」「さぁ、梨沙様、行きましょう♪妹様ですよ、楽しみですねぇ♥」「・・・・・・う、うん・・・」「あら、どうかなさいました?そうだわ、抱っこしないとママが見...
「それでは皆さん、明日からまた頑張りましょう~!お疲れさまでした~」修了検定の日が終わった・・・結果、私は・・・・・・合格した!!手元には無いけど、仮免許を取得したのだ~~~~♪点数は教えられないと言われたから聞かないけど、そんなのどうでもいい!とにかく合格出来たことが嬉しくて、最後に集められた部屋で号泣した。それこそ他の教習生の人にドン引きされるほどに!**今日の検定の流れを言うと・・・まずは会場に集められて...
ぱっぱを呼んでまんまのところに戻ったら、まんまはしゅごくくるちそう(苦しそう)だったでしゅ。なんだか泣いてるみたいだち、ぱっぱもコワいお顔ちて・・・あたちはどうちていいのかわからず、まんまの横でオロオロ・・・「類・・・驚かせてごめん・・・・・・お腹が痛くなって・・・・・・っつ!」「もう大丈夫だから。取り敢えず家に帰るよ」「まんま、まんま~~~っ!!」「・・・ママは大丈夫だよ、パパを呼んでくれてありがとうね・・・」「まんま~...
それから数日間が過ぎた。もう12月も後半で、今週末はクリスマスイブ・・・そして私は明日、修了検定を受けるために有給休暇を取っていた。だから今夜はエッチお預けで学科の勉強会。総二郎に問題を出してもらって、それを答える方法でかれこれ2時間も続けていた。「前車が原動機付自転車を追い越そうとしているときに、その車を追い越しても二重追い越しにはならない」「・・・・・・・・・ま、○!」「ピンポーン!前の車が自動車なら二重...
「・・・・・・まんま、いたい?」「ん~~?痛くないよ~~」「・・・・・・・・・」「もうすぐ赤ちゃんに会えるからね~~」あかたんの生まれる日がちかぢゅいた(近付いた)みたいでしゅ・・・。まんまのおなか、またおっきくなって、ちょっとコワいんでしゅけど。ぱっぱも「ホントに痛くないの?」って聞いてて、触るとカチコチでしゅ。この前までや~らかかったのに・・・。「じゃあ今日は検診だから行ってくるね~」「つくし、俺が運転するから!...
色々あった日曜日が終わり、月曜日・・・この日、私は自動車教習所の予約を入れていた。それは技能講習だから担当は三浦教官だ。でも昨日の事があるからどうしようかと悩んでた。「取り敢えず、今日のはキャンセルしようかな・・・でも当日キャンセルだと手数料が発生するしなぁ・・・」そんな事をブツブツ言いながら昼休みになり、今日は通勤途中に買ったパン・・・だからそれを休憩室で食べながら、スマホで教習所の予約キャンセル画面を見て...
ちゅぎ(次)の日はぱっぱのお誕生日でしゅ♪でもぱっぱ、昨日頑張ったからお寝坊・・・しょれをまんまと見てクシュクシュわらって、あたちはまたおねんね、まんまはお弁当をちゅくり(作り)にいったでしゅ。「・・・ふぁ・・・」あれ?ぱっぱ・・・まだ起きてないでしゅか?・・・しょれよりもイイ匂いがちてきて、あたちもお腹ちゅいた・・・ぱっぱ、起きないかなぁ~と思ってお鼻をチョンってちたら、「う~~~~ん」って・・・もうお目々がさめるか...
「落ち着いていられないっつーの!じゃあこの前、私に顔を近づけてきたのはなんだったの?!」つくしがそう叫んだ瞬間、俺の顔がつくしに向かった。そして出てきたのは「今なんて言った?!」・・・同時につくしがピタッと止まり、「あ!」と小さく呟いた。「・・・顔を近づけて来ただと?・・・何処でだ?!」「・・・え、え~~~~と・・・」「誤魔化すな!何をされたんだ!!」三浦を見ると、まるで他人事のように知らん顔・・・それにもムカつい...
