役所の時間外受付窓口に離婚届を提出し、3人で田園調布のマンションに戻ったのは18時過ぎ・・・すでに疲れを見せている一颯を俺が抱っこして部屋に入ったが、その時も特に嫌がる様子はなかった。夕食は途中に買ったからつくしが準備する必要はなく、一颯を降ろすとすぐにそれらをテーブルに並べた。俺がグラスを出し、買ってきたお茶をつくしがそれに注いでいたが、一颯は黙ったまま母親の服を掴んで離さない・・・時々振り向いてだれ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
皆様、こんにちは。総ちゃんのお話が終わりましたので、本日のお昼更新はございません。長い期間お付き合い下さり、本当に感謝しております。また、先日の件ではご心配おかけしました。たくさんの励ましのお言葉をいただき、そちらも感謝しております。本来はおひとりずつ返事をするところではありますが、コメント数が多くて対応できず、申し訳なく思います。今ではすべて読ませていただき、そのお言葉に救われております。ごく僅...
家族旅行最後の日曜日・・・この日は夕方に大分空港まで行く必要があったので、その途中にある観光地に行くことにした。行きとは違う福岡空港か熊本空港から帰ってもいいのだが、この辺りは山の中をひたすら走るコースなので子供には退屈だろうと考えた。それならどこに行こうかと話し合えば・・・「サファリもあるんだけど、動物見ると大騒ぎしちゃうからなぁ・・・類は前回行った?」「いや、取引先と一緒だったから選ばなかったよ。やっ...
我が家に男児誕生・・・これを聞いた関係者から祝いのメールや品物が届けられ、西門は茶道どころじゃなかった。翌朝には自宅に戻ったんだが、そこで対応に追われ、夜になるまでつくしに会いに行くことも出来ないくらいだ。当然のようにあきらと類からは巨大な花束が、司からは道明寺がアメリカに建築中のテーマパークの招待券(無期限)が・・・遊園地であんなにイヤな目に遭ったのに、今度は自分で作ってるのかと思ってビビった。しかも...
旅館に着いたら、類が先にチェックインのためにフロントへと向かった。つくしは目覚めたばかりの子供たちのチャイルドシートを外し、その時に真莉愛のスカートの汚れに気がついた。「あ、真莉愛・・・やっぱり膝小僧の横、擦り傷があるわね。部屋に入ったら消毒しなくちゃ・・・」「・・・・・・ん」「ママ、パパは~~?」「パパは先に旅館に入ってるよ」「じゃあぼくも行く~~~」「気をつけるのよ、真音」旅館の駐車場は入り口のすぐ横だ。...
「つくしちゃ~~~~んっ!!どうなってるの~~っ?!」「美和子、静かにしないかっ!」「家元夫人、落ち着いてくださいませ!!」すでに暗くなった病院の中。つくしが苦しんでるのに産婦人科の廊下から聞こえてきた声・・・もう出産が進んでるからこの部屋には誰も入れないようになってるんだが、ドアの外で喚かれるからそれが丸聞こえ。つくしも額に汗しながら「来てくれたんだね~」って言ってるけど、こっちはそれどころじゃな...
草むらの向こうにある民家の横・・・草ボウボウの荒れ地の中に見えた赤い色は、今日真利愛が着ていた服の色だった。それを見つけたのは類で、「つくし、あれ見て!」と言ったためにつくしが前を見ると・・・そこには名前もわからない低木があり、初夏だからかなり伸びた草もあった。それを手で押しやりながら進む小さな女の子・・・「真利愛!!」つくしがそう叫ぶと、その女の子はクルッと振り向いた。その顔は真利愛に間違いなく、類とつ...
主治医の病院に到着したらすぐに検査され、出産が始まったとのこと・・・ただし、「病院に来るには少々早かったですね」と苦笑いされた。なぜならつくしは出血した訳でもないし、破水したわけでもない。軽い痛みが来ただけなのに、俺とお袋と志乃さんがゼイゼイ言いながら連れてきたんだから。つくしも「早いって言ったのに///!」と言うが、せっかくだからこのままLDRで待つことにした。LDRとは陣痛から分娩、産後の回復までを行う部...
「類、何があったの?!どうして真利愛1人を戻したのよ!」「ごめん、それは後で話す!遠くには行ってないと思うから探してくる!」「類!!」つくしと真音をその場に残し、類はさっきトイレを借りた旅館までの道を走って戻った。だがそこにも真利愛の姿はなく、公園入り口付近の植木の間も見て回った。子供の名前を呼ぶ類の声に観光客も何事かと振り向いたが、そんなことは構っていられない。近くにいた人に真利愛の特長を話して...
新しい年になり、西門家は瑞樹ちゃんの存在もあってより一層賑やかになった。サッちゃんはそのまま1年の産休になったけど、時間があれば私に瑞樹ちゃんの世話をさせてくれるし、良い話し相手にもなってくれている。だから気分の悪いときも不安があるときも、私はそれで救われた。家元達も「それが一番の仕事だ」ってサッちゃんのことを認めてくれて、彼女もこの家での子育てに漸く安心したみたい。何より旦那さんである野田さんが...
