桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「花沢さん!私、花沢の社員って設定ですか?」「うん。そうじゃないと朝から夜まで勤務って言われたか困るでしょ?あんただって事務仕事があるだろうし、花沢の社員がお手伝いってことになったら時短出来ると思うし」これは初めから思っていたこと・・・何日間勤務するかもわかんないのに、牧野を何時間も借りることになったら三毛猫の手も大変だろうし。でもそれを彼女に話してないとは思わなかった。(←自分のことである)「あぁ、...
どうやって帰ったのかも覚えていない・・・気がついたら私はマンションの駐車場に停めた車の中にいた。もう外は薄暗く、外で遊ぶ子どももいない。助手席には今日買った物があるけど、その中身も覚えてない・・・その下にイベントのパンフレットがあるのを見て、また大きな溜息を吐いた。本当に綺麗な人・・・着物がとてもよく似合っていた。ただ、妊婦さんには見えなかったけど、それも目立たない体質なのかもしれないし。・・・と言うことは妊...
花沢さんの家を見ていたから驚かなかったけど、この家もかなり広い・・・って、そんなことはどうでもいいんだけど!!急に現れたお爺さんの後ろをついていく花沢さんの袖を引っぱり、「どういうことですか?!」って睨み付けると・・・「え、なにが?」「私が花沢物産総務課の人間って事ですよ!」「あぁ・・・言わなかったっけ?」「言ってませんよ💢!!」←一応小声「ん?どうかしたのかね?」「「なんでもありませ~~ん」」振り向いたお...
オープニングセレモニーが終わり、控え室に戻ったのは11時45分。すぐに実演に入る団体もあったが俺たちの実演までにはかなりの時間がある。だから今から昼食を取ることになり、弟子が配られた弁当を俺たちの前に置いた。ここで美涼が手洗いに行くと席を立ち、流石にそれには付き添えないのでここで待つことに・・・彼女がいなくなってから、弟子にセレモニーの間の事を聞くと・・・「美涼様は初めのうち、ステージの横で総二郎様を見...
「「「「・・・・・・・何があったんだ?・・・・・」」」」「皆さんっ!私のせいじゃありませんから!!」こんな日に限って全員がほぼ同じ時間に帰社してきて、事務所のど真ん中にある冷凍庫を見て目がテン。そのうえ私が中にアイスを入れてたから、ドアを開けてまた目がテン。社長が「もしかして、これが今回の依頼料?」って言うから、両手をブンブン振って今日の出来事を説明した。そうしたらまたまた4人の目がテン、口がポカン・・・「日当...
イベントが開催される商業施設につくと、弟子2人が道具類一式を抱え、俺は美涼を伴って7階にある控え室に向かった。そこは広い部屋をパーティションで区切っただけの控え室・・・ホテルやイベント専用の施設じゃねぇからそれも仕方がない。案内するスタッフについてそこに入ると、何処からともなく「総二郎君じゃないか」と声がかかり、俺は軽く一礼して通りすぎた。その時に美涼もにこやかに挨拶し、皆が驚いてる・・・それも感じてい...
藤本が執務室に戻ってきたらすぐに自分のデスクの上を片付けた。それを見て「どうかしたんですか?」と言われたけど、彼の顔を見ずに答えたのは・・・「篠田産業に行ってくる」「え!急にどうしたんです?」「篠田会長から呼ばれただけ。1人で来いって言われたから藤本は残って仕事してて。急ぎのメールがいくつか来ていたから、それを片付けてくれると助かる」「私が行かなくてもいいんですか?」「・・・あの美人秘書に会いたいのかも...
「今週の土曜日、出勤になったんだ」「あ、そうなんだ・・・」「辞める前に少しぐらいは協力しようかと思ってね。印刷部にも急がせてる案件があってさ~~」「うん、わかった・・・お疲れだね」木曜日の夜にそんな話をされて、私はサイドボードの上にあるカレンダーを手に取った。そこで日にちを確認すると、その土曜日は8月24日・・・・・・この日付に覚えがあり、少し考え込んでると・・・・・・思い出した。前に先輩に頼まれて行った商業施設で...
「それでは会長、本日は楽しい時間をありがとうございました」「・・・(楽しそうに見えなかったが)・・・いや、こちらこそだよ。あの件、よろしく頼むよ」「・・・わかりました。またご連絡差し上げます」そう言って会長を見送ったのは20時30分。俺の後ろに立つ藤本も深々と頭を下げていたけど、会長秘書がモデルかと思うような美人だったとは・・・道理でこいつの機嫌が良いと思った。そしてタクシーが見えなくなるとホッと一息・・・今度...
