ひこばえ

枯蓮

枯蓮や池のほとりの恋ボート眼下に広がる不忍池のハスの色が2種類に見える。私「種類が違うのかなぁ？」妻「濃い緑と薄い緑。ハートの形に見える」私「同じハスだけど、枯れていくスピードに違いがあるのかなぁ？」しばらく考えていた。私「風かなぁ？」妻「何が？」私「ハスが枯れていくのは風が強く当たる所と当たらない所の違いじゃないかなぁ……」右側にある音楽堂の回りに背の高い木が植わっている。その周辺のハスは濃い緑を...

2024/10/31 05:30

秋惜しむ

前菜や一つ摘まみて秋惜しむ昼食は「ルーキス ガーデン上野」である。窓際の席が用意されていた。女性「いらっしゃいませ、日向様、本日はご予約ありがとうございます。コースのご注文をいただいております。最初にお飲み物は如何いたしましょうか？」妻「私は紹興酒ロックでお願いします」私「私は生ビール」女性「かしこまりました」私「紹興酒のロックとは美味しそうだなぁ（笑）」妻「貴方も前回飲んだじゃない。忘れたの？（...

2024/10/30 05:30

露の世

露の世や描くアダンとクワズイモ昭和49年秋、一村の亡くなる3年前のことである。紬工場に通う途中に「奄美焼」の窯元の店があった。宮崎鉄太郎、富子ご夫妻が島を訪れる観光客相手に陶器を焼いて売っていたのである。体力も視力も衰えた一村に妻の富子が「おじさん、お茶でも飲んで休んで行かれませんか」と声を掛けた。疲れていた一村は「ありがとうございます」と言って店に入った。その10日後にも再び店に入った。お茶を飲み、...

2024/10/29 05:30

露けし

露けしや生きてこの世の銭勘定会場は「奄美時代」へと移った。奄美時代は生活苦、貧乏との闘いである。奄美に着いた当初は近隣の島などを巡って絵心を掻き立てたりしていたが、半年も経つとお金のことが気になりだした。貯金通帳には7万8千円の残高しかない。家賃が月1700円で電気代、水道代を含めると2000円が必要である。自炊の食費を含めると月に6500円は必要となる。しかしこれでは1年しか持たない。食事のことが書かれていた...

2024/10/28 05:30

松落葉

描かれて雀の脚か松落葉会場は「千葉時代」に移った。一村の画家としての最も苦しい時代である。明治41年（1908年）に栃木県の下都賀郡に生まれた一村は、4才から29才までを東京で過ごし、30才から50才までを千葉で過ごし、50才から亡くなる69才までを奄美で過ごしている。39才で「一村」と号を改め、第19回青龍展に「白い花」を初出品して入選している。奇しくもその年、日展に出品した東山魁夷の「残照」が特別賞を受賞し、政府...

2024/10/27 05:30

野山色づく

嫁がずに来て野山色づくばかりなり作品は年代順に展示されていた。数え年8歳の時に短冊に描いた「紅葉にるりかけす」という作品が最初に飾られていた。神童と呼ばれた意味がその絵1枚からも伝わって来る。仏像彫刻家だった父が一村の才能を喜んで「米村」の号を与えた。「稲田に実った米」という意味であり、39才で「一村」と改めるまで使われた。父は一村が描いた絵を売っていたらしい。小学生が描いた絵が売れたのだからその実力...

2024/10/26 05:30

日展

日展に落ちて恨みの人なりき上野駅に到着して公園口を出て直進である。私「パンダもいなくなって、心なしか静かだな（笑）」妻「あれっ、『モネ展』をやっている。凄い列が出来ている……」西洋美術館である。私「ああ、『モネの睡蓮』はポーラ美術館で何度も見たからなぁ。もういいや」妻「こっちが人気で東京都美術館の方はガラガラになっているんじゃない？」私「それならいいけど、きっと『アダンの実』も人気だよ（笑）」入場し...

2024/10/25 05:30

愁思

喧嘩して軍鶏の目にある愁思かな私「シャモ（軍鶏）も凄いぞ（笑）」妻「シャモ？」私「田村一村が千葉に住んでいた頃、近くにシャモの大家（たいか）がいたんだ」妻「へぇ～」私「元は銀行マンだったけど、シャモの魅力に取り付かれて『シャモ師の田辺』と呼ばれていた。いい鶏を買って来ては交配を重ね、強いシャモに育てる。田辺のシャモは強いと評判になり、ヒナの時から高値で売買されていた」妻「……」私「一村がシャモの絵を...

