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  • 『影丸と胡蝶 ほか七編』横山光輝時代傑作選 「ムササビ」

    「ムササビ」週刊少年キング1969年 同じタイトルで三作品ある・・・・? 連載で三作品あった、ということなのかな。なのに目次では二作品・・・・? いろいろ謎である。と思ってたら2・3作目は末尾に「マンガ少年版①②」と書かれていた。そういうことだったのか。 ネタバレしますのでご注意を。 前も書いたことですが、私、横山作品の中で一番忍者ものが不得手です。 これはたぶん自分の中の忍者もの、というのが白土三平を基準にしているせいだと思えます。 白土三平の特に『カムイ外伝』を読み親しんできたので横山氏の忍者ものはどうにも生ぬるい気がしてなかなか受け付け難いのでした。 とはいえ横山氏自身主人公に影丸という…

  • 『影丸と胡蝶 ほか七編』横山光輝時代傑作選「仇討ち始末」「ほらふき陣左」「恋と十手とお銀ちゃん」

    さてネタバレしますのでご注意を。 「仇討ち始末」増刊漫画サンデー掲載1968年 腕は立つが道場破りをしてはその日の糧にしているだけの貧乏浪人である主人公。 仇討の助太刀をする報酬を受け取るが・・・・という物語。 横山氏はこういうみみっちく生きている男の話は不得手なのではないだろうか。顔を赤らめたりして可愛すぎる。 「ほらふき陣左」原作:辻真先 別冊漫画アクション1972年 表紙の陣左衛門は自分の武勇伝を長屋の子どもたちに語って聞かせる。子どもたちはそれを楽しみにしているのだが実際の陣左は武士の間では臆病者として嘲られていた。 このキャラは辻真先氏によるものだからだろうか。横山オリジナルではなか…

  • 『影丸と胡蝶 ほか七編』横山光輝時代傑作選 「影丸と胡蝶」

    さて本編より先に外伝を読むシリーズ。 ネタバレしますのでご注意を。 別冊マーガレット掲載1964年 おおっと。少女マンガでしたか。だからこんなにヒロインかわいいんだな。 影丸が葉山の里を通る時に必ずある墓に立ち寄るという。その墓には捧げられる花のきれたことがない。わたしと同じようにこの里の人々も彼女のことが忘れられないのだろう。 という出だしで始まる。 その彼女というのがタイトルにある「胡蝶」であり胡蝶はその村の名主の娘なのだ。村は凶作なのにもかかわらず領主から例年通りの年貢を取り立てられ人々は飢えて死ぬ者が絶えない。胡蝶の父である名主は領主に惨状を訴えに行ったもののそのまま帰らぬという。 胡…

  • 『横山光輝セレクション』「伊賀の影丸」「魔界地帯」「飛猿斬り」

    あの『伊賀の影丸』に幻の読み切り作品があった! これはすごく気になる惹句ですなあ。早速中に入りましょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 「伊賀の影丸」 などと言って、す、すみません。横山光輝の代表作の一つなのに私はまだ未読了です。『鉄人28号』読めたのになぜなんだ。心の中の白土三平が立ちはだかるのだろうか。(ものすごい白土ファンなのです。幼い時は白土アニメばかり観てた気がする) ものの本によると『伊賀の影丸』は1961年~66年の作品と記されていますがこれは番外的読み切り企画として別冊少年マガジン1970年7月号掲載のようですが横山氏の作品年表に記されていなくて「?」となりました。「その後の…

  • 『捨て童子 松平忠輝』横山光輝/原作:隆慶一郎 その2

    魅力的な人物を描いてくれたものだと思う。 ネタバレしますのでご注意を。 まだすべて知ったわけではないのだけどここまで読んできた作品でおおまかにいえば横山光輝は戦いの歴史を描いてきた。そしてそれが大きな人気を呼んだと思う。『鉄人28号』しかり『バビル二世』しかり『三国志』しかり多くの忍者もの、そして戦国時代の武将たち。それらは胸躍る男たちの戦争のドラマだ。 が晩年、年表を見ると90年代に入ってからになるが『史記』『殷周伝説』などが並んでいる。 横山氏の作品の中でも非常に面白く読んだのだがやはり人気という点では低いのではないだろうか。(思っただけなので事実はわからない) 本作『捨て童子』もその時期…

  • 『捨て童子 松平忠輝』横山光輝/原作:隆慶一郎 その1

    読了してから書いています。同じく横山光輝著『徳川家康』を先に読んでいたのはとても良かった。 ネタバレしますのでご注意を。 これはいわば「もうひとつの徳川家康と忠輝と秀忠」ともいうべき作品なのだ。 ドラマ『如懿伝』を観て『瓔珞』と比較したことがあるならその妙味がわかるだろう。 とりあえず(諸説あるだろうが)史実的な『瓔珞』で悪女とされた嫻妃=如懿が『如懿伝』ではなぜ彼女が「悪」と皇帝から退けられたのかがわかる。 本作も山岡荘八『徳川家康』で「悪」とされ父親・家康から退けられた忠輝の物語の真実とは、という仕掛けになっている。 『如懿伝』が面白かった人は本作もきっと興味深いに違いない。私がそうなのだ…

  • 江戸川乱歩妖美劇画館 3巻(『白髪鬼』『闇の顔』)横山光輝 その2「闇の顔」

    購入した本ではモノクロページでした。 なんか期待してしまうえっちな表紙ですね。 「白髪鬼」が読みたくて購入したのですがこちらの「闇の顔」だけでよければ 別バージョンの本もありました 闇の顔 (講談社漫画文庫) 以下ネタバレしますのでご注意を。 昨日書いた「白髪鬼」よりその一年前に描かれた本作のほうがより横山光輝らしい作品といえるだろう。 一応乱歩『白髪鬼』を下敷きにしていると思われるのだがなにしろこちらは男性しか出てこない。 「白髪鬼」では美しいルリ子がなんと言っても目を引くがその役が大田黒という髭のおっさんになっている。これでは一般男子が喜べない。 なぜルリ子がおっさんになってしまうのだろう…

  • 江戸川乱歩妖美劇画館 3巻(『白髪鬼』『闇の顔』)横山光輝

    横山沼にはまりebookでのデジタル作品を購入読み続けてきたのですがさすがに食指が動くものが少なくなってきたと思い涙ぐんでいました。 年末には「まだまだ続く」と書いたばかりなのにとしょげていたら「いやまだたくさんある」ことに気づきました。 世界はすべてデジタル化されているわけではなかったのです。 いやいや今までもいくつか(『長征』とか『狼の星座』とか)読んできたのにうっかりしてました。 横山世界はまだまだ広かった。 とにかく嬉しい(私がうっかり屋なだけですが)さらに沼を潜水していきましょう。 偶然ネットで画像を見て「横山作品こういうのもあったのか」と驚きました。私は横山先生をまだ全然わかってい…

  • 『武田勝頼』横山光輝/原作:新田次郎 その2 読了

    読了しました。 ネタバレしますのでご注意を。 信玄が作り上げた最強の軍団が短期間で恐ろしいほど崩れ落ちていく。 おおよそ9年の間、勝頼27歳から36歳の死亡で壊滅する。 私はほとんど武田家の話を知らないので本作によってのみの感想になるのだけど勝頼の描かれ方が悲しいほど孤独だ。 頼りになるはずの親類衆とは心が通っておらず最も近しいはずの穴山梅雪が最も勝頼を嫌っている。これではうまくいくはずもない。 唯一勝頼を盛り立てようという意志があるのは真田昌幸のみに見える。とはいえ昌幸も勝頼に惚れ込んでというのではなくあくまで武田家への忠義と思える。 信玄の時の山本勘助のような存在は勝頼にはない。事実がどう…

  • 『武田勝頼』横山光輝/原作:新田次郎 その1

    横山光輝歴史もの、読み始めると止まらなくなる。物凄い中毒性ある。 ネタバレしますのでご注意を。 神の如き威力を持った武田信玄の死後の武田軍。信玄の大きな失敗は後継者を明確にしていなかったことだった。 当然跡を継ぐべき嫡男勝頼は今も最強の武田軍の中で采配を振るうことも許されず手をこまねいているしかなかった。 読み始め、さすがに信玄のいない武田軍の物語は味気ないものに思われたが登場人物が次々と「信玄様がいない今」「先代様亡き後」「先代様のご遺言」と言う言葉で物語が進んでいくのだ。 これはなんか『桐島部活やめるってよ』的なものを感じてしまう。 ならばこれはデュ・モーリアの『レベッカ』であり萩尾望都『…

  • 『鉄甲軍団』横山光輝 「闇斬り」「かげろう伝」「隻影」「鉄甲軍団」

    昨日のシリーズは終わってここからはいつもの横山美形シリーズ。 横山先生はやっぱり美形の方が好きだったのかな・・・基本的には。 ネタバレしますのでご注意を。 「闇斬り」(1976年月間少年ジャンプ) 今までの作品の後だからか主人公の左近くんがまばゆいほど美しい。 そしてやはり美形男子は心もまっすぐ、と描かれていく。 伊賀、葉隠れの里(葉隠れは佐賀なんじゃ?)でひとりの忍者がお頭を暗殺する事件が起きる。 が、左近はお頭の受けた傷を見て疑惑を持った。これは別の忍者の仕業だと。左近は裏切者たちを殺すが自らも傷を負い老忍者たちの住む場所に逃げ込む。 左近は経緯を話し茶を飲むがその茶には毒が入れられていた…

  • 『鉄甲軍団ほか八編』横山光輝 「愛執」「蝦蟇」「浅い川」「死者踊り」「笛」

    さてさっそく読んで参りましょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 「愛執」(1969年プレイコミック) 極めて端正な美形主人公が多い横山光輝作品の中で珍しい不細工系主人公。 しかも冒頭から「男は見るからに醜男で背も低く風采があがらなかった」と説明されてしまう。 このブ男・作蔵は美しい未亡人志乃が夫を殺害した男を仇討せんと旅をする供をしている。 その旅はもう三年も続いていた。 作蔵は美しい奥様にお仕えすることに異様なほどの喜びを感じている。 ある宿で作蔵は仇討の男を目撃してしまうのだが未亡人志乃には伝えず密かに男を殺害してしまうのだ。 そして作蔵は何もなかったかのように再び愛しい未亡人志乃と共に…

