ひこばえ

盆花

盆花のやけに水吸ふ夜なりけり墓参りに出掛ける前に忠治のことを長々と書いてしまった。これを読まれている方からの「いつ、出掛けるんだよ」の声が聞こえて来そうである（笑）。9月15日（日）に出掛けて赤城温泉に泊まって16日（月）に帰ってきた。旅日記をスタートする。事前に立てた計画は次の通りである。「日曜日」朝4時出発──6時半墓参り──ファミレスで時間調整──9時半「上毛野はにわの里」──土屋文明記念文学館──「海老屋」...

2024/09/30 05:30

色無き風

上州の色無き風を纏ひけり忠治の女のことについて書いておこう。まずは女房についてである。親戚の娘で忠治より2歳上である。母から「お前に嫁を取らせようと思ってな。知っているだろう、あの親戚のお鶴だよ」と話があった。「明日の分からぬ博徒の俺でいいのですかい。随分と会っていないからどんな娘になったか知らないが、お袋が見ていいというなら承知するよ」と決まった。お鶴は男を知らない。知らないながらも心から相手を...

2024/09/29 05:30

爽籟

爽籟や斬つて返せし借りひとつ忠治、文蔵以下は林の中に身を潜めていた。待つほどもなく伊三郎たちが現れた。頃合いを見て忠治は道に躍り出た。5人の手下は物も言わず伊三郎の子分3人を樫の棒で殴り倒した。「伊三郎親分、お返しが遅くなりましたが、挨拶に来ましたぜ」「藪から棒に何事だ。だが二人がかりとは俺も満更じゃねぇな。どこからでもかかって来い」と言うや刀を抜いて身構えた。「二人がかりじゃ恐れ多いのでね、あっし...

2024/09/28 05:30

竜淵に潜む

竜淵に潜むその日を待ちにけり若き忠治が売り出しの契機となった「島村伊三郎斬殺事件」のことを書いておこう。天保5年（1834年）秋、三ツ木村の祭礼に百々村の紋次の子分で今は忠治の子分となっている三ツ木の文蔵が酒を飲んでいた。そこに通りかかった伊三郎が文蔵を見つけて神社の裏手に連れ込んだ。「百々村に紋次がいた時からの付き合いじゃないか。挨拶もしねぇとはどういう了見だ」多勢に無勢、散々に殴りつけた。最後に久...

2024/09/27 05:30

不作田

不作田に人あり人は怠らず前年の天保3年（1832年）は天候不順だった。それ以上に今年は冷気厳しく平常に戻る気配はなかった。もともと蓄えなどない貧しい農村である。このままだと大変なことになる。飢饉の襲来を本気で心配し始めた。「酷い天気だ。このままだと飢饉になる。飢え死にする者が出るかも知れぬ。子分たちを泣かせることになるが、俺たちは切り詰めて金を作り、浮かせた金を国定、田部井の困っている人たちに配ろうと...

2024/09/26 05:30

肌脱

肌脱ぎて壺振る賽は指の先島村の伊三郎は水運業者の旧家に生まれ、腕の立つ大男で度胸と知力もあるところから水主や人足をも仕切る博徒の親分になっていた。元来は貧しい地区だったが、養蚕が盛んになると様相が一変した。島村の北には例幣使街道が伸びている。毎年、幕府が日光東照宮に向かう通り道である。繁盛した。大前田英五郎の縄張りとは接していた。世良田村は百々村の紋次親分の縄張りだが、病弱のため曖昧になっていた。...

2024/09/25 05:30

秋の空

親分に命預けて秋の空さて、どうしたものか。石に腰掛け考えたが纏まらない。「困った時には分別だ」と寺の和尚が言っていた。考えることだ。よく考えることだと自分に言い聞かせてようやく腹が決まった。国定には居られない。家を出るしかない。直ぐにだ。家に戻ると母親に気付かれないように弟の友蔵を呼んだ。「急な話だが江戸に行くことにした」「何だって藪から棒に」「申し訳ない。今すぐ出なければならない。お袋に話をして...

