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  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 【第11回 仙境に処女 天意を図り 村裏に凶徒 良民を虐ぐ】 この部分も微妙に描きかえられている。 通臂公によって竜児女がどんな修行をしてきたかが語られる。 竜児女は悟空が力を持った時に得られる金箍棒を見せる。それは岩から生えているようで今の悟空の力では抜くことができない。 竜児女が持つのは銀箍棒でありそれも彼女が力を持った時に得られたのだ。 しかし悟空は斉天大聖などただの妖怪であり人々や野人までも見境なく食ってしまったと疑問を持っていた。 反抗する悟空の前に岩壁の斉天大聖が「悟空」と呼ばわった。 悟空は脅威を感じる。 白雲洞の中には外国のものらしい読めない文字も書かれていた…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その2

    【第6回 処刑場に鬼哭啾啾 黄河上に悟空大いに怒る】 断頭坡で野ざらしになっていた白骨たちは恨みの声を上げた。 「大聖、おれたちの怨みを晴らしてくれ」 しかし悟空には自分がなにものかすらよくわからなくなっていたのだ。 そこに通りかかったのが旅の僧、玄奘だった。荊州から来て長安へ帰るところであった。 玄奘は白骨たちにお経を唱えさらに檻の中で横たわっている悟空が心を取り戻せるよう祈ったのだった。 すると今までどうしても思い出せなかった悟空が自分の名前を思い出したのだ。 悟空は別の道へ進んでいく玄奘を見送った。 やがて一行は黄河をさかのぼる船に乗り込んだ。 すでに別の一行がいたが彼らは劉黒闥の一味、…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その1

    いつも単行本の横に発表および発行年月日などを記しているのですがこの作品に関してはかなり複雑で修正加筆さらに中断そして掲載誌も様々に移り変わるなど煩雑すぎるので省略することにします。 本作は双葉社『月刊スーパーアクション」にて1983年から始まった作品であります。 私は画像右上の双葉社発行の第一巻1984年第2刷から数冊持っているのですがこれが中断されているうえに「大唐篇」として大幅な加筆修正が成されているとされていて頭を抱えました。これでは今不足している巻を買い足しても意味がない・・・。 しょうがないのでもうやむなく『大唐篇』デジタル版を購入し手持ちの双葉社版と読み比べながら進めることにします…

  • 『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』諸星大二郎

    2014年2月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 「美加と境界の神」が読みたく文庫本を購入しました。 が、文庫本は目がつらい。 やむなくデジタル版も購入。ううう。 ネタバレします。 「美加と境界の神」2009年8月号「ウルトラジャンプ」 天木兄妹の美加が登場。 携帯に四方口村にある不思議な大きな藁人形の画像を入れそれを探している。 同じく四方口村で亡くなった姉の謎を解き明かしにきた木戸健人と出会い道連れとなる。 この作品で驚きだったのは「両墓制」だった。 遺体を実際に埋める「埋め墓」「捨て墓」と呼ばれるものと別にお参りするために作られた墓がある、というのだ。 この場合埋め墓捨て墓のほうは土…

  • 『闇の鶯』「それは時には少女となりて」「書き損じのある妖怪絵巻」 諸星大二郎

    2009年4月「KCデラックス」 wiki記載で記事を進行しようとしてやや困惑する事態が発生しました。「妖怪ハンターシリーズ」の中にこの単行本が記載されていなかったのです。 が、「妖怪ハンター」リンク先のエピソード一覧の下に単行本の記載がありそこにはちゃんと記されていました。 ううむ。全部目を通さなかったために起きた困惑でした。いかんいかん。 (個人的事件でなんのことかよくわからない説明となりました) ネタバレします。 「それは時には少女となりて」2004年9月号「アフタヌーン」 大島&渚シリーズ。 大島君が海から来た裸の少女に魅入られてしまう。 海岸にある防塁の向こう側に見知らぬ少女が顔だけ…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 三章「苧環の男」2004年9月号「メフィスト」 「魔障ヶ岳」で”モノ”を見た四人のひとり岩淵翔子の場合は「神上嵩」であった。 苧環伝説そしてさらに箸墓伝説を重ねるように翔子は神上と自分の関係をそられに模してしまう。 神はその正体を知られた時に姿を消し、女は自殺してしまう、稗田礼二郎はそれを危惧して翔子の後を追う。 果たして神上嵩は消えてしまった。 翔子はそんなはずはない。彼の赤ちゃんがいるのだからと腹部を抑え、そして去っていく。 四章「名を付けなかった男」2005年1月号「メフィスト」 そして「魔障ヶ岳」の”モノ”に名を付けなかったのが稗田礼二郎である。 他の三人はそれぞれ”…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    なぜかwiki記載の章と本記載の章が異なるので詳細な年月日は省略します。 本にする前加筆されているのでそのせいでしょうか。 ネタバレします。 一章「魔に遭った男」 奈良県三輪山で遺跡発掘が行われていた。 主導者の赤井高信助教授は遺跡が三世紀は下るまいと判断していた。 記者はドンピシャで発掘場所を当てた赤井に「新たなる神の手と呼ばれているそうですが」と話しかける。 ここに出てきた「神の手」(発掘における)は記憶している人もいるだろう。 2000年に起きた「旧石器捏造事件」だ。 本作の赤井助教授はそんな事件を思いわせるほどの発見を次々に実現していた、と描かれている。 しかし発掘を手伝う人々からは「…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    2005年11月「KCデラックス」 1974年から始まったこのシリーズが30年の時を経て描かれます。 他の作者作品の多くが最初は緻密でアクティブなのに段々と投げやりになっていく感がありますが本シリーズはクオリティが落ちないどころかより複雑に活動的になっていくようです。 ネタバレします。 序章「魔障ヶ岳」2003年5月号「メフィスト」 稗田礼二郎は美しい和服女性と話をする。 年かさの上品な佇まいだ。 その女性が言う「この子に良い名前をつけてあげたい」と。 その女性は前作『六福神』「淵の女」で登場している。 本作では稗田が赤井と共に御霊山山系の入り口姥ヶ峠で見かけたとなっている。 (どういうことな…

  • 『六福神』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1998年12月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「産女の来る夜」1994年8月号「月刊ベアーズクラブ」 産女ー難産で死んだ女の霊が化けた妖怪。なんという悲しい話だろうか。 妖怪自体が怖いのではなく女性の妊娠と出産に対する家父長制が恐怖なのだ。家の繁栄のために女性の性と生が犠牲になるシステムを嫌悪するのは当然だろう。 こんな場所に住んではいけない。 そう思わせるほど悲しい産女を諸星氏は描いている。 「海より来るもの」1994年2月号。 大島&渚コンビの物語の舞台はやはり海辺の町、粟木。 こんなに「ドザエモン」が大量に出てくるマンガがあ…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「黄泉からの声」 第一章 井戸のまわりで 1993年8月号、10月号「月刊ベアーズクラブ」 これもまた複雑で奇妙な筋立てである。 稗田の学生時代からの友人・青山が登場する。 一か月前に九歳になる娘・珠美が行方不明となり探し続けているゆえか心身ともに疲れ果てている様子だ。 妻は夫がノイローゼになっていると稗田に伝えていた。 娘は井戸のある空き家で遊んでいる時にいなくなったという。 青山はボロボロの空き家を買い取り井戸をさらい娘を探し続けているのだ。 稗田が青山を訪ね話し合っている時、ひとりの若い女が土手に座り「ずいすいずっころばし」を口ずさむ。青山が聞きとがめると女は「この家も…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    1994年7月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「うつぼ舟の女」1991年冬の号、1992年春の号、1992年夏の号、1992年秋の号「ヤンジャンベアーズ」(全4回連載) タイトルにある「うつぼ舟」という伝説にまつわる物語。 他の創作者は「うつろ」という表記を多くとっているようだが「うつぼ」になったのは諸星氏の感覚なのか柳田國男氏がそちらを表記しているからか。 中に若い女が入っていた、というもので興味をそそられる話である。 異国の女性かあるいはその船がUFOでつまりは宇宙人だったなどの説があるが諸星作品ではやはり異世界とのつながりが感じられる…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 『天孫降臨』 第二章 樹海にて 1990年12月号「月刊ベアーズクラブ」 ”光の木”真理教団の信者全員が教祖もろとも行方不明となる。 富士の裾野の青木ヶ原に入り集団自殺を行っているのではないかと報道される。 ここを訪れたのが天木薫と橘であった。 稗田もまたひとりで向かったがその前に美加に電話したところ呼び出し音の中に 「来ないで・・・せめて三本目の矢に気を付けて」という声が混じって聞こえた。 その矢とは稗田が枯野村で見つけた古い鏃で作ったもので橘が持ってきた天の鹿児弓につがえて薫が射るのである。 稗田は駆け付け三本目の矢にカバンを投げつけ惨事を防ぐ。 その間に”光の木”真理教…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    稗田礼二郎フィールド・ノートより 下の画像があんまり怖いので一枚上に乗せました。 まあこちらも怖いですが。 ネタバレします。 コワスギル 「川上より来りて」1988年7月号「月刊ベアーズクラブ」 「生命の木」シリーズと呼ぶべきだろうか。 「花咲爺論序説」と「幻の木」が融合していく。 天木薫・美加兄妹が諸星先生のお気に入りになったのか、最初からこのシリーズを描くはずだったのか。 航空機事故で死んでしまうはずからの転生をして妹の美加はいわば超能力を身に着けてしまう。 本作で稗田礼二郎は「幻の木」のその後を追っている。 そして美加は「光る木」を夢見てどうしてもそれを見つけねばならないと兄の薫に訴えた…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1993年2月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 『闇の客人(まろうど)」1990年1月号「YJベアーズクラブ阿蘇 本作最高に爆笑、と言いたいけれどかなり人が死んでてその表現はサイコパスだが面白すぎるのだ。 某県大鳥町。大小五十ほどの集落からなる過疎地域である。 そんな場所を活性化しようという「町おこし」が流行った時期があるが大鳥町もその一つであった。 そしてその「町おこし」のために「百年近く前に断絶した古い祭りを復活させること」が行われる。 我らが稗田礼二郎はそんな「古い祭り」について相談を受けたらしい。彼は以前文献などから「大鳥村の神迎え神…

