『Y字路はなぜ生まれるのか?』 重永瞬 実家に帰った時に読んだ新聞の書評欄で見かけて気になっていた本。「Y字路」に焦点を絞ったこだわりが何だか面白そうだと思った。 路上を歩いてそれぞれに個性的なY字路の表情を味わい、地図をひもといてなぜそこにY字路が生まれたのかを考える。人がY字路に抱くイメージを追い、街にY字路を形成して…
読んだ本やマンガの感想と、歌舞伎観劇記録。
読んだ本やコミックの記録が中心ですが、最近は歌舞伎ネタが増えてきました。
「ブログリーダー」を活用して、sweetpeaさんをフォローしませんか?
『Y字路はなぜ生まれるのか?』 重永瞬 実家に帰った時に読んだ新聞の書評欄で見かけて気になっていた本。「Y字路」に焦点を絞ったこだわりが何だか面白そうだと思った。 路上を歩いてそれぞれに個性的なY字路の表情を味わい、地図をひもといてなぜそこにY字路が生まれたのかを考える。人がY字路に抱くイメージを追い、街にY字路を形成して…
『緑陰深きところ』 遠田潤子 花開萬人集 花盡一人無 但見雙黄鳥 緑陰深處呼 花開けば万人集まり 花尽くれば一人なし ただ見る双黄鳥 緑陰深き処に呼ぶを 遠田潤子という名前を目にすると、この作者との出会いになった短編「水鏡の虜」に感じた、身体を熱っぽく疼かせるような情念の滾り…
『読学人間』 寺嶋良 『THE FIRST SLAM DUNK』→「2023 ワールドカップ」→「パリ五輪」→福岡で開催されたインハイバスケ観戦〜の流れでバスケに興味を持ち始めて、今シーズンから近隣のアリーナに足を運んでB.LEAGUEの試合を観戦するようになった。といっても、どこか応…
『さよならに反する現象』 乙一 気になる本を見つけたらとりあえずメモしている私の「読みたい本リスト」に入っていたのだけど、いつどこでこの本を見つけたのか、どうして読みたいと思ったのか思い出せない。読んだらなにか思い出すかと思ったけど、やっぱり思い出せない。 最初の二編、「そしてクマになる」「なごみ探偵おそ松さ…
『虚傳集』 奥泉光 数多ある剣術道場の中でもその突き詰めすぎた合理性によって幕末の江戸で異彩を放った清心館。戦国時代、印地の衆と呼ばれた投石の技術をもって業とした者たち。後世に一体の仏像も残していない謎の仏師・寶井俊慶。異端の研究に邁進した江戸学問界の徒花・薗倉瑞軒。尊攘の波に身を投じた高田諒四郎と地方の豪農の当主として…
『睦家四姉妹図』 藤谷治 横浜市戸塚区の静かな住宅地・原宿に暮らす睦家の家族。父・昭、母・八重子と貞子、夏子、陽子、恵美里の四姉妹。昭和の終わりから令和の幕開けまで。それなりの波風を立てながら「平成」の日々を暮らす一家の家族模様。 睦家の四姉妹とはほぼ同世代。家庭環境の違いはあるけれども、私も彼女たちと同じ年ごろで同…
『多頭獣の話』 上田岳弘 久しぶりに物語にハマる感覚を味わえた。このところ本を読む体力、集中力が落ちていく一方で、夢中になって一気読みなんてことはできなくなってたんだけど、この『多頭獣の話』は読み始めてすぐに物語に呑まれる感覚があってページがどんどん進んだ。(と言っても、さすがに睡眠時間削って一晩で読み終えるってのは無理…
『夜の床屋』 沢村浩輔 人気のない無人駅の駅前。深夜にただ一軒灯りを灯す理髪店。灯りに吸い寄せられる蛾みたいに、この不思議なシチュエーションに引き寄せられてページをめくる。 奇妙な出来事に遭遇しがちな大学生・佐倉。この床屋の謎につづいて、部屋の住人が寝ているその室内から絨毯だけが無くなるという不可解な事件、近所の小学…
期待以上に昂る舞台でした。幸四郎さんと松也さんダブルキャストのライ、右近さんのキンタ、染五郎さんのシュテン、新悟さんのシキブ・・・楽しみなとこは沢山あったその中で、何より目を奪われたのが時蔵さんのツナ。 時蔵さんといえばザ・古典のイメージがあったのだけど、立ち回りも踊りも、台詞も所作も、古典の歌舞伎とは違ったリズムに乗っていながら、動きの端々のきまり具合、ふとした立ち姿の美しさには歌舞伎な…
博多座で上演中の歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』のトークイベントに行ってきました〜! 1時間あまりの楽しいひと時。せっかく撮影タイムがあったのに私の腕がないせいできれいに撮れたのが一枚もない〜 なので、写真のアップはなしです。 出演者の皆さんへのアンケートを基にしたトークコーナー。アンケートになんて書いたか忘れてる人続出なのはご愛嬌として・・・『朧〜』で自分のお役以外に演じてみたい役につい…
