佳き家に住みて難波の油虫バスの中では挨拶が続く。和田部長が話し、井上常務が話し、藤原部長が話す。近畿日本ツーリストの添乗員の小畠君が話し、大賀さんが話し、ようやくバスガイドに回って来る。ガイドさん「運転手は前田、そして3日間、皆様の旅のお供をさせていただきます私はガイドの本間〇子と申します。よろしくお願いお申し上げます」「パチパチパチ」バスは町中を走っていく。「曽根崎」の文字が見える。<酔ってあな...
佳き家に住みて難波の油虫バスの中では挨拶が続く。和田部長が話し、井上常務が話し、藤原部長が話す。近畿日本ツーリストの添乗員の小畠君が話し、大賀さんが話し、ようやくバスガイドに回って来る。ガイドさん「運転手は前田、そして3日間、皆様の旅のお供をさせていただきます私はガイドの本間〇子と申します。よろしくお願いお申し上げます」「パチパチパチ」バスは町中を走っていく。「曽根崎」の文字が見える。<酔ってあな...
厚切りの牛タン弁当暑気払ひ新幹線に乗り込んでまずは朝食である。集合前に買っておいた「厚切り焙り牛タン弁当」を食べることにした。私「大阪に行くのに仙台の牛タンというのも何なんだけどな(笑)」妻「別にいいじゃないの(笑)」私「美味いんだからどうしても選んでしまうんだよなぁ(笑)」妻「味がいいのかもね」私「チコちゃんでやっていたな。牛タンが仙台名物になったのは……」妻「何だっけ?」私「店のオヤジが『仙台名...
食ひ倒れたき大阪へ夏の旅7月9日(水)、いよいよ出発である。朝、家を出る時である。私「いやに重いなぁ。これ、何が入ってるの?」妻「お茶だよ」私「お茶!随分と重いな。何本、入ってるの?」妻「4本だよ」私「えええっ、4本?これを大阪まで持って行くの?」妻「大阪万博を軽く考えちゃダメだよ。滞在時間が4時間だよ。どこへ行っても汗だくだよ」私「お茶ぐらいは自販機で買えばいいと思うけどなぁ……」妻「普通のお茶はすぐ...
暑を制すためのあれこれ旅鞄大阪万博の置かれた背景を頭に入れて、本屋で万博の本を一冊買って家に帰った。妻「自分の荷物は自分で用意してよね。何でも人任せにするのは良くないよ」私「うん、分かってる」妻「分かってると言いながら、何にも用意していないじゃん」私「大丈夫だよ。万博のガイドブックはさっき買ってきた」妻「ガイドブック?要らないでしょ、そんなものは……」私「いや、折角行くのに何にも調べないで行くという...
ただ耐へるための大阪油照りいよいよ「かながわ信用金庫」主催の旅行が近付いてきた。初日は大阪万博の見学である。期待に胸躍るというような雰囲気はない。おそらく期待外れに終わるだろう。雑誌「PRESIDENT」の中に大前研一氏のコラムがあった。「万博は大失敗!大阪が失政続きの根本原因とは」という題名で辛口コメントが書かれていた。その1「時代遅れの万博を強行した裏事情」1~2時間は当たり前の待ち時間、内容に比べて料金...
汗拭ふ手や金髪の将棋指しその日の5番目の対戦のことを書いておきたい。相手は富田さんという金髪の女性である。金髪といっても外人という訳ではない。日本人である。富田さん「よろしくお願いします」私「おお、今日初めての女性だよ。緊張するなぁ(笑)」富田さん「緊張をしているのは私の方です。よろしくお願いします(笑)」私「もう3人と対戦してるの?」富田さん「はい、少し早く来ました。全員に負けています(笑)」私「...
夏負けもせず勝つための将棋指し飯尾君はまずまずの実力だった。私の右四間飛車に対して居飛車で挑んで来た。終盤、お互いに相手の王将を攻め立てる展開になった。守りの手薄なところを攻められて1手詰みとされている私が「王手王手」と繋いで相手の王将を追い掛けている。あと一枚、何か駒があればという所まで追い込んだが負けてしまった。私「いやぁ、勝てると思ったんだけどなぁ」飯尾君「ホントに負けると思いました」私「3一...
勝ち負けに涼み将棋の熱かりき7月5日(土)、3回目となる将棋道場である。30分前に着いたので向かいにあるファミレスに入って時間調整をした。10時ちょうどに入った。1階のエレベーター前で男の子と一緒になった。またまた中学生である。私「もう何度も来てるの?」男の子「はい」私「じゃ、今日、対戦するかも知れないな」男の子「……」私「この間、中学1年生とやって負けたから、今日は全勝を目指しているんで、そこんとこ、よろ...
樟脳舟つつと洗面器を回る習字の練習をした後、筆の洗浄や余った墨は流し台の排水口に流す。妻は流し台ではなく洗面台の方の排水口にしてくれと言うが、どうしても洗面台の方には抵抗がある。それは真っ白なFRPなので墨が付くと確実に色が付いてしまう。水で流せば落ちるのだが、それならば同じことで流し台の方がいいような気がする。ステンレスに墨が付いてもあまり気にならない。第一、洗面台の方は口が小さい。筆を洗うにも墨...
元巨人フアンなりナイターの灯を愛す土曜日の朝9時過ぎだった。BSテレビで森田健作司会のインタビュー番組をやっていた。ゲストは元ジャイアンツの槙原寛己である。お互いどうでもいいような昔話をして終わった。番組のラストに森田健作が剣道着に身を包み、砂浜を走るシーンを流していた。もちろん「オレは男だ!」の50年後バージョンである。<あの走り方はないなぁ……>年を取った小林弘二君の足の上がらない走法には流石にガッ...
「海よその愛よ」甚平唸りけり這う這うの体で家に辿り着いた。12時10分だった。妻「どうだったの?」私「人生最後の釣りを終えたよ」妻「えええっ、どういうこと?」私「もう二度と釣りはやらない」妻「へぇ~」私「海より山の方がいいよ」妻「ええっ……」私「船の上から富士山が見えたけど、やっぱり動かないものの方がいいよ」妻「もう年なんだから、何事もほどほどにね」私「釣った魚は食べたい」妻「ええっ、調理するの、私?」...
鱚舟に酔ふて齢を知りにけり終了10分前になった。船長「あと10分で終了します。本日の釣った数を聞きに行きますので数えておいて下さい」サービス役の男性が前の方から聞いて回っている。22番の連れの女性が何匹と答えたのかは聞いていない。何か冗談らしいことを言って笑っていた。男性「○○さん、何匹?」22番「20匹」男性「えっ、もっとあるでしょう」22番「いやいや、20だよ」私のところに来た。男性「はい、何匹ですか?」私「...
船床に夢の手枕夏痩せるようやく2匹目が来たところで気分が悪くなったような気がした。下を向いてアオイソメを付けている時に「ん?」と思った。<釣れないと気分も悪くなるかぁ……>お茶を飲んで誤魔化した。コンビニで買って来た缶ビールなど飲む余裕はなかった。3匹目のシロギスは大きかった。当たりもしっかりしていたし、引きも強烈だった。釣り上げて針を外そうとしたが飲まれていた。面倒なので思い切り引っ張った。アオイソ...
鱚釣りの女子供に負けてをり隣の26番の若いのにも来た。<次はオレかな>と思った。しばらくして「竿を上げて下さい。場所を替えます」と船長の声がしてすぐに動き始めた。金沢工業団地の岸壁の横を走って行く。知っている建物が見えてくる。「横浜テクノタワーホテル」が一番高い。22階建てなので一際目立つ。いつも18階の「鉄板焼きレストラン」にお客を連れて行くので東京湾や房総半島を見ているが、逆から見るというのもいいも...
瀬戸洲崎野島乙舳鱚の船LTアジの船が出て行って、すぐさまシロギスの船が入って来て横付けされた。男性「番号の大きい人が後ろです。26番の人が一番後ろ!足元に気を付けて乗って下さい」私は24番である。偶数と奇数で右舷左舷に分かれているようである。クーラーボックスとリュックサックを持って辿り着くと若い男性が最後尾の26番に座っていた。私「隣です。よろしくお願いします(笑)」男性「あっ、お願いします」私「今日は風...
芋洗ふごとき桟橋梅雨晴間「荒川屋」の2階に戻った。さっきは誰もいなかった場所に何人ものお客が席を占めていた。アベックもいれば、子供連れもいる。入り切れない人が顔を出しては下に降りて行く。7時前になって男性が上がって来て「アジの人はいませんか?」と声を掛けている。シロギスの前にアジの船が出るようである。<ああ、LTアジだな?>スマホで検索してみた。「LT(ライトタックル)アジ」と出た。「軽い釣り道具」とい...
琵琶島を浮かべ政子の夏の海橋の欄干には「せとはし」と書かれていた。上から見下ろすと「荒川屋」の船2隻と「弁天屋」の船2隻が横付けされていた。その向こうにこの4隻が出航するのを待つようにして別の4隻が係留されている。桟橋側の船に「LTアジ」と看板が出ている。<LTって何だろう?>店の人だと思うが、竿を用意したりして忙しそうに働いていた。瀬戸神社の方に行ってみることにした。国道16号線を左に曲がるとすぐに白壁が...