2024/10/24 05:30

秋雀

その足の見られてゐるぞ秋雀金曜日のことである。田中一村のことを調べていると「アカショウビン」という絵が目に留まった（写真右）。正式な名称は「初夏の海にアカショウビン」というそうだが、代表作のようで矢鱈と目に付く。早速コピーをして、娘の描いた赤いクチバシの鳥を配して妻に送った。私「田中一村の絵だよ」妻「ハハハハハ」私「2匹いるよ」妻「分かる、わかる。今、二人にも送った（笑）」40年前に長女が描いた絵が...

2024/10/23 05:30

美術の秋

物思ふこころ美術の秋となり朝、会社で新聞を開くと「田中一村展」の広告が載っていた（写真）。上野の東京都美術館で開催中で12月1日（日）までとある。＜孤高の画家が愛した奄美……奄美の光……魂の絵画……＞すぐにこの新聞記事を添付して妻にメールした。私「上野の展覧会でも見て来ようよ。美味しいものでも食べて来ようよ」妻「いいわねぇ（笑）」私「〇〇亭なんかはどう？」妻「東天紅に行きたいな」私「いつもと違う店もいいか...

2024/10/22 05:30

秋彼岸

捗らぬものに断捨離秋彼岸今、家にあった写真などを整理している。段ボール箱で8個分である。スキャナーで読み込んで次々と分類していく。読み込んだ写真は基本的に処分することになる。大きな記念写真などはそのままだが、その他のスナップ写真は全てデータ化されて処分されることになる。子供たちの物もいろいろと出て来る。幼稚園や小学校で描いた絵や成績表、表彰状など大量に入っている。それもスキャナーで読み込み処分する...

2024/10/21 05:30

身に沁む

身に沁むや痛み労はる者同士その2日後の水曜日。翌日から始まる書道展の準備に桜木町の会場に10名ほどのメンバーが集まった。男手が必要とのことで私も先生から頼まれている。作品の飾り付けや諸々の準備である。2時に始まって4時半まで掛かった。終わってからお茶を飲みながらの雑談となった。女性「ああ、疲れた。この頃、腰が痛くて……」私「そんなに重い物なんか持ってないじゃないですか」女性「重い物なんか持てる訳ないでし...

2024/10/20 05:30

夜の長さ

一人居や夜の長さに鼻毛抜く月曜日、会社に行くと工場長が「社長、ちょっとよろしいですか？」と深刻そうに声を掛けてきた。私「なに？」工場長「土曜日、大変なことがありまして」私「えっ、何があった？」幹部が社長室に集まった。工場長「実は川上が救急車で運ばれまして」私「ええっ、どうしたの？」その場に川上君本人もいる。川上君「昼飯を食べた後なんですけど、急にこの辺りが痛くなりまして」胸の辺りを押さえている。私...

2024/10/19 05:30

夜なべ妻

上州に夜なべ妻あり犬張子最後に寄ったのが「犬張子」を売っている「山名八幡宮」である。高速の「藤岡インター」のすぐ近く、「土屋文明文学館」から車で30分程である。妻「奈美が生まれた時に枕元に置いてあったね」私「犬張子が？」妻「そう」私「覚えてない。誰が買ってくれたの？」妻「知らないけど、ここで買って来てくれたんだね」駐車場に車はなかった。線路の下を潜った先に八幡宮の境内があった。石段を上がった。上がっ...

2024/10/18 05:30

秋渇き

秋渇き子等駄菓子屋を離れざる車を移動してすぐ近くにある「土屋文明記念文学館」を訪問した。こちらも立派な建物である。建物の前に石碑が建っていた。文明の歌である。「青き上に榛名を永久の幻に出でて帰らぬ我のみにあらじ」＜んんん？＞それほどの歌でもないような気がした。「歌人 土屋文明 ひとすじの道」の中にこの歌についての解説があった。「小学校唱歌「故郷」の三番「こころざしをはたして、いつの日にか帰らん、山...

2024/10/17 05:30

小鳥来る

上毛に王を眠らせ小鳥来る翌朝は女将さんに見送られてホテルを後にした。女将さんには「今日はどちらまで？」と聞かれ「犬張子を買いに行きます」と答えている。「えっ、犬張子ですか？」「赤城の子守歌に出て来る犬張子です」「？？？」「藤岡インターの近くにある山名八幡宮で売っているというので買って帰ります」少し詳しく説明すると「初めて聞きました。ありがとうございます。今度、私も行ってみます」ということになった。...

