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書に耽る猿たち
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https://honzaru.hatenablog.com/
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本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。
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ブログ村参加:2020/02/09

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書に耽る猿たち

本猿さんの新着記事

1件〜30件

  • 『熱源』川越宗一/極寒の地に生きるための熱がこもる

    『熱源』川越宗一 文藝春秋 2020.2.15読了 先月発表になったばかりで、どの書店にもうず高く積み上げられている第162回直木賞受賞作。発表後、芥川賞は受賞作品なしにするかという話にもなり難航したようだが、直木賞については満場一致で『熱源』だったとの記事を読んだから、絶対読もうと思っていた。 馴染みのない樺太アイヌのこと、サハリン島のことが壮大な雪景色と共に語られる。犬橇やトナカイと聞くだけで極寒の地域が目に浮かぶ。フィクションとは言えど史実を元にしたこの小説は、あまり今まで読んだことのない題材だったため、最初から最後まで飽きることなく楽しめた。 樺太出身のアイヌで幼少期に北海道に住んだヤ…

  • 『夜の歌』なかにし礼/過去の作品と重なる自伝小説

    『夜の歌』上下 なかにし礼 講談社文庫 2020.2.11読了 なかにし礼さんの自伝的小説だ。26歳で入院した時にゴーストという存在に初めて出会い、過去と現在とを行き来するストーリーになっている。この作品は雑誌に掲載されたようだが、書き始めたのも、度重なるがんに侵され、生き方を考えさせられたからだ。がんだけではなく闘病の結果強くなった人間は、見えてくるものが違うのだろう。涅槃の境地を感じたり目に見えない力を信じることは、こういった死の淵を彷徨った人だからこそ生まれる気がしてならない。 冒頭の「穿破(せんぱ)」を恐れるシーンは圧巻で作品に前のめりになる。穿破とは、がん細胞が隣接する多臓器の壁膜を…

  • 『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン/自然界の猛威に立ち向かう男たち

    『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン 村上博基/訳 ハヤカワ文庫 2020.2.9読了 海洋冒険小説として世界一有名な小説は、メルヴィルの『白鯨』だろう。読んだのは4〜5年前だろうか。世界の十大小説の一つだし読んでおくかという単純な動機だった。白鯨モディ・ビックに立ち向かうエイハブ船長の勇気に賞賛を感じたが、なにぶん小説(訳だろうか)の古さは否めなかった。 本作はスコットランドでマクリーンが1955年に発表し、大きな反響を及ぼした。日本では1960年代に刊行され、海洋冒険小説として絶大な地位を固めたようだ。連合軍輸送船の護送にあたる英国巡洋艦ユリシーズ号と、そこに乗り込む船員(男た…

  • 『昼の家、夜の家』オルガ・トカルチュク/豊かな観察眼で物事を見つめる

    『昼の家、夜の家』オルガ・トカルチュク 小椋彩/訳 ★ 白水社EXLIBRIS 2020.2.7読了 去年はノーベル文学賞が2作品発表された。2018年度と2019年度分で、オルガ・トカルチュクさんは2018年度として受賞。2019年度受賞のペーター・ハントケさんの本はあまり惹かれなかったのでオルガさんのものに。2冊あったが、表紙のイラストが鮮やかでかわいい本作を読むことにする。やはり、表紙って重要なんだなぁ。発表直後には、何故か本屋さんは消極的だった。 honzaru.hatenablog.com なかなか読み心地が良い。センテンスごとに長さの異なる文章が並び、それらの挿話が束になり連作短編…

  • 『淳子のてっぺん』唯川恵/山屋にとって登山は生きること

    『淳子のてっぺん』唯川恵 幻冬舎文庫 2020.2.2読了 女性で初めてエベレストに登頂した登山家、田部井淳子さんの生涯を元にした小説だ。私は登山といえる登山はしたことがない。小中学生の時に林間学校で山に登ったり、散策がてら高尾山や熊野古道を登った位である。いつか富士山の御来光を見てみたいと思ってはいるけれど、この歳になると登頂出来るほどの体力気力があるかどうか。 淳子は幼い頃から登山の魅力に取り憑かれ、社会人になってから男だらけの山岳部に入部したり、女性同士でタッグを組み登り続けた。今でこそ女性の登山家は多いが、昭和初期は何をするにも女性に偏見があり、認めてもらうのに相当な苦労があったと思う…