  • 『長征』(上下) 横山光輝

    『長征』1973年(昭和48年)3月~12月「ビッグコミックオリジナル」連載の初単行本(2004年)すでに廃刊になっており古本にて購入しました。 先日書いた『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝 その3「長征」とは違う作品です。(作品の舞台は同じです) 1973年の年表を見れば横山光輝氏が手掛けた『バビル二世』『三国志』『戦国獅子伝』『闇の土鬼』他にも怒涛のように作品名が記されている時期です。その中でこんな壮絶な作品を描いていたとは恐ろしい思いがします。 とはいえこの作品が2004年まで単行本化されなかったのは残念です。私は最近になってやっと氏の作品を読みだした者なので悔しい思いをせず読めた…

  • 『刺客伝』横山光輝

    1974年「少年チャンピオン増刊号」掲載 同じく横山光輝著『史記』7巻の第3話「刺客荊軻」の原型作品、と横山光輝オフィシャルウェブで記されています。 ネタバレしますのでご注意を。 まずは先日読んだ『史記』と絵を比べてみましょう。 『史記』「刺客荊軻」の荊軻 『刺客伝』の荊軻 若い!若くて色気がある!(カラーページと言う意味ではない) 『史記』荊軻 『刺客伝』荊軻 うーむやはり横山光輝若き頃の男性には魅力がほとばしっていますな。 とはいえ真摯な感じは同じ。こういう一途さが横山男子の味と言えます。 では内容は。もちろん同じ話なので本筋は同じですが受ける印象は大きく違うのが面白いです。 『史記』「刺…

  • 『武田信玄』横山光輝/原作:新田次郎 その2

    ついつい一気に読んでしまいました。 マンガで最初勢いよく面白いのにだんだんつまらなくなっていくのはよくあることですが本作は逆で進むごとに面白くなっていきます。 原作ありだからこそかもしれませんが横山先生も後に行くほど面白いと思われての漫画化ではないでしょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 というか若い頃の武田晴信より信玄になってからが面白いのでしょうか。 若い頃は女性関係のごたごたが多いのですが横山氏の魅力はどうしてもそこにはないので仕方ない。 とはいえ横山作品としては珍しいほど最後まで女性が活躍するのも面白い。というか日本戦国時代の物語でここまで女性が第一線で活躍するのは稀有ではないでしょ…

  • 『武田信玄』横山光輝/原作:新田次郎 その1

    気になる人物なのに今まで特にその人生を知らずにきた武田信玄。横山光輝氏マンガで読めるなら一挙両得と読んでみました。 ネタバレしますのでご注意を。 先日読んだ山本勘助が勿論出てくる。が、主人公だった時はすごい男前だったのがここでは不細工男として描かれる。そもそも勘助は不器量だったと記されているのでこちらが本来なのだろう。しかも(今のところ)両目がある。そして韓信だ。 『項羽と劉邦』で韓信のキャラデザインをすごく褒めたのだけどもともと山本勘助だったのか。(さらに元ネタがあるのか) 横山氏は家康・信長・秀吉と描かれていてさらに伊達政宗そして武田信玄なのだけど上杉謙信はないようだ。(本作に登場はするが…

  • 『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝 その4 「怪物ーモンスター」

    「小6ホームクラス」1学期号旺文社1970年4月・非売品 横山光輝の描く少年の魅力よ。 表紙の主人公少年だけでも充分すぎるほどなのだが中へ入るともっと凄い少年がいます。 ネタバレしますのでご注意を。 表紙の少年は兄と南アルプスの黒岩岳に登る。 爽快な気分で登山をしていたのだが午後から酷い霧が立ち込める。ふたりは立派な洋館を見つけそこで一休みさせてもらおうと行くのだが。 最初優しそうな女性が出てきて「それはお困りでしょう。でも息子がなんと言いますか」と言ってしばらく待たされる。やっと中に通されると今度は父親らしき男性から「決して息子に逆らわないでください」と忠告される。 よほど怖い男がいるのかと…

  • 『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝 その3「長征」

    資料:岡本隆三『長征』 横山光輝著単行本上下の『長征』というマンガ作品があります。これも現在廃版で古本としてしか購入できない状態です。 本作の中に同タイトルの作品があったので驚いてしまったのですがこれは45pで無論別の内容です。 単行本の方はすでに読了していました。横山沼にはまってからこの『長征』という作品があるのに気づき中国ものに興味がある私としては横山氏が中国近代史をどのように考えておられるのかすぐに読みたくなったのでした。 きっと重苦しく読み難いものだろうと身構えたのですが実は想像したものと全然違ったのです。それはこの45ページの「長征」も同じでした。 ネタバレしますのでご注意を。 単行…

  • 『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝 その2「城と太陽と名探偵」

    さて『横山光輝超絶レアコレクション』の三作目は「城と太陽と名探偵」です。 ネタバレしますのでご注意を。 「城と太陽と名探偵」原作:梶原一騎/高一時代1970年8月号」 解説でみなもと太郎氏が語られるに「本書の中ではこれが珍品中の珍品」 原作が梶原一騎で横山光輝漫画というのは他にないものなのですね。確かにイメージできません。横山氏は描く主人公に明確なこだわりがあるからなあ。 そして本当にこのマンガに登場する男子は他ではあまり見られない感じです。 さらに驚きなのは表紙を見るとわかるのですが「東芝ICアクセス」という新商品のPRを兼ねたものになっていて本作出版のために編集部が東芝に許可を願い出たとこ…

  • 『横山光輝超絶レアコレクション』横山光輝

    すでに絶版になっているようで古本で手に入れましたが今やそれも期待できないようです。 単なる復刻版ではなく長い時間をかけて原画を蘇生する、という労力が注がれた復活本となっています。(と説明がされています) すばらしい作品群なので是非また販売されることを願うばかりです。 (デジタル化されているのかは不明です) ネタバレしますのでご注意を。 みなもと太郎氏による解説が懇切丁寧で重要です。 まず巻頭に「イラストポエム」というのが2pあります。1970年10月号の高1コースに掲載されたもの。 可愛い、というより知的でちょっと勝気そうな綺麗な少女の顔のアップとその少女を想う少年が描かれ恋心が謳われています…

  • 『隻眼の竜』横山光輝

    山本勘助が武田信玄に仕官するまでとその後を描く。 ネタバレしますのでご注意を。 とはいえ物語はほぼ横山氏の創作のようで思う存分氏が望む男性像を描いていると思える。 70年代の作品、横山氏の40代の筆によるものなので勢いと色気を感じさせる。 とにかく主人公山本勘助がかっこよく描かれている。横山氏の特色はこの美形主人公には女性を関わらせたくないところにあるのだがその分相棒の源蔵を女性担当として登場させている。 源蔵はかなり小柄な男として表現されている。「マンガ」なのでデフォルメとしてとらえられるがそのままで見てしまえば小人症とも思えてしまう。そう思ってしまうとどうしても思い起こしてしまうのが『ゲー…

  • 『伊達政宗』原作:山岡荘八/画:横山光輝 その4

    四巻で中断していた『伊達政宗』続きから最終巻(八巻まで)読了しました。 ネタバレしますのでご注意を。 先に山岡荘八原作の『徳川家康』を読んでいたので復習するような形で読め非常におもしろかった。 最後に行くほど政宗の人生には家康の影響が大きくなっていく。 政宗を評して「あと二十年早く生まれていたら天下を取っていた」と言われるが一二年ならまだしも二十年は大きすぎる。 むしろ二十年遅く生まれたからこそ政宗たり得たのではないかとも思うのだが。結局歴史でたらればはあり得ないと思うのだ。 なぜなら歴史は様々な要因が関わってできていくもので単純に計算できるものではないからだ。 深い知性と勇猛さを併せ持つ政宗…

  • 『狼の星座』横山光輝 その4

    ついに最終巻です。ネタバレしますのでご注意を。 章嘉ラマの寺に逃げ込んだ健作。寺と言ってもそこは一国の城のように壮大なものだった。 健作は大僧正に礼を言い自分を救い出すために死んでいった者たちを取り戻し手厚く葬りたいと願い出る。 その為には義兄弟の力が必要だった。彼らを呼び健作は遺体を返さない経棚の知事のいる城へと向かう。 話し合いに応じない知事を健作は自ら仕留める。 そして遺体に手を合わせた後丁重に棺に入れ章嘉ラマの寺まで連れ戻った。 しかしこの一件で健作には政府から通輯令が出てしまったのだ。これによって健作は別の省に逃げても逮捕されるし彼を隠した者も同罪になるというのだ。 これを聞いた健作…

  • 『狼の星座』横山光輝 その3

    ネタバレしますのでご注意を。 部下たちを遊ばせてやろうとした健作は街中で警察に逮捕されてしまう。 部下たちは金貨四千枚の賄賂で健作を救い出した。 外へ出た健作は初雪の夜、山中で凍った河を渡る。 そして谷間を進む千匹以上もいる狼たちの群れを見る。健作は「これだけの狼を引き連れる狼のボスはどんなやつだろう。男ならこれくらいの部下を引き連れる大攬把になってみたいな」とつぶやく。 これは後に横山氏が描いた劉邦を思わせる。 がその直後、健作は行く手を阻む包麻兄弟の縄張りに入り込み銃撃戦となる。 敵はゆうに健作たちの二倍以上いたがこれまで負けたことのない健作は猛然と突き進んだ。しかし劣勢すぎた。「半分以上…

