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勝鬨美樹
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2020/12/27

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  • 巨石群から吹く風/ロワール川ワイン散歩#39

    コンディウィンクム(Condevincum)と呼ばれたナントは、聖シミリアンが布教活動を始めたときには、すでに古代都市として重厚な歴史を刻んでいた。 東から尾根伝いにやってきた新石器人が、この地で巨石文明(Mégalithisme)を紡ぎ、独自の文化圏を七千年ほど前から築いていたからだ。若きシミリアンが歩いた石畳の、さらにその下には、六千年以上もの記憶の層が折り重なって眠っていた。 それを実感したのは、たぶんこの旅の前年、レンヌを訪れた際に、ブルターニュ南東部のカルナックを歩いた記憶が身体の奥底に残っていたからだと思う。あのとき、僕は初めて巨石文明というものを、自分の足で歩き、空気を吸

  • 聖シミリアン教会02/ロワール川ワイン散歩#38

    教会を出ると、再び雨が少し降り出していた。傘は差さなかった。鐘楼を振り返りながら、この丘に1500年眠る聖人の眼差しを想った。 彼が歩いたケルト人の都市は、ローマの残響とケルトの霊性が交錯した都市だった。 まだまだ偉大な帝政ローマの残照は、街の構造に色濃く残ってはいただろうが、西ローマ帝国の衰退は数千キロ離れたこの都市にも伝わり、都市は再び部族的な構造へと揺り戻されつつあった。行政機構はすでに崩壊しており、ローマ属州の統治官をなし崩し的に引き継いだ司教(episcopus)が都市の秩序維持者となっていた。つまり、シミリアンが足を踏み入れたナントは「司教都市(civitas episc

  • 米製ソブリン・ウェルス・ファンドについて03/思考実験:米製SWFを市場はどう見るか

    ある朝、アメリカの大統領がホワイトハウスの記者会見室でこう口にしたと想像してみよう。 「我々は、国家のために投資を行う。自由と繁栄を守るために、アメリカ製ソブリン・ウェルス・ファンドを創設する」 この宣言は、市場にとって“稲妻”のような衝撃をもたらす。なぜなら、それはアメリカという国が自ら信じてきた「民間の力こそが市場を導く」という神話が崩れるときだからだ。 ①第一波:反射的ショック。使い慣れた資本主義の原理が揺らぐ 最初に起きるのは、理念的な拒絶反応だ。 株価は乱高下し、ドルには売り圧力がかかる。ウォール・ストリートでは「これは社会主義だ」「国家資本の台頭はアメリカの終わりだ」とい

  • 米製ソブリン・ウェルス・ファンドについて02

    そのトランプ的SWF構想を、僕は三つの柱で予測している。 ① 国内再工業化への直接投資 最大の狙いは、「アメリカの再工業化」だ。 第1期のトランプ政権では「工場をアメリカに戻せ」と叫び、規制緩和や法人税の引き下げなど、民間誘導型の政策で製造業を呼び戻そうとした。 しかし、それだけでは不十分だった。資本は相変わらず中国やインド、あるいは中南米に流れ続け、米国内の製造基盤は戻りきらなかった。 だからこそ、次は「国家が直接、製造業の資本になる」という選択肢が現実味を帯びてきている。 この局面において、SWFは極めて有効なツールとなる。 インフラ、基幹産業、戦略技術分野に対して、国家が民間の空

  • 米製ソブリン・ウェルス・ファンドについて01

    アメリカという国には、建国以来、根深い不文律がある。それは「政府は市場を直接運用すべきではない」という感覚だ。 この原則は、単なる経済理論ではなく、もっと感情的で道徳的な観念に近い。 政府が企業に出資したり、資産を積み上げたりする行為は、アメリカ人にとって「自由市場の敵」であり、まるで社会主義のようだという拒否反応を引き起こす。 アメリカが長らく信じてきた「小さな政府」の理想。その奥には、中央政府が「富を蓄える」ことへの根源的な嫌悪感がある。まさに“反社会主義アレルギー”とも言える情念だ。 だからこそ、これまでアメリカには、ノルウェーや中国のような政府系ファンド(ソブリン・ウェルス

  • ウォルマートの「Grow with US」

    2025年4月29日。ウォルマートは、サム・ウォルトンが40年以上前に築いた伝統を基に、中小企業に成功のための新たなツールと道筋を提供する「Grow with US」などの新しいプログラムを通じて、アメリカ製製品へのサポートを拡大してきた。 そしていまウォルマートは「Grow with US」と近々開催される「2025 Open Call」を通じて、米国を拠点とする起業家が小売業の複雑な状況をより簡単に把握し、自社製品を全国展開できるように支援すると発表した。 https://corporate.walmart.com/news/2025/04/29/grow-with-us-how

  • 加藤さんがみせた財務省的発想の“通貨外交古典芸能”

    財務大臣・加藤勝信は、米国債の売却が「交渉カードとしてはあり得る」とTVで言った。すぐに大きなニュースになってる。 なぜ「今」そんなことを、本邦財務大臣TVで言ったのか?その「日本政府の意思」は誰が描いているのか? この背後に顔の見えない“財務省構造”が見えませんか? "その"部署で、政治と市場への許容値」と「撤回可能性」が常に管理されていることが分かりますね。日本の往くへき道を決めているのは官吏だということ・・ だけどそれって・・日本の財務官僚機構の内部構造と、政治との接合点が見えないと分かりにくいかな‥と思った。 https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/nms/

  • その逆鱗に触るのか?