妊娠を知ってから3週間が過ぎ、8月も後半・・・毎日が猛暑で朝から身体が怠かった。それでも朝早くに起きて朝食を作り、そのお皿を洗い終わった頃に・・・「じゃあ、行ってくる。車の運転、気をつけてね」「うん、行ってらっしゃい。今日から15時で終了だからそんなに心配しなくてもいいよ」「心配するよ、今はまだ安定期じゃないんだし」「・・・・・・ありがとう」「早く帰るから。君が好きなチーズケーキ、買って帰るからね」「楽しみに...
「・・・日が暮れるの、早くなったよね~」「専務、いいから書類に目を通して下さい。いつまで夕日を眺めてるんです?」「・・・もうすぐ業務終了だね」「なに言ってるんですか、この書類の報告期限は今日ですよ」「・・・・・・・・・・・・・・・」「明日出来ることは今日しなくていい、なんてのは通用しません」今はもう9月・・・とは言えまだまだ猛暑で、仕事のやる気なんてどこにもない。そんなことを藤本に言ったら殴られそうだから、仕方なくデスク...
約束した1時間はとっくに過ぎた。このまま知らん顔しようかと思ったが、そのあとのお袋の小言が鬱陶しい・・・だから30分遅れで美涼の部屋に向かった。あいつのために作られた離れは俺の部屋とはそんなに遠くなく、さっさと歩けば30秒もかからない。それなのに足が重く、随分長く歩いたかと思うほど・・・その離れの灯りが見えると、深い溜息が漏れた。嫌なことは早く終わらせようと思い、ノックをすると返事の代わりに美涼が出迎え...
裏口と言われたけど私のアパートのドアよりもめっちゃ綺麗なドア。そこにあったインターホンを押すと、すぐにカチャッと開いて、これまた綺麗なお姉さんが「いらっしゃいませ」と言ってニコニコと・・・彼の後ろにいる私を見たらクスッと笑ったんだけど、それはどういう意味だろう?その前のニコニコとは違い、若干悪意を感じたのは気のせいか?1歩中に入ると、流石に裏口って感じで、スタッフさんの傘とか通勤用の派手な靴?とかが...
「牧野さん、無理しないでね?」「はい、大丈夫ですよ~」「小さな物でも箱で持つと重いから、牧野さんは軽いものにしてね~」「台車、使わせてもらってますから」ふぅと息を吐きながら品出し・・・先輩スタッフさんが気を遣ってくれるけど、有り難いような、心苦しいような・・・まだまだ実感がないから気が引けてしまう。それよりも昨日の夜、片山さんが変なことを言い出したから気になって・・・**「よし・・・そろそろ茹でようかな・・・」2...
病室を出ながら通話をタップし、「急用?」と聞くと・・・『今、どちらですか?』「どうして聞くの?」『もしも会社に近い場所においででしたら、寄っていただけたらと思いまして』別に急いでる様子でもないのに、その言い方。しかも藤本だって休みのはずなのに・・・と、思った瞬間、嫌な予感がした。だから素直に「花沢総合医療センターにいるけど」と答えると、『それなら結構です』と言って、速攻切られた。「・・・・・・なんなんだ💢」お...
親父が騒ぎを起こした翌日、西門には美涼とその母親が来ていた。そして親父を見舞い、爺様にも挨拶・・・前日とは打って変わってお袋の機嫌は良かった。俺はと言うと・・・「本当にいいのですか、総二郎様」「別に・・・いいんじゃね?これで親父の気持ちが安らぐのなら・・・」「でも、その気はないとあれほど言ってらしたのに」「・・・俺が西門に出来ることはこのぐらいだからな・・・」「総二郎様、そんな言い方は・・・」「志乃さん、そんなに心配...
私が持ってたお見舞いの花を凛々花さんに渡したけど、そのお礼は当然花沢さんに向けられた。しかも私が渡すときは無表情だったのに、彼に向けた笑顔は極上・・・人間、こんなにも瞬時に顔を変えられるのかと驚いたくらいだ。花沢さんはそんなことも気にせず、側にあった椅子に座ってダンマリ。それでも凛々花さんは嬉しそうに「昨日までは苦しかったんですけど~~」と、自分の体調のこととかを話してた。それに対して花沢さんは「は...