平日にもかかわらず、金鱗湖には観光客が多かった。類は子ども達がはぐれないようにと、その中でも比較的空いている場所を探すと、神社と小さな公園があることをつくしに教えてもらった。そこは去年、本郷達と来た場所だったが、真音はあまり覚えてない様子だった。「あ!おたかな(お魚)さんがいる~~!まこちゃん、見てぇ~」「どこどこ?あ、ホントだ~」「あんまり覗き込まないでよ?落ちちゃうから」「・・・こんなに人がいた...
私の叫び声を聞いて駆けつけてきたのは野田さん。箒を投げ捨て、サッちゃんを支えると、私に「タクシー呼んでもろうていいですか?」って・・・すると今度は総二郎が飛び込んできて、「俺が運転する!」と言って再びダッシュして裏口に向かった。私はどうしていいのかオロオロ・・・すると野田さんが、「嫁は1人で歩けるんで、つくし様は側に付いててもらえますか?」って。そしてすぐに部屋の奥から大きなバッグを抱えて、サッちゃんに...
別府での2日目は猫守を買った神社へ行くことにした。レンタカーを駐車場に停め、古い商店が軒を連ねる表参道を、親子が手を繋いで歩く。当然類と真利愛は初めてだが、1度来たことがある真音も2歳の時なのでまるで覚えていなかった。「あっ、ここ!類、見て見て~」「なに?」「参道に瓢箪の形をした石があるの。初詣のときに踏むと縁起が良いんだって!私ね、ここに来た時にちゃんと踏んだのよ」「そうなんだ・・・・・正月じゃない...
「おめでとうございます、もう妊娠3ヶ月に入ってますよ」「・・・・・・・・・・・・」「本当ですか、先生!!」「・・・///・・・あ、ありがとうございます」病院に着いたらすぐに検査されて、その結果を聞くときには総二郎と、何故かお義母様もいた。そして固まったのは総二郎で、大興奮なのがお義母様・・・私は自分でも気がつくのが遅れたこともあり、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、嬉しかったけど小さくなってた。そんな私たちを見て、先生が「...
保育園を出ると、次に向かうのは・・・・・・「「えっ!!うみたまごに行けるの?!やったぁ~~~~~♪♪」」「ここから車で20分ぐらいらしいし、平日だからそんなに混んでないと思うしね」「じゃあ私がナビをするから、類が運転してくれる?その前にご飯だよね~」「「うみたまごで食べる~~~!!」」「「・・・・・・・・・・・・」」下調べしていたレストランで食べようかと思ったのに、子ども達の「「うみたまごっ!」」のコールに負けてそこ...
本邸にも母屋にもつくしがいない・・・そう感じたのは、この家が異様に静かだったから。たとえ俺と喧嘩してても、あいつの声はどこからか聞こえていたから安心したんだけど、今日はそれがなくて不気味だった。古弟子に聞いても、「今日の茶道の稽古は休む」としか言わない。志乃さんはなにも知らなさそうだったし、西村事務長に聞いても「事務所にも来ていませんよ」とのこと。稽古だけは休まなかったつくしだから、その行動に不安を...
社長就任記念パーティーが終わってから数日後のこと。類は山積みだった仕事を片付け、金曜日に異例の休みを取った。その理由は家族で小旅行に行くからで、秘書・藤本には散々文句を言われたが、それに耳を貸すこともなく。行き先はつくしと真音が住んでいた別府だ。あの時は別々に回った町を、今度は家族で回り、猫守を買った神社へお礼に行こうと話していたから。それに類は真音の保育園の園長にも礼を言いたいと思っていたからだ...
「なんなんだ!!野田の嫁のことになるとムキになりやがって!まずは自分の旦那の世話が一番だろう!!」「・・・そう思うならつくし様とお話し合いなさいませ。毎日毎日暇さえあれば志乃の部屋で喚かれても、わたくし困りますわよっ!」「・・・・・・そうだけどっ!!」「あれから何日経つのですか?家元たちもご心配されてますわよ?」「・・・・・・まだ3日だ」「その3日間、総二郎様のお仕事が滞っているのでは?!」つくしが野田の新居の...
パーティーは無事に終了し、最後はまた家族で壇上に立った。その時にもたくさんの拍手と声援を浴び、つくしは何度も頭を下げていた。招待客が帰るときにも通路で夫婦が並んで挨拶をし、子ども達も最後まで挨拶を頑張った。だが真利愛はすでに限界で、加代がそっと双子を控え室に・・・そして最後まで残っていたのは友人3人で、スタッフ達が片付けを始めた会場の隅でネクタイを緩めていた。「・・・親父さん達、どうしてるんだ?」そう聞...
それから数日後、野田が忙しい中、休みを取っていると聞いて驚いた。庭師の師匠である前田さんに聞くと、どうやら嫁さんの病院に付きそうとのこと・・・その理由を聞いて「似合わねぇことしやがって!」と思ったが、敢えて言葉には出さず。「総二郎、支度できたよ~~」「おぉ、今行く」「ねぇ、おかしくない?これで大丈夫?」「いいんじゃね?着付けも上手くなったな」「えへへへへ///志乃さん、厳しいからね~~」今日はとあるホテ...
