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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『しをかくうま』九段理江|日常的な言葉遊びが物語になった

    『しをかくうま』九段理江 文藝春秋 2024.04.23読了 九段理江さんの書く斬新な物語世界が好きだ。突拍子もない設定と、ユーモラスなのに冷酷とも思える言葉遊びの数々。でも、この小説は万人に受ける作品ではないと思う。競馬の実況をする男性が主人公で、何やら馬の名前の文字数が9文字から10文字に変わることから、やいのやいのと疑問を持ち始める。 相変わらず九段さんはカタナカ言葉に魅力を感じているし、言語の置き換えがお好きなようである。彼女は常日頃から言葉遊びをしていて、頭の中で普段考えていることをそのまま小説にしちゃったんじゃないかという作品だ。いやぁ、難解だった。 九段さんの文章は、すごく読みや…

  • 『1984』ジョージ・オーウェル|人は愛されるよりも理解されることを欲するのかも

    『1984』ジョージ・オーウェル 田内志文/訳 KADOKAWA[角川文庫] 2024.04.22読了 文庫本の表紙はルネ・マグリットの絵である。顔の前にあるりんごのせいでよく見えないが、実はよーく注視すると左目が少しだけ見えていて薄ら怖い。人から常に「見られている」という警告、ビッグ・ブラザーにすべてを監視されているという近未来。テレスクリーンにより昼夜を問わず監視されているこの世界だけれども、人の心の中までは見ることができない。人の考え、心の奥底にある、本人にすら謎に満ちている思考は外からはわからない、はず…。 何度読んでもおもしろい。こんなにスリリングで刺激的な作品があるだろうか。しかも…

  • 『ドードー鳥と孤独鳥』川端裕人|好きなことに真剣に取り組めばそれだけで楽しい

    『ドードー鳥と孤独鳥』川端裕人 国書刊行会 2024.04.17読了 なんて素敵な装幀なんだろう。これこそまさにジャケ買いに近い。本の美しさを最大限表現しているし函入りというのがまた良い。国書刊行会は値段も良いけれど装幀にはかなり凝っていて、紙の本が廃れないようにという強い気概が感じられる。うっとりするような本に一目ぼれし刊行されてすぐに買っていたがあたためていたままだった。先日、はてなブログで読者になっている方の記事を読んで思い出した。 orbooklife.hatenablog.jp 房総半島の田舎町で小学生のうちの約3年間を過ごしたタマキ。自然あふれるこの町には「つくも谷」と「百々谷(ど…

  • 『TIMELESS』朝吹真理子|たいせつになったなりゆき

    『TIMELES』朝吹真理子 新潮社[新潮文庫] 2024.04.15読了 朝吹真理子さんの芥川賞受賞作『きことわ』を実はまだ読んでいない。芥川賞作品は思いたったら速攻読まないと結構忘れてしまうことが多い。確か親族だったと思うけど朝吹さんという方の翻訳された作品を目にしたことがある。Wikipediaを見たら、親族欄に多くの名前が載っているのに驚いた。文化人家系。 うみとアミは女性同士だと勝手に想像していた。なんでだろう、『きことわ』が「きこ」と「とわこ」の女性2人のストーリーだからだろうか。そしてなんと「うみ」が女性で「アミ」が男性だった。2人は、恋愛をすっ飛ばして結婚をする。結婚の意味、人…

  • 『そこのみにて光輝く』佐藤泰志|文章から嗅ぎ取れる土の匂い

    『そこのみにて光輝く』佐藤泰志 河出書房新社[河出文庫] 2024.04.12読了 自ら死を選んだ人が書いた小説に対して、独特の緊張感を持って読み始めるのは私だけだろうか。昔は自死する作家が多かった。かつての文豪たちは、死ぬ方法は違えど、自死をすることが誉れと信じて、そうするのがさも綺麗な終わり方だと思い旅立った。今はそういう風潮はほとんどない。 佐藤泰志さんは41歳という若さで自ら死を選んだ。彼の作品は芥川賞候補に何度も選ばれている。何が彼を死に向かわせたのか。Wikipediaで彼の名前を検索したが自死の理由はわからない。たとえ記載があったとしても、本当のことは本人にしかわからないだろうけ…

  • 『アウトサイダー』スティーヴン・キング|事件はどう解決するのか|もはや「ホッジズ」シリーズものでは!

