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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『くもをさがす』西加奈子|大切なのは自分の身体と心を愛おしく思うこと

    『くもをさがす』西加奈子 河出書房新社 2023.6.26読了 『夜が明ける』が刊行された少しあと(私自身も読み終えたあと)に、NHKの「ニュースウォッチナイン」で西さんがインタビューを受けているのを観た。顔がちっちゃくてキュートで、なによりも芯が強いと思ったからよく覚えている。そのシーンの話が出てきて、なんだか胸いっぱいになってしまった。あんなに堂々と話していた彼女が、ウィッグをつけていて、まさにその時戦っている真っ最中だったなんて。全く気付かなかった。彼女は強かったのだ。 honzaru.hatenablog.com 西加奈子さんが遠くカナダの地で乳がんと戦っていたことは、この本が出るまで…

  • 『大江健三郎自選短篇』大江健三郎|人間の生きる目的とは。目指すところは「死」

    『大江健三郎自選短篇』大江健三郎 岩波書店[岩波文庫] 2023.6.25読了 ポルトガル作家ジョゼ・サラマーゴさんが亡くなった時は国葬だったらしい。どうして大江健三郎さんが亡くなった時には国葬にはならなかったのだろう、とポル語訳者木下眞穂さんは思ったそうだ。そもそも小説家が国葬になるという慣わしが日本にはないけれど、文学賞に限らずノーベル賞を取った人には国葬があってもなんらおかしくはないかもなぁ。それほどの偉業。 大江健三郎さんの小説は5~6冊しか読んでいない。最初に読んだ『個人的な体験』には感銘を受けて物事を見る世界が大きく変わった。一方で『燃え上がる緑の木』や『芽むしり仔撃ち』は難解で読…

  • 『忘却についての一般論』ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ|新鮮で楽しい、詩的で美しい

    『忘却についての一般論』ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 木下眞穂/訳 白水社[エクス・リブリス] 2023.6.20読了 アンゴラという国があることは知っていたが、それが何処にあるかも、どんな国なのかも意識したことがなかった。アフリカ大陸の南西部に位置する共和制国家で、日本の面積の3倍以上の国土に対して国民は約3,080万人のみ。アンゴラ人が書いた本というのも初めてだったし、そもそもアンゴラがポルトガル語を公用語としているのも不思議だった。 訳者の木下さんによるあとがきを読むと、ポルトガルは大航海時代にアフリカで発見した土地(アンゴラやモザンピークなど)を植民地化していた。世界恐慌のせいで…

  • 『正欲』朝井リョウ|正しさ、多様性、居心地の良さ 不安と葛藤し生きていく

    『正欲』朝井リョウ 新潮社[新潮文庫] 2023.6.19読了 自分にとっての「正しさ」とは何だろう。「正しい」といっても、それは全員にとってひとくくりに正しいということではないし、正しさが正解とも限らない。多数派が少数派よりも正しいというわけではないのに、知らず知らずのうちに、普通であることが正しい、それが当たり前だと思っている自分の考えが怖くなった。 いつしか、幸福よりも不幸のほうが居心地が良くなってしまった。はじめから何も与えられず、何を手に入れられるかや何を失うかで思い悩まなくてもいい状態に、すっかり慣れてしまった。(301頁) 居心地が良いこと、面倒でないこと、そうやって自分の居場所…

  • 『HHhHープラハ、1942年』ローラン・ビネ|ビネ自身が主人公で、実況中継するかのよう

    『HHhHープラハ、1942年』ローラン・ビネ 高橋啓/訳 東京創元社[創元文芸文庫] 2023.6.17読了 本屋大賞翻訳小説部門を受賞したというのが納得できるおもしろさだった。パラパラと頁をめくると、細かい文字がびっしりと埋められ(東京創元社の文庫だし当たり前なのだが)、史実を元にした内容だからなかなか込み入ってそうに思えた。しかしまぁ、思いのほか読みやすかったのだ。語り口に引き込まれてぐいぐいと読ませるこの手法が、もう天才的で、類稀なる読書体験となった。 1942年のプラハで実際に起こった、ナチスの高官ハイドリヒの暗殺事件について書かれたノンフィクションにもとれるようなフィクションである…

  • 『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光|タイトルが意味するものは・・・!

    『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光 新潮社[新潮文庫nex] 2023.6.13読了 この段落だけは、この本を読む前に書いている。私は「透きとおった」という言葉に何かヒントがあるんじゃないかと思った。「透明な」でもなく、変換して出てくる「透き通った」でもない。ちょうど先週末に観た「王様のブランチ」で作者の杉井さんが出演されており、文庫本であること、紙の本であることに何か意味があるようなことを言っていた。どうして紙の小説ではないと表現できないのか、紙の薄さとかそういうところにも関係しているのだろうか。リアル書店でもそうだが、ここのところTwitterのタイムラインでも賑わせているこの作品、…