ポロ~~~~ン♪ポロン、ポロン♪♪きゃははははは!ちら兄ちゃんのプレジェントのピアノ、おもちろいでしゅねぇ♪たたいたら、いろんな音がでましゅよ?バンバンバン!♪ダンダンダン!♪「きゃはははは!!」「梨沙・・・もう少し小さな音でお願い。パパ、今アルバム作りで大変だから」あ~~~~い!じゃあ今度はまちの(牧野)のおじいちゃんたちがくれた、ボーリングって言うのであしょび(遊び)ましゅ。どうぶちゅ(動物)のお顔が...
ーーあんた・・・俺の初恋の女によく似てたからーーーー空気感がすごく似ていたから、入校すればいいのにって思っていたら・・・・・・まさかの担当教官で、つい・・・毎回調子に乗ってしまってーー三浦教官にそう言われても、なんだか全然しっくりこない・・・今までの教習中にだって「恋愛」を匂わせる事なんて1度もなかったもん。だから嬉しくもないしドキドキもしない。でもそれを深く知らなくてもいいし、こうなったからには教習所を変えて...
「よっしゃ!そろそろ帰るか、梨沙」「だぁ~~~~♥」「んじゃ、ここからはママのところに走って行け。兄ちゃん、もう腰が痛いわ」「あ~~~~い!」そじろ兄ちゃんがこち(腰)をトントンちてたから、あたちは肩車からおりて、しゅなはま(砂浜)をはちったの(走ったの)。しょの時、ぱっぱにも「転けないでね」って言われたけど、いちゅもはちって(走って)るもん!じぇんじぇん平気だもん!って思ったら・・・ドンッ!!って何...
「ブログリーダー」を活用して、plumeriaさんをフォローしませんか?
時間はあっという間に過ぎ、14時45分・・・類は藤本を待たせている西門邸に戻らなくてはならない。社用と私用のスマホを確認したが、少し前に総二郎からメッセージが1件入っていた。それを読むと、『町田を出るときには連絡するように』との事だけで、それ以外の言葉はなかった。つくしも保育園に行かなくてはならず、ソワソワと時計を見ている。その不安そうな「母親の顔」を見て、類は微笑ましい気持ちになった。「真音のお迎...
<side銀二郎こと野田>「じゃあ俺は先にタクシーで帰るから、お前は近くのパーキングで時間潰して、21時になったらここに来い」「判りました~」「絶対無事につくしを連れて帰れよ。これが今日のバイト代な」「・・・(ここは戦闘地域やないねんから!)・・・ありがとうございますっ!ところで総二郎様、足は大丈夫ですか?」「阿呆、そんなもん、もう痛くもなんともねぇよ。でもお袋には黙っとけよ?」「タクシー乗れるところまで結...
重ねた手は動かさないまま、類は左手で珈琲カップを持った。それをひと口飲んで、話の続きを促した。それからは遙香の強迫めいた言葉になるため、つくしは1度躊躇った。が、ここまで来たら嘘は吐けない・・・だから遙香に言われた言葉をそのまま伝えた。『もしも子供を花沢に渡さないというのなら、私にも考えがあるわ。親子無事で過ごせる保証はなくてよ?』そのぐらいの言葉は想像していた類だったが、流石に事実を伝えられると悔...
「じゃあこれで歓迎会は終了で~~~す!二次会に行く人はお店出たら右側に集合~~~!タクシー手配しますよ~!」やっと窮屈な歓迎会が終了・・・幹事の声に一同ザワザワと動き出した。私も自分の鞄を持って立ち上がり、ここで総二郎に電話することに・・・幹事が精算してる横を通り過ぎて、店の外に出たら左側に移動した。二次会に行く涼子にジェスチャーで帰ることをアピールすると、彼女は「了解~、じゃあ連休あけにね~」と言って...