  • 『海竜祭の夜』〈妖怪ハンター〉 諸星大二郎

    1988年7月「ジャンプスーパーエース」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより(あるいは妖怪ハンターと呼ばれた男の手記) うん、かっこいい 諸星氏は『妖怪ハンター』というタイトルが嫌いだったようで本当はこのタイトルにしたかったのでしょうか。私はどちらも好きですが。 ネタバレします。 「海竜祭の夜」1982年9号「週刊ヤングジャンプ」 萩尾望都が怖くてたまらなかったという作品である。 だからというわけではないが本作もやはり名作だと思う。 まあだからこそ単行本のタイトルに選ばれているのだけど。 諸星氏は礼二郎をハンターではなく傍観者として位置づけしている。 そのために「妖怪ハンター」というタイトルを…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その2

    第四話「闇の中の仮面の顔」1978年「書き下ろし」この作品の中に「ルングワンダルング」という言葉が出てきて「?」となったのですが検索して「リングワンダリング」だと判る。 単なる印刷ミスなのか、作者の間違いだったのか、別の本では訂正されているのか、それともそういう言い方もあるのかわからないが、視界が限られた場所でぐるぐる回ってしまう現象のことである。 本作では狩猟中濃霧に迷った男が同じ場所をぐるぐる巡ってしまったという現象が描かれる。 有名な話では『八甲田山』で吹雪の中軍隊が同じ場所をぐるぐると回り続けてしまうものがある。 私は「リングワンダリング」という言葉そのものを知らなかったので(見落とし…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その1

    1978年7月「ジャンプスーパーコミックス集英社」 すみません。どうしても先にこのシリーズを読みたくなり先日書いたwikiの順番を無視して急遽稗田礼二郎シリーズに突入します。 『夢みる機械』も半ばだったのに心変わり失礼します。 ネタバレします。 第1話「黒い探求者」「週刊少年ジャンプ」1974年37号 稗田礼二郎初登場。九州F県(というのは福岡県しか考えられないが)比留子古墳に赴く。「比留子古墳」というのは創作だろうが『暗黒神話』にも福岡県某所にあるとして登場する。 郷土史家の父を持つ矢部まさお少年は稗田礼二郎に手紙を送ったらしい。 それに答えて稗田はF県を訪れたのだ。 まさおの父親は一か月前…

  • 『夢みる機械』諸星大二郎

    1978年 サンコミックス朝日ソノラマ なぜか手持ちの単行本には何刷りかすら記載されておらず。&表紙カバーは外れて存在せず。 ネタバレします。 「夢みる機械」1974年週刊少年ジャンプ11月号掲載 絵柄が何とも言えず可愛らしい。 隣の哲学者シブさんが良い味出している。 無個性で何の刺激もない社会にうんざりしてドロップアウトする、というSFは多々あるだろう。 本作はいわば『マトリックス』カテゴリSFだ。勢作年順としては『マトリックス』が『夢みる機械』カテゴリともいえるが。 単調で退屈な現在に留まるか、『不思議の国のアリス』世界に飛び込んでいくか、それを選択するのは自分自身なのだという問いかけだ。…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 「人間の巻」 スサノオの命は八俣の大蛇を退治し、その尾からひとふりの剣を発見する。 その後その剣はスサノオからヤマトタケルの手に渡る。 それが天叢雲剣、別名草薙剣である。 竹内老人は武に「聖痕もあとふたつ。この先はわしが案内しよう」と告げる。 この後本作で名場面のひとつが描写される。弟橘姫(おとたちばなひめ)の登場である。 ふたりは静岡県焼津市を訪れる。 このあたりでは丸石の信仰があるという。 この丸石を本作では卵としてその中から人が生まれた物語があり、かぐや姫も元来は竹ではなく卵から生まれた話だったらしい、と語る。 老人はとある洞に祀られていた丸石=卵を杖で叩き割る。 中に…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「餓鬼の巻」 菊池彦は大神美弥を連れ大角隼人が待つ国東半島へ急ぐ。 隼人は武を見失ったという。 武はとある施餓鬼寺に辿り着き倒れていたのを住職らに助けられる。 本堂に寝かせられていた武の周囲に餓鬼どもが集まるのを和尚は観る。 菊池彦は石仏の上に彫られている梵字が気にかかっていた。 そこには「ヤマタイ」と書かれていたのだ。 寺では武が目を覚ましていた。 泥酔和尚は武に馬頭観音の説明をする。 畜生道や餓鬼道に落ちた人間を救ってくれる。 珍しい憤怒の観音である。 観音の馬頭は転輪聖王の乗馬を現しているという。 この施餓鬼寺は普段は寂れているが最澄が施餓鬼供養のために開いた寺であり毎…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その1

    週刊少年ジャンプ1976年20ー25号 先日記事で書いた通り諸星大二郎シリーズ始めることにしました。 wikiに記載されている単行本リストに従って読んでいきます。 画像の本と2021年第20刷の文庫本を持っています。 (先の本を失くしたと思い購入した) しかし文庫本では細かすぎて読めません。 しばらく映像を観ようと予定していたのですがどうしても映像に耐え切れず本に戻ります。 ネタバレします。 これが一冊の内容とは信じられないほど濃い。 とても順を追って説明するほどの根気はない。 それをやったらたぶんそれだけで膨大な資料になりそうだ。 「畜生の巻」 冒頭の描写がとても良い。 現在のうるさい演出が…

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』その2

    いつもあーだこーだ書く人間だけど本作については今のところ、特にこの3話4話言いたいこともないんだけど楽しんでいるからいいのかな。 楽しんではいるが一方キャラクターについても設定についても物語についても今のところ猛烈に言いたいこともない。悪口もない。 普通に楽しんでいる。 ところで・・・自分だけの感覚なのか、台詞がすごく『ヨルムンガンド』なのだ。 といってもそもそも『ヨルムンガンド』が『ガンダム』台詞だったのだから仕方ないのかもしれないが。

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』1

    久しぶりに映像を観る。 賛否両論、かまびすしくもりあがっている、そんな作品に参加してみる。 第一話目、初見、思った以上に面白く好きになれる世界観だった。 問題視されている「スマホ」に関しては確かになあ、という感じ。 存在に別にむかつきはしないがあんな落としやすく割れやすい代物をこの時代にアナクロ趣味としてではなく貧乏学生が必需品として持っているものかな。 しかしそれで言えば学生服も今はおかしくないが将来見る時には古風衣装だろう。 あえて古めかしい鳥居を入れ込んだりして新と旧を混ぜ込んでのお遊びなのだろうと自分的には判断した。 私にとってそれ以上に問題だったのはマチュとニャアンの登場演出なのだ。…

  • 『麒麟狩り』萩尾望都

    2021年 「諸星大二郎デビュー50周年トリビュート」より 今のところこの作品が今回の「萩尾望都マンガ作品読み返し」の最後の作品となります。(wiki記録にて) ほんとうはこの後そして現在も『ポーの一族』シリーズを描かれているのですが記事の書き方としてシリーズものはまとめて記すことにしたので『ポーの一族』シリーズは過去記事としてまとめています。 時期としては2024年10月号掲載の「青のパンドラ」が最後です。(wiki記載に従って書いているだけなので間違いはあるかもしれません) とはいえ今後の発表、というか私の場合は単行本になってからの記事になりますがその場合はこの後に続けて書いていくはずです…

  • 『ガリレオの宇宙』萩尾望都

    2020年「Apple Store」 萩尾望都初の完全デジタルで製作された本作『ガリレオの宇宙』がApple Storeにて公開中(2025年4月30日現在) その詳細はこのサイトに記されています。 www.hagiomoto.net 初完全デジタル作品がガリレオ・ガリレイの物語というのもさすがという感じです。かっこいい。 デジタルはそれまででも活用されてはいるようですが。 しっかしうまいし楽しい。そしてこの 笑ってしまう。色々使えそう。 異端と言われて書くことを禁止されていてもちゃんとこっそり書いてるガリレオ・ガリレイ。 萩尾望都氏は共感するはずだ。 ではその作品にリンクしておこう。 ガリレ…