    『アウトサイダー』上下 スティーヴン・キング 白石朗/訳 文藝春秋[文春文庫] 2024.04.11読了 さすがのキング!冒頭から疾走感がありおもしろかった。何より上下巻ぎっしりと読み応え満載で、キングを読むときは次の本選びを気にしなくて良い(というか楽)。つまり、すぐに読み終わらないということ。 恐ろしくも無惨に殺害された少年フランク・ピータースン。多くの証言から犯人だと疑う余地のないテリー・メイトランドは、彼がコーチをする少年野球の試合の最中、公衆の面前で逮捕された。しかし彼には完璧なアリバイがあった。これは、不当に罪をなすりつけられたテリーとその家族が冤罪を晴らすストーリーなのか? 実は…

  • 『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇』クライスト|翻訳家も読者も熟練でないとなかなか難しい

    『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇』ハインリヒ・フォン・クライスト 岩波書店[岩波文庫] 2024.04.06読了 ドイツ人作家の小説を読むのはなんと久しぶりだろう。名前は知っていたがクライストの作品は初めてだ。作家たちが好む、つまりプロの文筆家が好むのがクライスト。この文庫本には、表題作2作ともう一つの全3作の中短編が収められている。「他一篇」とするなら、もう一つもタイトルにしてしまえばいいのに、と思うのは私だけだろうか。ちなみにもう一つの題名は『サント・ドミンゴでの婚約』である。 まず一作目『ミヒャエル・コールハース』というのは馬商人の名前で、ある不当な扱いを受けた彼が復讐を試…

  • 『方舟を燃やす』角田光代|誰かの人生、こんな風に物語になる

    『方舟を燃やす』角田光代 新潮社 2024.04.04読了 昭和の時代から、平成、令和へと駆け巡る。グリコ森永事件、御巣鷹山の飛行機墜落事故、テレクラの大流行、オウム真理教、色々な事件があったよな。「ノストラダムスの予言」のことは家でも学校でも話題になったが、「口裂け女」の記憶はない。小学校ではコックリさんみたいなのが流行っていたけれど、コックリさんではなくて名前が違っていた気がするんだよなぁ。とにもかくにも私が生きた時代と重なる部分が多かったから、なにやら懐かしい気持ちになった。 1960年代に産まれた柳原飛馬(やなぎはらひうま)と望月不三子(もちづきふみこ・旧姓谷部)の視点が交互に入れ替わ…

  • 『影をなくした男』アーデルベルト・フォン・シャミッソー|誰にでもあるものが欠ける恐ろしさ

    『影をなくした男』アーデルベルト・フォン・シャミッソー 池内紀/訳 岩波書店[岩波文庫] 2024.04.01読了 村上春樹さんの『街とその不確かな壁』では、影を奪われた男が登場する。影を持つ、持たない、なくす、そんなようなストーリーは日本だけでなく世界に多くある。その原作というか、初めに考えだした人がこのシャミッソーであり、この作品が原型である。解説によると、ヨーロッパの18世紀から19世紀にかけて影が大流行したそうで、シャミッソーはまさにこの時代を生きたのだ。影絵もこの時に人気があったようだ。 灰色の男に、自分の影を褒められたシュミレールは、お金に目が眩み自分の影と交換してしまう。シュミレ…

  • 『我が友、スミス』石田夏穂|肉体をいじめ倒す快感

    『我が友、スミス』石田夏穂 集英社[集英社文庫] 2024.03.31読了 筋トレ小説ってなんだろう?と芥川賞候補になっていたときに気になり、「スミス」というのが人の名前ではなく筋トレマシーンの名前だと知った。もう文庫本になるなんて、早い。 カーリング選手の藤澤五月さんが、ボディビルコンテストのために身体を鍛え上げた写真を見たときは私も驚いた。どちらかというと女性らしいふっくらとした姿が藤澤さんらしくて好きだったのだが。しかし彼女は元々ボディビルに興味があったそう。数ヶ月であれだけの身体を作ったことに、尊敬の眼差しになった。ものすごく芯があるなと。筋肉ってなかなかつかない。というか、外に見えて…

  • 『ゴッドファーザー』マリオ・プーヅォ|敵にしたら一発アウト、味方にしたら超強力

    『ゴッドファーザー』上下 マリオ・プーヅォ 一ノ瀬直ニ/訳 ★ 早川書房[ハヤカワ文庫NV] 2024.03.30読了 男の人が好きな映画として挙げることが多いのが『ゴッドファーザー』だと常々感じている。だいたいにおいてマフィアとかヤクザものが好きだから、そういう意味でも人気があるんだろうなと思う。私は昔テレビで放映されているのをぼんやりと観て、アル・パチーノのべっとりした髪型と暗ーいイメージしかなかった。確かに子供が観てもなんのこっちゃかわからないよな。 何これ、なにこれ、なんだこれは!!個人的にマフィアとか極道系の話はあまり好まない(むしろ苦手な方)と感じていたのに、冒頭からかなりハマった…

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