日焼止め塗りし手乗船名簿書く店に戻った。私「早過ぎたなぁ(笑)」女性「そんなことないですよ。まずは乗船名簿をお願いします」カウンターの横にテーブルがあって、そこで記入した。女性「ありがとうございます。え~と、竿とかはどうなさいますか?」私「必要なものは全部貸してください。クーラーボックスを持って来ただけだから」女性「はい、分かりました。これは船に乗る時に係に出してください。竿の引換券です」広告の裏...
風少し出て釣宿の夏暖簾出船は7時半である。しかし店の人は「6時には来てくれ」と言っていた。「遅くても6時半には来てくれないと駐車場がなくなる」とも言っていた。船宿のオープンは5時半と書かれていた。家から15分ほどなので5時15分に家を出た。外に出ると風が吹いていた。<オオッ、風があるじゃん……>波の高さまでは調べて来なかったが、「天気晴朗なれど波高し」かも知れないと思った。5時半ちょうどに「荒川屋」に到着した...
突堤に立ちてちぬ釣り動かざる釣りに夢中になったのは平成元年、35歳の頃である。会社で昼休みの時間に黒鯛釣りの話が出て盛り上がっていた。私「お前たちよ、黒鯛のことならオレに任せてくれよ(笑)」社員「ええ!日向さん、釣りやるの?」私「やったことあるどころの騒ぎじゃないよ。あの引きの強さは魚釣りの醍醐味だよ(笑)」一度もやったことのない釣りを大袈裟に話して盛り上がった。言った手前、一度くらいはやってみよう...
釣り上げし鱚は刺身と決めてをり久し振りに土日に用事が入っていない。「べらぼう」にあやかって東京の吉原界隈でも歩いてみようかとも思ったが、この35度超えの暑さでは妻が行く訳がない。<そうだ、釣り船にでも乗ってみるか!>シロギス釣りに行ってみようと思い立った。土曜日なので翌日の日曜日しかない。金沢漁港の「進丸」である。シロギスの午前船と言えば「進丸」しか思い浮かばない。電話を入れてみた。男性「申し訳ござ...
吹かれゐる葉やかたつむり家を成す書道塾に行くと「おめでとう」と声を掛けられた。「成家」合格お祝いの声である。今回は「成家」4名、「教範」1名に挑んだが全員が合格だというので「おめでとう」「おめでとう」が飛び交っていた。先生「良かったよ、全員が合格で(笑)」私「そうですよね、一人だけ落ちたんじゃ、声も掛けられませんよね(笑)」○○さん「落ちるとしたら私だったから、ホントに合格してホッとしました(笑)」私...
万緑や書に点睛の雅号印5月25日(日)、第2回目の篆刻の日が来た。前回、先生からは「何を彫るか決めて来るように」と言われている。現在持っている石は「日向亮司」「堯玻」「亮司印信」の3個である。名前の石は3個もあれば充分だと考えて全く違う「引首印」を作ろうと考えた。「引首印」もしくは「関防印」とは作品の右上に押す落款のことで、自分の好きな言葉や座右の銘などを彫って作品全体の締りを良くするものと書いてあった...
夏料理アルゼンチンの馬ナンコ家に帰った翌日、朝から「ナンコ」作りが始まった。弟に聞いた手順通りに事を進める。妻は寝ている。まず鍋を選ばなければならない。妻が目を覚まさないように音を立てないようにしながら一番大きい鍋を選んだ。ガスの点け方はすぐに分かった。冷蔵庫から肉を取り出した。よく見ると「生なんこ(馬腸)アルゼンチン産」と書いてある。<アルゼンチン?どうしてアルゼンチンなんだろう?馬ならどこにで...
ペンケ川パンケ川時に出水川「ナンコ」作りの前に書いておかなければならないことがある。慰霊碑に父の名前を見つけてから「チロルの湯」に戻る途中で我々家族が歌志内に来て初めて住んでいた場所を訪ねている。美山町という。その美山町に小さな橋が架かっている。「二抗橋」という。歌志内市を流れるペンケウタシナイ川に架かっている。小学5年生の時である。習字に通っていた。母は貧乏をしながらも子供たちに算盤と習字を習わ...
山滴る自販機で買ふ馬の腸弟と飲んでいる時に「ナンコ」の話になった。弟「あれで特製だもんな」私「しょうがないよ。普通はああいうもんなんだろ」レストランで特製ナンコを作って出してもらったがイマイチだった。歌志内名物のナンコはそれぞれの家で味付けや調理方法が違う。帰郷するたびに母はナンコを作っていてくれたが、もう何年も食べていない。弟「自分で作ればいいしょ」私「作れる訳ないよ」弟「作れるよ。簡単だよ」私...
土産なきこと詫びてをり生身魂朝食にレストランに行くと山崎さんが待っていた。私「おはようございます。何だよ、朝まで来てるのかよ(笑)」山崎さん「大事なお客様だから、当たり前ですよ(笑)」私「恐ろしい話だよなぁ(笑)」山崎さん「そういえば社長。私は結構、東京に行ったりするんですよ」私「そうなの?」山崎さん「昨日、帰り際に東所さんとも話したんですけど、10月までには東所さんと名古屋から東京を回ることにして...
虻低く唸りて部屋を一巡り神社を出て碑を探した。一度だけ来たことがある。父の名前が彫られているのである。民家の間を通ってまずは崖の上に出た。神威岳が見える。チロルの湯も見える。母の入っている楽生園も見える。<父さん……母さんの今いる場所が見えるか?>振り返ると急な山道が続いている。その上がり口に「殉職者之霊」と書かれた慰霊塔が建っていた。五輪塔のような造りである。ここも「道北の釣りと旅」から転用してお...
虎杖の芽の効能を信じたるイヤイヤイヤイヤ、朝っぱらから転んだりして碌なものではない。手首の方は大丈夫そうなので一安心だが、何をやっていることやら。目の前に虎杖が生い茂っていた。数日前にテレビで見たばかりである。1時間ほどのコマーシャルだったが、ついつい見てしまったのだった。私「これ、CMなのか?随分と長いな」妻「何チャンを掛けてるの。あんまりチャンネルをパチパチやらないでよ」私「これいいよ。北海道の...
蜘蛛の囲を纏ふ観音山を守る翌朝は早く起きた。着替えて外に出た。朝食は8時からなので7時半までに戻ればいい。1時間半の散歩である。まずは「チロルの湯」の横にある「山霊観音菩薩」へのお参りである。「道北の釣りと旅」というブログで歌志内のことを詳しく紹介してくれている。引用させていただく。「道の駅うたしないチロルの湯に隣接する温泉・チロルの湯の東側で舗装が途切れた所に御堂があり山霊観音が祀られている。チロ...
神々の山の麓に蜂を飼ふ「明龍寺」から「チロルの湯」まで車椅子を押した。距離にして420メートルである。「楽生園」からの距離450メートルより少し短い。それでも勾配が急なので息が切れそうである。語り掛けても聞こえないようで返事はない。誰にも出会うことのない道をゆっくりと押して行った。歌志内市の人口は昭和23年の46171人がピークだったようである(歌志内市ホームページより)。私たち一家が山形から移住した昭和33年...
母のするやうに魂棚並べけり楽生園に1時半に母を迎えに行った。車椅子で玄関まで連れて来てくれて弟の車に座らせた。女性の担当者が乗せてくれたのだが、そのやり方を見ていた。要領がいい。母が少しくらい痛いと言っても強引に進めていた。母の手の位置や足の置き場所などをすぐに指定し、母の身体全体を抱きかかえるようにして車に乗せていた。<ああは出来ないなぁ……>まずは補聴器屋である。しばらく使っていなかったようで壊...
薫風や晴れて二期目を行く市長次に向かったのが歌志内市役所である。行くことは伝えていない。言えばまた昼食を一緒になどと気を遣わせることになる。弟は駐車場で待ってもらうことにした。手土産を持って3階に上がった。企画財政課である。ふるさと納税を担当している。私「こんにちは~(笑)」安楽さん「あっ!あああ、いらっしゃい(笑)」私「いつも急で悪いねぇ。寄らせてもらいました(笑)」安楽さん「いえいえ、いつもお...
これぞ佳き石と亀石鳴きにける翌日の母を迎えに行くのは午後にした。午前中に行きたいところがある。まずは「加藤樹石苑」である。事前に行くことを伝えている。弟も行きたいという。弟「もう30年くらい会ってない」私「そうなのか」弟「昔から『加藤樹石苑』といえば有名だったんだ。亡くなった加藤のオヤジというのがおっかない人で、行けば必ず怒鳴られるんだ」私「へぇ~」弟「姪っ子がいてよ。可愛かったんだけど、全然集まり...