  • 『フィデル誕生 ポーラースター3』海堂尊/カストロ父子とピノ・サントスの物語

    『フィデル誕生 ポーラースター3』海堂尊 文春文庫 2020.2.1読了 ここ1~2週間は頭の中が南米モードである。ポーラースターシリーズ第3巻。ゲバラの話が続くのかと思ったら、突然フィデルの話になった。フィデル・カストロの父アンヘル・カストロの生い立ちから遡る。親友となるピノ・サントスのほうが聡明で先見の明があり、魅力的だ。アンヘルは女にもだらしなく正直魅力には欠けるのだが、周りがほっておけなくなる何かを持っているのだろう。 正妻との子ではなく、別の女性との間に産まれた子が後の革命家フィデル・カストロだ。フィデルの話が3巻の中の第2部となるが、ここからは面白くなった。2巻から気になっていたの…

  • 『ゲバラ漂流 ポーラースター2』海堂尊/ラテンアメリカの近代史を学ぶかのように

    『ゲバラ漂流 ポーラースター2』海堂尊 文春文庫 2020.1.30読了 前回読んだポーラースターシリーズの第2巻である。医師免許を取得したゲバラが、再び旅に出る。今度は1人で。しかし途中から太っちょロホ弁護士と再会し、なんの因果か一緒に行動をすることになる。このロホが厄介な人物でゲバラともそりが合わないのだが、至る所で助け合う格好になってしまう。しかし、1巻のピョートルが魅力的過ぎて今回の相棒はどうにも好きになれなかった。 なんだろう、中南米の近代史を勉強している気分だった。高校時代に習った世界史でも、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国等はよく覚えているが、中南米の歴史ってあまり詳しく習わな…

  • 『ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊/自由奔放なゲバラとピョートルの冒険

    『ゲバラ覚醒 ポーラースター1』海堂尊 文春文庫 2020.1.25読了 キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラ氏といえば、どんな人物かそして何をしたのかを具体的に知らなくても、星のマークとその精悍な顔つきから壁画やマークになっており誰もが目にしたことがあるだろう。実は私も詳しく知らなかった。何年か前に没後50年だかで話題になっていて気になっていた。この小説は海堂さんがゲバラ氏の生涯を元に小説にしたシリーズの第1巻だ。大好きな小説としてゲバラ氏を理解しかつ楽しめるなんて私にうってつけだ。 革命よりはるか前の青春時代に、モーターサイクルで南アメリカを旅したゲバラ氏の自伝が有名だが、この1巻はその時代を…

  • 『手のひらの京』綿矢りさ/目に見えない土地の力

    『手のひらの京(みやこ)』綿矢りさ 新潮文庫 2020.1.22読了 なんとなく手にして読んだ本。作者の綿矢さんがまさに京都出身で、初めて京都を舞台にして書いた小説だ。私が初めて京都に行ったのは中学生の時の修学旅行。その後も何度か訪れて、他の人と違わず私も京都の佇まいが大好きなのだが、最近はどこに行っても観光客ばかりでちっとも落ち着いて楽しめない。京都に限らないけれど、旅行過多で本来の旅の楽しみ方ができなくなっているようで、なんだか淋しくなる。 京都に住む三姉妹が主人公の物語。長女の綾香、次女羽依(うい)、三女凛。性格だけでなく人や社会への接し方も異なる3人だが、決して仲は悪くなく理解し合い助…

  • 『オリヴァー・ツイスト』チャールズ・ディケンズ/生まれ育った環境にも屈しない善良な心

    『オリヴァー・ツイスト』チャールズ・ディケンズ 加賀山卓朗/訳 新潮文庫 2020.1.20読了 イギリスの小説は大好きである。ディケンズ、ブロンテ姉妹、サマセット・モーム、ヘンリー・ジェイムズが描くような、古き良き時代の格調高い英国の雰囲気漂うものが。 孤児として救済院に預けられたオリヴァーは、葬儀屋に引き取られるがそこから逃げ出す。ロンドンにほど近い街で窃盗団の仲間に入ることになる。そこで窃盗を働いた2人の仲間の代わりに追いかけられたオリヴァーの姿は、まるで去年観た映画『ジョーカー』の冒頭、追いかけられるピエロ(アーサー)を連想してしまった。善良な者は、いつも騙されて汚名をきせられる。 犯…