  • 『狼の星座』横山光輝 その2

    『狼の星座』横山光輝 その2 - ガエル記

  • 『狼の星座』横山光輝

    横山光輝『狼の星座』は今現在デジタル化もされておらず古本でしか買えない状態のようでやむなく自分も古本購入。 ネタバレしますのでご注意を。 時は明治末。(ゴールデンカムイと同じ頃か)主人公日向健作は新潟の田舎で生まれたが幼い時に大病を患い生死を彷徨う。村の祈祷師のお祓いで命を長らえたものの「この子はよく言えば人の上に立つ人間、悪く言えば大盗賊になる」とその人相を判じられ「魔除けとして六つになるまで女の子として育てるように」と言われた。 両親は我が子を守りたい一心で言葉通り健作が六つになるまで女の子として育てた。 が、健作は女の子の格好と言葉遣いをしながらも村のガキ大将をやっつけてしまうほどの胆力…

  • 『伊達政宗』原作:山岡荘八/画:横山光輝 その3

    物語というのはそれが小説にしろマンガにしろ映画にしろ魅力的な人物をいかに描いていくかにあると思いますが本作の伊達政宗は確かに秀逸にキャラ立ちしています。 ネタバレしますのでご注意を。 勇猛果敢でありつつ人を食った智謀も持ちしかも容姿端麗なれど独眼であるという傷がよりキャラを強くする。あまりにもマンガのキャラクターすぎる。しかもなぜか実の母親に殺されそうになるほど憎まれてしまう。いったいどうしてこんな話ができたのか。 さらに毒殺されそうになっても「母に罪はない、母を咎めるな」と苦痛の中で訴える政宗に心打たれてしまう。 まあ私としては政宗・小十郎コンビもとい主従が話し合っている場面を見ているだけで…

  • 『伊達政宗』原作:山岡荘八/画:横山光輝 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 とにかく伊達政宗をまったく知らなかったのでこんなに面白い人だと思わなかった。 それは幼少期の教師である虎哉禅師による教育の賜物なのだ。虎哉禅師は幼い政宗をみて「素直すぎ繊細過ぎる」と感じる。「武将の条件は豪快さと慈悲を併せ持ち細心でありながら清濁併せ呑む度量を持つこと」として「強情我慢とへその曲げ方」を教えていくのだ。 果たして政宗は虎哉禅師が望んだ以上にへそ曲がりの強情に成長していく。 すでに大物になっていた秀吉や家康を相手にしても怯まない武将となる。 まずは父親の輝宗の度肝を抜いていく。 戦談義において算盤をはじく基信を父・輝宗は叱るが政宗は「算盤の名手だから…

  • 『光る君へ』その1

    久々にNHK大河ドラマを観る気でいます。 自分が観る気になると低視聴率になってばかりなのでとても申し訳ないのですが仕方ない。今まで好きで観たものが『平清盛』『いだてん』と思い切りワーストなのです。 しかし『真田丸』も好きだったので今回なんとかそちらの方へ行ってくれたらと願います。 とはいえそもそも今までにない平安時代舞台で戦争ものではなく女性の人生を描いたものになるであろう。しかもそのヒロインはお姫様ではなく小説家という二重三重の変わり種であります。 しかし『源氏物語』の光源氏ではなくあくまでも紫式部という女性にスポットを当てたという時点でかなり「おっ」と興味を持ち待っていました。 第一話目、…

  • 『伊達政宗』原作:山岡荘八/画:横山光輝 その1

    すみません。ちょっとだけと本作覗き込んだら面白くて止まらなくなりました。 なので急遽こちらを読み進めます。 ネタバレしますのでご注意を。 原作:山岡荘八/画:横山光輝と記されているほどなのでよほどそのままなのだろう。 私の伊達政宗知識は以前に読んだ横山光輝『徳川家康』の最後あたりに出てきたものとかつての大河ドラマでのうっすらとした記憶くらいなので本作がどのくらい伊達政宗かはわからないのだけど物凄い力で引き寄せる魅力がある。 横山マンガはいつも淡々と物語を進めていくのだがそれがとても心地よい。 政宗は早熟に才能を花開かせる人物だが母親からは疎まれるという運命を背負っている。 代わりに父親からはそ…

  • 『三国志』横山光輝 再読その1

    確かにこう切り取ると意味深だ。 『三国志』再読します。まあ最初もかなりじっくり読んだのですが。 横山作品ほぼ長編を読んでしまい、と言ってもまだ『伊賀の影丸』や幾つもの作品があるのですが主作品がなくなってしまった感に襲われ(いわばロス状態なのでしょうか)寂しくなって今ここで『三国志』に戻ってみたくなりました。 ネタバレしますのでご注意を。 一巻、まだ何者でもない劉備玄徳。一仕事を終え久しぶりに会う故郷の母に当時貴重品だったお茶を買い求め大事に持って帰る、というエピソードから始まる。 しかしそのお茶を守るために張飛に助けられお礼に宝剣を渡してしまう。その宝剣は玄徳の由緒を示す大事なものだった。 そ…

  • 『水滸伝』第七部(完結編)まで 横山光輝

    はい、第七部(完結編)まで読了。 第八部は番外編のようです。 ネタバレしますのでご注意を。 なるほどなるほど、と読み終わりました。 腐りきった社会。力なき皇帝を良いことに金儲けと遊興にふける政治家たちのために人々は塗炭の苦しみを味わう。 そしてさまざまな理由で行き場を失った男たちが集まったのが梁山泊だった。最初はただの山賊集団だったのが晁蓋を統領にしてから義侠心に厚い壮士たちの軍団になっていく。 とはいえ主人公は宋江と言われるものの読んでいると林冲・呉学人・鉄牛の活躍の方が印象に残る。 と、この三人後に林冲は劉備、呉学人は孔明、鉄牛は張飛になるのではないかと思われる。 特に鉄牛がやたら活躍して…

  • 『水滸伝』第一部 横山光輝

    『水滸伝』さすがに少しは学生時代に読んだ記憶がある程度だ。 幾人かの人物名は知ってるもののどういう物語なのかはほぼ知らず。なんか梁山泊に悪人どもが集まってる話だよね、というくらい。 さてどんな物語なのか、楽しみである。 出だしはかなりギャグ調だ。 いまからおよそ九百年前大宋国は平和だったがある時疫病が流行る。時の天子仁宗皇帝は竜虎山に住む仙人に病疫退散の祈祷を頼むことに決め使者を送った。 皇帝の使者・洪大将 ご馳走大好きな太っちょだけど「洪大将閣下自ら皇帝の勅書を捧げて登らねば仙人に会えません」と言われ渋々登っていく。めちゃ威張っていたのに「皇帝のために」と言われ虎に出会ったり大蛇に会ったりし…

  • 『地球ナンバーV‐7』横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 数ある横山作品からこの作品を選んだのは「もしや『スター・レッド』の元ネタなのではないか」と思われるコメントを読んだからなのです。 果たしてどうなのでしょうか。 まずはこの表紙絵。『スター・レッド』のレッド・セイの特徴は赤い目。本作の主人公ディック牧もご覧の通り赤い目で描かれています。 ほほう。それでは中に入っていきましょうか。 冒頭、地球上に生命が生まれ環境に順応し生活に合った体を作り始めた、という説明がなされる。 次に突如飛行機事故が描かれ激しい損壊の中に奇跡的に生き残っていた姉弟がいたという事実が提示される。 時は未来。 地球と火星は戦争になりかねない状態にあ…

  • 『仮面の忍者赤影』『新・仮面の忍者赤影』横山光輝

    実写ドラマをほとんど観ていない私でも『仮面の忍者赤影』はさすがに少しは観た記憶があります。 相当にぶっ飛んだ忍者ドラマで特に凧に乗って飛ぶのが印象的でした。 物凄く二枚目忍者の赤影と生意気な子ども忍者青影と白髪まじりの白影が活躍するのですが私的にはまあまあという感じでそこまではまりはしなかったのでした。 私にとっての忍者ものは『風のフジ丸』『サスケ』『カムイ』という今思えば全部白土三平原作アニメでそのカッコよさにはぞっこんはまり込んでいました。 大人になってからも、というか大人になったらより白土三平作品に傾倒していきます。 と言う私がおそるおそる『仮面の忍者赤影』を初読みしたのですが。 ううむ…

  • 『クイーンフェニックス』横山光輝

    おすすめ機能に現れてちょいと読んだら止められなくなった。 読んだ皆さんが言われてますが横山先生にこんな作品があったとは。 1975年週刊少女コミック掲載作品。 ネタバレしますのでご注意を。 時期的に読んでいても不思議ではなかったのだが、これは全然知らなかった。漫画雑誌を買う人間ではなかったので仕方ない。 男性作者が女性向けを描く時は必ずと言っていいほど「美と若さ」が題材になりがちです。たぶんまあ確かにそれが女性の大問題なのでしょうがここでもそれが語られます。 しかも男性作家の描く男性が女性にそれが重要であることを否定はしないのですからより辛辣ではあります。 それにしても横山先生の描く女性・女子…

  • 『史記列伝/下』横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第6話「野心家寧成」 前回の郅都のさらに上を行く恐ろしい酷吏・寧成の物語である。 郅都はただひたすら生真面目で恐ろしかったが寧成に至っては恐怖を与えることを自覚しているのだがそのせいもあってか早めに捕まり投獄され死刑を求刑されるのだがなんとここから投獄して生き延び金もないのに後払いと言う条件で田地を買い込んで億万長者になってしまう。おまけに恩赦が出て死刑が取り消しとなり地方の有力者になってしまうのだが新しい太守が彼を調べ始めたと聞いて逃げ出した、その行方は誰も知らない、と言う終わり方。 なんかよくわからないけど凄い男の人生だった。 第7・8話「冬の月 前編・後編」…

