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  • 不眠(2009)

    ふけてゆく夜 のうちがわ おれという犬のくそ のような叡智にはかならず 休息の欲しいときがある しかしろくでもないものが宿った左の手 をもちいていくら電話の古く黄ばんだ 回転式ダイアルをまわしても 通じた回線をむこうにおれの欲しい眠り について註文がとられても その配送係はいっこうに魂しいの戸口に現れない かれらはこのおれを灯のもとにゐかためて なんの良心をも動かさないばかりか もとよりそれをもっていない なんと あたまの いかれたひとたちだろうか 煙のようにみせておれのいらだちが 室のなかに充ち けっきょくはまた 通話の路次へひかえす ひきかえさねばならない それでも聴こえてくるのは 半音高…

  • 水を呑む男(2007)

    www.youtube.com 曇ったガラスに朝がさす。その男は目を細め、コップの底に光りを見る。上半身は裸、黒いズボンをはき、カンバスの中央に立つ。かれの前には小さなテーブルがあって、視点はややその下を向く。細いラインが部屋を蔽い、太いかげがかれの姿をもちあげる。壁の絵はさかさまに飾られ、意味を半分失っていた。黄のラインが室内を走り、青のラインはかれを走る。窓には白と灰が混ざり、その向こうにシグナルが覗く。一九二〇年代の古い鉄路が通つているのだ。ぼくは目を閉じて耳を澄ます。色の向こうから呼吸音が聞えてきた。これはかれの自画像であり、告白としてぼくに話し掛ける。かれにとって絵はそれの手段に過ぎ…

  • sometime I feel like a blind man

    作業所から電話 きょうは工賃明細と捺印で、 あとは在宅、 でも、そのまえに心療内科がある 朝餉を済ましたとき、 また電話、 師匠からだった 送った見本版の詩集から、 好いという作品をあげた、 『暗がりで手を洗う』、『たとえば夢が』、『ムンクの星月夜』、 『夏のよるべ』、『天使たちの戯れ』、『点景』、 『feeiln' bad bluse』、『He Said』、『裏庭日記』、 『見世物小屋の私生児たち』、 『音楽をください』、 『夜の雷光』という詩集の題名はなしになった そして序文の件はなしになった 花島大輔氏に書いてもらえといわれた 最低でも¥30,000の原稿料でと。 おれの作品について「化…

  • 海(2006)

    www.youtube.com 午前0時も半ばを過ぎて ヨット・ハーバーの周りには 黒い潮風と引き揚げられた古ボートが眠っている 白くぼやりと浮かぶのは 疲れ切って萎えた帆 その白さに小指ほどの言葉を当てはめながら歩く ただ来てしまったから歩く なにひとつ意向を持たず歩く 陰が歩行者を支え 時折突き崩し 数え切れない羞恥にきつく胸を捩らせる あれはいったいだれだろうか 酒に酔ってふらついている男は 灯台の裏手にふかく沈んでいく 帰れないのだ 夜風が足につつかかる たったいま午前一時を過ぎ 港のまえには黒い車が停まっている 朝を待って眠る また酒を呑んでしまったのだ 海のもっとも黒い部位 あそこ…

  • 動物園(2006)

    www.youtube.com www.youtube.com (見る) だれもかれのなまえを知らないし だれも知ろうとしない 見られ 覘かれ 触られ 汚され 洗浄され 閉じ込められ 少しだけ解き放たれる かれ (見ている) 動物園のなかをくまなく かれを覘き 触り 笑い 汚し 追い込んで ひっぱって 少しだけ閉じ込められるひと 見られたものはたちまちにきずを得て 見るものは昏い愉しみとわだかまりをいつまでも曳きずるだろう (見る) おまえのなまえも知らずに 金属の名札をだれも読もうとしない ぼくはどこから来たのか 見るために来て いつのまにか見られている 視線を移すことなんか幾らだってできる…

  • 空域(2005)