写真の日だべさ記念の写真撮るレストランには食事の用意がされていた。私「あれっ、いつものお姉ちゃんがいない。今日は休みか……」男性が来た。生ビールを注文した。私「いつものお姉ちゃんは?」男性「辞めました」私「ええっ!何で?」男性「詳しいことは知りませんが、別のとこに行ったみたいです」私「何だ、そうかよ。来るたびにお世話になっていたから、ひと言お礼を言いたかったなぁ」車椅子に座ったままで食事を始めた母だ...
坂道を母乗せ車椅子薄暑「チロルの湯」に4時に到着して部屋の鍵を受け取った。送っておいた荷物を小分けにして楽生園に向かった。4時半に到着した。ちょうど夕食時間のようだった。食堂のテーブルに大勢が腰掛けていた。母も玉置さんと向かい合って座っていた。まだ食事は運ばれて来ていなかったが、これから配られるのだろう。担当の女性が母に声を掛けて「今日は外で食べるよ」と説明していた。部屋に戻って出掛ける用意をするの...
青芝が海なすアンモナイト館私「楽生園に電話したら、やっぱり泊まるのはダメだって言うから、今日も明日も飯だけになる」弟「トイレの世話なんかオレたちには出来ないからな。寝ているお袋のズボンを下げたりなんかは出来る訳ないよ」私「それにしても半年でこうも変わるもんかなぁ」弟「あの大腿骨骨折がダメだったんだ。歩けないから何にもしなくなってしまったんだ」高速のパーキングエリアで昼を食べた。私「悪いけどよ、三笠...
夏空へ再生JALで一人旅羽田発10時半の飛行機である。車で出掛けて駐車場が満車だったことがあってからは必ず電車で行くことにしている。帰りの電車の乗り継ぎは大変だが、あの騒動にだけは巻き込まれたくない。8時に家を出た。横浜駅で乗り換えて京急に乗り換え、9時15分に到着した。JAL511便である。稲盛和夫著「誰にも負けない努力」という本を鞄に入れて来た。副題「仕事を伸ばすリーダーシップ」である。稲盛さんの本はいろい...
夏旅や母に外泊許可は出ず昨年11月に帰郷した後、母は4回入退院を繰り返した。その都度、札幌の弟から連絡が入り状況を伝えてくれていた。最初の入院は血圧の低下だった。駆け付けた弟と医師との面談があり、血圧低下の原因を調べたいと医師は検査を望んだが、肝心の母が検査を拒んだ。何度も下剤を飲むのは嫌だと言ったそうである。たまたま血圧が元に戻ったようで退院となったが原因は分からず仕舞である。次は肺に水が溜まり呼...
小満や飛躍を願ふ知事の言5月19日(月)、かながわ中小企業モデル工場認定企業の表彰式があり、県庁まで出掛けて来た。今年新しく認定された企業は1社で、黒岩知事から認定書を手渡されていた。その他のメンバーは5年に一度の更新の審査に合格した企業で約30社が呼ばれて表彰状を受け取っていた。最後に集合写真撮影が行われた。私は前から2列目の右端に立っている。カメラマンが「はい、笑顔で」と言っていたので少し笑ったはずだ...
旅に出る白靴・上着・三度笠5月20日(火)の朝、テレビで橋幸夫のニュースをやっていた。アルツハイマー病で歌詞が浮かんで来ないという。会社に行くとロッカールームで松原さんと一緒になった。私「この間引退したと思ったら、すぐに復活して『死ぬまでやります』なんて言っていたのはついこの間のことだよ。今度は歌詞を忘れてしまうと言うんだから、人騒がせもいいところだよ(笑)」松原さん「いくつだっけ?」私「82」松原さ...
道行の果ての鰻となりにけりビールの後は熱燗に変えた。「浮気の蒲焼き」の話になった。私「240年前だよ。『鰻の蒲焼き』を『浮気の蒲焼き』に引っ掛けるんだから日本人も成長していないよなぁ(笑)」妻「ハハハハ」私「音声ガイドで急にウナギって言っているから、一瞬、聞き間違えたかと思ったよ」妻「ウナギ、ウナギって言ってたからね(笑)」スマホで内容を調べてみた。私「くっだらねぇよ(笑)。どうしようもねぇよ」妻「...
鰻屋に暖簾替へして盛んなり鰻屋に着いた。4時28分である。予約した時刻の2分前である。写真を一枚撮ってから中に入った。女性「いらっしゃいませ」私「傘は……」女性「はい、こちらでお預かりいたします。ご予約のお客様ですか?」私「そう」女性「日向様……」私「おお、大当たり。どうして分かったんだろ(笑)」女性「ハハハハ、お待ちしておりました。ご案内いたします」1階のようである。そのまま奥に案内された。2組の先客がい...
夏柳あるじ不在の耕書堂第一部会場は写真撮影不可だったが第二部では撮影自由となっていた。「こちらで写真をお撮りください」と書かれていたのですぐに前に出て撮らしてもらった。左側に「市川蝦蔵の竹村定之進」が写っている。これも前回書いた「恋女房染分手綱」の一場面である。前半の山場「道成寺」の主役「竹村定之進」は300両を族に奪われた「伊達与作」と手を繋いで逃げた「重の井」の父親である。二人の不義密通が明るみ...
写楽絵の修羅場夏めくほつれ髪いよいよ「写楽」のコーナーに差し掛かった。ここだけはしっかりと見ておきたい。一番手前から並んだ。妻「貴方!そこはダメよ。順番が逆だよ」私「えっ!あっ、そうか」最後の作品の前に立ったようである。バカ、バカ、バカッ!「馬鹿の三段重ね」とは蔦重の洒落言葉である。最初の作品の前に移った。<オッ、これかぁ……>有名どころがズラッと並んでいる。白線を越えないことだけは注意して、間近ま...
腹這ひのやがて思案の昼寝かな東京国立博物館平成館に到着したのが3時10分である。傘立てに傘を預けて入場券を見せて中に入った。エスカレータで2階に上がってまずは音声ガイドである。妻「音声ガイドなんか聞いてたら、遅れるよ」私「折角来たのに音声ガイドなしはあり得ないよ」妻「私はいらない」私「横浜流星君が一生懸命ガイドしてるっていうのに……」妻「……」二つ借りた。鰻屋の時間が気になっているらしい。入るとすぐに人、...
五月雨や皺の紙幣は受け付けず上野駅に到着すると小雨は降っていたが風は止んでいた。私「エート、どこだっけ?」妻「東京国立博物館」私「ああ、一番奥か」噴水の横を通って近づいて行くとチケット売り場に列が出来ているのが見えた。2時50分である。計算する。<鰻屋が4時半だから3時入場で1時間半か……>妻「どうする?」私「どうするって?」妻「並ぶ?」私「並ばないとキップを買えないよ」妻「……」もしかして「蔦重」を諦めて...
青あらし女もすなる怒髪天全ては鰻屋の時刻で決まる。私「何時に出る?」妻「1時でいいんじゃない?」私「上野まで1時間、美術館まで10分、キップを買うのに10分、見学に1時間半、鰻屋まで10分」妻「……」私「よしっ、12時までには帰って来るか!」妻「ええっ、またスポーツジムに行くの?」私「あっ、そうか、やっぱり止めておこう。雨は降っているし、藤井聡太君の名人戦もあるし」それよりも何よりも「写楽殺人事件」の続きを読...
梅天や写楽の謎を愉しめり本はすぐに届いた。しかし読む暇がない。仕事から帰って食事をするとすぐに眠たくなる。プロローグの部分は何日にも亘って同じところを何度も読んだが一向に頭に入って来ない。たった2ページの短い文章が頭に入って来ないというのだから情けない。睡魔に翻弄された数日が過ぎた。「一本の掛軸がある。横三十センチ、縦九十センチばかりの絹地の画面には一頭の巨大な獅子が描かれている。絵師の名は画面の...
不忍の池の鰻を食ひに行くNHK大河ドラマ「べらぼう」を毎週楽しく観ている。5月9日(金)のメールである。私「たまには上野精養軒にでも行く?『蔦重』やってるよ」妻「いいねぇ。でも混んでるだろうなぁ」私「混んでいても『蔦重』は行くべきでしょう」妻「歌麿は染谷将太君だって。ネタバレ」私「唐丸?」妻「いつ?」私「明日は習字があるから、次だなぁ。17日(土)とか」その後しばらく通信が途絶えた。妻「精養軒は予約がい...
失せ物がこんなところに溝浚へ5月11日(日)、母の日。昼にトレーニングに行って来た。私「どうする、夕飯?」妻「食べに連れてってくれる?」私「母の日だからなぁ……」妻「ワ~イ、何にしようかな(笑)」私「子供たちは何かしてくれたのか?」妻「明日、3人で食事をする」私「おお、ちゃんと母の日のお祝いをしてくれるのかぁ、偉いなぁ(笑)」妻「上大岡に行く?」私「いいよ。何を食べる?」妻「食べる前に買って欲しいものが...
