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  • 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』/加藤陽子

    東大の歴史学教授である加藤が、栄光学園の中高生たちに行った5日間の講義をベースに書かれた一冊。日清戦争から太平洋戦争まで、近代日本の戦争の歴史がテーマになっている。 講義は、加藤が生徒たちに史料(報告書、書簡、日記、地図など)や歴史家の意見を提示しては、いろいろな質問――「(日露戦争前の)ロシアは、日本が韓国問題のために戦争に訴えてでも戦うつもりであったことに、なぜ気づかなかったのでしょうか?」、「イギリスはなぜ、日本が日英同盟の名によって大戦に参戦するのをよろこばなかったのでしょうか?」など――を投げかけ、彼らが一生懸命それに回答していく、という流れで進んでいく。 もちろん、栄光の生徒でしか…

  • 『闇の中の男』/ポール・オースター

    オースターの2008年作。2000年代にオースターが書いていた「部屋にこもった老人の話」の第5作目ということで、本作も、ひとりの老人が自室の暗闇のなかで眠りにつくことができず、頭のなかで物語をあれやこれやとこねくり回している場面から始まっている。 老人が夢想するのは架空のアメリカ、9.11が起こらず、その代わりにアメリカがふたつに分裂し、いつ終わるともしれない戦争を繰り広げている、という暗澹とした世界である。そのディストピア感は、オースターの旧作『最後の物たちの国で』をおもい起こさせるようなものだ。ただし、この分裂したアメリカの物語は、読者に強烈な印象を残しつつも、ストーリーとしてはじゅうぶん…

  • 『マチネの終わりに』/平野啓一郎

    ネットでレビューや感想を見ていると、本作への批判は、主に物語中盤で引き起こされる「すれ違い」があまりにもご都合主義的で、作りもの感満載である、という点に対するものが多いようだ。たしかに、俺自身、この小説を読みながら、うわ、この展開、まじかよ…!と一度は本を閉じそうに――というか、Kindleからアンインストールしそうに――なったくらいなので、そういった批判はある程度妥当なものであるようにおもえる。けれど、本作を最後まで読み終えてから改めてかんがえてみると、そのような都合のよさ、作りものっぽさ、嘘っぽさ、安っぽさ、メロドラマっぽさ、といった要素こそが、本作のテーマと響き合っているようにも感じられるのだ。 この世界では、チープな悪意やおもい込みや、しょうもない誤解といったものが、あまりにもたやすく、なんとも理不尽に、ばかばかしいくらい乱暴に、人の生をねじ曲げてしまう、そういったことがたしかに起こりうる。そういうむちゃくちゃな、物語の展開としてどうなの、と言いたくなるようなできごとが不意に訪れてしまう、そんなふざけた場所こそが、まさしくこの世界であり、そんな展開に巻き込まれることこそが、まさに生きるということなのだ。

  • 『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』/福田和也

    清水幾太郎は本を読んで得た内容を「表現」することで、はじめて本当に読めたことになる、ということを述べていたけれど、福田も本書で同じようなことを書いていた。 「情報」を得るというのは、けして受動的な行為ではないのです。むしろ、高度の自発性、能動性が要求される行為である。あるいは、その能動性こそが、情報獲得の効率を確保するのです。 情報における能動性とは、それを受けているその時点で懸命に頭を動かして、それが自分にとって価値のあるものか否か、さらにはそれをどう料理してアウトプットするかという処まですましてしまうということです。 逆にいえば、料理法まで至らない、思いつかないものは、とっておいても仕方な…

  • 『本はどう読むか』/清水幾太郎

    社会学者の清水による、本の読み方に関するエッセイ。清水の読書遍歴から、情報整理の仕方、どんな本を読むべきか、本の内容を忘れないための工夫、洋書の読み方、などなど、この手の「読書論」系の本で扱われがちなトピックについては大方書かれている。1972年に出版された本だけれど、内容的にはぜんぜん古びていないし、『論文の書き方』で有名な清水なだけに、当然文章も上手い。この手の本のなかではひさびさに当たりを引けたな、とおもいつつ読んだのだった。 本を読むと、読者の心のなかにはいろいろな観念が蓄積されていくわけだが、単に読んだというだけでは、それらの観念は無秩序に蓄積されていくだけに過ぎない、と清水は言う。読者と著者とでは、頭のなかにある観念の体系が異なっているからだ。では、どうすれば読者は本の内容を自分のものにすることができるのか?

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