2024/10/16 05:30

名月

名月や忠治ゆかりの湯治宿風呂から上がって2時間も寝てしまった。私「ええっ、もう6時じゃん」妻「すぐに夕食だよ」私「起きてすぐじゃ、食べられないよ」妻「大丈夫だよ。ゆっくり食べればいいんだから」女中さんが「失礼いたします。夕食の準備に入らせていただきます」と声を掛けてきた。入口の部屋に準備するらしい。5分もしない内に「準備が出来ました」と知らせて来た。私「おお、こんな感じかぁ」妻「わ～、いい感じ（笑）...

2024/10/15 05:30

竜淵に潜む

竜淵に潜む赤城の赤湯かな山頂から再び九十九折りの急カーブを降りて来てホテルに到着した。宿の名前は「にごり湯の宿 赤城温泉ホテル」である。入り口で花の写真を撮っていると女中さんが出て来て「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。私「可愛い花だったんで一枚撮っておきました（笑）」女中さん「ご予約のお客様で？」妻「はい、日向といいます」女中さん「ああ、日向様。お待ちしておりました。先日は台風でキャンセルとなり...

2024/10/14 05:30

涼風

涼風や遅れがちなるスワン号ビールの酔いを醒まさなければならない。甘味処に入った。私「チョコ汁粉って何だろ？」妻「お汁粉にチョコが入ってるんじゃない？」私「食べてみるか」妻「おっ、珍しい（笑）」レジで10円の地図を買った。妻「なに？」私「赤城山のハイキング用の地図。10円だって（笑）」妻「本当は無料で配っているもんなんだろうね」私「ああ、そうかぁ。無料ならぞんざいに扱われてしまう所だけど、たとえ10円でも...

2024/10/13 05:30

雁渡し

雁渡しやけに小さき忠治像ちょうど昼時で忙しそうに働いていたが、厨房の近くの席でもあったので店の人に聞いてみた。私「何か国定忠治のお土産は置いてないんですか？」女性「はい、ありません」私「暖簾とか手拭いとか、あっても良さそうだけどなぁ（笑）」女性「昔はいろいろとありましたけどねぇ。キーホルダーとか人形とか。今は忠治と言いましてもねぇ……（笑）」私「今でも清水港に行ったら次郎長のお土産がたくさん売ってる...

2024/10/12 05:30

身に沁む

身に沁むや品書きにある忠治蕎麦駐車場に戻ったのが11時である。靴を脱いで着替えをした。私「誰もいないと思ったのに随分と車が来てるじゃん」妻「もしかして、人気のスポットかも（笑）」私「いやぁ、汗搔いたなぁ。まぁ、早く車の中で涼もうよ」妻「これからどうする？」私「頂上まで登って蕎麦でも食べよう」妻「大沼小沼かぁ、久し振りだなぁ（笑）」目的地を「赤城神社」と入力した。私「へぇ～、1時間近くも掛かる」妻「そ...

2024/10/11 05:30

秋山路

犬吠えて秋の山路の静かさよ不動尊から駐車場までゆっくりと歩いてきた。私「赤城の山も 今宵限り」妻「……」私「生まれ故郷の国定村や 縄張りを捨て 可愛い子分のてめぇ達とも別れ別れになる門出だぁ……」妻「子分たちも喜んだんじゃない？」私「えっ、どうして？」妻「だって、この道だよ。赤城山集合となるたびにこの山道を歩かなくちゃならなかったんだから、別れ別れとなってホッとしたはずだよ、きっと（笑）」私「ハハハハ...

2024/10/10 05:30

秋の声

洞穴を出でし忠治に秋の声この穴の中がどうなっているのかは分からないが、ここで何か月も過ごしたのだろう。捕まらない目途が立つまで籠っていたはずである。小説「赤城山残照」でこの隠れ岩のことが登場するのは最後の辺りである。お町との同衾中に突如として中気に襲われた忠治が西野目の家で養生をしている。病状が軽かったのか、徐々に快復してくる。子分の安五郎が「お陰様で親分は順調に快復してくれて居ります。この体調で...