つくしはチャイムを聞いて玄関に向かった。ここに来てからは来客などはなく、来るとしたら宅配ぐらいのものだ。だが本郷からも何も聞いていなかったので、何かの勧誘かと思った。1度東京を離れてから、つくしは不意に来る客には用心深い。だが同階の住人かもしれないので無視は出来ないと思い、ドアスコープを覗いてみた。だがそこには誰もいない。不思議に思ったが、もしかしたら自分の足音が聞こえたかもしれないので、無視する...
高嶋さんは社会人期間が8年だけあって、所長達との会話も上手・・・時事関係にも詳しくて、オトナだな~と思いながら1人で食べてた。私と離れてる席では涼子達が楽しそうにしてて、それが羨ましい・・・。私達の事務所の飲み会は、基本席移動しない。何故なら取り残される人が出る可能性があるから・・・今の所長の考えで、自分の席で隣同士の人とのコミュニケーションを取るように言われていた。だから気の合う連中との飲みは二次会でし...
3人は長い廊下を速歩で進み、本邸のとある部屋の前に行くと、そこには3人の黒服の男がいた。総二郎は中国語で話し掛け、相手の方が態度が大きく、どちらかと言うと総二郎の方が低姿勢に見えた。当然類も中国語で挨拶しているが、その様子は和やかではなく緊張感が漂っていた。藤本の眉間には皺がより、ゴクリと喉を鳴らした。花沢物産の秘書課に配属されるのであれば英語が話せるのは当然だ。だがそれ以外の外国語を使いこなせる...
居酒屋・福ちゃんの宴会場・・・私は一般のお客さんが座る席を背中側にして、隣は高嶋さんだった。その反対側はあまり話さない家電課の野口さんと言うおじさんで、向かい側には量販課の小山君。この人もそんなに話すわけじゃないから、どうにも会話が続かない・・・。所長と部長相手に話すこともなく、1人で食べてる感じだったんだけど・・・「牧野さん、お酒あんまり飲まないんですね~」「敬語はやめてくださいよ~、高嶋さんの方が歳上...
真音と真利愛の誕生日の翌日。類はいつもより静かに目覚めた。隣には真利愛がスヤスヤと寝ており、それをずっと眺めていた。今日は総二郎と計画をしたことを実行する日。上手くいけば、今日こそ・・・・・・そんな事を思いながら真利愛の髪を撫でると、愛娘は薄らと目を開けた。「・・・・・・ぱっぱ?」「おはよう、真利愛」「・・・・・・ふあぁ~~~~~!ママはぁ?」「もう起きてるだろうから行ってみたら?」「あいっ!!」真利愛はムクッと起...
「おっはようございま~~~~す♪」「・・・・・・おはよう、つくし」「今日はまたすんごいテンション高いね、牧野さん・・・」「・・・・・・・・・・・・」←麻衣更衣室に入ったら涼子達にヘンな目で見られたけど、気にしな~~い♪♪ついでに龍崎さんもいたけど、その隣に行くと超ご機嫌に「今日も頑張ろうね!」って言うと、「なんだ、もう諦めたんですか?張り合いないですねぇ~~」、だって。そんな言葉なんてどうでもよくて、私は彼女を無視して涼...
「みぃちゃパパ、いつできる~?」「・・・もう少し待って、真音・・・案外難しいんだよ。美来、説明書取ってくれる?」「は~~~い、どうぞ!」つくしが夕飯の御馳走を作っているとき、リビングでは真音のおもちゃが組み立てられていた。本郷は背中を丸くして説明書とプラスチックの部品を持ち、「え~~と・・・」と悩んでいる。その横では待ちきれない真音が電車を持って床の上を滑らし、美来は父親の手伝いをする気満々だ。つくしは時...