  • 『史記列伝/上』横山光輝 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 本作では魯国の朱家について描かれている。 朱家は遊侠の徒として名を馳せたという。 遊侠の徒、とは「約束したことは絶対に守り、なそうとしたことは絶対にやり遂げ、命を懸けても人の窮地を救い、千里の果てにいても信義を守る」ためにはこの世の正義に背を向けることもあるという人々だ。 私は日本の「任侠」は好きになれなかったが中国の「武侠もの」が大好きです。 そこで描かれる「侠」の精神とそれを持つ人への憧れと尊敬がすでに明確に『史記』に記されていたのかと感心しました。 項羽に仕えていたことで追われている季布を朱家がかくまい劉邦の側近である夏侯嬰に目通りを願い「壮士を憎んで敵国に…

  • 『史記列伝/上』横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第1話「義に殉ずる」 「刺客列伝」にその名を記された予譲の物語だ。 前五世紀、六人の大夫(家老)が権力闘争を始めた頃、予譲という才能のある男がいた。 が、彼は使い走り程度の役目にしかつけないままでいた。 そんな時、六大夫の中で最も勢力のある智伯が兵を挙げ范氏を討ち中行氏も全滅した。 智伯は権力欲が強く評判の悪い人物であった。 予譲はその智伯に仕官した。ところが智伯は予譲の才能を認め一人の国士として屋敷を与え召使をつけて厚遇した。 智伯は次に趙氏を討つ計画を立てこの計画に予譲を重用し韓氏と魏氏への使者として送り味方につけたのだ。 三氏による趙氏への戦いは三年に渡った…

  • 2023年大晦日 今年を振り返るーそこには横山光輝沼がー

    今年を振り返ると横山光輝しかないW 思えば6月17日。それは今は亡き横山光輝氏の誕生日の前日なのですが当時はそんなことは知る由もなくなぜか突然横山光輝にはまってしまったのでした。とても深い縁があったのではと勝手に思い込んでいます。(当日じゃなくて前日だからあまり関係ない) その大きな原因の一つは何度も語ったのですが「まどそごみ」さんの『三国志』パロマンガでした。それから半年間それまでの映画ドラマブログが嘘のように横山マンガ一色になってしまいました。ほとんどまともには映画ドラマを観ていません。 それでもまだ横山作品たっぷりあるのですから恐ろしい。『三国志』ももう一度読み返したいですしね。 毎年「…

  • 『赤龍王』本宮ひろ志:横山光輝『項羽と劉邦』との読み比べ その2

    怒涛の項羽と劉邦でした。 とにかく勢いが物凄い。 私は横山『項羽と劉邦』を読んでいたので内容はわかるのですがいきなり本作を読んで理解できるものなのでしょうかと心配にはなりました。 ネタバレしますのでご注意を。 一番気になるのは虞美人の変化よりも「陳勝・呉広の乱」の描写ではないでしょうか。 「革命」というものがないこの日本では「陳勝・呉広の乱」はこうした表現になりがちなのかと暗澹たる思いもしました。 少年誌においてこの乱をどう表現するのかは重要なことに思えるのですが。 「陳勝・呉広の乱」は史上初の農民反乱であり、この楚漢戦争の引き金になった重要な事柄です。 それは力及ばずわずか半年で内部分裂しリ…

  • 『赤龍王』本宮ひろ志

    突然の本宮ひろ志。と言ってももちろん『項羽と劉邦』だからである。しかも張良がかなり気になるキャラデザだったので読まずにはおれなかった。 私は横山光輝マンガはまったく読んでこなかったのですが本宮ひろ志は幾つかは読んでいて大好きだったりします。(大好きだけど読んではいなかったという) さて調べてみると本作は1986年から1987年まで週刊少年ジャンプで掲載、のち追加執筆、という形で創作されている。確かに少年ジャンプでこの内容はムリすじな気がする。 対して横山『項羽と劉邦』は1987年から、と入れ替わるように執筆され1992年で完了と横山光輝氏の堅実さが表れている、とここで横山氏を持ち上げるのもなん…

  • 『項羽と劉邦』横山光輝 その4 読了

    ネタバレしますのでご注意を。 昨日は愚痴を書きましたがやはり面白いことに変わりはなく。漫画化というかある作品をもとに別の作品が生まれる時はその作者の血が入るのは当然でだからこそ〇〇版という言い方がされるわけで。本作は横山光輝が生んだ『項羽と劉邦』なわけです。 と書いていて思ったのですが『三国志』の関羽は本名じゃないという話もあるのですが明らかに項羽から羽の字をもらったのではないかと思ったりします。 となると『三国志』では劉邦の子孫と項羽を名乗っている男が兄弟になった、ということになりますかな(チガウ) とにかく最期は項羽でした。 項羽が馬鹿だろうがエゴイストだろうがこの追い詰められて三十万の兵…

  • 『項羽と劉邦』横山光輝 その3

    ネタバレしますのでご注意を。 大変面白く読んでいるのですがここで少し苦言と言うか不満と言うか愚痴を書いてみます。 まずは劉邦と項羽の対比。 青年貴族・項羽 女と酒好き中年男・劉邦 出自の卑しい中年男と貴族の若者、という対比がこの物語の基礎だという前知識がありました。 ところが本作ではほとんどこの差が見えません。 女好きで酒好きで教育のない男・劉邦、と言うイメージも最初こそ描かれていたのですがそもそも横山氏がそういう男を描かないために劉邦は殆ど小綺麗な品の良い男になっていて卑しさが見えません。 逆に項羽は鈍重で粗暴で若々しさがないためほぼ劉邦と同じ年に見えます。 前知識がなければ別に気にしなくて…

  • 『項羽と劉邦』横山光輝 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 張良見たさに読み始め充分堪能させてもらっていますが途中からやはり韓信物語になていきます。横山氏は戦闘エピソードが好きなので(選択題材でわかりますが)どうしても韓信の方に重点が置かれるのは当然ですね。 とはいえその韓信の才能を見極め劉邦軍に引き入れようと手引きしたのは張良なのだから嬉しくなります。 そして劉邦自身はなかなか韓信の実力に気づかないのですが側近たちの必死の説得でやっと韓信を大元帥に任じる運びになるのですがいやはや劉邦ひとりではとても全国統一などできなかったのが解ります。 張良が韓信を引き入れる場面。 ところでこうして読んでいくと『項羽と劉邦』は『三国志』…

  • 『項羽と劉邦』横山光輝 その1

    ここ最近読みたくてたまらなかった本作ついに手に取る。 と言っても項羽も劉邦も嫌いなんだけど周囲の人間たちに興味がある。特に張良が見たくて見たくて、と期待しているのだけど期待しすぎだろうか。 ネタバレしますのでご注意を。 なにしろ先に『史記』を読んでしまったので本作は「知ってる知ってる」という具合でさくさく読み続けてしまいました。 項羽も劉邦の外見も『史記』の時より細やかに描かれているように感じます。 しかしその成り立ちはむしろ本作が大雑把で特に劉邦がどのような人物だったかは『史記』の方が詳しく描かれていたような記憶です。 さてお目当ての張良は『史記』でも読んだように先に始皇帝暗殺失敗者として登…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その6

    ネタバレしますのでご注意を。 やはり私にとっては鉄人よりも金田正太郎クンが気になり読み続けてきました。 前にも書きましたが正太郎クンは現在の「ショタコン」そして単に「ショタ」という表現も当たり前に使われるようになってきた言葉の語源の存在です。 一応説明すれば「ショタコン」は「ロリコン」の対語。成人が幼い少女を愛することをナボコフの『ロリータ』にちなんでロリータコンプレックス=ロリコンと称したのに対し成人が幼い少年を愛することを日本では「ショタコン」と称したわけです。かつてはロリコンに比べかなりマニアックな呼称だったのが今では当たり前になってきた感があります。 小さな男の子のことを普通に「ショタ…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その5

    ネタバレしますのでご注意を。 もうすっかり道に乗ったという感じで進んでいきます。 ちょいと飛んで「ブラック博士の巻」に入ります。 18巻84pから。 またもやたらイケメン青年が何者かに追われ逃げている場面から始まる。美女じゃなく美男なのが横山流だ。 この美青年は追われている途中で発砲され銃弾を受けても逃げ続け正太郎クンの家にたどり着き助けられるという展開になる。 正太郎クンは医者を呼んで手術を受けさせた上そのまま静養させるのだ。 昏睡状態の青年はうわごとで「ブラック博士、赤死館」と言う言葉だけを繰り返すのだった。 追っ手から再び奪われそうになるのをいったんは阻止するも結局奪われてしまう。 青年…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その4

    かわいい ネタバレしますのでご注意を。 今更気づいただけかもしれませんが横山マンガ独特の「集団のおかしさ」が出始めたような気がします。 大量生産されているせいで鉄人との一対一ではなく集団で襲ってくることになるのですがそれが奇妙におかしい。 ロビーの造形も興味深い こういう集団でいるおかしさですね。 後の忍者ものにも表れる この絵はすごいな そしてこれ なんとなく吾妻ひでおっぽいw なんかおかしいw これはかわいいレーダー虫 こういう絵がうまい 不思議テイスト おかしいんだよすごくあじまだし こういうのがうまい 坊主w 悪ノリw これは楽しいなあとにかく多いw そしてこのかわいいかんじがいいんだ…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その3

    不思議な表紙絵、宇宙なのに潜水してるw ネタバレしますのでご注意を。 ところで私はこんな風に驚いた時に帽子がポーンと飛ぶという表現が大好きなのですが(可愛い)最近の漫画家さんはやってくれないので(あるのかもしれないけどw)とても寂しい。 『鉄人28号』ではそれがどんどん出てくるのでそれだけでも楽しいですw こういうやつです。 それから不乱拳博士みたいな布をかぶっているのに表情が見えてタバコや飲み物をのんだりできるってやつも良い。 ところで前回嘆き悲しんだモンスター 生き返りましたw 人気あったのかしらん。 ちょっと不思議な言い回し。 そして ♪よる~のまち~に すいません。自然と頭の中に歌が流…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 鉄人のデザインを云々できるほど知識はありませんが 少しの間にかなり描写の進化が見て取れます。 四巻の52pではかなりカッコ良くなっていて重量感も迫力もありますが 地肌が白というのか塗りがないのが 54pでは影がはいります。その分さらに重量感が増します。 さらに201pになるとより影がこなれた感があります。 それが204pになると夜の光のせいもあるかもですが、影がくっきり黒塗りに。 かけアミより黒く塗りつぶす方がより重量感を感じさせます 315pではもう黒影がすっかり定着し際立っています。 これが最初の登場の鉄人ですが デザイン自体はそれほど変わっていませんが影の入…