「・・・・・・・・・ママは・・・・・・まいあのこと・・・」「どうした?」「・・・・・・なんでもなぁ~い」「・・・・・・・・・・・・」小さな子どもの相手など苦手なはずの司・・・だが、それがつくしの子どもだからなのか、その淋しそうな表情が気になったのだろう。つくしが戻って来ていないのに、双子を連れて会場横にあるルーフトップテラスに出た。そこはさながら小さな公園のように仕立てられていて、芝生にはベンチが置かれていた。真音はそこに設置されてい...
梅雨が明けた7月後半。この頃は庭木の手入れで野田は忙しくなる。梅雨明けの前と後では天候が大きく変化し、新しい枝の生長も一段落。これからの暑さの備え、風通しをよくしたり、光がまんべんなく当たるように剪定していかなくてはならない。春に花が咲いた木には「お礼肥え」を与えたり、茶花でよく使うナツツバキにも肥料が必要。それまでよく雨が降っていたのに、急に降らなくなって水分バランスが悪くなることから、木が弱る...
招待客の視線が類の家族に集まった。何故なら、隣にいるのは1年と少し前に行われた類の結婚式とはちがう女性だから・・・だがその理由は既に知れ渡っているので、ここで改めて類が紹介するという形になっていたのだ。美央のことも「花沢家の被害者」というニュアンスで伝わっている。そしてすでに彼女も本来の家族と過ごしていることも、あの事件の時にそれとなく報道されていたため、ここでは説明しない。それよりも真利愛と一緒に...
「サッちゃ~~~~~ん!!」野田さんから話を聞いて、今サッちゃんがいるという母屋の一室にダッシュで向かった。どうやらそこで使用人さんの制服でもある夏の着物を準備しているとか♪その部屋の襖をパーンと開けると、目の前に年配の使用人さんとサッちゃんが!その顔を見ただけで嬉しくなって、「おめでとう~~~!」と言って両手を広げたら・・・「うわああああぁっ!つくし様、飛び付かないで下さいっ!!」そう言って、彼女も...
類の社長就任記念パーティー当日。類は朝早くから会場入りしていたが、つくし達は式典に参加しないのでパーティーが始まる1時間前に会場に行くことにしていた。その頃には真利愛もすっかり元気になっていたので、先日用意した可愛らしいドレスに着替えていた。勿論真音もスーツに着替えていたが、上着を着るのは窮屈だろうからと、シャツとズボン姿でソワソワしていた。普段は動きやすい格好で走り回っているので、蝶ネクタイが鬱...
確かに・・・・・・確かに、祥一郎は「妊娠している」とは言ってない。「妊娠してないよな?」と言っただけで、俺の早とちりだ。そう・・・俺が早とちり&勘違いしたまでだ💢!!でも、もう少し説明を加えてくれても良かっただろうに!しかもさっき・・・『つくしちゃんから聞くと誤解するだろうから言っておくけど』『は?』『あの子がスケート初心者だったから両手握って教えたけど、他意はないから』『・・・・・・・・・』『スケート靴履かせるときも...
類が帰宅したのは21時。すぐに使用人から真利愛のことを聞き、部屋に入る前に加代のところに行くと、そこでは真音がウトウトしていた。スーツのまま真音を抱き上げると、安心したのかすぐに肩に顔を乗せて目を閉じる真音・・・類はそのまま夕食後の様子を聞くこととなった。「じゃあつくしが子供部屋に?」「はい、付き添うと仰いまして・・・風邪かどうかもわかりませんから、取り敢えず真音様を私の部屋でお預かりしましたの」「主治...
「・・・・・・・・・総二郎・・・お前、ちょっと・・・」「つくしちゃんは大丈夫なの?!」祥一郎が何か言い掛けた時、同時に特別室のドアが開いて、お袋が飛び込んで来た。しかも付き人が誰もいない・・・家元夫人が1人で外出なんて普段なら有り得ないが、それほどこの人もつくしと「孫」が心配だったんだろうと・・・俺はベッドに横たわるつくしの手を握ったままで、お袋はその手前にいた祥一郎を突き飛ばす勢いで俺の横に走ってきた。そしてつくし...
「こら、真音!遊び終わったらおもちゃは片付けなさいって言ってるよね?」「うわ!ママがおこったぁ~~~~!」「もうっ!人に任せちゃダメなのよ?そんな事するならもうおもちゃで遊ばせないんだから!」「やだやだぁ~~~!」「はい、じゃあ片付けて。いくらあなた達のプレイルームだからって、散らかしたままはダメなのよ?」「・・・・・・おこりんぼ!」「なんですって?!」「うわああぁ、またおこる~~~~っ!!」1階奥のプ...