どうやって家に帰ったのかも覚えていない。気がついたらガレージにいて、そこでもハーレーに寄りかかって地べたに座っていた。時間なんてわからない・・・頭の中は真っ白で、さっきのこと以外、何も考えられなかった。つくしが片山と暮らし、あいつの子どもを妊娠している・・・それがどうしても信じられなかった。会えなくなってから1ヶ月半・・・俺と関係を持った後で片山とそうなったとして、その子が絶対に片山の子だと言い切れるのか・...
捻挫が治ったもんだから気分が良くなり、少し調子に乗ってスキップしてみた♪そうしたらマジで痛くなくて、「流石、私!」と言いながら駐車場へ・・・「あれ?私の車・・・どこだっけ?確か黒いBMWとベンツに挟まれてたよね・・・」テーマパークほど広くない駐車場なのに自分の車が見えない。と言うか、デカい車に挟まれてるから見えないんだと思うけど、「確かあの辺りで~」と思いながらもスキップが止まらなかった。そして白い車から男性...
「「「え~~~~~~っ!!牧野さん、妊娠してるん?!」」」「・・・は、はい///・・・もしかしたら気分が悪くなるかもですが、仕事はするんで・・・」病院に行ってから数日後、ドラッグストアのスタッフさんや店長の前でそれを話した。と言うのも、少し悪阻っぽい症状が出てるためで、隠してると病気かと思われてはいけないから。ここは処方箋も扱うような大きなドラッグストアだし、具合悪そうにするわけにはいかない。今はフルタイムの...
土曜日、久しぶりに車に乗った。行き先は花沢総合医療センターで、10時に特別に予約を入れられたから。そこに行くと火曜ほどは駐車場も混んでなくて、すんなり入れることが出来た。怖かったのは隣がBMWとベンツだったこと・・・その間にボロボロの中古の軽自動車を入れる私の神経の図太さよ!なんてことを思いながら病院内に入り、休日の受付に行って説明すると、やっぱり最上階を案内された。普通に整形外科外来で良くない?と思う...
俺が時間を作りたいと思っていたとき、その連絡は来た。とある団体の会食に参加予定だった日、その代表者が流行の感染症になったために中止になった・・・と。「マジか・・・・・・具合はどうだって?」「症状は軽いそうです。でも自宅待機ですし、同じ会社の方々ですので皆様検査をなさるそうで・・・」「仕方ないな・・・見舞いの電話を入れておこう」「はい、それがよろしいかと」事務長からそれを聞き、残念そうな言葉を出したものの、内心時...
あの日から5日が過ぎた。今日は金曜日で、土日は休み・・・ようやく背中の痛みも捻挫もよくなって、普通に歩けるようになった。「・・・思い返せばすごい1週間だったなぁ・・・」**先週の金曜の夜はダイニングバーで酔っ払い、土曜の朝は花沢城で目が覚めた。日曜日は本番で投げ飛ばされ、イケメンの寝顔を拝み、ついでにワンピと鞄と血だらけの靴をゲット。月曜日は花沢さんに送ってもらったけど、足首にサポータをして背中を痛めた私に...
親父が自宅に戻ってから数日間、1日に見舞客1~2名の相手をする以外は母屋でリハビリをする生活が始まった。孝三郎も同時に治療を受けつつ、弟子の指導などを行い、依然として外向きの仕事は俺とお袋、宗家での茶会は爺様。それでも家族の顔が揃ったこともあり、忙しい中でもホッとする部分はあった。そんな時に本邸に現れたのは桜井家の当主と美涼・・・俺はその来訪を聞かされてなかったので驚いた。またしても俺に秘密裏に計画...
月曜日の朝、背中の激痛で目が覚めた。これは昨日、背負い投げされた時の打撲によるもの・・・少し動かしただけで「うっ!」って声が出ちゃう。それでも会社に行かなくちゃいけなくて、動く度に「あっ!」「いっ!」「うっ!」と言いながら朝食を食べ、いつものように超時短メイクをして服を着替えた。髪はいつものように1つ括りにして・・・その時にハンガーに掛けたワンピースを見て、昨日の出来事を思い出してた。すごいお嬢様だった...
