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  • 『若い人のための10冊の本』/小林康夫

    タイトルの通り、小林が10代の若い人に向けて10冊の本を紹介する、という一冊。それだけではものすごくありきたりで退屈な本――いわゆる教養ガイド本的な――になりそうなものだけれど、そこは小林、自身の若いころの読書体験を引きながら、本を読むとはどういうことなのか、つまり、ある本を見つけ、出会い、向き合い、かんがえるとはどういうことなのか、を解き明かしていくように語ってくれており、読みものとしてなかなかにおもしろいものになっている。 小林の主張のベースにあるのは、本というメディアへの信仰にも似た信頼と愛情であり、できるだけわかりやすい言葉でそれを次の世代に受け渡していきたい、という純粋な想いであると…

  • 『零度のエクリチュール』/ロラン・バルト

    バルトの処女作。とにかくわかりづらい文章が多く、よく理解できたとは到底言えないのだけれど――それでも、大学生の頃にちくま学芸文庫版を読んだときよりかは幾分ましだったとおもう――簡単にノートを取っておくことにする。 * 本書におけるバルトの主張は、ひとことでまとめてしまえば、「言語」(ラング)と「文体」(スティル)の間には、もうひとつの形式的実体、「エクリチュール」なるものがある、というものだと言えるだろう。 バルト曰く、「言語」とは、同時代の作家たちに共通する規則や慣習を含み、歴史的な背景を持つ、いわば作家の可能性を制限する否定性として機能するものである。また、「文体」とは、作家個人の身体性や…

  • 『月と六ペンス』/サマセット・モーム

    じつはモームの長編ははじめて読んだのだったけれど、いやーむちゃくちゃ面白い小説だった!エンタテインメント的なストーリーのドライブ感を持ちながらも、相当に複雑な人間の像が描き出されており、読書の愉しみを十全に味わせてもらった。 本作は、作家である主人公が、狂気の天才画家とでも呼べそうな男、ストリックランドとの邂逅を回想しつつ、その人間としての実像に迫る、という架空の伝記のような体裁で書かれている。この手法によって、ストリックランドという男の計り知れなさ、底の知れなさ、得体の知れなさがうまく立ち上がってくるようになっているのだ。 ゴーギャンをベースに形成されたというストリックランドの人物像は、俗世…

  • 『オリバー・ツイスト』/チャールズ・ディケンズ

    本作は、オリバー・ツイストという少年の成長物語ではない。一種の貴種流離譚であり、オリバーの彷徨を利用して社会の低層を描いた作品だと言った方がいいだろう。なかなかの長編ではあるのだけれど、はっきりとオリバーの目線から描かれるパートは前の半分くらいまで。後半分のパートでは、彼の周囲のさまざまなキャラクターたちへと次々に目線を移し替えながら、物語が進行していくことになる。 ディケンズといえば貧者の味方、社会悪の告発者、善き行いによる社会の改善を夢見る作家だと言えるだろう。本作でも、登場人物たちはいずれもディケンズ流のモラルに従って、きわめてわかりやすく類型化されているのだけれど、ディケンズの巧みな描…

  • 『シーモアさんと、大人のための人生入門』

    UPLINK Cloudにて。50歳でコンサートピアニストを引退し、80歳を過ぎてもなおピアノ教師を続けている、シーモア・バーンスタインの姿を描いたドキュメンタリー。とっても地味で静かな映画ではあるものの、全編に流れるピアノの音色が素晴らしい、なかなか素敵な作品だった。話には流れらしい流れもないし、画面構成もかなりシンプルで、シーモアさんが生徒にレッスンする様子や、インタビュー相手に向かってとつとつと語る姿がアップで映し出されているシーンがほとんどなのだけれど、彼の柔らかな話し声そのものがどこか音楽的で、つい聞き入ってしまうような魅力を持っている。 シーモアさんの語る内容は、言葉だけではわりと…

  • 『ブリージング・レッスン』/アン・タイラー

    アン・タイラーは、とにかくふつうの市井の人々の描写というやつがむちゃくちゃに上手い。というか、そもそも彼女の小説はすべて、そういった人々を描いたものだと言ってもいい。ひとくせもふたくせもあることは間違いないけれど、でも本当に平凡な人々、についての描写が、とにかくリアリティ満点なのだ。 一般的に、小説の主人公というのは、なにかしら際立っているというか、魅力的な人物であることが多いだろう。だが、アン・タイラーの小説の主人公たちは、ぜんぜんそういうタイプではない。他の小説世界の住人たちと比べると、ずっと冴えていないし、機転も利かないし、想像力も足りないし、頭もよくない。社会的に成功していたり、壮大な…

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