  • 『鉄人28号』横山光輝 その1

    さてついに『鉄人28号』読み始めます。 あの安彦良和氏をして「横山先生の描く少年はほんとうに魅力的で」と言わしめたその原点がここにあるのだとちょっと緊張もします。 すでに上にあげた表紙絵にその片鱗は伺えます。 しかしこのズボン、今の感覚では短すぎてスカートに見えてしまいますね。昔は極端に短かったので仕方ない。 そして噂の村雨健次氏との出会いは。 はあ、ここですでに上下関係が伺えますな。 きっぱりした態度が横山スタイル。 村雨健次、なかなかお洒落だし弟の可愛さがあるね。 スマートな兄弟。 ふむふむ。かわいいね。 そして 親友が鉄雄だったんか。 『アキラ』はそのままだったんだ。 この鉄人のデザイン…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その16 横山光輝 完

    最終巻です。 ついについに。 といっても前回記事で少し入ってしまいましたがw ネタバレしますのでご注意を。 武王は盟主として上座につくよう望まれる。辞退するものの「周は仁義道徳を旗印として正しい国を造ると宣言なされ東征を開始された。ここで武王に盟主となっていただき諸侯をまとめていただきたい」という熱い要望と太公望の勧めで武王は引き受けたのだった。 太公望は牛耳の誓いを始めた。 生贄の牛を引き出し眉間を突き倒れた牛の血を取り片耳を落として盃に入れた。 「ではこの地を啜り盟主の命令に従うことを誓っていただきたい」 東伯侯姜文煥、南伯侯愕順、北伯侯崇黒虎、東南揚侯鍾志明、などなど次々と盃の血を啜り「…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その15 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 潼関の援軍に来た鄧昆は相棒である芮吉に自分は周に帰順しようと考えていると打ち明けた。 実は黄飛虎は鄧昆の叔父なのだという。叔父を尊敬して叔父と共に天下のために戦いたいと考えていた。そして芮吉を誘うと芮吉もまたとっくに紂王を見限っていたというのだ。だがどうやって周軍に帰順の遺志を伝えるか、と声に出した時突如どこからか「そのお役目、私がいたしましょう」と語りかける者がいた。 周囲に溶け込んだ土行孫だった。援軍が来たという報告を受け忍び込んで様子を探っていたのだ。土行孫は全裸を顕して二人の気持ちを聞いた。 そして布に気持ちを記させ持ち帰った。 太公望は援軍の将に帰順の気…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その14 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 朝歌。妲己によって鹿台の天井の梁の空洞に琵琶精は安置され半年後蘇った。 妲己は琵琶精に喜媚と名乗らせ紂王に侍らせた。 紂王の宴会は続いた。(よくまあ飽きないね) そして周軍は第三の関門穿雲関を陥落し残るはふたつ、臨潼関、潼関である。 臨潼関の司令官は余化竜。彼には五人の息子がいた。 周軍からは太鸞が出たが思いがけなく敗れてしまう。 それを聞いた蘇護は次はそれがしがと言いつのった。太公望はやむなく折れてしまう。 しかし蘇護そして息子の蘇全忠と討ちとられてしまったのだ。 臨潼関では思った以上の勝利に沸いた。そこへ末っ子の余徳が帰ってきた。が城中に入ろうとしない。死に至…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その13 横山光輝

    表紙の少年、黄天祥くんです。 おおー。フジリュー版とはかなり違いますな。 手前のおっさんは鄧九公どのです。 ネタバレしますのでご注意を。 太公望は武王に「金鶏嶺の孔宣軍を撃破した」ことを報告し孟津を目指すに五関が立ちふさがるための辛抱をお願いする。 目指す汜水関の左には青竜関、右には佳夢関という出城がある。 太公望はここで周軍を三つに分けた。 黄飛虎将軍の左軍十万は青竜関、洪錦は同じく十万で佳夢関を攻めることとなった。 残る四十万で汜水関攻撃にあたらう。 洪錦率いる右軍は汜水関の出城佳夢関に迫る。 兵は二万ほどと見えた。が、城の防御は案外手強く被害が増えるばかり。洪錦は打開策を問うた。 南宮适…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その12 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 拝将台が短期間で建設された。 武王が即位してから十三年、三月十五日、太公望を東征大将軍に任命する儀式が執り行われた。 武王が太公望を迎えに赴き拝将台を一層ずつ上がりながら祝文が読み上げられる。そして三層にて武王から司令官旗と黄金の斧が手渡されるのだ。 太公望は武王に殷を破ることを誓い皆にもこれを宣誓した。 その後、太公望は十七か条の厳しい軍律を作成し総勢六十万の軍勢による大訓練を行う。 孟津で四大諸侯が集い同盟を結んで朝歌に攻め入る、という報が朝廷にもたらされた。 紂王は決まらずにいた次の西岐討伐軍を急かす。 重臣は三山関の孔宣の名をあげた。この者は西方で修業して…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その11 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 目が覚めた太公望は自分に巻き付いた縄を観察して気づく。夾竜山懼留孫道士が作った捕縛縄だ。太公望はずいぶん昔に夾竜山で見たものだった。 懼留孫は長い間をかけて工夫を凝らし紐に棘をつけて痺れ薬をつけ鹿ぐらいの動物は捕らえられると太公望に話したのだった。 それを土行孫が持っているということは土行孫は夾竜山の修行者ということになる。では夾竜山は殷に味方したのか。いや十二霊山の道士は政治に興味は示さない。そこでそれらを確かめるために楊戩が自ら出向くと言い出す。土行孫の使う術が影の術に似ているため興味以上のものがあったのだ。 楊戩は太公望の許可を得て夾竜山へと駆け向かった。 …

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その10 横山光輝

    返す返すも『封神演義』の世界を現実的に描くという逆アレンジした本作品の魅力に感嘆してしまいます。 『武王伐紂平話』をベースに創作された、ということなのですがこの面白さは独特の味わいがあります。 『封神演義』ほどファンタジーではないけど哪吒たちのような子どもが山で修業して戦場で活躍する、というのはさすがにファンタジーでしかありえない、と思いながらも現実にも少年兵というのは存在するし日本での忍者を思い返すとこうした特殊能力を持つ少年たちもありうるのかなとも思えます。 ファンタジーではなく現実に寄せてきたからこそ特殊能力に凄みが増すとも思えます。 太公望も老人と思えない若々しさを持ってはいますがそれ…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その9 横山光輝

    金吒くんセンター!ていうか長男だから当然なのかw 哪吒一択と思ってたらそういうこともあるんだなあと思ったのでした。 ネタバレしますのでご注意を。 『三国志』ではほぼ大人しか活躍しないけどはっきりと小柄な少年たちが大活躍する、というのが殷周伝説の面白いとこですね。いわば少年忍者的な感じなのでしょうか。 さて完膚なきまでに叩きのめされ大きな被害を受けてしまった太公望軍だが太公望は皆の報告を受けて冷静に考え魔家兄弟の術は幻術だと知らせた。 魔礼青の石ころが兵士に変わっていくのは剣を抜いた時にキラキラと光って見えた時にもう幻術にかかってしまったのだ。 魔礼紅の混元傘から布切れが飛び出し蝶に変わったのも…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その8 横山光輝

    表紙の紂王に描かれているのが武成王黄飛虎ですがかっこいいのなんのって。 武将には惚れ惚れしますなあ。 ネタバレしますのでご注意を。 西岐に入国した黄飛虎一行。太公望は武成王の突然の来訪に驚き西岐に帰順したいという願い出にますます驚く。 黄飛虎は紂王が国政を忘れた事態だけでなく妻を死に追いやり諫めた妹を摘星楼から投げ落として殺したことを話す。 太公望は驚きそして黄飛虎が西岐を選んでくれたことは天意でございましょうと王の謁見を取り計らった。武王も黄飛虎の帰順を喜びこれまでと同じく一文字だけを変えて開国武成王に封じた。 一方東海を鎮圧した聞仲太師は朝歌に戻ってきた。 妲己や佞臣がいまだ存在すること、…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その7 横山光輝

    これは哪吒。やはり哪吒はかっこいい。 戦いの申し子。中国ものでは珍しい少年神。 まったく物怖じしない我が儘者であるのも少年らしい特色かな。 ネタバレしますのでご注意を。 うーむ。朝歌にいる者たちは紂王の悪政を肌身に感じているが遠くなればなるほどそれは噂でしかなく忠義の心を持っていれば必ず届くはずという思い込みが強くなる。 張鳳もまた黄飛虎が堕落して謀叛を起こしたと思い込んでいた。 黄飛虎はなんとかその場をしのいだが張鳳は蕭銀を呼んで夜襲をかけよと命じる。 が、黄飛虎に恩のある蕭銀は「自分が潼関に入ったすきに突入してください」と呼びかける。 蕭銀は張鳳を討ちとって黄飛虎を逃したのだった。 が、次…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その6 横山光輝

