おどまかんじん
浮浪者のことを、九州では「かんじん」と呼んでいた。今ではもう聞かれないかもしれないが、私が子供の頃には、その言葉はまだ生きていた。そして今も記憶に残る、ふたりのかんじんがいた。ひとりは女のかんじんで、おタマちゃんと呼ばれていた。おタマちゃんは、汚れたボロボロの着物を重ね着していた。当時は子供たちも貧しく汚い服装だったから、おタマちゃんが特別だったわけではない。ただいつも大きな風呂敷包みをぶらさげていて、まるで着物と風呂敷包みが歩いているようなのが異様だった。子供たちがからかうと、おタマちゃんは真剣に怒って追いかけてくる。足はそんなに速くないので、追われて逃げ惑うのも、子供たちには遊戯のようなものだった。手をぶらぶらさせて踊るような仕草もしていたから、すこし気が触れていたのかもしれない。おタマちゃんが何処か...おどまかんじん
2025/04/30 17:18