『つくしちゃんがスケート場で倒れたんだ!今から救急車で西門の主治医の病院に運ぶから、お前もすぐに来い!』つくしが・・・・・・倒れた?一瞬何のことか判らず、思考回路停止・・・でも祥一郎は冗談を言うヤツではないし、その声はマジだった。しかも電話の向こうから聞こえるのは『返事はありません!』とか『病院まで何分ですか?』とか・・・そんな雑音が耳に入った途端に背中がゾクッとした。『お連れさんですか?救急車に同乗願います...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...
遊園地とは文字の如く、楽しく遊べるように、いろいろな遊具やアトラクション、設備を備えた施設。アトラクションの設置に関係なく遊園地と呼ばれている公園もあるんだけど、私の思う遊園地は「乗り物」があること!それは滑り台、ブランコじゃなく、もっとハードでスピード感のあるもの・・・まさか、本当にそれに乗れる日が来るとは・・・っ!!「・・・・・・うっ・・・うっ・・・えぐっ!」「ちょっと総二郎・・・この子、泣いてるんだけど」「悪い...
「ふああああぁ~~~~~~~~!よく寝たぁ~~~~~~~~~~!!」大きく背伸びをして起きたのは6時30分。総二郎がいないおかげで久しぶりに爆睡でき、すっごく気持ちの良い朝だった。カーテンを開けると清々しい朝陽が目に入る・・・「今日は快晴だな~」と呟きながらベッドを降りて服を着替えた。そしてドアを開けて隣の部屋を覗くと・・・ベッドで寝ているのは美作さん1人。花沢さんはソファーで丸くなり、道明寺さんと総二...
私を無視して決められた翌日の予定・・・まさかの、道明寺さん達とのお出掛け?!結婚式の翌日に団体行動?!「ちょっと待ってよ、何処に行くの?」「つくし、行き先が問題じゃねぇよ💢俺達は2人きりでここで過ごし、明日の夜までマッタリするんだから!そうじゃないと明後日からは仕事なんだぞ?これまでの疲れを癒やさないとダメだろ?」「確かに疲れてるかも・・・行き先次第だけど・・・」「そうだなぁ、何処に行きたい?あきら」「俺は...
最後まであきらが仕切った二次会終了・・・考三郎はそれからまた飲みに行くと言い、女達を連れて何処かに消えた。従姉妹・従兄弟達はそれぞれの迎えの車であっさり帰宅。涼子達はつくしよりも景品に浮かれまくり、万歳しながらタクシーに乗った。港に残されたのは俺達5人・・・今日は宗家に戻らず、Tホテルのスイートを予約していたので、そこに向かうと言うと、あきらが「ハネムーンは?」と聞いてきた。答えは・・・「今すぐ旅行には行か...
「皆さま、大変長らくお待たせいたしました。本日の主役である新郎新婦の準備が整ったようです。皆さま、ご準備はよろしいでしょうか~?!それでは新郎新婦の入場で~~~す!」美作さんの声で扉が開けられ、途端に目の前でパーン!とクラッカーの鳴る音が!それよりもシャンデリアの灯りの方が眩しくてクラッとしてしまった。その後で叫ばれたのは・・・「西門さん、つくし、おめでとう~~~!」「さぁ、二次会は盛りあがっていく...
おはようございます。突然ではございますが、当面の間類君の連載公開を中止します。理由は、今回のお話について、「物足りない」とのコメントをいただき、それによりモチベーションがダダ下がりしてしまったからです。物足りない・・・それは私の筆力がないので受け入れますが、200話以上で「終盤が物足りない」と言われても、素人の私ではどうしていいのか判りません。明日より続編として、つくしと真利愛のこと、美央とのその後...
それから2ヶ月後・・・桜の花が終り、新緑の美しい季節に変わっていた。少しずつ気温も上がり、春らしい陽気に包まれた土曜日のこと・・・「ママ~~~、トラック来たよ~~」「ぱっぱ、おしっこしのトラック~~~!」「は~~~~い!2人ともおじさん達の邪魔しちゃだめよ~」「つくし、もう全部ガムテープした?」武蔵小山のマンションでは引っ越しの真っ最中。今日はここを出て、花沢家に引っ越すのだ。その為に大人達は朝からドタ...
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役所の時間外受付窓口に離婚届を提出し、3人で田園調布のマンションに戻ったのは18時過ぎ・・・すでに疲れを見せている一颯を俺が抱っこして部屋に入ったが、その時も特に嫌がる様子はなかった。夕食は途中に買ったからつくしが準備する必要はなく、一颯を降ろすとすぐにそれらをテーブルに並べた。俺がグラスを出し、買ってきたお茶をつくしがそれに注いでいたが、一颯は黙ったまま母親の服を掴んで離さない・・・時々振り向いてだれ...
ちょっと待って・・・・・・こんな撮影の時って、そこまで感情移入しなきゃいけないの?!ドラマとか映画とか舞台とかなら判るよ?でもパンフレットの中の「花嫁と花婿」なだけだよね?ぎこちない笑顔を幸せそうに見えるように撮るのがプロのカメラマン、それだけだよね?!私、モデルの代役ってだけだよね?花沢さんが「花嫁の経験豊富ですからなにしてもいいですよ」なんて付け加えてないよね?!「あのモデルさんの2着目のドレスって...