    おそらく大勢の詩人たちが宙に浮いているというのに ぼくには飛ぶ空がない 時代から取り残された残り火として ただ未明のかすかを照らしているだけだ おもいだしてみればいい きみが廃墟の配電盤をあけたとき たくさんんお雀蜂がきみになにをいったかを ぼくらは棄てられた貯水タンクのうえで ひそやかな暗号を交わしたはずだ 記憶はどれだって遠いものだ 裏切るものをつくるためにぼくらの幼年期は過ぎて あとに残るのはたくさんの狐火 生野高原の森のなかでぼくが放った多くの言葉は果たして石となり 草の実にかわる 数多い葉っぱのなかで 雨に濡れながら息絶えている 共有するものはなにもない ただ孤立だけは歳月をかけて …

  • I'm just feeling fade away, now

    ★ 「握り金玉(ぎんたま)」という俗語を識った なにもせずにぶらぶらしている、という意味らしい おれも最近ずっと金玉を握ってる 映画が観られない 未読の本が溜まってる 性慾も湧かない いつもいつも過去のことで頭がおっぱい だらしなくタッピングを繰り返し、 ギターの練習も、 音感のトレーニングもしてない あした、工賃が入る 前月はよく働いた、 というのはデタラメで、 ただただ在宅作業で、 しょうもない文章をタイピングしてただけだ ああ、来月には新しいアコギを買いたい またもLAGにするか、nagiのkuroにするかだ 予算はたった¥40,000である 冷たくなった指で、未来を算える その単位はい…

  • 放浪のはじめ(2005)

    孤独が夜更けてひとり歩きだした 叱られていき場のない少年のように 十五のころに帰ったように 看板のなかの 派手なべべを着た娘の その胸に手をあててみたり 雨に溶けだした聖母像の肩や頬に 顔をすり寄せてみたりして 孤独にいっそう磨きをかける 触れられるのはとまっているものだけ 美しく見えるのはとまっているものだけだ 動けないもののために美があり いき場のないもののために美があり 触れさせる孤独がある しかし触れたってなにもないのだけれど なにもないのことがなおさらに愛しく なにもないところに放浪ははじまる

  • 物語と社会福祉制度〈1〉

    * あまり物語に無粋な突っ込みを入れたくはないのだが、あまりにも社会構造を無視した作品を見かけるので、考えを述べたいとおもう。エセ批評家風評定なのはごくごく承知している。まあ、大したものじゃないから話半分で読んで欲しい。 * ○ドラマ『家なき子』の場合 * 主人公すずの母親洋子が心臓病で入院中というところから話は始まっている。さわりのほうで、手術費用に500万かかるというのだが、検索したところ、心臓病の手術でいちばん高額なのは、人工弁置換術(2弁)で500万~550万円とのこと。ただしこの金額は全額自己負担だった場合である。国民健康保険である程度押さえることができる。ボンベイという血液について…

  • リチャード氏の埋葬に関する余興(2013)

    リチャード氏は 24時間営業の 駐車場に 掘られた 穴のなかで からだを埋められてた レスターでのことさ その穴は 忘れられてしまったけれども、 つい先日掘り起こされた かれは至って正常だが ヘンリーやボズワーズと戦った1485年 味方の裏切りによって、 戦死したためにひどい人間不信に陥ってしまってたんだ かれのからだはやがて丸裸にされ かれの支持者たちに かれの存在を報せるよう曝され かれはいささか不機嫌だったらしい そしてお次はグレイフライヤーズにある、 修道院に埋められた ということなんだ ことのはじまりはこうだった ジョー・アップルビーという骨学者がはじめに頭蓋骨を見つけた 頭の傷をみ…

  • A Dream Are What You Wake Up From

    かろうじて20代だったころ 赤十字病院にいた なじみとなったアルコール性の膵臓炎 好きだった女の子をおもいだしながら やがて来るだろう 使者たちに願ったもの けれどかれらは来なかった 天は鳥の羽根 あるいは猫の唇 退院してすぐにかの女の手がかりを探した それくらいどうしても会いたかった 幸いにも見つかって 託けを送った けれどかの女はあまりに冷たく あっけなく返事を返して来なくなった またわるい酒に呑まれて かの女が沈黙した1年ものあいだ かつてのいじめっ子たちに罵声を浴びせてまわった きみはいった ぼくがひとを傷つけたと けれどきみはかれらがぼくにやった仕打ちを知ろうともしなかった あれから…