  • 『バス停まで』萩尾望都

    2018年「週刊モーニング」1月25日号 2011年の東日本大震災後、2012年『なのはな』で福島原発事故後の人々を描き、2013年『AWAY』では世界の破滅への畏怖を描き、7年経ってまた本作を描いた。 やはり萩尾望都の悲憤は福島原発にあるのだ。 ネタバレします。 男がひとり草茫々の中に建つあばら家に向かい傾いだ家の戸をこじ開ける。 頭の中では妹の声が彼を導いていく。 妹の声は男に「汚いし危ないから靴のまま入っていって」というが男は靴のままじゃ上がれないと靴にビニール袋をかぶせて入る。 家の中はすでに荒れ果て泥棒も入っていたようだという。 二階は動物が住み着いていたのか臭いのだという。 「あま…

  • 『由良の門(と)を』萩尾望都/原作:岩明均『寄生獣』より

    2016年「月刊アフタヌーン」5月「ネオ寄生獣」より 残念なことに私が『寄生獣』をまったく読んでいないので原作との照らし合わせなどの面白みを味わえないのですが、その上での感想です。 ネタバレします。 そして本作自体も今回初読みだったのだが原作『寄生獣』を読んでいないのが悔しいほどの名作ではないのか。 私がこれから原作『寄生獣』を読むかどうかは未定だが知らずに本作の感想を持つのは読んでからではできないので原作未読の本作への感想もまた良いのかもしれない。 本作の主人公・由良は病院の中の病室で三歳までを過ごし「ふつうの子」と診断される。 神田夫妻の養女となって神田由良として成長する。 感情表現のない…

  • 『AWAYーアウェイー』萩尾望都 原案:小松左京『お召し』 その2

    ep3から「3月21日」世界が分かれた日です。 ネタバレします。 つまりep2から時間が戻ってAWAY世界では大人たちがどこかに行ってしまったと子どもたちが途方に暮れている。 ここで登場するのが大介が所属するバスケ部の後輩、河津克巳である。 ちょっと昨今のマンガではあまり出てこない個性的容貌の持ち主といえる。 しかも彼はとんでもない活躍を見せる。 それに関わってくるのが次に登場する不思議な笛少女ネネちゃんだ。 場面緘黙症だという説明がされる。 リコーダーを首から下げてピーッと吹くことでなんらかの意思表示をしているようだ。 AWAYでは子どもたちがどうしたらいいのかわからず不安の中で試行錯誤して…

  • 『AWAYーアウェイー』萩尾望都 原案:小松左京『お召し』 その1

    「フラワーズ」2013年6月号~2015年8月号 本作『AWAY』多くの方が評しているように「おもしろいんだけどあまりにも短い」 そしてなにか構成が破綻しているようにも思えます。 いつもやっているようにストーリーを追っていくべきかとも思いましたが、今回はストーリーよりも思ったことを書き記していきます。 ネタバレします。 ある日突然世界が18歳以上とそれ未満の二つに分かれてしまう。 それが「HOME」と「AWAY」 18歳以上の大人世界が「HOME」 未満世界が「AWAY」 「HOME」で赤ん坊が産み落とされたらその子は「AWAY」世界へ飛ばされてしまう。 「AWAY」である子が18歳となったら…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その8

    最終巻です。 ネタバレします。 美しく気高いマルゴは最期までアイデンティティを失わなかった。 自我を持ち続けた女性だった。 彼女は母后カトリーヌに厳しく躾けられ母を怖れ続けた女性で、だからこそ萩尾望都はマルゴを描いたと思われるのだが作者自身の成長のためか、マルゴは母を嫌悪しながらも上手く回避し時には逆らって行動していく。 以前の萩尾マンガにおける母親にはなんの対処もできないままの主人公とは大きく違うのが今回読みなおして感じたことだった。 母后は政略に子供たち、むろんマルゴも使っていき場合によっては死へ導く場合もあるのだがマルゴ自身は「そういう人だから」とため息しつつ開き直っている。この強さを萩…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その7

    うるわしい『王妃マルゴ』もついに七巻となってしまいました。 ネタバレします。 マルゴはナヴァルのアンリをベアルンに残しひとりフランスに戻る。 そしてサパン、今はジャックと呼ばれている我が子とついに再会する。 ジャックは父親かと思っていたアンリ三世にも失望しマルゴが近寄っても反発するのだった。 マルゴはすべてアンリ三世の仕業だと気づき改めて兄アンリに憎悪を抱く。 がアンリ三世のほうもマルゴに悪態をつきパリから追い出してしまう。 その後もジャック(サパン)を間にして兄アンリとマルゴの確執は続く。 アンリは本当に愛してほしかった人からは愛されないと嘆くが母から溺愛されデュ・ガストという忠実な愛人が長…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その6

    さすがに表紙になることはないがやはり歴史的に一番のヒロインはなんといってもカトリーヌ・ド・メディシスでしょう。 彼女の表紙は・・・・無理ですかねえ。 ネタバレします。 シャルルが24歳で死去。 アンジュー公アンリはポーランド女王に言い寄り宝石類をだまし取って(ほんとに?)フランスに逃亡帰国。 そしてフランス国王となる。 コンデ公の妻で身重のマリーを后にしたいと願い出るが(母后のさしがねでか?)マリーは葬り去られる。 (ここにアンリ三世はデュ・ガストを使い手紙を届けさせたためにアンリはデュ・ガストがマリーを毒殺したと疑うこととなる) アンリ三世は悲痛のあまり髑髏の衣服を纏う。 母后に逆らいルイー…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その5

    ではマルゴ自身をどう思うのかと言えば強く惹かれます。 一般的な歴史としては派手な男性遍歴と謳われてしまう彼女ですがこうして萩尾望都のマンガとして描かれれば純粋に愛を求めた女性として共感できるし魅了されます。 ネタバレします。 五巻の冒頭は萩尾望都『王妃マルゴ』の中でも圧巻だ。 母后カトリーヌはカトリックの王女マルゴとプロテスタントの王アンリの結婚を契機に一気にユグノーの一掃を企んだ。 この時母后は娘マルゴを夫の寝室へ向かわせる。 幼い頃にも殺戮に怯えて泣いた国王シャルルは自らの命令で虐殺されていくユグノーの死体に奇声をあげながらも狂ったように銃を撃ち続ける。 大虐殺を率いていくのはアンリ・ド・…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その4

    アンジュー公アンリ。なんやこいつ。むかつくヤツ。 しかし物語には絶対必要なヤツなんよな。 ネタバレします。 そんなアンリに対しマルゴは嫌悪を激しくぶつける。 マルゴがはっきり文句を言う女性なのが良いのだなあ。 一方、シャルルはコリニーに上手く言いくるめられまたも「父上」と呼んで信頼していく。 マルゴとナヴァルのアンリの結婚はマルゴが嫌がっても着実に母后によって進められていく。 阻むのはアンリの母ジャンヌだったがメディチ家(薬剤師)の生まれであるカトリーヌは彼女を美しい手袋を贈って毒殺する。 国王シャルルは后となったエリザベート・ドートリッシュとも愛妾マリー・トゥシェとも円満に仲良く、アンジュー…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その3

    なぜシャルルが一番好きなんだろう。よくわからん。 ネタバレします。 マルゴの美しさは輝くばかりとなっていく。 ギーズとの恋は秘められたものだったがふたりの間でより強くなっていた。 母后カトリーヌへの怖れは変わらないがスペイン語やラテン語が得意なマルゴは母から手伝いを頼まれるようになる。 カトリーヌは商売の大家メディチ家の出身である。政治は戦争だけではなく駆け引きと取引で解決するのが基本だとマルゴに教えるのだった。 アンジュー公アンリは女装をしてマルゴを待ち構えていた。 マルゴは兄アンリに「ギーズが好きなのね」と問う。 しかしアンリは「わたしが好きなのはおまえだ」と言い彼女の処女を奪ってしまう。…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その2

    アンリ・ド・ギーズ。 亡き父の仇を討つために自らの顔に向こう傷をつける。 そんな豪放磊落な男にマルゴは強く惹きつけられる。 ネタバレします。 マルゴたちは母后カトリーヌに従いフランス一周の旅に出る。 ところで私はアンリ・ド・ギーズよりシャルルが好きなのだけど皆そうなのだろうか。 そしてアンリ・ド・ギーズより田舎者のナヴァルのアンリのほうが良いと思う。 兄のアンリはなあ、あいつ。 マルゴは14歳となり社交界デビューを果たす。 ますます美しく艶やかになり男たちを魅了していく。 そんなマルゴを国王であり兄であるシャルルは溺愛し修道院に入れて自分だけのものにしたいと言い出す。 性愛に生きたいと本質的に…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その1

    「月刊YOU」2012年9月号~2018年11月号→「Cocohana」2019年1月号~2020年2月号 16世紀フランス。 後に王妃マルゴとなるマルグリット・ド・ヴァロワの一生が描かれる。 カソリックとプロテスタントの対立が軸となる。 ネタバレします。 王妃マルゴ。マルグリット・ド・ヴァロワ。 特に西洋歴史を学んだことのない一般日本人としては聞き及ぶこともない名前ではないか。 私はまったく知らなかった。 彼女の母、カトリーヌ・ド・メディシスであればうっすらと聞いてはいた。 それはたぶん彼女の夫であるアンリ2世と彼より18歳年上の愛妾ディアーヌのエピソードで知っていたのだが。 正妻との間に9…