  • 『マイ・ストーリー』ミシェル・オバマ/自分のことを知り、語り、相手を受け入れれば道は開ける

    『マイ・ストーリー』 ミシェル・オバマ 長尾莉紗・柴田さとみ/訳 ★★★ 集英社 2020.1.18読了 世界45言語で翻訳され、1千万部突破のベストセラー。前アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマ氏の妻、ミシェル・オバマさんの自伝である。現在のトランプ大統領の前までは8年間オバマ氏が大統領を務めた。初の黒人大統領だったこともあり世界から注目を集めていたが、その柔らかで落ち着いた表情と颯爽と歩くスマートな姿、そして力強いスピーチを目にする度に、私もオバマ氏に良い印象を持っていた。その妻のミシェルさん。写真の彼女のなんと輝いていることか。眩しいほどの自信と強さに満ち溢れている。 この本は3つの章に…

  • 『堆塵館』エドワード・ケアリー/ケアリーの世界へようこそ

    『堆塵館(たいじんかん) アイアマンガー三部作1』エドワード・ケアリー 古屋美登里/訳 東京創元社 2020.1.13読了 確かに書店に並んでいた時からこの表紙は印象深かった。でも、幻想文学かな、子供向けなのかな、となかなか読むまでに至らなかったのだ。しかし、つい先日ケアリー氏の『おちび』という新刊が出たから調べてみると、このアイアマンガー三部作がとても評判が良かったので、まずはこちらからと思い読んでみた。 この小説、確かに面白い!ごみ屋敷?ごみで作られた館?そこで暮らす一族の変な名前と設定が奇想天外なのだけれど、一度ハマったら最後、抜け出せなくなる類の本だ。不思議なおとぎ話。アイアマンガー一…

  • 『若冲』澤田瞳子/奇抜で美しい独特の絵を描き続けた

    『若冲』澤田瞳子 文春文庫 2020.1.11読了 数年前に上野にある東京都美術館で開催された「若冲展」、行きたいと思っていたのだが、4時間も並ぶのは耐えきれないなと結局行かずに終わってしまった。数点は何かの展示会で観たことはあるが、若冲氏の作品を飽くまで眺めたり、壮大な作品を生で観る機会はまだない。 伊藤若冲氏の絵がどんなものなのかは誰しもが知っていると思う。名前は知らなくても、見たことは必ずあるはず。鮮やかな色合いで描かれた濃密で精緻な絵。人物の絵はなく、ほとんどが鳥や動物、植物など。中でも鳥の作品が多い。観る者を魅了する、力強く熱い絵画なのだが、私は少し不気味にも感じる。 この小説は、若…

  • 『赤い髪の女』オルハン・パムク/父と子の物語、見つめる母

    『赤い髪の女』オルハン・パムク 宮下遼/訳 早川書房 2020.1.9読了 ★ 私の敬愛するオルハン・パムク氏の新作だ。思えば、トルコに興味を持つようになったのも、彼の『僕の違和感』という作品を読んでからだった。街に響き渡るボザ売りの声を生で聴きたいと心から思ったものだ。「ボーーザーーー」 時は1980年代、トルコ・イスタンブールが舞台である。父親が失踪して母と2人になり貧しくなったジェムは、お金を稼ぐために井戸掘りの仕事を始める。そこで師匠となるマフムト親方に出会い師弟関係が芽生える。ジェムにとっては、父と子の関係にも思えるほどの愛情と叱咤激励を浴びる。それにしても、井戸を掘る仕事についてこ…

  • 『孤独の発明』ポール・オースター/孤独でないと物語は書けない

    『孤独の発明』ポール・オースター 柴田元幸/訳 新潮文庫 2020.1.6読了 年末に読んだ『ムーン・パレス』に次いで、オースター2作目である。本作品は、作家として名を馳せる前に書かれたもののようで、初期の作品と言える。この物語は大きく2部構成になっている。 私は元々、ある人物の過去や生い立ちをなぞるシーンが好きである。2部構成の前半は「見えない人間の肖像」というタイトルで、亡くなった父親の家を整理しながら、父親が本当はどんな人物だったのかを探っていき説明するような印象だ。オースターの自伝に近いのか?と思いながら読み進める。父親の父親(つまり祖父)が大きな鍵となるのだが、事件を紐解くような感覚…

