ボードレールの「美」とは、『悪の華』という美術館に特設されたウェヌスのギャラリーである。そこに展示されたウェヌスのコレクションには、古代ローマ帝国の母神、売春婦の守護神、レズビアンの守護神という三つの顔があり、「美」にはそのそれぞれに由来する詩句がちりばめられている。 これら三つのウェヌスの顔には、一つの極めて重大な共通点がある。それは、どの面におけるウェヌスもキリスト教徒の敵であるということだ。そのことは、あるキリスト教徒によって付けられたウェヌスのもう一つの忌まわしい蔑称を私たちに想起させるだろう。それこそが、『新約聖書』の「ヨハネの黙示録」第17章に登場する大淫婦バビロンである。 わたし…