  • 『なのはな -幻想「銀河鉄道の夜」』萩尾望都

    2012年 萩尾望都作品集『なのはな』に描き下ろし 「銀河鉄道の夜」は死んでしまった人が乗る汽車なのだ。 それを思うとほんとうに悲しい。 同様に「ひかりの素足」のお話が語られる。 宮沢賢治の物語の中でも最も怖く痛々しい描写がされるがこの中では救済の部分だけが取り入れられている。 唯一の慰めだ。

  • 『ハルカと彼方』萩尾望都・田中アコ短編集 ゲバラシリーズ

    「月刊アフタヌーン」2010年3月号~4月号 ゲバラと白湯はいわば探偵役のような感じになり表紙に描かれている兄妹ハルカと彼方の物語になります。 ネタバレします。 本作はもう前作の『菱川さんと猫』を上回る不思議話だ。 白湯は小学校で同級だった彼方と偶然再会する。 ほっそりした彼方は美少年を思わせる。 白湯はそのまま彼方の家を訪問する。 そこには驚くほどたくさんの水槽が置かれ様々な海水魚、淡水魚、古代魚などが飼われていた。 それは彼方の兄であるハルカが世話しているものだった。 仲が良すぎるほどの兄妹の話だがだからと言ってふたりがそこに性愛を求めるものでもない。 萩尾氏は「エドガーとメリーベル」とい…

  • 『菱川さんと猫』萩尾望都・田中アコ短編集 ゲバラシリーズ

    「月刊アフタヌーン」 猫シリーズが続く。 レオくんはやんちゃな子供だったけどこちらは落ち着いたおっさん的なかんじで良いです。 ちょっと不思議な本です。 田中アコさんが書かれた原作は全部なのか「菱川さんと猫」だけなのか、よくわかりません。 本にはなぜか目次がありません。 それらも含めて謎の本です。 (あ、カバーの裏表紙に目次的なものがありました) それから読むと絶対泣いてしまうのでご注意ください。 ネタバレします。 「菱川さんと猫」2009年5月号 大森レオくんは学校も会社もうまくやれない未熟猫だったがこちらの菱川ゲバラ氏は会社仕事もそつなくこなしていく。 語り手である高野白湯子は入社二年目の新…

  • 『レオくん』萩尾望都

    「フラワーズ」2008年2月号~2012年6月号 なんといっても表紙が良い。 レオくんと赤い表紙がとても良い。 ネタバレします。 レオくんは実際に萩尾先生が飼われている猫らしい。 幾匹かいる飼い猫の中でも特にお気に入りの猫らしい。 目の上の部分が一直線になるという特徴を持つ。上の画像でもそのように描いてある。 萩尾先生の描く猫は他のマンガ家が描くのと違いどっしりと重さが感じられる。 今回読み返すまで猫のレオくんが学校もお仕事もみんなと同じようにうまくやれなくてなんとなく障害を持つ子どもの置き換えのように感じて「これはいかがなものか」と拒否感を持っていた。 しかし今読んでみるとレオくんはむしろ我…

  • 『バースディ・ケーキ』萩尾望都

    「SF Japan」2007年SUMMER号

  • 『なのはな』その2 萩尾望都 シリーズここではない★どこか

    ネタバレします。 「雨の夜 ーウラノス伯爵ー」 「月刊フラワーズ」2012年2月号 「ウラン」をウラノス伯爵に擬人化してのお話。 「サロメ20✖✖」 「月刊フラワーズ」2012年3月号 「核廃棄物」をサロメとして擬人化した物語。

  • 『なのはな』萩尾望都 シリーズここではない★どこか

    「シリーズここではない★どこか」と記載されているのでそれに従います。 ネタバレします。 「なのはな」 「月刊フラワーズ」2011年8月号 2011年3月11日「東北地方太平洋沖地震」とそれに伴う津波により東京電力の福島第一原子力発電所で原子力事故が発生した。 その時の恐怖は忘れることはできないがそれでも今現在2015年となり14年の年月はその恐怖を薄れさせていく。 本作を再び読むことでその時の焦りのような心情を少し思い出せた気がする。 本作は同年2011年8月号に発表されている。 かなりの速さで描かれたのだ。 物語は事故そのものではなくそこに住む人々特に子供たちに焦点を当て描かれる。 主人公の…

  • 『春の小川』萩尾望都 シリーズここではない★どこか3

    といっても前回「シリーズここではない★どこか」2-2でかなり書いてしまったけど。 ネタバレします。 「花嫁 メッセージⅤ」 「月刊フラワーズ」2010年11月号 メッセージシリーズもⅤとなった。 黒い男の正体は相変わらずよくわからない。 歴史の案内者というところなのだろうか。 そして本作も両親に愛されずいいように利用されていく子供の物語である。 1420年フランスの王女カトリーヌ(キャサリン)とイギリスのヘンリー5世は結婚するがその前夜のお話。 アジャンクールの戦いでイギリスがフランスに大勝しヘンリー5世はフランスの王女カトリーヌ=英語名キャサリンに明日は求婚するということになっていた。 19…

  • 『スフィンクス』萩尾望都 シリーズここではない★どこか2-2

    ネタバレします。 「海の青」 「月刊フラワーズ」2009年7月号 おや前作品とは2年ほどの間があるのだな。 「人魚姫」をモチーフにしてさえない女の子とモテイケメンに置き換えたお話。 おもしろいのはモテイケメンが案外良い奴だったというところかな。 そして現代人魚姫は言いたいことは言って髪を切る。 「スフィンクス メッセージⅣ」 「月刊フラワーズ」2009年10月号 2年前に描かれた「オイディプス」のそれまでの話になる。 予言通りオイディプスは実の父を殺しテバイを訪れる。 しかしテバイではスフィンクスという怪物が夜な夜な出現し赤子を食うため人々は怖れ逃げ出す者もいた。 オイディプスはスフィンクスを…

  • 『スフィンクス』萩尾望都 シリーズここではない★どこか2-1

    ややこしくなりますが「シリーズここではない★どこか」の2巻目『スフィンクス』に入ります。 ネタバレします。 「青いドア」 「月刊フラワーズ」2007年8月号 このお話を「良い話だなあ」と感じるか「なんて嫌な女だ」と感じるかであなたの人生がわかります。 と言いたくなる作品だ。 語り手は「夫」である晴夫さんだ。 眼鏡のいかにも一般サラリーマンといった風情だ。平凡だが心優しく妻を愛している。 その妻の喜代子さんはなかなかの美人で生活力もあるけれどやや行き過ぎている感がある。 我が家をより良くしたいとまずはドアを青く塗ってしまう。 マンガはモノクロなのでわからないがかなり奇抜なのかもしれない。 平凡派…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか 3

    ネタバレします。 「くろいひつじ」 「月刊フラワーズ」2007年1月号 「黒い羊」が「身勝手によって要望や期待から逸脱していることを暗喩する、否定的な意味を持っている」という意味だとは知らずにこの年齢になってしまった。 そうだったのか。 本作では音楽が大好きな一家においてただひとり音楽が苦手でそれゆえに嫌いな男が描かれる。 普通、というか少なくとも萩尾望都的には絶対にこれまでこの役は小さな少年か少女のもので会ったのにここでは「オヤジ」と呼ばれる年配男がそれになる。 冒頭で兄が母のピアノを焼いた、という不穏な情報が呈される。「ピアノを焼く」この恐ろしい行動は特に音楽を愛する人には許されざる暴挙な…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか 2

    ネタバレします。 「ゆれる世界」 「月刊フラワーズ」2006年7月号 この話はどういう意味なのだろうか。パパは言われた通りに従っていたけど娘は自分で考えて行動していた。 パパは驚いたけど娘の説が正しい、というか自分にとっても良い感じだった、ということでいいのだろうか。 萩尾作品にはけっこう横山光輝SFからの発想なのかな、と思うものがある。 本作は横山光輝『ダイモス』を思わせる。 しかし羽があるからといってもなんの超能力にもならないのである。 息子くんがいうとおり邪魔なだけな気もするがそれを良しとしている奥さんが良い人だ。 風通しは確かに気持ちよさそうだと思う。 「メッセージ」 「月刊フラワーズ…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか1

    『シリーズ ここではない★どこか (Anywhere But Here) 』短編集です。 発表順と本の収録順が異なるのですが以前も書いた通り発表順にのっとっていきます。 「月刊フラワーズ」2006年4月号 『残酷な神が支配する』でふっきれたというべきか禊が終わったというのか、他作家に比べれば」ぎこちない感はあれど『午後の日差し』『帰ってくる子』そして『バルバラ異界』になって家族のつながりという題材が描かれるようになった。 本作にいたってはごく普通の家族の在り方と言っていいのではないだろうか。 ネタバレします。 主人公は生方正臣。小説家で大学の臨時講師らしい。 妻と高校生の娘、中学生の息子がいる…