髪靡かせて夏服のよく似合ふ家に帰ってからも話をしてみたが取り付く島もない。妻「並ばない万博って言っていたのに、どこもかしこも長蛇の列」私「へぇ~」妻「トイレだって並ばなくちゃ入れないんだよ」私「そうなのか……」妻「しかも7月だよ。列に並ぶ前に倒れちゃうよ」私「ウ~ン」どう口説いても落とせるような状況ではない。完全に拒絶モードである。時が解決してくれるかも知れないので、一旦は諦めた素振りで引き下がるこ...
大坂の夏会津屋のたこ焼きよ4月は人事異動の季節である。信用金庫でも異動があり当社の担当者も別の支店への栄転が決まった。支店長と二人で挨拶に来た。私「おっ、栄転だな(笑)」担当「いえ、そういう訳ではありませんが、日向社長には本当にお世話になりました」私「ま、いろいろと助け助けられての3年間だったからなぁ(笑)」支店長「特にこの年度末は本当にありがとうございました(笑)」私「ハハハ、いや、こっちもいろい...
ところてん一人の夜の棋譜並べゴールデンウィークが明けて出社した。川崎君「将棋、どうでしたか?」私「ああ、将棋か。初めて女性とやったけど楽勝だった」川崎君「一番ですか?」私「その後、中学生とやって負けた」川崎君「ええっ、中学生に負けるんですか!」私「バカヤロ~、中学生だって強いのもいるんだよ」川崎君「なかなか上手くならないですね」私「急に強くなれるか……」その川崎君の一言は意外と心に沁みた。<ウ~ン、...
舟盛りや牛冷されて薄造り「刺身盛り合わせ」があった。私「刺身って肉だろうか?」妻「そうでしょ」私「へぇ~、食べたことないなぁ」妻「食べてみれば」私「よしっ、5点盛りっていうのを頼もう」舟盛りになって出て来た(写真)。私「これは何を付けて食べるの?」男性「すでに味付けされていますので、そのままお召し上がりください」私「あっ、そう」食べてみた。私「おおお、こりゃ美味いわ」男性「ありがとうございます(笑...
マツコリ酒零れて白き夏の海「夕飯をどうしようか」となった。カズ君が遊びに来た時の定番「焼肉若(わか)」は閉店している。私「山水苑は?」妻「あそこは日曜日が定休」私「ああ、今日は日曜日か。連休だから曜日の感覚がなくなっている。じゃ、他の焼肉屋は?」妻「どこ?」私「渡辺美樹の店は?」妻「和民?」私「居酒屋がダメになってすぐに焼肉屋に転業するとはさすがだよなぁ」妻「う~ん、チェーン店というのはどうかなぁ...
人ごとの如き古希なり浴衣着て夕食を終えて部屋に戻ったのが何時かは分からない。7時半かそこいらだろう。カズ君が風呂に行くというので「赤堀さんの草履を履いて行け。日向があったら黙って交換して来い」と言ったのは覚えているが、カズ君が戻って来たのは覚えていない。グ~グ~寝ていた。さすがに早寝をしたので朝の3時には目を覚ましてしまったが、自分の家と違って勝手なことをする訳にはいかない。隣で妻が迫力のある鼾を静...
凛として岩魚の頭残さるるビールの後は「鰭酒」を注文した。私「鰭酒は冬だ。岩魚は夏だ」妻「……」私「ゴールデンウィークは春だ」妻「えっ、春なの?」私「そうだよ。だって夏は立夏からだよ。立夏は大体5月5日辺りだよ」妻「う~ん、微妙な決め方だなぁ(笑)」岩魚は串に貫かれて火鉢のような瀬戸物の上に乗せられて出てきた。男性「これは飽くまでも演出ということで(笑)」私「ええっ、そうなの?」男性「岩魚はすでに調理済...
和氣の氣の米や八十八夜かな夕食会場は別の建物である。時間になって男性が迎えに来た。案内された建物には以前来たことがあった。私「おっ、ここは昔、使ったことがある」男性「そうですか」私「オレの還暦祝いで使った」男性「なるほど」私「もう2年も前の話だ」妻「何が2年よ。12年でしょ」娘「ハハハハ」男性「まだお若いので、それで充分通ります(笑)」私「ありがとう、ありがとう(笑)」すぐに料理が運ばれて来た。男性が...
のどかさや他人の草履と履き違ふ私「おっ、カズ君、風呂に行こう」カズ君「はいよ」玄関には草履が揃えられている。すべてに「日向様」と書かれている。他の客と間違わないようになっているのである。男湯と女湯が一日ごとに入れ替わるので間違わないようにしなければならない。私「おお、こっちだったな。正解、正解(笑)」浴衣を脱いで隣同士で身体を洗った。私「昔、カズ君が小さかった頃、外にある水風呂に入ったぞ」カズ君「...
東海の天へと登る竜を見し部屋に案内されて夕食の時間と翌日の朝食の時間を決めた。「それでは後ほど」と言って出て行った。私「簡単なもんだな(笑)」妻「そりゃそうよ。11回目なんて言うから、案内も何も要らないと思ったんでしょ」私「でも、ま、おそらくそれ位は来ているよ」今回の部屋は我々にとっては初めてだったが、以前娘たちは泊まったとのことだった。床の間には大きな額が飾られていた(写真)。私「いやに下手な字だ...
農道を山の出湯へ緑の日将棋から帰って大急ぎで昼を食べてブログを2つ書いて2時である。私「そろそろ行くか?」妻「そうね」私「1時間以上掛かるだろ?」妻「宿まで1時間10分。3時チェックインだからいい時間だわ」ゴールデンウィークをどう過ごすかとなって間際に宿を探した。いつも泊っている厚木の飯山温泉である。最後の1部屋が空いているということなので予約した。4月の半ばのことである。私「おそらく高速は混んでいるだろ...
負けに始まる黄金週間将棋塾しばらく待たされた後、次の対戦相手が決まった。渡辺さん「次は石原君でお願いします」私「はい」渡辺さん「石原君、次、日向さん」渡辺さんが声を掛けているが誰も返事をしない。どの人かなと思って探していると、将棋盤に向かってポツンと座っている人がいる。子供である。渡辺さんが来て紹介された。渡辺さん「じゃ、ここでやってください」可愛い顔をしている。小学5、6年生あたりかと思った。私「...
長考の一番憲法記念の日5月3日(土)、憲法記念日。2回目の将棋道場である。何事も2回目となると緊張感も薄れるようで10時スタートのところを10分ほど遅れて到着した。ドアを開けるとご覧の状態である。前回より混んでいた。席料1100円を支払ってすぐに「長谷川さんとお願いします」と言われた。見渡すと掛橋さんは来ていないようである。私「あれっ、今日、掛橋さんは?」渡辺道場主「今日は申し込みしていません」私「ああ、そう...
食べたきは彼の缶詰の菠薐草会社の朝礼は毎月1日に全体朝礼を行ない、月曜日は現場の朝礼のどこかに出て、その他は毎日事務所の朝礼に出ている。ある日の現場での朝礼での出来事である。私が「連絡事項」と称して5分ほど話をした後、「本日の行動指針」を全員で唱和し、司会者が「以上で朝礼を終わります。ありがとうございました」と言い、全員で「ありがとうございました」と返して終了となる。事務所に戻ろうとして歩き始めた時...
夏立ちていざ方寸の世界へと前回、先生から全員に配布されていたテキストに沿って進められた。先生「最初のページを開いて。ここにこの篆刻の意味が書かれている。篆刻は『方寸の世界』と言われ、ただのハンコを彫るのとは違って、書道の一環としてその美しさや品格が求められている……」<フムフム>と全員が頷いているが、誰もそのあたりを本気で聞きたい訳ではないだろう。どうやって彫るのだろうか……何を彫るのだろうか……上手く...
鉄筆の放つ光や五月来る4月27日(日)2時、書道の研究会である。11人が集まった。いつもより2人多い。先生「今日は研究会の後で篆刻をやるんだけど、道具なんかはみんな持って来た?」小林さん「ハイ、この間、キョー和に行って買ってきました」みんな、やる気である。研究会が3時50分に終わって、いよいよ篆刻の時間となった。篆刻をやらない3人が帰って8人が残った。先生「テーブルを4つ出そう。8人だから2人ずつ向かい合って座...
箱入りの朱墨をひとつ買つて夏関内にある「横浜キョー和」に行ってみた。初めてである。エレベーターで4階まで上がった。棚に品物がたくさん並んでいる。店員もいたが別に寄って来るようなことはない。自由に見てくださいという雰囲気である。棚を整理している男性がいたので声を掛けた。私「篆刻の道具はどこですか?」男性「はい、こちらです」店の奥の方に案内してくれた。すぐに立ち去ろうとしたので更に声を掛けた。私「全く...
中国製刃物届きて夏来る「篆刻の手順」と書かれた紙を先生から渡されたが、上の空で話を聞いていたので家に帰ってから読んでみた。「篆刻に必要な用具用材」のところにはいろいろと説明がなされている。取り敢えず必要な物が書かれている。① 石印材②耐水ペーパー ③墨・朱墨 ④硯・小筆 ⑤印床 ⑥鏡 ⑦印刀 ⑧印泥 ⑨刷毛 ⑩印矩 ⑪印箋その他<本当にこんなに必要なのだろうか?>先生に紹介された関内にある「横浜キョー和」のホ...