    七巻突入です。 聞仲太師、『封神演義』でもめちゃくちゃカッコいい人でしたがこちらでも最高のイケおじです。 ネタバレしますのでご注意を。 聞仲太師が12年ぶりに戻りさすがの紂王も彼の前ではすくみ上った子どものようになってしまう。他の者が刑罰を怖れて言えなかったことを聞仲太師は紂王につきつけていく。だが妲己を廃し費仲らを死刑にし鹿台を破壊することだけは紂王も即決できずにいた。 このままいてくれたらもしかしたらという気もしたのですがそれじゃあ話が進みませんよね。残念ながら今度は東海で反乱がおこり聞仲太師は平定に赴くこととなる。聞仲太師が出陣してしまうと紂王は元の木阿弥になってしまった。 一方、文王と…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その5 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 文王姫昌は漁民たちの歌を聞いて慄く。それは賢人でなければ作れない歌だったからだ。その歌は堯帝の故事を歌ったものであった。 文王がさらに進むとまたも不思議な歌を歌っている樵たちに出会う。その歌は誰が作ったのかと問うと「七十過ぎの老人で毎日釣りをしている」と答えた。 文王は供の散宜生に「大賢人がいるのは間違いない」となおも進んだ。 山深い水のほとりに進むと巨大魚が飛び上がりその魚に人間がつかまっているのを見た。 文王はその人間を連れて参れと命じたがその人間は逃げ出す。武吉であった。武吉はかつて文王の法律から逃げ出した身であり捕まったら死刑だと武吉は思い込んでいる。 し…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その4 横山光輝

    おおっ、これは太公望ポーズ・釣り。 でも記事はもう少し前からになっています。恐ろしいエピソードで有名なアレです。 ネタバレしますのでご注意を。 さてさて皆さまの怖ろしいトラウマになっている伯邑考ハンバーグのエピソードが始まりました。 姫昌の母つまり伯邑考のおばあさまは姫昌が幽閉されてから七年経つのにまだ釈放されないと嘆いていた。せめて死ぬ前に一目会いたいと。 これを聞いた伯邑考はすぐに貢物を用意して朝歌へと向かった。その中に白い猿がいてその猿は拍板を討ちながら踊るという特技を持っていた。 紂王はこの猿に興味を持って特技を演じさせたのだが猿は妲己の前にくると牙をむきだして襲い掛かったのである。 …

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その3 横山光輝

    これは四巻の表紙です。記事は三巻の終わりほどからです。 ネタバレしますのでご注意を。 崇侯虎を除く三大諸侯は紂王に対し上申書を出すが紂王はそれを読む気などはなく三人を謀叛者として処刑を命じた。 これに反論された紂王は仕方なく上申書を読むがますます怒り狂ってしまう。だがここでも黄飛虎がとりなしをすると紂王は姫昌だけはおとなしく口を挟まなかったという理由で幽閉となり他の二人は残酷に処刑された。 崇侯虎のみは忠臣ということで無罪となる。 東伯侯・南伯侯の後継者たちは反旗を翻して出陣した。西伯侯は占いのとおりとなった。 ここでみんな大好きあの哪吒が登場する(まあ私が好きなのですが) 『封神演義』とは違…

  • 『殷周伝説』太公望伝奇 その2 横山光輝

    二巻から書いていきますが実際は面白すぎてずっと先を読んでいます。 あまりにも素晴らしく好きになりすぎてわくわくときめきが抑えきれないほどになっています。そもそも『封神演義』が好きだったのですからこの世界に惹かれているのでしょう。 妲己は怖すぎますがそれもこの物語の重要な因子であります。 ネタバレしますのでご注意を。 突如現れた雲中子。番兵たちが取り押さえようと捕縛して連行しようと踏ん張っていたら柵を捕縛していたという幻術であった。 雲中子は紂王と会い高峰から朝歌を見ると宮殿にただならぬ妖気が立ち上っているのでこの妖を取り除くために参上しました、と申し上げる。そして魔除けの木剣を掲げ「この宝剣か…

  • 『殷周伝説』横山光輝

    『殷周伝説』とだけ観ていたので読んでみて『封神演義』の世界だったので驚きました。(これ恥ずかしいことですかね)(殷なんだから紂王だと気づくべきでしたかね) とにかく藤崎竜『封神演義』大好きなのでこの事実に嬉しい驚きでした。 諸星大二郎『無面目・太公望伝』も愛読書です。 ネタバレしますのでご注意を。 前1711年、殷(商)は夏を滅ぼし殷の時代が始まった。 殷は栄えそれから六百余年第三十代帝乙の時代に入っていた。 大きな地震の中で生まれた皇子が季子のちの紂王である。 地震の最中にうまれたので父・帝乙は危ぶんで吉兆を占わせたが聞仲太師から伝えられた答えは「吉」であった。 季子は成長するにつれその才能…

  • 『時の行者』横山光輝 その4 最終巻まで

    ネタバレしますのでご注意を。 「吉宗の倹約政治の巻」 八代将軍政宗は度重なる火事の後始末に追われていた。 それでなくとも吉宗が将軍の座に就いた時幕府の財政は借金だらけであったという。 吉宗は木綿の服を着、赤胴と鉄だけの刀を持ち食事も質素にして自らも倹約をし、周りの者にもそれを課した。そして全国に徹底した倹約政策を施していった。 横山先生のこうした働く人たちの絵、いつ見ても気持ちよい。ほんとに上手い。 楽しい。 そして行者はここで落ちぶれた紀伊国屋文左衛門に再会する。彼はすっかり良い人に変わってしまっていた。 行者は文左衛門から「質の悪い浮浪者たちが火付をして盗み働こうと相談している」と聞きふた…

  • 『時の行者』横山光輝 その3

    さて続きます。ネタバレしますのでご注意を。 「佐倉騒動の巻」佐倉藩の城主・堀田正信は夢の中の悪霊に苦しんでいた。行者の噂を聞いた家臣は悪霊を追い払ってくれるよう頼む。そして毎度ながら行者を消してしまおうと企むがまったく落ち着き払って対処し去っていくのであった。 堀田正信が見る夢の中の悪霊というのは重い年貢に苦しめられた百姓たちを代表して直訴し処刑された名主・宗五郎だった。 佐倉藩三百八十九か村の農民の思いの化身である宗五郎を死に追いやったことを思いつめたための悪夢だったのだ。 正信は松平定政を見習い佐倉十一万石を徳川家に返すことで忠臣になろうと決意するが時代はそれを許さなかった。 大名を取りつ…

  • 『時の行者』横山光輝 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 冒頭すぐ、十年前に野盗から救ってくださった偉い行者様が再び現れたとして農家の人達から感謝される少年。 貧しいのにご馳走を並べてくれる。 が、織田信長から「怪しい行者がいるらしい。しょっぴいてこい」と命じられた侍たちに連れて行かれる。 信長かっこいい。 信長に間者と戦って力を見せてみろ、と言われメガネを装着する行者様。 オーラが見えるので間者が隠れていてもすぐ見つけられるのだ。そして とやっつけてしまう。 第1話は織田信長から秀吉に対象が変わっていく。 秀吉は行者様に信長が天下を取れるのかを聞く。行者の答えは否であり天下を取るのは「花びらが信長公を襲った時、一番早く…

  • 『時の行者』横山光輝

    ずっと気になっていた横山光輝『時の行者』ついに読み始めます。 過去に少しだけ読みかじったことがあるのですがどんな話なのか、さっぱり判っていません。さてどんな物語なのでしょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 ということでいきなり全編のネタバレをします。 過去に少しだけ読みかじっていた、と書いたのですが実はその少しだけというのがこの作品の最終六巻だったのですw なのにどういう話かわからなかったという。つまり本作、むしろ最初を読まないとよくわからないんですね。というか全部をですが。 主人公「時の行者」くんはいかにも横山マンガの主人公らしい一本気の善良な少年です。不思議な能力を持ちそのことに悩んだり…

  • 『史記』第十五巻 横山光輝

    ついに最終巻となりました。名残惜しい。 ネタバレしますのでご注意を。 第1話「呉楚七国の乱(前編)(後編)」 14巻で登場した晁錯の物語から始まる。 文帝は古代からの政道を記した尚書(書経)を学びたいと思い尚書を知るただ一人の生き残りを求めたが当人が90歳を越える老人だったので優れた者を学ばせに行かせた。それが晁錯であった。 (なぜ尚書を知る者がたった一人かというと焚書坑儒で儒学が衰退したからである) 晁錯は数年間尚書を学んで戻り太子の教育係となった。 やがて晁錯は太子邸の家令にまで出世していく。 さらに晁錯は文帝に上書した。諸侯に対しもっと法を厳しくして諸侯の領土を削減すべきとしたのだ。 中…

  • 『史記』第十四巻 横山光輝

    呂后凄いな。どんな男の話より恐ろしい。 とはいえこれを言っちゃおしまいだけど本当なのかな、という気はする。 中国の悪女伝説多すぎでそのほとんどが凄惨すぎ。呂一族を抹殺するための劉一族の言い訳で呂后を極悪女に仕立てたのではないかと思ってしまうんですが、お話としては面白いってことで語り継がれたのではというのは穿った考えでしょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 第1話「呂氏の陰謀」 前181年に起こったの日食は呂后の心に大きな不安を与えた。劉氏を次々と謀殺していった祟りだと思ったのである。 呂后は大きな祭壇を造らせそこで厄払いをしたのである。 その帰途のことである。 大きな青い犬が突然呂后に襲い掛…

  • 『史記』第十三巻 横山光輝

    珍しい横山作品の女性表紙しかもふたりも。と喜んではいられない悲惨な構図。 ネタバレしますのでご注意を。 第1話「淮陰侯韓信」 前202年、劉邦は諸侯の要請で皇帝の位につき「高祖」と称し洛陽を都とした。 劉邦は皇帝になるためにあれほど多大な功績をあげた韓信を怖れ疎ましく思っていた。 韓信は斉王となっていたがその領地はあまりにも大きすぎる。かといってその功績に値する土地も思い浮かばなかった。 ここで張良・陳平のふたりは劉邦の気持ちを察して楚を勧めた。項羽の土地であり生まれ故郷に錦を飾る名誉を考えたのだ。 これに劉邦は賛同したが当の韓信には不満だった。それでも勅命を受けて楚王となりかつて韓信に愚痴り…