2024/09/24 05:30

秋雨

秋雨や白刃の下を掻ひ潜る忠治が任侠の世界に入る切っ掛けとなった出来事を書いておこう。水車小屋事件の2年前の夏、忠治14歳の時のことである。草刈りを終えて家に帰る途中、畦道で悪ガキと行き会った。忠治は背中に大きな籠を負っている。相手は4人。隣村の悪ガキ五郎である。「そこをどけ。道を空けろ」畔道の両側は水の張った田圃である。避けようがない。「お前、女みたいな面をしてるな。男か」仲間が笑った。「男だ」忠治が...

2024/09/23 05:30

早稲

早稲は黄に止まることなき水車かなそこにまた本が届いた。山口隆著「赤城山残照──国定忠治一代記」、発行が上毛新聞社とある（写真）。私「随分と立派な本だな」妻「面白いといいけどね（笑）」私「墓参りが2週間先に延びたからなぁ。あんまり早く読むと読んだ内容を忘れてしまいそうだけどなぁ（笑）」読み始めた。8月31日（土）のことである。その日の内に読み終えてしまった。私「あああ、読んじゃったよ」妻「どうだった？面白...

2024/09/22 05:30

色鳥

色鳥の何をついばむ秀枝かな土屋文明記念文学館編「歌人土屋文明」が届いた（写真）。平成8年（1996年）に群馬県高崎市保渡田町に記念文学館がオープンするのだが、それに合わせて出版された本のようである。6月にこの本が出版され、7月に文学館がオープンしている。文明の100年を6つの時代に分けて6人の執筆者が分担して書いている。1、 榛名山──生まれてから上京するまで2、 「ふゆくさ」の頃──青年期から壮年期へ3、 アララギ──...

2024/09/21 05:30

塩鮭

毛の国や喪に塩鮭を焼くにほひ土屋文明は歌人である。高崎市の出身で平成2年に100才で亡くなっている。どんな人だったかは注文した本が届いてから読めば分かるが、どんな歌を詠んだのかは先に見ておきたい。調べると日本ペンクラブ「電子文藝館」というサイトに「土屋文明短歌100首」が載っていた。俳句とは違い、読み方が正しいかどうかは分からないがまずは読んでみた。私なりに心に残った歌を記しておこう。「ただひとり吾より...

2024/09/20 05:30

台風

台風は南海にあり旅鞄妻の両親の墓参りに行くことになった。私「8月の最終の土日、一泊でどう？」妻「いいわよ」私「どこに泊まろうか？赤城山中の何と言ったけなぁ、あの広い旅館」妻「別にあそこでなくても他にあるんじゃない？」梨木温泉の梨木館のことを言っている。いろいろと検索したようである。妻「赤城山に赤城温泉があるよ。にごり湯の宿、赤城温泉ホテル」私「空いてるの？」妻「空いてる。取る？」私「お願いします」...

2024/09/19 05:30

愁思祭

AIと競ふ世となり愁思祭画面越しに1時間の説明を受けた。担当者「以上です。何かご質問は？」川崎君「社長、どうですか？」私「オレにも出来そうだな（笑）」川崎君「ハハハハ」私「これくらいだったら、ホントにオレにも出来そうだと思った（笑）」川崎君「これは本当に簡単な例だと思いますが、入口としては分かりやすかったですね。本当に社長でも出来るかも知れません（笑）」担当者が例として挙げたのが不要なデータを「ゴミ...

2024/09/18 05:30

休暇果つ

休暇果つすなはち早もフル稼働休み明け、会社に行っての会話である。私「これ、やってみたけど、難し過ぎるよ。文字の入力すら出来ない」川崎君「大丈夫です。やり方を説明します」私「いろいろ見てみたけど、これを60時間受講しても利口にはならない」川崎君「出たぁ～（笑）」私「それより、RPAの会社を呼んでくれ。話を聞いた方が早い」川崎君「社長、今、それどころではありません。仕事が山積みです」私「だから、山積みを山...

2024/09/17 05:30

秋暑し

手詰まりのエクセル操作秋暑し8月11日から18日までの長い夏休みをどこにも出掛けずに家で過ごした。クーラー病から来た風邪なのか、寝ている時に咳が止まらず、昼日中に寝てみたり、薬を飲んだり、湿布を貼ったりして家の中に籠っていた。会社からパソコンを持参したので、決められた講習だけは受けておかなければならない。リスキリングである。画面を開くと講師の話が始まる。まずは基本中の基本を説明してくれるのだが、それに...