「牧野さん、今帰ったの?今日は遅かったんだね~」「・・・片山さん・・・こ、こんばんは」「こんばんは。どうかした?そんなに怖い顔して」エレベーターのドア前で鉢合わせしてしまった私たち・・・この1週間は顔を合わせていなかったから、上手く表情を作れなかった。この人は私の動揺など気にもせず、ドアが開いたら「乗らないの?」と背中を押して・・・中に入ったら手に持ってる薬局の袋をさらに強く握り締めてしまった。「それ、潰れち...
「足よりも背中が痛いかも・・・・・・ってか、いつまで寝てんの💢?!」時間はすでに16時。あれから2時間も経ってる。と言うか、この部屋に入って1時間半・・・・・・花沢さんは爆睡。本当ならもう仕事も終わって自宅に戻ってるはずなのに・・・そして私の方が気疲れして寝てるはずだったのに!勝手に帰ろうにもあの靴は履けないし、裸足で帰るわけにもいかない。なんとかワンピは無事だけど、髪はグチャグチャ・・・・・・「あれ?」髪の毛を直そう...
湧き上がる怒りを静めるには時間が掛かった。この間に事務長が後援会長が来ていたことの理由を聞くと、お袋が桜井親子を出迎えにロビーにいたとき、友人の見舞いに来ていた会長に出会ったというものだった。その時に親父の退院を教え、今日なら病室に来てもいいとの許可を出したのだそう・・・そんな偶然があるのか?と思ってしまうが、今更どうでもいい・・・・・・気持ちが落ち着いたら美涼のことなど無視して、ここで親父に初めて孝三郎...
「いくら彼女が無作法な事をしたとは言え、こんな場所で投げ飛ばすなど言語道断です。そんな人とは2度と一緒に過ごしたくはありませんので、私はこれで失礼します」「類様、そんなっ・・・!!」「別にあなたのお爺様には何も報告しません。が、牧・・・良江さんの事をご自宅で話されたことがわかった時点で、Mホテルのスカイラウンジで人を背負い投げしたことをお伝えさせていただきます。なので、ここで起きた話は誰にもしない方があ...
つくしと会えなくなってから1ヶ月が経過・・・その間に梅雨が明け、クソ暑い夏が始まっていた。孝三郎はまだリハビリなどを行う段階ではなく、安静にしながらも右手だけで出来る軽い仕事を始めた。それは招待状などの作成とか事務長の手伝いだが、長時間すると首に痛みが来るので、1日のうちの数時間だけ。それでも俺の負担は軽くなるので助かっていたが・・・やはり考の不安は大きくなるようで、時々荒れてしまうこともあった。酒も飲...
「雪だるまの前にいるのんびり王子を助けなきゃ・・・!」と、気合いを入れて1回大きく息を吸った。それを吐き出すと同時に足に力を入れ・・・ズキッとしたけど我慢して突進!このワンピに似合わないスピードで10歩ほど進んだら、そこはもう敵陣!!「プリンはいかがですか?」「あ・・・プリンは好きです」「まぁ🧡じゃあ濃厚なプリンを・・・・・・」そんな会話が聞こえた瞬間、そのテーブルの真横に立った!すると雪だるま・・・もとい、お嬢様...
「・・・・・・・・・・・・んっ?」「目が覚めた?」「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」「余程疲れてたんだね・・・あれだけのお酒で寝ちゃうなんて」そう言われて顔を上げると、ぼんやりとした視界がそのうちはっきり見えてきて・・・・・ハッと我に返って身体を起こすと、目の前には片山さんがいた。私は彼の部屋のテーブルに突っ伏してて、そこには彼の飲んでるお酒のグラスしかない。この状況が理解出来なくて、目を見開いて辺りを見ていると、それよりも...
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」「・・・花沢だけど」「石川様よりご予約いただいております花沢様ですね?お席にご案内いたします」「・・・ありがとう」スカイラウンジに行くと、そこのスタッフに案内されたのは入り口右手側の奥の席・・・「お連れ様がお越しになるまでこちらでお待ちください」と言われ、赤いバラが一輪飾られたテーブル席に座った。スタッフの言葉通り相手はまだ来ていなくて、すぐにスマホで牧野に席の...
パエリアだけだとさみしいから、サラダとスープも作ることにした。とは言え手の込んだものを作る気などなく、ニンジンのサラダとコーンスープだけ。せん切りニンジンを作り、タマネギの薄切りとハムの細切りを用意。エリンギも細切りにして、これはコンソメのスープで茹でて下味を付ける。サニーレタスは水洗いして水気をきり、食べやすい大きさにちぎってお皿に盛り、そこにドレッシングで和えた材料を乗せるだけの簡単なものだ。...