俺からすると随分とお人好しな言葉・・・それもつくしらしいと苦笑いしながらドアを閉め、俺はつくしの肩を抱き、志乃さんは放心状態にも見える一颯を抱っこして駐車場に向かった。そこで3人には先に車に乗っておくようにとキーを手渡し、俺は待機していた美作情報部の男のところに向かった。「お疲れ様です、西門様。総て終わりましたか?」「あぁ、俺たちは牧野の勤務先に立ち寄ってから田園調布に戻る。悪いけど、あとの事は任せ...
「1番初めはこのドレスです。撮影はチャペルでの挙式中を想定して行います。2番目がミニ丈のドレスで、こちらはお庭での撮影になります。3番目のカラードレスはガーデンウエディングでお友だちと家族に囲まれているってイメージの撮影をします」「は、はい・・・」「牧野さんにはホントに急で申し訳ありません。でも夏目君には細かく説明しているので、彼がリードしてくれると思いますよ♪」「はっ///はいっ!!」「では、もう少し...
「総二郎から全部聞いたの・・・一颯にまで手を出そうとしてたなんて、私絶対に許さないから!」「・・・実験台のクセに・・・!」「きゃああああぁっ!!」片山はいきなりつくしに向かって突進し、つくしは両手で自分の頭を覆って防戦。そんなつくしの服を掴んで意味不明な言葉で罵っていたが、俺はグッと堪えて手を出さなかった。何故なら・・・この状況を作り出すのが目的だったから。「パパ、やめて!!」その時に一颯が志乃さんの腕から強...
「今日の牧野さんのお相手のメンズモデルはこの人です♪夏目彪我君。なかなかのイケメンでしょ?」廊下を歩いてると正面から歩いてきた男性・・・すでに衣装に着替えていたのか、タキシードを着ていた。しかもメンズモデルという言葉にドキドキし、よく見ると・・・冗談抜きで超格好いい🧡背は高いしサラ髪もツヤツヤで、強気な男って感じ🧡スリムなのは勿論だけど、足なっが!!腕もなっが!!この廊下がランウェイですか!って感じ🧡ニコッ...
翌朝、総二郎から聞いた通り志乃さんが迎えに来てくれた。旅館の皆さんへの説明としては”新しいアパートを借りることが出来て、西門の弁護士さんが間に入ってくれて離婚の手続きに進んでる”とのこと・・・まぁ、似たような感じだけど、それを女将さん達は喜んでくれた。騙してる感があって心苦しいけど、この時は何度も礼を言い、数日分の宿泊料金を払って旅館を後にした。そして志乃さんが案内してくれたところには総二郎が待ってい...
石垣島に到着したのは10時過ぎで、その頃には花沢さんも目が覚めてた。そしてやっぱり大欠伸・・・それを見ないフリして飛行機から降りて、1歩空港の外に出ると今日は天気が良くて・・・・・・「暑っ!なにこれ、夏じゃん!!」「そりゃそうでしょ。南の島だもん」「半袖で来れば良かった~~!」「服なんていくらでも買えるから心配しないで」「・・・・・・・・・・・・」だよね・・・この人は旅行先で全部買う人だもんね。でも上着を脱げば問題ないか...
「いっくん、今日は良いお天気だね~~~」「ほんとだぁ♪お外で遊びたいなぁ~~~」「・・・そうだね、行こうか?」「ほんと?!やったぁ!!」翌日、総二郎の言葉に安心したこともあり、プール熱のせいでずっと室内にいた一颯と一緒に遊びに行くことにした。2人で色々考えて、決めたのはこの旅館から車で1時間足らずで行ける八景島シーパラダイス。この日は土曜日で、健太くんの幼稚園もお休みだ。だからお母さんの清美さんも子ど...
「えええっ?!また依頼が来たの?牧野さんっ!!」「・・・はぁ。今度は石垣島だそうです」17時半に戻ってきた社長に今日の事を言うと、何故かもう「良かった良かった!」って・・・話を聞く前から依頼を受ける気満々だけど、それってどうなの?なんたって「花嫁さんのモデル代役」だよ?そんな大事な役目をこの私でいいのか?と、私の方が気が重かった。それを話しても「ドレスとメイクでなんとかなるんじゃない?」って他人事みたい...
片山の話は大学時代に移った。もともと成績は悪くなかったが、特に夢も希望もなかったこいつは適当に農学部を選択した。そこで食品微生物学・応用生物科学・植物バイオシステムなどを学び、薬草に興味を持ったらしい。植物バイオテクノロジーとは植物の組織培養・細胞培養による有用物質生産、メリクロン苗の生産、細胞融合による新しい植物の作出などの技術のこと。メリクロンとは種苗培養技術の名称で、meri(meristem=分裂組織)+...
