少し古すぎるかもしれないが、銭形平次が投げた銭は一文銭。日本では奈良時代に和同開珎などの貨幣が発行されたが、一般庶民の使用するところまでは至っていなかった。一般の経済活動に銭が使われるようになったのは鎌倉時代。当時の中国から輸入した渡来銭が使われた。形状は円形の中に方形の穴が開いている。材質は多くが銅だ。これに時代によって錫や鉛、鉄などが混ぜられている。この貨幣は銭と呼ばれたが、時代、地方によって幾種類もの銭が存在した。これらを識別するのに貨幣上に記された文字なり文様を読み取る必要があった。それで文とも呼ばれるようになったそうだ。しかし輸入された銭は必ずしも貨幣としてばかり使われたのではない。奈良の大仏を建立する際は多くの渡来銭がその原料とされた。中国の歴代王朝でも銭を発行しない王朝もある。したがって市中...5/8黒田昭伸『歴史の中の貨幣銅銭がつないだ東アジア』読了