翌朝、アラームの音と同時に目が覚めた。と言うか・・・殆ど寝られなかった///。「お、起きなきゃ・・・」今日も西門さん・・・総二郎のところに朝食を持っていかないといけない。昨日、あんな事があったからすごく気不味いんだけど・・・でも心の何処かでワクワクドキドキしていた。「可愛い下着にしなきゃ・・・」いやいやいや、今は何も起こらないって!だって仕事に行くんだもん、なにも可愛い下着じゃなくても・・・と言いながら何気にチェック...
「「「まぁ君、お誕生日、おめでとう~~~!!」」」「うわぁ~~~い、ありがと~~♪」町田のマンションでは真音の誕生日会が始まった。まずは食事で、つくしの作った料理が並べられている。中央にはケーキ型の寿司が置かれ、それには本郷も美来も驚いていた。それにおかずも豪華に飾り付けられ、真音は手を叩いて喜んだ。「それがね、作ってたら和洋中みたいになって・・・お寿司なのに中華スープだし、ハンバーグに唐揚げって・・・...
唇が離れた瞬間・・・私は何が起きたのかさっぱり判んなかった。でも目の前には西門さんが笑ってるし、まだ身体はホールドされてるし・・・・・・でも意識が戻った瞬間、「ちょっとーーーーっ///!!何すんのよーーーっ!!」「えっ?!そんな反応かよ💢!!」「言葉よりも先に行動なんてズルいーーーっ!!」「いや、お前の返事がトロいからだろうが!!その前に静かにしろ!お袋が飛んでくるぞ?」「ーーーーーーっ!!」私が両手で口を押...
11時20分・・・そろそろ黒田夫妻と瑛翔が来る時間になった。類は面倒くさそうというよりも無関心といった感じで、どうせ数時間経てば終わることだ、ぐらいの感覚だ。が、美央の方はどんどん緊張が増していく。その表情が強張っており、類もそれには気がついていた。だが今更中止というわけにもいかず、美央に何かを話し掛けても「大丈夫」という言葉しか返って来ないのも判っている。「そろそろ降りようか・・・」「え?えぇ・・・そう...
お稽古が終わって、このままお互いの部屋に戻るんだと思ったのに・・・何故か西門さんが私の部屋に来たので吃驚。でもここは西門さんの家なので、「入るな」とは言えない。もう21時過ぎてるし、こんな事は初めてと言うか・・・いつも分かれ道(廊下)でバイバイするのに、今日はいいのかな?と思っていたら、彼の方が先に部屋の中に入った。しかも極自然に・・・・・・居候とは言え、一応女の子の部屋ですが?!「えっと・・・何か忘れ物?」「...
12月24日になった。今日は真利愛と真音の誕生日・・・つくし達と花沢家では、それぞれ祝いの準備が進んでいた。「おはよう~、真音!お誕生日、おめでとう~~~!」「うんっ!ぼく、3さい~~~♪」「真音、おめでとう」「まぁ君、おたんじょうびおめでとう~~~~!あとでプレゼント、あげるからね~」朝1番、つくし達は真音に祝いの言葉をかけた。それから普通に朝食を食べたが、つくしはすぐに昼と夜の御馳走の準備に取り掛...
冷め過ぎたお弁当はあんまり美味しくない。でもお腹が空いていたからゆっくり食べて・・・その時に西門さんが立ち上がって、ここのミニキッチンでお茶を入れてくれた。その湯呑みを受け取り、彼もひと口・・・私達は部屋の真ん中のラグに座り、西門さんは胡座かいて真剣な顔してた。ホントに悲しそうでも辛そうでもない。そして、今度は聞いてもないのに自分の結婚が決まった時の事を教えてくれた。西門さんの婚約話は今から1年半前で、...