  • 『長靴をはいたシマ猫』『猫本クリニック』萩尾望都

    2006年「講談社MOOK猫本」 「漫画家と猫」vol.1で読みました。 ネタバレします。 萩尾望都氏がイメージしたのが『長靴をはいた猫』なのが嬉しい。 子供の頃からこの童話の挿絵の猫くんが大好きだった。猫なのにきりりと凛々しくて賢い。ちょうどこの表紙のように自尊心の高さを感じられるのだ。 だが本作の猫氏は南南東電力のブレーカーの点検をしている業者さんである。 中上さんの家を訪れる。 主婦のナオちゃんはどう見ても猫にしか見えないその姿に(猫だ)戸惑う。 点検が終わりハンコを求められるがナオちゃんはどうしても猫が仕事をしていることが納得できず、前に飼っていた「タマキチ」ではないか、小学校5年の時…

  • 『天使のはなし』萩尾望都

    1997年「YOU」NO.15掲載 この作品は『あぶな坂HOTEL』の巻末に収録されていたのですがwikiには記載なしだったので1997年の作品だったと知って発表順に記録してきた私としては慌て中ですがやむなくここで記事にします。 「萩尾望都作品目録」には小作品として記載されていたのですが。 ネタバレします。 表紙の天使がユリの花を持っているのはマリアが純潔でありながら受胎したという意味が込められているのだろうか。 表紙まで含めて8pのごく短いお話だ。ドロップアウトした兄貴に代わり期待をかけられた予備校生が妊娠して切迫流産しかけた時に見た夢、という仕組みだろうか。 「どうせ産まないんだもん」とい…

  • 『あぶな坂HOTEL』萩尾望都

    「YOU」2006年第2号~2007年第23号 初読。『あぶな坂』は中島みゆきのファーストアルバムの歌曲からの由来というのが驚きでもありました。 そう言われてみればこの表紙に描かれている本作の主人公というか案内人であり、あぶな坂ホテルのオーナー藤ノ木由良は中島みゆきから造形されている気がします。特にこの表紙は似ています。 ネタバレします。 ところで藤ノ木由良ってなにから来たんだろうと思い検索したら福岡県のJR駅名に藤ノ木から5駅目で由良というのがあったのだけど、まさか福岡県の駅名からとったとか?萩尾氏は福岡生まれなのでありえなくはないが。なぜ??? 「ここはあぶな坂HOTEL この世とあの世の…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その12

    ネタバレします。 〔その23:ぼくのキリヤをかえしてくれ〕 青羽人形からエズラ=ヨハネのデータチップを受け取ることになった渡会たちは彼の遺言を知る。 大黒先生は叫ぶ「夢は現実になるんだ」そして地下モルグに走り彼の心臓が結晶化しているかを確かめる。さすが科学者こういう時はすばやい。 それをカーラーに見つかり大目玉。 その時菜々実さんが花小金井での火事を報せ続いてパリスから電話がくる。 「キリヤが落ちたんです」 場面が切り替わる。 パリスとキリヤが祭り会場にたどり着く。キリヤは御神楽の衣装と面をつけた。 どうやら「モミジ係」が来なくて用意したモミジを火の見やぐらの上から降らせることができないともめ…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その11

    ネタバレします。 〔その21:バルバラ崩壊〕 皆が去っていく。キリヤは一足先に東京へ戻った。 渡会は週末には東京へ戻ってキリヤに会いに行くと約束したがパリスは「必ずですよ」と青羽の人形を渡会に預けた。 パリスはキリヤからチップを渡されヨハネの遺言を聞いたので心穏やかではない。 かつてグリーンホームにいた子どもたち、そして老いた三姉妹も皆ヨハネを父とする兄弟だと知ったのだ。 残った渡会と大黒先生はふたりきりで話をした。 大黒先生は渡会に「キリヤはきみの実の子ではない」ということを伝えようとしていた。 だがキリヤが赤ん坊の時明美さんが遺伝子を調べてキリヤが本当に渡会の子供だったことを証明した事実が…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その10

    第四巻最終巻です。 ネタバレします。 キリヤと青羽は会話する。 「ステキな心臓を用意したからそれを食べて。早くバルバラを完成させましょう」という青羽にキリヤは「オレはひとつになんかなりたくない」と突っぱねる。 翌朝、菜々実は再びマリエンバートになっているのに気づき「嬉しい。渡会さんのために綺麗にならなきゃ」とドレスを着る。 その時ピルケースを見つけそれをエズラに飲ませたいと考えたことを思い出す。 百田氏は行き詰っていた。 青羽をもうこのままにしていた方が良いのではないかと考え始めたのだ。 その時、ボートを漕いでマリエンバートが現れる。 渡会は驚いて近寄りドレス姿の彼女に上衣を着せかけた。 キリ…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その9

    大事な話があります。 ネタバレします。 〔その17:誰もあなたの名前を知らない〕 ついに明美さんが大黒先生にキリヤの話を打ち明ける。 花小金井保育園に通っていたキリヤは給食に入っていた海老のエッセンスでアレルギーを起こし死んでしまったのだ。 明美さんは死んでしまったキリヤをヨハネに渡した。 ヨハネはキリヤを生き返らせてくれたのである。 ヨハネの息子として。 この話が一気に続けて話されないのでなかなかよくわからないのではないだろうか。 わかる人は超頭が良い。 キリヤは死んでしまった。 そしてヨハネが父親で借り腹で生まれた子どものひとり「タカ」が「キリヤ」となって明美さんのところへやってきたのだろ…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その8

    「遠軽」というと安彦良和さんですよねえ。 萩尾望都氏と吾妻ひでお氏の対談で「なんで遠軽?」「安彦さんと知り合って」「やっぱそうだと思った」というくだりがありました。 吾妻さんの浦幌町では駄目だったのでしょうか。ちょっと吾妻さんがかわいそうになりました。 「遠軽」という字と響きが良かったのでしょうかねえ。「エンガル」「ウラホロ」どちらもすてきな響きです。 ネタバレします。 〔その15:遠軽への遠い道〕 一行が飛行機で遠軽に向かう。 途中で濃霧が発生し女満別空港に降りる。 「女満別へようこそ」 「ようこそじゃない」「いそいでいるんだ」という罵声が悲しいなあ。(ま、たしかにようこそじゃないかもだけど…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その7

    渡会時夫が詰まってる表紙です。 ネタバレします。 三巻に入るんだけどこれまでの情報量がたった二巻とは思えない。 萩尾望都の力量を感じるが同時に「もっとだらだら見たい」気もする。わがままな。 〔その13:長い長い遺伝子の物語] カーラー女史。 楽しいキャラである。美女で黒人でバイタリティあってかっこいい。 十条菜々美の二番目の夫氏。良い人そう。 菜々美さんが何故この人と再婚したかというより何故この人が菜々美さんと結婚する気になったか、だが美しい花づくりをしている人だから美人好きだったということだろうか。 青羽はキリヤに遺伝子の物語をする。 いつもキリキリと眉を逆立てているキリヤがこの時は心地良さ…

  • 『バルバラ異界』萩男望都 その6

    ここの話をよく理解していなかったと気づきました。 だからわからない。 ネタバレします。 〔その11:お誕生日は同じ10月1日] キリヤの教室に突然現れたパリス=パインはキリヤを「タカ」と呼んで親し気に話し出す。 つまりパインの話によるとキリヤはキリヤではなくタカなのだという。 パインはずば抜けた記憶力があるので間違いないというのだ。 そしてもう二人の男の子もいた彼ら四人は「ベビーダックス」と呼ばれた。 里親用児童待機施設グリーン・ホームで育てられた彼らは一般タイプの体外受精卵で4人の代理母によって出産された。 同じ10月1日に生まれたのである。 彼ら4人はいつも一緒にくっつきあって動き回ったの…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その5

    今日も続けます。 ネタバレします。 〔その9:火星の海で泳いでいた] キリヤの前に突如あらわれた少女人形、それはキリカとマシロからのサプライズプレゼントだった。 「帰れよ。いらない」と払いのける(「いたァい」と話す人形)キリヤにすねるライカは人形を抱えて立ち去ろうとした。 二階から飛び降りてキリヤはライカから人形を受け取った。 「すきよ、キリヤ」と話す人形。 その時、どこからか紐状のものが飛んできて人形の首に絡まるや人形を奪い取ってしまう。 キリヤはその人物を見て「青羽の夢の中のパイン?」となる。 ところが”パイン”が人形を持ち去るともう一人同じ容姿の少年がいた。 「・・・これはチガウ・・・」…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その4

    二巻へと参ります。 本作は実写映画化やりやすいと思うのに何故やらないのだ? ネタバレします。 〔その7:きみに肩車してあげた] 渡会と百田氏は「胡蝶の夢」(我が蝶か、蝶が我か)と言う論議をする。 渡会は話さないがキリヤがイメージしただけのバルバラが現実に瀬戸内海に出没していることが現実となってしまったら、と問う。 「そうなれば我々の方が非現実となってしまう」 「ぼくたちのこの世界が夢になる、誰かの夢に」 「もしも青羽が目覚めてしまったら?」と渡会は問う。 両親の死とその心臓を自分が食べてしまったという事実を知ることになる。 しかし味方になってくれる者はいない。十条菜々美は最大の敵となる。 ・・…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その3