  • 『また、桜の国で』須賀しのぶ/激動の時代を生き抜いたポーランド

    『また、桜の国で』須賀しのぶ 祥伝社文庫 2020.1.5読了 名前もよく見かけるし、少し前から気になっていた作家の1人だったが、ライトノベルで有名な人だし、と億劫になっていた。しかしここ数年は一般文芸書を執筆しているようで、数年前の直木賞候補になった本作が文庫になったので読むことにした。 ポーランドと言えば、たいてい思い浮かべるのはショパンだろうか。私にとってはキュリー夫人だ。小学生の頃、世界の伝記シリーズか何かを読んでいて、その中にキュリー夫人について書かれていた本があったのだ。女性で初めてノーベル化学賞を受賞した人。 この小説の舞台は、約100年前の1930年代だ。外務書記生棚原慎(タナ…

  • 『トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇』トルストイ/人間の本質を見極める

    『トルストイ民話集 人はなんで生きるか 他四篇』トルストイ 中村白葉/訳 岩波文庫 2020.1.2読了 トルストイの晩年の短編が収められている。長編はほとんど読んでしまっているため、最近は短編を読むことが多い。ここにある5編はどれも数十ページ程で内容的にも読みやすい。スケールが大きく登場人物が多い『戦争と平和』に比べると同じ作者とは思えない程だ。 事故や病気など何らかの事情がない限り、人間は産まれた時は赤ちゃんで、その後少年期を終え青年期壮年期老年期へと進み死に至る。たいていの人が青年期壮年期に大きな成功を収めたり、人間として熟すことが多い。そこからは産まれたの赤ちゃんに少しずつ戻っていくか…

  • 『ゲームの王国』小川哲/洞察力に優れた登場人物に魅せられる

    『ゲームの王国』上下 小川哲 ★ ハヤカワ文庫 2020.1.1読了 いつも帯に騙されるから、大きな期待はせずに(でも新聞やネットで絶賛されているから少しだけ期待)いたけれど、本当にすごい才能の方が現れたと私も思った。そもそも私自身、個人的にSFに苦手意識があるのだが、「日本SF大賞」だけでなく「山本周五郎賞」を受賞していているようで、読みやすいのかなと思い読む気になった。 カンボジアが舞台の作品自体初めてだ。ポルポト政権の大虐殺など言葉は知っているが、恥ずかしながら詳しい政治事情には正直疎かった。小説とはいえ、事実を元に作られたフィクションだから、史実ももちろんある。 実は、私は7〜8年前に…

  • 『書楼弔堂 炎昼』京極夏彦/古典文学の指南書

    『書楼弔堂 炎昼』京極夏彦 集英社文庫 2019.12.28読了 シリーズ1弾を読んだ時も思ったのだが、この小説は、文学や芸能において、昔の優れた人物や本を紹介する指南書のように思う。 本作品も連作短編のような形式を取り、章ごとに人物の紹介がなされる。とはいえ、弔堂(とむらいどう)を訪れた時点ではまだ名もない人物であり、のちに著名になるのだ。弔堂に足を踏み入れて、書店主が選んだ一冊を手にした者はそうなる運命にあるかのように。章の最後に、著名になったその人物名が明かされる。だいたい途中から想像できるのだが、読者に謎解きを楽しんでもらおうという、京極さんなりの遊び心がうかがえる。 書楼弔堂という書…

  • 『ムーン・パレス』ポール・オースター/何度も読み返したい本

    『ムーン・パレス』ポール・オースター 柴田元幸/訳 ★★ 新潮文庫 2019.12.26読了 なんて心地良いんだろう。読んでいる時間が愛おしくなる。ポール・オースターの名前はもちろん知っていたが、実はまだ読んだことがなかった。もっと早く読めばよかった!こういった自分に合う作家に出会えた時の瞬間は、本をよく読む人にとってはどんなに喜びに満ちたものか、そして大切なものかわかると思う。 黒い表紙に月の輪郭がうっすら。この表紙を見ただけでは、この小説がどんなものか予想だに出来ないだろう。叔父を亡くして血縁者がいなくなったマーコは、自暴自棄になり公園で自堕落に過ごすようになる。親友を探している時にキティ…