23日の土曜日・・・明日は真音の誕生日なのでその為のパーティーをする予定だ。だが美来が昨日から風邪気味なので、本郷が午前中に病院に連れて行き、つくしと真音は留守番。そして午後にはつくし1人が買い物に行くことになった。それに本郷にはつくしの部屋に置くユニット家具を組み立てるという仕事があったので、子ども達と家に居ることにしたのだ。「拓篤さん、ホントにごめんね。そのタンス、なかなか組み立てが難しくて・・・」...
「牧野様、お帰りなさいませ~~~~」「・・・志乃さん、ただいまです・・・」「どうなさったのです?お顔の色が悪うございますけど」「・・・ははは、なんでもありません。あの、ごめんなさい・・・今日のお弁当、食べられなくて・・・」「えっ?!」「ホントにごめんなさい・・・」鞄の中からお弁当箱を出して志乃さんにそう言うと、この人は目がテン・・・でもこれを夕ご飯にしても大丈夫だと思い、「部屋で食べますから」って言うと、そのお弁当箱...
結局ひとつ余ってしまった社食のランチ・・・どうするのかな~と思って眺めていたら、それを藤本さんが持ち上げた瞬間に目が合った。思わず視線を逸らしたけど、そのあとで言われたのが・・・「牧野さん、これ、晩ご飯にしますか?」「はいっ!いただきます!!」「・・・・・・・・・ぷっ・・・」「花沢さん、今笑いました?」「いや、そんな事はない。午後の仕事に取り掛かろうか」「牧野さん、会社では専務と呼んでいただけませんか?」「あっ!そ...
自分では説明は出来ないと言い、俺に質問しろという・・・1度は目を合わせたが、牧野はすぐに何もない部屋の壁に視線を移した。心底困ったという顔・・・まるで俺が悪人のような気分にさえなった。それでもこの機会を逃したら、またこいつが居なくなるような気がして・・・まずは現在の住所を聞いた。それは都心のM町だと言い、ワンルームマンションを借りていると。ワンルームなら1人暮らしか・・・と何故かホッとする俺。携帯の番号を変えた...
<side藤本>牧野さんが大発見とか言うから、今日もこの応接室でランチ・・・毎日こんな事は出来ないのにと思うものの、その大発見が気になって、専務の指示で社食に日替わりを注文。つい、調子に乗って「特上」にしてしまったが、それが届いていつでも食べられるようにしていたら、牧野さんがノックしてきた。廊下で待ってると誰かに見付かるリスクが高いと思い、すぐに開けると彼女は大荷物を抱えて入って来た。「役員フロアの受付...
「お~~~~~~い、俺の事を忘れてないか?」「あ?あぁ、完全に忘れてたわ」俺の後ろで書道家の友人が叫ぶ・・・でも、そいつもすぐに何かを察したのか、苦笑いしながら「んじゃ、俺は帰るわ」と言って踵を返した。俺もその背中に手を振って、「また飲もうぜ」というと、ヒラヒラと手を振られた。そのあと再び牧野の方に顔を向けると、こいつはバツが悪そうに下を向いてやがった。ゆっくりそこに近付くと、何故かこいつの身体が逃...
秘書室に着くと藤本さんは社用と私用の電話番号を教えてくれた後、パソコンで出退勤システムの入力をしてからすぐに「専務の出迎えに行ってきます」と言って出ていった。私は更衣室に入ってコートを脱ぎ、お弁当の入った紙袋をロッカーへ入れた。その時にも後ろにはお姉様達・・・挨拶はもちろんしたけど、怖いから振り向く事も出来ない。でも背中を向けてたら、また何かをされるかも・・・そう思うと恐ろしくて、勇気を振り絞ってクルッ...
「もしも何も予定がないならさ、俺と沖縄にいかない?」葛城さんが真面目な顔でそういうから一瞬キョトン・・・「今年のゴールデンウィークは最大9連休取れるだろ?牧野は無理なのか?」って言われて、慌てて無理だと言った。だって告白はされたけど、その返事をしていない私に旅行の誘い?それって・・・友達とか同僚って意味じゃないよね?行ってしまったら、自然と同じ部屋に・・・そう考えてるって事だよね?彼が石垣島とか宮古島とか...