やることのまた一つ増え日永人3月30日(日)、2時からの書道塾に出掛けた。「研究会」と称する自分で考えて書いた作品を持ち寄る勉強会で月1回行なっている。その日は生徒が8名集まっていた。先生「始める前に少し話があるんだけど……」<ん?なんだろう?>最初に作品を提出するのがいつからか私となっているので、用意をして待っているところで話が始まった。先生「今回ここにいる人の3人が成家にチャレンジしたので、これから書...
往年の歌手よあの日の夏雲よネットニュースにこの写真が載っていた。<あれっ、誰だっけ?>4月30日(水)、都内で開かれた平尾昌晃チャリティーコンサートに登場した美樹克彦(76歳)である。コンサートの最後に登場したようで1曲歌ったあとに「私のこと、分かりますか?」と言ったが会場内はシーン。「美樹克彦です。パンフレットの写真も昔のもので黒髪ですが、最近はこんな感じでやらせてもらっています」と告白。美樹と認識す...
鴻の字を得て白鳥の羽搏けりそこに私の所属する会の女性がお酒を注ぎに来た。女性「日向さん、飲んでますか?」私「ホンの少しね(笑)」稗田さん「あっ、○○さん、ビールじゃない、ビールじゃない、日向さんは紹興酒です(笑)」女性「稗田さん、日向さんは年は取ってますけど、ウチの会の期待の星ですからね、よろしくお願いしますよ。大っきい会社の社長さんです」稗田さん「ええ、社長さん?ホントですか?何も言ってなかったじ...
上に上更にその上松の芯徐々に席が埋まっていった。同じテーブルに知った顔はいない。顔見知り同士で話をしている。同じ会の人たちのようである。<ん?同じ会が固まっているのか……>私の右の席にも女性が座った。元気がいい。大声で話をしている。ズラッと知った顔ばかりのようである。私「日向といいます。よろしくお願いします」女性「はい!よろしくお願いします!稗田(ひえだ)と言います(笑)」私「同じ会の人たちなんです...
見るほどに上には上が木々芽吹く6時半に会場に到着した。受付を済ませると会場内へ進むように案内された。席が決まっているという。名札が置かれていた。<あれっ、誰も来てないじゃん……>10人で囲む丸テーブルである。隣の人の名札を見ると、両方とも知らない人である。会場内を見回してみる。知っている人がいた。目が合った。こちらに来てくれた。女性「日向さん、今日は来賓がたくさん来ているから、あまり大きな声で話さない...
かな文字の遺墨に春を惜しみけり後日、担当の方から「第70回記念 竹青社書展 受付当番表」というのがメールで送られて来た。4月19日(土)午後1時半から5時までとなっている。<受付?>祝賀会が6時からなので、当日の当番に選んでくれたのは有り難いが、折角の休みの午後を全てそれに当てなくてはならないのは辛い。早起きして習字を書いて10時にスポーツジムに行って風呂に入り12時半に家を出た。桜木町駅で降りて野毛の商店街...
頼まれてみな請け負へる日永かな私が所属する磯子の書道塾の名を「群星会」というが、その群星会の親団体を「竹青社」という。私の師匠の菅野堯処先生はその「竹青社」の副理事長でもある。先生「竹青社の70周年記念で書道展を開くので日向君も作品を出してもらいたいんだけど」言われたのが2月頃である。私「いいですけど、何で私が?」先生「この間、評議員になったじゃないか」私「評議員?ああ、そういうことですか」あまりピ...
公園に鞦韆ひとつ墓ひとつ大きな石に「お菊塚」と彫られていた。その手前に供え物をする場所が設けられていたが、供物は何も上がっていなかった。ペットボトルに紫色の花が差され、その手前にワインのボトルが1本置かれていたのは、水を入れるためなのか何なのか分からなかった。立札が立っていた。「番町皿屋敷 お菊塚」である(写真)。読んでいった。電車の中で読んで来た文章と同じである。私「ヒャ~!」妻「なになになに!...
酔へばまた春の行方を尋ねけり瓶ビールを飲み干してすぐに冷酒を注文した。妻「冷酒は久し振りでしょ」私「久し振りもいいとこだよ。この間、ウナギを食べたのはいつだっけ?」妻「田浦の梅を見に行った時だよ」私「ああ、そうそう。あそこではビールしか飲んでいない」山田錦を飲んで少し酔っぱらってしまった。男性が来るたびに大笑いになるような話をしたが、今思い返そうとしても何を話したか全く思い出せない。鰻重が出て来て...
待たされてゐるも愉しや鰻の日鰻屋「川万」には開店時間11時の10分前に到着した。3組が椅子に座って待っていた。名前を書いて椅子に腰掛けると、すぐに次のお客が来て名前を記入していた。私「待たずに入れそうだな(笑)」妻「そうね(笑)」11時になり店の中から女性が出て来て名前を呼び始めた。女性「○○様、3名様」お客「はい」女性「お待たせいたしました。2階の席になります。○○様」お客「はい」女性「2名様、1階の席になり...
我狂ふ蝶なり薔薇の絵の前に「薔薇」の絵は何種類かあるようで、インターネットで見る限り5、6種類は確認出来た。私が模倣しようとしている「薔薇」とは違うが、ほぼ似たような構図の作品が飾られていた。ガラス入りの額装なので間近まで近づいて見ることが出来る。<おおお……>目の前に実物が現れると迫力がある。インターネットで見ているのとは訳が違う。絵具の盛り上げ方や葉っぱや背景の塗り方が確認出来て、作者の息遣いが感...
鳥の巣の有耶無耶に似て無の一字中村正義(1924-1977)は愛知県豊橋市の生まれである。戦後1946年に中村岳陵に師事し日展の画家として前途を嘱望された。1961年に日展を脱退。旧態依然とした日本画壇に抗し、日本画の概念を覆すような画風を展開して「異端」「鬼才」「風雲児」などと呼ばれた。1961年に川崎市細山に転居し、1977年に52歳で没するまでの16年間を川崎に住んでいる。若い頃の作品や昔ながらの山水画のような作品を眺...
天井に春光しるき美術館9時40分に平塚美術館に到着した。「中村正義」展覧会の初日である。「9時半に行って一番乗りの名誉に預かろう」と話していたのだが遅れてしまった。受付の女性がチケットを販売している。私「一人1000円?」女性「お客様、失礼ですがご年齢は?」私「あれっ、割引は平塚市民だけですよね?」女性「いえ、65歳以上であれば……何か年齢が分かるものをお持ちでしょうか?」妻「これでいいですか?」女性「はい、...
重ねあるその形代の一枚に9時ちょうどに平塚駅に到着した。北口を出て八幡宮の表参道を歩いた。私「あった!川万」妻「ああ、ホントだ」私「商店街の中にあるんだな」妻「老舗って感じね」私「昭和3年創業って書いてあったからなぁ。97年目か……もうすぐ100年だ」場所を確認してまずは平塚八幡宮へ向かった。歩道橋を渡って鳥居を潜った。私「お参りだけはしておこう」参道を進んだ。妻「あっ、茅の輪がある」私「茅の輪くぐりって6...
平塚にお菊塚あり菊若葉平塚美術館の開館時刻は9時半である。私「ということは何時に家を出る?」妻「ちょっと待って。調べてみる」駅から歩く時間や電車の時刻を調べているようである。妻「8時28分。その前が8時22分」私「オッケー。そうしよう」そうしようと言いながら何時とは決めていない。8時を回った。私「おっ、行かないとマズイんじゃないか?」妻「何を言ってるの。早過ぎるよ」私「だって、8時20分だろ?」妻「8時58分だ...
平塚の街を歩かん夏隣3月16日のNHK「日曜美術館」を見てから「中村正義」の「薔薇」の絵を描こうとあれこれやっている。調べていると4月12日(土)から5月18日(日)まで平塚美術館で個展が開かれることを知った。生誕100年を記念した展覧会であり、関東圏では14年振り、神奈川では42年振りに開かれるという。<おおっ、本物の薔薇の絵が見られるかも……>すぐに妻にメールした。私「今度の土曜日、平塚美術館に行こう。帰りにウナ...
高階の将棋道場夏近し2戦目は掛橋さんが居飛車で来た。私はもちろん右四間飛車である。王将は左側に移して囲おうと思ったが、角の頭が攻め込まれて来る。入門書で角頭の守り方を覚えたはずだがどういう訳か破られてしまった。右四間飛車で攻めるのはいいにしても、左側から飛車が入って来るので、またまた王将の遁走が始まった。テレビで見ているどんな対戦でも、こんなに王将が逃げまくる将棋は見たことがない。王将がウロウロし...
春興や勝ちを拾ひし負け将棋私「掛橋さんとは珍しい名前ですよね。ユズの『栄光の架橋』だ(笑)」掛橋さん「ちょっと漢字が違いますけどね(笑)」私「ああ、そうか、ユズの方は架電の架か」掛橋さん「今日、ここ、初めてですか?」私「そうです。入門書は読んで来ましたけど、指すのは初めてです。掛橋さんは?」掛橋さん「私は2回目です。先々週の木曜日に来て、今日が2回目です」駒を並べながらの会話である。終わってから聞い...