2024/10/09 05:30

滝の前

大声が吹き戻されて滝の前妻が石に腰掛けたのを見て先に進むことにした。急いで戻らなければという気持ちが働く。赤いリボンが頼りである。上に行くのか下るのか迷うところもあったが、何とか無事に先に進むことが出来た。急に舗装された道路に出た。車が1台停まっていた。＜ええっ、ここまで車で来られるの？＞ここでも良かったのにと思いつつも、「滝沢不動尊」を見て「忠治のみはり岩」も見られたのだから良しとしなければなら...

2024/10/08 05:30

秋の瀬

秋の瀬やなくなつてゐる渡し板不動尊から下る道は水で濡れている。私「気を付けて。滑るよ」妻「大丈夫」すぐに下に着いた。川が流れている。滝壺に落ちた水が流れて来るのだろう。岩の間を掛け落ちる奔流である。向かう先には「不動滝」と書かれた矢印もあれば、赤いリボンが括り付けられたりしている。迷うことはない。大きな岩を上がったりして流れを渡る場所に来た。ユーチューブで見た時にはアルミ製の板が掛けられていたがそ...

2024/10/07 05:30

冷まじ

冷まじきものに手刀よく切れる私「こんにちは」男「こんにちは。どちらからですか？」私「横浜です」男「それは、それは。滝を見に来たんですか？」私「滝もそうですが、その側にある『忠治の隠れ岩』というのを見に来ました。まだ先ですかね？」男「大滝はここからでも見えますよ。あそこです」指を差して教えてくれた。私「遠いなぁ」男「このすぐ近くに滝沢不動尊があります。その横から降りて行くとすぐ川に出ます。川を渡って...

2024/10/06 05:30

水澄む

延命の謂れは知らず水澄めり駐車場で靴を履き替えた。リュックに付けた熊除けの鈴がよく響く。私「大丈夫？」妻「オッケー」私「よし、行くか！」駐車場を出ようとすると軽自動車が入ってきた。運転席と助手席に男性2名が座っている。滝を見に来たのだろうか。私の車の少し手前に停まった。看板が出ていた。「群馬県指定名勝 滝沢の不動滝」と書かれていた。「滝沢の不動滝は赤城山最大級の瀑布です」と説明されているが読んでい...

2024/10/05 05:30

秋山

秋山の忠治ねぐらに続く道「養寿寺」を出たのが8時である。私「まだ8時だよ。天気もいいし、最高だなぁ（笑）」妻「これから『忠治の隠れ岩』？」私「そう。今日泊まるホテルのすぐ側に駐車場がある。ユーチューブで見たけど、赤城山で一番大きな滝があってそのすぐ近くに『隠れ岩』があった。その入口の前で横笛を吹いているヤツがいた（笑）」妻「横笛！何で？」私「東海林太郎の名月赤城山だよ。『男ごころに男が惚れて』の次に...

2024/10/04 05:30

墓詣で

削られし忠治の墓に詣でけり伊勢崎市国定町の「養寿寺」に忠治の墓があった。赤城山の麓の広大な畑の中にポツンとあるようなお寺である。入って最初に目に付くのが大きな松の木である。私「立派な松の木だなぁ。臥竜の松とでも言うのかなぁ」大切に手入れされているのが分かる。しばらく眺めた後、本堂に進み、お賽銭を上げてから墓地に向かった。忠治の墓はすぐに分かった。私「あれあれ、あの大きな石碑が目印」一際大きな石碑が...

2024/10/03 05:30

秋の雲

笑ひたくなりし遠嶺や秋の雲それからの行動は当初の計画とは大きく変わった。予定では次に「はにわの里」を見学することになっていた。9時半オープンなので約2時間を24時間営業のファミレスで過ごすことにしていた。車の中での会話である。妻「そんな都合のいいファミレスなんてあったの？」私「デニーズ」妻「ホントに24時間だった？」私「俺が調べたんだよ。確認してるよ」妻「だけど、わざわざ群馬まで来て2時間も時間調整する...

2024/10/02 05:30

墓参り

上州に生きしちゝはゝ墓参り高崎のお寺に到着したのが6時50分である。2時間半掛った。どこにも渋滞はなく、途中で1回休憩しただけだった。私「ああ、まだ実っていない」妻「なに？」私「このサンゴジュ、実が生ると凄いと思うよ。いつも夏に来るから実ったのを見たことがない」妻「ああ、そういうことか」私「1年振りかぁ。戦場ヶ原に行った時からだ」妻「早いわね」私「我々もあちこちに出掛けてるけど、肝心の墓参りが1年に1度じ...

2024/10/01 05:30