博多座に歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』を観に行くと、劇場のそこここに鬼が潜んでた。
『白昼夢の森の少女』 恒川光太郎 きっと多くの読者がそうであるように、恒川光太郎氏の描く幻想的な異界の有り様には「厳しさ」「怖ろしさ」とともに「懐かしさ」を感じてきた一人なんだけども、今回感じたのは「懐かしさ」を通り越して「それ、知ってる」っていう感覚だった。 夏の夜に音もなく山々をよぎる大入道。町の上空に浮かぶ巨大…
『狐花 葉不見冥府路行』 京極夏彦 作事奉行上月監物の一人娘・雪乃の行く先々に姿を見せる美貌の若衆。雪乃はすっかり魅入られ心奪われてしまうが、その若衆の姿を見た雪乃付きの女中・お葉は怖れ慄き病みついてしまう。 紅い彼岸花の柄を着物に染め付けた美しい若衆の話を聞かされ心穏やかでない女が他にも二人。材木問屋近江屋の娘・登…
『小川洋子と読む 内田百�閭Aンソロジー』 内田百�閨^小川洋子編 冒頭に置かれた「旅愁」が何というかもう最強の掴みを見せてくれるのだ。この時点でもう完全に私の魂は百�關謳カと小川洋子氏に引っこ抜かれてしまった。 旅行用に買ったずぼんが寝台車でもぞもぞするうちビリビリと二尺ばかりも裂けてしまった。仕方な…
年末年始を少し外して実家に帰省してきた。 実家からの帰途、最寄りの駅までぶらぶら歩きながら、三年前に亡くなった母の事や一人暮らしをする父のことを考えるともなく考えていると、ふと「親子は一世、夫婦は二世、主従は三世」っていう言葉が浮かんできて、気がつくと頭の中は親の事からそっちの言葉のことに移ってた。 「親子は一世」はわかる。親子関係に「ガチャ」という言葉が出てくるのを見ても、「うん、ま…
『年末の一日・浅草公園 他十七篇』 芥川竜之介 やはり竜之介、優しいんである。 以前、ちくま文庫の作品集を読んだときにも作中の人物たちに注がれる竜之介の細やかな観察眼や控えめな同情にほろりとさせられたのだが、日々の暮らしのなかで人がふと見せる表情、心の揺れを見つめ、思いやり、掬い上げる竜之介の視線は優しい。 しか…
『進撃の巨人という神話』 社会学者、精神科医、漫画研究者、漫画編集者、フリーライター、暗黒批評家・・・8人の執筆者がそれぞれの視点から漫画『進撃の巨人』を語る。 『進撃の巨人』のコミックスはレンタルも交えて全巻読んだのだけど、私はどちらかというとアニメ視聴の方がメインで、連載を追いかけて原作をじっくりむさぼり読んだわけ…
『決戦! 忠臣蔵』 今年はとにかくゴリゴリの「討入り!」が読みたかった。史実云々は脇に置いといて、どフィクションでいいから、忠義の! 侍たちの! 討ち入りが! 読みたかった! シリーズ名に『決戦!』とあるぐらいだから、てっきり吉良vs.赤穂浪士のヒリヒリする駆け引きに熱いバトル! 艱難辛苦の末の命を賭した討入りが! 美し…
『忠臣蔵夜咄』 池宮彰一郎 『四十七人の刺客』や『最後の忠臣蔵』の作者である池宮彰一郎氏が自らの作品執筆や映画化について語ったエッセイや対談集。 『忠臣蔵』を題材にした小説を書かれた作家たちが口をそろえて言う「…
『八犬伝』 監督:曽利文彦 仁義礼智忠信孝悌の珠を持つ不思議な因縁で結ばれた八犬士の運命の戦いを描く『八犬伝』の物語と、その物語を生み出す滝沢馬琴の人生。「虚」と「実」の物語をあざなうように描く。 中途半端感が否めないとの感想を目にすることもあり、ちょっと期待値は低めで観に行ったのだけど、滝沢馬琴を演じる役所広司さん、妻・お百を演じる寺島しのぶさんの演技が素晴らしく、滝…
『歌舞伎座の怪紳士』 近藤史恵 職場での理不尽な体験がもとで心に不調をかかえる久澄。母と姉の手助けを受けながら自宅で家事手伝い生活をしている久澄のもとに、「あまり外出できなくなった祖母の代わりにお芝居を観て感想を書く」という観劇代行のアルバイトの話が舞い込む。 最初に送られてきたのは歌舞伎のチケット。演目は『摂州合邦…
『名もなき本棚』 三崎亜記 朝から感じていた異物感にたまらず咳き込むと喉から転がり出た「部品」・・・『部品』。政府によって確認された「未確認」改め「確認済飛行物体」がしょっちゅう姿を現す街で・・・『確認済飛行物体』。ダブって登録されてしまった個人情報・・・そのどちらが本当の「私」のものなのか・・・『私』。 本を読む…
『好きになってしまいました』 三浦しをん しをんさんのエッセイからは、グツグツと滾り迸るアツすぎる思いや、いかんともしがたいトホホな暮らしぶりが溢れ出していて、いつも「ブフゥッ」と吹き出したり、「うんうん」を通りこして「ガクガク」とうなずいたり、荒々しすぎる鼻息にちょっと引いてしまったり・・・。ともすると胸やけするほどの…