花明り将棋道場入門す4月5日(土)、いよいよその日がやってきた。「横浜やんけ将棋道場」に行く日である。入門書は一冊読み終わった。羽生善治著「みるみる強くなる将棋入門──序盤の指し方」である。読んだからと言って急に強くなる訳ではないだろうが、基本となるところは頭に入ったはずである。戦略としては「右四間飛車で行こう」と考えていた。本の中にはこう書かれていた。「右四間飛車戦法の特徴は攻撃力の高さ。ツボにはま...
薔薇の絵を描く一輪の薔薇も見ず中村正義の「薔薇」を模写するに当たって本人がそれをどう描いたかを考えなければならない。いろいろな「薔薇」があるが、試行錯誤を繰り返した跡が見て取れる。絵具を厚塗りしてみたり、陰影を描き入れてみたり、下地の色を浮き上がらせてみたりといろいろやっている。構図もいろいろである。薔薇の花の数も色合いも様々である。おおよその色は分かるが、パソコンを通しての色なので本当の色かどう...
薔薇の絵の壺の青さは夏の色最終日の「大倉久和大飯店」(オークラ・プレステージ台北)は絵画が好きなホテルのようだった。至る所に油絵が飾られていた。朝食会場にも飾られていた(写真)。私「帰ったらキャンバスを買いに行く」妻「ああ、あの油絵ね(笑)」私「おそらく15号くらいの大きさで描くことになる」妻「上手く描けるといいけど(笑)」私「大丈夫だよ、失敗することは絶対にないよ(笑)」この旅行に出掛ける前の3月1...
春愁やバス酔ひに効く薬なし全員が無事に揃ってバス停に並んでいた。少し待っているとバスがやって来た。ここでも陳さんはバスの運転手と何か掛け合っている。満員のバスに10人が入って行った。やはり少し白い目で見られた。「どうして割り込んで乗って来るのよ」と言った感じである。吊革に掴まってクネクネ道を降りた。その時である。船酔いのようなイヤな感じがした。2回3回カーブを曲がってそのたびに身体に力を入れて三半規管...
春宵の仕業か千の神隠し事件が起きたのは集合時間の6時である。阿妹茶楼に灯りが点り夕闇が近づいて来ていた。全員が揃ったと思いきや、いない人がいる。子供がいないという。またその父親の姿が見えないという。6人グループの中に小学2年生の男の子が一人混じっていたが、その子がいないという。またその子を探しに父親もあの階段を上がって行ったという。長老「すみませんねぇ。ちょっと目を離した隙に……」私「どこでいなくなっ...
千を探し千尋を探し春灯し故宮博物館からバスで揺られること1時間半で九份に到着した。妻「前来た時は地下鉄を使ったよね」私「うん、そうだったな」妻「地下鉄を降りてからの記憶が全然蘇って来ない。どうしたっけ?」私「どうだったっけかなぁ……全然、思い出せない」妻「あっ、やっぱりバスに乗ったなぁ。バスでクネクネした道を上がった気がする」私「覚えていないなぁ……」人の記憶力を試しているのだろうか。日常生活の中でそ...
地下深く唸る財宝春の山小籠包を食べた後は故宮博物館の見学である。有名な「白菜」はどこかへ貸し出されているとのことでその日刮目すべきは「角煮」だという。バスを降りて建物の中に入り専用のイヤホンを耳に付けた段階で「それでは参りましょう」と陳さん、「私がご案内します」という。<ええっ、専門の人を頼まないの?>団体客の案内をする説明員がいるはずだが、そんな団体ではない。終わるとすぐに「九份」に行かなければ...
ハネムーンの話など聞き長閑なり高雄駅から台北駅までは新幹線で1時間40分である。1日目から一緒だったバスの運転手とは高雄駅で別れた。バスの横に大きく「高雄」と書かれていたので地元に戻って仕事が終わったのだろう。台北駅に着くと別のバスが待っていた。大きさは同じだが格は落ちていた。車内の装飾などについては何の気遣いもないようだった。陳さん「これから昼食の店に向かいます。鼎泰豊(ディンタイフォン)といいます...
竜宮城めきて楼閣おぼろなり「丸山大飯店」はライトアップされて我々を迎えてくれた。私「ま、泊まるだけだけど想い出にはなるな(笑)」妻「相当な部屋数だから、こういうツアーにも使われるんだね(笑)」私「ああ、そういうことか。空室で置いておくより、使ってもらった方がいいという計算か。何事も算盤勘定だなぁ。おぬしもなかなかの悪じゃなぁ(笑)」妻「何を言ってるのかなぁ、この人は(笑)」部屋の広さはそれほどでも...
異国語の夜店を妻と手をつなぎ「美麗島駅」のすぐ近くに「六合夜市」があった。7時に到着した。陳さん「それでは、バスが停まったここを集合場所にします。今、ちょうど7時ですから7時40分までにここに戻ってきてください」<ええっ!40分とは慌ただしいなぁ……>夜市がどれ位の長さかは知らないが、ブラブラ歩いてノンビリもしていられないと思った。信号を渡ってすぐが夜市の始まりである。最初に「仏陀の頭」が山積みされていた...
孫文忌平和奏づる白ピアノ夕食を終えて向かったのが「美麗島駅」である。陳さん「この駅は世界で最も美しい駅です。4500枚のステンドガラスを使って『人間の一生』を表現しています」バスを降りて入り口から地下へ潜るのだが、地上にある建物もガラス貼りでルーブル美術館のあの三角形を思わせる。長いエスカレーターを下って、地下鉄乗り場に向かうとステンドガラスが見えて来た。「オオオオオッ!」誰彼ともなく驚きの声が上がる...
犬を打つ猫を打つ鴨の足を食ふ「高雄(たかお)」の町は昔「ターカウ」と呼ばれていた。台湾原住民の言葉で「竹林」を意味するという。のちに台湾人がその「ターカウ」に「打狗」の漢字を当て嵌めた。「狗(いぬ)を打つ」である。発音が似ているのだという。同時に「ターニャウ」という地名もあり、そこには「打猫」の漢字を当て嵌めた。1920年、大正9年、日本統治時代に台湾総督府がこの漢字は地名には相応しくないとして、それ...
まだ取りに来ないか土産の古漬腰も痛けりゃ背中も痛い。ようやく高雄に到着した。お土産屋である。女性「これはここにしかない北投石です。ブレスレット、ネックレス。原石はこの石です。これを磨いて作ります。この北投石はラジウムを放出しています。見ただけでは分かりませんがこの計器を近づけますと……」機械が「ガガガガガ!」と反応する。女性「この効き目は無くなりません。癌にも効きます。医者がもうダメだと言った人が、...
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佳き家に住みて難波の油虫バスの中では挨拶が続く。和田部長が話し、井上常務が話し、藤原部長が話す。近畿日本ツーリストの添乗員の小畠君が話し、大賀さんが話し、ようやくバスガイドに回って来る。ガイドさん「運転手は前田、そして3日間、皆様の旅のお供をさせていただきます私はガイドの本間〇子と申します。よろしくお願いお申し上げます」「パチパチパチ」バスは町中を走っていく。「曽根崎」の文字が見える。<酔ってあな...
厚切りの牛タン弁当暑気払ひ新幹線に乗り込んでまずは朝食である。集合前に買っておいた「厚切り焙り牛タン弁当」を食べることにした。私「大阪に行くのに仙台の牛タンというのも何なんだけどな(笑)」妻「別にいいじゃないの(笑)」私「美味いんだからどうしても選んでしまうんだよなぁ(笑)」妻「味がいいのかもね」私「チコちゃんでやっていたな。牛タンが仙台名物になったのは……」妻「何だっけ?」私「店のオヤジが『仙台名...
食ひ倒れたき大阪へ夏の旅7月9日(水)、いよいよ出発である。朝、家を出る時である。私「いやに重いなぁ。これ、何が入ってるの?」妻「お茶だよ」私「お茶!随分と重いな。何本、入ってるの?」妻「4本だよ」私「えええっ、4本?これを大阪まで持って行くの?」妻「大阪万博を軽く考えちゃダメだよ。滞在時間が4時間だよ。どこへ行っても汗だくだよ」私「お茶ぐらいは自販機で買えばいいと思うけどなぁ……」妻「普通のお茶はすぐ...
暑を制すためのあれこれ旅鞄大阪万博の置かれた背景を頭に入れて、本屋で万博の本を一冊買って家に帰った。妻「自分の荷物は自分で用意してよね。何でも人任せにするのは良くないよ」私「うん、分かってる」妻「分かってると言いながら、何にも用意していないじゃん」私「大丈夫だよ。万博のガイドブックはさっき買ってきた」妻「ガイドブック?要らないでしょ、そんなものは……」私「いや、折角行くのに何にも調べないで行くという...