昨日俺が買った白米・・・その炊きたてのご飯と、キノコの味噌汁。肉じゃがと言う料理は聞いた事があるけど、ひじきと大豆の五目煮は知らない。茶碗蒸しは料亭で食べたことはある・・・温かいプリンみたいなヤツだ。それに綺麗な黄色の卵焼き・・・これを牧野が作ったんだと思ったらすごく不思議だった。「はい、じゃあいただきま~~~す!」「・・・・・・いただきます」「お口に合うといいんだけど♪」はじめにキノコの味噌汁を・・・・・・それはほん...
18時になり、今日は残業無しで帰ることにした。葛城さんとの約束もあるし・・・・・・それに最近帰宅が遅かったから結構疲れていた。デスクの上には今にも崩れそうな書類の山・・・それを片付けていたら、手元が狂って床にばらまいてしまった。慌てて拾ってると先輩がそれを手伝ってくれて・・・「牧野さん、顔色悪いよ?風邪引いた?」「えっ?ううん、大丈夫です。今日は早く帰るんで」「そお?寄り道せずに早く帰ってゆっくり寝なさいね」...
翌日の日曜日。この日もお天気だったから、早速私はサンルームでお布団を干した。超高級な物干し竿&台・・・正直、どうしてそんなに高いのか、私にはさっぱり判らなかったけど。でも「高級品」と言われたら、この銀色も特別な輝きに見えるから不思議だ。それが済んだら洗濯機の説明書を読み・・・・・・「今までが壊れかけの二槽式洗濯機だったからなぁ・・・ドラム式ってなんで斜めなんだろう?」取説によるとドラム式洗濯機は洗濯槽の回転軸...
牧野のマンション前から移動しても、バックミラーに映る姿を何度も見ていた。でも曲がってしまえばそれも見えなくなり・・・俺は溜息を漏らして自宅方面に向かった。本当に平気か・・・なんて、大丈夫だと言ってるあいつに他の言葉を言わせたかったのか?俺は自分が牧野をコントロールしようとしているような気がして、その瞬間すげぇ情けなかった。平気じゃないと言われたらどうするつもりだったのか・・・助けてくれと言われたとして、ど...
私の聞き間違いだろうか・・・今、米100㎏と聞こえたのだが。米100㎏を誰が食べるというの?私がキョトンとしていたら、花沢さんはスタスタと車に向かって歩き出して・・・はっ!と気がついて後を追った。そして背中に向かって「どういう事ですか?」って聞いたら・・・「あそこに精米店ってのがあったから、空き時間に米買った、それだけだよ。すごいよね、マンションまで持って来てくれるって」「配達してくれるんですか?それはす...
お蕎麦を食べ終わった頃、外はもう真っ暗・・・西門さんは「絶対に無理すんな」って言葉を残してマンションから出て行った。私は駐車場まで降りて、そこでもう1度お礼を言い、マンションの契約手続きも全部任せてしまった。彼はレンタカーの窓をあけて片腕を掛け、少し苦笑いしながら「本当に平気か?」と・・・「うん、もう言葉にも困らないし、引っ越しも出来たし・・・めっちゃ遅いけど就活始めるよ」「まぁ、のんびり探せばよくね?家...
花沢さんが景気よくカードでお支払い・・・私はその時、店員さんが抱えてきた高級そうな長い箱を眺めていた。しかも私の買い物だって特大の袋に4つ分で、それがあの車に乗せられるのかと・・・そうしたらあの日に配達してくれた人がすっ飛んで来て、「本日もお運びします!」って。・・・うん、確かに花沢さんの車は大きいけど前だけがびょんと長いだけだし、二人乗り出し、後ろが狭すぎて入りそうにないんだけどさ。「ちょっ・・・なんでそん...