『木島日記 うつろ舟』 大塚英志 「あれ? 『木島日記』の新しいのが出てる? 今?」と思って手に取った。 もう20年以上前になるか・・・『多重人格探偵サイコ』とか『木島日記』とか…
『スナイパー入門』 かのよしのり 実写化きっかけで友人から『ゴールデンカムイ』を薦められて激ハマり。中でも孤高の狙撃手・尾形百之助に感情グチャグチャにされた挙句、そのグチャグチャの感情の持って行き場がなくて迷走した末に、たまたま立ち寄った古本屋の店先で見かけて自分が何を思っているのかよくわからないままに購入してしまったも…
『春風伝』 葉室麟 「今年も梅の花の香る季節になったなぁ・・・」と、ふと思った二月の中頃に読み始めたのだけど、思いのほか頁が進まず、読み終えるのに随分暇がかかってしまった。 高杉晋作モノはなかなか評伝を超える作品に出合うのが難しい。 「春風伝」・・・春を呼ぶ風。まさに春雷のような晋作の姿に胸わななかせたい・・・と…
予約購入していた『THE FIRST SLAM DUNK』のBD(LIMITED EDITION)が発売日の今日届いた。 早速、開封。ディスクや封入された特典を一つ一つ取り出してみる手が、色々とこみ上げてくるもので震える。手に取るすべてから制作者の方々の想いが溢れてくる。尊い。 大切に見続けよう。
江戸川乱歩「人間豹」より 【江戸宵闇妖鉤爪】明智小五郎と人間豹 「分かったぞ、貴様明智だろう。明智小五郎だろう」 「ハハハ……、やっと分かったか。お察しの通りだよ。君をこんな目に合わせる人間は僕の外にはありやしないよ。」 江戸川乱歩「人間豹」 私、原作のこの台詞が大好きなんだけれども。この台詞に表れる二人の関係性〜人間豹・恩田と明智小五郎が互いに…
友人に薦められて今さらだが『ゴールデンカムイ』に激ハマり。 尾形に色々掻き乱されすぎて、帰省先で立ち寄った古本屋さんでこんなもの買ってしまう程度には情緒がおかしくなってる。
『歌右衛門の六十年 ーひとつの昭和歌舞伎史ー』 中村歌右衛門・山川静夫 エンターテインメントの多様化に社会や価値観の急速な変化、そしてコロナ禍。この数年、歌舞伎は大きな変化の波にさらされていると思っていたんだけれども、いやいや、明治維新も戦争も、変わりゆく社会の枠組みも、新しいメディアの誕生も、移り行く人の心も・・・歌舞…
本日、『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映! 雪模様の中、熱い一日を過ごしてきました。 ソーちゃんの姿を見た途端に涙ツーっとこぼれたのには自分でも面食らった。
『地図と拳』 小川哲 日露戦争前夜から第二次世界大戦後の満州の地を舞台に、様々な国家・民族の思惑、個人の利害、因縁がからみあう中で栄え、滅びたある都市の年代記。地図を描き、建築物を生み出し、未来を思い描き都市を創る。都市の歴史に様々な形で関わったものたちの長きにわたる人間ドラマが展開するスケールの大きなエンターテインメン…
『有栖川の朝』 久世光彦 昨年末に読んでいたもの。久世氏の小説を読むのは久しぶり。 久世氏の書くものは熱っぽく湿って少し悲しく、見すぼらしくて哀れだけれども色っぽい。 そこに見えるのが夢という嘘の世界だと思っても、嘘こそが本当なんだよ。 一時、ワイドショーを騒がせた実在の事件を題材に久世氏…
5月以降、気持ちが沈むことが多くて、本を読むのも、絵を描くことも、音楽聴くのも億劫になっていたんだけど(唯一、『SLAM DUNK』だけを動力源に最低限職場には通ってた感じ)、やっと少し気分が上向いて来たので、新しい年に向けてリハビリを開始しました。 まず、本当はもっとハマって楽しみたかった歌舞伎版『刀剣乱舞』鷹之資さんの同田貫。
『歌右衛門の疎開』 山川静夫 自宅を引越すにあたって手持ちの本を整理するから〜という友人の好意に甘えて譲りうけたもの。もともと古本で入手したものとかで、頁の端は茶色く焼けていて、手に取るだけで、ちょっとノスタルジックな気分が湧いてくる。 そして頁を捲るごとに見えてくるのは、セピア色の画面に浮かぶ、懐かしく、慕わしき人…
『不忠臣蔵』 井上ひさし 世に名高い『忠臣蔵』。華々しく語り継がれる赤穂浪士による吉良邸討入の陰に、一度は義盟に名を連ねながら、自らの意志で、あるいは運命の巡りあわせによって脱盟していった者たちがいた。世に不義士と呼ばれることとなった者たちの真実を語る銘々伝。 語り手は不義士本人であったり、縁ある人物であったり、ただ…