    ネタバレします。 本作で萩尾望都は子供を愛しているのに愛してはもらえないといういつもと逆転した父親を描くというチャレンジをしているが他にもちょこちょこ「いつもと違うテスト」をやっているようだ。 例えば30代の十条菜々美が10歳も若いエズラと恋をして結婚するというような設定は今では驚くほどのことではないが萩尾マンガではこれまでなかったことに思える。 そもそも萩尾キャラクターはわりに老けていてやや未来の話とは言え80代女性をあそこまで若く描くのも珍しい。 だが一番の「これまでにない」感は主人公の渡会時夫の「おたおた感」だ。 30代男性の主人公がいつもおたおたしながら不安げに進んでいくのが面白い。 …

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その2

    萩尾望都の後期作品の一筋縄ではいかない感じがたまらない。 いったいどうしてこんな話がどこから生まれてくるのと頭をひねくり回してしまうのです。 そして今回気がついたけど本作はわりと目の描き方があっさりしているのですよ。 私は実を言うと萩尾氏の描く目がきつく感じてしまうので目が軽い本作は必然的に好きなのだ、と今更認識しました。 ネタバレします。 [その3:公園で剣舞を舞ってはならない] もうね、キャラクターがひとりひとり魅力ありすぎでワクワクしてしまうんんだよなあ。 少年らしい繊細さと過激さを持つキリヤ、対照的におっとりとしているがおどおどしている渡会時夫と言う父子をはじめ、なんとなくエキセントリ…

  • 『バルバラ異界』萩尾望都 その1

    2002年9月号~2005年8月号「フラワーズ」 この『バルバラ異界』は以前も書いたことがあるのでより細かく書いてみたいと思います。 私にとって萩尾望都作品で最も好きな作品です。 ネタバレします。 これが中表紙。なんと平和な幸福な場面だろう。 年齢のせいでこういうので涙が溜まる。ダメすぎる。 [その1:世界の中心であるわたし] 冒頭は右下の女の子、青羽のおばちゃんマーちゃんの呼び声から始まる。 そして青羽のモノローグ 「あたしはバルバラが世界の中心だと思っていた」 ヤギ小屋で昼寝する三人の子どもたちが示すようにのどかでやさしい世界が描かれる。 朝はマーちゃんが焼くパンケーキをヤギの乳で食べ、青…

  • 『帰ってくる子』萩尾望都

    1998年「チャイルド 異形コレクション7」に描きおろし ネタバレします。 ユウにいちばん帰ってきてほしかったのはぼくだったかもしれない・・・ 『アロイス』を思い出してしまうお話でした。

  • 『学校へ行くクスリ』萩尾望都

    1994年「ビッグゴールド ビッグコミック増刊」16号 一見、SFファンタジー風味の不思議ラブストーリー、だがその正体は。 ネタバレします。 世の中は自分が見たいように見える。 逆に言えば見たいようにしか見えない。 つまりほんとうのものは見えていない。 見たくないものは見ない。 という作品だ。 よく好きな人が好きなアイドルに似ている、と思うのもその一つである。 他人が見るとまったく似ていないのに補正をかけて「似ている」と思ってしまうのだ。 特に若い時は思い込みが激しく強い。 だからある人を激しく好きになり尊敬してしまう。 そしてその人が「そうではなかった」と知ると激しく幻滅してしまうのだ。 「…

  • 『午後の日差し』萩尾望都

    1994年「ビッグゴールド ビッグコミック増刊」14号 萩尾作品定番の親と子の確執問題ものではあるが初めての(かな?)主人公が母親で母親側からの目線で描かれた確執であります。 ネタバレします。 主人公の賞子は42歳(この時萩尾先生は45歳くらいだから同年齢女性を描いたといえる)娘と息子を一人ずつ持つ(もちろん夫は一人)専業主婦である。 学生時代からの友人とトリオを組んでいて料理教室に通ってはおしゃべりをするのが楽しみというような感じのおっとりした中年女性なのである。 さてこの賞子の価値観は萩尾氏の持つ本質的なものだとしていいのか。 この時代の一般的中年女性と考えるべきなのか。 1990年代の4…

  • 『あぶない丘の家』萩尾望都 その2

    ネタバレします。 高校・文化祭でマヒコの1年1組は「シンデレラ」の芝居をやることに。 シンデレラはマヒコ、王子様は律子、という配役だ。 そんな時、マヒコの隣家に金太郎という青年がやってくる。隣家にはおばあちゃんが住んでおりその孫なのだがなぜかマヒコにはあたりが強く。 その金太郎は両親から「おまえがおばあちゃんの養子になればお金を貸してもらえるのよ」という無体な身売りをしろと言われて良い子ぶっていたのだった。 おばあちゃんが一時危篤状態になり両親は遺産が入ると大喜びするがおばあちゃんは奇跡の生還をしたのだった。 しかしおばあちゃんが金を貸してくれるとなって一段落。 金太郎も自由の身となって美大を…

  • 『あぶない丘の家』萩尾望都 その1

    「ASUKA増刊ファンタジー」DX」1992年夏の号・秋の号~1994年10月号」 本作再読して驚きました。 これはもうひとつの『残酷な神が支配する』ではありませんか。 ネタバレします。 黒髪の可愛い顔の弟と白髪のイケメン兄という設定はまったく同じ。 しかもこのようにイケメン兄アズが可愛い弟マヒコをいつも襲うという設定(チガウ) 両作品の執筆はほぼ同時期に始まっているのでこの設定自体は並行して考えられたはずだ。 しかもふたりの両親は自動車事故で死亡してふたりきりで暮らすというのも同じ。 (まあ『残酷な』は金持ち過ぎて単純なふたり暮らしにならないが) 違うのはあちらがドシリアスなのにこちらはかな…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その10

    最後の巻になってしまいました。 ネタバレします。 年末年始をずっとベッドで過ごすジェルミとイアン。 気づくと1月4日になっていてやっとふたりはベッドから出て動き出す。 早く日常に戻って勉強を始めようとするイアンの前にまたジェルミが現れて彼の心を振り回す。 かつてこの記事で「萩尾マンガでは美しい少女が男子を振り回すのが定番」と書いたが美少年も同じであった。 そうした関係性が好きなのだろう。 しかもジェルミはそれを気づかず「ぼくはいつもイアンの言う通りにしてきたのに一度くらい言うことを聞いてくれたっていいじゃないか」と涙しイアンは途方に暮れるのだ。仕方ない。惚れた弱みというやつだ。 ジェルミはペン…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その9

    夢中で追いかけてもう9巻となりました。 今度は終わりそうなのが悲しいです。 ネタバレします。 ジェルミはエリックとその妻ポピーと共にバレンタインに会うためスエーデンへと向かう。 ところがエリックに抱きつかれた途端バレンタインは逃げ出し二階の窓から飛び降りようとした。 必死でそれを抱きとめたジェルミ。 この時、怪我の功名で今まで声が出なかったバレンタインがわめき声をあげたのだ。 どちらが辛い話か、という比較をしてもしょうがないが自分自身が女性のためか、ジェルミの物語よりもバレンタインの話が辛い。 双子の兄との間にできてしまった子供を殺してしまうバレンタインの苦悩と悲しみを思うととても辛い。 ジェ…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その8

    どうしてもどうしても闇の奥から抜け出ることができないジェルミとイアン。 ますます複雑な迷路に侵入していくようです。 ネタバレします。 なんども繰り返されるジェルミとイアンの戦い。 シャロンによってふたりはリン・フォレストにいるナターシャと再会する。 ナターシャはジェルミに謝罪するがジェルミはそんなものは必要ないと答える。 どうしてもジェルミを捕まえられないイアンはあの鞭打ちの写真をもう一度リンドンに作ってくれるように頼み今度はジェルミとふたりでその写真を見ながら真実を聞いていく、という荒療治をし始める。 テーブルを挟んで向かい合うジェルミとイアンはまるでこれから戦うボクサーのようだ。 ふたりの…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その7

    ますます迷走していくイアンの物語です。 ネタバレします。 セックスは仕事でしかないというジェルミ。 ジェルミに金を払って彼の身体を抱くイアン。 そのイアンは「愛しているのはナディア」だという。 ナディアという女性もグレッグの最初の妻リリヤを思わせる。美しいが頼りなく愛だけを求めている女性だ。 つまりナディアはイアンの母親に似ているという構図になっている。 もう逃げない、ジェルミに向き合おう、ジェルミと正しい関係性を持とうと決意したイアンだったがリンドンが心配した通り事態はそんなに思ったようには進まない。 イアンはますますジェルミとの関係がおかしくなりそれゆえにナディアとの関係も不自然なものにな…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その6

    萩尾望都マンガは脇役も生きてるしちゃんと描いてくれるのでとても好きだ。 表紙の猫も良い。もちろんリンドンさんも。 ネタバレします。 イアンは大切なテストも放り出し今度こそはジェルミを救おうとアメリカボストンまでやってきた。 イアンの周囲の人々は彼を心配するがイアンにとってジェルミを見捨てることはできなかった。 この行動は多くの物語で行われないものだ。 たいがいは大切な人が失われ「あの時ぼくが追っていれば」という後悔の言葉によって締めくくられるのだが本作でイアンは後悔をしない行動をとる。 だがその行動はそう簡単には達せられない。 リンドンが言う通りイアンはジェルミが彼を必要とした時に何度も裏切っ…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その5