  • something must breaking

    www.youtube.com * きょうはじぶんの演奏を動画に撮った iPhoneを買ってからしばらく経ったものの、 そういった挑戦をいままでしてなかった きのうの演奏で手応えを感じたので、 いくつか動画を撮ってSNSに投稿した ライブハウスにも送信しようとおもったものの、やめた いま段階ではライブをやる価値はない あとはルーパーとアナログディレイを買う必要がある さすがにvolcaシリーズを三つも持ってそとにはいけない モジュラーとエフェクターだけで完結できるようにすることだ * 詩集の見本を森先生に送った それから詩を三つ書いた できるだけソリッドで禁欲的な詩集をつくりたい いくつかの野…

  • 乾涸らびた道に南半球をめざす蟻たちの行進がつづく いずれの運命、あるいは私的な詩を全うするべく立ち上がった足 われわれがわれわれでないと気づかされる、ささいな情景たち 一人称を見失いかけたおれを慰めるかのような象形たち いったいどれほどの代償を以て、この道を歩むのか おれにはいまだ払う術が見えたらない 謀略に充ちたデヴィッド・バーンの眼差し dance と fuck に溢れたショービズの世界 憧れはさもしく、望みは卑しいとおもわされる祝祭 やがて零れだした果肉を受け止める皿がないという理由で 配給米を拒絶された女たちの初夏よ ああ、きっとこんな妄想もたやすく記述されてしまうんだ おれがおれのな…

  • おれの徒然〈09〉「途中覚醒」篇

    * それにつけても途中覚醒である。いつも0時くらいに眠るのだが、それが4時ぐらいで眼が醒めてしまうのだ。こいつにはだいぶ困った。ただでさえ、眠剤がないと眠れないのに、薬を嚥んでも起きてしまうのだから。というわけで途中覚醒について検索すると、どうも漢方がいいらしいので近所の内科へいった。そしてだされたのがこれだ。 * サルバトーレ・マーラの時計を買い直した。2代目である。以前のものには風防ガラスに罅が入ってしまったし、動かなくなってしまった。しかも風防ガラスを交換するだけで¥7,700はかかるのだ。それじゃあ、新品を買ったほうがいいとおもって買った。定価は、¥25,000だが、楽天市場では¥10…

  • 夏の世界

    現在を過去のように話す男たちが 路上で種子を蒔いている 真昼の儀式めいた 時間を 過ぎ去っていく詩業 うずくのは唇 うめくのは棺 あらゆる鍵穴と符合する夏の神経痛 七月よ、おれは産まれた おまえの腕にだれかたおれがいま、 為すべき判断を下すとき たった一台の三輪車が主語にまでなったかのような快感を憶えている いつだったか、なくした人形を探しに公園を訪れたとき 終わりのない焦りのなかでささやかな悪意に眼醒めてしまった おれはじぶんがなにかわからないものに憑かれ、 そしてさ迷ったんだ たったいま時の明滅するバーガーキングで かじりついたアボガド・ワッパーが 店内で爆発炎上する、 うつくしい場面 い…

  • 映画『シン・仮面ライダー』への疑問符

    www.youtube.com * 去年の春に公開された映画で、観にいったときはわるい部分ばかり見えて、正直ストーリーに頭が入らなかった。ところがAmazonプライムで観て、なかなか話の筋はいいなとおもった。しかし改めて映像表現としての疑問、世界設定の疑問がどうしても湧いて来たので、ポイントを並べつつ、語りたいとおもう。 それにつけても口惜しいのは日本に於けるデジタル撮影の絵作りである。不自然に明るく、平面的で、奥行きがないのだ。これをいったいだれが解決するのだろうか、いまだに洋画との差は歴然で、やはり人種によって見え方がちがうのだなとおもう。デジタルはたしかにきれいではある。しかし物語には合…