2024/09/16 05:30

土用鰻

土用鰻並べスーパー開店す工場長「出来ました」私「えっ、何が？」工場長「杉田の京急ストアのカウンターです。今日、これから出荷します」私「ああ、そうか」工場の組立職場に見に行くと3台並んでいた。私「これか？」工場長「そうです」私「ただの台だな」工場長「はい、普通のカウンターです」私「ここだよなぁ……」工場長「どうかしましたか？」私「東急が京急に変わったことで、何かで『おおっ』という感動をお客に与えないと...

2024/09/15 05:30

大夕焼

大夕焼スーパーひとつ閉店す6月から通い始めたスポーツジムだが、その数日後、ジムが入っているビルの1階にある「東急ストア」に閉店の張り紙が出た。6月17日で店を閉じるという（写真）。＜へぇ～＞家に帰ってその話をした。私「杉田の東急が閉店だって」妻「あら、そう、昔からあったのにね」私「流行っていたんじゃないのか？」妻「私は行かないから分からない」私「あのビルの顔だろ？」妻「でもスーパーはOKとかヤオコーみた...

2024/09/14 05:30

夏果て

夏果てのマッコリに酔ひ泣きにけり空港で別れたのは日付が変わった木曜日の朝1時半である。翌日になる。金曜日に娘からメールが入った。娘「おーちゃん、福岡旅行お疲れ様でした。突然だけど、みやが今日、名古屋から帰って来ました。みんなに会いたいと言っているから、明日の夜どこかで集まろうと思うんだけど予定はどうかなぁ」私「自慢話を聞く耳は持っています（笑）。いつもの山水苑はどう？予約の電話を入れてみて」方々に...

2024/09/13 05:30

脚気

いつまでも待つて脚気が気になりぬ飛行機は1時間遅れで羽田に到着した。私「おお、良かったなぁ（笑）」妻「ホントに良かった（笑）」私「燃料が切れたら大変なところだったよ（笑）」妻「そんなこと、ある訳ないでしょ（笑）」その時点でそれから始まる地獄を我々は全く想像していなかった。降り立った飛行機はしばらく走ったあと、ある地点で止まった。また機長の機内放送である。「お急ぎのところご迷惑をお掛けしております。...

2024/09/12 05:30

雷過ぐ

雷過ぐるまでを空にて待機せり博多発18時55分のJAL328便である。羽田には20時40分到着を予定している。レンタカーを返して受付をして、出発ロビーで2時間近くをそれぞれで過ごした。搭乗口の横のソファに凭れて缶ビールを飲みながら「まぼろしの邪馬台国」を開いていた。「奴国の奴は漢音でド、呉音でヌである。ほとんどの人がナ国と読んでいるが、ナと読んではならない。正しくはド国と読むべきで、ドとはドロ（泥）、ドブのドで...

2024/09/11 05:30

梅青し

梅青し天神様の札を買ふ「福岡市博物館」を出て次に向かったのが「太宰府天満宮」である。なっちゃんとカズ君のお守りを買わなければならない。二人とも受験である。菅原道真が祀られている。旅行に出る前に何か一冊は読んでおかなければならないと天津佳之著「あるじなしとて」を買ったのだが、届いたのが旅行に出る前日だった。ペラペラと最後の辺りを捲って福岡と道真の関係を探ってみたが、370ページ中のたった2ページだけ書か...

2024/09/10 05:30

涼風

涼風やあつてはならぬ責め心ホテルのチェックアウトを終えてレンタカー2台に分乗して「福岡市博物館」に行くという。前日、志賀島でレプリカではあるが金印を見ているので特に見たいという訳ではないのだが、どういう訳か行ってみようということになった。ナオ君「場所、分かる？」娘「ナビに入れるから平気」日向一家と竹内一家に分かれるように乗り込んだ。娘が運転している。娘「じゃ、先に行くね」ナオ君「すぐに追い掛ける」...