「グアム、楽しかったなぁ・・・・・・・・・もう2週間経ったんだ・・・・・・次にパスポート使う日、いつだろう・・・・・・10年以内には無理かな?」そんなことを呟きながら今日も事務作業をしていた。私は今月の売り上げがすでに3桁だから、あとはのんびりして良いって事で、社長も含めてみんな外出中。事務所にたった1人だから気合いが入らなくて、作業も滞り気味・・・こんなんじゃダメだと思うけど、頭の中に蘇るのはあの人の寝顔・・・・・・同時に”逆...
自白剤を注射されて数分後、片山はグッタリしていた。相変わらず周囲を情報部の人間が取り囲み、聞こえてくるのは小さな機械音のみ・・・「じゃあそろそろ始めるか。片山・・・何故つくしをターゲットにしたんだ?」「・・・・・・・・・・・・」「お前がつくしに薬を飲ませて操ってたのは判ってんだ。本当はつくしと関係など持ってない・・・一颯が自分の子どもじゃねぇ事も知ってて家族してるよな?」「・・・・・・・・・・・・」「こっちはすでにお前と一颯の父...
<side加代>類様がグアムからお戻りになって数日後・・・なんだか元気がないみたいで心配ですわ。でも、その理由次第では喜ばしいことなのかも?なんて考えながら、今朝も起きていらっしゃらないのでお部屋に向かっております。やれやれ・・・寝坊助の類様を起こしてくださる方がお側にいると私も助かるのですけれど~~「類様、おはようございます。もう7時ですよ?起きて朝食をお召し上がりにならないと会社に遅れますよ」・・・・・と、...
美作の鑑定施設に着くと、片山を乗せた車がすでにそこに停まっていた。インターホンを押すと、すぐに解錠されて中へ・・・出迎えに来てくれた市村が、「どうぞこの奥へ」と言ったのは、これまで入ったことがない検査室のような場所だった。パソコンだけでも数十台、化学鑑定の機械と思われるものが並び、重々しい雰囲気の部屋・・・残留農薬分析、不揮発性有機物の分析をする液体クロマトグラフや、金属元素濃度の測定、製品中の金属元素...
「それじゃあ、花沢さん。お世話になりました~~」「・・・ゆっくり休んでね」「は~~~~い♪」グマモン・・・じゃない牧野をアパートまで送ると、ドッと疲れが出た・・・それでも自宅には戻らなきゃならないし、半分閉じた目で運転・・・事故に遭わずに自宅まで戻ったら、すごく上機嫌な加代が出迎えてくれた。「類様、お帰りなさいませ~~♪夕食はお済みですか?」「・・・・・・よくわかんない」「え?ご自分の食事を覚えてないのですか?」「・・...
片山の家から自由が丘まで、車だと1時間程度かかる。俺はその間も店の中で男を睨み付け、「XYZ」に関することを聞いていた。それは数年間にわたりA国で品種改良がされ、密かに栽培されている薬草。効能はほぼシリアン・ルーと同じで、堕胎薬・崔淫剤・媚薬などに使われているらしい。幻覚成分・麻薬成分である多種のアルカロイドを含有し、でも体内に留まる時間が非常に短く、検査をしても検出されないことが特徴だそうだ。そして...
帰国当日の朝・・・一騒動あったけど、牧野も俺もシャワーを浴びて服を着替え、黙々と朝食を食べた。チャモロ・エッグベネディクトにタロ・パンケーキ、アサイボウルにキャラメライズしたバナナがのったフレンチートースト・・・朝から甘いもののオンパレードで、見るだけで胃もたれになりそうだったけど。それが終わればホテルをチェックアウトし、レンタカーで空港に向かうんだけど・・・「牧野」「なぁに💢」「まだ怒ってるの?」「怒って...
急がせていた情報屋の調査報告が始まった。それは自由が丘辺りで怪しげな薬草の売買をしている外国人がいるかどうか・・・結果として数件の情報が上がり、その中にA国の隣、B国人数名が入っていたことが判明した。そして取引しているのは中央アジアで栽培されている特殊植物の粉末で、「茶」だとされているのだそうだが・・・『本当に紅茶の一種だというものもあるようですが、中には睡眠薬の材料的なものもあるようです。自分で煎じてブ...
会長夫人にプレゼントも渡せたし、ヘンな人も消えたので花沢さんと2人・・・これはこれで楽しいな~と思い、それからは会場の中でお料理を食べたり、シャンパンを飲んだりしてた。花沢さんも珍しくお料理に手を出してるし、そんなに話しかける人もいなくて邪魔も入らず♪「教わったマナーなんて必要なかったね」って言うと、クスクス笑ったり。「それにしてもクルーズ船で話しかけてきた女の子達もリアムさんもいないけど、みんなこの...
九州旅行が終って数日後、類はいつもと変わらない日常へと戻った。今日も専務執務室で書類に目を通し、パソコンを睨み、メールを返信・・・ただ1つ変わったと言えば、常にあの御守を持ち歩いているということだ。それが息子のものかどうかは不明だが、鞄の中に入れて一緒に出勤していた。そしてもうひとつ・・・机の引き出しに入れている、私用のスマホに入る連絡を待つようになった。旅行から帰った日の夜、類は情報屋に連絡を入れた。...