日曜日のお昼過ぎ、私は鏡の前で念入りにメイクをした。普段は使わないアイライン・・・震える指で目元に近づけたけど・・・「どぅわぁぁぁ~~~~~っ!!狸になったぁ!!」瞼の上がまっ黒になり、慌ててそこを擦りまくったらさらに広がってとんでもない顔に・・・急いでメイク落としで拭き取り、ベースメイクからのやり直し。そしてもう1度ネットでアイラインの引き方を読むことに・・・初心者や不器用さんにおすすめなのはペンシルアイラ...
その週の金曜日、前のマンションに戻って大家さんに退去の立ち会いをしてもらった。そこで鍵を返したり、補修の必要な部分の説明を受けたりと数時間を過ごし、ポストを見たら会社から離職票などの書類が届いていたのでそれを鞄に入れた。その帰りには郵便物の転送の手続きも・・・でも住民票の移動はまだしなかった。なんとなくだけど、今のマンションに長く住む気がしなかったから・・・それが終わると江戸川に戻り、今度は求人雑誌を見...
「青山のPerfetto・・・地図アプリで見るとこの辺り・・・・・・」スマホを片手に歩いていると、前方に煌びやかなお店を発見。そこのドアに見えたのは「Perfetto」の文字で、外観だけでめっちゃ高そうな雰囲気出しててドン引き!私は普通のシャツにジーンズで来たから、こんなお店のドアを開け勇気なんてないんだけど!・・・とは言え、花沢さんに言われたので仕方なく指先だけでドアの取っ手を持ち、それを押しながら「すみません~~」と小さ...
会社に行かなくなって6日目・・・部屋も片付いたし、することがなくて逆に気持ちが落ち着かなかった。ドライブしようにも土地勘はないし、今日は曇り空で日差しが強くなかったので散歩に行くことにした。課長から聞いていたスーパーまでの道をテクテクと、ただ周りを眺めてゆっくり歩く・・・そうしたら正面からベビーカーを押しながらこっちに向かって歩くお母さんがいて、通り過ぎる時にチラッと見たら、可愛らしい赤ちゃんが寝てた。...
「ふぁ~~~~~~~~~・・・・・・よく寝た」目が覚めたのは11時30分・・・モゾモゾとベッドを降り、シャワーを浴びた。ドライヤーも面倒だったのでタオルドライして部屋に戻ると、適当に選んだ部屋着でひと休み・・・その時にスマホが鳴ったので名前も見ずに出てみると・・・『ちょっと花沢さん!!この契約書、どうしたんですかっ!!』鼓膜が破れるかと思うほどの声量に驚き、思わずスマホを耳から離したんだけど、誰かすらわからない・...
次の日から宗家の空気はガラリと変わった。お袋の声が響かず、少しだけ張り詰めたような緊張感・・・爺様も婆様もそんな空気を醸し出してないのだから、お袋の強張った表情のせいだろう。食事の時も久しぶりに爺様が上座に座り、その次には婆様。婆様の向かい側にお袋が座り、俺は婆様の隣だ。会話するのは俺たち3人で、お袋は終始無言・・・それを志乃さんがハラハラした様子で見守っていた。食事の後で古弟子数人も交えて打ち合わせを...
何が起きてるのかサッパリわからない・・・今、私はどこかの国のお城の中にいるみたいな気分で、ふかふかの椅子に座ってる。すんごい大きな窓には、クラシカルでエレガントな絵羽柄の刺繍が綺麗なレースカーテン&カーブを描いて留められてるクリーム色のカーテン。観葉植物もあるんだけど、それが3メートルぐらいあるんじゃない?ってぐらいのサイズで普通の家庭ではまず有り得ない。さっきの部屋もシャンデリアだったけど、ここ(...
平日午後の総合病院は見舞いに来た人でごった返していた。そんな中、森田さんが爺様を、俺が婆様を支えるようにしてエレベーターに向かい、そこで最上階を押すとドアが静かに閉まり、病院独特の匂いがする空間はシーンとしていた。婆様が「孝三郎が生まれた時以来来てないわ~」と言い、パネルの文字が増えていくのを眺めていた。そして最上階に着くとナースステーションに目配せして通過・・・その時に事務員が何か言いたげだったが...