  • 『史記』第十二巻 横山光輝 その2

    第2話「離間の策」 陳平の物語。 とにかく陳平のお兄さん陳伯が良い人である。弟の才能に期待して自分一人で年中働き僅かの金も陳平の勉学に回していたという。凄い。どうしてそこまで弟に期待できたのか。しかもこの弟、こともあろうに兄嫁と密通している。なんてこった。 というか陳平さん、背が高く非常に美男子だったという。今でもそうだろうけどこの時代はとにかく容姿が大切みたいですね。容姿が良いので次々と人に認められている感があります。 とはいえ魏の王に仕えたが軍略が採用されず逆に回し者ではないかと疑われるのだがそれを親切に教えてくれる男がいた。 うーむ何かこの人も人に好かれる素質があるな。 そこを逃げ出し楚…

  • 『史記』第十二巻 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第1話「背水の陣」 劉邦は五諸侯を味方にし、五十六万という大軍で東進を開始した。だがわずか三万の楚軍に撃破され、命からがら滎陽城に逃げ込んだ。 まもなく敗走した漢軍を集めて韓信も滎陽城に入ってきた。 劉邦は最も惨めな睢水の戦いの後で気弱になり「項羽は勢いに乗ってここに攻めて来る。咸陽に引き返そうか」と言ったが韓信は強気だった。 平地であることを利用して戦車戦に持ち込む計画だったのだ。 急ぎ戦車を増産させた。攻めてきた楚軍は十万。しかし韓信は「すでに備えはできております」とわずかの供を連れて城を出た。 項羽は皆殺しの勢いで突進したちまち漢軍は総崩れとなったが城へ逃げ…

  • 『史記』第十一巻 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第1話「国士無双」 韓信物語。 韓信のまたくぐり、と言えば有名なのだろうけど実を言うとよくわかっておらず今になって「ああこういうことだったのか」と納得した次第です。 香港映画などでなにかというとまたくぐりをさせて相手を貶める場面がかつては多くて「なぜこんなに好きなんだ?」と思っていたのですが韓信だったのかと何十年後に気づく。 韓信、貧しい平民の子で容姿も見栄えしなかった、と横山先生は書いておられますが実際のキャラクターはわりとイケメンに描かれていて見栄えしないとは思えないw横山先生は活躍する人はハンサムに描きがちなのでそういうことなのだろう。 韓信は学問をしたが働…

  • 『史記』第十巻 横山光輝

    第1話「函谷関への道」 昨日も書いたのですが本作読むまで私は勝手に項羽と劉邦のイメージを作っていて項羽=すらりとした長身イケメン、劉邦=ずんぐりしたすけべのんべおっさん、と思い込んでいたのですが本作でその虚像は崩れ落ちました。 まあまああくまでも本作は横山光輝氏のイメージなのだから絶対ではないのでしょうがもう以前のイメージを保つことはできません。 特に項羽は覇王別姫もあってロマンチックな美丈夫を思わずにはいられなかったのですが本作項羽はあまりにもそれと違いましたね。 ネタバレしますのでご注意を。 劉邦が劉備玄徳のご先祖というのも作用しているのでしょうか。 というかそもそも横山氏は項羽のような剛…

  • 『史記』第九巻 横山光輝

    ここからさらに面白くなっていきますね。 ネタバレしますのでご注意を。 第1話「農民王陳勝」 始皇帝が最初の皇帝ならば、陳勝は最初の農民一揆の指導者である。 前209年、日雇い農夫の陳勝と呉広は辺境の守りに徴用され漁陽へ向かう途中大雨で足止めをくらう。秦では期日までに到着せぬものは死刑という法律があった。 陳勝は「どうせ殺されるなら、謀反を起こそう」と呉広に話しかける。たじろぐ呉広を陳勝は説き伏せた。「まずこの九百名で事を起こして天下に呼びかけるのだ」 今度は呉広が「それなら鬼神の力を借りよう」と言って陳勝に神秘性を持たせ人々を引き寄せる策略を練った。 食糧の魚の腹に「陳勝が王たらん」と書いた紙…

  • 『史記』第八巻 横山光輝

    秦の始皇帝の話だから絶対おもしろい。 ネタバレしますのでご注意を。 第1話「保身の術」 戦国四大名将のひとり王翦の物語。 朝議において、楚王は「大国・楚を討つにはどれほどの兵力が必要か」と将軍たちに問いかける。 名将・王翦は「六十万」と答え李信将軍は秦軍は精鋭ぞろい。二十万あれば大丈夫」と答える。 秦王は王翦の答えに老いて気力が欠けてきたのだと感じて李信将軍と蒙恬将軍に二十万の兵をあずけて楚を攻めさせた。 この朝議の結果に王翦は息子に引退を告げる。父の言葉に考えすぎではと息子・王賁は笑ったが王翦は「そなたまだ秦王の性格をつかんでおらぬな」と答えた。 秦王は人を信用しない。必要と思う時だけ腰を低…

  • 『史記』第七巻 横山光輝

    第1話「嫪毐の乱」 昨日の続き。 呂不韋の一世一代の大勝負は破格の大勝となる。趙の人質となっていた秦の公子・子楚を救い出し秦の王とした。 呂不韋はこのてがらにより丞相に封じられた。 だがこの荘襄王は在位三年でこの世を去った。 そして十三歳の政が秦王となった。 荘襄王の実母は「夏太后」となり呂不韋の囲い者から荘襄王の妃となって政を生んだ母は「母太后」となった。 そして呂布韋を相国(丞相より位は上)とし「仲父」と読んだ。これは父の次という意味である。 呂不韋の凄いのは丞相・相国となったところで堕落したりせず次に優れた食客を三千人集めるという意気込みがまだまだあるところだ。 この時代(今もかもだけど…

  • 『史記』第六巻 横山光輝

    第一話「嚢中の錐」 第二話「老いの野望」 第三話「主を震わす者」 第四話「奇貨 居くべし」 呂布韋の物語です。 趙の都・邯鄲で呂布韋はひとりの若者に目を止めた。 来ている衣服は貧しいが身分のあるお方に見えるのだ。 側の者は「あのお方は秦の人質の子楚さまですよ」と言う。秦の太子・安国君さまのお子で人質として送られてきたのですが、秦と趙の仲が険悪になってからは粗末に扱われいまでは食事にも事欠くありさまとか、と説明した。 これを聞いた呂布韋はこれは奇貨(将来跳ね上がる商品)かもしれぬ、と思ったのだ。 呂布韋は父親にも相談し子楚に全財産をつぎこんで賭けてみることにした。 (すごい度胸。凄い商売人だ) …

  • 『史記』第五巻 横山光輝

    この絵も謎絵ではないだろうか。とげとげ鞭が痛そうだ。 ネタバレしますのでご注意を。 第一話「刎頚の友」 刎頚の友の言葉はさすがに知ってたけどこんな話だったのかあ。 ますます変な関係の図に見えますな。 とはいえ物語はまず秦の猛将・白起がいかに勝利していったかを伝える。(負けたことがない猛将だったよね) その白起を抱える秦国公が趙の恵文王が手に入れた名玉「和氏の璧」を欲したことで趙は騒然となる。「和氏の璧」と秦の十五城を交換しようというのである。 強大国・秦が求める通り交換すべきか、いやそんな条件は嘘に決まっていて璧を取られるだけだ、という大論争となる。 この「和氏の璧」もまた逸話がある。春秋時代…

  • 『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先 その5

    ネタバレしますのでご注意を。 文竜が武虎と別れての後半。 玉燕との愛の物語も決して悪くはないのだけどなぜかイマイチ違うような気がするのは最初の「不忠不孝の徒」という謳い文句がどこかに行ってしまったってことじゃないいですかね。 文竜の世を拗ねた荒くれた感じが最後はすっかりなくなってしまったのも寂しい。描きたいものが途中から何だったのかわからなくなってしまったような感があります。 やはりテーマというのは大切なものなのだと思います。 キャラクターが魅力的なだけに余計勿体ない気がしてしまう。 玉燕ちゃんもうまく生かしながらテーマを決めるべきなのか、それとも玉燕の登場でテーマが変わってしまったのか。どち…

  • 『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先 その4

    ネタバレしますのでご注意を。 夜中、文竜・武虎小屋で仲良く並んで寝てる。遠くで戦の退却の合図がしている。 小屋から覗くとどうやら敗れたのは魏軍で兵士たちが傷を負って逃げていく。 それを黒づくめの宋の騎馬隊が追いかける。 そこへ目を傷つけたらしく眼帯をした男がいきりたって入ってきた。 止めようとするふたりに剣を振り回す。仕方なく文竜が男を殴りつけると運悪くそこに鉾があり男の背中を突いてしまった。 男はうわごとのように「玉燕・・・」とつぶやいて倒れ死んでしまった。 ここから文竜・武虎の道行が少しずつ変わっていく。 突然ふたりの前で死んでしまった男・程徐には愛し合った少女・玉燕がいた。玉燕は一人旅の…

  • 『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先 その3

    ゆるゆる書いているだけなので「その3」ですが五巻です。 ネタバレしますのでご注意を。 本作は横山マンガには珍しいほど女性が多く登場します。性的描写目的、という感は否めませんがカッコいい女性も登場します。 鯉風(りふう)さんです。 曹操似の美貌。 『闇の土鬼』に出てきた忍者たちみたいな立場の人たちです。 で、文竜と武虎はもう人目もはばからずに仲良し。いいね。 もうずっとこの感じでやってほしかったなあ。 酔拳の名手・朱豹。とにかく酒好き。金がなくても飲む。そして店のオヤジに殴られる。 酒を飲むためには殴られても平気。 楽しいキャラクターです。

  • 『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先 その2

    第二話。本作品のヒロインたる武虎ちゃん登場。汚い世界に真っ正直なブコちゃんがいてくれたから救われた。主人公文竜もそう言ってる。 ネタバレしますのでご注意を。 夢中で読んだ本作ですが読み終わるといろいろと面白かったり残念だったりという思いがあります。 男同士のバディもの、各エピソードに女の裸体とセクシャルな演出をいれる話作りというかつてのお決まりの設定なのですがなんとなくそうした性的描写はあっさりで横山光輝氏自身があまり楽しめてないのではと思ってしまいます。 いっぽう文竜と武虎のかかわりは丁寧に描かれていてひきつけられます。 傷ついた心を抱えて彷徨う王子とそれに付き従う根っから明るい奴隷男という…