    プーチンは第二次世界大戦終結記念日およびロシアの主要な国民的祝日の80周年を迎え、プーチン大統領は先週、5月8日から11日までのウクライナでの3日間の一方的休戦を宣言した。 ゼレンスキーはこれを非難し、むしろなぜロシアがなぜ直ちに30日間の停戦を宣言しないのかと言う。ウクライナが3日間の停戦に応じるつもりがあるかどうかについては言明しなかった。 それどころか5月9日にモスクワで行われる戦勝記念日のパレードを妨害する可能性があると示唆した。 同日は習近平が同席することになっている。 Zelensky hinted that he could disrupt the Victor

  • 迎える社会と使う社会・日本人と外国人労働者の境界線#02

    移民が都市を変えるように、都市も外交を変えていきます。シドニーやメルボルンにインド系のコミュニティが根づき、その子どもたちが現地の教育を受け、社会の一員として育っていく。それは文化的な融合であると同時に、国家間の関係性を足元から強固にしていくプロセスでもあります。 そんなことをつらつらと考えながら、ふと、翻って日本はどうなのだろうか?と考えました。 日本の移民政策には、まだ“場当たり的”という印象しかありません。もちろん日本でも少子高齢化は深刻で、労働人口の減少への対応は長年議論されてきました。しかし、それに対する答えとして本格的な移民政策を掲げた政権は、これまで一度も存在しません

  • 迎える社会と使う社会・日本人と外国人労働者の境界線#01

    昨日、ある記事を読んで、思わず「とうとうここまで来たか」と呟いてしまいました。 「オーストラリアで、インド系移民の数が英国系を上回る」という内容の記事です。 なるほど、とは思いましたが、正直なところ意外ではありませんでした。なぜなら、僕自身がかつてシンガポールで原材料投資の仕事をしていたころから、オーストラリアという国の“変わり方”をじわじわと感じていたからです。 Indians set to overtake Brits as top Aussie migrants India is poised to overtake the United Kingdom as the

  • 米国ウクライナ資源協定#02

    僕の全くの私見だが――ロシアは「静観、あるいは協働の姿勢」をとり、中国は「口先だけの抗議、あとは無視」で進むと見ている。 おそらくだが、ここまでチェスの駒を進めるには、トランプはプーチンと相当の会話を交わしていると思う。外交記録に残ることのない、しかし核心に触れるようなやりとりだ。つまり、ロシアはすでにこの件に関して“内々の了解”を得ているのではないか。トランプ政権との間で、非公式な合意――あるいは少なくとも「波風は立てない」という程度の共通認識ができていると、僕は確信している。 なぜなら、ロシアにとって最も利益があるのは、ウクライナでのレアアース開発に参与することそのものだからだ

  • 米国ウクライナ資源協定#01

    ちなみに・・・載せた写真は、この間バチカンで、二人が対面で話し合ったときのもの。 これほどのネゴができる大統領が、今世紀のアメリカにいたか? 昨日4/30の米国とウクライナが希土類鉱物を中心とした資源協定にようやく署名したというニュースを見て思ったこと。 https://www.axios.com/2025/04/30/ukraine-minerals-deal-signing TVの仕掛けにノって、祀り上げたヒーローが起こした不始末を、ようやく手じまいさせるのか・・と。それもヒトサマの手で。そうため息が出た。 それはさておき、この報道で、最も見つめるべきは、この合意にウクラ

  • サン・シミリアン教会Nantes/ロワール川ワイン散歩#37

    朝のナントは静かだった。 小雨が上がったばかりで、街を濡らした石畳がまだ鈍く光っている。分厚い雲に覆われた空からは柔らかな光が差していたが、空気にはほんのりとした肌寒さがあった。コーヒーの香りの余韻を残したまま、僕はホテルの重い扉を押して外へ出た。 朝一番に目指すは、サン・シミリアン教会(Pl. St Similien, 44000 Nantes)とタランサック市場 Marché de Talensac(Rue Talensac, 44000 Nantes)だ。 地元の人々が日常的に通う場所を訪ねるのが、僕の旅の中で大切にしている街歩きのコツだ。 ホテルの横を走るジャン・ジョレス通り

  • ラディソン ブル ホテルNantes/ロワール川ワイン散歩#36

    目覚めは早かった。ベッドから起き上がると、石壁に触れた指先にひんやりとした冷たさが伝わってきた。寝起きのまま窓の外を見ると、ガラスにはうっすらと雨の跡が残っていた。 このホテルは、かつて司法宮だったと、ドライバーのムッシュM氏が言っていた。僕は重厚な窓枠にもたれ、カーテンを少しだけ横に引いて街を見下ろす。雨はそろそろ止みかけていた。ホテルを囲むように立つ樹木は濡れそぼり、地面のあちこちにできた薄い水たまりには、森と空の灰色が映り込んでいる。風に揺れて、水面も木々も静かに波打っていた。 その先の低層の建物の壁面も、雨に濡れてしっとりと濃い色を帯びている。その下を、通勤途中だろうか、コー

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