タクシーを呼んだはいいが、1人で歩けない彼女を放り込んでも良いものか・・・。運転手に「酩酊状態だけど、この子を1人で乗せてもいい?」と聞くと、流石に首を横に振られた。「それならあなたも乗ってくださいよ」と・・・タクシー運転手は寝ている客の肩をゆすったりするどころか、身体に触ったりして起こすのもNGを出されているからだ。これは相手の身体を触っていると盗難やセクハラなどの疑惑を持たれるからで、そういう事情から...
月曜の朝、早速京都に俺が電話をして、爺様に秋の野点茶会の応援を頼んだ。この時には孝三郎が事故に遭ったことも話し、親父と同じ病院に入院していることも説明。でも親父の気持ちを考えて孝三郎の事は秘密にしていると伝え、後援会の連中にもまだ話せていないことも伝えた。その上でアドバイスを求めると、急遽東京に来てくれることとなった。「ホントに来てくれるんですか、お爺様」『口切りの茶事ぐらいまでなら構わんよ。どう...
花沢さんとお茶するお嬢さんの写真を見て真っ先に思ったこと・・・これ、何もしなくてもよくない?!そう言ったら彼がムッとした顔で、「無責任な!」って。でもよくよく考えたら、このお嬢様がこの人と会って、それでいて「彼女」になろうと思うだろうか。むしろ会った途端、自己嫌悪に陥って逃げる可能性もあるんじゃない?彼女になろうと思うこと自体、世界一高い山、つまりヒマラヤ並みにハードル高いと思うんだけど!そう言った...
医者と看護師が出て行き家族だけになると、孝三郎もかなり落ち込んだ顔を見せた。何度も「なんでこんな目に・・・」と言いながら動かせる右手を拳にして唇を噛み締めて・・・・・・お袋はまだ事故のことについて詳しく聞いてなかったから、ここで俺が知ってる限りの話をして聞かせた。相手のことは孝三郎も聞いていなかったので、それには忌々しそうに眉根を寄せながら無言・・・俺が「事故のことはすべて弁護士と保険屋に任せるから」と言うと...
「そんなところに立ってないで、座ったら?」そう言うとモジモジしながら「どっち側に?」って・・・別に2人用の席なんだからどっちでも良いのに。強いて言えば入り口に近い方が男性で、奥が女性。カウンター席だと男性は右側で女性は左側に座るのがいいんだそう・・・そう言ったら猫背のまま奥に座った。「カウンター席の話・・・それはどうしてですか?」「人間は左耳で聞いた言葉をより感情的に捉える傾向があるから。恋愛心理学的な観...
孝三郎が日光からの帰り道で交通事故に遭った・・・その連絡に驚いて事務所に行くと、そこでは西村さんが誰かと電話中だった。俺を見たら事務長は慌てて電話を切り、すぐに状況を聞いたんだが、その事故が起きたのがすでに都内に入っていたために搬送先は親父がいる病院にするとのこと・・・「今は搬送中ですが、孝三郎様は怪我をしているようですが意識はあるそうです。一緒に行った弟子の石崎と電話で話してたんですが、楠本も怪我をし...
「なにっ?!50万の報酬?!」「「「「客から値段提示してきたの?!」」」」「はぁ・・・・・・そうなんですよ」翌日、社長と先輩達に花沢さんの依頼内容を報告した。当然内容よりも金額に驚き、全員口を開けて固まった・・・・・・そりゃ、そうだ、そんな依頼主なんて初めてだもん!ただ、引き受けるかどうかと言うと、その賛成反対は半々に別れた。「やっぱりそれは公序良俗に反しませんか?」「そうかなぁ・・・でも恋人でもないんだろ?半...
「・・・・・・・・・・・・っつ・・・!」寝返りをうったら強烈な頭痛がして、思わず額を手で覆った。薄目を開ければ部屋が真っ暗で、私はしばらくこの状況を考えたんだけど・・・・・・床じゃないってところでベッドを組み立てたことを思い出した。ただ、次の瞬間・・・・・・!!「えっ?!」ガバッと身体を起こして振り向いたら、そこにはTシャツ1枚の男性が寝ていた。それに驚いて自分を見たけど、Tシャツは着てるけどブラをつけていない・・・それに血の気...