  • おれの徒然〈08〉

    * カメラが届いた。TIARA Ⅱである。傷と凹みが残念なのだが、いまのところ手に入るのはこれだけだ。まあ、¥5,0000あればもっと状態のいいものに出会えるのはわかってるが、どうしようもない。そんな金が入る予定もないし、フィルムだって高い。しかたない。 * きのう、はっぴいえんど『風街ろまん』LPが届いた。去年、予約したのだが、生憎second pressになってしまった。Amazonの特典でメガジャケがつくのだが、こいつの役割がよくわからない。ポスターにするには小さいし、飾るには半端だ。これではっぴいえんどは3枚そろった。あとシングル『12月の雨の日』を買うだけだ。 * きょうは夕方から映…

  • 音楽をください

    ロビー・クリーガーのように、ピーター・ブロデリックのようにギターが弾きたい ときには折坂悠太のように吼えたい、三上寛のように私小説でありたい ことごとく滅びたはずのぼくを呼ぶ音楽たちをいまも愛おしくおもう 堀内幹のよう懐いだされても、宮本浩次のように忘れられもかまわない ぼくがぼくの文体を得るのはいつも他者の声からだった ヘロー、ヘロー、涙が抒情であったときに帰りたい ぼくのなかでじれるジョイ・ディヴィジョンや、トム・ウェイツがいまでもなごる この海岸、そして浸透する大人たち 谷口健、そして吉村秀樹へと至る道をどう生きていいものかいぶかった 松崎ナオよ、あなたの裏声はこのバックスペースには届い…

  • 社会的弱者を道具に自己正当化はできない。

    * はてなブログのプラットフォームに変更が加えられ、投稿についたブックマークが見やすくなった。ぜんぶで52ある。そのなかでもぶっちぎりなのは'17年に書いた『夏の諍い──山下晴代氏とのいざこざ』だった。なぜか? 4人もがブックマークしている。 mitzho84.hatenablog.com この投稿は7月に起こったfacebook上での、氏とのやりとりを軸に語ったもので、ことの発端、両者の発言を掲載し、続篇『愛と人道の裏側で──ぞく・山下晴代に寄せて』に繋げている。 mitzho84.hatenablog.com 氏のネットでの言動を見るにどうにもかの女のなかには完全無欠の弱者というものが存在…

  • おれの徒然〈07〉「追憶」篇

    * 12月、1月と無駄遣いで終わってしまった。金が入ったのにろくな買いものもできずに終わった。楽器屋に駆け込んでLAGをもういっぽん買えばよかったとおもう。買ったものはLP1枚、安売りの時計、レコード入れぐらいなもので、あとは酒に消えてしまった。7万はかなりデカい。デカチンである。だのにおれはオークションやメリカリでカメラを買うことにばかりこだわって失敗した。 というわけできょうはカメラを買った。fujifilmのTIARA Ⅱである。備品・完全動作品ということで¥34,000もした。しかも28年くらいまえのフィルム・カメラだ。どうかしてる。このカメラは'97年撮影の映画『ラブ&ポップ』で主人…

  • ロックンロール

    www.youtube.com だれかがいったようにロックンロールにも自殺にも合わない時代だ 失うには速すぎた、撰ぶには遅すぎる、そんな時間が過ぎる 莨をやめるように生きるのをやめられない どうしたものか、そんな時代を生きて、 わたしはすっかり怖じ気づいた 愛がなんでるかをわたしは知らない きみも愛をなんであるかは知らない きみがずっと知ったふうな口をつづけるのが不愉快だ なぜって?──そうわたしはいつも疎外者だったし、 アンプ・スピーカーの具合はずっとわるいままだったし、 きみのいう希望にはずっと脅かされて来たからだ 南半球の歴史──焼け落ちる莨の速度がわたしに迫って来る 詩文を造形しながら…

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