美(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 わたしは美しい、おお、死すべき者よ! 石の夢のように。 だれもが代わるがわる打ち傷を負っていったわたしの胸も、 詩人の魂に愛を吹きこむために作られたのよ。 永遠の声なき愛を、万有の質料と同じように。 わたしは蒼穹に不可解なスフィンクスのように鎮座するわ。 わたしは雪の心と白鳥の白さを一つにするの。 わたしは線を移動させる運動を憎んでいるの。 決してわたしは泣いたりはしないし、笑ったりもしないわ。 詩人たちは、一段と誇らかな記念像たちから借りたふうな、 わたしの堂々とした佇まいをまえにしながら、 彼らの日々を謹厳な研究に燃え尽きさせてしまう…