雛の茶事が終って4日目・・・歳のせいか、通常より長く休んだお袋が復活した。そして俺達の前に出て来たんだが、毎年のように言われる言葉がなくてちょっと気持ち悪かった。それは・・・『どのお嬢様が印象的だった?』とか『連絡取りたいお嬢様はいなかったの?』ってヤツ。何故なら雛の茶事は「桃の節句」に合わせてるから、お嬢達は超着飾ってくる。例年ならお袋が亭主だから、俺や考三郎は茶事の前後に挨拶するだけ・・・それでもお嬢...
翌日、つくしはいつも通りに起きて朝食を作り、真音を起こしてから保育園の準備をした。月曜日の保育園荷物は大量だ。連絡帳などの毎日の荷物は当然で、真音の保育園は昼寝用の布団も持参だった。それにおむつも取れてないので数枚用意し、夏だからタオルに水着もある。汗をかくので着替え3組に帽子、スモックも加わり、大容量のバッグに布団袋、それに真音の通園リュック。つくしは落とした御守の代わりに黄色いマスコット人形を...
3月に入って1番初めの月曜は4日。それは私の茶道デビュー・・・カルチャーセンターは18時30分からの1時間半なので、仕事が終わったら早めに事務所を出なきゃ間に合わない。それなのに今は月初の仕事がてんこ盛り・・・「おい、お前・・・」「・・・・・・・・・・・・」「おい、聞こえないのか」「私はお前ではありません。名前を呼ばないのなら答えられません」この1ヶ月、殆ど「牧野」と呼ばれない状態が続き、私は我慢の限界だった。そもそも上司から...
旅行の最終日、類たちは午前中に湯布院を観光した。始めに行ったのは「湯布院フローラルヴィレッジ」で、ここはイギリスのコッツウォルズ地方の街並みを再現したミニテーマパークだ。全体がイングリッシュガーデン風に仕上げられており、色とりどりの美しい花々が咲き乱れた庭と、小さな動物たちもいる。敷地はそれほど大きくないのだが、とにかく可愛らしく、湯布院では異彩を放つ場所だ。ベルトラン家の子ども達には然程珍しい建...
2月の終り・・・私は会社帰りにとあるカルチャーセンターに向かった。そこには茶道があり、表千家の先生に教えてもらえるって事だったから・・・本当は考三郎先生のところに行けばいいんだろうけど、牧田って偽名を使ったし、西門さん絡みで行きにくい・・・出来が悪いのは判っているから、それをイチイチ報告されるのは恥ずかしいし。それは涼子達にも誰にも言わず、こっそりと・・・別にすごく興味がある訳でもなかったんだけど、折角西門さ...
『もしもし、類?どうしたんだ、急に・・・』「・・・・・・ごめん、今少しいい?」『あぁ、今日の仕事は一段落したから・・・震えてんのか?』その声は西門総二郎・・・唯一日本に残ってる友人だ。そして真音・真利愛の事は説明済み。現時点で類の話を聞けるのはこの男しかいなかった。類は総二郎に旅行についての説明と今日の出来事を伝え、総二郎はそれを最後まで黙って聞いていた。だがここでも答えは同じ・・・『キツい事を言うが、まことって名...
牧野が言った『その後の電話で言ったじゃない』・・・それを思い出そうとしたが思い出せない。そう思ってスマホを手に取り、通話履歴を見てみると牧野とのやり取りが数件・・・「あぁ、そうか・・・レーズンは牧野からかかってきた電話か。で、その後俺がかけてるけど・・・思い出した、野久保の名前を聞いたんだ!で、そのすぐ後に牧野から?そんなやり取りしたっけ・・・」そこで画面を睨みながら暫く考えてると、森田さんの車にスマホを置いて...
地獄巡りから自宅近くまで戻ったのは17時前で、後部座席の2人はまだ爆睡だった。本郷も「やれやれ」と苦笑いだし、つくしも「疲れたんでしょうねぇ」と・・・そこで考えたのは夕食だ。つくしは自分で作れるが、本郷はこれから帰って、自炊するのかと聞くと・・・「ははは・・・簡単なものなら作るんだけど、土日は殆ど惣菜かなぁ・・・特に今は暑いから作る気しなくて」「そうですよね~、それは私も同じです」「掃除や洗濯はなんともないん...
最悪な14日が始まり、その日1日中野久保課長とは口をきかなかった。向こうも腹がたってるのか、直線距離で2メートルなのに私への用件は総て社内メール・・・しかも『お疲れさま』も『よろしくお願いします』の文字も無し!涼子達もビビってるし、休憩室では「何よ、あれ!」って感じで、早くも私以外の営業課女子社員全員を敵に回してた。「顔は良いんだけど性格悪っ!」「なんかイメージダウンだわ~~、ガッカリした!」「来年...
美央が車に戻ったとき、そこには1台しかなかった。もちろん残っているのは自分が乗っていた車だが、慌てて車のドアを開けると、そこには類が座っていて、真利愛と遊んでいたのだ。「あら?類様・・・どうなさったんです?」「少し前にベルトラン氏の車が出ただけ。気にしなくていいよ」「でもご案内のお役目が・・・申し訳ありません、私が少し遅くなったから怒ってしまわれたとか?」「いや、全然。これまで一緒だったせいで俺が真利愛...