    さて我々はイアンの苦しみ悲しみを見ていくことになります。 その父親と同じように尊大で美貌で有能で彼自身揺るぎない自信を持っている彼が「おまえは何も知らない馬鹿な人間にすぎない」と打ちのめされるのです。 ネタバレします。 告白すると約束したボート小屋に来て「もうグレッグとはセックスしたくなかった。だから殺したんだ」と告げてすぐに風雨の夜出て行ったジェルミをイアンとリンドンは追いかけるが姿が見えない。 ふたりはボート小屋周囲の水面を探し回る。 ジェルミの服を見つけたイアンは飛び込みジェルミを抱えあげた。 リンドンはふたりをすぐに小屋のなかへと運び入れる。 イアンとリンドンは手早くジェルミの服を脱が…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その4

    「その4」じゃなくて4巻で良さそうだけど実は少しずつずれているのでそのままで行きます。 ネタバレします。 ついに4巻。 この4巻から主人公ジェルミは生きているグレッグに襲われることはなくなるが代わりに亡霊グレッグに苦しめられていく。 そしてイアンはこれまでの何も考えていないハンサムくんから深く考え怒り怖れ戸惑い悲しみ泣き苦しむ青年へと変貌していく。 最初は何故ジェルミの苦悩のパートナーにグレッグに生き写しと言えるイアンにしたのか、例えばマットではなくなぜイアンなのか、他の誰かでもなく、と思ったのだが本作のテーマとしてその相手はイアンでなくてはならないのだと気づく。 イアンはその容姿(長身で美貌…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その3

    恐ろしく鬱陶しい物語なのですが主人公ジェルミがあきらめずなんとかできないか、と最初から行動し続けているために読むことができるのだと気づきました。 他の誰かに助けられるのを待つのではなく自分自身んで探求していくのです。 しかしそれでも精神が破壊されて行ってしまうのですが。 ネタバレします。 実際、グレッグのこの行動を止める方法はなかったのかと考えてみた。 しかし結局ジェルミにとっての問題はグレッグではなく母親のサンドラなのだ。 グレッグとの結婚が破棄されてしまうと弱い母は死んでしまうのではないかというブレーキがジェルミの行動をすべて封じ込めてしまうのだ。 ジェルミは売春宿街へ行ってディジーから話…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その2

    萩尾望都氏はあちこちで「グレッグを描いていて辛くありませんでしたか?」という質問をされそのたびに「それが楽しくて仕方なかったんですよ」と答えるのを繰り返しています。 むろん萩尾氏は自分自身の辛かった時期を重ねて本作を創作したはずですがこれまでと違って親側に感情移入してしまったということでしょうか。 夏目漱石は小説を書くことで自浄作用があった、と『「坊っちゃん」の時代』に描かれていましたが萩尾氏も本作を描くことで何らかの自浄作用があった、ということなのでしょうか。 ネタバレします。 確かに、執拗にグレッグのジェルミへの性暴力は繰り返し描かれていく。 他のこういった作品であれば衝撃的な描写の後では…

  • 『残酷な神が支配する』萩尾望都 その1

    「プチフラワー」1992年7月号~2001年7月号 ついに萩尾望都最長編にたどり着きました。(『ポーの一族』のシリーズものは除外して) なのに私は本作が苦手でまったく好きとは言えません。とても内容が辛いからです。 嫌いと思うのが正しい気がします。 しかしこの作品をスルーしてしまう、もしくは一回で軽く話すことはとてもできないと思います。 本作で主人公は苦しみ続けたのです。 私も彼の心に寄り添って苦しみを少し舐めてみましょう。 ネタバレします。 とはいえ幾度か読み返した作品でもある。 順に追っていくのではなくできるだけ全体を通じて語りたいと思う。 どうなるかわからないが始めよう。 本作が最大の長編…

  • 『イグアナの娘』萩尾望都

    1992年「プチフラワー」5月号 萩尾望都を知る上でおすすめの作品は?と問われれば今では本作と『半神』と答えられるのではないでしょうか。 ネタバレします。 この恐ろしい心の内面をここまで面白おかしく描けてしまう才能に圧倒される。 私の好みとしてはあまり読みたい話ではないのは確かなのだけどやはり凄いと感心してしまうのだ。 そして萩尾さんがSF好きであったことが何より救いであったのではないかと勝手に思ったりしてしまう。 なのでこの凄い名作についてはあまり語ることがない。 どえらい作品であるということとおすすめ作品であるのは確かである。

  • 『カタルシス』萩尾望都

    1991年「プチフラワー」11月号 この萩尾望都感想シリーズはウィキペディアと「萩尾望都作品目録」に従って順に追っているのですがここにきて戸惑ってしまいました。 が、ある方の「カタルシスはイグアナの娘の後に描かれていますが」という文を見て「はて?」となったのです。 年表では本作が先で半年後に『イグアナの娘』となっているのですが手持ちの本(『イグアナの娘』)の本作の最後頁に確かに「1992年5月号」そして「イグアナの娘」の最後頁に「1991年11月号」と記載されています。 本が間違っているのか、wikiと作品目録が間違っているのか? ネットユーザーも本で確かめた方とwiki及び目録で調べた方とで…

  • 『感謝知らずの男』萩尾望都

    1991年「プチフラワー」5月号~1992年3月号 萩尾望都バレエシリーズのあちこちに出演しているレヴィ。 ちらりとしか出なくても高いバレエ能力を持ち飄々としたカッコよさの彼です。 そんなレヴィが主人公となった作品です。 ネタバレします。 主人公となったレヴィはまだ17歳の未熟な悩める少年として登場する。 見た目の綺麗さはそのままだが大人になって見せる落ち着きはこの頃にはまだなく思い通りにならない自分自身と他人との関係性にいつも戸惑い苛立っている。 痩せっぽちのレヴィの夢は強くがっちりとした身体と精神を持つことだ。 本作で我々はそんなレヴィの理想を求めて苦しむ様を見ることができるのだ。 不眠症…

  • 『ジュリエットの恋人』萩尾望都

    1991年「プチフラワー」3月号 これもなにこれえ? のラブストーリーです。 ネタバレします。 要するに最初から最後まで相思相愛で終わると言う。 確かにこれは『ロミオとジュリエット』である。 愛することを「家」に邪魔されたのではなく自分自身に邪魔されているロミオとジュリエットである。 バレエの技術も最高で何の問題もないのに自分たちだけで自分たちの邪魔をしている。 (ロミオがというべきかもだけど) バレエシーンも美しい。

  • 『ロットバルト』萩尾望都

    1991年「プチフラワー」1月号 なんだろこれ。今回初読みです。 ネタバレします。 独特の味すぎる。 殺人まである恐ろしい話なのにコメディなのだ。 た、たしかに。 今はどうかわからないが昔はよく映画でも人殺しコメディなのがよくあった。 こうしたドタバタ展開ギャグラブコメは萩尾望都の得意とするものだったけど今現在は「殺人コメディ」って許されないものかもしれない。あったっけ? これはほんとに山岸凉子バレエマンガではありえない? でも萩尾先生も山岸バレエマンガ少しは参考にされているような気もする、ポーズなど。 誰が殺した? スリルとサスペンスそして恋愛とバレエ。しかも白鳥の湖。 ワクワクドキドキの殺…

  • 『真夏の夜の惑星』萩尾望都

    1990年「プチフラワー」11月号 タイトルからしてシェイクスピア『真夏の夜の夢』からきていることは確かなのだがその中身はぼんやりとしか知らない私が読みました。 ネタバレします。 なのでこの作品と『真夏の夜の夢』がどのように関係するのかはわからないがなんとなくそれほど重なってはいないのではないか。 萩尾望都持ち味の古典とSFを組み合わせるという試みのひとつなのかもしれない。 やはりオークが見どころか。

  • 『ローマへの道』萩尾望都

    1990年「プチフラワー」1・3・5・7・9月号 この作品がとても好きで読み返してしまいます。 かなり苦い味わいではあるのですが。 ネタバレします。 主人公のマリオ・キリコは憧れのバレエ団ドミ・ド・リールに入団する。 上昇志向の高いマリオは周囲のダンサーたちが皆劣っているように思え自分こそスターになれると意気込むがドミ・ド・リールが選ぶのは自分ではなかった。 マリオの葛藤が細やかに描かれていく。 自分が一番うまいはずなのに何故選ばれないのか。 マリオは養父母に育てられたがそのことに悩みはなかった。 だが養母が死んだことで実の母の話を聞く。実母が夫(マリオの実父)を殴り殺して7年間服役し今も生き…

  • 『海のアリア』萩尾望都

    「ASUKA」1989年8月号~1991年5月号 初読みです。 これはまた不可思議なSFを。 以前の『モザイク・ラセン』を思わせます。 異世界と音楽と共鳴というものが萩尾ファンタジーの基盤でしょうか。 ネタバレします。 冒頭に家族との確執が描かれますが、それはごく上面部分のみで後はもうほとんど出てこないのはよかった。 いやいやそれより冒頭で語りて的な主人公と思われた十里くんがすっかり出てこなくなってしまうのが謎すぎる。 これはあまり構成を考えずに描き出した、というやつなのかな。それともそういう風にあえて描いたのか。 しかし読んでいくとそんなことはもうどうでもいいとのめり込んでいく。 アベルが全…