引っ越し業者に頼むほどの量もない・・・そんな牧野の引っ越しは俺1人でやった。まだまだフラつくあいつには荷物の片付けだけさせて、俺は借りていたワンボックスへの積み込み作業で汗だくになった。常日頃大事にしている手だが、あちこちに小さな傷が出来る。それを牧野に見せないように隠しながら、俺は段ボールを運び出した。大半は不用品回収業者が持っていくから、僅かな食器類と、メインは衣類・・・牧野はそれを段ボールに詰めな...
花沢物産に入社して数日後、初めての土曜日が来た。仕事が休みで、このマンションでは初めての休日・・・・・・空気はまだ冷たいけど、小鳥の声も聞こえてサイコー!!そしてめっちゃ天気がいい♪光合成できたらいいのに~って感じ♪「・・・とは言え、お布団が干せないのよね・・・あぁ、この日差しが勿体ない!!」バルコニーに出て眩しい朝日を見上げ、そんな言葉を吐き出した。お隣との境は高く、覗いて見ることも出来ない・・・一体どんな風に...
羽田に着いて西門さんの顔を見た瞬間、それまで張り詰めていたものがプツッと切れた気がした。それは自分でも驚く程に・・・全身の力が抜けてしまった。悲しいというよりは心底疲れたって感じで・・・西門さんが支えてくれる手に甘えてしまった。帰国する時、向こうで買ったものは全部置いてきたから小さな鞄だけ・・・それさえも鉛のように感じていたから、西門さんがヒョイッと持ってくれたときには嬉しくて・・・駐車場は遠かったけど、そこ...
「うわああぁっ!すっごい豪華な海鮮ちらしのお弁当~~~~っ!!」「うん、美味しそうですね♪」「そう言ってもらえてなにより・・・」「じゃあ専務、遠慮無くいただきます。では、私がお茶を煎れましょうか」「あぁ、この弁当には玉露が付いてるよ」「きゃあ♥至れり尽くせりですねっ♪」昨日と同じようにマンション前で待ち合わせ、花沢さんが到着したら3人で部屋に戻った。そして手渡されたお弁当の蓋を取って、1人で大はしゃぎし...
正月になっても牧野から連絡はなく、今頃何処で、どうしているのか・・・それを確かめる立場にない俺は、ただ悶々とした冬を過ごした。近年になく大雪が降った庭を眺めては・・・アメリカで大きな事件が起きたとのニュースを見ては・・・殺風景な庭に紅梅が咲いたときには、その小さな花があいつに見えて・・・この感覚はなんだろうと自分に問うてみたが判らなかった。半袖薄着だった牧野・・・空港でそんなあいつを見送ってから半年近く。NYの真...
「一体どういう神経をしてるんだ?!男子トイレに潜んだ挙句、そんな質問をするなんて・・・・・・信じられないんだけど!!」専務執務室に戻ってから自分のデスクをバン!と叩きながら叫んだ瞬間、戻ってきた藤本に「どうかしたんですか?」と言われ・・・俺はさっきの牧野の言葉を伝えた。そうしたら藤本も「えっ?」と軽く驚き・・・その後、額を抱えた。「そんなに人のトイレ事情が気になる?確かに女性から見れば男のそういうのは疑問かも...
庭の木で蝉が喧しく鳴く・・・・・・それを聞きながら思い出すのは、1週間前に渡米した牧野の顔だった。痩せ我慢がバレバレの笑顔で、引き攣りながら手を振って・・・ちゃんと会えたって言うメール以降、なんの連絡もなかった。牧野には言わなかったが、西田を頼らなくても司の居場所を知る手段は・・・あるっちゃある。俺の立場では難しいが、あきらや類を使えば簡単に情報は入手できる。そう思ってあきらにそれを依頼した。当然あきらは理由...