  • 『パワー』ナオミ・オルダーマン|自分が強者になると、傲慢になり優位に立つようになる

    『パワー』ナオミ・オルダーマン 安原和見/訳 河出書房新社[河出文庫] 2023.6.12読了 女性の身体に突然変化が生まれる。スケインと呼ばれる器官が突然生じて、指先から電流が流れるようになる。その電流を自由に操れるパワーが宿った女性たちが、男性よりも優位に立ち彼らを圧倒する。そんな世界を描いたディストピア小説である。 主な登場人物は4人。暴力を受けて育ち目の前で母親を殺されたロクシー、不幸な幼少期に産まれてのちに教祖になるアリー、政治家のマーゴット、そして唯一の男性がジャーナリストのトゥンデだ。それぞれの視点で短めの章が入り乱れた群像劇になっている。 私は女性だが、一番共感に近い気持ちを抱…

  • 『街とその不確かな壁』村上春樹|自分だけのとっておきの幻想世界|読んだ人にしかわからない満足感

    『街とその不確かな壁』村上春樹 ★★ 新潮社 2023.6.10読了 濡れたふくらはぎに濡れた草の葉が張り付き、緑色の素敵な句読点となっていた。 読み始めてすぐ、7行めに出てくる文章である。裸足で水の上を駆ける少女のふくらはぎが濡れてそこに葉っぱやらが引っ付く。この情景がありありと浮かび、本来なら汚れた足のはずなのに、「句読点」という文学めいた比喩を使うことによって場面が鮮やかに美しく切り取られる。英語なら、他の言語ならどう訳されるのだろう。ピリオドやスペースしかない言語だったなら、受け取った文章からはまた違う印象を覚えるはずだ。 一つ前に読んだ内田樹さんの『サル化する社会』の中で、村上春樹さ…

  • 『サル化する社会』内田樹|専門分野は独立しているわけではなく全てに繋がっている

    『サル化する社会』内田樹 文藝春秋[文春文庫] 2023.6.6読了 内田樹さんが「なんだかよくわからないまえがき」と題している前書きで、今の日本社会では「身のほどを知れ、分際をわきまえろ」という圧力が行き渡りすぎていると言っている。身の程を知れ、というのが「自分らしさ」を早く知りその枠で生きろと言われているような感覚。「自分らしさなんて別にあわてて確定することはない、深く呼吸ができて身動きが自由になる、それが一番大切だ」と述べていることに、感銘を受けた。 先生や親から「はやく自分が本当にやりたいことを見つけなさい」と言われても当の子供にとってはストレスになる。これは本当にその通りだと思う。本…

  • 『ペストの夜』オルハン・パムク|疫病と人類の戦い|空想画を描ける人は物語る力がある

    『ペストの夜』上下 オルハン・パムク 宮下遼/訳 早川書房 2023.6.5読了 月曜日の深夜に『激レアさんを連れてきた。』というTV番組があって、その中で「架空の駅を1万個以降考えた人」が紹介されていた。その人は駅周辺の地図やらをプロかと見まごうほどの精緻な絵を書いていて、こんな人がいるんだと大変驚いた。ちなみに同番組で『藻屑蟹』や『ボダ子』を書いた赤松利市さんが登場した回があったようで、見過ごしてしまったのが悔やまれる。また、土曜日に放映されるサンドイッチマンと芦田愛菜ちゃんの『天才博士ちゃん』というテレビ番組でも「空想地図を1,000枚描いた」という道路博士ちゃんが出ていた。 honza…

  • 『モイラ』ジュリアン・グリーン|運命の女モイラ、そして青年たち

    『モイラ』ジュリアン・グリーン 石井洋二郎/訳 岩波書店[岩波文庫] 2023.5.30読了 信仰心の篤い赤毛のジョセフは、ミセス・デアの家に下宿することになり、ここから大学に通う。このジョセフという主人公がまた独特の人物だ。極度の潔癖というか、真面目で純朴で、性に対して異常なまでの嫌悪感を持っている。ジョセフ本人の一番の興味は「宗教」だという。 第一部では、大学生になりたてのジョセフが新たな生活に向けて準備をする。仲良くなったディヴィッドや他の学生たちと、もしやそういう関係になるのかなと思ったけどそうはならなく(ジョセフは同性が好きというわけではないらしい。まだ気付いてないのか?)、もやもや…

  • 『はだしのゲン』中沢啓治|戦争のむごさを知るべき|どんな境遇にもめげない力強さと揺るぎない信念

    『はだしのゲン』1〜10 中沢啓治 汐文社 2023.5.28読了 漫画を買うことも読むことも10年ぶり位だと思う。子供の頃はそれなりに読んでいたが、いつしか小説の方に偏向していまい今に至る(なんせあの『鬼滅の刃』すら1冊も読んでないのだ)。この『はだしのゲン』は小学生の時に図書館かどこかで借りて読んだはずなのだが、絵が怖かったという記憶があるだけでよく覚えていなかった。 被爆者の中岡一家を軸にして戦中・戦後のきびしい生活を描いた物語で、作者中沢啓治さんの体験を元にした作品である。中岡元(なかおか・げん)という少年が主人公である。はだしのまま、途中からは下駄を履いて歩くゲン。そうか、もともとゲ…

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