  • 『青い鳥』萩尾望都

    1989年「プチフラワー」11月号 どうも私は頭が悪いらしいです。今頃わかったか、という感じですが、この話も最初読んだ時、よくわからなくて「なにこれ??」と理解できないでいました。 今となると何故理解できないでいたのかのほうが不思議ですが、目が滑ってしまっていたとしか言いようがありません。 ネタバレします。 萩尾望都が中国系の人物を描いたのは他にあっただろうか? ど忘れしているだけかもしれないけど無い気がする。 そのせいもあってヤンという中国風の少年の造形描写に違和感を感じてしまったのかもしれない。 ところが読み返してみるとそんな違和感はまったくのお門違いだったと気づいた。 それどころかすばら…

  • 『海賊と姫君』萩尾望都

    1989年「プチフラワー」9月号 これまた奇妙な味わいの作品です。 バレエと恋愛をシンクロさせていくのはもう無論巧みだがキャラクターの癖が強く生半可に共感などできない気がします。 これを読んでハッと気づいた。 以前はいつも「おなじみの美しく奔放な少女と振り回される少年」と書き続けていたのにしばらくそれを書かないでいたら本作は単純なそういう構図ではなくなっている。 少女はやはり美しくて奔放ではあるが内心とても揺れ動いているし少年、ではなく30男(29歳)は振り回されているが美しく傲慢でもある。 本作を初めて読んだ時は「あまり面白くないように感じてしまった」のだけれど読み返すうちにこの不思議な味に…

  • 『フラワー・フェスティバル』萩尾望都

    1988年「プチフラワー」7月号~1989年1・3・5・7月号 独特の味わいのバレエマンガです。 ネタバレします。 バレエマンガと言えば私にとっては山岸凉子で他にない、というくらいなのだが萩尾望都の本作を読んで山岸凉子とはまったく違う描き方に驚いた。 まず私はミドリが嫌いだ。 嫌いなんだけど読んでしまう。 これ一番まずいパターンの奴。一番引きずり込まれる奴なんだ。 というか。 本作の家族物語&恋愛編はちょっと苦手なんだけどバレエパートは本当に好きだ。 特にサンダーの「ほんとうに美しいバレエを踊れる女性と踊りたい」という思い入れが当然とはいえ惹かれてしまう。 そしてこのサンダー君が前回言った甲斐…

  • 『完全犯罪』萩尾望都/All songs written by KAI YOSHIHIRO

    この本を持っておりまして再読しました。 甲斐バンドと甲斐よしひろのアルバムから選曲してマンガとして描いたという作品。 この時期の萩尾望都にこんな試みをさせるのは本人が希望しなければとてもできないものでしょうが、萩尾望都自身が甲斐よしひろに惚れ込んで描いたのだから当然と言えば当然だ。 この本の巻末に「アルバム紹介のおしゃべり」という文がありますがこれを読むと萩尾望都がどんなふうにこの作品を作っていったかがわかる。 萩尾望都と甲斐よしひろという組み合わせはぱっと見まったく違うものにも思えるかもしれないが実は非常にシンクロしているのかもしれない。 事実私はその両方が好きなのだからわかる気がする。 両…

  • 『友人K』萩尾望都

    1985年「グレープフルーツ」21号 またこれがよくわからない話です。 どういうことなのですか。 ネタバレします。 語りてはオレ。ワルガキで秀才、リーダーで足も速く数学は一位というオレに比べKはやせたチビとしか思えないのにオレより足が速く数学一位を譲ってしまう。 それにもかかわらず交通事故に会いそうになった奴をオレは心配してやったのに無視していってしまったことに苛立つ。 そんな時誰かがKの家庭の事情をばらしオレはそれでKをからかった。 いきなりKはオレの胸ぐらをつかんで怒鳴りつけてきた。 オレは動けなかった。 そしてKは口をきかないまま卒業していく。 四年後Kと目が合うことがあったがそのまま別…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その11 完結

    最終回です(たぶん) ネタバレします。 エピローグ「ホウリ・ナイト」 モノドール都市からみるみる水が引いていく。 (ドクンドクンという鼓動とともに) そして誰もいないはずの海岸線に一人の姿があった。 それはヒョロヒョロに痩せ切ったセンザイマスターだったのだ。 地下にいたメイヤードとアシジンは救助されたがメイヤードは死亡した。 アシジンとグリンジャ、ゴー博士はセンザイマスターを訪ねキラの行方を問う。 「死んだよ」 もうおしまいだと青くなるゴーにマスターは「なんの。これから始まるんじゃ」と答える。 「キラが洪水を止めたのか」と訊くグリンジャ。 「聞こえないか?」とセンザイマスター「まだ体に残ってい…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その10

    ネタバレします。 第21話「洪水」 突然の新マザの死にミカルはキラこそマザだと叫ぶ。 (この時のミカルは(というかこの世界の男はだけど)出産をどのように考えているのか?「みんなの子供を産んでくれる」と何のためらいもなく叫ぶのが恐ろしい。「蜜蜂のようなもの、と思っているとすればキラの腹が巨大化すると考えているのか?) ここでアシジンだけがまったくキラの心配などせず自分の毒消しのことしか考えていないのがおもしろい。 ミカルは叫ぶ「きみは誰の子供を産むんだ?」 この時爆破のスイッチが入った。 それが暗示の言葉だったのだ。 七つの塔が次々に爆破されていく。 聖者たちは唱える。 「我々は都市と共に沈む。…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その9

    ミカル主人公バージョンも読みたいんだよな。 ネタバレします。 ミカルが新市長になる時が来た。 センターの不思議な場所で作り出されたマザ・ハレルヤの衣を受け取り儀式を終えた。 アシジンはセンザイマスターの指示でメイヤードから偽の毒薬を飲まされ解毒剤を飲まないと死ぬと告げられる。 解毒の条件はキラをつれてくることだった。 アシジンはヘビの宿を訪れるがそこにいたのはグリンジャだけだった。 ゴー博士はヘビ男をつれネズを訪ねていた。 キラはマーゴのアジトで念力でスイッチを入れる暗示にかけられ実験をくりかえしていた。キラの超能力は確実だった。 そこへアシジン・グリンジャが来てキラは喜びアシジンに抱き着くが…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その8

    最終巻です。 この内容が3巻で終わっているとはなあ。 本音を言うと「図書の家」の話とかもう少しやってほしかった。あの雰囲気がとても好きだ。エメラダとエドモスの話も。 ミカルの話とか・・・こっちから描くバージョンもありなんだよなあ。 ネタバレします。 第16話「えもの」 波乱の前だが奇妙に穏やかな時間が描かれる。 とはいえエドモスはもう帰らないエメラダを思って怒っている。 以前よりアシジンに心開いて話をするようになったキラだがひとりグリンジャを探しに出る。 しかしそこをセンザイマスターの念力に襲われてしまう。 救けを呼ぶとそこにグリンジャが現れセンザイマスターの方がはじきとばされてしまう。 アシ…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その7

    ネタバレします。 第13話「ヘビじじいとヘビ男」 アシジン、マーゴはヘビじじいの家でエドモスと会い地下道の地図を渡される。 その時、奇妙な揺れが起きる。 メイヤードはこれをキラの超能力だと判断した。都市のどこかにいると。 「キラを狩りださねば」というメイヤードの言葉にゴーが怒りだす。 ナースタースは「アーリンが子供のことをなんと言ってるか見せて」と指示した。 アーリンの映像がこれまでのことを語る。 キラが生まれて16年。4人で同じ一個の人格を共有していた。一人は赤ん坊のままで3人は普通に成長していった。 赤ん坊が4人の脳や心の中心で他は手足だとイワンは説明した。 ひとりの教えると他のふたりも覚…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その6

    🚨🇯🇵 JAPAN ON TRACK FOR ‘EXTINCTION’Japan’s birthrate crisis hit red alert, with Tohoku University’s Hiroshi Yoshida warning the country could literally vanish by 2720 - leaving just one child under 14.A 2.3% drop in kids has sped up doomsday projections by 100 years, as… https://t.co/Y8ePkA9cxU pic.…

  • 『Marginal/マージナル』萩尾望都 その5

    さてここから第2巻に入ります。 少し脱線して、この物語が何故男ばかりの世界かというのは誰も別に疑問にはしないかもしれませんがもし女性だけの世界の物語にすればたぶんほとんど問題は起きないからでしょう。 『西遊記』にも「女人国」というのがあったけど女性だけでなら精子だけもらって受胎することが出来れば他に何の不都合もない気がします。 女性だけの国の話は安泰すぎてSFにもならないのかもしれません。 ネタバレします。 ここから先は全体を通してのネタバレをします。 第8話「レクイエム」 この回で重要な開示がされる。 ネズは民俗学者で地球に30年以上いる。ということは彼は年齢が50~60歳だと考えられる。 …

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