牧野の上司・野久保武司と京都の舞妓・乃々香・・・真理子が知り合い?突然そんな繋がりを知って、あの日の事を思い出した。そう言えば野久保は誰かと待ち合わせていると言っていたし、真理子は野久保と話している間に忽然と消えた。とは言え、野久保の態度は牧野に対する悪態だけで、特に俺の周辺で驚いた風じゃなかったから、乃々香の方が野久保を見て逃げたってことか?でもそれなら真希乃の言葉に違和感がある・・・彼女の言い方だと...
「まぁ君、あそこにワニさんがいるよ~~!」「まって~~~!」「こら、美来!走ったらダメだぞ!」「真音も、転けたら怪我するから!」鬼山地獄に入ると、子ども達は地獄よりもワニが居る場所に急いだ。そこで柵越しに覗き込むと、ワニたちがウヨウヨと・・・初めてワニを見た真音はキョトンとしていたが、美来は「カッコいいよね~」とはしゃいでいた。鬼山地獄・・・別名「ワニ地獄」。大正12年に日本で初めて温泉熱を利用し、ワニ飼...
爺さんと若菜が遊んでる間、俺は真希乃を相手に酒を飲んでいた。でもさっきまでの陽気な雰囲気ではなく、少々気不味そうに・・・それに地方さんも気が付いてるようだったが、俺は気にせず「乃々香の男」について探りを入れてみると・・・「さぁ・・・うちは知らんどすけど・・・どうしてそんな事を?」「置屋のお母さんがそう言ってたから」「・・・まぁ、お母さんも余計なことを・・・」「乃々香が舞妓の時に何度か会ってて、その子が困ってるなら・・...
つくし達が地獄巡りに来たのは14時30分で、そこは観光客で賑わっていた。少し離れた駐車場に車を止め、つくしが真音のリュックを手に持つことに。そして強烈な日差しの下、帽子を深く被ってひとまず木陰へ・・・「牧野さんはここ初めて?」「はい、実は別府に来て2年半ですけど、まだ来たことがなくて・・・真音も赤ちゃんでしたし」「そっか・・・地獄巡りって場所にもよるけど、子どもにはあんまりピンと来ないと思うんだよね。だか...
「まきの、早くしないとお座敷に遅れるよ」そう言われて出て来た芸妓が俺に気が付いてこっちを見た。その顔はデカい目にちょっと幼げな顔・・・とは言え牧野に似てるワケじゃなく、俺は胸を撫で下ろした。そして「まきの」と言う芸妓はもう1人の芸妓と並んで女将さんに挨拶をし、下駄の音も華やかに何処かに歩いて行った。おそらくこれからお座敷なのだろう・・・それを見送る女将さんに「すみません」と声をかけ、近寄った。「はい、ど...
大騒ぎしたジャングルバスから降りると、今度はふれあいゾーンに向かった。入口に入ってすぐにミニチュアホースを見付け、美来は真音の手を引いてそこにまっしぐらだ。その姿を後ろから見る本郷とつくし・・・他人には夫婦に見えるだろうし、子ども達は間違いなく仲の良い姉弟に見えるだろう。うみたまごでもそれを感じたつくしは、ほんの少し本郷と距離を取ろうと歩を遅くした。だが本郷の方は気にもしてないようで、穏やかな笑顔で...
職場のバレンタイン・・・このどうでもいいイベントを始めたのは誰なのか💢健康診断でメタボに引っ掛かりそうな人も多いのに、わざわざチョコをあげる必要があるだろうか・・・・・そんな事を思いながら、土曜日にはデパ地下のチョコ売り場に来ていた。「どれにしようかな・・・高価すぎるのは困るし、安くて見栄えが良いものがあればいいけど・・・」職場で配る場合、チョコレートをもらえない人がいないようにしたり、本命チョコや手作りチョコ...
前に座る大人達と、後部座席の子ども達の空気感は全く違っていた。真音と美来は楽しそうに笑ったり歌ったり・・・もちろん真音は言葉が少ないので、その殆どは美来だ。美来も独りっ子のため、弟が出来たようで嬉しいのだろう。それにいつもは真音も美来も後部座席で1人なので、もう1人子供がいる状況にハイテンションなのだ。それに比べて、運転する本郷と助手席のつくしは微妙な雰囲気。それというのもこの距離感はお互いに初めて...
茶道具の恐ろしさを目の当たりにして、私は暫く放心状態・・・まさか、こんなお菓子入れに9万円とか!実家では極々稀に可愛いクッキー缶をもらったら、それにみかん入れたりしてたけど、茶道では9万円に和菓子を入れるのかと・・・そんな光景が想像出来なくて、店員さんが説明してるのに全く頭に入らなかった。そんな事してると西門さんの用が終わったみたいで、彼は「揃ったら宗家に届けてください」って頼んでた。でもその手には小さ...