不眠(2009)
ふけてゆく夜 のうちがわ おれという犬のくそ のような叡智にはかならず 休息の欲しいときがある しかしろくでもないものが宿った左の手 をもちいていくら電話の古く黄ばんだ 回転式ダイアルをまわしても 通じた回線をむこうにおれの欲しい眠り について註文がとられても その配送係はいっこうに魂しいの戸口に現れない かれらはこのおれを灯のもとにゐかためて なんの良心をも動かさないばかりか もとよりそれをもっていない なんと あたまの いかれたひとたちだろうか 煙のようにみせておれのいらだちが 室のなかに充ち けっきょくはまた 通話の路次へひかえす ひきかえさねばならない それでも聴こえてくるのは 半音高…
2024/02/29 12:35