ただ耐へるための大阪油照りいよいよ「かながわ信用金庫」主催の旅行が近付いてきた。初日は大阪万博の見学である。期待に胸躍るというような雰囲気はない。おそらく期待外れに終わるだろう。雑誌「PRESIDENT」の中に大前研一氏のコラムがあった。「万博は大失敗!大阪が失政続きの根本原因とは」という題名で辛口コメントが書かれていた。その1「時代遅れの万博を強行した裏事情」1~2時間は当たり前の待ち時間、内容に比べて料金...
汗拭ふ手や金髪の将棋指しその日の5番目の対戦のことを書いておきたい。相手は富田さんという金髪の女性である。金髪といっても外人という訳ではない。日本人である。富田さん「よろしくお願いします」私「おお、今日初めての女性だよ。緊張するなぁ(笑)」富田さん「緊張をしているのは私の方です。よろしくお願いします(笑)」私「もう3人と対戦してるの?」富田さん「はい、少し早く来ました。全員に負けています(笑)」私「...
夏負けもせず勝つための将棋指し飯尾君はまずまずの実力だった。私の右四間飛車に対して居飛車で挑んで来た。終盤、お互いに相手の王将を攻め立てる展開になった。守りの手薄なところを攻められて1手詰みとされている私が「王手王手」と繋いで相手の王将を追い掛けている。あと一枚、何か駒があればという所まで追い込んだが負けてしまった。私「いやぁ、勝てると思ったんだけどなぁ」飯尾君「ホントに負けると思いました」私「3一...
勝ち負けに涼み将棋の熱かりき7月5日(土)、3回目となる将棋道場である。30分前に着いたので向かいにあるファミレスに入って時間調整をした。10時ちょうどに入った。1階のエレベーター前で男の子と一緒になった。またまた中学生である。私「もう何度も来てるの?」男の子「はい」私「じゃ、今日、対戦するかも知れないな」男の子「……」私「この間、中学1年生とやって負けたから、今日は全勝を目指しているんで、そこんとこ、よろ...
樟脳舟つつと洗面器を回る習字の練習をした後、筆の洗浄や余った墨は流し台の排水口に流す。妻は流し台ではなく洗面台の方の排水口にしてくれと言うが、どうしても洗面台の方には抵抗がある。それは真っ白なFRPなので墨が付くと確実に色が付いてしまう。水で流せば落ちるのだが、それならば同じことで流し台の方がいいような気がする。ステンレスに墨が付いてもあまり気にならない。第一、洗面台の方は口が小さい。筆を洗うにも墨...
元巨人フアンなりナイターの灯を愛す土曜日の朝9時過ぎだった。BSテレビで森田健作司会のインタビュー番組をやっていた。ゲストは元ジャイアンツの槙原寛己である。お互いどうでもいいような昔話をして終わった。番組のラストに森田健作が剣道着に身を包み、砂浜を走るシーンを流していた。もちろん「オレは男だ!」の50年後バージョンである。<あの走り方はないなぁ……>年を取った小林弘二君の足の上がらない走法には流石にガッ...
「海よその愛よ」甚平唸りけり這う這うの体で家に辿り着いた。12時10分だった。妻「どうだったの?」私「人生最後の釣りを終えたよ」妻「えええっ、どういうこと?」私「もう二度と釣りはやらない」妻「へぇ~」私「海より山の方がいいよ」妻「ええっ……」私「船の上から富士山が見えたけど、やっぱり動かないものの方がいいよ」妻「もう年なんだから、何事もほどほどにね」私「釣った魚は食べたい」妻「ええっ、調理するの、私?」...
鱚舟に酔ふて齢を知りにけり終了10分前になった。船長「あと10分で終了します。本日の釣った数を聞きに行きますので数えておいて下さい」サービス役の男性が前の方から聞いて回っている。22番の連れの女性が何匹と答えたのかは聞いていない。何か冗談らしいことを言って笑っていた。男性「○○さん、何匹?」22番「20匹」男性「えっ、もっとあるでしょう」22番「いやいや、20だよ」私のところに来た。男性「はい、何匹ですか?」私「...
船床に夢の手枕夏痩せるようやく2匹目が来たところで気分が悪くなったような気がした。下を向いてアオイソメを付けている時に「ん?」と思った。<釣れないと気分も悪くなるかぁ……>お茶を飲んで誤魔化した。コンビニで買って来た缶ビールなど飲む余裕はなかった。3匹目のシロギスは大きかった。当たりもしっかりしていたし、引きも強烈だった。釣り上げて針を外そうとしたが飲まれていた。面倒なので思い切り引っ張った。アオイソ...
鱚釣りの女子供に負けてをり隣の26番の若いのにも来た。<次はオレかな>と思った。しばらくして「竿を上げて下さい。場所を替えます」と船長の声がしてすぐに動き始めた。金沢工業団地の岸壁の横を走って行く。知っている建物が見えてくる。「横浜テクノタワーホテル」が一番高い。22階建てなので一際目立つ。いつも18階の「鉄板焼きレストラン」にお客を連れて行くので東京湾や房総半島を見ているが、逆から見るというのもいいも...
瀬戸洲崎野島乙舳鱚の船LTアジの船が出て行って、すぐさまシロギスの船が入って来て横付けされた。男性「番号の大きい人が後ろです。26番の人が一番後ろ!足元に気を付けて乗って下さい」私は24番である。偶数と奇数で右舷左舷に分かれているようである。クーラーボックスとリュックサックを持って辿り着くと若い男性が最後尾の26番に座っていた。私「隣です。よろしくお願いします(笑)」男性「あっ、お願いします」私「今日は風...
芋洗ふごとき桟橋梅雨晴間「荒川屋」の2階に戻った。さっきは誰もいなかった場所に何人ものお客が席を占めていた。アベックもいれば、子供連れもいる。入り切れない人が顔を出しては下に降りて行く。7時前になって男性が上がって来て「アジの人はいませんか?」と声を掛けている。シロギスの前にアジの船が出るようである。<ああ、LTアジだな?>スマホで検索してみた。「LT(ライトタックル)アジ」と出た。「軽い釣り道具」とい...
琵琶島を浮かべ政子の夏の海橋の欄干には「せとはし」と書かれていた。上から見下ろすと「荒川屋」の船2隻と「弁天屋」の船2隻が横付けされていた。その向こうにこの4隻が出航するのを待つようにして別の4隻が係留されている。桟橋側の船に「LTアジ」と看板が出ている。<LTって何だろう?>店の人だと思うが、竿を用意したりして忙しそうに働いていた。瀬戸神社の方に行ってみることにした。国道16号線を左に曲がるとすぐに白壁が...
日焼止め塗りし手乗船名簿書く店に戻った。私「早過ぎたなぁ(笑)」女性「そんなことないですよ。まずは乗船名簿をお願いします」カウンターの横にテーブルがあって、そこで記入した。女性「ありがとうございます。え~と、竿とかはどうなさいますか?」私「必要なものは全部貸してください。クーラーボックスを持って来ただけだから」女性「はい、分かりました。これは船に乗る時に係に出してください。竿の引換券です」広告の裏...
風少し出て釣宿の夏暖簾出船は7時半である。しかし店の人は「6時には来てくれ」と言っていた。「遅くても6時半には来てくれないと駐車場がなくなる」とも言っていた。船宿のオープンは5時半と書かれていた。家から15分ほどなので5時15分に家を出た。外に出ると風が吹いていた。<オオッ、風があるじゃん……>波の高さまでは調べて来なかったが、「天気晴朗なれど波高し」かも知れないと思った。5時半ちょうどに「荒川屋」に到着した...
突堤に立ちてちぬ釣り動かざる釣りに夢中になったのは平成元年、35歳の頃である。会社で昼休みの時間に黒鯛釣りの話が出て盛り上がっていた。私「お前たちよ、黒鯛のことならオレに任せてくれよ(笑)」社員「ええ!日向さん、釣りやるの?」私「やったことあるどころの騒ぎじゃないよ。あの引きの強さは魚釣りの醍醐味だよ(笑)」一度もやったことのない釣りを大袈裟に話して盛り上がった。言った手前、一度くらいはやってみよう...
山雀のじんじと鳴きて佳き日なり司会「それでは宴もたけなわではございますが、お時間も迫ってまいりましたのでこの辺りで中締めとさせていただきます。中締めのご挨拶は〇〇株式会社社長でいらっしゃいます落合様にお願いしてございます。落合様、壇上の方へお願いいたします」落合さんが立ち上がった。まずは平松会長の元へ進んで軽く挨拶を済ませ、それからゆっくりと壇上へと上がった。司会者からは落合さんの略歴などが紹介さ...
舞ふほどに行きつ戻りつ夏の蝶落合さんとは懇親会場での席が離れた。私「えっ、どうしたんだろ?いつも同じ席に座るのに……」落合さん「いやぁ、また締めの挨拶を頼まれているんですよ(笑)」私「おお、そうかぁ。そりゃまた大役だなぁ(笑)」この頃、いつも締めをやらされている落合さんである。懇親会が始まった。冒頭、小泉進次郎代議士からのお祝いの電報が読み上げられた。続いて横須賀市長の祝辞である。「平松さんと私は……...