  • 『戦国獅子伝』横山光輝/辻真先

    辻真先原作の横山マンガです。作品はまったく知らなくてどんなものなのかと興味津々での購入でした。 まだ『史記』の途中なのですがなかなか歯ごたえある作品なのでちょっとこちらに息抜きという感じで寄り道してみようと思ったらあまりにも意表を突く面白さだったので一気読みしてしまいました。 とにかく横山マンガとしては珍しいエログロが繰り広げられます。 ネタバレしますのでご注意を。 『三国志』と同じ1972年からの作品。そのせいもあってか主人公の父親が張飛そっくり(ヘアバンドも同じ)でちょっと戸惑うようなおかしいような不思議な感覚になりました。 主人公は今まで私が観てきた横山ヒーローとしてはかなり荒っぽい男む…

  • 『史記』第四巻 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第一話「先從隗始 先ず隗より始めよ!!」 あの有名な「先ず隗より始めよ」の語源を描いたものですが多くの日本人が思う話ではないのが面白い。 たぶんほとんどの日本人解釈は「大変なことをやろうとする時は自分からはじめるべきです」という相手への忠告として使用するのが多いのではないでしょうか。 ところがこの話は昭王が国を建て直すため人材を集めたいがどうしたらいいものか、と問うた時に隗が「それならばまず隗、つまり私から始めなされませ」と答えたものなのだ。 つまり「大変なことをやろうとするなら身近にいる私(のようなつまらないもの)を優遇すれば優れた人物がそれを聴いて遠くからでも…

  • 『史記』第三巻 横山光輝

    ネタバレしますのでご注意を。 第一話「因習打破」 これは『三国志』で孔明が南蛮国平定からの帰途河に生贄を捧げる(あっちでは数十人だった)悪習をやめさせるために肉饅頭を代わりに捧げる、という話の元になったものではないでしょうか。 こちらでは西門豹という官僚が鄴の県令に任じられ村の荒廃を見る。 その原因が上に書いた悪習とそれに伴う儀式にかかると称して大金を巻き上げる役人と巫女たちだった。 本作では生贄に捧げられる若い娘を助けて悪習を続けて村人から金を巻き上げていた者たちを代わりに突き落とすという痛快なものになっています。 その後西門豹は村人たちに用水路工事を割り当て黄河から水を引いて新しい農地を開…

  • 『史記』第二巻 横山光輝 「臥薪嘗胆」

    なんかすごく不思議な絵である。 「臥薪嘗胆」の意味が解らない人はこの絵の意味をどう思うのだろうか。 ネタバレしますのでご注意を。 楚の平王が亡くなり父と兄の仇を討つことができなくなってしまった伍子胥は平王の屍を墓から引きずり出して鞭打つ。 次は楚を討つという志を持つが今度は味方となってくれた呉王が亡くなったことでまたもや伍子胥の望みはかなわないままで終わるのではないかと予感してしまう。 呉王の跡継ぎを推薦した伍子胥だが時が経つにつれ新しい呉王は伍子胥の諫言を次第にうるさく思い始めついに剣を渡して自害を求める。 伍子胥は使者が持ってきた剣を見て怒る。「呉がここまでになれたのも私がいたからだ。それ…

  • 『史記』第二巻 横山光輝

    二巻は伍子胥巻です。この伍子胥だけではなく『史記』はまったく知らなかった私ですが最近になって知った「鳥人間」さんのYouTubeでこちらを見まして(聞きまして)特に伍子胥は読みたいと思っておりました。 www.youtube.com 鳥人間さんありがとうございます。 ネタバレしますのでご注意を。 時は春秋時代。紀元前500年前後のことである。楚の二十七代平王は横暴な王と言われていた。 伍子胥。名は員。字は子胥と言った。伍一族は楚の名家であった。 伍子胥の父は太子建の太傅(侍従長)を務めていた。副侍従長は費無忌という人物だった。彼は平王に気に入られ側近になりたいという野望を持っていた。 この費無…

  • 『史記』横山光輝

    『三国志』の後読もうと思っていてちょっと遠回りしましたがついに読み出します。わくわくしますなあ。 ネタバレしますのでご注意を。 「第一話 司馬遷」 その『史記』の執筆者である司馬遷の物語です。 司馬遷の父。司馬談は一流の学者でありながら農耕で生計をたてなければならない状況にあった。しかしある時「太史公」に任命される。暦を作ったり国家の祭祀を取り締まる仕事である。いわば神官といえる。 司馬一家は茂陵という町に移住する。そこは長安から少し離れた場所で当時の武帝が自分の死後のための墓陵を造っている町であった。 司馬遷はこの時六歳。父・談を師として猛勉強をはじめ十歳で古文を暗誦した。そして新しい学問で…

  • 『闇の土鬼』横山光輝 その3

    これまで観た横山キャラで最も美しいキャラだと思います。 私は白土カムイもそう思ってしまうので忍び系に弱いのかもしれませんが。 ネタバレしますのでご注意を。 4巻の冒頭の相手、妙に長身イケメンでおかしい。 なんかエロいんだよ。 でも このスタイルがどうしても笑える。 サディスト兄さん。 石つぶてはカッコいいと思う。 で、この勝負土鬼が勝ちもう少しでとどめを刺すところで持病が出てしまい左腕がきかなくなってしまう。 男(左門)は最期に合図を送って無明斎を呼び寄せる。無明斎は左門を抱き上げ最後の忠告を聞く。(こういう甘い人間関係があるのが横山風味) 左腕がしびれて動かなくなった土鬼はまたもや霧兵衛と出…

  • 『闇の土鬼』横山光輝 その2

    二巻に入ります。土鬼くんの魅力が凄まじい。 ネタバレしますのでご注意を。 笑ってはいけないと思いながらも込み上げる笑いが我慢できない。 10代の男の子ひとりをいじめるおじさんたちよ。 そしてこの爺様血風党の長・無明斎にしばかれる この無明斎が最高におもしろい そりゃ見れば誰だって思い出すだろうて 巻物広げるだけで大げさwそしてしみじみと眺めた後で きちんと巻き上げる。えらい!出しっぱなしはいけないものね。 幕府の偉い人がこの巻物を奪えと命令すると伊賀者たちが追いかける 無明斎も負けじと味方を呼び いちいち人数が多い。 そして歌いながら殺戮する。 「歌に合わせて同時に刀を打ち下ろすとは」「わずか…

  • 『闇の土鬼』横山光輝

    突然の『闇の土鬼』です。横山作品どれから読もうかな、と探していてあまりのかっこよさに表紙買いしてしまったのですが中身は予想以上にかっこよかった。 戦国ハードボイルドとでもいうのでしょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 タイトルと言い冒頭の「貧困ゆえに間引きされる運命の子」という設定からも過酷で恐ろしい内容か、とやや怯えていたのですが読み始めるとかなり笑いをこらえる内容でした。(すみません)おかしいのだけどめちゃくちゃかっこいいのです。というかカッコよすぎるのは現在おかしいことなのだと思われますw というか冒頭もですよ。 この時代に食うや食わずにしては箪笥が立派すぎて。いらんでしょ。布団や服も…

  • 『漫画版 徳川家康』横山光輝 原作:山岡荘八 第八巻 完結

    ネタバレしますのでご注意を。 完結の八巻です。 天下を統一しなおも荒ぶる世の中に泰平を望み老齢の体に鞭打って働き続けた家康。 多くの夢を果たした家康が最期まで悩み続けたのは我が子との関係だった。 これは特に前世代の父子=働くことだけが男の人生という価値観を持った男性たちはよくよく読むべき内容だと思わされる。 とはいえこれは「親の言うことは正しいのだから子供はよく言いつけを聞くように」とか「子どもを正しく導ける父親でなければならない」という意味ではない。 むしろ「家康ほどの知恵者であっても親子関係を考えるのは難しかった。家康自身その考え方が正しかったわけではない。正しい道を知るなどということはあ…

  • 『漫画版 徳川家康』横山光輝 原作:山岡荘八 第七巻

    ネタバレしますのでご注意を。 関ケ原の合戦で勝利を得、家康の地位は不動のものとなった。 家康は淀君・秀頼母子をおとがめなしとした。 七巻。家康は天下泰平のために尽力していくがこれがほんとうに難しい。以下は家康の立場から見た物語と言えよう。 ここに真田幸村が登場し家康の考え「天下泰平」はおこがましいと持論を述べる。「この世に平和などない。誰がが幸福であれば誰かが不満を持つ」というのだ。しかし家康はこの世を幸福にしてみせると宣っている、そのことを嘲笑するようにあえて豊臣家の肩を持つ、と幸村は大坂城に赴き家康が陣頭に立つ江戸と戦う。 すでに隠居を決め次世代に引き継がせたつもりの家康だったが事態はそう…

  • 『漫画版 徳川家康』横山光輝 原作:山岡荘八 第六巻 その2

    ネタバレしますのでご注意を。 六巻後半は石田三成パート。 豊臣家のため走り回る三成と彼を憎む者たちとのデッドヒート。 とてもよい。 かつて不人気だったという三成は最近共感を呼んでいるようなのがおもしろい。本作では明らかに悪人なのだが横山氏の描く小賢しい男の顔つきをしているのだからそうなのだろう。 豊臣家のためと信じて正論の行動をする三成だがそれがいちいち他人の癪に障るのだ。これに家康はすっかりついた貫禄で鷹揚に対処していく。 神妙な趣で茶漬けを食う。いいなあ。 カッコいい高台院=寧々。 このパート日本史上最も有名と言える「関ケ原の戦い」への前哨戦なのだがそれだけに複雑な過程を経る。 実際の関ケ…

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