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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『最後の大君』スコット・フィッツジェラルド|苦痛からもたらされるより深い満足感を噛み締める|未完とはいえ素晴らしい

    『最後の大君』スコット・フィッツジェラルド 村上春樹/訳 中央公論新社 2024.05.23読了 実は未完の小説が苦手で(たいていの人がそうだろう)、それは物語の結末がわからないことに対する苛立ちなのか、どうにも消化できない心残りなのか。読み終えたあとに、自分の感情の持って行きどころがないからだろう。 と読み始める前は思っていたし、だからこそ発売してすぐ購入していたのに積読状態になっていたのだが、物語世界に入ると(なんなら作者の友人であり文芸評論家でもあるエドマンド・ウィルソンによる序文から既に)全く杞憂に終わり、優雅でいかにもアメリカ的な映画の世界に没頭できたのだった。 ハリウッドを舞台にし…

  • 『華岡青洲の妻』有吉佐和子|憧れが憎悪に変わる時

    『華岡青洲の妻』有吉佐和子 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.05.21読了 華岡青洲というちょっと大それた名前。幾度もドラマ化されたようだが、以前TBSで放映されていた『仁』というドラマで大沢たかおさんが演じた脳外科医は、華岡青洲の麻酔術を利用していたような。江戸時代に、世界で初めて全身麻酔を使い乳癌の手術を成功させた外科医・華岡青洲を巡る二人の女性の物語である。 私自身、全身麻酔をして手術を行なった経験がある。頭にぷつぷつと針が刺され、眠くなるようにいつのまにか意識が遠のいて、気づいたらもう全て終わっていた。麻酔ってすごいよなぁ。麻酔自体でも大きな事故が起こりかねないからしっかりとサインを…

  • 『両京十五日』馬 伯庸|中国・明の時代に詳しければ相当に楽しめるはず

    『両京十五日』〈Ⅰ 凶兆・Ⅱ 天命〉 馬伯庸(ば・はくよう) 齊藤正高、泊功/訳 早川書房[ハヤカワポケットミステリ] 2024.05.20読了 なにやらスケールの大きさを感じさせる厳めしい表紙。ハヤカワのポケミス2000番という記念すべき番号にちなんだ特別作品らしい。日本人って本当にキリのいい数字が好きよね、特別感を持たせたりするの。日本だけではないのかな? 今から600年ほど前の中国・明の時代が舞台となっている。皇太子である朱瞻基(しゅせんき)の命が狙われた。皇帝に恨みを持つ誰かの陰謀か。朱瞻基は、「ひごさお」とあだ名を持つ呉定縁(ごていえん)、下級役人宇謙(うけん)、女医の蘇荊渓(そけい…

  • 『男ともだち』千早茜|相手を思いやる純度の高さ

    『男ともだち』千早茜 文藝春秋[文春文庫] 2024.05.14読了 要は「男女間にともだちはアリ得るのか」というのがこの作品に一本通るテーマである。ともだち、というか親友かな。2人のこの関係性を表現するぴったりの言葉がないかもしれない。敢えて言うなら兄妹のような、一生離れられない関係。 主人公を含めてクズだらけの登場人物たち。最初は「なんなんだ、これは」って思った。これが直木賞候補になったのかって疑ってたのだけれど。読み終えたらそんな気持ちがひっくり返って、、つまり神名(かんな)の「男ともだち」ハセオにやられたのだ。何がどう刺さったのか滂沱の涙。ハセオの優しさに、ハセオとの関係性に、羨ましく…

  • 『説得』ジェイン・オースティン|その時はそうするしかなかった決断

    『説得』ジェイン・オースティン 廣野由美子/訳 ★★ 光文社[光文社古典新訳文庫] 2024.05.13読了 ジェイン・オースティンの小説って、同じようなテーマ(ずばり結婚)ばかりだし、ストーリーも動きが少ないのにどうしてこうもおもしろく読めるんだろう。個人的に無類のイギリス文学好きというのもあるけれど、いや~良かった。じわりじわりぐずぐずと、遅々として進まない展開に退屈さをおぼえ人もいるだろうけれど、むしろこんな日常の話なのにおもしろく読めるってすんばらしいことだと思う。久しぶりに読み終えたくないと思える読書体験。 アン・エリオットとフレデリック・ウェントハースは、8年前に相思相愛であったが…

  • 『羆嵐』吉村昭|クマによる被害がよくニュースになるこの頃

    『羆嵐(くまあらし)』吉村昭 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.05.09読了 クマってぬいぐるみにすると一番かわいい動物だと思う。クマのプーさんを筆頭にして、ディズニーランドのダッフィー、ご当地ゆるキャラくまモン、映画のおやじ熊さんTed、テディベアなんて人気ブランドがいくつもある。 しかし現実の熊は想像を絶するおそろしさだ。動物園で初めて熊を見たときにそう感じる人は多いはず。ぬいぐるみみたいにあんなに丸っこくないし、目が怖いし獰猛だし。熊といってもこの小説に登場するのは羆(ひぐま)である。羆は北海道にしか生息しない、大きいもので熊の3倍もある巨大で獰猛な生き物だ。 1915年(大正4年)に…