  • 『錨を上げよ』百田尚樹/知性を持った破天荒な作田又三の冒険

    『錨を上げよ』 百田尚樹 ★ 〈一〉出航篇 〈二〉座礁篇 〈三〉漂流篇 〈四〉抜錨篇 幻冬舎文庫 2019.12.23読了 百田尚樹さんの自伝的小説が文庫本になった。百田さんおなじみの幻冬舎である。幻冬舎のイメージがあるのは、やしきたかじんさんのフィクションと謳われたあの問題作『殉愛 』があったからだろう。第1巻末には幻冬舎社長見城徹さんの解説があった。出版社の代表が自らあとがきを書くことはあまりないのではないか。2人は互いに尊敬し合い、プライベートでも仲が良いのだろう。 それにしても、これを29歳の時に書いたとなると驚きだ。百田さんは50歳の時に『永遠の0』で小説家デビューしたが、その20年…

  • 『幻夏』太田愛 / 冤罪によるその後の人生

    『幻夏』太田愛 ★ 角川文庫 2019.12.17 読了 先月読んだ『犯罪者』シリーズの2作目である。1作目を読んだのが1か月前だし、その後家族に貸して本についても会話をしたからか、内容はほぼ鮮明に覚えている。今回の話は、交通課刑事、相馬に視点をおいた物語だ。 世田谷区内で起きた少女連れ去り事件の応援要員として捜査にあたる相馬。一方で、友人で興信所に勤める鑓水(やりみず)の元には、23年前に消えた息子を探して欲しいと依頼が入る。これらが実は全て繋がっていて、相馬の23年前の夏の思い出と共にシンクロするストーリーだ。 冤罪という重くのしかかるテーマを、太田さんは突き詰めて書いている。冤罪のため長…

  • 『現代語古事記』竹田恒泰/日本最古の歴史書は、特に神の代(神話)がおもしろい

    『現代語古事記 ポケット版』竹田恒泰 学研 2019.12.14読了 美容院では、いつも雑誌は読まずに本を持参する。最近そういう人は少ないようで、昔通っていたサロンの美容師さんに言われた。その時に本の話になり、その方に薦めてもらったのが、『古事記』だったのだ。ひょんなことから読み始めたそうで、意外に興味深いですよ、と言われたので、かれこれ数年頭の片隅にあった。その方は生まれ故郷に帰り、自分の店をオープンさせたからもう会っていない。今思えば、誰の書いた(訳した)古事記か聞いておけば良かった。 何十種類もある中から選んだのが、竹田恒泰さんの本だ。古事記を読んだ人なんて身近で聞かないため、色んなサイ…

  • 『奇蹟』中上健次/骨太で濃密な文体を堪能する

    『奇蹟』中上健次 河出文庫 2019.12.12読了 この本は、私の家にある「これから読む本たち」の箱に3~4年前から入っていた。いわゆる積読状態。一つ前に読んだ対談集に、中上健次さんの名前がちらほら挙がっていたので、気になって読むことにした。なんでも、村上春樹さんが言うには、あの時代(1970~80年代)は中上健次さんが文豪でひときわ目立った存在だったらしい。現代には中上さんのような小説家はいないとまで言っていた。昔、『岬』と『枯木灘』を読んで以来だ。濃密な文章と、血生臭さがつきまとう中上さんの小説。特別好きというわけでもないが、他の人には書けない凄みがある。 『奇蹟』は、読んだ2冊と比べる…

  • 『みみずくは黄昏に飛びたつ』川上未映子・村上春樹/小説は信用取引で成り立つ

    『みみずくは黄昏に飛びたつ 川上未映子 訊く/村上春樹 語る』 川上未映子・村上春樹 新潮文庫 2019.12.10読了 村上春樹さんの小説のなかで、私の一番のお気に入りは、『騎士団長殺し』である。刊行されたのとほぼ同じくして、この対談集も単行本で書店に並んでいた。その時から早く読みたいな~と思っていたのだが、パラパラと捲ると、すぐ読み終わりそうだったので単行本は諦めて、文庫本を気長に待つことにした。そしてついにその時がやってきた。 この2人のタッグはほんとうにわくわくする。村上春樹さんも川上未映子さんも大好きな作家で、2人の作品はほとんど読んでいる。なんというか、同じ部類に属している感じがす…