定時になり、俺はデスクまわりを片付けて立ち上がった。当然のように藤本は不機嫌さMAXで俺を睨み、「本当にお帰りになるのですか?」と言うから素直に頷いた。そもそも役員には就業時間は存在しない。つまり業務に支障がなければ2時間の勤務でも問題ないし、緊急時であれば24時間ぶっ続けで勤務する場合もある。今日はその「業務に支障がない」日であり、帰宅しても咎められることは・・・「経営戦略会議で出た課題についての所見...
「君を大事にしてくれる人は他にいるよ・・・」「・・・・・・どこに?」「・・・・・・ほら、目の前に・・・・・・いるじゃない」額の手の指の間から薄めで見ると、そこにはニコニコしている総二郎・・・ではなく、片山課長がいた。大事にしてくれるって言い方に違和感を覚えながら、なんとか苦笑いして「なに冗談言ってるんですか」って返した。でも気分はどんどん悪くなり、身体が揺れてるのが課長にもわかったみたい。「そんなに辛いならホントに寝たら...
翌日、出勤したら真顔の藤本が俺の前に立った。何かと思えば、出して来たメモは「日曜日、Mホテルスカイラウンジに14時」・・・そしてこれが石川氏からのメールだと言われ、ガクッとした。「・・・ホントに予約したの?」「そうみたいですね。専務のお名前で予約したそうですが、お会計は石川社長がしてくれるそうです」「いや、金の心配はしないけど・・・」「住田建築のお嬢様の情報もいただいたので専務に転送しました」「・・・・・・有り難...
「まずは出してる部品の数を確認しようか」「はい、よろしくお願いします!」「仕事じゃないんだからそんなにかしこまらないで・・・それにもう上司じゃないし」「すみません///!」レンチを持って来てくれた課長が部屋に入り、部屋に広げた板や部品をキレイに並べた。自分のベッドを組み立てる作業なのに補助的な位置に座り、課長が説明書を手に持ってる・・・まるで恋人か家族みたいな構図に戸惑うけど、どうしていいのかわからなかっ...
「専務、そろそろ出掛けますよ」「・・・・・・・・・・・・」「専務、起きて下さい。モニターで顔隠してもバレてますよ」「・・・・・・藤本って目敏いよね」「貴方の監視が仕事ですから」「・・・仕方ないなぁ・・・」「仕事に仕方ないとか言わないで下さい。ほら、曲がったネクタイを直して下さいよ、幼稚園児じゃあるまいし」花沢物産・専務執務室・・・高層ビルの最上階に位置するこの部屋で、秘書に急かされて椅子から立ち上がった俺。名前は花沢類。自...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...
遊園地とは文字の如く、楽しく遊べるように、いろいろな遊具やアトラクション、設備を備えた施設。アトラクションの設置に関係なく遊園地と呼ばれている公園もあるんだけど、私の思う遊園地は「乗り物」があること!それは滑り台、ブランコじゃなく、もっとハードでスピード感のあるもの・・・まさか、本当にそれに乗れる日が来るとは・・・っ!!「・・・・・・うっ・・・うっ・・・えぐっ!」「ちょっと総二郎・・・この子、泣いてるんだけど」「悪い...
「ふああああぁ~~~~~~~~!よく寝たぁ~~~~~~~~~~!!」大きく背伸びをして起きたのは6時30分。総二郎がいないおかげで久しぶりに爆睡でき、すっごく気持ちの良い朝だった。カーテンを開けると清々しい朝陽が目に入る・・・「今日は快晴だな~」と呟きながらベッドを降りて服を着替えた。そしてドアを開けて隣の部屋を覗くと・・・ベッドで寝ているのは美作さん1人。花沢さんはソファーで丸くなり、道明寺さんと総二...
私を無視して決められた翌日の予定・・・まさかの、道明寺さん達とのお出掛け?!結婚式の翌日に団体行動?!「ちょっと待ってよ、何処に行くの?」「つくし、行き先が問題じゃねぇよ💢俺達は2人きりでここで過ごし、明日の夜までマッタリするんだから!そうじゃないと明後日からは仕事なんだぞ?これまでの疲れを癒やさないとダメだろ?」「確かに疲れてるかも・・・行き先次第だけど・・・」「そうだなぁ、何処に行きたい?あきら」「俺は...
最後まであきらが仕切った二次会終了・・・考三郎はそれからまた飲みに行くと言い、女達を連れて何処かに消えた。従姉妹・従兄弟達はそれぞれの迎えの車であっさり帰宅。涼子達はつくしよりも景品に浮かれまくり、万歳しながらタクシーに乗った。港に残されたのは俺達5人・・・今日は宗家に戻らず、Tホテルのスイートを予約していたので、そこに向かうと言うと、あきらが「ハネムーンは?」と聞いてきた。答えは・・・「今すぐ旅行には行か...