  • 『ザ・ロード アメリカ放浪記』ジャック・ロンドン|自由を求めて放浪しよう

    『ザ・ロード アメリカ放浪記』ジャック・ロンドン 川本三郎/訳 筑摩書房[ちくま文庫]2024.05.07読了 ジャック・ロンドンが作家として成功したのは「若いころあちこち放浪していた時代に経験したこの訓練のおかげではないか」と自身で感じている。その訓練とは、生きるための食べものを手に入れるために、本当らしく聞こえるホラ話をしなくてはならなかったこと。これが物語る力を養ったのだという。 今の時代で、特に日本でこういった放浪をするのは困難だろう。世界のどこかでは今でもこんな暮らしをしている若者がいるのだろうか。アメリカでは列車にただ乗りしながら放浪する人間たちのことを「ホーボー」と呼び、自由な放…

  • 『小説8050』林真理子|引きこもりっていう言葉が良くないよ

    『小説8050』林真理子 新潮社[新潮文庫] 2024.05.05読了 日本大学アメフト部の問題はその後どうなったのだろう。日本大学理事長となった林真理子さんは、昨年末、副理事長に辞任を強要するなどしたとして提訴されているが、その後進捗は不明だ。女性として初の理事長ということで応援していたし、彼女の強さと潔さ、そして彼女が描く小説世界は、特に同性の圧倒的な支持を受けていることは間違いない。 タイトルにある「8050」とは「8050問題」のことを示している。つまり、80代の親が50代の子を支えること。子どもの引きこもりが背景にあるという現代の問題を意味する。具体的にその問題に直面したストーリーで…

  • 『板上に咲く』原田マハ|真似を極めることはいつしか突き抜けた存在になること

    『板上に咲く MUNAKATA:beyond Van Gogh』原田マハ 幻冬舎 2024.05.03読了 この小説は、渡辺えりさんによるオーディブル(amazonのオーディオブック)の朗読が高い評価を受けている。それでも私は今のところ専ら紙の本を愛好しているから、眼で追って読んだ。本当は、板上だけに触って読みたいくらい。 棟方志功の木版画はあたたかい。かわいくて愛らしく落ち着く。なんとなく山下清さんの作品を観たときの印象に近く、純粋でひたむきな感性と生きるエネルギーが溢れ出ているように感じる。もちろんゴッホの絵に通じるものがある。そりゃそうだ、真似したんだもの。 棟方の生涯の伴侶チヨの視点か…

  • 『プロット・アゲンスト・アメリカ』フィリップ・ロス|子どもの目線で迫り来る恐怖、崩れゆく家庭がリアルに描かれる

    『プロット・アゲンスト・アメリカ』フィリップ・ロス 柴田元幸/訳 ★ 集英社[集英社文庫] 2024.05.01 フィリップ・ロスの作品は『素晴らしきアメリカ野球』か『グッバイ、コロンバス』を読みたいと前々から思っていた。先日書店に行ったらちょうどこの本が文庫化されていた。単行本しかなくてなかなか手に入らなそうだったから嬉しい。しかも訳が柴田元幸さん。 アメリカ国家が聞こえてきそうだ。というか読んでいる間、私の頭の中には流れていた。この小説は、「もしもアメリカ大統領が反ユダヤ主義のリンドバーグだったら」という前提で書かれた歴史改変小説となっている。アメリカの近代史をたどりながら、まるでノンフィ…

  • 『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ|インド人が書いた小説をもっと読んでみたい

    『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ 武藤陽生/訳 文藝春秋 2024.04.27読了 インドのミステリーなんて読んだことない!というか、そもそもインド人作家の小説を読んだことがあるのだろうか。あっても記憶にないし、インド人作家の名前すら出てこない。人口が14億人を超える国なのに、優れた作品がないわけがない。最近ガツンと痺れる本に出逢えていなくて(もう麻痺しちゃってるのかなぁ)、冒険を求めてあまり読まない本を選んだ。 タイトルのガラムマサラって、スパイスのことだよな。タイトルだけ見たら料理の物語なのかと思っていたら、全然違った。しかも、最後までなんでこのタイトルなのかがクエスチョンのままだ。 …

  • 『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦|放心状態→何も考えていないわけではないらしい

    『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦 早川書房[ハヤカワ新書] 2024.04.24読了 確かに、歩いているときやジョギングしているとき、つまり無心で身体を動かしている状態では、色んなアイデアが浮かんだり何かの問題に対する解決策がふいに思いついたりなんてことがよくある。私もジョギング中に、ブログで「こんなことを言いたかったんだよな」「まさしくそんな言い回し!」と発見することが多々ある。 しかし、散歩やジョギング中の放心状態とは実は何も考えてないわけではないらしい!「単に特定テーマで考えていないだけであって、同時にさまざまな想念が浮かんでいる状態にある(62頁)」と知って目から鱗だった。で…

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