常盤木の落葉の先に墓地はあり見事に箝口令が敷かれて一切の情報が洩れることなく6月28日(金)の総代会を迎えた。落合さんとは隣同士の席に座った。私「さぁ、いよいよだね(笑)」落合さん「高瀬理事長だって」私「えっ、ホント!」落合さん「さっき、入口で○○から聞いた」私「へぇ~、それじゃ落合さんの予想通りになったじゃん」落合さん「まぁ、そうだけど、全然情報が入らなかったのにはさすがに驚かされましたよ(笑)」私...
出走を待ちてしばらく冷し馬5月22日(水)の横浜のホテルでのことである。かながわ信用金庫の集まりがあり、理事長が登壇して話をした。理事長「え~、私の理事長としての挨拶もこれが最後になるかと思います」<ええええっ!!!>話を聞いていた全員がこの一言に驚きの声を上げた。<どういうこと?理事長を辞めるってこと?><全国信用金庫協会の会長に就任するので、兼務はムリということか……><じゃ、次の理事長は誰になる...
要注意リストに入りて夏負けす私「ただいま~」妻「あら、早速ジムに行って来たの?どうだった?」私「出禁になりそうだよ」妻「えっ、どうしたの?」事情を説明した。妻「何をやってるかなぁ。しょうがない人だなぁ」私「9時に社員から電話が来るから謝るよ」妻「そうね。何があったとしても怒鳴っちゃダメだよ。カスハラだよ」私「反省してます」妻「昨日、説明の時に駐車料金の割引についても説明していたよ。だけど貴方は聞い...
嗚呼馬鹿なことして目下夏断中月曜日の「めざまし占い」のヤギ座は12位の最下位だった。「トラブルに巻き込まれる恐れあり」──気を付けようと思った。一日を終えて「あれっ、何もなかったな」と安心していた。会社を早めに上がって初めてのスポーツジムへと向かった。前日に説明を受けているので全て「勝手知ったる」の気楽さである。受付で会員証を呈示した。私「昨日入会しました日向と申します。よろしくお願いします(笑)」女...
気分良し筋肉快調汗をかく日曜日の11時である。筋トレのコーナーに人はいない。ガラガラである。男性トレーナーが1名付き添ってくれて機械の使い方などを説明してくれるという。体重、血圧などを計測してから始まった。男性「今までどちらかでやられてたんですか?」私「磯子スポーツセンター」男性「ああ、じゃ、マシンの使い方は一通り」私「自分の使う機械はね。だけど使ったことのない機械もあるから追々教えてもらいますよ」...
特典はなし六月に入会す日曜日に床屋から帰って来ると妻がプララに行こうという。妻「どうするの?入るの?入らないの?」私「そうだなぁ……」妻「見せてもらえばいいでしょ」私「そうだなぁ……」妻「電話してみな。掛けるよ」私「ええっ!」妻のスマホで掛けている。呼出音がする。渡された。私「もしもし、日向と申します。入会しようかと考えている者なんですけど」男性「はい、ありがとうございます」私「これから行って中を見せ...
待たされもして時の日のジム通ひスポーツセンターに行くと使いたい機械のボードに自分の番号を記入して予約することになっている。誰も使っていなければそのまま使えるし、使っていても1回最大20分なので少し待てば順番が回って来る。いつもは4つある機械のどれか1つは空いていてすぐにダンベルを持って始められるのだが、この頃は2人3人と予約の人数が多くなって来ている。私「何だか知らないけど、この頃混んでるね」インストラ...
聖母月見えざるものに導かれ旅を終えて3週間ほどした土曜日に娘たちが集まった。父の日だという。私「おお、忘れないでいてくれたかぁ。この日がそのまま過ぎてしまったら育て方について反省をしなければならなかったところだったよ(笑)」娘「いつもありがと。トレーニングウェアを買ってきたよ。頑張ってるんでしょ(笑)」私「頑張るも何も、これをやるために生きてるんだよ。長生きするためのトレーニングからトレーニングす...
守るべき祖国震へる仏桑花あとは帰るだけである。ホテルを出てバスは「玉取崎展望台」に向かった。比嘉さん「ここは私が一番好きな展望台です。海も空も石垣島の山々も一望出来ます。今日は生憎の雨ですが、それでもやはり見ていただきたいと思います。少し山を登りますが、是非上がってみてください」雨に煙って見晴らしは良くなかったが、比嘉さんの言う絶景スポットであることだけは分かった。折り畳み傘が壊れ、朝の散歩同様に...
八重山の勇者称へし伊集の花歩き始めてすぐに雨が落ちてきた。闇に続く道なので雨は気にならなかったが、次第に本降りになっていった。ホテルの前の直線の道が大きな通りにぶつかった辺りで空が明るくなってきたが、止みそうにない雨であることが分かった。濡れてもいいTシャツ姿なので気にはならなかったが、目的地の在処が思ったより遠いのには驚いていた。歩けど歩けど道は続いた。うっすらと見えて来た中で道端にヤギがいたの...
八重山の明易しとて明けやらずホテルに着いた。「OKINAWA KARIYUSHI RESORT EXES ISHIGAKI」という名前である。風呂に入ってしばらくしてロビーに出て行った。売店で飲み物などを買って、フロントに聞きに行った。私「明日、朝早く出掛けたいんですけど、タクシーは呼んでもらえるの?」男性「はい、大丈夫です。何時頃でしょか?」私「5時頃かな」男性「ええっ、5時ですか。それは無理です。タクシー会社もやってないと思いま...
食べずとも可なり泡盛さへあれば時間通りに戻って竹富島行きフェリーに乗り込んだ。所要時間15分である。バスに乗って古民家集落まで行き、20分ほど掛けてその中を歩いてみるというものだった。比嘉さんが先頭になって歩き、ゾロゾロ後ろを付いていく。いろいろと説明していたが、聞いているやらいないやら。バスに戻ってきた。その中に「安里屋クヤマ誕生の家」があったと聞いたのはバスに乗り込んでからのことである。私「えええ...
尖閣の碑や梅雨雲に影はなし川平湾を出て最初に向かったのが石垣焼の窯元である。パンフレットに「窯元見学」とあったので、てっきり「登り窯」とかを見るのかと思いきや、皿や壺の販売所だった。事前に比嘉さんが「桁を間違えないように」とアナウンスしていたので買うこともなかったが、確かに1桁多い価格設定だった。美智子上皇后が立ち寄った際にここでペンダントを購入されたそうで首から下げた写真が飾られてあったが、なぜ...
ソフトクリーム溶ければ落つるバスの床船を降りて昼食会場に向かった。例のごとくパートナーと向かい合って座ってくださいという。端の席に座ると最後に現れたのが佐渡の親子である。我々の隣の席に座った。娘「ハハハ、また一緒ですね(笑)」私「3度目の正直!」娘「よろしくお願いします(笑)」私「またオリオンビールの生ですね。今日はホタルを見る必要がない(笑)」男性「ははは(笑)」私「こちらに生1つ。そしてここには...
海亀が海の青さに染まりけり「川平湾」に到着した。旅の栞には「グラスボードに20分乗船」となっている。バスを降りるとカンカン照りである。雲はあるものの日射しが強い。小旗を持つ比嘉さんに続いてゾロゾロと歩いて行く。きれいな浜に出た。<おお!ここか……>写真でよく見る場所である。パンフレットには次のように書かれている。「南の島の絶景。七色に輝く神秘のブルー。ソーダブルー、エメラルドグリーン、コバルコブルー、...
金色の像への道を道をしへ旅3日目は早々と朝食を済ませて8時にバスに乗り込んでホテルを出発した。西表島とお別れである。1時間走って港に着いてフェリーに乗って石垣港に渡った。桟橋に降りると具志堅用高の銅像が立っていた(写真)。<いやに小さいな。どうしてバンザイしてるのかなぁ?なんでこの色にしたんだろう?>金色に塗ってあるところが韓国の慰安婦少女像を思わせて趣味の悪さを感じさせる。<まぁ、一枚撮っておくか…...
天井で守宮見てゐる茶番劇佐渡の親子は早々に帰っていった。後はゆっくり飲むだけである。群馬県の金古さんのところには何度も通った。空いた皿を片付けに時々ウェイトレスがやってくる。声を掛けた。私「地元の人?」女性「いえ、違います」私「どこ?」女性「北海道です」私「えっ、北海道!オレも北海道。北海道のどこ?」女性「札幌です」私「おお、大都会じゃないですか(笑)」女性「北海道のどちらですか?」私「北海道出身...
ここで会ふ同郷の人古酒に酔ふ2日目の夕食である。バイキング会場に入ると受付で部屋番号を聞かれて「日向様ですね。お待ちしておりました」と言われ、席に案内された。私「おおおお!」娘「ああああ!」昼食時に隣だった佐渡の親子である。私「繋がってるなぁ(笑)」娘「ホントに。よろしくお願いします(笑)」私「あれっ、オヤジさん、飲んでないじゃないですか!」男性「これから出掛けるもんで」私「えっ、どこへ?」娘「イ...