「皆さま、大変長らくお待たせいたしました。本日の主役である新郎新婦の準備が整ったようです。皆さま、ご準備はよろしいでしょうか~?!それでは新郎新婦の入場で~~~す!」美作さんの声で扉が開けられ、途端に目の前でパーン!とクラッカーの鳴る音が!それよりもシャンデリアの灯りの方が眩しくてクラッとしてしまった。その後で叫ばれたのは・・・「西門さん、つくし、おめでとう~~~!」「さぁ、二次会は盛りあがっていく...
おはようございます。突然ではございますが、当面の間類君の連載公開を中止します。理由は、今回のお話について、「物足りない」とのコメントをいただき、それによりモチベーションがダダ下がりしてしまったからです。物足りない・・・それは私の筆力がないので受け入れますが、200話以上で「終盤が物足りない」と言われても、素人の私ではどうしていいのか判りません。明日より続編として、つくしと真利愛のこと、美央とのその後...
それから2ヶ月後・・・桜の花が終り、新緑の美しい季節に変わっていた。少しずつ気温も上がり、春らしい陽気に包まれた土曜日のこと・・・「ママ~~~、トラック来たよ~~」「ぱっぱ、おしっこしのトラック~~~!」「は~~~~い!2人ともおじさん達の邪魔しちゃだめよ~」「つくし、もう全部ガムテープした?」武蔵小山のマンションでは引っ越しの真っ最中。今日はここを出て、花沢家に引っ越すのだ。その為に大人達は朝からドタ...
終わった・・・・・・絢爛豪華な披露宴が終わった・・・・・・マジで疲れた・・・・・・本気で披露宴したらこんなに疲れるんだと思い知った・・・・・・いや、もう2度としないけど。私たちの披露宴・・・それはある意味特殊だった。祝辞が長いからって余興をお色直しの後にしたから、キャンドルサービスの直後が余興開始。私の方からは涼子達が何かしてくれるって言うから任せたんだけど、とにかく西門関係者の余興が長く・・・。1番手は後援会長の詩吟。詩吟は...
「ただいま・・・・・・」「ぱっぱだぁ~~~!」「おかえり~~~~~!!」流石にその日は定時では帰ることが出来ず、類がマンションに戻ったのは20時過ぎ。子ども達はすでに風呂を済ませていて、パジャマ姿で出迎えてくれた。2人を同時に抱き締めて、出て来た言葉は「お腹空いた~」・・・つくしはソワソワしながらリビングのドア付近で待っていたが、それを聞いて急いで夕食をテーブルに並べた。あまり食欲がなさそうだったので、作...
結婚式&披露宴にもその時代の流行りってもんはあると思う。なにも面白くて珍しいことをしたいとは思わないけど、西門は超古風というか、何と言うか・・・さっきから西門の関係者のスピーチが長い長い!新婦側には話す人がいないから、ここぞとばかりに後援会のお爺様や何処かの会社の社長さんがお話ししている。それをニコニコしながら聞いてる総二郎だけど、膝の上の手はすでに握り拳・・・そうとうイラッとしてるんだろうなって思った...
金曜日の朝はいつもと違う空気が流れていた。それは類が取締役会を開催する日・・・朝早くに目が覚めたつくしと類は、お互いに言葉を交わさずにピリピリとした中で過ごしていた。類は黙って窓の外を見ている。まだ薄暗く、天気は午後から雨になるらしい。つくしはキッチンで珈琲の準備・・・今日の類は何も食べそうになかったが、せめて少しでもと思い、ひと口サイズのサンドイッチを作った。「類、珈琲が入ったよ」「・・・・・・・・・・・・」「身...
折角気分良くここまで来たのに、おかしな3人組みのせいでモヤモヤと・・・それでも巫女さんが現われて、いよいよ本殿に入るって時になったら気分はガラリと変わった。まずは参進の儀と言って、神職さんと巫女さんの後に付いて新郎新婦、両家の親、親族の順に本殿に向かう。中に入ったら神前に向かって右に新郎側親族、左に新婦側親族が入場後、私たちと神職が入場。本当はここで仲人さんも入るんだけど、今回は仲人さんはなし。理由...