  • 『沈黙法廷』佐々木譲/裁判を傍聴してみたい

    『沈黙法廷』佐々木譲 新潮文庫 2019.12.9読了 佐々木譲さんの『警官の血』が面白くて、一時期は佐々木さんの本をよく読んでいたのだが、数年ぶりである。ちなみに、『警官の血』は、ビートたけしさん主演でドラマ化されたが、それも結構面白かった。 今回の小説は法廷ものだ。とはいえ、佐々木さんが得意とする警察小説の要素が盛りだくさんである。三章に別れており、それぞれの章に、捜査、逮捕、公判とタイトルがある。3分の2が警察を中心とするものだからか、警察小説と思えてしまうのだろう。 60代独り暮らしの男性の強盗殺人を巡り、1人のハウスキーパーが容疑者となる。容疑者の山本美紀の周りには過去にも不審な死が…

  • 『この世の春』宮部みゆき/時代ものファンタジー、するりと物語世界へ

    『この世の春』上中下 宮部みゆき 新潮文庫 2019.12.6読了 宮部みゆきさんの小説を読むのは久しぶりである。『小暮写真館』以来か、はたまた、文庫で読んだ『荒神』以来かもしれない。何となく、宮部節を読みたくなり手に取った。 今回の小説は時代小説だ。作者生活30年記念とあるけれど、こういった、〇年記念に、とか節目に、と意気込んで書かれるものって何となく期待はずれなものが多い気がする。特に期待はせずに読み始めたら、なんとするりと物語世界に入れたことか。宮部さんは導入部がとても上手いと思う。ひとまず、読者を物語世界に引き込むことが出来るから、ほとんどの人が途中で投げ出すことはないのではないか。 …

  • 『眞晝の海への旅』辻邦生/辻さんが書くとミステリーにならない

    『眞晝(まひる)の海への旅』辻邦生 小学館P+D BOOKS 2019.12.1読了 大好きな辻さんの文章を味わいたくて手に取る。この作品は、元は新潮文庫にあったようだけれど、今はP+D BOOKSでしか刊行されていないようだ。紙質はいいとは言えないけれど、安価で手に入るので良い。ただ、大型書店に行かないとこのレーベルの本は置いていない。本当は電子書籍にすればいいのだけれど、私はまだ紙の本で読んでいたい派だ。 honzaru.hatenablog.com これまでに読んだ辻さんの小説とは違った。初期の作品はこんな感じなのだろうか。一番の違いは、すらすらと読みやすいことだ。海と船を愛する若者たち…

  • 『服従』ミシェル・ウエルベック/政治への服従、男女間の服従

    『服従』ミシェル・ウエルベック 大塚桃/訳 河出文庫 2019.11.28読了 先日読んだ『プラットフォーム』に次いで、ウエルベックは2冊目である。1冊読んで、なんとなく読んでいて私にはしっくりくる空気感だった。いつも言っている、読み心地のこと。 2022年のフランス大統領選で、イスラム政権が誕生するという、あり得ないような話が軸となる。主人公フランソワは、大学教授であり政治とは距離を置くが、テレビで見る大統領選には俄然興奮するという人物。 私自身フランスの政治には疎いが、ド・ゴールのレジスタンス(自由な国フランス)のイメージが強い。だから、自由や平等と対極にあるような、信仰を持つイスラム政権…

  • 『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』トルストイ / トルストイの中編小説を噛み締める

    『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』 トルストイ 望月哲男/訳 光文社古典新訳文庫 2019.11.25読了 トルストイの後期中編が2作収められている。私はロシアの小説家ではドストエフスキーよりもトルストイの方が好きだ。まだ、ドストエフスキーの高みを理解するまでに自分が到達できていないのかもしれず、いつかは逆転するのだろうか、という期待がなくもないけれど。どちらも世界を代表する文豪であることは周知の事実だ。 『イワン・イリイチの死』は、ある控訴院判事が自分の死を悟ってからの約3ヶ月間の、精神と肉体が衰える様と、死を直前にして悟るまでの姿が描かれている。これは、誰かモデルとなる人物がい…

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