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風の記憶 https://blog.goo.ne.jp/yo88yo

風のように吹きすぎてゆく日常を、言葉に残せるものなら残したい…… ささやかな試みの詩集です。

風のyo-yo
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2014/10/31

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  • おどまかんじん

    浮浪者のことを、九州では「かんじん」と呼んでいた。今ではもう聞かれないかもしれないが、私が子供の頃には、その言葉はまだ生きていた。そして今も記憶に残る、ふたりのかんじんがいた。ひとりは女のかんじんで、おタマちゃんと呼ばれていた。おタマちゃんは、汚れたボロボロの着物を重ね着していた。当時は子供たちも貧しく汚い服装だったから、おタマちゃんが特別だったわけではない。ただいつも大きな風呂敷包みをぶらさげていて、まるで着物と風呂敷包みが歩いているようなのが異様だった。子供たちがからかうと、おタマちゃんは真剣に怒って追いかけてくる。足はそんなに速くないので、追われて逃げ惑うのも、子供たちには遊戯のようなものだった。手をぶらぶらさせて踊るような仕草もしていたから、すこし気が触れていたのかもしれない。おタマちゃんが何処か...おどまかんじん

  • 記憶の花びらが

    このところの妻の言動や行動に惑わされていると、だいぶ以前に亡くなった母のことがしばしば思い返される。当時、母の近況が書かれた手紙を妹からもらったことがある。新しい介護施設に移って2週間、環境が変わったけれど、母にはなんら変わった様子もみえないという。妹は1日おきに施設を訪ねているが、そのたびに、初めて訪ねてくれたと言って淋しがるらしい。それでいて、ケアマネージャーには、娘が毎日来てくれることが唯一の楽しみだと言ったりするという。まばらになった記憶が、時と場所をこえて繋がったり切れたりするようだった。手紙の中で妹は、「わたしたちは、まばらではあっても記憶が1本の糸で繋がっているのだけれど、ばあちゃんにはもうその糸が無くなって、花びらが舞ってるみたいなのかもしれません。その花びらの1枚がひらひらと目の前に落ち...記憶の花びらが

  • 花は咲き 花は散り

    あっという間に、花から若葉の季節にかわった。季節の足が速すぎるような気がする。私の脚がだいぶ重くなってきたせいもあるかもしれない。桜という言葉を失ってしまった妻は、もっぱらピンクピンクと言いながら花を追った。季節と駆けっこするつもりはないけれど、なんとなく周りのいろいろな動きに、置いてきぼりにされている思いがする。引きこもりがちの春だったから、仕方ないといえば仕方ないか。季節の歩みが遅いと感じていた頃もあった。その頃は若かったのだろう。先走っていたり慌てていたりすることが多かった。速いということがなにより優先と、習慣づけられていたのかもしれない。せっかちといえばせっかちだった。それが生来のものだったのか、それとも躾けられたものだったのかよくは分からないが、背後にいつも父の声がしていたことも確かだ。「はよせ...花は咲き花は散り

  • ラブレター

    ラブレターにまつわる思い出は、どれもほろ苦くて、心に痛みを伴うものばかりだ。最初の関わりは小学生の時だった。クラスのある男子からある女子に架空のラブレターを渡す。そんな悪戯を考える悪ガキがいた。グループの中で、たまたま私が清掃委員だというだけで書き役にされてしまったのだ。好きだとかキスしたいとか、それぞれが好き勝手に言い出す内容を、作文の才もない私が手紙らしくまとめていく。内容は覚えていないが、とても稚拙なものだったと思う。その手紙を、グループのひとりが紛失してしまった。担任は若い男の先生だった。ひとりひとり詰問されて、気の弱い子が白状してしまった。その結果、書いた私が犯人ということにされてしまった。昼休みに教室にひとりだけ残された。いきなり先生のびんたが顔に飛んできた。私はそばの机で体を支えているのがや...ラブレター

  • 夢の感触

    夜中に目が覚めた。みていた夢の残像でもあるかのように、手のひらに柔らかい感触が残っている。その感触に懐かしさがある。小動物の柔らかさだった。子供の頃の、記憶の底深くに沈んでいたものが、突然なんの脈絡もなく、眠りの切れ目に浮かび上がってきたみたいだった。ぼんやりと、記憶のさきに知らない人が現れた。その人は大きな布袋をぶら下げていた。その袋のふくらみをそっと撫でた。温もりのあるものが動いた。とっさに胸に込み上げてくるものが大きくて、声もかけられなかった。それが子犬との別れだった。子犬は6ぴき生まれた。茶色が2ひき、黒が1ぴき、白が1ぴき、そして茶色と白のブチが1ぴき。もう1ぴきは憶えていない。もしかしたら5ひきだけだったかもしれない。茶色と白のブチだけが、他の子犬よりも食い気が勝っていて成長が早かった。いつも...夢の感触

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