2024/09/09 05:30

山登る

伊都国の山に登りし夢を見し翌日はすっぽりと時間が空いたのでどうしようかということになった。私にとってはチャンスである。そのために持って来た登山靴である。当初、宮崎康平が糸島半島の東の付け根にある「今山」に登ることを勧めていたのでその気になったのだが、調べてみると標高80メートルである。ユーチューブで見るとあまりに低過ぎて登山靴などいらないレベルである。しかも草が伸び放題で見晴らしが良くないと来ている...

2024/09/08 05:30

飯饐る

取返し付かぬ誤審や飯饐る夕飯は隣のビルの2階にあるモツ鍋の店に行くことにした。予約したのは娘だが、娘は試合を終えた鵠沼の選手たちの洗濯物をコインランドリーに入れに行く役目を任されたそうで、遅れて到着するとのことだった。ナオ君「お父さん、今回はありがとうございました。二人ともインターハイの試合は終わってしまいましたが、いい経験をしたと思います。なつも12年間頑張って来たバスケの締め括りが出来て喜んでい...

2024/09/07 05:30

日傘

漢の倭の奴の国王の日傘なり道を走っていて突然娘が声を上げた。娘「あっ、おーちゃん、あったよ。ホットドック屋」ナオ君「あっ、ホントだ。お父さん、ありましたよ、ホットドック屋」私「いやいやいやいや、別にオレはホットドック屋を探している訳じゃないし」娘「寄ってみる？」私「いらない、いらない。ホットドックなんか食べたくない」娘「折角来たんだから、寄ればいいのに」私「いらない」娘「そう、いいのね……」志賀島ま...

2024/09/06 05:30

畑打ち

畑打ちやそこに何やら光るものナオ君「お父さん、お昼はそこの商業施設で簡単に済ませていいですか？」私「おっ、いいよ。あっ、もう2時か」ナオ君「じゃ、みんなでそこで好きなものを食べよう」私「ああ、終わってしまったなぁ……」ナオ君「そうですね。終わってしまいましたねぇ……」私「でも、意外となっちゃん、サバサバして見えたなぁ。周りでみんなが泣いているというのに冷静そうにしていた感じがした」娘「うん、なつはもう...

2024/09/05 05:30

雲の峰

負けてまた次の勝ちへと雲の峰娘から「1階の東口に選手が出てくるよ。みんなに挨拶します」とのメールが入った。私「おっ、1階だってよ。なっちゃんが挨拶するって」ばぁば「それじゃ、急がなくっちゃ」私「東口ってどこだろ？」係員に聞いてみたが知らないという。取り敢えず近くの出口から出てみた。見当たらない。娘「セブンイレブン方面に歩いた橋の下にいるよ。あっ、選手が来ちゃったわ」少し遠回りしたがようやくその場所に...

2024/09/04 05:30

夏果て

夏果てや拭ふ涙の熱きこと感傷に浸っている余裕はない。なっちゃんの試合がすぐに始まる。遠く離れた反対側のスタンドに行って席を取らなくてはならない。狭い通路で人にぶつかりながらも直進して、空いている席を見つけて6人分を確保した。＜ハァ～、みやちゃん、負けてしまったなぁ……＞独り言ではあるが、少々落ち込んでいた。私「1点差とは凄いゲームだったな」妻「あと7秒で逆転だもんね」私「みやが出ていなかったのは残念だ...

2024/09/03 05:30

夏終る

接戦のシユート外れて夏終る「8時半に駐車場集合ね」と娘からメールが入った。いやに早い。みやちゃんの桜花が10時開始の第1試合である。なっちゃんは第2試合で11時40分スタートとなっている。同じ会場なので場所を少し移動すればいいだけだが、午前中に2試合とは忙しい話である。1000円で買ったガイドブックに「栄光のあと」というページがあり、過去の優勝校、第2位、第3位の学校名が記されている（写真）。見づらいので私がマー...

2024/09/02 05:30

夏空

夏空を矩に切り取つて寝湯に寝るナオ君はその夜、鵠沼チームの父兄が集まって飲むことになっているという。仕事もあるはずだが何人も応援に駆け付けている。どの選手の親かは私には分からないが、ナオ君や娘にとってはいて当り前の間柄のようである。バスケに掛けた情熱というのだろうか、親も大変である。あれだけの接戦を制した後なので今日は盛り上がることだろう。娘「おーちゃん、ナオがいないけど夕食どうする？」私「連日美...

2024/09/01 05:30